: 140%"> 東方紅魔郷  

『魔女と魔法使いの夜』 (魔理沙×パチュリー ふたなり)  

 その日、私は犯された。  

         ★         ●         ★  

「遊びに来てやったぜー」  
「呼んでない、呼んでないー」  
 暗く静かでいろいろ歪めて作られた私の書斎。そこに、白黒の魔法使いがまた訪れる。  
 最近の元凶にして、あの真夏の一件以来ここに騒々しさを招くようになった人――と  
いうか張本人。  
「最初の挨拶がそれとは、ずいぶんつれないねえ」  
「この前、人が挨拶を返してる間に、合計十一冊も無断借用してさっさと帰っちゃった  
無礼な人は誰かしら?」  
「あー……、ま、それはそれということで。あよっこらせっと」  
 ここは館の外観よりも広いというのに、彼女はわざわざ私に密着して座ってきた。  
 読書の邪魔になるのは確かだけど、もう何年もそこにいるかのような――実際には一ヶ月  
も経ってはいないが――まるで家族か恋人かというような当たり前の振る舞いに、私は  
ちょっと嫌な顔して主張するが、結局黙って受け入れる。  

「ところで、今日は何の本を読んでるんだ?」  
 彼女は私の肩に手を当てて、興味深げに後ろから覗き込む。  
 もう少し遠慮というものを知ってほしいと思ったが、注意するだけ無駄だと諦める。  
十中八九わかっててやってることだろう。  
「魔法書。見てわからない?」  
「おまえこそわかってて読んでるのか? それ」  
「……実は、あんまり」  

 今日私が手に取っていたのは、いつからあるのかわからない――きっと館のできたとき  
より後だろうがそれも怪しいと思えるのがここでの常――棚の隅っこで数百年のほこりを  
被って待っていた、それだけなら珍しくも何ともない一冊。  
 問題は、書いてある文字が私にもさっぱりわからないことだった。  
 たぶん辞書もどこかにあると思うのだが、少なくともこの本の近くでは見つからなかった。  
今日中に発掘できる確率はゼロに近い。  
 だから、あらかじめ絵として覚えておき、あとで調べやすくしておこうと思っていた  
ところだった。  
「そうか、では先生が優しく手ほどきしてやろう」  
「あら、あなたこそこの言語が読めるの?」  
「いんや、さっぱり。ABCが読める程度だな」  
「ふーん、結局たいしたことないのね」  
 意外。  
 本音を言うならちょっと悔しかった。齢十数年のただの魔法使いに本のことで負けた。  
 いや、もしかしたらただのはったりかも。目の前の少女は食えない性格であることを  
思い出し、考えを改める。  

「なら、この文字はなんて読むの?」  
「そいつはアだ」  
「これは?」  
「そいつはイ」  
「なら次の三文字はウ、エ、オ?」  
「そこまで単純だったら古文の先生は必要ないぜ、ワトソンくん。オはあってるけどな」  
 私の皮肉もスルーして、彼女はすらすらと不可思議な文字を音の響きに変換してゆく。  
 ちくり。  
 胸が痛む。まんまと挑発されていると分かっているのに、ほんのわずかな悔しさが、  
私の中で形を大きくしてゆく。  

 私の胸中を知ってか知らずか、彼女は家庭教師の先生面で講義を続けていく。  
「ではパチュリーくん、ここまでの復習だ。この一節を声に出して読んでみたまえ」  
 ふん、負けないんだから。知識と日陰の少女という肩書きは伊達じゃないのを見せて  
あげる。  
 読んで聞いた知識は絶対に忘れない。私は一字一句違えずにその一節を音に現した。  

 最後の音を唱えた瞬間、私の身体がかっと熱くなる。大気が震え、あらざる物が出現  
する気配。  
 この感触は至極慣れ親しんでいるもの、魔力の発動。  
 忘れていた、これは(あくまで雰囲気から推測しただけだが)魔法の書。となれば今の  
節は一つのスペル――!  
「あっ――」  
 私は反射的にしゃがみ込んだ。  
 周囲には何の変化も起きていなかった。発動したのは、私の内。  

 それは……その、私の股間のあたりに、異常な感触があった。下着を突き破りそうな  
勢いの大きなものが、女にあるはずのないものが。  
「え、なに、うそ……!?」  
 何が起きたのがわからなくて、いや本能ではそれが何か見当がついていた、でも理性が  
それを認めなかった。  

         ★         ●         ★  

 私は隣にいる魔理沙のことを思い出す。  
 だめ、隠さなくっちゃ!  
 私は盛り上がりを何とかしようとして、しかし手で押さえてみれば、それはそこに起きた  
異変を彼女にも、私にも強く印象づける格好になってしまった。  
「パチュリー、おまえ……」  

「だめ、見ないでえっ!」  
 風より早く走って逃げだしたかったが、今まで感じたことはおろか未来に経験するとも  
予想していなかった感触に、足も体も何もいうことをきいてくれず、ただ両手で押さえ、  
足を閉じて、必死に隠そうとしゃがみ込むことしかできなかった。  
「よっと」  
 なのにその魔法使いは、魔理沙は、すごく慣れた手つきで私の両手を軽くのけると、  
あろうことか私のスカートをがばっとめくった。  

