クロスティーニに戻った三人は、久しぶりに教室での授業を受けつつ、それ以外では休みを満喫していた。以前は退屈に思えた授業も、  
久しぶりに受けてみるとなかなか面白く、三人はいわゆる学生生活を存分に満喫している。  
もちろん、色々な意味で好奇の目は多かった。今や学園一の実力者となっているパーティでもあり、また学園一の複雑な人間関係を持つ  
パーティでもある。しかも、彼等はその中心たる三角関係を持つ三人なのだ。目立たない方がおかしい。  
しかし、三人ともそんなものは気にしていなかった。本人達が受け入れている以上、周りがどんな目で見ようと関係ないと  
思っているのだ。そんなわけで、三人は至って普通に生活し、普通に勉強し、普通に遊んでいる。もちろん、大抵は三人一緒に、である。  
「ヒュマ君、これいらない?」  
「いらねえ。お前、好き嫌い多すぎだろ」  
「じゃ、ドワちゃん、これあげる」  
「わぁ〜、ありがとー」  
「あげるな、喜ぶな」  
間違って取ったシーフード入りペペロンチーノのシーフードを、全てドワーフの皿に移すクラッズ。喜ぶドワーフ。呆れるヒューマン。  
いつもと変わらない、普段の光景である。  
「お前は……きのこも嫌い、エビも嫌い、コーンも嫌いでピーマンも嫌いって、普段何食ってるんだよ」  
「パスタは好きじゃよ。ハンバーグも好きじゃし、ピラフも。あとは道草とか人様の時間とかよそ様のお金とか…」  
「それは食うな」  
「冗談じゃって」  
そんな会話をする二人を、ドワーフは笑いながら見つめている。  
「二人とも、面白いよね〜」  
「ドワちゃんが笑ってくれるなら、いくらでも言うよ」  
「突っ込み疲れるから、ほどほどにしといてくれよな」  
三人で過ごす時間が増えたためか、彼等の仲は一層良くなってきている。その顔にはいつも笑顔があり、話す声は弾んでいる。  
以前は少しぎこちなかったヒューマンも、今ではすっかりこの状況に馴染んでいた。そんな彼等を羨ましいと思う者も多いが、同時に  
汚らわしいと思われていたり、さぞ鬱陶しい関係だろうと思う者もいる。いずれにしろ、彼等には関係のない話である。  
授業を受け、食事をし、訓練をし、遊び、かいた汗を風呂で洗い流す。その後はそれぞれ部屋に戻ることも多いが、当然の如く、  
一つの部屋に集まることも多い。そうなれば自然、やることは決まっている。  
その夜も、三人は一つの部屋に集まっていた。というより、ドワーフとクラッズは相部屋なので、そこにヒューマンが来たという方が  
正しい。  
「お、ヒュマ君来たねー。早速する?」  
「お前……気が早いよ」  
「じゃってねー?あたしもドワちゃんの可愛い声、早く聞きたいし」  
「………」  
当のドワーフは、尻尾を落ち着きなく振りながら、恥ずかしげにうつむいている。  
「でも、ドワーフの意見無視するなよな。ドワーフが嫌がったらどうするつもりなんだよ」  
「あ、あの…」  
ヒューマンが言うと、ドワーフはもじもじしながら口を開いた。  
「わ、私は……その、何日かしてなかったし……したい、な…」  
「お、ドワちゃん珍しく積極的。何かあったの?」  
クラッズが尋ねると、ドワーフはますます恥ずかしそうにうつむいた。耳もへなっと垂れており、全身の毛も若干膨らんでいる。  
「……あの、だって、私だって、するの嫌いじゃないし……嫌いじゃないって言うか…」  
「……ドワちゃん、意外とエッチなんじゃね」  
そう言われると、ドワーフの体毛がもさりと膨らむ。  
 
「まあとにかく、それなら話は早いよねー!ささ、ドワちゃんも脱いで脱いで!」  
言いながら、クラッズは一瞬の躊躇いもなく服を脱ぎ捨てる。そんな彼女を、ヒューマンは少し呆れた顔で見つめている。  
「お前って、ほんっとに羞恥心と無縁だよな」  
「今更恥ずかしがることじゃないしねー。それに、女は見られてきれいになるものじゃよ?」  
「……ほんと?」  
「ドワーフ、真に受けるなよ…」  
「ほんとじゃってばー。見られてるって意識すると、きれいにしようとするでしょー」  
「ああ、何か納得した」  
「って、話はいいから脱ぐ脱ぐー。脱がせるのも楽しみの一つではあるけど、三人だとそうも言ってられないもんね」  
そう言いつつ、クラッズはドワーフの服を脱がせにかかっている。ドワーフはドワーフで、上はクラッズに任せ、自分はショートパンツを  
脱ぎにかかっている。そんな二人を見つめつつ、ヒューマンは一人で服を脱ぐ。  
「ふふ。ドワちゃん、今日もかわいい声聞かせてね」  
「クラッズちゃん……ん…」  
ようやく服を全て脱いだヒューマンを尻目に、クラッズとドワーフはしっかりと抱き合い、キスを交わしていた。  
お互いの唇を吸い、舌を入れる。かと思えば、少し唇を離し、舌先で突付くようにじゃれあう。そして舌を絡め、再び深いキスを交わす。  
「クラッズ……お前早えよ…」  
「ん……ぷぁ。ヒュマ君が始めちゃったら、ドワちゃん独り占めになるんじゃから、今はいいでしょー」  
「俺もキスしたかったのに……まあいいか。でも、俺も混ぜろよ」  
ヒューマンもベッドに乗り、クラッズとキスを交わすドワーフの後ろに座る。そして彼女の腋の下から腕を回し、胸を包むように触れる。  
「んんっ…!?んぅ……ぷはっ!ふ、二人でそんな……んっ……ん、ぅ…」  
ヒューマンの手が、ドワーフの胸をゆっくりと揉みしだく。着痩せするのと体毛の関係で、見た目よりも胸は大きい。触れると柔らかく、  
よく手入れされた体毛が艶々とした手触りで、思いの他気持ちいい。  
全体を捏ねるように揉み、指先で乳首を摘む。ヒューマンの手が動く度、ドワーフは体を震わせ、口を塞がれたままに声をあげる。  
「んっ!ふ、ぅ…!うぅ〜……んんっ!んく……ぷぁ!ふ、二人とも、ちょっと待ってぇ…!」  
クラッズが唇を離した隙に、ドワーフは何とか口を開いた。  
「ん?どうしたの?」  
「だって、二人ばっかりで……私も、お返ししたいよ」  
「ん〜、あたしはされるの性に合わないから、ヒュマ君にしてあげるといいよ」  
「そう?じゃあ、ヒューマン君、そっち向かせて」  
言われてヒューマンは手を離し、ドワーフは彼の方へと向き直る。  
「ええっと……どうしよ?」  
「無理するなよ?」  
「ドワちゃん、ヒュマ君の舐めてあげたら?ドワちゃんの舌なら、すっごく気持ち良さそうじゃない」  
「な、舐めるの?」  
ドワーフはヒューマンのモノを見て、少し怯んだようだった。だが、すぐに覚悟を決め、顔を近づけようとしたとき、クラッズが  
口を開いた。  
「あ、ドワちゃん、やっぱりちょっと待って」  
「え、なぁに?」  
すると、クラッズはドワーフの耳に、そっと唇を寄せる。  
「抵抗あるならさ、もうちょっと別の場所舐めてあげるって手もあるよ」  
「そうなの?」  
「……何話してるんだ?」  
 
