腕を引っ込めて膝に頭を預け、目を瞑りかすかに頬擦りをするフェルパーの紅い髪を、優しく撫でつける。  
彼が刻んだ肩の傷を魔法で治してから、もうずっとこの調子だ。  
どのくらい時間が過ぎたことだろう。フェアリーははめていた手袋を外し、頭頂部からうなじまでを素手でさすり続ける。  
「なあ、フェアリー。聞きたいことがあるんだ」  
今はすっかり落ち着きを取り戻し、フェルパーは会話が出来るまでになっていた。  
「ん?なあに?」  
「フェアリーはさ、その、ヒューマンとか……気にならないのか?」  
二股に分かれたフェルパーの尻尾が、先のほうだけ小さく揺れる。  
フェアリーという種族は、神を崇める聖職者のように、ヒューマンを尊ぶ傾向にある。  
これまでの友人関係を改めて思い起こした。そういえば、自分から積極的にヒューマンと関わろうとした覚えは、あまりない。  
「ああ。だってあのひとたち、怖いんだもの」  
フェルパーが首を捻り、先程まで床を眺めていた顔をこちらに向けた。  
意外そうな、ひどく驚いたような表情にも、どこか愛嬌がある。  
「怖い?ヒューマンがか?」  
「図書室でちょっと調べると分かるけど、伝説だとか神話とかにも、やけに出番のある種族じゃない?」  
「あ、ああ。そのくらいは、知ってる」  
「神様に敬愛されてるとか言うけど、悪いこともたくさんした種族でしょ?なんかそのへんが、おっかなくて」  
ひと呼吸置いて、「ディアボロスより天罰下される回数も多いし」と付け加える。  
他のフェアリーがどうしてああもヒューマンに盲目なのか。幼少より疑問に思っていることだが、いまだによく分からない。  
「じゃあ……オレは、どうして平気なんだ?」  
「え?」  
「昔からそうだった。オレは暴れだしたら見境もなくなるのに、フェアリーは怖がらなかった……なんでだ?」  
フェルパーの顔色は変わらない。さっきの質問と同じように、下心のない素朴な疑問なのだろう。  
「うーん。なんでだろうね。あたし、危ないと思ったらさっさと逃げちゃうのに、フェルパーが暴れてるのは平気なの」  
根拠と呼べるものは思いつかなかった。昔から長い付き合いだが、今日まで結論には至っていない。  
しかしフェアリーの中では、たとえフェルパーが両手に刃物を構えていたところで、ちっとも怖くないのだ。  
同じことをヒューマンがしていたら、荒くれの大男と、いうことを聞かない子供ぐらいの差を感じる。  
「ふうん。なんでだろう?どういうことなんだ?」  
「分かんない。だけど、フェルパーが暴れてるの見てても、逃げようと思わないの。不思議だね」  
「本当に愛する者が錯乱した場合、その隣人は彼に、彼女に、追放よりも理解を求めるだろう」  
聞きなれた声だ。十年、いいや、もっと前から、耳に馴染みがある。  
視線を持ち上げて正面を見る。開いた引き戸に寄りかかり、バハムーンが部屋を覗いていた。  
「まーた始まった。それ、誰の言葉?」  
「周囲の反対を押し切って、セレスティアを嫁にとったディアボロスの言葉だ。やっこさん、発明家だったかな」  
バハムーンはコーヒーカップを二つと、香ばしい匂いのするバスケットを手にしている。  
 
「まだなんも食ってないんだろ?軽くでいいから、腹に入れときな」  
教室の床に置かれた籠には、フライドチキンとホットケーキと、少々のおにぎりが詰められていた。  
片手に持った二つのコーヒーを、ベージュ色のものはフェルパーに、ブラックはフェアリーに、それぞれ手渡す。  
「詳しい話はエル子から聞いたぜ。派手に暴れたそうじゃねぇか」  
猫舌にも程よいミルクコーヒーをすすったフェルパーの耳が、しゅんと垂れた。  
「なあ……そのことなんだけどさ」  
「最後まで聞けや。フェル男、てめぇクラ坊に、二人だけでも逃がせって言われたんだってな」  
しょげるフェルパーに構わず、バハムーンは台詞をさえぎって質問する。  
腕組と仁王立ちがやけに様になるのは、学科のせいか、種族のせいか。  
「あ、ああ……でも、オレは……」  
「俺達は六人パーティだ。思い出してみろ、あの時不意打ちをくらってから、誰がどんな順番でやられた?」  
