魔女の森に上位の悪魔がうろつくようになり、各学校では生徒に対し、厳重な注意を呼びかけていた。ある者は素直に忠告を聞いたが、  
またある者は腕試しに出かけ、そのほとんどの消息は途絶えた。  
そのまま二度と帰らなかった生徒も多い。しかし、一握りの幸運な者は、別のパーティに救助され、辛うじて生き返ることが出来た。  
救助する側の多くは、ブルスケッタに行く途中のパーティか、もしくは同じく腕試しに来たパーティであることが多い。  
そんな中で、ただ一つ。この上位悪魔の出現に、心躍らせるパーティがあった。  
「ディアボロス、ドワーフ!こっちは俺等が引き受けるから、そいつら助けだせぇ!」  
「うん!みんな、頑張って!」  
「グレーターデーモンか、これはいい獲物だ。フェルパー、クラッズ、狩るぞ」  
「ほんっと、おいしい相手じゃなー。強いし、倒せば感謝されるし、あたしらってもうヒーローじゃよね?」  
クロスティーニきっての実力を持つ一行。彼等はこの悪魔達をちょうどいい獲物とみなし、その傍らで無謀な挑戦者の救助を行っていた。  
実際、彼等が助けたパーティは数多く、グレーターデーモンの群れにも怯まず果敢に立ち向かい、勝利を収める彼等。  
それはまさしく、ヒーローと呼ぶのに十分なものであった。  
毎日のように悪魔と死闘を繰り広げ、急激に力をつける。そしてまた狩りが加速し、さらに力をつけていく。そんな日々が続いていたが、  
ある時学食で夕飯を食べていると、ディアボロスが不意に言った。  
「突然ですまないが、ちょっと聞いてくれ。実は、転科を考えているんだ」  
「え?転科?」  
この時期での、その思いも寄らない言葉に、全員が怪訝そうに彼女の顔を見つめた。  
「ああ。私達の中には、魔法使いがいない。それでも十分にやってこられてはいるが、たまに回復する者が欲しいときはあるだろう?  
ドワーフの歌でもいいが、即効性はないからな」  
「それは、僕が一番思うよ。一人じゃさすがに、手が足りない」  
確かに、それは懸念の一つではあった。同学年の多くのパーティは、もうメタヒーラスまで習得している魔法使いがいるパーティも  
少なくない。それに比べ、彼等はヒューマンのヒール、ドワーフの歌とヒール、ノームのヒーリングしか回復手段を持っていないのだ。  
なので、大抵の者は彼等の編成を見て、驚きの声をあげる。  
「そうだよねえ。私も、風の歌とか歌ってると革命の歌は歌えないし…」  
「だろう?だから、一度魔法使いに転科して、少し補助を充実させようと考えている。なに、戦士学科はやることが単純だ。またすぐに  
追いつくさ」  
彼女の提案は、確かにかなりの魅力を持っていた。補助が充実すれば、その分狩りもしやすくなり、一人一人の負担も減る。  
 
「僕は賛成だよ。ただ、やっぱり戦力の低下が懸念材料ではあるかな」  
「それに関しては、少数で魔女の森に行けばいいかと思っている。グレーターデーモンはさすがに危ないが、レッサーデーモンまでなら  
三人程度でも狩れるだろう?そうすれば、すぐまた力も戻せるさ」  
「じゃけど、その三人って誰にするの?あと、残った三人は?」  
クラッズが尋ねると、ディアボロスは首を巡らせ、一度全員の顔を見回した。  
「まず、フェルパーは外せないな」  
「僕も、離れたくないなあ」  
「絶対そう来ると思ったぜ、お前は」  
「私情も挟んではいるが、戦力としても重要だからな。それとあと一人だが……悩むな」  
戦力で言えば、ヒューマンが妥当だろう。しかし、クラッズには魔法壁があり、ドワーフは各種の歌と、見た目以上のしぶとさを  
持っている。ノームは回復要員として優秀である。しばらく悩んでから、ディアボロスは口を開いた。  
「そうだな。ノーム、頼めるか?」  
「お、僕がノミネートされるとはね。意外だな」  
「お前は攻撃力もなかなかあるし、ヒーリングも覚えている。何より、首を切られても死なないからな。不意打ちを食らった場合、  
クラッズの魔法壁よりも信頼がある」  
「な〜んか悔しいなあ、それ」  
冗談めかして言っているものの、クラッズの目は本気で悔しそうだった。  
「ともかく、そんなわけだ。お前達は、よかったらクロスティーニにでもいて、魔女の森に向かう生徒の報告でもしてくれないか?  
そうすれば、何かあったときにこっちですぐ救助に向かえる」  
「実質、ほぼ休憩だな。ま、あんまり差がついてもなんだし、それもいいか」  
こうして話がまとまり、ヒューマン、ドワーフ、クラッズの三人はクロスティーニへ戻り、ディアボロス、フェルパー、ノームの三人は  
ブルスケッタで悪魔狩りを続けることとなった。その後、一行が再び合流するのは、一ヶ月ほど後のことだった。  
 
ブルスケッタに残った三人のうち、ディアボロスはすぐに転科手続きを行い、魔法使い学科へと移った。その彼女を守るようにして、  
フェルパーとノームが主に戦い、経験を積ませる。さすがに、少人数での戦いはかなりの危険を伴うものの、それに比例して  
いい経験となる。ディアボロスは瞬く間に力をつけ、十日ほどもすると、それなりの実力者となっていた。  
そんな彼等を、羨望や尊敬の眼差しで見る者もいる。しかし、全員がそうであるわけではない。  
まして、彼等は新入生であり、多くの生徒から見れば後輩である。そんな彼等が、不相応な実力を持っていることに不快感を持つ者も  
少なくない。嫉妬や、あるいは憎悪の眼差しをも、彼等は受けていた。しかも、今彼等がいる場所は、クロスティーニの姉妹校の  
ブルスケッタである。いわばクロスティーニより上位の学校でもあり、そういった眼はある意味で、母校のクロスティーニよりも  
数多くあった。  
そんな、一行に対して負の感情を抱く者の中に、彼等はいた。  
「気に入らないですよね、あの人達」  
「まったくだね。しかも、ディアボロスなんて種族までいる」  
穏やかな笑みを湛えるセレスティアと、見るからに気位の高そうなエルフ。セレスティアはいかにもブルスケッタの生徒らしく、  
魔法使い学科の服を身に付けているが、エルフはここの生徒にしては珍しく、戦士学科の服装をしている。  
「後輩の癖に、一番の成長株とかおだてられて、調子に乗って。少し、痛い目に遭わせたいですよね」  
「僕も、気持ちは同じさ。だけど実際、彼等は強いよ」  
エルフが言うと、セレスティアは笑った。  
「でも、知ってますか?そのディアボロスが、わたくしと同じ学科になったんですよ」  
「へえ、転科したのかい」  
「……それだけですか?」  
いたずらっぽく微笑む彼女に、エルフは首を傾げた。  
「何か、言いたげだね?」  
「ふふ、鈍いんですね。チャンスだと、思いませんか?」  
言われてようやく、彼は気付いた。  
「……なるほど。今なら彼女は、弱いと言うわけかい。でも、他の仲間がいるよ」  
「聞いた話ですけど、あの女は魔法を覚えたら、戦士に戻るつもりみたいですよ。それにあなたの言う通り、他の仲間がいる……つまり、  
それに比べて弱くなってる。ということは、なるべく早く魔法を覚えようと、躍起になってるはずなんですよ」  
穏やかで優しげな笑みを湛えつつ、セレスティアは続ける。  
「そうでなければ、三人で悪魔となんか、戦ったりしません。それだけ焦ってるんですから、ある程度の実力がついたら、きっと一人で  
戦いに出かけると思うんですよ」  
「ふむ…」  
「何も、あのパーティ全員を、痛い目に遭わせる必要はありません。だって、一人を痛めつければ、他の仲間は十分苦しむんですから」  
そう言い、セレスティアはころころと笑った。その笑顔は、あまりに純粋だった。  
「しかもですよ?ちょうどいいことに、あの女はフェルパーの方とお付き合いしてるらしいんですよ。そんな人を、一番苦しめる方法。  
エルフさん、何だと思います?」  
「……言いたいことは、何となくわかったよ。でも、僕にあんな女を犯せっていうのかい?」  
「あの女が泣き叫ぶ姿、見たくありませんか?あの悪魔の子孫が、無様に泣き喚く姿、きっととっても面白いと思いますよ」  
純粋な笑顔。透き通るほどに純粋な、比類なき悪意。それが、彼女の笑顔を作っていた。  
「君とは、ずっとお預け中だっていうのにね」  
「だって、わたくしはその……まだ、覚悟がつかないんですもん……やっぱり、怖いですよ…」  
「いや、悪かったよ。君を責めてるわけじゃない、安心してくれ」  
優しく言うと、エルフは彼女の顔を上げさせ、そっと口付けを交わした。  
「君の提案……機会があれば、乗ってみるよ」  
セレスティアに微笑みかけるエルフ。その笑顔もまた、彼女に負けないほどの、どす黒い悪意に満ちていた。  
 