クラッズが小声で何か囁くと、ドワーフは一つ頷き、ヒューマンの手を取った。そして、彼の顔を上目遣いに見つめる。  
「あの、ね、ヒューマン君。ちょっと、練習させてくれる?」  
「練習?」  
返事を待たず、ドワーフはヒューマンの指をはぷっと咥えた。  
「っ…!ド、ドワーフ…!」  
咥えたまま、まるで子供のようにちゅうちゅうと吸いあげ、指の腹を舐める。続けて舌を巻きつかせ、唾液を絡めて全体を丁寧に  
舐め上げる。暖かい口内の感触が全て指先に伝わり、自然とヒューマンの胸が高鳴る。まして、一心不乱に指をしゃぶるドワーフの姿は、  
何とも言えず淫靡に映る。  
「ちゅ……ん……ふぅ。ヒューマン君、どう?」  
「あ、ああ……すげえいい」  
「んっふふ〜。こういうのは雰囲気も大切じゃからね〜。それじゃ、あたしも」  
クラッズがドワーフの後ろに近づき、背中にそっと触れる。そのまま手を滑らせ、尻尾まで来ると、クラッズはそれを軽く握り、  
毛並みに沿ってすうっと扱くように撫で付ける。  
「ふぅ、ん…!」  
ドワーフの体がピクリと跳ねる。クラッズはそのまま尻尾の先まで手を滑らせると、彼女の秘部に触れた。  
「んふぅっ!」  
「痛て」  
思わず声をあげた瞬間、ドワーフはついヒューマンの指を噛んでしまった。それに気付き、ドワーフは慌てて口を離す。  
「あ、ごめんね!だ、大丈夫?」  
「ああ、別に大したことねえよ」  
「そう?それならいいけど……もー、クラッズちゃんてばぁ!」  
ドワーフが非難がましく言うが、クラッズは気にする風もなく笑う。  
「ごめんね〜。でも、指にしといてよかった。さすがにヒュマ君のそれ噛ませちゃ、今頃大惨事じゃもんね」  
「お前、それを見越した上でやらせたのかよ…」  
「細かいことは気にしないのー。ほらドワちゃん、もっと気持ちよくさせてあげる」  
言いながら、クラッズはドワーフの秘裂を優しく開かせ、そこに指を這わせる。  
「んあっ…!」  
ドワーフの体が跳ね、指を拒むかのように秘部が収縮する。そこにクラッズの小さな指が入り込み、襞を撫でるように指を動かす。  
「うっ……あんっ!」  
「ふふ、気持ちいいでしょ。でも、ドワちゃんはここより、こっちが好きなんじゃよね〜?」  
クラッズの手が、少しずつ前へと動く。そして、最も敏感な突起に触れると、ドワーフの体がビクリと震えた。  
「うあっ!そ、そこぉ……いいよぉ…!あっ!」  
「ドワちゃん、相変わらずいい反応じゃね〜。……ん、だいぶ濡れてきてるね。そろそろヒュマ君の出番かな〜?」  
同性ということもあってか、クラッズの責めは的確で、ドワーフの弱いところを正確に突いている。前戯に関しては、ヒューマンは  
彼女に勝てる気がしない。  
「ああ……俺もぼちぼち、我慢が限界になるとこだった」  
「らしいよ、ドワちゃん。ドワちゃんも、そろそろ入れたいでしょ?」  
「あっ、んっ!そ、そんなこと…!」  
クラッズの言葉に、ドワーフの体毛が膨らむ。だが否定はせず、むしろヒューマンを期待に満ちた目で見つめている。  
 
「ドワーフ、いいか?」  
「……うん…」  
ドワーフが答えたのを見て、クラッズはすぐに手を離す。ドワーフはそのままヒューマンの腰に跨り、ヒューマンの肩に手を掛けた。  
「お前、このやり方好きだよな」  
「だって、顔も見えるし、ギュッてできるもん。ヒューマン君は、嫌?」  
「まさか。俺も好きだよ」  
「よかった、えへへ」  
嬉しそうに笑い、ドワーフはゆっくりと腰を落とす。秘裂が彼のモノに当たると、ドワーフは一度動きを止め、ヒューマンの顔を  
見つめる。ヒューマンが腰に手を回すと、ドワーフは再び動き始めた。  
「ふ、ん…!んんん…!」  
濡れそぼった秘裂がゆっくりと開かれ、少しずつヒューマンのモノを飲み込んでいく。それが入るに従い、ドワーフの秘部はヒクッと  
収縮し、ヒューマンのモノを締め付ける。熱くぬめった体内で強く締め付けられる快感に、ヒューマンは呻き声を上げた。  
「くっ……中、すげえいい…!」  
「んっ……う……くはぁ…!ヒューマン君の、全部、入ったよ…」  
完全にヒューマンの腰に座る形となり、根元まで彼のモノを飲み込みながら、ドワーフは陶然とした表情でヒューマンに話しかける。  
「えへへ……お腹の奥まで、いっぱいだよ…」  
「ドワーフ…」  
ヒューマンは彼女の腰に添えていた手を、そっと首筋に滑らせた。  
「さっき、出来なかったからさ……いい?」  
「うん。いっぱい、しよ」  
ドワーフはぺろりと、ヒューマンの口元を舐めた。彼女からすると、キスより意味の強い行為らしいのだが、ヒューマンとクラッズには  
そういう習慣がないため、最初は執拗に口元を舐めて、二人を大いに戸惑わせた。  
ヒューマンが首を抱き寄せると、ドワーフは嬉しそうに微笑む。そのまま軽く目を瞑り、唇を重ねる。ヒューマンが舌を入れると、  
ドワーフはそこに自分の舌を巻きつかせるように絡めた。  
舌が触れ合い、唾液が交じり合う音が響く。二人はしばらくそうしてキスを楽しんでいたが、不意にヒューマンが腰を動かした。  
「んっ!」  
「ん、悪い。びっくりさせちゃったか?」  
ヒューマンが尋ねると、ドワーフは優しく微笑み、首を振った。  
「ううん、平気。もっとぎゅって、していい?」  
「ああ。そうされると、俺も気持ちいい」  
嬉しそうな笑顔を浮かべ、ドワーフはヒューマンに抱きついた。そして再びキスを交わし、ヒューマンはゆっくりと腰を動かす。  
じれったくなるほどに、ゆっくりとした動き。それでも、突き上げるごとにクチュッと水音が響き、ドワーフは抑えた喘ぎ声を漏らす。  
お互いの温もりと感触を味わい、いかにも幸せそうな表情である。  
しかし、クラッズとしては手持ち無沙汰である。いまいち入り込むタイミングが掴めず、彼女は二人の傍らでじっと見ていたが、やがて  
その顔にいたずらを思いついた子供のような笑みが浮かんだ。  
そっとドワーフの背後に近づき、尻尾の裏側を撫でる。  
「ひゃん!?ク、クラッズちゃん?」  
突然の刺激に、クラッズはヒューマンとのキスを中断し、肩越しに振り返る。  
「んっふふ〜。あたしもちょっと混ぜてね〜」  
 
クラッズはそのままドワーフの尻尾を持ち上げ、手を滑らせる。尻尾の根元を通り、肉付きのいい臀部を撫で、そして指がもう一つの  
穴に触れた。  
「きゃあ!?そ、そこはお尻の…!」  
「こっちも気持ちいいって知ってる?うふふ、二人とも気持ちよくしてあげるから」  
「や、やだやだぁ!!お尻なんてやだよぉ!!汚いよぉ!!」  
「さっき体洗ったでしょ?なら大丈夫じゃって!」  
「そうじゃなくって、クラッズちゃん、やめ…!」  
ドワーフの声には耳も貸さず、クラッズはゆっくりと指を突き入れる。途端に、ドワーフのそこがぎゅっと縮こまる。  
「やっ、い、痛い!クラッズちゃん、やめてよぉ!」  
「うあっ……すげえ締め付け…!」  
同時にヒューマンのモノも強く締め付けられ、思わず声をあげる。  
「あはは、ヒュマ君は気持ち良さそうじゃね。ドワちゃんは、もうちょっと優しくないとダメかな〜?」  
「優しくしなくていいから、やめてってばぁ!」  
やはりドワーフの言葉は無視し、クラッズは一度指を引き抜くと、自身の秘部に触れた。  
「んんっ……ふふ、こういうときは、女の子同士って便利じゃよね〜」  
自身の愛液をたっぷりと絡め、クラッズはもう一度ドワーフの尻尾を持ち上げる。そして再び、腸内に指を突き入れた。  
「んあぁ!!や……やだぁ…!」  
今度は滑りが良い分、ドワーフが痛がることはない。しかし体内に激しい異物感があり、彼女はそれから必死に逃れようと  
するかのように、顔を彼の肩に乗せるようにして、ヒューマンにしっかりと抱きついている。  
「どう、ドワちゃん?」  
「き……気持ちよくなんかないよぉ…!」  
「ほんとかな〜?抜くときとか気持ちいいでしょ〜」  
クラッズがゆっくりと指を引き抜くと、ドワーフの尻尾がビクッと震える。  
「やだっ……へ、変な感じするよぅ…!」  
「お、おいクラッズ、あんまりいじめちゃ…」  
「あ、ヒュマ君にもちょっとサービスしてあげるね。ふふふ」  
妖しく笑うと、クラッズは指の角度を変え、腹側を擦るように指を曲げた。  
「うあっ!?な、何だこれ…!?うっ……くあ…!」  
腸壁越しに自身を撫でられ、ヒューマンは感じたこともない快感に上ずった声をあげる。  
「どうヒュマ君?気持ちいいでしょ」  
「くぅ……あ、ああ……すげえ、気持ちいい…!」  
「でしょ?ふふ、ヒュマ君は気持ちいいって、ドワちゃん」  
「うぅ……ヒューマン、君…!」  
今まで肩に顎を乗せていたドワーフが、不意にヒューマンの胸へと顔を埋める。荒い吐息が肌をくすぐり、ヒューマンとしては悪くない。  
 