 悲鳴をあげたかったのに、声が何も出なかった。  

「おおー、なんかすごいことになってるな」  
 彼女は興味津々な顔つきをして、帽子を外すと、なんと私のスカートの中に頭を埋めた。  
 今一番隠したいところが、下着越しに、彼女に見られる。  
 見られてる。  
 そう意識してしまうと、途端に股間の異物に全身の血が流れ込んでいく気がした。  
 本当にはち切れそうなくらい、私が私の下着を突き上げている。彼女の目と鼻の先で。  
   
 むにゅ。  
「!!?」  
 な、な、な……何事が起きたのかといえば、いきなり布地越しに掴まれた。  
 嬲られている。スカートの下で、すぐ目の前なのに見えないところで、ないはずの大事な  
ところが、上に、下に、この感触は指、五本の指が、あるはずのない私をしっかりと握って、  
摩擦を加えて、私を、私を――!  
「いや、だめぇっ!!」  
 今度こそ私は悲鳴をあげた。  
「そうか? ここはこんなに喜んでるぜ」  
 そういいながら、魔理沙はスカートの中で私のそれを弄ぶ。  
「違う、こんなの違う! こんなの私じゃない! ……いや、やめて、いやあああっ!」  
「へへへ、嫌よ嫌よも好きのうちってな」  

 それから魔理沙は私を丹念に何度も往復し、ようやくそれを解放する。刺激がまだ残って  
いるようで、びくびくしてる。  
 ……違う、今度は下着に手をかけられてる! あわてて止めようとしたけど驚くほどに  
向こうの手が早く、するりと抵抗無しに膝まで降ろされてしまった。  
 棒状のそれが外気に触れた。今まで拘束し、同時に守っていた質感がなくなり、彼女の  
生暖かい息が鋭敏なそこにいやらしく吹きかけられる。  
「やだあ……」  
 私は泣きそうになり、たまらずに顔を手で押さえる。  
 こんな恥ずかしい仕打ちを受けたのは生まれて初めてだ。それも本来なら決して経験する  
はずのなかったことで。  

 私は抗いようもなく、再び、今度は直に握られる。  
 擦られる。守るものはもう何もない。  
 根本をいくつもの指が丁寧に愛撫し、ゆったりとした快楽がじんわりと脳内を支配していく。  
 かと思えば鋭敏な先端を乱暴にいじくられて、激しすぎる刺激が背筋を間断なしに走り抜ける。  
   
 なされるがままに快楽を受け入れるしかなくなったとき、不意に波が途切れた。  
 魔理沙は私をいじるのをやめ、スカートから顔を出すと、私に熱っぽい視線を送ってきた。  
 赤より紅い頬の色。私の頬も彼女のような、いやそれ以上の色に染まっているのだろうか。  
   
 あごを指ですくうと、ふっと、唇を重ねてくる。  
 唇にそっと触れるだけの優しい感触。  
 不意打ち。でも、悪い気はしなかった。  
   
「へへ……実はよ、こっちもこんなになってるんだ」  
 そういうと彼女は自分のスカートを私の目の前でまくり上げてみせる。  
 意外と清純な白い下着が、これでもかというくらいにぐっしょりと濡れていた。失禁と  
区別がつかないくらい。  
 彼女はするするっと下着を降ろしていく。堤防が無くなり、透明な液体が彼女の腿を  
伝って間断無しに垂れていく。  
 そして今度は、私のスカートをばっとめくり上げてしまう。抗う気力は、もうなかった。  

 はじめて今の状態が、私のもとにさらされる。  
 自分のものとは信じられない異形がぴんと張りつめていた。私の荒い息と同期するよう  
にぴくぴくと、何かを求めるように動いていた。  
 魔理沙は自分のものから湧き出る液をすくうと、それに塗り始める。優しく、丹念に、  
私の表情をうかがいながら。  
 応じて、それはますます怒張していく。私の意識とは関係無しに――いや、それは今の  
私の写し、なのだろうか。  
 もう何も考えられなかった。ただたまらずに服の裾を掴み、喘ぎ、いやらしい指の動き  
に身を任せる。  
 十分な滑らかさが確保されると、魔理沙はまた私のものをしごき始めた。  
 緩急をつけ、優しく、愛しく、時に激しく。  
 得も言われぬ衝動が子宮の奥底から走り抜ける。自分一人で慰めていたときには決して  
得られなかった奔流。  
   
 いく、いっちゃうっ……!  
   