果たして数日後。朝から悪魔と戦い続け、そろそろ帰ろうかという話が出たとき、ディアボロスは言った。  
「そろそろ夕飯時だしな。けど、悪いが先に戻ってくれないか?」  
「どうしたの?」  
フェルパーが尋ねると、ディアボロスは笑って答える。  
「まだ魔力に余裕がある。それを使い切ってから戻ろうと思ってな」  
「そう焦ることはないさ。なら、僕達も一緒にいるよ」  
「いや、気持ちは嬉しいが、私もなるべく早く戦士に戻りたい。一人で訓練を積めば、魔法なんぞすぐに覚えられるしな」  
「けど、危ないよぉ。僕も一緒にいるよ」  
「いやいや、私とて無理をする気はない。誰もが惑わされる樹海辺りなら、いざとなればジェラートタウンに逃げ込めるし、相手も  
さほど強くない。仮に、最悪の事態が起きたとしても、発見してもらえる確率も高いからな」  
それでも、ノームとフェルパーは不安そうだったが、結局は彼女の言葉に従い、先に戻ることにした。  
「でも、本当に気をつけてくれよ。以前ほど君は重装備していないし、立ち回りは明らかに下手になってるんだから」  
「わかってるさ。絶対に無理はしない、約束する」  
「なるべく早く、戻ってきてね」  
「ああ。少しだけ待っててくれ」  
念のため、フェルパーとノームは、彼女を誰もが惑わされる樹海まで送ってから、ブルスケッタへと戻った。それを見送ると、  
ディアボロスは一人で悪魔との戦いを始めた。装備はいい物を身に付けているため、思ったよりは苦戦しない。それでも、一瞬の油断が  
即、死に繋がるため、魔力の出し惜しみなど一切せず、常に全力で戦っていた。その分、実入りもいいが消耗も早い。程なく、残りの  
魔力がバックドアル一回分となったところで、ディアボロスはブルスケッタに戻ろうと詠唱を始めた。  
その詠唱が完成する直前、突然ディアボロスに異変が起きた。  
「う……あ…!?な、何が……うぅぅ…!?」  
詠唱を中断し、その場にうずくまるディアボロス。その体はガタガタと震え、呼吸はひどく乱れている。わけもわからない恐怖に、  
ディアボロスはただ怯えた。  
「ふふ。堕天使学科の魔法って、便利ですよね」  
辺りに響く、優しげな声。岩陰から、一人のセレスティアが歩み出た。  
「ま……魔法…?く、くそぉ……フィアズか…!」  
自分の胸を抱き、ガタガタと震えながらも、ディアボロスは何とか立ち上がった。  
「お前が……やったのか…!一体、何のつもりで…!?」  
その瞬間、後ろに気配を感じた。それも、ひどく悪意の篭った、禍々しい気配を。  
以前なら、その瞬間に体が動いていた。だが、魔法使い学科に転科して以来、頭を使うことに慣れた彼女は、咄嗟に魔法を  
詠唱しようとした。しかし恐怖に思考が乱され、結果、最悪の事態を招いた。  
背中に凄まじい衝撃。ディアボロスの体は簡単に吹っ飛び、地面に激しく打ち付けられた。飛びかける意識を必死に繋ぎ止め、何とか  
首を巡らせ、襲撃者の姿を認める。そこには、クレイモアを持ったエルフの姿があった。  
「へえ。剣の腹で打ったとはいえ、殺すつもりで振ったんだけどね」  
端正な顔を歪め、エルフは邪悪な笑みを浮かべた。  
「さすがは、ヒーロー様の一人ってところかい」  
「がはっ…!お前等……何の、つもり…!」  
ディアボロスは何とか立ち上がろうとするが、足に力が入らない。それだけでなく、全身が意識しなければ動かせない。  
そんな彼女を見て、セレスティアはおかしそうに笑った。  
「あらあら、無様ですね。でも、新入生なら新入生らしく、それぐらいの方がお似合いですよ」  
「な……何なんだ、お前等…!?」  
自分に向けられた、いわれなき悪意の理由を、ディアボロスは理解できなかった。種族が気に入らないというのならわかるが、  
彼女を見る限り、そうではなさそうだった。  
 
「いい気になってると、ろくな目に遭わないって教えてあげるんですから、感謝してくださいね?ふふっ」  
「しかし、君のことは気に入らないが……意外と、悪くないかもね」  
エルフがゆっくりと近づき、ディアボロスの前にしゃがみこむ。何をするのかと思う間もなく、エルフは彼女の服に剣を引っ掛けると、  
ざっくりと切り裂いた。  
「うわっ!?な、何をするんだぁ!?」  
服の前面を切り裂かれ、ディアボロスは慌てて胸を隠す。そんな姿を、二人は笑いながら見ていた。  
「何をって?そんなの、この状況を見れば、すぐわかるだろう?」  
エルフの言葉に、ディアボロスは凍りついた。彼女の中に、魔法の効果だけではない恐怖が頭をもたげる。  
「や……やめろぉ…!」  
思わず後ずさったディアボロスを、セレスティアが後ろから押さえつけた。  
「ダメですよ、逃がしません。さ、エルフさん」  
「嫌だ!やめろぉ!放せ、放してくれぇ!!」  
ディアボロスは必死に叫び、暴れた。しかし、消耗した体では大した抵抗も出来ない。そんな彼女の胸に、エルフが手を伸ばす。  
「ふーん、かなり大きいね。触り心地は、よさそうだ」  
言うなり、エルフはディアボロスの胸を握るように掴んだ。  
「いっ!!痛い!!痛い!!!」  
「ああ、柔らかいなあ。それにこの顔、たまらないな」  
悲鳴を上げるディアボロスを、二人は実に楽しそうに見つめている。  
「でも、何だか皮膚が硬いね。やっぱり、君にはかなわないな」  
「ふふ。そんな悪魔なんかと、比べないでください」  
「はは、悪かったよ」  
二人は実に楽しげだった。まるで、子供が新しい玩具でも見るような目で、ディアボロスを見つめている。  
エルフの手が容赦なく、乳房を握り、捻り、引っ張る。絶えず襲い来る痛みと恐怖に、ディアボロスは何度も悲鳴を上げる。  
「痛い!!もうやめてくれぇ!!嫌だぁ!!助けて……フェルパー、助けてくれぇ!!」  
「ははは。君が自分で追い払ったんじゃないか。助けなんか、来るわけもないだろ?」  
「でも、あんまりのんびりしてたら、心配して来ちゃうかもしれませんよ」  
「それもそうか。よく鳴く小鳥は見ていて楽しいものだけど、仕方ないな」  
実に残念そうに言うと、エルフはようやく胸から手を放した。散々に弄ばれた乳房には、乱暴に掴まれた跡が赤く残っている。  
それに息つく間もなく、ショーツに手がかけられる。それを引き下げるという面倒な真似はせず、エルフはそれをダガーで切り裂いた。  
「さて。それじゃあ、もっといい声を聞かせてくれよ」  
返事も待たず、エルフはディアボロスの秘部に、強引に指を突っ込んだ。  
「あぐぅっ!」  
凄まじい痛みに、ディアボロスは顔を歪める。しかし同時に、彼女の中に僅かな反抗心が芽生えていた。  
フィアズの効果は、既にだいぶ薄れている。もう、この状況では抵抗も意味を成さないことは、彼女にもよくわかっていた。  
彼女に残された最後の抵抗は、彼等を楽しませないことぐらいだった。  
エルフの指が、まったく濡れていない膣内を、乱暴に擦る。  
「っ…!……っ…!」  
「あれ、さっきみたいな悲鳴はどうしたんだい?もしかして、ささやかな反抗のつもりかい?」  
歯を食い縛り、必死に痛みを耐える。それが気に入らないのか、エルフはますます乱暴に指を動かし、さらには指を曲げ、彼女の中を  
がりっと引っ掻いた。さすがに耐え切れず、ディアボロスの口から短い悲鳴が漏れた。  
「……ぐっ…!……ぅ…!」  
「……ふ〜ん、どうあっても反抗するつもりなんだね。ならいいさ。あまり気は進まないけど、もっと痛くしてあげるよ」  
 