「ド、ドワーフ、大丈夫か?」  
「……ふーっ……ふーっ…!」  
クラッズがいくら指を動かそうと、ドワーフは何も言わない。それまで嫌がっていたにも拘らず、ただじっと耐えるばかりである。  
ややあって、クラッズはその理由に気付いた。  
「ドワちゃん、ヒュマ君が気持ちいいって言ったから、我慢してるんじゃね?」  
「……ん…!」  
クラッズに言われると、ドワーフは恥ずかしそうに、顔をヒューマンの胸に押し付けた。  
「かわいいのぅ〜、いじらしいのぅ〜!ドワちゃんのそういうところ、あたし大好きじゃよ!」  
言いながら、クラッズは指を二本に増やす。さすがに少し痛かったらしく、ドワーフは思わず尻尾を下げようとする。  
「うあぁ…!」  
「ごめんごめん、ちょっと痛かったよね。これ以上は無理しないから、安心して」  
慎重に指を動かす。引き抜くときは、焦らすようにひどくゆっくりと。突き入れるときは、少し速く。クラッズの指が動く度に、  
ドワーフの口から熱い吐息が漏れる。  
「ふあ……ぁ…!」  
「ドワちゃん、反応変わってきたね〜。ほら、ヒュマ君も」  
「ぐっ……くぅ…!」  
時折、中からヒューマンのモノを撫でる。腸壁越しに感じるクラッズの指がたまらなく気持ちよく、撫でられるたびにヒューマンは  
抑えた声を上げる。またドワーフにも、体内を擦られる刺激が伝わり、尻尾がビクリと跳ねる。  
ほとんど腰は動かしていないものの、繋がった状態でなお加えられる快感に、二人はあっという間に上り詰めた。  
「うぅ……ドワーフ、出そうだ…!」  
「や、やだっ……わ、私、お尻でぇ…!う、あ……やああぁぁぁ!!!」  
悲鳴に近い嬌声が上がり、ドワーフの体が仰け反る。同時に、膣内が彼のモノをさらに奥まで引き込むように蠢動し、強く締め付けた。  
「うあっ!中が……ぐぅ、もう出る!」  
ドワーフの腰を掴み、思い切り腰を突き上げるヒューマン。直後、彼はドワーフの体内に精液を注ぎ込んだ。  
「で……出てるよぉ……私の中にぃ…」  
二度、三度とモノが跳ね、その度に熱い精液が流し込まれる。最後に、ヒューマンは一旦腰を引き、一際強く腰を押し付ける。  
そうして最後の一滴を彼女の体の一番奥に注ぐと、二人は大きく息をついた。  
「ふふふ。二人ともエッチじゃったよー。ドワちゃん、気持ち良さそ」  
うつむき、荒い息をつくドワーフの背中に覆い被さり、クラッズは満面の笑みを浮かべる。  
 
「はぁ……はぁ……もぉ、クラッズちゃんてばぁ…!」  
「怒らないでよ〜。気持ちよかったでしょ?」  
「そ、それは……でも、お尻はもう、やっ!」  
「しょうがないなあ。じゃ、今度またね」  
「だから、やだってば!」  
「あの、ドワーフ」  
その時、ヒューマンが口を開いた。  
「あ、なぁに?」  
「その、さ。このままもう一回、いいか?」  
尋ねた瞬間、ドワーフの体が、かあっと熱くなったのを感じた。そして、彼女は嬉しそうに頷く。  
それを受けて、クラッズがドワーフの体から離れると、ヒューマンは再び突き上げる。  
「んあっ!ヒューマン君…!あっ!」  
「ドワーフ、好きだ…!」  
相変わらず、その動きは遅い。しかし、二人ともそんなことはお構いなしに、とても気持ち良さそうな顔をしている。  
向かい合って座り、抱き合いながら時に頬を寄せ合い、時にキスを楽しみ、二人はまさに恋人との時間を楽しんでいるようだった。  
一方のクラッズは、二人がそんな状態なので、やはり入り込みにくく、どうやって混じろうかと考えていた。  
しばらくその手段を考え、やがてクラッズはポンと手を打った。  
「ねね、ヒュマ君」  
「ん?なんだ?」  
「ドワちゃん、こっちに向かせてほしいな。あたしだけ仲間外れは嫌じゃし」  
「ああ、悪い悪い。ドワーフ、ちょっと足、いいか?」  
「あ、うん。えっと、このまま?」  
「だいぶ濡れてるし、たぶん痛くないだろ」  
ヒューマンはドワーフの足を持ち上げ、繋がったままでぐるりと反転させた。ヒューマンのモノが中で激しく擦れ、二人は同時に  
声をあげた。  
「うあっ……中、ぐりってなったよぉ…」  
「くっ……今の、結構よかったな」  
「浸ってるとこ悪いけど、ドワちゃんちょっと足開いて。で、ヒュマ君はそれ広げる感じでよろしく」  
言われて、ドワーフは少し足を開き、ヒューマンはその内側に足を入れる。  
「あはは、繋がってるとこ丸見えじゃね」  
「や、クラッズちゃん、恥ずかしいよぉ…」  
「相変わらず恥ずかしがりじゃなー、ドワちゃんは。でも、そんなとこかわいいよ」  
クラッズはドワーフの前に出ると、優しく首を抱き寄せる。その意味を察し、ドワーフは目を閉じた。  
唇が重ねられ、小さな舌がドワーフの口内に入り込む。下から突き上げられつつも、ドワーフは声を抑え、必死にそれに応えようとする。  
時折、喘ぎを抑えきれず、舌を噛まれそうになる。クラッズはその度に素早く舌を引っ込め、うまく避けていた。しかし、やはり  
常に気を張っていなければならず、些か落ち着かない。少し名残惜しい気はしたものの、クラッズはそっと唇を離した。  
「んぁ……ごめ……あっ!あんまりうまく、んっ!できなくって…!」  
「いいよいいよ。頑張ってくれるだけでも、あたしは十分嬉しいから」  
クラッズの手が、ドワーフの胸に触れる。  
「あっ…!」  
途端に、ドワーフは胸を手で覆ってしまった。  
「あ〜、胸隠さないでドワちゃん。……あ、ヒュマ君、ドワちゃんの手、掴んじゃって。そうすれば結構激しくできるよー?」  
「……ドワーフ、悪い」  
ヒューマンはドワーフの手首を掴むと、自分の方へ引き付け、激しく突き上げる。  
 