 私がすべてをさらけ出そうとしたまさにその寸前で、すべての快感の供給が突如遮断した。  
 行き場をなくした快楽が、今度はどうしようもない苦しみとなって私を襲う。  
 うそ、どうして……?  
 顔を上げれば、魔理沙が私を含んだ笑みと共に見下ろしている。  
「いや、やめないで……」  
 心の奥底に消えたと思った理性が、今更になって自分自身の信じられない言葉に驚いていた。  
 懇願してる。私は、女では決して得られぬ快楽を、あの快楽を請うていた。  
 張りの根本、お腹の中でぶちまけられるのを今か今かと待ち受ける塊が、快感の継続を、  
最後の解き放ちを欲してる。  
「だーめ」  
 だが、意地悪な笑みを浮かべて彼女は拒絶し、自分の指についた私と彼女のとが入り  
交じった愛液を恍惚とした表情で舐め取ってみせる。  
 艶めかしい舌と唇が、自身の人差し指を、中指を、じっくりと味わうようにしゃぶる。  
 魔理沙の指が私の肉棒とだぶる。ううん、だぶらせるように見せつけている。  

 どうして、どうして私のじゃなくて自分の指にそんなことしてみせるの……?  

「お願い、本当にお願いだからやめないで。気が、気がヘンになっちゃいそう」  
 もうヘンになっているのはわかりきっている、だけどほんとにこれ以上に気が変になり  
そうだった。  
「うーん、どうしよっかなー」  
「……お願い……」  
 感情が高ぶりすぎて、意識せず涙声になってしまう。  
 このままの状態が続いていたら、本当に泣き出していたかもしれない。  
「――わかったよ。……でもなあ、せっかくだからもう一工夫付け加えさせてもらうぜ」  
 そういうと、彼女は自分のはいていた黒靴下のうち片方を脱いで、おもむろに愛液と  
唾液に濡れた右手にはめた。  
 そして、靴下の、指とも下着とも異なる独特の質感が、私の熱い塊にある神経を一つ  
残らず刺激し始める。  
 彼女の臭いの染みついた布が、私の最も猥褻な部分に、まるで動物のように自分のもの  
とする証を刻みつけてくる。  

 もうたまらなかった。私は熱に浮かされるまま、魔理沙の動きに任せるだけでは飽き  
たらず、自分で腰を浮かせて前後し始める。  
 焦がれていた衝動が再び怒濤のごとく流れ込んできて、脳の奥に絶頂となって駆け上がる。  
 背筋を悪寒のような快感が走り抜け、今の私のすべてとなる液が熱い怒張から吹き出した。  
 魔理沙の手を、靴下を、図書館の床を、そして彼女の顔にまで飛んで、すべてを汚していく。  
 熱を持った粘液が彼女の頬にこびりついて離れなかった。今までに見たことのない、  
白の体液。それが私から出たという事実がより一層感慨深くさせる。  
   
 けど――高みに達し、すべてをさらけ出しておきながら、私の心はひどく渇いていた。  
 そして起立したそれは萎えることなく、むしろより猛々しくなったかと思えるくらいに  
張りつめたままだった。  

         ★         ●         ★  

「へへ……こりゃまたずいぶん派手にぶちまけてくれたな」  
 頬についた液を左手ですくいながら、魔理沙はにやにやと笑みを浮かべる。  
「あ……ご、ごめんなさい」  
 責められているわけではなかったが、私はついつい謝ってしまう。  
 だって……まさか、こんなに吹き出るとは思わなかったし。  
「まあいいさ。でも、顔に飛ばすのはこういうときにするもんだぜ」  
 出したばかりの余韻に浸っていたそのとき、魔理沙の行動は私の予想を遙かに上回っていた。  
 屈んで私の秘部に顔を近づけると、ためらいもせずにそれをくわえ込んできたのだ!  
「きゃっ!」  
 驚く私の悲鳴などお構いなしに、彼女は新たな行為を開始する。  
 喉の奥までしっかりくわえ込んで、舌と歯と唇と頬の裏の共同作業で私を犯してくる。  
 手とも靴下ともまったく異なる感触。舌がまるで別の生き物のようにうごめき、出した  
ばかりの白い液を一滴残らず舐め取りながら、一番敏感な私全体を犯してくる。  
 やがて、一度口からそれを抜くと、今度はアイスバーを横からくわえるかのように、  
しゃぶりついてくる。  
 歯の硬い刺激が、柔らかい唇の感触が、舌の巧みな動きが、余すことなく私を食べ尽くす。  
 我慢の限界。一度出してなお満たされていなかったそれを再び絶頂に導くには十分な愛し方。  
「……だ、だめ、また、またいっちゃうっ!」  
「おう、いいぜこのまま」  
 そういうと、彼女は再び、今度は一気に喉の奥まで私をくわえると、ピッチを速めてくる。  
 それに加えて、靴下をはめたままの右手が、張りの根本の、女性器に攻撃を仕掛けてくる。  
 布地をまとった指が花弁を押し開き、内側の敏感な部分を探し当てるや否や、口と同時に  
私を余すことなく責め立てた。  
 未知の領域でしかなかった二つ同時の責めに耐えられるはずがなく、私自身も再び腰を  
突き動かす。  
 魔理沙の奥の奥まで、私を叩きつけるように。  
 彼女が息苦しそうにしても、配慮する余裕はもう完全になくなっていた。  
 あるのはただ、肉欲を満たしたいという獣の衝動。  