言いながら、エルフはズボンを下ろし、ディアボロスの腰を持ち上げる。彼女の肩を押さえつけるセレスティアが、  
口元に冷酷な笑みを浮かべた。  
「濡らさないでも、入るものなんですか?」  
「無理矢理やればね。僕も痛いから、本当に気は進まないんだけどさ」  
「………」  
ディアボロスは何も言わない。しかし、その顔は恐怖に青ざめ、呼吸も荒い。だが、エルフが彼女の顔を見ると、即座に顔を逸らす。  
「……はは。まあいいさ。そうやって反抗的な態度を取られるのも、悪くはない」  
片手でディアボロスの体を支え、空いた手でその秘裂を開くと、そこに自身のモノを押し当てた。そして彼女の腰を両手で掴むと、  
思い切り強く腰を突き出した。  
「ぐっ!!!ぐ、うっっ!!!!」  
食い縛った歯の隙間から悲鳴が漏れ、あまりの痛みに、たちまち眦には涙が溢れる。一方のエルフも、決して気持ちよさそうとは  
言えない顔をしている。  
「くっ……さすがにきつい…!」  
「うわぁ。でも、入っちゃうんですね。人の体って、すごいですよね。それとも、好き者のあなたが緩かったんでしょうか?」  
「ふっ……うっ…!」  
何を言われても、ディアボロスは睨みつけるような真似すらせず、ただただ無視を決め込んだ。それが彼等の神経を逆撫ですると  
わかっていても、もうそれしか抵抗のしようはなかったのだ。  
エルフがゆっくりと腰を動かし始める。乾いた粘膜を擦られる痛みに、ディアボロスは全身を強張らせる。  
歯を食い縛り、拳を握り、それでも悲鳴すら上げず、しかし堪えきれない涙が彼女の頬を濡らす。  
「がっ……ぐっ…!」  
エルフが動く度に、ディアボロスの体が強張る。その激しい痛みと刺激が、やがて彼女の望まない形での反応を引き起こす。  
少しずつ、水音が響き始めた。それに伴い、ディアボロスの声も小さくなっている。エルフは彼女を見下ろし、にやりと笑った。  
「おやおや。君は、強姦願望でもあったのかい?」  
「………」  
「ほら、濡れてきてるじゃないか。ははは、無理矢理犯されて、感じてるのかい」  
「……嘘……だ…!」  
とうとう、ディアボロスは口を開いた。半ば自分に言い聞かせるように、エルフの言葉を否定する。  
「嘘?なら、これは何だい?」  
エルフは結合部から漏れる粘液を指で掬い、ディアボロスの眼前に突きつけた。  
「ほら、見てみなよ。これでも濡れてないって言うのかい?」  
「ふふふ。悪魔はやっぱり好き者なんですね。無理矢理されてるのに感じちゃうなんて」  
「違……う…!違う、違う!!」  
それは、彼女にとって耐えがたい苦痛だった。感じてなどいないと、どんなに否定しても、彼等の言葉と、実際に濡れているという  
事実がある。冷静さを奪われた彼女は、それを完全に否定することが出来なかった。  
「ははは。おかげで僕も、気持ちいいよ。あまりのんびりも出来ないし、早めに終わらせてもらうよ」  
エルフがさらに強く突き上げる。その乱暴な動きは、まるで体の奥を殴られるような鈍い痛みをもたらす。  
ディアボロスはぎゅっと目を瞑り、唇をきつく噛み締めながら、ひたすらその陵辱に耐えている。その眦には、痛みと屈辱の涙が  
溜まっている。  
 
しかし、今更抵抗を再開したところで、もはや無意味だということも、彼女にはよくわかっていた。それまでに見せた姿に、彼等はもう  
十分に満足していたのだ。  
やがて、その動きが一段と激しくなり、エルフが低く呻いた。  
「くっ……もう、限界だ!」  
最後に思い切り奥まで突き入れると、エルフはディアボロスの体内に精を放った。  
「……っ…!」  
体内で彼のモノが跳ねるのを感じ、ディアボロスはさらにきつく唇を噛み締めた。あまりに強く噛んだため、口元に一筋の血が伝う。  
そんな彼女を満足げに見下ろしながら、エルフは全て彼女の中に注ぎ込む。それが終わると、彼はディアボロスの中から引き抜いた。  
「やれやれ。終わってみると、やっぱり気分はよくないね。こんな悪魔なんかと、したなんていうのは」  
言いながら、エルフはハンカチを取り出すと、先程までディアボロスの中に入っていたモノを丁寧に拭う。  
「ふふっ。でも、なかなか楽しかったじゃないですか。おだてられて、いい気になってる相手が泣く姿は、やっぱりいつ見ても  
面白いですよ」  
「それもそうか。……ほら、君にやるよ」  
あらかた拭き終わると、エルフはそのハンカチをディアボロスの傍らに放った。  
「君の体液で汚れたハンカチなんて、僕は使いたくないからね。自由に使ってくれ」  
「優しいですね、エルフさんは。うふふ」  
押さえていた手を離し、セレスティアが立ち上がる。  
「とにかく、これでわかったでしょう?ヒーローとか何とか言われて、いい気になってると、ろくな目に遭わないんですよ。あなたの  
お仲間にも、よろしく言っておいてくださいね」  
そう言って、セレスティアはにっこりと笑う。しかし、ディアボロスは何も答えなかった。  
だが、二人はもう満足したらしく、手早く身なりを整えると、すぐにその場を立ち去った。残されたディアボロスは、  
しばらくそのまま横たわっていた。  
やがて、むくりと体を起こす。近くに落ちていた杖を取ると、何とか立ち上がる。その瞬間、股間に鋭い痛みが襲った。  
「うあっ!」  
思わず声をあげ、その場にうずくまる。そのまま、ディアボロスは長いことうずくまっていた。  
ぽつりと、雨が地面に落ちる。その黒い染みはあっという間に数を増やし、一分と経たないうちに、辺りは土砂降りとなった。  
それでも、ディアボロスはしばらくうずくまっていた。雨に濡れた髪から、水滴が滴り落ちる。それに混じって、頬に温かい水滴が伝う。  
やがて、彼女はゆっくりと立ち上がると、震える足を押さえつけ、口の中で詠唱を始めた。だが、それはバックドアルではなく、  
テレポルの詠唱である。そして詠唱が完成すると、彼女はどこへともなく消えていった。  
 