「うあっ!?や、やだぁ……こんな、格好…!ああっ!あんっ!」  
自然と体が仰け反る形になり、なおかつヒューマンの激しい責めに、ドワーフは全身の毛を膨らませて恥ずかしがる。  
「ヒュ、ヒューマンくぅん…!うああっ!あっ!あっ!こ、こんなのダメぇ…!」  
「悪いドワーフ。けど、頼むから尻尾で抗議するな」  
ドワーフの尻尾が、ヒューマンの腹をバンバンと叩いている。別に痛くはないのだが、抜け毛が舞い上がり、ヒューマンの口に  
入りそうになっている。  
再び、クラッズがドワーフの胸に手を伸ばす。突き出された双丘に手を触れ、艶のある毛をそっとなぞる。やがて、そこに確かな  
突起の存在を感じ、クラッズは笑った。  
「あうぅ…!」  
「お、乳首発見〜。ふふ、こうやって探すの、楽しいんじゃよね〜」  
言いながら、クラッズはそこに顔を近づけ、周辺の毛を掻き分けると、乳首にちゅっと吸い付いた。  
「やん!ク、クラッズちゃんん…!」  
ちゅうちゅうと音を立て、クラッズは強く吸い上げる。先端を舌で転がし、甘く噛み、そのまま丁寧に舐める。舌が一撫でする度、  
またヒューマンが突き上げる度、ドワーフは甲高い喘ぎ声を漏らす。  
「あく…!んっ!やっ、もう……二人とも、激しくしないでぇ…!わ、私だけイッちゃうよぉ…!」  
「はぁっ……はぁっ……ドワーフ、俺ももうちょっとで…!」  
二人の言葉を聞くと、クラッズはドワーフの胸から口を離した。  
「ぷはぁ。もう、二人ともイキそう?……ふふ〜ん、なら、あたしが手伝ったげるっ!」  
クラッズはにんまりと笑い、ゆっくりと身を伏せた。そして、二人の結合部に顔を近づけると、そこにフッと息を吹きかける。  
「やんっ!ク、クラッズちゃん、何を…!?」  
ドワーフの言葉には答えず、ただ彼女を見上げてにっこり笑うと、クラッズはヒューマンのモノに舌を這わせた。  
「うあっ!?ぐっ…!!」  
舌をいっぱいに出し、唾液をたっぷり絡めると、それを押し付けるように這わせる。そして結合部を通り、そのままドワーフの  
最も敏感な突起を舐め上げた。  
「ふあぁっ!!クラ……クラッズちゃん、そんなのぉ!!うああ!!ダメ、それ強すぎるよぅ!!」  
「ぐぅ…!クラッズ、おいっ…!!」  
二人の切羽詰った声を、クラッズは心地良く聞いていた。そしてさらに強く、丁寧に舐め始める。  
ヒューマンのモノに付いた愛液を舐め取り、代わりに唾液を絡める。ドワーフの陰核を舌全体で舐め、突付き、時には軽く  
吸い付いてみせる。  
「ぐ……うあっ…!も、もう限界だ!!」  
「ダメ!!もうダメぇ!!!クラッズちゃんもうやめてぇ!!」  
止めとばかりに、クラッズはドワーフの襞を舌で優しく開かせ、ヒューマンのモノと同時に舐めた。途端に、二人が同時に声をあげる。  
「くあっ……ドワーフ、出る!」  
「やぁっ!!頭、真っ白にぃ!!!ダメ!!やだ!!私っ……あ、あ、ああああぁぁぁ!!!」  
反らされた体をさらに大きく仰け反らせ、ドワーフの体が激しく震える。そんな彼女を一際強く突き上げ、ヒューマンは彼女の中に  
二度目の精を放った。しばらくして、ヒューマンが僅かに腰を引くと、激しく掻き混ぜられて泡立った精液が、二人の結合部から  
ゴボッと溢れてきた。  
 
「うっ…」  
不意に、クラッズが顔をしかめて体を引いた。二人が達した後も結合部を舐めていたのだが、ヒューマンが腰を引いたときに、  
彼の精液を舐めてしまったのだ。彼のことも嫌いでないとはいえ、男相手の性行為は彼女にとって不快以外の何者でもない。まして、  
モノを舐めるのならともかく、精液を舐めるなど、例え彼に頼まれたってしたい事ではない。  
口の中にある生臭くて粘ついた液体の感触に、クラッズは今にも泣きそうな顔になってしまう。が、何を思いついたのか、  
その顔にふと笑顔が浮かんだ。  
ヒューマンはさすがに疲れたらしく、そのまま仰向けに倒れている。その彼の上に、ドワーフも荒い息をつきながら仰向けに寝ている。  
既に結合部は離れ、ドワーフの秘部からはまだ精液が零れ落ちている。  
そんな彼女に、クラッズはそっと顔を寄せた。  
「どわちゃん」  
やや舌足らずの口調で、クラッズが話しかける。  
「はぁ……はぁ……はぁ…………な……にぃ…?」  
「ちょっと、くちのなか、きもちわるくって……きれいに、してくれる?」  
返事を待たず、クラッズはドワーフの唇を奪った。舌を絡めると、ドワーフはすぐにその異質な味と臭いに気付く。一瞬置いて、  
それが何であるのかを悟ると、ドワーフはむしろ積極的に、クラッズの舌を舐め始めた。  
「んうっ!?ふぅ……う…!」  
「ふ……んん……はふ…」  
クラッズの小さな舌を、歯を、口蓋を、長い舌で丁寧に舐めていく。その動きに、クラッズは圧倒されるばかりだった。  
彼女の口内にあるヒューマンの臭いを、丁寧に舌で拭い取る。やがて、彼の臭いがすっかり消えてしまうと、ドワーフは口を離した。  
仕掛けた方のクラッズも、うっとりした表情で体を引き、ドワーフの顔をじっと見つめる。  
「嬉しいな、そんなにしてくれるなんて」  
「だって、クラッズちゃんだし、ヒューマン君のだもん…」  
「ヒュマ君、ちょっと疲れてるみたいじゃし、今度はあたしが、ドワちゃん気持ちよくさせてあげる!」  
「あっ…!」  
ヒューマンの上からドワーフを引き摺り下ろすと、クラッズは彼女の耳を優しく噛んだ。  
「やん……耳はぁ…」  
左手ではドワーフを抱き寄せ、右手を彼女の背中に回す。そのまま下へと滑らせ、尻尾に触れると、ドワーフの体がピクンと跳ねる。  
「あぅ…」  
さすがに疲れているらしく、その反応はやや鈍い。それでも、クラッズの的確な責めは、ドワーフにしっかりと快感を与える。  
耳を甘噛みし、尻尾を扱くように撫でる。付け根をグリグリと刺激してやると、ドワーフは荒い呼吸の合間に、甘く鼻にかかった  
喘ぎ声を漏らす。  
「はぅ、ん…!クラッズちゃん…!」  
「疲れてるでしょ?じゃから早めに、イかせてあげる」  
耳から口を離し、左手でドワーフの胸をまさぐる。そして毛に埋もれた乳首を探り当てると、今度はそこに吸い付いた。  
「あっ!ま、またそこぉ…!んっ!」  
強く吸いながら先端を軽く噛み、舌先で突付く。右手では変わらず尻尾を撫で、左手は腹を撫でながら、少しずつ下へと下がっていく。  
やがて、敏感な突起に指が触れ、途端にドワーフの体がビクリと跳ねる。  
「うあっ!クラ……あっ!あっ!」  
「ぷふぁっ。ほんとは舐めてあげたいんじゃけど、ヒュマ君のがね……じゃから、指で我慢してね」  
精液で満たされた中には指を入れず、クラッズはじっくりと周囲を解し、突起を優しく撫でる。尖りきった先端を指の腹で撫で、  
爪の先で弾き、摘み、再び優しく撫で回す。口では相変わらず胸を吸い、右手も変わらず尻尾を撫でる。  
 