「えっと、ディアボロスと、バハムーンと、クラッズとフェアリーと……あ」  
指を折って数えていたフェルパーの猫耳が起き上った。  
「全部で四人。6引く4は2だ。ほらな。約束守れてるじゃねぇか」  
にっと歯を光らせて笑うバハムーン。ランプの薄灯りでも分かるほど清潔な白だ。  
よく見ると、制服の襟首には、ぐるぐると真新しい包帯が巻かれている。  
「いいか?てめぇはてめぇが思ってるほど、頼りない奴でも、弱っちい奴でもねぇ。もっとてめぇに自信を持ちやがれ」  
「……そう、なのか?」  
「エル子なんか、おかげで生き残れたって言ってたぞ。クラ男も、フェル男ならやってくれると思ったってよ」  
そこまで喋ってから、バハムーンはバツの悪そうに頭をかいた。  
「け。説教なんざ、俺のガラじゃねぇや。でもよ、この場にいない後三人、皆てめぇを待ってんだぞ」  
ぶっきらぼうに吐き捨て、そっけなく背中を向けたらそれ以上語らず、バハムーンは夜の校舎に消えて行った。  
心配かけやがって。さっさと帰ってこい。赤い翼と後ろ姿がそう続ける。  
「……ほらね。フェルパーがどんなに荒れてても、みんな怖がらないんだよ。いつもの、優しいフェルパーを知ってるから」  
「そうか……そうかもな」  
フェアリーはバスケットの中から、フェルパーの好物であるフライドチキンを取り出し、口の前まで持っていく。  
「お腹すいたでしょ?さ、お食べ」  
差し出されたフェアリーの手の上から、フェルパーは肉にかじりつく。最初のひと口は遠慮がちだった。  
そのうち、両手でそれを掴み取り、大口を開けてがっつき始める。よほど腹が減っていたのだろう。  
「ほらほら、そんなにあわてないの。誰もとらないから、ゆっくり食べなさい」  
またフェルパーの頭を撫でてやる。癖の強い頭髪が指に絡みついた。  
 
バスケットに入っていたおにぎりとフライドチキンをすべて平らげると、フェルパーは再び膝枕に寝転がった。  
先程と比べて満足げな表情を浮かべており、フェアリーも安堵する。  
もう一度、赤毛の短髪を指でなぞる。心地よさそうに、猫耳が反応した。  
「……ずっと前」  
「え?」  
「ずっと前にも、こんなふうにフェアリーが頭を撫でてくれたことがあった」  
フェルパーは薄眼を開けていた。視線の先に、自分の過去を投影されているようであった。  
「確かあの時は、オレはケンカしたすぐ後で、フェアリーにやつあたりした。ひどいこと、さんざんやった気がする」  
撫でていたフェアリーの手が止まる。その時の様子はすぐに思い出された。  
つい先日、その頃の夢を見ている。フェルパーは、どこまで覚えているのだろう。  
「そういえば、そんなこともあったね。フェルパー、あたしに何やったか、覚えてる?」  
「……あんまりよく覚えてない。だけど、めちゃくちゃひどいことしたってのは、覚えてる」  
むくりとフェルパーの頭が持ち上がった。両手を床に付き、上半身が起き上る。  
「そうだ。あの時だって、オレはさんざん暴れてから正気にもどって……フェアリーに、謝ってた」  
薄明かりの中でも、フェルパーの眼は黄金色に輝いていた。暗がりにも目が慣れてきて、尻尾の先までしっかり見える。  
すっかりおとなしくなったフェルパーは、目尻が垂れ、申し訳なさそうな表情だった。  
「めいっぱい怒られたけど、最後にはオレのこと許してくれて……やっぱり頭を撫でてくれたよ」  
「ほんとフェルパーは、昔っからそう。頭撫でてあげると、おとなしくなるよね」  
「だって、いつも撫でるのは、フェアリーだったろ?叱るのも、なだめてくれるのも、最後は、隣にいたフェアリーだった」  
ふっと、フェルパーの口元が緩んだ。ほとんど見たことがないような、深く穏やかな雰囲気を纏う。  
「しょっちゅう迷惑かけて、ごめんな。けど、フェアリーに優しく撫でてもらうのが、何より嬉しいよ。ありがとう」  
突然、左の胸が強く脈打った。急激に鼓動が早まり、不意に息がつまって続かなくなる。  
大事にしていた飼い猫に、ご主人様大好きです。なんて、いきなり告白されたような。  
満面の笑みと、柔らかい囁き。徐々に呼吸が回復する中で、心の枷が音を立てて外れた。  