「あ、ああ、あっ……!!」  
 自分でも信じられないことに、一度目よりも多くの快感が体の奥底からあふれ出してきた。  
 何も判断できず、そのまま彼女の口の中に放つ。  
 彼女のそれほど大きくない口の中にはとても収まらず、唇の端からこぼれて、エプロン  
みたいな服に次々と染みを作っていく。  
 それでもできるだけこぼさないようにと、彼女はいったん顔を上げると、喉を鳴らして  
残りの熱い液をストレートで飲み干していく。  
 そして私を再びくわえ、先端を舌で吸って、出し切れず途中に残った粘液すべてを絞り  
出して、飲み尽くした。  

 激しい体力の消耗に、ただでさえ呼吸器系に障害を持っている私は、何度も何度も荒い  
息を繰り返して落ち着きを取り戻そうとする。  
 日に二度もいったのはいつ以来のことだろう。お嬢様の戯れに付き合ったあの日以来か。  
ただ、あのときはこんな激しさは欠片もなく、暇つぶしの遊戯で終わった。私とお嬢様の  
関係は、ああいうのとは違ったのだと思う。  
 あのとき以来、私が過ごしてきたのはたった一人きりの世界。  
 一人きりのこの書斎で、なんとなく物足りなさが訪れたときに一人で慰めてはそれだけ  
で事足りる。  
 誰もいない私ひとりだけの世界で、私ひとりによる完結。  
 ただそれだけの日々。  
   
「……うーっぷ。わりい、ちと飲みきれんかった」  
 こぼれた白液を手でぬぐいながら、彼女は私を見上げてくる。  
 ――それが今は、ここにもう一人。少し上品さに欠けるけれど、なんだかもうずいぶん  
昔からいるような、図々しくも退屈のしない魔法使い。  
 霧雨魔理沙。その人の名。  
「別に、いいけど。……自分で出しておいてなんだけど、飲めるものなの?」  
 床にこぼれた愛液を自分の手ですくってみた。体温よりも熱く、絡みついて離れない  
粘性を持っていて、これが喉を通るかと思うとそれだけで吐き気が来そうな感じ。  

「ん? 気に入った相手のならな」  
「……ありがと」  
 胸がかっと熱くなる。調子のいい相づちかそれとも世辞かもしれないけれど、魔理沙の  
言葉を私は嬉しく思っていた。  
「いやあ、礼を言われるほどじゃないぜ。ではそろそろ本番へと……ありゃ?」  
 ふっと、力の、魔力の抜ける感触。  
 私の、あるはずのなかった私のそれが、見る見るうちにしぼんでしまい、もとの女の子  
に戻ってしまった。  
「あー……そっか、効果切れちまったか。残念」  
 本当に残念そうに、魔理沙はちっと舌を鳴らして私の秘部をじっと見つめていた。  

         ★         ●         ★  

 だが、それの消失とは裏腹に、私の心はむしろ高ぶりを覚えていた。  
 心と体のうずきは消えることなく、彼女が私の大切な部分を見つめていると思うだけで  
息苦しいほどの切なさを覚える。  
 あれだけ彼女の感触を与えられたのに、あれだけ出して彼女を汚したのに、未だ満たされて  
いないことに気づかされる。  
 満たされぬ欠落。  

 どん。  
 気づけば私は彼女を押し倒していた。勢い余って本の山がばらばらと崩れ落ちる。  
「お、おい、パチュリー――?」  
 呆気にとられている魔理沙の唇を一気に塞ぐ。今度は私から彼女を犯す。  
 やり方がよくわからず、ただひたすらに唇を押しつけ、やがて思いつき彼女の唾液を  
吸い上げる。  
 するとそれに応えるように、彼女の舌が唇を押しのけて、口内に入ってくる。  
 初めての感触に私は驚くが、ああこうすればよかったのかと気づき、ありのままに彼女  
を受け入れる。  

 舌と舌がまるで私たちとは別個のつがいであるかのように、互いを求め、絡み合い、  
吸い尽くし、また絡み合う。  
 口腔の至るところから唾液がまるで愛液のように湧き出て、互いの舌に塗りつける。  
 唾液が湧くたびに喉が渇きを覚え、それを潤そうとより強く互いの舌を求め合い、そして  
また同じ事を繰り返す。  
 何もかも忘れて、ただそれだけの性行為に没頭する。  
   
 いったいどれほどの時間が経ったろうか、どちらからともなく、二人の唇が離れた。  
 酸素を補給しようとつい息が荒くなる。生きるのに必要な行為を忘れるくらい夢中に  
なっていた。  
 お互いに口元からだらしなく液が垂れている。それは二人がたくさん混じり合ったもの。  
 私たちはそれをぬぐうことも忘れて、ただただ見つめ合った。  
   