「あっ……く、ぅ…!ん……うあっ!!」  
ヒューマンの行為と違い、純粋に快感のみを与えるための動き。既に何度も体を重ねており、また同性ということもあって、クラッズの  
責めは的確である。徐々にドワーフの声が大きくなり、呼吸がますます荒くなる。  
「んんっ!ふ、あっ!クラッズ……ちゃん…!あっ!」  
「ふふっ。ドワちゃん、気持ちいい?」  
「ふあ……はぅ!……う、うん……気持ちいいよぉ…!」  
瞳を潤ませ、健気に答えるドワーフの姿に、クラッズの胸が思わずきゅんとなる。同時に、クラッズの中にも、全身が疼くような  
感覚が広がり始めた。  
「かわいい、ドワちゃん。ドワちゃん見てたらあたしも……ちょっと、濡れてきちゃった」  
出来るなら、一緒に気持ちよくなりたい。しかし彼女にしてもらうのは性に合わない。さてどうしようかと考えを巡らせていると、  
ヒューマンが体を起こす気配が伝わった。  
「お、ヒュマ君。大丈夫?」  
「ああ、何とか。お前達見てたら、またちょっとしたくなってきたぐらい」  
その言葉に、クラッズはピンと来た。何か思いついた時のにんまりした笑みを浮かべ、クラッズは言った。  
「あ、じゃあちょうどいいや!三人で気持ちよくなろ!」  
「三人で?」  
ヒューマンが聞き返すと、クラッズはドワーフから体を離した。  
「あん……クラッズちゃん…?」  
体を起こし、少し不満そうにドワーフが呼びかける。そんな彼女に、クラッズは笑いかけた。  
「ふふ。ちょっといいこと思いついたから、じっとしてて」  
「いいこと?あっ…」  
クラッズはドワーフを押し倒し、両足を自分の太腿で押さえて広げさせた。そして秘部を合わせ、ヒューマンに妖艶な笑みを送る。  
「ヒュマ君、この間に入れてみて。きっと気持ちいいよ?」  
ごくりと、ヒューマンが唾を飲む音が聞こえた。  
「い、いいのか?」  
「擦るだけならねー。でも、したくなってもあたしには絶対入れないでね」  
「こ……こんな格好、恥ずかしいよぉ…」  
「ほらほら、あんまりドワちゃん待たせちゃダメじゃよ。早くきてきて」  
見た目だけでも、なかなかに見応えのある光景であった。恥ずかしげな表情でこちらを見つめるドワーフに、誘うような笑みを向ける  
クラッズ。重ね合わせた秘部は、片や艶やかな毛並みの中に、先程出した精液を滴らせており、片やまるで幼い少女のように見える、  
ほとんど筋ばかりのような見た目にも拘らず、そこは透明な粘液で淫靡に光り、滑らかで柔らかそうな肌を持っている。  
その後ろに動き、クラッズの背中に覆い被さるように体勢を変える。彼女の肌が腹に触れ、ヒューマンの胸がドクンと高鳴る。  
ドワーフの体とはまた違う、体温が直接伝わる感覚は、また新鮮に感じる。  
「ん……ヒュマ君のお腹、当たってる…」  
「あ、嫌か?」  
「ん〜、今はいいよ。それより、早く」  
そう促され、ヒューマンはゆっくりと、二人の間に押し入っていく。  
「うあぁ……ヒューマン君のが、擦れるよぅ…!」  
「んっ……これ、結構いいかも…」  
二人の秘裂が押し広げられ、ヒューマンのモノにねっとりと愛液が絡みつく。開かれた秘唇から熱い体温が伝わり、ヒューマンは思わず  
呻き声を上げる。  
 
二人にとっても、思った以上に気持ちのいいものだった。秘部を擦られる刺激に、彼のモノが敏感な突起を擦り、その度にビリッとした  
快感が体に走る。そして目の前には、快感に熱い吐息を漏らす恋人の顔がある。  
「くっ……これ、すげえいい…!」  
「私……もぉ…!ヒューマン君、もっと擦ってぇ…!」  
「んんっ……ヒュ、ヒュマ君、激しすぎじゃよぉ…!」  
自然と、ヒューマンの動きは速く、激しくなっていく。先端が擦れるのが気持ちいいらしく、ヒューマンは亀頭部分で二人の割れ目を  
擦っている。彼女達にしても、そこが一番凹凸があるため、ヒューマンが動く度に強い刺激がある。  
ドワーフが甘い声で喘ぎ、尻尾をヒューマンの足に絡める。クラッズが慣れない刺激に苦しげな声を出し、未発達な肢体を震わせる。  
艶々した柔らかい毛の感触と、滑々できめ細かな肌の感触が同時に伝わり、それがまた強い刺激となってヒューマンを襲う。  
「あうぅ…!ヒューマンくぅん……クラッズちゃんん…!」  
「うあっ!はっ!ドワ……ちゃん…!」  
二人はしっかりと抱き合い、どちらからともなく熱いキスを交わす。強く唇を吸い、激しく舌を絡めあう二人の姿に、ヒューマンも  
強い興奮を覚える。何より、二人をそうさせている理由の一つが、自分の動きによるものなのだ。  
「くぅ……あ…!やべ、出そう…!」  
「うぁ、あん!いいよぉ……いっぱい、出してぇ…!」  
「うくぅ…!ヒュ、ヒュマ君、もうちょっとで、あたしもイけるからぁ…!」  
クラッズが抗議するように言ったが、もうヒューマンは限界だった。動きがさらに速くなり、もはや先端のみならず、全体を使って  
二人の秘裂を擦っている。  
「う、ぐ……ぁ…!わ、悪りい、もう無理っ…!うあ!!」  
最後に思い切り突き入れ、ヒューマンは二人の体に精液をぶちまけた。三度目にも拘らず、その勢いは凄まじく、ドワーフの上にいる  
クラッズの腹にまで白濁した液体がかかっていった。  
「んあ……ヒューマン君のが、出てるぅ…!」  
「あ、熱い…!ヒュマ君のが……かかっちゃったよぉ…」  
「く……ふぅ…」  
最後まで出し切ると、ヒューマンは二人の間から、ゆっくりと引き抜いた。さすがに限界らしく、ヒューマンは再びベッドに倒れる。  
一方の二人は、体にかけられた精液をそれぞれ見つめていた。ドワーフは陶然とした顔だが、クラッズはとても困った表情をしている。  
「うえぇ……下じゃなきゃかからないと思ったのにぃ……それに、これじゃ生殺しじゃよぅ…」  
ともかくドワーフの上から離れ、クラッズは困りきった顔で腹に付いた白濁を見つめている。そこに、ドワーフがのそりと体を起こした。  
「……クラッズちゃん…」  
「ん?ドワちゃん…?」  
ドワーフはゆっくりと、クラッズの腹に顔を近づける。何をするのかと訝しむ間もなく、ドワーフは彼女の腹に舌を這わせた。  
「ひゃ!?ド、ドワ……ちゃ…!んあ!」  
愛おしむように、ドワーフは舌全体で丁寧にクラッズの腹を舐める。そして、そこに付いた精液を、丁寧に舐め取っていく。  
「んっ……んむ……きれいに、してあげる」  
「ドワちゃっ……そんなっ……ひゃう!んっ!あっ!」  
ドワーフが、自分の体を舐めている。きれいにしてくれている。そう思うだけでも、クラッズの中に凄まじい快感が湧きあがり、  
同時に腹を舐める舌の感触が、強い刺激を生んでいる。  
 