「ねぇ……フェルパー」  
こんな甘い声が出せたものかと、自分の喉を疑いたくなる。  
ずいと詰め寄られたフェルパーも、あっけにとられているようだ。  
「頭よりも気持ちイイところ……撫でてあげよっか」  
くすぐったいくらいの力加減を意識して、子猫の股に手を伸ばす。  
 
「ふぇ……フェアリー?ん、んむっ!」  
何か言おうとしたのだが、フェアリーは唇を重ねて黙らせる。ふわっと女の子の甘い匂いがした。  
幼馴染とキスした覚えなど、そういえばフェルパーには全くなかった。舌を絡める、過激な口づけ。  
頬に触れていないもう片方の手は、依然として股間を弄っている。  
「んふ、むぅん……ちゅっ、ぴちゃ……ぷはっ」  
息が続かなくなったらしく、フェアリーのほうから顔を離した。  
糸を引いている口元を指でなぞって、いたずらに、得意げに笑う。  
「ふふっ……どう?女のキスよ」  
「フェアリー?なに、なんのつもりだ?」  
「もちろん、フェルパーを誘惑するつもり。ほらほら、もうこんなになってるよ」  
いつの間にか、ズボンを下ろされていた。すでに充実した陰茎が、フェアリーの手の中で脈打っている。  
「あ、こ、これは、フェアリーが」  
「あっつくて、硬ぁい……ほら、こうすると……気持ちイイでしょ?」  
反論させる間も与えず、手にした肉棒をしごき始める。時折手を止めて唾液を垂らし、根元から先までの上下運動。  
フェアリーの手淫は柔らかく、涎が水っぽく音を立てる。久しくしなかった自慰よりも格段に良い。  
「うっ、くぅ……フェアリー」  
「あははっ、どんどんおっきくなってるね……もっともっと、よくしてあげる」  
うわ言のように、彼女の名を呟く。フェアリーはモノを刺激しつつ、猫背のフェルパーの後ろに回る。  
「出そうになったら、ガマンしちゃダメ。フェルパーの弱いトコなんて……全部知ってるんだから」  
息のかかる距離で囁いたフェアリーは、そのまま舌を伸ばして耳に触れた。  
途端にフェルパーの身体はびくんと跳ねて、全身に電流が走ったようになる。  
「ふぁ!?フェアリー、ダメだ、耳はあっ!」  
「フェルパーのオチンチン、ビクビクしてるよ。ね、もうイキそう?イッちゃいそうなの?」  
耳をなぞりながら、より強く激しく指先で幹を摩擦するフェアリー。もはや我慢も限界だった。  
「ああっ、フェアリー!イッ、イクうっ!」  
ひときわ大きく一物が膨張し、次の瞬間には白濁を放っていた。その間も、フェアリーの手は止まらない。  
昇天して肢体をびくつかせるフェルパーを、フェアリーはただ眺めるばかり。  
「いっぱい射精たね……あは、元気元気」  
射精が終わっても萎えないフェルパーの亀頭を、フェアリーが指先で軽くつついた。  
 
「うああっ!フェアリー、それもイイっ!」  
一度は果てたフェルパーのペニスを、今はフェアリーが口に含んでいる。  
唾液をたっぷりとため込んでの口淫が、まだまだ行為に耐えうるだけの硬度とサイズを呼び戻す。  
「ちゅぷ、ちゅく、んぷ、くぷっ。んはっ、フェルパーは、手でするよりも、口でするほうが好きなのかな?」  
「んっ、なんで?」  
「フェルパーの、さっきより熱くて硬いよ?あむっ、じゅぷ、じゅくっ、んふぅっ」  
先端部を咥え、頭ごと動かしての強烈な吸いつきでむしゃぶりつく。  
じゅぽじゅぽと淫猥な音が響き渡り、五感のすべてを侵されるようだ。  
フェアリーは時折、上目使いで視線をよこし、それがぞくぞくとオスの本能を刺激する。  
「ああ〜イイっ。フェアリー、オレまた射精ちまうっ!」  
「んふ、いひよほっ。いっふぁい、らひふぇっ」  
もごもごと口にしたまま返事をしつつ、フェアリーは玉袋を揉み解す。  
亀頭を舌先でほじくりながら、竿を激しく摩擦してきた。  
「あっ、また、またイクっ!フェアリー、口に……ううっ!」  
反射的にフェアリーの頭を押さえつけ、喉の奥まで侵入して射精する。  
己の分身がのたうつたびに、精子を吸い出そうとするかのように、フェアリーが強く吸い上げてくる。  
たまらず二度三度と大きく痙攣し、数秒間の長い絶頂が続いた。  