「……こんなこと、どこで覚えたの?」  
 もう少し気の利いた言葉が出ればいいのにと思ったのに、でもふっとわいたのはそんな疑問。  
 私は、ようやく今になってこれがディープキスというものであることに気づいていた。  
 書物から先人たちの様々な知識を受け継いではいたが、でも今のはそれだけではとても想像  
のしきれない行為。  
「ま、退屈しない生活続けてるといろいろあってな」  
 けれど彼女は適当にはぐらかす。  
 いろいろあった、か……。私以外の誰かとも、こんなことをしていたのだろうか。  
 いや、冷静に考えれば当然やっているのだろう。何の経験もなくてこんなことができる  
はずない。  
 私は、つい無言で魔理沙を問いつめてしまう。  
「……なんだよ、そのツラ」  
「別に」  
 それはすぐに嫉妬というものだとわかった。  
 今まで覚えたことのない感情。  
 他人との能力や知識の差を妬むことはあっても、他者との絆に対して抱いたのは初めて  
の経験。  

「かわいいやつ」  
 満面に優しい笑みを浮かべて魔理沙がささやく。普段のとらえどころのない様子からは  
想像がつかない暖かな笑み。  
 あまりに意外な表情に、胸がどきんとしてしまう。  
 硬直した私の身体を魔理沙はしっかりと抱き留め、そのまま体勢を変えて、今度は私が  
押し倒される形になる。  
 キス。  
 そして間髪入れず、いつの間にか靴下を外した右手で、私の上着のボタンを一つ一つ  
丁寧に外していく。  
 服がはだけ、私の、あまり人前には見せたくない小振りな胸が露わになる。  
「……」  
 なんか嫌な沈黙。  
「悪かったわね、小振りで」  
「いや……なんつーか、おまえ思ったよりも扇情的な体してたんだなって……」  
 その言だけなら褒め言葉なのか今一つ判断がつかなかったが、珍しくその魔法使いが  
照れているように見えたので、そう受け取ることにした。  
 彼女は自分の気持ちを隠すようにさっさとブラを上にどけると、ぴんと起った乳首を  
くわえた。  
 飴のように舌で転がす。そっと舐め、前歯と舌の間でころころと転がし、唇をすぼめて  
吸い尽くす。  
 もう片方は、指がもう一つの舌であるかのように、挟み、転がし、捻る。  
   
 だけど、されるがままは、今の私には物足りなかった。欲に焦がれるあまり心がひどく  
せっかちになっていた。  
 私は、魔理沙の金色の髪を指でそっとすくい、額に口づける。  
 そしてできた一瞬の隙を見計らって、再び彼女の上に覆い被さる。  
 魔理沙の胸を、服を脱がす手間も惜しくて揉みしだく。  
 鷲掴みにしてむちゃくちゃにこねくり回す。  
 そのたびに、雌の匂いが彼女からしてくるように思えた。  

 求めたい。欲したい。  
 服越しなんて耐えられない。もどかしい手つきで彼女の服を脱がそうとして、上着を  
めくり、下着をはぎ取り、双胸に手でむしゃぶりつく。  
 魔理沙の唇を、頬を、喉を、耳を、舌で丹念に舐め回す。  
 足を太股に絡ませ、性器を相手のそれになすりつける。同性では決して合わさることの  
ない部分を、それでも何とか満たしたくて。  
 はじめこそ驚きからか完全にされるがままとなっていた魔理沙も、すぐに私に応える  
ように、体のすべてで愛してきてくれる。  
 臀部を撫で、腿の表面をなぞり、膝の裏を優しくさすってくる。  
 指を私の手に絡ませ、乳房で乳房を潰し、舌を口に強引に割り込ませる。  
 まるで全身を性器に変えたかのように、互いのすべてを激しく犯す。  
   
「……おまえがこれほど積極的とは知らなかったぜ」  
「あなたが、悪いのよ」  
「私は悪女だからな」  
「そうね。イヴに肉の甘美を教えた蛇ってとこかしら」  
 そう、女同士の絡み合いはまるで蛇の様相を呈していた。  

 でも、これだけでは。  
「――でも、まだ足りないの」  
 身体のすべてを使っても、私の胸の高鳴りは、脳髄を焼き尽くすような欲情は、とどまる  
ところを知らなかった。  

         ★         ●         ★  

「奇遇だな、私もだぜ」  
 つっと魔理沙が私から離れた。  
 一冊の本に手を伸ばす。それは、今宵の始まりとなった古い古い魔法の書。  
 彼女は慣れた手つきでページを開くと、すらすらとあの音韻を唱えた。  
 魔力が変動し、あの異形が、今度は彼女のそれとなって私の目前に現れる。  