本来なら、どういう形であれ、責められるのは好きではない。しかし、ただでさえ達しそうになっていたうえに、彼女の舌は温かく、  
そして優しく、気持ちがよかった。  
「ここにも、飛んじゃったね」  
「やっ!だ、ダメぇ!おっぱい舐めちゃ……んああっ!!ドワちゃっ……ああっ!!うああぁぁ!!」  
―――このままイかされるのも、悪くないかなぁ…?  
一瞬そう思ったが、しかしギリギリの一線で、彼女はその考えを否定する。それでも、この快感は捨て難い。瞬間的に考えを巡らせ、  
クラッズは手を自分の秘部へと這わせた。  
「ドワちゃん……もっと、もっと舐めてぇ!あ、あたし、もうちょっとでっ……い、イキそうでっ…!」  
乱暴に指を突っ込み、無理矢理昇り詰めていく。自身での快感が加わったことで、辛うじてドワーフの快感で達するのではないという  
言い訳が作り出される。  
クラッズの言葉に応えるように、ドワーフは舌全体を使って、彼女の腹をねっとりと舐め上げた。その刺激が、止めとなった。  
「ドワ……ちゃ…!う、あ、ああ、あああぁぁっ!!!!」  
真っ赤になった体を弓なりに反らし、ビクビクと激しく震わせる。やがてその体がベッドに落ちると、クラッズは荒い息をついた。  
「はあっ……はあっ……気持ち、よかったぁ…」  
「よかった、えへへ。私も、クラッズちゃんにしてあげられて嬉しいな」  
「あ、で、でも、ほんとはしてもらうの、あんまり好きじゃないんじゃよ!?でも、今日は、今日だけは、ちょっと特別…」  
クラッズも一回で疲れ果ててしまったらしく、仲良くヒューマンの隣に寝転び、荒い息をついている。  
さすがに全員疲れ果てており、もうこれ以上しようという気は起きない。  
「ヒュマ君……平気…?」  
「……なんとか…」  
「二人とも、大丈夫?お風呂、入る?」  
「ドワちゃんは元気じゃのう……さすが、体力あるなー」  
「……みんな汚れてるし、風呂入るか。よし、そうしよう」  
そう言うと、ヒューマンはむくりと体を起こした。  
「三回も出してて、よくそんな体力あるのぅ…」  
「お前は、元が体力ねえもんな。俺はまあ、ヒューマンだし、男だしな」  
「お風呂、三人で入る?」  
ドワーフが尋ねると、ヒューマンは苦笑いを浮かべた。  
「出来ればそうしたいけど、ここの風呂に三人は無理だ。俺は自分の部屋で入ってくるよ」  
「ん〜、そっかあ。残念だけど、しょうがないよね。じゃ、クラッズちゃん、一緒に入ろ」  
話がまとまったところで、ヒューマンは簡単に服を身に付け始め、ドワーフはぐったりしているクラッズを抱き上げる。  
「ドワちゃん、ありがとね…」  
「えへへ。体、洗ってあげるね。あ、ヒューマン君、寝るときはこっち来てくれる?」  
「ああ、そのつもりだよ。だから、鍵開けといてくれな」  
二人に笑顔を向け、ヒューマンは部屋へと戻って行き、ドワーフはクラッズを連れて浴室に向かう。そしてそれぞれに体を洗うと、  
再び三人で集まり、仲良く並んで寝る。  
特に、変わったことではない。多少の違いこそあれど、これが三人の、普段の生活であった。  
ブルスケッタの三人が戻れば、また冒険者としての日々が始まる。ならば、せめてそれまではという彼等の爛れた生活は、長くも短い  
一ヶ月ほど続くこととなった。  
 
 
一ヵ月後、明日にもブルスケッタから帰るという仲間の連絡を受け、三人はそれぞれに探索の準備を整えていた。クラッズは人形各種を  
丁寧に手入れし、ドワーフは喉の通りを良くするという名目でハニートーストを食べている。  
ヒューマンは実験室に向かい、愛用のシャドーバレルと純銀弾に、光と闇の属性をつけるための練成を行っていた。  
出来る限り、ここの主には会いたくないと思っていたのだが、その願いも虚しく、後ろから声がかかる。  
「あらぁ〜、久しぶりねぇ〜。おゲンコォ〜?」  
「う、ジョルジオ先生……ええ、まあ…」  
「もしかして、アタシに会いにきてくれたのかしら〜?」  
「いやいやいや、ちょっと練成に来たんですよ、練成に…」  
悪い先生だとは思わない。しかし、ヒューマンはどうにもこの人物が苦手である。ノームはなぜかここに入り浸っていたが、その神経は  
いまいち理解できない。  
「ところで、最近あなたのお友達、見ないわねぇ〜」  
「ああ、ノームの野郎ですか?あいつは今、フェルパーとディアボロスと一緒にブルスケッタの方に…」  
ヒューマンが言うと、ジョルジオの表情が僅かに変わった。  
「あら、そうなのぉ〜?ふ〜ん……ちょっと心配ねぇ」  
「え?心配?何がです?」  
「あらヤダ!アタシったらつい……まあ、いいわ。お友達なら、知っておいてもいいわね」  
ふう、と息をつき、ジョルジオはヒューマンに席を勧める。  
「教師がこんなこと言っちゃいけないかもしれないけど、あの子、相当な要注意人物なのよぉ〜」  
「え、あいつが?なんで?」  
「あなた、あの子が中立的な子だと思ってるでしょぉ〜?」  
特に何の疑問もなく、ヒューマンは頷いた。むしろ、そんなことを尋ねるジョルジオに、なぜそんなことを聞くのかという疑問を抱く。  
「そうよねぇ〜、確かに中立とも言えるんだけど……あの子ね、実はそうでもないのよぉ〜」  
「え、じゃあ実は善だとか…?」  
「中立って、普通は善でも悪でもない子のことを言うでしょ?でもあの子はね、善でも悪でもあるって子なのよぉ〜」  
「……は?」  
「善の考えを持ってるけど、同時に悪の考えも同じくらい持ってるって言えばいいかしら?それでどっちにも分類できないから、  
便宜上、中立ってされてるのよぉ〜。ま、実際誰とでもうまく付き合うから、間違ってるわけでもないわね」  
言われてみると、ノームはたまに平然と暴力を振るうことがあった。ヒューマン自身も、彼に暴力を振るわれた記憶がある。  
「はぁ……そんな奴なんですか…。あ、でも、それで何が心配って…?」  
「そこなんだけどね、あの子、あなたがいるから大人しくしてるって節があるのよぉ〜」  
「俺?なんで?」  
ヒューマンが言うと、ジョルジオの目がきらりと輝き、ヒューマンは気分が悪くなった。  
 
「これは乙女の勘なんだけどぉ〜、あの子、あなたが好きなのよ」  
「……はああぁぁぁ!?」  
「好きな子の前では、いい子でいたいと思うでしょぉ〜?だから…」  
「いやいやいやいやいや!!ちょっと待ってくださいよ!?いや、その、そもそも、俺もあいつも男じゃないですか!?」  
言ってから、ヒューマンは目の前の物体を眺め、少し絶望的な気分になった。  
「そうね、恋愛とはすこぉ〜し違うかもしれないわ。でも、あの子があなたを好きだってことは、まず間違いないわよぉ〜。それに、  
あの子きっと、アタシのいい教え子になるわぁ〜」  
その言葉の意味に気づくと、ヒューマンは本格的に気分が悪くなった。  
「……恋愛じゃないなら、まあいいんですが…」  
「限りなく近いとは思うのよねぇ〜。あの子のことだから、絶対口には出さないと思うけどぉ〜」  
ジョルジオは何だか楽しそうに笑い、不意に表情が変わる。  
「でも、ノームの子達って、どうやって性別決まるのかしら?」  
「……言われてみればそうですね」  
「もし依代で決まっちゃうなら、それって不幸よねぇ〜。もし女の子の心を持ってるのに、男の子の依代に入っちゃったら、それこそ  
不幸よねぇ。もっとも、あんまり気にしないのかもしれないけどぉ」  
どことなく含みのある言い方に、ヒューマンはすぐさま気付いた。つまり、ノームがそうだと言いたいのだろう。だとすれば、  
彼が実際にヒューマンを好きになっていたとしても、あまり不思議はない。  
「ま、まあ、それは本人に聞かないとわからないですよね、はは……えっと、そろそろ時間が時間なんで、俺はここで…」  
「あら、もう行っちゃうのぉ〜?またいつでも、アタシに会いに来てね」  
「き、機会があれば…」  
実験室を出ても、ヒューマンは何だか気分が重かった。仮にジョルジオの言葉が全て真実としたら、ただでさえ複雑な関係が  
より複雑化することは間違いない。また、少なくとも見た目が同性のノームに好かれていると思うと、あまり気分が良くない。  
とりあえず、その『好き』は友人として好き、の意味だと解釈する事にし、ヒューマンは重い足を引きずり、寮へと戻って行った。  
 