「はぁ、はぁ……ごめん、フェアリー。自分でも無意識に、突っ込んじまって」  
「ん……ちゅうぅ、ちゅぱっ。あははっ。喉の奥まで、マーキングされちゃった」  
ぺろりと舌を見せて、軽口をたたく。相当な量を発射したつもりだが、全部飲みこんでしまったのだろうか。  
「二回目なのに、いっぱぁい……おまけに、まだまだ元気だね」  
今度は先ではなく峰をつつかれる。全く衰えていないようで、はじかれてもすぐ元の位置へと落ち着く。  
自分のモノとはいえ、底なしにすら思える精力が、少し恥ずかしい。  
「じゃあ……本番しちゃっても、いいかな」  
「え?本番って……フェアリー?」  
目の前でフェアリーはスカートをめくりあげ、今まさにパンティを脱ごうとしていた。  
ただ白いだけのように見える下着は、心なしか湿っているようでもある。  
尻を突き出し、フェアリーの指で開かれた亀裂からは、蜜がたっぷり滴っていた。  
「フェルパーのそれ、元気いっぱいのオチンチン、ここに頂戴」  
フェアリーの眼が、艶っぽくうるんでいる。  
 
腰に手を当てたところで、ふとフェルパーの動きが止まる。  
「どうしたの?」  
「……いいや。気のせいかもしれないけど、前にもこんなことがあったような気がするんだ」  
ほとんど記憶にないことだった。異性との性行為など、これが初めてのはずである。  
フェアリーにはあきれられるかと思ったが、ふっと軽めな溜息の後には、意外な返事が待っていた。  
「ねえフェルパー、覚えてる?フェルパーがうんと子供だったとき、あたし、一回だけ襲われたことがあるの」  
いくつのとき、とは明確に示さなかったが、だいたい初等教育を受けていたころだと、フェルパーはぼんやり考えた。  
「襲われた?どういうことだ?」  
「うん。あたしね……フェルパーに、レイプされたことが、あるんだよ」  
視界が暗転した。フラッシュバック。当時の映像が新鮮に蘇る。  
あの日は同級生とケンカをして、取っ組み合いの末に、相手にだけひどい大ケガを負わせたのだ。  
現場から逃げ出し、ひとり物陰にうずくまっていたところを、フェアリーに見つかる。  
苛立っていたせいだろう。性に目覚めたばかりのフェルパーは、おもむろに彼女を……。  
「……あ……あぁ」  
間欠泉のように罪悪感と背徳感が噴き出してくる。どうにもしまらない、情けない声が出た。  
目の奥が煮えたぎり、叫びだしてどこかへ走り去ってしまいたい気持ちになる。  
「フェルパー、あのときのこと……まだ、覚えてたんだね」  
「フェアリー……オレは、オレはっ」  
金縛りにあっているらしい。足がすくみ、全く動けずにいる。  
やがて、フェアリーがゆっくり起き上り、フェルパーの頬へ唇が吸いついた。  
「あのときは、無理やりだったけど、犯されたのは下だけだったから。だから、さっきのが、あたしのファースト・キス」  
驚くほど穏やかなフェアリーの笑顔は、一筋の水滴で濡れていた。  
「あたしはもう、全然気にしてない。だから、今夜のこれが、あたしたちのちゃんとしたヴァージン……てことにしない?」  
今一度、フェアリーが秘部を突き出す。オスの性だろうか、女性器を目にするだけで、勃起は回復する。  
挿入部の位置を確認し、先端を当ててフェアリーの腰に手を添える。わずかな挿入でも吸い込まれそうだ。  
「……挿入るよ」  
「うん。フェルパー、来て」  
体重をかけ、一気に突き入れる。フェルパーの侵略を防ごうとする幕のようなものは、何もなかった。  
 
「んああっ!挿入った……フェルパーの、おっきいっ」  
「フェアリー……フェアリーの中っ……ぬるぬるが吸いついて、気持ちイイっ!」  
初めて行為に及ぶ男女は、きっとこんな感じであろう。  
一度は経験したこととはいえ、長年眠っていたその感覚は、あるいは初めてより具合がいいのかも。  
「い、イイよフェルパー……そのまま、動いてぇ」  
フェアリーが言いだすより少し早く、フェルパーはすでに動いていた。  
腰を引いて打ち付けるたびに、弾力ある尻が弾かれる音と、かき回される秘裂の水音がこだまする。  
一突きずつ、醜い過去の過ちや、後ろめたい理性が消えていく。  
