心配する友人や恋人の声を振り切って、ディアボロスは一人でトハス海底洞窟に向かった。
薄暗い道をたった一人行くディアボロスの目当ては、ガンメンというモンスターだ。極限まで己を鍛える手段として、レベルドレインを受けるためだった。
ワーニングゾーンをぶらぶら歩き回っていると、モンスターが現れる。トハスに生息するモンスターはガンメン以外にもスカイドラゴンやパンサースネイクといった凶悪なものが多いが、強力なブレスと多彩な魔法を操る彼女の敵ではなかった。
かにじゃり水魚をブレスのひと吹きで焼き払い、生き残った一匹を硬い殻ごと素手で叩き潰す。数十回もの転生をも終了させた彼女にとって、最大の敵は油断と過信に他ならない。
瞬く間に殲滅したかにじゃり水魚が宝箱を落とした。珍しく白い宝箱だったので、ディアボロスはしゃがみこんでそれを観察してみる。
普通科の彼女に罠の見極めも解除もできないが、ちょっとした遊び心が芽生えたのだ。
「ん〜……スタンガス、いや、やっぱりワープかな…」
叩いてみたり蓋の隙間を覗き込んだりして、罠の目星をつける。やがて適当に女神の審判だろうと判断すると、答え合わせのためにサーチルを唱えた。
「っと、悪魔の呪いか。やっぱり適当にやっても当たらねぇな……アンロック」
魔法で宝箱の罠を解除し、中身を取り出す。折れたサーベルや魔力の銅貨といった価値の低いものがいくつか出てきただけだった。
がっかりしたディアボロスがそれらをため息とともに道具袋に詰め込んでいたとき、不意に背後に気配を感じる。ディアボロスがあわてて立ち上がろうとしたときには、後頭部を強打されて倒れていた。
朦朧とする意識の中、身体を仰向けにねじる。黄色く光る目で彼女を見下ろしていたのは、一匹のゴアデーモンだ。
ゴアデーモンが鋭い爪のはえる手を振り上げる。思わずディアボロスは首をすくめて目を強く閉じた。胸から腹にかけて切り裂かれる感触。
「くっ!……きゃああっ?!」
内臓を抉られると思っていたゴアデーモンの一撃は、ディアボロスの着ている制服を切り裂いただけだった。控えめな乳房があらわになっている。
怒りと恥辱に歯を食い縛り、ゴアデーモンに拳を突き出す。しかし無理な体勢で放った素手の一撃は難なく受け止められてしまう。
ゴアデーモンがキィキィと耳障りな笑い声をあげて、ディアボロスの乳房を掴んだ。鋭い爪が白い肌に食い込み、力任せの愛撫に激痛が走る。
「痛っ!……ちくしょう、ふざけんなよっ…!!」
ゴアデーモンの頭を消し炭にせんと息を大きく吸ったディアボロス。だが睨み付けたゴアデーモンの醜悪な下半身が視界の端に映り、思わず小さな悲鳴をあげてしまった。
ゴアデーモンの勃起したペニスは、ディアボロスの腕ほども太さがあった。長さもあり、先端は鋭く尖ったそれはさながら槍といっても過言ではない。
それが今まさに、己の性器に狙いを定めていたのだ。数々の死地を越えてきたディアボロスだが、モンスターに犯されることへの恐怖はそれすらも凌駕した。
ディアボロスは腕をめちゃくちゃに振り回し、すっかり取り乱してしまう。
「やだっ……嫌だ、やめろぉっ!!」
ゴアデーモンの槍状のペニスが下着越しにあてがわれた。恐怖に強張ったディアボロスは魔法を唱えられず、ひきつった呼吸ではブレスも吐けない。
グッ、と下着を突き破る一瞬の間があって、ゴアデーモンはディアボロスの身体を貫いた。ディアボロスは限界まで目を見開き、凄まじい痛みに絶叫する。
「ぎゃあああああっ!!」
不幸なことに彼女は強かった。この凄惨な凌辱に押し潰されない精神力も、身を引き裂く痛みに耐えうるだけの体力もあった。ディアボロスはろくな抵抗も出来ないまま、ただ何度も腹の中を抉られる。
「誰か、助けてっ……痛いよおっ……ヒューマン、フェルパー…っ!!」
仲間の名を呼んでも、パルタクス学園にいる彼らにはきっと届かない。心配してくれた手を無下に振り払ったのは、紛れもなく自分なのだから。
ゴアデーモンの動きが性急になり、ディアボロスの身を裂く痛みも跳ね上がる。体内でゴアデーモンのペニスが膨れ上がったのを感じたとき、ディアボロスは一際激しく暴れた。
「やだ、嫌だあっ!それだけは嫌だああああっ!!」
恋人の顔が頭を掠める。身体を重ねるときは必ず避妊をしていたから、ディアボロスはまだ彼の精を受け入れたことはなかった。
助けを求めて泣き叫ぶ小娘を嘲笑うように、ゴアデーモンは焼け付くように熱い体液をディアボロスの中に注ぎ込んだ。
「うああっ、熱いぃ……っうぐ、ちくしょう……ちくしょう…」
食い縛った歯の間から嗚咽がこぼれる。ゴアデーモンは満足したようにペニスを引き抜くと、今度は後ろの穴に狙いを定めた。
痛め付けるようにじっくりと、槍状のペニスがディアボロスの肛門を突き破る。泣きじゃくるディアボロスの喉からは、か細い悲鳴しか出なかった。
「いたい……うああ、痛いよぉ……ぐすっ、助けてぇ、誰かあ…」
彼女の声に答えるように、遠くからいくつもの足音が聞こえてくる。ディアボロスは安堵に息をつき、足音の方に首を向けた。
仲間たちか、通りすがりの冒険者か……期待を込めて暗闇に目を凝らすディアボロス。その赤い瞳に、次第に絶望が広がっていった。
こちらにやって来るのは人間ではなく、ゴアデーモンやドン・オークなどのモンスターだった。下卑た笑いを浮かべるそれらはディアボロスを取り囲み、醜悪なペニスをディアボロスに突き付ける。
一匹のドン・オークがディアボロスの頭を掴み、イボのあるペニスをその口に押し込んだ。えずくディアボロスに構うことなく、掴んだ頭を激しく揺らす。
初めのゴアデーモンがディアボロスの腸内に体液を吐きだした。休む間もなく前の穴にドン・オークが、後ろの穴にゴアデーモンがペニスを挿し込み、激しく腰を動かす。
「……うぐっ…ん"ん"〜〜〜っ!!」
凄まじい痛みに涙をこぼすディアボロスの瞳から、光が消えていく。もはや思考は完全に止まり、恋人や友人の顔もうまく思い出せなかった。
いつしか静けさを取り戻した洞窟に、ディアボロスのすすり泣きだけが響いている。彼女のまわりには頭を砕かれ、身体を焼かれ、無惨に横たわるゴアデーモンやドン・オークの死体が無数に転がっていた。
不幸なことに彼女は強かった。気の遠くなるような凌辱の果てにディアボロスを蝕んでいた恐怖は悲しみに変わり、更には悲しみを怒りに塗り替え、手当たり次第に暴れまわった。
元々が束になろうと負けるはずのない相手。あっさりと全滅したモンスターに、余計に悲しみが込み上げてくる。
恋人が大事にしてくれた彼女の身体は、こんな奴らに汚されてしまった。
「…っふ、ぐう……ううっ…!」
息をしただけで激痛が走る身体を引きずって、ディアボロスは洞窟の奥へ這っていく。何処か遠くで、ディアボロスを呼ぶ声が聞こえた気がした。