翌日。ブルスケッタに行っていた三人が戻り、一行は久々に全員が揃った形となった。こちらに残っていた三人は、すぐにでも冒険に  
行ける準備を整えていたのだが、ディアボロスが再び戦士学科に戻るということで、まだしばらく休むこととなった。  
学食では、ノームとヒューマンが軽食を取っていた。既に授業も終わり、あとは夕食まで何もすることがないため、学食で時間を  
潰しているのだ。  
「お前、何だか強そうになったなあ」  
「そりゃあ、僕達はずっと悪魔相手にトレーニングを積んでたんだ。今はもう、君にも負けないかもね」  
「恐ろしい話だな、おい」  
「それにしても、やっぱりここはいいね。ブルスケッタも悪くなかったけど、ここが一番落ち着く」  
「そうそう。お前、向こうで何かあったりしなかったか?」  
ヒューマンが尋ねると、ノームは怪訝そうな顔で彼の顔を見つめる。  
「……いや、別に。いきなりどうしてだい」  
「ああ、いや、別に深い意味があるわけじゃなくて……何もないに越したことないからな」  
「ご心配、ありがとう。けど、この通り全員無事さ」  
いつもの、口元だけの笑みを浮かべるノーム。どうにも、昨日のジョルジオ先生の言葉が引っかかる。  
「君こそ、何かなかったかい。またクラッズと喧嘩したりしてないだろうな」  
「まさか。仲良くやってるよ」  
「そうか、それならいいんだ。まあ、また何かあったら、仲直りの手伝いくらいはしてやるさ」  
「お前の手伝いって、なんか怖いな」  
その時、ヒューマンの頭にふと、ジョルジオ先生の言葉を確かめたいという欲求が生まれた。それに従い、ヒューマンは言葉を続けた。  
「けど、そう言ってくれるお前のこと、好きだぜ」  
「え」  
一瞬、ノームはぽかんとした表情でヒューマンを見つめ、次の瞬間、口元だけではない、満面の笑みを浮かべた。  
「あっははは。嬉しいなあ、冗談でも君にそんなこと言ってもらえるなんて。けど、ドワーフとかクラッズに嫉妬されたらたまらないぜ」  
「そ、そうか。はは…」  
「君は君の幸せがあるんだ。自分からクラッシュさせるような真似はやめてくれよ。それに、僕は君達のそういう姿を見てるのが  
好きなんだ。せっかくのシアターを壊されたら、僕も悲しい」  
たった一言で、ずいぶんと上機嫌になっている。だが確かに、彼の言う『好き』は、恋愛とは違うのかもしれないと、  
ヒューマンは思った。  
よく、彼は何かと劇に例える。そして、自らを観客と称している。恐らく、その通りなのだろう。言うなれば、ノームはヒューマンという  
役者の大ファンであり、その彼が幸せであれば、ノームも嬉しいのだろう。  
少なくとも、ヒューマンはそうなのだと思い込むことに決めた。  
「……ま、俺だって今の幸せを壊したくねえからな。そんな心配、必要ねえよ」  
「はは、それなら安心だ。さて、これ食べ終わったら、ドワーフとクラッズも探してみるか。久しぶりに会いたいからな」  
「手ぇ出すなよ〜?」  
「出すわけないだろ」  
いつも通りの、軽口を叩ける相手。彼が自分をどう思っていたとしても、その関係が変わるわけではない。余計なことは考えず、  
これからも普通の友達として接しようと、ヒューマンは思っていた。  
 
「お〜、フェル君。どうしたの?」  
「クラッズさん、久しぶりぃ」  
「もー、さん付けはやめてってば」  
「ごめんね。でも、その方が落ち着くんだぁ」  
相変わらず、見た目と違って非常におっとりとしているフェルパー。そんな彼が突然、部屋を訪ねてきたので、クラッズは少し  
驚きながらも彼を出迎える。  
部屋に入ると、フェルパーはふんふんと辺りの匂いを嗅ぎ始め、あらかたの匂いを嗅ぎ終えると、最後にふーっと息をついた。  
「……帰ってきたんだねぇ」  
「匂い確かめないと気が済まない?あはは、フェル君ってほんっとに猫っぽいなー。せっかく来たんじゃし、少し話でもする?」  
「うん、いいよー」  
とはいえ、普段からあまり接点のない二人なので、その会話は無難なものに終始している。大体の近況を話し終えると、話題も  
あまり出てこない。  
その時、不意にフェルパーの目つきが変わった。そして、虚空をじっと見つめ始める。  
「……フェル君?」  
「………」  
フェルパーは答えない。ただ一点をじっと見つめ、やがて視線がすうっと動く。しかし、クラッズの目には何も見えない。  
「……フェル君、フェル君っ!?何!?何が見えてんの!?何か見えちゃってんの!?」  
パッと、フェルパーが何かを掴むように手を伸ばす。クラッズの背筋に、冷たいものが走る。  
「フェル君〜!?」  
「……これ」  
不意に、フェルパーは握った手を差し出し、開いて見せた。しかし、やはり何も見えない。  
「……どれ?」  
「埃が飛んでたから、ちょっと気になったんだぁ」  
「………」  
超常現象的なものではないとわかり、クラッズは全身の萎むような溜め息をついた。  
「脅かさないで…」  
「あ、びっくりした?ごめんね」  
「あーもう……でも、よく猫が虚空見つめてるのって、別に霊が見えてるわけじゃないんじゃね…」  
「霊?」  
クラッズの言葉に、フェルパーは首を傾げた。  
「……ああ、あの向こう側が透き通ってる人のこと?」  
「……え?」  
再び、クラッズの背中に冷たいものが走る。  
「い……いるの…?」  
「僕はあんまり気にしないけど、結構いっぱいいるよ〜。肩にいっぱい乗っけてる人もいるし、その辺うろうろしてるのもいるし。  
ここだって、結構いっぱい…」  
「フェル君やめてええぇぇ!!!それ以上言わないでいいってばああぁぁ!!!」  
恐らく、自分は今後もフェルパーとあまり関わりを持たないだろうと、クラッズは心の中で思っていた。  
 
ディアボロスは一人で屋上に上り、柵にもたれて外を眺めていた。  
ブルスケッタでは戦士になれないため、こちらに来てすぐに転科手続きをした。なので、明日からまた戦士に戻るための授業が始まる。  
戦士に戻れば、この記憶も消えるだろうかと、ディアボロスはぼんやり思う。あの、忘れたくてたまらない、しかし忘れることの  
出来ない記憶。フェルパー以外の男に陵辱された、忌まわしい記憶。  
忘れてしまおうと努力すればするほど、記憶が強く蘇り、ますます深く刻み付けられる。その痛みに屈するような彼女でないとはいえ、  
やはりその記憶は辛い。  
柵にもたれ、大きく溜め息をつく。と、その耳に、何やら楽しそうな歌声が聞こえてきた。  
「幸せ〜探すよぉりぃは〜や〜く〜、作ればいーいーよーデンジャラ〜ス、それが私ら〜しい〜」  
その歌声は、屋上の入り口から聞こえている。そして少しずつ、こちらに近づいてくる。  
「ゆ〜め〜が〜、ひーらーくぅーこーのー場所〜でぇ〜……あ、ディアボロスちゃん、こんなところにいたんだ」  
「お前は相変わらずだな、ドワーフ」  
ドワーフはトコトコと歩き、ディアボロスの隣に並んだ。  
「お前は本当に、楽しそうに歌う」  
「うん、歌は大好きだもん。だからアイドルになったっていうのもあるんだよ」  
そう言って屈託のない笑みを向けるドワーフの顔は、今のディアボロスには眩しかった。  
「……ディアボロスちゃんは、元気ないね?」  
「ん……そうか?」  
内心どきりとしつつ、ディアボロスは務めて平静を装う。  
「うん、元気なさそうだよ」  
「……そうか」  
それっきり、二人は黙り込んだ。並んでしばらく外の景色を見ていたが、やがてドワーフが口を開く。  
「話したくない、話せないっていうことなら、聞かせてなんて言わないよ。でも、私が何か力になれるなら、何でも言ってね」  
「その気持ちだけで、十分さ」  
あえて理由を聞かず、ある程度の距離を置いてくれるドワーフに、ディアボロスは心の中で感謝した。根掘り葉掘り聞かれては、  
たまったものではない。  
それからまた、二人は外を眺めていた。そして再び、ドワーフが口を開く。  
「ねえ、ディアボロスちゃん。歌は好き?」  
「歌?嫌いではないな」  
「さっきも言ったけど、私は大好き。歌ってたり、聞いてたりするとね、その歌に合った気持ちになれるから、すっごく好き」  
何となく、その先の言葉は予想が付いた。恐らく、彼女は何か歌ってくれようとしているのだろう。  
「だからさ、元気にはなれないかもしれないけど……私の歌、聞いてくれると嬉しいな」  
「……それは構わない。さっきお前が歌っていた奴か?」  
ディアボロスがある程度の確信を持って尋ねると、ドワーフは笑った。  
「違うよー。元気ないときは、もっと違うのだよ」  
「……そう、か」  
「あのね、私は元気なくって、気分が沈んじゃうときはね、一回最後まで沈んじゃうの」  
「………」  
「もちろん、人によっても違うと思うけど……私は、空元気出すよりも、一回泣いてすっきりしちゃう方だなあ」  
「変わった奴だな」  
「だって、一回最後まで沈んじゃったら、後は上がるだけだもん」  
「……なるほど」  
それも面白い考えだと、ディアボロスは少し納得した。  
 