「あっ……」  
 見ただけで頬が上気し、ありえざる物への期待に胸が早鐘を打つ。  
「じゃ、後ろ向きになって、そこの本棚にでも手をついてくれるか」  
 私は魔理沙に促されるまま、本棚に手をついた。  
「後ろから、なの……?」  
「顔が見えないのはお嫌いかえ?」  
「だって……はじめてだし」  
 でも期待もある。言われるままに後ろを向いたのがその証拠。  
「はじめてで経験してみるのも乙なもんだぜ、ケダモノみたいな愛し方ってやつを」  
 いきり立つ異形が私の秘部へとあてがわれる。そこは一連の行為により、とうの昔に  
受け入れる準備ができていた。  
 泉のように愛液が溢れかえるそこに、魔理沙のものがずぶずぶと沈み込んでいく。  
「くっ……想像以上に、締めつけてくれるな」  
「……はぁ……は、はじめてだもの……」  
 それは、自慰で用いる指とは比べ物にならなかった。苦しみも、楽しみも。  
 異物は遠慮無く身体に侵入してきて、膣壁が裂けそうな苦痛と、私の中に好きな人のもの  
があるという充実感を同時に与える。  
 あ、そっか――好きになっちゃったんだ、私。この魔法使いのこと。  
「どうする? しばらくこのままでいるか、それとも」  
「……思いっきり激しくしていいから、あなたの好きなようにして」  
 自覚したとき、苦痛よりも充実感が上回った。そうするとさらに欲が出てくる。  
 好きな人のをもっと感じたい、もっと滅茶苦茶にされればもっと満ち足りるかも――私は  
わずかに残っていた不安を押しつぶした。  
「いいのか?」  
「……魔女に二言はないわよ」  
 なおも彼女はためらっていたようだったが、二、三度ゆっくりと入り口のあたりを前後  
すると、私を一気に突き上げてきた。  
 奥を守っていた膜が力任せに破られる感触。  
「あっ、あああああっ――!」  

 ――失敗したかもしれない。それはものすごく痛かった。中で血が出てくるのがはっきり  
とわかるほど。  
 が、決して不快ではなかった。痛いのに、一つの安心感が私の中にあった。  
「わ、わりい! 大丈夫か!?」  
 魔理沙は珍しく焦っていた。それを見ると、お腹の奥はまだじんじんと痛むのに、不思議  
と笑いがこみ上げてくる。  
「……何、してるのよ。私は……大丈夫だから……」  
 私は強がってみせた。  
 欠落が大きく埋められたのを実感していたから。  
 彼女が私と共にあるという事実。  
「……動いて。もっと……もっと、あなたを感じさせて……」  
「……お、おう」  
 今度はゆっくりと、私の中を前後し始める。  
 愛液と赤い血が混ざり合い、肉と肉の狭間に行き渡っていく。  
 私は、私の内壁すべてを使って彼女を包み込もうと努力する。今この体勢で魔理沙を  
感じられるのは唯一そこだけだったから。  
 もっとも大事な部分を一層鋭敏にして、今の彼女のすべてを受け止める。  
 私のを慰めてくれた魔理沙の手や舌よりも、もっと大切に力を込めて、今は魔理沙にある  
それを愛する。  
 肉が擦れ合い、分け入れられて、きっとどんなに経験しても耐えようがないと思う快楽  
がなだれ込み、あふれて、思考を麻痺させていく。  
「いいぜ……いいぜ、パチュリー!」  
「はあっ……魔理沙、魔理沙……!」  
 互いにうわごとのように二つの名前を呼び合う。どちらも我を忘れかけていた。  
 私の胸に魔理沙の両の手があてがわれ、興奮した手つきで力強く揉みしだかれる。  
 彼女を感じることができる部分が増えて、私はさらに興奮する。  
   
 猥褻な音が、書物だけの静寂の世界に響き渡る。  
 本棚のそびえる谷間で、私は彼女に犯されている。  
 本たち以外のものに私は今、愛を教えられている。  

 やがて訪れる、今日何度目となるかもうわからなくなってしまった絶頂。  
 奥の奥まで叩きつけて、魔理沙が私の背中に覆い被さってくる。服越しに彼女の柔らかな  
感触が背中に当たり、前でしっかと掴まれた私の胸の感触とに挟み込まれる。  
 溢れるほどの熱い精を受けて、私は床に倒れ込む。さっきまであれほど強く結びついていた  
性器の結合が外れ、二人の混じり合った紅白の液が腿の内を伝って零れ落ちていく。  
 魔理沙も力尽きてか、あわや私を押しつぶしそうになり、寸前で本棚に手をかけ身体  
を支えた。  
 私は冷たい床にうつぶせになったまま、顔だけ後ろに向けて魔理沙と視線を合わせる。  
「……ふふ、案外だらしないんじゃないの……?」  
 彼女はこう見えて、割と体力がないのかもしれない。ふとそんな風に私には思えた。  
「……へ、さっきからずーっと溜まりっぱなしだったからな……ちょっとパワーセーブを  
忘れちまったぜ」  
 そういえば私は何度もいかされたのに、魔理沙は私を責めるばかりでただの一度もいって  
いなかった。  
「ずるいんだから」  
「何が?」  
「……なんでもない」  
 私はそう呟くと、目を閉じてキスを促す。  
 唇を暖かい感触が癒してくれる。  
「……痛むか?」  
「言ったでしょ、大丈夫だって」  
 痛いのは確か。でもそれ以上に私は満ち足りた思いで一杯だった。  