「あっ、ああん、ふぁっ!フェルパーのオチンチンっ!あたしのオマンコにぴったりで、気持ちイイっ!」  
「凄いよ、フェアリーのアソコっ!グチャグチャで、アツアツで、からみついてくるっ!」  
「あはあっ!そこイイっ!もっ、もっと深くぅ!もっと激しく突き上げて!ああっ!」  
「フェアリー、キスしてっ!キスしてくれえっ!」  
フェルパーが叫ぶと、フェアリーが上体を起こして、ざらついた舌をほおばる。  
バックの体制のまま首元にしがみつき、アクロバティックな格好だ。  
「んっ、んん……っは、フェアリー、射精すときは、どこに射精したらいい?」  
「うぅんっ、中でいいよっ。今夜は特別……んあぅ!このままドピュッてさせたげるっ!」  
気のせいか、フェアリーのほうからも腰を突き出している感じがある。  
ビーストの精力にやられているのか、すっかり快楽におぼれているのか、フェアリーははしたなく喘ぎ散らす。  
普段の強気な笑顔に見え隠れする、堕落した甘い表情がたまらない。  
「フェアリー、気持ちよすぎて、オレまたイキそうっ」  
「いいよ。いっぱい、ドクドクしてえっ!あっ、あたしも、もうダメぇ!」  
淫らに催促されてしまっては、いよいよフェルパーは耐えきれない。  
ぞくぞくと昇ってくる射精感に合わせ、深く最奥へ突撃する。  
「うっ……射精るっ!」  
「ああぁっ!イクぅ!イクイク、イクうぅー!」  
今晩三度目に放たれたスペルマが、フェアリーの子宮へ注ぎ込まれていくのが、伝わったように思えた。  
 
最低限の事後処理もせずに、行為が終わった後の二人は、その場に寝転がっていた。  
「……フェアリーの、オマンコ」  
「なあに?」  
「……気持ちよかった」  
「あははっ。フェルパーのオチンチンも、凄かったよ」  
「また……シテもいいかな?」  
「う〜ん、毎日はダメよ。中毒になるといけないし、フェルパー元気だもんね。いい子にしてたら、またシテあげる」  
フェアリーは、相変わらず頭を撫でている。さんざん射精した後ということもあって、程よい心地よさ。  
心なしか、いつもより彼女の掌が暖かいようである。  
「今更だけど……ゴメン、フェアリー」  
それで許されるとは、あまり思わない。過去というからには、取り返しは付かない。  
謝ったそばから泣き出しそうになっているフェルパーは、自分が情けなくて仕方なかった。  
それでも、フェアリーはいつも通りの、ちょっと強気で、活き活きとした微笑みを見せた。  
「ちゃんと謝ってくれたから、そのことは許してあげる。そのかわり」  
言葉を区切った。何を言われるのだろうかと、少し身構えてしまう。  
「自分を大切にして。捨て身はいいけど、フェルパーがちょっと無茶するだけで、結構心配なんだから」  
眉が垂れていた。あきれながらフェアリーがたしなめるときは、いつもこんな顔になる。  
一瞬、あっけにとられたが、すぐ我に返って返事をした。  
「わかった。もうフェアリーを心配させるような無茶はしないよ」  
「そうして。あたしだけじゃない、バハムーンや他の皆も、あなたのこと心配しちゃうから。ユビキリゲンマンだからね」  
張り切って小指を繋ぐフェアリーともども、子供に戻った気がした。  
あの頃から、バハムーンとやんちゃをしていた。ディアボロスも一緒になって、四人でおやつを食べたりもした。  
やがてクロスティーニへ入学し、エルフが、クラッズが仲間になった。同級生にも自慢できる友人だ。  
今までのことを振り返ってみれば、こんなオレにも仲間がいるじゃないか。帰れる場所と、その温かみに気がつく。  
「……フェルパーがなんで怖くないのか、なんとなく解ったかも」  
「え?」  
ふっとフェアリーの顔が弾けた。燭台の灯りではかなわないくらいの、華やかな微笑み。  
「かわいくて、子供だったあの頃と、中身がちっとも変わらないんだもん」  
蝋燭の明かりが揺れた。照明の角度と部屋の暗さで、赤らんだ頬をごまかせていたらいいと思う。  
 

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