「だからね、ちょっと寂しくて、悲しい歌だけど……あ、もちろん嫌ならやめるよ」  
「いや、構わない。この際だ、私もお前の方法を、試してみようと思う」  
そう言うと、ディアボロスは初めてドワーフに顔を向けた。そこには、何とも寂しげな笑顔が浮かんでいた。  
「うん。それじゃあ……これ、エルフがよく歌ってる歌だけど、これは私も好きなんだ。じゃ、いくね」  
一度大きく息を吐き、呼吸を整えると、ドワーフは静かに歌いだした。  
「側にあると 見えなかった 温もりを今 感じてる…」  
普段の彼女からは想像も付かない、静かな声だった。種族の性質上、柔らかな歌声とはとても言い難いが、その分歌詞の一つ一つが  
重く心に響いてくる。  
エルフの歌う、柔らかく澄んだ歌声とは違う。技巧だけであれば、彼女がエルフに勝るはずもない。しかし、言葉に篭った力は、  
比べ物にならないほどに強い。  
自然と、彼女の歌声に引き込まれていく。その歌自体はディアボロスも知っていたが、今聞いているものほど心に響くものは  
初めて聞いた。知らず知らずのうちに、いつしかディアボロスも、ドワーフと一緒に一緒に口ずさんでいた。  
「振り向いても あなただけが足りなくて もう一度 あなたと歩きたい」  
歌い終え、最後の余韻が消えると、ドワーフはディアボロスににっこりと笑いかけた。  
「ディアボロスちゃんも、歌うまいね」  
「そ、そうか?他人に聞かせたことなどないから、よくわからないが…」  
「うん、上手だったよ。きっと、ディアボロスちゃんもアイドル学科いけるよ」  
「い、いやいや、それは遠慮しておくぞ。私は戦士として生きたいんだ」  
言ってから、ディアボロスは大きく息をついた。  
「しかし……お前のやり方も、なかなかいい方法かもしれないな。正直、気分は最悪に沈んだが、お前みたいな奴がいてくれるなら、  
また頑張れそうだ。ありがとうな」  
ドワーフにぎこちなく笑いかけ、ディアボロスは彼女の耳の裏を掻いてやった。ドワーフは一瞬気持ち良さそうに目を細め、すぐに  
おかしそうな笑顔を浮かべた。  
「……なぁに〜?」  
「え?……あ、ああ。すまん。つい、フェルパーにやってやってる癖が…」  
「あはは。二人とも、仲良しなんだね」  
「しかし…」  
もう一度、耳の裏を掻いてやる。付け根の厚くコリコリした感触と、ふさふさした体毛の感触が心地いい。  
「……ドワーフ、少しこうしてていいか?」  
「ん?いいよ〜。私も、何だか気持ちいいかも」  
許可が出たことで、ディアボロスはドワーフの顔をマッサージするように撫で始める。  
耳の裏を撫で、頭を撫で、頬や顎をもしゃもしゃと撫でる。ドワーフは何とも気持ち良さそうに目を細め、されるがままとなっている。  
そのうち、立っていると疲れるということで、二人はその場に座る。それでもまだ、ディアボロスはドワーフを撫でており、  
ドワーフの目は少しずつ細く、眠そうになっていく。  
やがて、ドワーフがディアボロスの太腿を枕にし、すうすうと寝息を立て始めたところで、屋上のドアがガチャリと開いた。  
 
「あ、ディアボロス、ここにいたんだぁ」  
「フェルパーか。どこに行ってたんだ?」  
「クラッズさんのとこ」  
フェルパーはドワーフと反対側に回り、ディアボロスの隣に腰を下ろした。  
「……寝ちゃってる」  
「この感触が気持ちよくって、つい」  
「毛並み、いいもんねぇ」  
そう言いつつ、フェルパーはディアボロスに甘えるように体を寄せた。  
「……お前も、してほしいのか?」  
「うん」  
「やれやれ……まあ、私もしたいと思ってたがな」  
片手を離し、空いた手でフェルパーの耳の裏を掻いてやると、フェルパーはゴロゴロと喉を鳴らし、気持ち良さそうに目を閉じた。  
そんな二人を腕に抱きつつ、ディアボロスは大きな安らぎを感じていた。  
辛い記憶を癒してくれようとしたドワーフ。いつも近くにいてくれるフェルパー。それに、その他の頼りになる仲間達。  
彼等がいてくれるなら、あの記憶を抱えたままでも、やっていける気がしていた。忘れようとしても、恐らくあの記憶は消えない。  
しかし、無理に消すこともない。その痛みを、和らげてくれる仲間がいる。いつになるかはわからないが、じきにその痛みにも  
慣れてしまうだろう。そうなれば、もう痛みはないも同然だ。  
「無理はしなくていい、か」  
改めて口に出し、ディアボロスは笑う。そう、無理に忘れようとすることもないのだ。記憶というものは、どんなに大切でも、  
どんなに辛いものでも、やがて風化していく。それを、彼女はただ待てばいいのだ。  
あの時は、彼女が生きてきた中で、最も辛い時間だった。だが、もうそれは過ぎ去った。あとは上るだけである。  
腕の中の二人を愛おしげに見つめながら、ディアボロスはずっとこの仲間達と歩いて行こうと、心に決めていた。  
 
辺りがすっかり夕闇に包まれても、ドワーフが帰らないということで、ヒューマンとクラッズはひどく心配していた。  
そんな二人を宥め、ノームは見当たらないフェルパーとディアボロスを探していた。あの様子なら早まることもないであろうが、  
やはり不安ではある。  
部屋を探し、学食を探し、校舎内を探し尽くし、最後に屋上に向かうと、誰かがうずくまっているのが見えた。  
「ん、そこにいるのはディアボロスかい」  
「その声、ノームか?よかった、ちょっと助けてくれないか?」  
ディアボロスの言葉に、ノームは急いで駆け寄った。が、その光景を見て、言葉を失う。  
「ぷ〜……ぷす〜…」  
少し鼻が詰まっているのか、ドワーフの寝息はそれこそ犬の寝息のようになっている。  
「くぅー……ゴロゴロゴロ……くぅー…」  
フェルパーはいつも通りである。時々聞こえる、喉を鳴らす音が安らぎを与える。  
「この通りで、動けなくなってしまったんだ……何とかできないか?」  
そして、その二人の体を膝に乗せ、すっかり困り顔のディアボロス。もはや、かける言葉もなかった。  
「……起こせよ」  
「だ、だって、それは気が引けるじゃないか…!ノーム、何とか起こさないようにどかせないか…?」  
「起こせよ」  
「ひどい、ひどいぞ…!こんな気持ち良さそうな顔して寝てる奴を起こすなんて、私にはできない…!」  
「起こせよ」  
結局、二人の「起こせ」「起こせない」の応酬は、ノームまで戻らず不安になった二人が探しに来るまで、延々と続くのであった。  
 

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