一方、フェルパーとノームはブルスケッタに戻ると、購買でいらない物を売り払い、その足で学食へと向かった。  
しかし、学食に着くなり、フェルパーがノームに話しかける。  
「あ、悪いんだけど、僕はまだご飯食べないよ」  
「どうしたんだい。食欲ない……わけでは、ないようだね」  
フェルパーは何やらトレイを二つ持ち、それぞれに料理を載せている。  
「ディアボロスも、お腹空いてると思うしさ。帰ってきたら、二人で食べるんだぁ」  
「でも、彼女が戻ってくるまで待ってたら、冷めちゃうだろう」  
「それでも、一緒に食べたいもの。それに、そこまで遅くはならないと思うしさ」  
「そうか。いや、それならいいんだ。なら、僕は先にディナータイムとしゃれ込むよ」  
「うん。ごめんね、わがまま言って」  
「構わないさ。ディアボロスも、きっと喜ぶだろう」  
それから、ノームはそこで食事を始め、フェルパーは無理を言って、部屋まで料理を持っていった。  
テーブルにトレイを載せ、冷めないように布をかけ、フェルパーは楽しげに尻尾を振りながら彼女を待つ。少々お腹が鳴っているが、  
先に手をつけようとはしない。  
だが、彼女はなかなか帰らない。既にかなりの時間が経過し、料理はすっかり冷めているが、まだ帰る気配もない。  
フェルパーは所在無さげに尻尾を振りつつ、それでも彼女を待つ。  
もしかしたら、また魔力が回復したので、長引いているのかもしれない。そう思い、フェルパーはじっと空腹に耐える。  
だが、それでも戻る気配がない。フェルパーの尻尾は力なく垂れ、時折床をパシンと叩く。外は既に日が落ち始め、  
だいぶ暗くなってきている。  
あまりにも、遅すぎる。それでも、もう少し待とうかと考えたのだが、やがて雨が降り始めた辺りで、フェルパーは席を立った。  
部屋を出ると、真っ直ぐにノームの部屋に向かう。ドアをノックすると、ノームはすぐに出た。  
「フェルパーか、どうしたんだい」  
「あのね、ディアボロスがまだ戻らないんだ…」  
「何だって、まだ戻ってなかったのか。嫌な予感がするな…」  
「うん。あまり考えたくはないんだけど……探しに行くんだけど、ついて来てくれる?」  
「もちろんさ。ああ、でもその前に、購買と実験室に寄るから、先に入り口に行っててくれ」  
フェルパーはすぐに魔女の森入り口に向かい、ノームを待つ。やがてノームが姿を見せ、フェルパーに紙切れを渡してきた。  
「ほら、渡しとくよ。破れた帰還札と、破れた転移札。濡らして、これ以上破らないようにしてくれよ」  
「……どうして破れてるやつ?」  
「買って分解したのさ。こうすると、そのまま使うよりお得なんだ。覚えておくと便利だよ。それじゃ、探しに行こうか」  
ノームが破れた転移札を使い、二人は誰もが惑わされる樹海へと飛んだ。しかし、誰かがいるような気配はない。  
「ディアボロス……やられちゃってないよね?無事だよね?」  
「そうであることを祈るよ。僕は、ジェラートタウンを見てくる。君は、こっちで彼女を探してくれ」  
「うん、わかった」  
二手に分かれ、ノームはすぐにジェラートタウンへと向かった。フェルパーはディアボロスを求め、雨の中を歩き回る。  
時折、悪魔が襲い掛かってくる。しかし、フェルパーにとって敵ではなく、その全てをあっさりと返り討ちにする。  
―――これぐらいの相手なら、負けると思わないけど…。  
それでも、万一ということがある。隅から隅までを探し回るつもりで歩いていると、ふと何かが落ちているのに気付いた。  
近づいてみると、それはびしょ濡れになったハンカチのようだった。だが、ディアボロスがそんな物を持っているのは  
見たことがないので、恐らくは誰かが落としたのだろう。だが、もしそれが悪魔に襲われてということならば、助ける必要がある。  
フェルパーは何気なくそれを手に取り、匂いを嗅いだ。  
 
「……っ!?」  
途端に、フェルパーの表情が変わった。驚きに目を見開き、もう一度匂いを嗅ぐ。  
間違いなかった。それについているのは、ディアボロスの匂いと、知らない男と、精液の臭い。  
戻らないディアボロス。ハンカチに付いた臭い。それが意味するところは一つしかない。  
次の瞬間、フェルパーは走り出していた。直感で、彼女はあそこにいるはずだと感じ、フェルパーは誰もが歩みを止めた道へと走る。  
目印をつけて進んだ道を走り抜け、誰もが歩みを止めた道へと飛び込む。そして、いくつかのワープを潜った先に、彼女はいた。  
切り裂かれて、服としての用を為さなくなった制服を身に付け、秘部に指を突っ込みんで精液を掻き出し、ディープゾーンの水を掬い、  
洗い流す。何度も何度も、彼女はそれだけを繰り返していた。  
「……ディアボロス…」  
声をかけると、ディアボロスはゆっくりと振り向いた。  
その悲しげな目を見た途端、フェルパーはそれ以上の言葉をかける勇気をなくした。  
しばらくの間、二人は無言で見詰め合った。降り続く雨が、ただ二人の体を濡らしていく。  
「……一人に……してくれ…………お願いだ…」  
ぽつりと、ディアボロスが呟いた。それに答えられずにいると、ディアボロスはもう一度呟いた。  
「……お願いだ…!」  
もう、声をかけることも出来なかった。フェルパーは何度も躊躇いつつ、やがて彼女に背を向ける。歩き出そうとして、ふと足を止め、  
フェルパーは彼女に歩み寄ると服を脱ぎ、彼女の肩にかけてやった。  
「………」  
「………」  
言葉はなかった。最後に破れた帰還札を持たせると、フェルパーは今度こそ踵を返し、震える足取りで彼女から一歩一歩離れていく。  
「……うっ……うっ、うぅ…!」  
背中に、ディアボロスの嗚咽が突き刺さる。フェルパーの歯が、ギリッと音を立てる。その声を振り切るように、フェルパーは  
駆け出した。後にはただ、一人雨に打たれて泣き続けるディアボロスだけが残されていた。  
 
