「や、やめろ・・・やめてくれ・・・」
抵抗しようとするが手足は拘束され動くことができない。
「それを私にさす気か・・・?いやだ、やめて・・・」
周りからは 観念しろ などという声が聞こえてくる。
そして少しずつ「それ」は近づいてくる。
「や、やめ・・・い、いたっ・・・・・・痛いっ!!」
ついに「それ」は私に突き刺さった。
そして液体が流れ込んでくるのが分かる。
液体がすべて流れ込んだ後、私はただ泣きじゃくるしかなかった。
今日は最悪の1日だった。
それは熱で倒れた翌日のことだ。
朝起きるとまだ体がだるい、熱があるようだ。
「おう、おはよう。よく眠れたか?」
オーギ、一晩中見ててくれたのか・・・ありがとな。
そう思いつつ おはよう と返す。
するとオーギは私の額に手を当てる。
「うーむ、まだ熱が下がってないな。仕方ない、寮までおぶっていくわ」
「ば、ばか。自分で帰るって言ったろう!」
必死に拒否する。だって恥ずかしいじゃないか・・・
「でもなぁ、キミ。その状態でまともに歩けるか?途中で倒れるのがオチだぞ」
「だから歩けるようになったらって言ってるだろうが!」
そんなやり取りをしていると他の面子が来た。
「アマネカー、少しはよくなったー?」
「会長、大丈夫ですか?」
「オーギさん、一晩中お疲れ様です。あ、お茶いれてきますね」
「あんだけ暴れまわっても大丈夫なアマネカが倒れるなんて珍しいよねー」
各々いろいろなことを言っている。
「みんな、おはよう。アマネカはまだ熱が下がらないんだ。だから寮まで運んでやろうと思うんだが、本人がなぁ」
と私の方を見る。
「オーギ君に運んでもらえばいいじゃない、何がダメなの?」
リエが少しにやけ気味に私を見てくる。
・・・こ、こいつめ・・・
「おぶってやるって言ってるのに駄々っ子みたいに拒否するんだよ」
・・・こっちを見ているリエの目は明らかに笑っている・・・くそぅ・・・
「あのー、おぶるのがダメならお姫様だっことかどうでしょう?アハハー」
フ、フツーの奴!いらんこと言うな!!
「あー、それはいい考えねー。ねぇ?アマネカ」
こいつ・・・絶対楽しんでるだろ!むかつくー!
「そんな恥ずかしいことできるかー!」
「じゃぁ、おぶってもらうしかないわね。少なくとも寮には戻らないとね。いつまでもここに居ても良くならないわよ」
・・・・もうあきらめるしかないか・・・観念してオーギの背中につかまる私。
私を背負ったまま街中を歩くオーギ。
パシ研メンバーも同行している。
私は恥ずかしくてオーギの背中に顔をうずめていた。
「ところでオーギ・カットラス。医者には診せたのか?」
む、無駄美人!医者なんて言うな!医者に連れて行かれたら・・・たぶん・・・
「あー、そういや医者に診せてないな。寮に連れて行く前に医者に行くか」
その言葉に私は過剰反応する。
「医者はいい!大丈夫だから寮につれていってくれ」
「でも会長、熱もさがってないですし医者には診てもらった方が」
「そうですよ会長、お薬ももらわないと」
トアラ、メイル!いらんフォローするんじゃない!
そして医者に行こうとするオーギの背中で暴れる私。
「寮にいけと言ってるだろー!!」
しかし、やはり簡単に押さえ込まれてしまう。
「昨日から熱が下がらないのですか。しかしまぁ特に異常はないし、体調を崩しただけでしょう」
医者の言い方からするに重症というわけではないらしい。
よしよし、それなら早く薬をくれ。早くここから脱出しないと・・・あれが・・・
「お薬を出しましょう。それと注射を一本打っときましょうか」
ちゅ、ちゅ、ちゅ・・・注射だと・・・!?
「いーーーーやーーーーーだーーーーー!!!!注射はいーーーやーーーーだーーーーー!!!」
注射は大嫌いなんだ!!!!
アレだけはイヤだ!絶対イヤだ!!
「アマネカ、暴れるんじゃない!一発打ってもらっておけばだいぶ楽になるんだぞ」
「ヤダヤダヤダ!アレだけはイヤだー!!」
オーギが押さえ込もうとするが、今回だけは私も必死だ。
「リエ、エアナ!お前ら両足を押さえろ!カルは左手だ、オレは右手を押さえる!」
指示された場所を押さえ込むパシ研メンバー。
組織戦とは卑怯な!!
「メイル嬢ちゃんは袖をまくってくれ」
メ、メイル!お前まで私を裏切るのか!?
「ごめんなさい会長。でも会長のためですから・・・」
「や、やめろ・・・やめてくれ・・・」
抵抗しようとするが手足はパシ研メンバーに拘束され動くことができない。
「それを私にさす気か・・・?いやだ、やめて・・・」
顔が引きつり、声がかすれていく私。
「観念するんだな、アマネカ・マッハバスター」
「こうでもしないと、絶対注射から逃げるでしょう?」
「アマネカも子供ねー、注射が怖いなんてさー」
「痛いのは一瞬ですよ アハハー」
そして少しずつ注射針が近づいてくる。そして・・・
「や、やめ・・・い、いたっ・・・・・・痛いっ!!」
ついに私に突き刺さり、薬がが流れ込んでくるのが分かる。
「・・・ひっく・・・・・・ひっく・・・うぇ・・・・・・」
寮への帰り道、オーギの背中で泣きじゃくる私。
「キミなぁ・・・注射一本でそこまで泣くこともないだろう?」
オーギが呆れ気味に話しかけてくる。
「・・・うっ・・・うっ・・・・だって嫌いなものは嫌いなんだ・・・うわぁぁん」
我ながらかっこ悪すぎる・・・
そんな私の頭を優しくなでてくれるオーギ。
やっぱり大きくて暖かい手だなぁ・・・それに背中も。
もう少しこの背中にいたいが寮までもうすぐだ。
それをを残念に思う私だった。