         ★         ●         ★  

「そっか。ならばこのまま連戦だな」  
 ……え?  
 言い返す間もなく、再び私は後ろから貫かれた。  

「あ、あぁっ……!」  
 余韻さめやらぬ私の中に、出したばかりとは思えないほどの大きさの、魔理沙のものが  
入ってくる。いや、出す前よりもさらに漲っているかもしれなかった。  
 そして彼女は私の下に手を回すとひょいと抱き上げる。  
 背格好は同じくらいなのに、私を余裕で抱き上げる。  
 そして、重力に従って、私の秘部に魔理沙のそれが深々と突き刺さる。  
 子宮の奥底が突き破られそうな衝撃に、私は唇を噛んで必死に耐えた。  
 それでも激しい感覚に耐えきれず下を向くと、私と魔理沙の繋がっている様が視界に  
飛び込んでくる。  
「ちょっ……やめて、これ、恥ずかしい……!」  
 大事なところを開けっぴろげにして、私はまるで小さな子供のように弄ばれている。  
「いいや、ウソだな。パチュリーは恥ずかしいので感じるたちなんだろ?」  
「うぅっん……! そんなこと……」  
 ――否定できなかった。  
 言葉で、視覚で、羞恥心を自覚するとき、私は本能的に彼女をきつく締め上げていた。  
 それに応えるように、魔理沙は腰を回して私の中を限界までかき回す。  
「はあ、あああああっ!」  
「はははっ……いいんだろ、これがいいんだろパチュリー! なら一段と派手にいくぜっ!」  
「派手ってどうす――きゃっ!」  
 魔力の躍動を感じると、あろうことか、彼女は私と繋がったまま宙に浮かび上がった。  
 眼下には見慣れた本棚の列――だがこんな状況ではそれすらも新鮮に映る、というか  
じっくり見ている暇もない。  
 上昇はなおも止まらず、この部屋に一つだけある天窓に向かうと、そのまま空に飛び出した!  
 私は魔理沙に貫かれているという一番恥ずかしい姿のまま、星と月と有象無象が同居する  
夜の世界に連れ出される。  
「ちょっ、誰かに見られたら……!」  
「大丈夫。レミリアは神社に泊まり、妹君は遊び疲れて爆睡中、メイド長も今の時間はもう  
寝てる……あーでも騒いでたらさすがに気づかれるかもなあ」  
「……!」  
 冗談じゃない、咲夜でなくとも他の誰かに見られたら、明日の朝には私の痴態が事細かな  
おまけ付きで館中に広まっている様が目に浮かぶ。  

 私は反射的に口を押さえ、そこに魔理沙の激しい突き上げが来る。  
「ん……んん、んっ!」  
 内蔵がよじれるような感覚に、私はそれでも声が出ないよう懸命にこらえる。  
 そんな私を面白がるように、魔理沙は私の耳周りを責めてくる。裏筋を舐め、たぶをはみ、  
音を立ててしゃぶる。  
「ほら……見てみろよパチュリー。月があんなに綺麗だぜ」  
 顔を上げれば、そこには夜の王たる紅い月。  
 ふと気がつけば、紅い月光がまるでスポットライトのように私たちの繋がっている様を  
さらけ出していた。  
「やだ、完全に丸見えじゃない……!」  
「ああ、パチュリーのエロい姿がお月様に丸見えだぜ。このいじりがいのある胸とか、  
ぎゅうぎゅうに締めつけて愛液を振りまくあそことか、犯しがいのある唇とかな」  
 そういいながら魔理沙は、私の胸を、繋がったままのあそこを、唇を、見せつけるよう  
に手でいじくり回す。  
「やだ……もう言わないでよ……」  
「お断り。パチュリーがかわいすぎるのがいけないんだからな……本当に」  
 魔理沙は私の顔だけ振り向かせると、もう何度目かのキスを、荒々しい接吻を口にくれる。  
上下左右に揺さぶられながら、私は彼女の口を追い求める。  
 なんだか調子のいい言葉。けれどそんな言葉に酔わされている私がいる。  
 ――なら、このまま酔い潰されるのもいいかもしれない。  

「……お願い、前からして」  
「なんだ、後ろからはイヤになったか?」  
「そうじゃないけど……もっとキスしていたいし、それにあなたを見ていたいから」  
 お返しとばかりに、私も恥ずかしいセリフの一つも吐いてみる。  
 普段ならとても言える言葉ではないけれど、自分が酔っているという自覚が、私を饒舌  
にさせていた。  
「これだけ私に恥ずかしい思いをさせているんだから、一つぐらいお願いごときいてよ……」  

「……わかったよ」  
 ねだると、割とあっさり彼女は聞き入れた。  
 私たちは体勢を入れ替え、再び行為に没頭する。  
 私は彼女の首の後ろに手を回して、落ちそうになる体を支えながら、深く深く彼女を愛す。  
 誰かに見られるかもという畏れはまだ心の片隅に残っていたけれど、それよりも魔理沙  
と一緒にいきたいという気持ちが勝っていた。  
 私は強く強く魔理沙を抱き締め、唇を重ね舌を触れ合う。快感のあまりに腕の力が抜けて  
崩れ落ちそうになれば、今度は魔理沙が強く私を抱き締めて、強烈な口づけを交わしてくる。  
 二人の興奮が高まるにつれて行為もさらに激しくなり、子宮を限界まで突き上げる滅茶苦茶な  
衝撃が何度も何度も私を襲った。  