魔女の森に、凄まじい咆哮が木霊する。  
「うあああぁぁぁぁ!!!!ああああぁぁぁぁぁ!!!!」  
咆哮と共に、それは目に入る全てのものを破壊した。岩にざっくりと爪痕を残し、木々は倒され、立ち塞がった悪魔はたちまち無残な  
肉塊と化した。その破壊から逃れられたものは、皮肉にも逃げ遅れて怯えるモンスターだけだった。  
悪魔すらも怯えて逃げるほどの破壊を撒き散らしながら、フェルパーは魔女の森を歩く。もはや理性すら感じさせないその顔は、  
まさにビーストと呼ぶのに相応しいものだった。  
一本の木が目に入る。途端に、フェルパーはそれに掴みかかった。  
「ああああああぁぁぁぁ!!!!!」  
メキメキと音を立て、幹が握り潰される。やがて、音を立てて幹が折れると、フェルパーはそれを地面に叩きつけた。  
「うあああぁぁぁ!!!!がああああぁぁぁ!!!」  
滅茶苦茶に叫び、狂ったように爪で切り刻む。一本の木だったものは、彼の爪によってたちまち無数の破片に変えられてしまった。  
と、突然フェルパーの顔に理性が戻る。たった今破壊した木屑の一つを手に取り、匂いを嗅ぐ。  
雨でだいぶ流れてはいるが、間違いなかった。そこから、あのハンカチについていたものと同じ匂いを感じた。  
『獲物』が近い。近くには、迷いし者が集う場所がある。雨を避けているのなら、そこにいる可能性は高い。  
目的地が決まり、フェルパーは鬼気迫る表情で歩き出した。相手が近くにいる以上、もう叫び声を上げたりはしない。  
 
そうして、迷いし者が集う場所の入り口付近まで来たとき、岩陰から何者かが現れた。  
「……何を、するつもりだい」  
ノームが、いつもと同じ無表情な声で尋ねる。  
「………」  
「いや、聞かなくても顔を見ればわかる。けど僕は、君をこの先に進ませることは出来ない」  
「……グゥゥゥ…!」  
低い唸りを上げ、フェルパーは手を伸ばす。爪を出来る限り引っ込め、ノームの顔に手をかけると、そっと、しかし凄まじい力で  
押しのける。そのまま先に進もうとすると、ノームの手が胸倉を掴んだ。  
「この先に進むのは、君の自由だよ」  
押しのけられて、思い切り体を反らしつつ、ノームは続ける。  
「僕は君の前に立つ以上のことはしないし、君は必要なら、僕を殺すことも出来る」  
浮遊できるため、転ぶことはない。不安定な体勢のまま、ノームはフェルパーを無理矢理こちらに向けた。  
「怒りの炎の命ずるままに、全てを焼き尽くすことも出来るし、その炎を内に秘め、誰かを温めることも出来る。どうするかは、  
君の自由だ」  
その言葉に、フェルパーはビクリと体を震わせた。  
「ディアボロスは、一人にしてくれと言ったんだろう。じゃなきゃ、君はここにいない。でもね、女心って言うのは複雑なんだ。  
言葉に出すだけが本心じゃなく、相反する思いもまた、彼女の本心だ」  
「………」  
「一人が辛いというのは、本当の孤独を知らない種族の言う言葉さ。孤独は、自分以外の誰もいないが故に、居心地のいい物だよ。  
だからこそ、人は辛いとき、一人になりたいと願う。君も、それはよくわかるだろう。……けどね、時には誰かに支えてもらいたい  
と思うときがある。側にいてほしいと思うときがある。それは、孤独よりも居心地のいい、誰かの隣という居場所が見つかったときさ」  
「……フー……フー…!」  
少しずつ、フェルパーの呼吸が荒くなっていく。しかし、それは怒りのためではない。  
「……彼女は、一人にしてほしいと思っている。それは事実だ。けど同時に、君にそばにいてほしいと思っている。それもまた、事実だ」  
「……フゥーッ……フゥーッ…!」  
歯を食い縛り、その隙間から荒い呼吸が漏れる。雨が雫となり、涙と共に頬を流れていく。  
「ウウ……ウ…!ぼ……僕…………は…!」  
震える声で、フェルパーが呻くように呟く。そんな彼の頬に、ノームはそっと手を当てた。  
「……君は、美しいよ」  
そっと、顔を寄せる。吐息がかかるほどに顔を寄せ、ノームは口を開く。  
「その頬に流れる涙のようにね。涙は、人の感情の結晶だ。怒り、喜び、悲しみ……いずれも感極まったとき、人は涙を流す。  
だから、流れる涙はどんなものでも美しい。僕には与えられなかった、君達だけの宝物」  
フェルパーの目を真っ直ぐに見つめ、ノームは微笑んだ。  
「そんな君が、あんな奴等のために、汚れる必要はない。美しいものを汚してみたくなるのは、人間の性といえ、それはこの手で  
汚すことに価値がある。君自らが進んで汚れては、話にならない」  
「……?」  
ノームの言葉が理解できないらしく、フェルパーは戸惑いの表情を見せる。そんな彼に、ノームは優しく言った。  
「行ってやれよ。彼女を温めてあげられるのは、君だけだ。今は、その怒りの炎を内に収めて、彼女を温めてやれ。雨で汚れを  
流したなら、それで冷え切った体を温める存在が必要さ。例え拒絶されても、決して彼女を放すな。君ならきっと、今の彼女にも、  
受け入れてもらえるさ」  
フェルパーの胸に、ノームは破れた帰還札を押し付けた。躊躇いながらもフェルパーがそれを受け取ると、ノームは静かに彼の脇を  
通り抜ける。  
「けど、安心してくれ。このままで終わらせる気はない」  
フェルパーの頬に触れた手が、優しく撫でていく。そして、指先で彼の涙を掬い取ると、ノームはそれを口に含んだ。  
「君の火種……僕が受け継いだ」  
 
迷いし者が集う場所に、二つの人影があった。二人はぴったりと寄り添い、実に仲が良さそうに見える。  
「ふう、いきなり降られたのには参ったね」  
「でも、ちょうどよかったかもしれませんよ?下手に戻って、あの悪魔が仲間と合流してたら、無事じゃ済まなかったかもしれません」  
「それもそうか。ほとぼりが冷めるまで、こうして隠れてた方がいいのかな」  
「うふふ。あなたと一緒なら、わたくしはそれでも構いませんよ」  
そう言って笑うセレスティアを、エルフはグッと抱き寄せる。そして、彼女に口付けをしようとしたとき、不意に気配を感じ、  
咄嗟に身構えた。  
誰かが近づいてくるのが見える。足音すら立てない移動の仕方は、恐らくノームだろう。そのノームは二人の前に来ると地面に降り、  
気取った仕草で頭を下げた。  
「やあ、初めまして。デートの邪魔をして悪いね」  
「……何だい、君は?」  
「普通科所属の、ただのノームの一人さ。ただ、君達とは少し縁がある」  
「縁?縁って、どんな縁ですか?」  
セレスティアが尋ねると、ノームは口元を笑みの形に持ち上げる。  
「……仲間のディアボロスが、ずいぶん世話になったみたいでね」  
その言葉に、二人は素早く武器を構えた。途端に、ノームの目がスッと細くなる。  
「やっぱり、お前等か。しかし、こうも簡単にかかるとは……お前等も、馬鹿だな」  
「……ふん。それで、どうするって?君一人で、敵討ちでもする気かい?」  
「ああ、そのつもりさ。僕の大切なディボロスを、そしてフェルパーを、傷つけた罪は重いぞ」  
「ふふふ。わざわざ一人で来るなんて、そういう人、嫌いじゃあないんですけど…」  
穏やかな笑みを浮かべながら、セレスティアは意識を集中した。  
「でも、あなたは生かして帰しませんよ!」  
セレスティアがフィアズを唱えた。だが、ノームは鼻で笑う。  
「ふん。魔法使いがいることなんて、想定済みさ。そんな魔法、食らうかよ」  
「なら、これはどうだい!」  
エルフが剣を抜き、ノーム目掛けて突きかかった。それを見て、ノームは笑った。  
「ふん、甘いよ」  
次の瞬間、エルフは驚きに目を見開いた。ノームは避けようとせず、自らその剣に貫かれたのだ。  
「なんっ…!?」  
「避けたところを狙うつもりだったんだろ。残念だったなあ。突きの後は、動きが死ぬぜ」  
ノームの腕が、くるりと円を描いた。その瞬間、凄まじい悲鳴が響いた。  
「ぐっ……ああああぁぁぁ!!!」  
「エルフさん!?」  
股間を押さえ、うずくまるエルフ。そのそばに、血に塗れた何かが落ちている。  
「おっと、悪かったな。咄嗟だったもんで、切り落としちまった」  
笑いながら言うと、ノームはエルフの顔を蹴り上げた。仰向けに倒れたエルフを見つつ、ノームは地面に落ちたそれを無造作に掴み、  
エルフの股間に押し当て、ヒールを唱えた。途端に出血が止まり、切り落とされたモノも元通りにくっつく。  
が、悲鳴が止まった瞬間、ノームはエルフの股間を思い切り蹴り飛ばした。  
「がっっっ!!!!か……はっ…!!!」  
内臓にめり込むほどに強く蹴り飛ばされ、エルフは悶絶した。ノームは懐から鎖を取り出すと、一端を迷宮の壁に括りつけ、もう一端を  
素早くエルフの足に巻きつける。そして、そこにガチャリと錠をかける。これで、エルフの動きは封じられた。  
不意に熱を感じ、ノームは腕で顔を庇った。直後、セレスティアの放ったファイアがノームに襲い掛かる。  
「エルフさんに何をするんですか!離れなさい!」  
「……くくくく」  
不意に響いた笑い声に、セレスティアはぞくりと身を震わせる。  
 
