「やめて、カンちゃん!何するの!?」  
「……黙れよ。オレが父ちゃんに一言言えば、お前らをあの家から追い出すこともできるんだぞ…」  
カンタは唸るように呟き、サツキの服をたくしあげ、その滑らかな肌に手を這わした。  
びくり、と。  
直に触れる男の手に戸惑い、サツキの身体が震える。  
 
「っやあ!カンちゃ…」  
拒絶を紡ぐだけの彼女の唇を己がそれで塞ぎ、カンタは荒く息を吐いた。  
「…んっ…んぅ…」  
呼吸ができないのか。  
サツキの瞳に涙が浮かぶ。  
かわいそうだと思う。  
綺麗だと思う。  
だけど。  
胸の奥から湧く愛しさと、腹の底から沸き立つ嫉妬に、カンタは自身を止められなかった。  
 
「…痛っ!」  
苛立ちのままに、柔らかな双丘を強く掴めば、鈍い痛みにサツキが悲鳴を上げた。  
思わず、咄嗟に指先に込めた力を抜くと、サツキは涙に濡れた頬を震わせてカンタを見上げた。  
 
「……カンちゃん…?」  
戸惑いと不安に、彼女の声は震えていた。  
僅かに紅潮した頬は濡れそぼち、ひどく煽情的にカンタを煽る。  
カンタはぐっと奥歯を噛み締めた。  
罪悪感に、胸が痛む。  
サツキは誰に対しても、そうだ。  
面倒見がよくて優しくて、明るくてかわいい。  
だからこそ。  
 
「………オレ以外の男と、…話さないでよ」  
そう願った。  
一度願ってしまった欲は、収まることなく、ジクジクと胸を妬いた。  
そうして、学校の帰り際、彼女が自分以外の男子と笑っていることがどうしても許せなくなってしまった。  
 
「…サツキ…」  
いつからか気安くは呼べなくなってしまった彼女の名前を小さく紡ぎ、カンタは彼女の健康的に焼けた首筋に唇を押し当てた。  
腕の中で、自分よりも一回り小さな身体が大きく跳ねる。  
かわいそうだと思う、それでも。  
 
「…あの『お化け屋敷』を追い出されたくなかったら、おとなしくオレに抱かれろ」  
それが唯一、自分が彼女を自分のものにできる手段だった。  
カンタは自身のシャツを脱ぐと、ぽろぽろと涙を溢れさせるサツキに覆いかぶさった。  
 
 
 

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