「くっ……そろそろ、いくぜ!」  
「うん……うんっ、きてぇっ!」  
 最後に意識が飛び、熱い精が私のすべてを満たした瞬間――私たちを支えていた魔力の  
感覚まで消失し、そのまま二人して屋根の上に落ちた。  
「いったぁ〜い……」  
「うおお……緊張が緩んで油断したぜ」  
「……ちょっと、飛ぶなら飛ぶで最後まで飛んでおいてよ」  
「いやいや、ちゃんと最後まで飛んだだろ。極楽浄土か桃源郷まで」  
「……バカ」  
 私は魔理沙の胸に顔を埋めた。  
 落ちたときとっさに私をかばってくれていたことは、しっかりわかっていた。  

         ★         ●         ★  

 そのまま二人で抱き合ったまま、屋根の上に寝転がる。  
 先ほどまでの苛烈さはどこへやら、今は静寂が二人だけの夜を支配していた。  
 月は中天をとうに過ぎて、紅い夜は少しずつ終わりへと近づいていた。  

「ふ〜、それにしても今日は疲れたな」  
「ほんとね……いつも通りの、二人で本を読んで、それだけの夜になると思ってたけど」  
「そうか? 私はこんなことになるんじゃないかと思っていたぜ」  
「でまかせばっかり」  
「いやいや、私の勘はよく当たるんだ。月に三回くらい」  
 事が済んだら、いや事が済んでも、いつもの魔法使いがそこにいた。体を交えた相手でも、  
この少女は態度を改めることをしないらしい。  
 私はふっとため息をつき、それから――ある一つの可能性に思い当たる。  
「ねえ……もし自分の勘を当てようと思ったら、どうする?」  
「もちろん、自作自演だぜ」  
 私の嫌な予感を、彼女は面白そうに肯定する。  
「……じゃあ、まさかあの魔法書……」  
「いや、あれがここにもあるのを知ったのは、今日おまえが読んでいたからだぜ。……  
だから天命だったんだと思う、これが」  
 だからといって――。  
 私は頭がくらくらしてきた。この魔法使いは、内容まできちんとわかっていて、私に  
あのスペルを唱えさせていたのだ。  
「はめられたー」  
「よしなら今度はそっちがはめてくれな」  
「そこ、親父ギャグ言わない」  
 ふう。私はため息をつく。  
 あんなに燃え上がっていたのはいったい何だったのだろうとふと冷静になる。彼女は、  
私を――  
「……」  
 私を――?  
 彼女は、私をどういうつもりで抱いたのだろうか。  
 唐突に不安になる。  
 数多の本とほんのわずかな館のことしか知らなかった私を本気にさせたこの人は。  

「ねえ、魔理沙――」  
 私は隣にいる魔法使いに声をかけようとして。  
 キスされた。  
「……愛してるぜ、パチュリー」  
「……!」  
 ささやかれた直球の言葉に、私は今日の月より真紅に染まる。  
 いや待てよ、もしかしたらからかっているということも――。  
   
 彼女の目を見て、その考えを私は消した。  
 シンプルに私を見つめるその瞳。  
 この魔法使いはこれまでたくさんの嘘をついてきたかもしれないが、でも、大切なとき  
に嘘をつくことは同じ魔術に携わる者としてないと思った。照れ隠しをすることはあるかも  
しれないけれど。  

「浮気しないでよ」  
 私はついつい軽い憎まれ口を叩いて返してしまう。  
「んー……私は恋多き乙女だからな、完全な保証はいたしかねるぜ」  
 ……この雰囲気で、本当に『真面目』に答えるか、この魔法使いは。  
 私はこれに頭突きで返した。不意の一撃は、まともに魔理沙の鼻っ柱を直撃する。  
「いって〜! なんだ、愛の語らいに暴力で返すか、この魔女は」  
「そんな愛の語らいがありますかっての!」  
 本当は私の振った言葉がいけなかったのかもしれないが、それはとりあえず棚に上げて  
怒っておく。  
「……よし、わかった。言葉で解り合えないなら、肉体で語り合うしかないぜ」  
 そういうと、魔理沙はあっという間にマウントポジションを取ってしまった。  
 その股間には、未だ萎えずにぎんぎんとそびえ立つ肉棒の姿が。  
「あなた、さっき疲れたって……!」  
「惚れた相手を前にすれば、活力はいくらだってわいて出てくるもんだぜ。というわけで、  
エキストラステージに突入〜!」  
「また調子のいいこと言って……や……あ、ああああっ!」  

 

 普通に始まらなかったその夜は、結局普通には終わらずに。  
 真夏の暑さが残る中、私と彼女二人だけの時間はいつ終わるともなしに続いていく。  

(了)  

 

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