「フェルパーとディアボロスの味わった痛み……お前等が味わうのは、そんなものじゃ済まないぞ」  
無表情なはずの瞳の奥に、セレスティアは言い様もない恐怖を感じた。言うなれば、彼の瞳は狂人のそれだった。彼は、狂気を  
飼い慣らしている。ある意味では、ビーストや狂戦士に近い存在ともいえる。  
「く……その濡れた体に、雷はよく効くでしょうね!」  
セレスティアが魔法を詠唱する。その隙に、ノームは距離を詰める。  
「逃げ場は与えませんよ!サンダガン!」  
雷が放たれ、ノームの体を貫く。しかし、ノームはまったく怯まずに距離を詰めてくる。  
「なんて方ですか…!でも、わたくしに追いつけますか!?」  
セレスティアは翼を広げ、素早く後ろに飛んだ。さすがに素早さでは、ノームに勝ち目はない。だが、ノームは笑った。  
「逃げながら魔法を撃つ気かい。さすがにそれをやられちゃ、僕も危ない。魔法は、封じさせてもらう」  
「普通科の、しかもノームのあなたが、一体どうやって魔法を……なっ!?」  
ノームはダガーで、自分の左腕を切り落とした。それにセレスティアが驚いた瞬間、ノームはそれを彼女に向かって放り投げた。  
思わず、それを腕で受ける。すると、その腕はまるで生きているかのように動き、彼女の喉を掴んだ。  
「ぐぅっ…!?ぐ、ゲホッ…!」  
「ははは。こういうときには便利なもんだよ。この間、首が落ちても動ける事に気付いてね。それの応用さ」  
首を掴まれては、魔法の詠唱も出来ない。その腕を振り払おうともがいていると、いつの間にかノームが目の前まで迫っていた。  
ダガーの一振りを、後ろに飛んで避ける。着地しようとして、セレスティアは自分が壁際まで追い詰められているのに気付いた。  
「くっ!」  
足元は電流の流れる地面である。着地すれば、無事では済まない。  
慌てて羽ばたき、何とか横に逃れる。だが、ノームはすぐさま追撃をかけ、執拗に攻撃する。浮遊の仕方が違う分、ノームの動きは  
見た目では判断できない。後ろにやや空間が開き、思わず後ろに飛んだ瞬間、セレスティアの体がぐるりと回った。  
「きゃっ!?」  
目の前に壁がある。後ろも壁である。そこでようやく、セレスティアは自分がターンエリアに踏み込んだのだと知った。  
そこに、ノームが現れた。大慌てで翼を開いた瞬間、ノームは彼女の腹を思い切り蹴り飛ばした。  
「ぐっ、ああああぁぁぁぁぁ!!!」  
壁に押し付けられ、白い火花が散る。それでもノームは、足で彼女を壁に押し当て続ける。  
「あがががが!!!がっあああぁぁぁあああああ!!!」  
凄まじい悲鳴を上げ、セレスティアの体が狂ったように揺れる。翼が焼け、辺りに嫌な匂いが立ち込め始めた辺りで、ノームはようやく  
セレスティアを解放した。  
先に投げた左手を掴み、肩に押し当ててヒールを唱える。そして、彼女の翼を無造作に掴むと、エルフの前まで引きずっていく。  
エルフはまだうずくまっており、それに気付く余裕はないらしい。ノームは口元だけで笑い、セレスティアにヒーリングを唱えた。  
「う……何を…?」  
「死なれちゃあ困るんだ。まだ、君には生きててもらわないと」  
言うなり、ノームはセレスティアの服に手をかけ、引き裂いた。  
「きゃああぁぁ!!」  
悲鳴を上げ、セレスティアは胸を手で隠す。  
「あ……あなたは、わたくしを……あ、あの、ディアボロスと……おな、同じ目に、遭わせるつもりですか…!?」  
震える声で尋ねると、ノームは口元の笑みを、一層酷薄そうに歪めた。  
「そうしたいけど、僕は残念ながら、こうなんでね」  
こともなげに、ノームはズボンを下ろしてみせる。そこには何も付いておらず、それこそ人形のようにのっぺりとしている。  
「……でもまあ、別に必要ないか。これが付いてたって、僕はそんなものを使う気はない」  
言いながら、ノームは手首を動かす。そして、セレスティアの前にしゃがみこむと、その体をしっかりと押さえつけた。  
 
「目には目を、歯には歯を……なんて、甘いこと言うと思うなよ。地獄を見せてやる」  
ノームの手が、セレスティアの股間に伸びる。中指が割れ目をなぞると、セレスティアはビクリと体を震わせた。  
「や、やだ!やめてください!」  
「いきなり本番になっちまっちゃ、それこそお前、死ぬぜ」  
割れ目を擦り、敏感な突起を押しつぶすように刺激する。比較的敏感なのか、その度にセレスティアの体が跳ねる。  
「うあっ!あっ!も、もうやめてくださいよぅ!!謝りますからぁ!!あ、痛ぁっ!!」  
ノームの指が僅かに侵入すると、セレスティアは悲鳴を上げた。  
「へえ、付き合ってる割には経験ないのか……ははっははははは」  
楽しそうな笑い声を上げるノーム。だが、その不穏な気配を感じ、セレスティアは怯えた。その時、後ろから声がかかった。  
「ぐ……セレス、ティア…!」  
見れば、エルフが何とか顔を上げ、二人を見つめている。  
「エ、エルフさん!助けてください!!わたくし、こんな人に初めてあげたくありません!!」  
「ディアボロスには好き勝手しといて、いざお前の番となりゃその台詞かい。やれやれ……楽しませてくれるねえ」  
「や、やめて……痛っ!」  
中指を沈み込ませ、ノームはエルフに冷酷な笑みを向けた。  
「はははは。君も見てるといいよ。君の女が……ここに、こいつを飲み込む様をさぁ」  
そう言って、ノームは拳を握って見せた。その意味を理解した瞬間、セレスティアの顔が見る間に青ざめた。  
「い、嫌……嫌、嫌、嫌ぁ!!!助けてぇ!!!エルフさん、助けてぇ!!!」  
「はぁっははははっ。じゃあ、始めようか。さぁて、どこまで耐えられるかな」  
突き入れた指が、恐怖からかぎゅっと締め付けられる。だが、それまでに多少の湿り気を帯びたそこは、指の一本程度なら自由に  
出し入れ出来る程度である。  
「さて、もう一本増やそうか」  
「嫌だ!嫌だぁ!!やめ……い、痛い!!痛い痛い痛い!!!」  
「くそ……やめ、ろぉ…!」  
ノームの指が、もう一本セレスティアの体内に沈み込む。セレスティアは体を捩り、ノームの体を押し返そうと抵抗するが、  
その度にノームは彼女の体内から押さえつけ、それを鎮める。  
彼女をいたぶるように、ノームは二本の指を引き抜き、かと思うと強く突き入れ、回す。あまりの痛みに、セレスティアは涙を流して  
悲鳴を上げるが、ノームは怯む気配すらない。  
「痛い!!痛いぃ!!もうやめて!!もう許してくださいぃ!!」  
「三本目、行こうか。くく、そろそろきつくなるかもな」  
暴れる彼女を押さえつけ、ノームはゆっくりと三本目を突き入れる。狭い膣内を無理矢理押し広げられる感覚に、セレスティアは全身に  
脂汗を浮かべ、必死に耐えている。  
「あっぐ…!い……たい…!エルフさん……助け……て…!」  
「セレスティア……セレスティア…!!貴様、やめろぉ…!!」  
さすがに、三本目はそう簡単に入らない。セレスティアが全力で拒んでいるのに加え、そもそもがそこまでの広さではないのだ。  
それを知ってなお、ノームは薄笑いを浮かべ、腕に力を込める。  
「嫌だ……嫌だぁ…!も、もうやめて……誰か、誰か助け…!」  
その時、ノームがさらに力を加え、途端に何かを無理矢理押し広げた感触と共に、指がずぶりと入り込んだ。同時に、セレスティアが  
凄まじい悲鳴を上げる。  
 
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!痛いいいぃぃ!!!痛い!!痛い!!痛いいいいぃぃ!!!」  
「セ、セレスティア!!!うあああぁぁ!!!」  
ノームの指が赤く染まっていき、エルフも悲鳴に近い絶叫を上げる。そんな二人を見て、ノームは満足そうに笑う。  
「はは、残念だったなあ。君の初めてをもらったのが、恋人じゃなくて僕だなんて。まさに一生の思い出だな、あはははは」  
言いながら、ノームは激しく指を出し入れさせる。傷ついた膣内を擦られ、なお押し広げられる苦痛に、セレスティアは悲鳴を上げる。  
「やだぁ!!もうやめてくださいぃぃ!!許して!!許してええぇぇ!!!」  
「さて、そろそろ四本目、行こうか。くくくく、頼むから、途中で死んでくれるなよ」  
小指をもまとめ、ノームが力を込める。  
「やだやだやだやだぁぁぁぁ!!!!お願いですから、謝りますからああぁぁ!!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!  
ごめんなさいいいぃぃ!!!もうやめて!!!もう許してええぇぇ!!!」  
「はっはははは、許されるなんて思っているのかい。そんな甘い考え、どこから出てくるのやら、ね」  
言うなり、ノームは思い切り腕に力を込めた。途端に、ミチミチと嫌な音を立て、指が飲み込まれていく。  
「いっっっぎゃあああぁぁぁ!!!!あがっ!!!が、ああああぁぁぁぁ!!!!」  
もはや女性とは思えないような悲鳴が上がる。セレスティアは白目を剥き、同時にノームの手に、ちょろちょろと黄色い液体が  
かけられる。  
「あーあ、さすがに失禁したかい。まあ、しょうがないね」  
「もう、もうやめろおおぉぉ!!!やめてくれええぇぇ!!!うわあああぁぁ!!!」  
エルフが絶望的な叫びを上げる。だが、今のノームにとっては、それはたまらなく心地いい音にしか聞こえない。  
限界以上に広がり、激しく出血する膣内を乱暴に擦る。突き入れる度に血が飛び散り、引き抜く度に血と粘液の混じったものが  
零れ落ちる。そして、セレスティアは気が狂ったような凄まじい悲鳴を上げ続けている。  
「さあ、ラストスパートだ。いい声あげてくれよ」  
「やだあああぁぁぁ!!!エルフさん助けてええぇぇ!!!助けて、助けてええぇぇ!!!殺される!!!助けて、殺されるぅ!!!」  
「もうやめてくれえ!!!もう許してくれ!!!お願いだああぁぁ!!!」  
「ふふ……断る」  
入れやすいよう、指を窄めるように揃え、ゆっくりと彼女の中に突き入れていく。  
「痛い痛い痛いぃぃ!!!もうしませんから、謝りますから、だから許してくださいお願いですからあああぁぁ!!!」  
「最初からしなければ、こうならなかったのにな。ははは」  
ゆっくりと、しかし容赦なく、ノームは彼女の中に指を突き入れる。既に限界を超えて押し広げられた入り口も、さすがに指の  
付け根まで入ったところで、それ以上の侵入を拒む。  
「もう無理!!もう無理ぃ!!!もうやめてぇ!!!」  
「無理かどうか、やってみなけりゃわからない、さっ」  
僅かに引き抜き、そして勢いをつけ、ノームは思い切り彼女の中へと突き入れた。そして、ブツッと嫌な音と共に、ノームの手首までが  
彼女の中に入り込んだ。  
「いぎゃああああぁぁぁぁ!!!!!」  
「うぅ……あああぁぁぁ…!」  
エルフは耳を塞ぎ、目を瞑ってその現実から逃れようとしている。セレスティアはもう痛みも限界にきたのか、身じろぎ一つせず、  
ただただ荒い息をつくばかりである。  
「あははは。ちゃんと入ったじゃないか。さっきまでバージンだったとは、とても思えないよ。あはははは」  
言いながら、ノームは彼女の中で拳を握る。  
「がぁっ!!!あぐぁっ!!!あ……あ…!」  
「ほーら、これで拳が入った。ずいぶん緩くなったもんだね」  
本来なら、さらに彼女を痛めつけてもよかった。だが、セレスティアは既に限界に来ているようであり、さらに別の理由から、ノームは  
この辺で切り上げるべきだと判断した。  
一度拳を引き抜き、ポケットから何かを取り出すと、それを握って再び拳を突き入れる。  
 
「おご……あ…」  
だが、今度はすぐに拳を引き抜くと、ノームはセレスティアに向かって魔法を詠唱する。やがて詠唱が終わり、ヒーリングが発動すると、  
ひどい出血も一瞬にして治まり、セレスティアの目に生気が戻る。だが、セレスティアは急に腹を抑え、苦しみだした。  
「い、痛……な、何が…!?」  
「……おい、そこの君。いい加減手を放せ」  
ノームはエルフの腕を掴むと、無理矢理耳から引き剥がす。  
「う……な、何だ…?」  
「ふふ……聞こえるかい。あの声が」  
言われて耳を澄ませると、遠くで悪魔の声がする。そしてそれは少しずつ、こちらに近づいてきている。  
「悪魔は血の匂いに敏感だからねえ。どうやら、嗅ぎつけられたようだ」  
言いながら、ノームは腹を押さえて苦しむセレスティアに目を移す。  
「君を縛る鎖の鍵は、彼女の中だ」  
「え…?」  
「指先で届くなんて期待は、しない方がいい。この木屑に括りつけて、横向きに置いたからね。仮に指先が届いたとしたって、  
取れやしないさ」  
そう言ってノームが取り出したのは、フェルパーが滅茶苦茶に切り裂いた木の破片であった。  
「助かりたいなら、鍵が無いとね。でも、取り出すなら優しくしてやれよ。なんてったって、体は処女に戻ってるんだ。だけど、  
急がなきゃ悪魔が先に来るかもね。そうしたら、君は死ぬね」  
実に楽しそうに言って、ノームは立ち上がった。  
「お、おい!!」  
「ははっははははは。僕はもう帰るから、あとは君達の自由にするといいよ。二人とも、無事だといいねえ。あっははははは」  
高笑いを残して、ノームはジェラートタウンで買った転移札を使い、消えていった。残された二人は、しばらくそこを見つめていたが、  
やがてセレスティアが痛みを堪えて立ち上がる。  
「うう、う……戻ら……ないと…!」  
歩き出そうとした瞬間、その足をエルフが掴んだ。たまらず、セレスティアは転倒する。  
「痛っ!な、何を…!?」  
「……君は、僕を見捨てるつもりか!?」  
鬼気迫る表情で、エルフが問い詰める。  
「だ、だって……こんなところの鍵なんて、取れないですし……あ、後で必ず、助けに来ますから…!」  
「ふざけるな……僕は、悪魔になんか殺されたくない…!」  
その目にノームと同じ気配を感じ、セレスティアは逃げようとした。しかし、エルフはしっかりと足を掴み、逃がさない。  
「な……何をするんですか!?何をするつもりですか!?」  
「……悪く、思うな。僕は、死にたくない!」  
「え…!?い、嫌です!!嫌だぁ!!もう、あんなのわたくし、嫌ですよぉ!!!」  
エルフの手から逃れようと、セレスティアは地面を引っ掻き、翼を羽ばたき、必死に抵抗する。しかし、戦士学科に所属するエルフには、  
まったく無駄な抵抗だった。  
悪魔の声が、近くまで来ている。エルフは乱暴にセレスティアの足を開かせ、その体にのしかかる。そして、彼女の秘裂に手を当てる。  
「う……嘘ですよね…!?」  
「……すまない…!」  
「や、やだ!!やめて!!!やめて!!!やめてえええぇぇ!!!!やだああああぁぁぁぁ!!!!!」  
セレスティアの哀願の声が響き、そして一瞬遅れて、辺りに耳をつんざく悲鳴が響き渡った。  
 
 
翌朝。ノームが学食に行こうと寮の廊下を歩いていると、ちょうどフェルパーとディアボロスが部屋から出てくるところだった。  
「お、グッドタイミングだな。二人とも、これから朝食かい」  
「あ、ノーム。おはよー」  
「……おはよう、ノーム」  
意外としっかりした声で、ディアボロスは言った。  
「思ったより元気そうだね。でも、無理はしてないかい」  
「ああ、平気だ。よくよく考えれば、別に初めてを奪われたわけでもないし、私にはこいつがいる」  
そう言い、ディアボロスは愛おしげにフェルパーを見つめる。  
「昨日、ずっと抱き締めていてくれたんだ。私は、こいつを拒絶したのに…」  
「はは、のろけ話を始めるとはね」  
仲良く三人で歩きながら、彼等は話を続ける。  
「のろけ話とは失礼だな。私はフェルパーが、どれだけ優しいか……うっ!」  
不意に、エルフの生徒が見えた。決して昨日のエルフではないのだが、その瞬間、ディアボロスはその場に固まり、フェルパーの腕を  
ぎゅっと掴んだ。そんな彼女に、ノームは優しく声をかける。  
「無理は、しなくていいさ。ショックじゃないなんてことは、いくら君でも、ないだろう」  
そう言われると、ディアボロスは少し声を落とした。  
「……まあ、な。だが、いつまでも沈んでいるわけにはいかないだろう。例え空元気だって、続けていれば、いつか本当の元気になるさ」  
「悲しいほどに強いね、君は。でも、時には肩の力を抜いて、フェルパーにでも思いっきり甘えてくれよ。何なら、僕でも構わない」  
ノームが言うと、ディアボロスは笑った。  
「ははは、お前に甘える、か。それも面白いかもしれないな。気が向いたら、試させてもらうとしようか」  
「おっと、フェルパーの前でそんなこと言っていいのかい。嫉妬されても困るぜ」  
「お前ならいいだろう。なあ、フェルパー?」  
「うん。君がいいなら、僕もいいと思うよ」  
「公認か、参ったな。あははは」  
そんなこんなで学食に着き、三人はそれぞれ料理を取り、席に着いた。その時、隣のグループの会話が耳に飛び込んできた。  
「おい、昨日の話、知ってるか?」  
「ああ。あの、エルフとセレスティアの話だろ?悪魔に襲われたんだっけ?」  
「それが、よくわからないんだよなあ。セレスティアの方は、もう完全にこれだってよ」  
そう言い、男は自分の頭を指差し、クルクルと回して見せた。  
「エルフの方も、もう錯乱状態で何があったかわからないんだと」  
「ブルスケッタの生徒がそれじゃ……絶望的だな」  
「ああ。たぶんもう、二人とも退学じゃないかって話だよ」  
それを聞くともなしに聞いていたフェルパーが、不意に席を立った。  
 
「あれ、フェルパー?どこに行くんだ?」  
「え?えっと……ちょっと、トイレ」  
「僕も一緒に行っていいかい」  
「ノーム?お前がトイレに何の用だ?」  
「服にソースを零した。これを洗いたい」  
そう言い、ノームは袖に付いたソースの染みを見せる。  
「ああ、なるほど。なら仕方ないが……その、二人とも、なるべく早く戻ってきてくれよ」  
「うん、わかってるよ。ちょっとだけ待っててね」  
二人は席を立つと、揃ってトイレへと向かう。中に入ると、フェルパーは大きく溜め息をついた。  
「さっきの話の……君、だよね…?」  
「ああ。報いは何倍にもして返してやったよ」  
「………」  
だが、フェルパーの表情は浮かない。ややあって、フェルパーはぽつりと言った。  
「本当なら、君にお礼言わなきゃいけないと思うんだけど……ごめん。なんか、素直にお礼、言えないよ…」  
フェルパーが言うと、ノームは口元と、目にも少しの笑みを浮かべ、フェルパーの肩を叩いた。  
「はははは。君は、それでいいのさ。むしろ、君が喜んで『ありがとう』なんて言ったら、僕は君をぶん殴ってた。その優しさと純粋さ、  
君には失くさないでもらいたいな。白いものを汚すのは面白いにしても、あまりに白すぎるものは、汚すのが勿体無いものさ」  
袖に付いた染みを洗い、ノームはドアに手をかけた。その背中に、フェルパーが声をかける。  
「あ、でも、ありがとうって言えるの、あったよ」  
「ん、何だい」  
フェルパーはその顔に笑みを浮かべ、言った。  
「ディアボロスを、助けさせてくれて……ほんとに、ありがとう」  
「……はは、よせよ。それは、君と彼女本人の力さ。僕はあくまで、背中を押したに過ぎないよ」  
それから、二人はディアボロスの待つ席へと戻った。  
「ただいま〜」  
「さすがに男は早いな。その辺は、いつも少し羨ましい」  
「僕の場合、洗い物に行っただけだからね。男も何も関係ないけど」  
「朝飯が終わったら、また悪魔と戦いに行こうと思うんだが……付いてきて、くれるか?」  
「はは、当たり前だろ」  
「そうだよ〜。今度は、君が何言っても、一緒にいるからね」  
再び戻った、いつも通りの日常。少しだけ密接になった、二人の関係。彼等と距離を置きつつ、しかし誰よりも仲間を思うノーム。  
壊されかけた日常は、しかし決して壊れなかった。  
その後、彼等はクロスティーニに戻るまで、ずっと三人一緒だった。  
そしてクロスティーニに戻るとき、試練をまた一つ乗り越えた彼等は、ほんの少しだけ、大きくなったように見えていた。  
 

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