僕…倉敷敦河(クラシキタイガ)は、どこにでもいる普通の高校生だった。  
両親を二年前に亡くしてしまったけれど、その代わり…とっても綺麗で優しい燕(ツバメ)姉さんに、  
どんな時も側にいてもらえた―守ってもらえていた、幸せな男の子だった。  
 
でも、今の僕は…きっと誰よりも最低な、男だ。  
冷たい夜風が流れてくる部屋の中、獣のように手をつく僕の真下に、仰向けのツバメ姉さんがいる。  
…僕がこうした。大好きな姉さんを、何も言わずに僕は押し倒し、こうして組み敷いているんだ。  
「タイガ…君…」  
彼女の真っ白なブラウスははだけ、男を惑わすように丸くて大きい胸の谷間はもう露になっている。  
「…どう、したんですか…?何か、あったんですか…?」  
きっとツバメ姉さんは怯えてもいるだろう。怖がってもいるだろう。だけどもその声は、  
あくまで弟を気遣う姉としての「いつも通りの」優しさに満ちていた。  
―どうして、どうしてそんなに…!  
このひとは、何があっても僕を受け止めようと、するんだ…!!  
「姉さん…姉さんが、いけないんだ…!」  
僕は訳のわからない怒りを吐き出しながら、姉さんの乳房をギュッとつかんだ。  
ハッとするほど艶めかしい肌の感触が、僕の心臓を―「ドキドキ」を加速させていく。  
 
そう…思えば、吐き気すら覚えるような最悪の「ドキドキ」が何日も続いていた。  
何があったって訳じゃない、あえて言えば時間が経つごとに…一日が過ぎるごとに僕の体内の、  
化け物すら引き寄せる謎のエネルギー体「原始の心臓」(オリジン・ハート)が軋むように痛んでいた。  
正体不明の癒される事のない痛みと、積み重なっていく不安。…僕は、怖かった。  
そしてあろう事かそれらの捌け口を、僕は最も身近で大切な存在に求めてしまったんだ。  
 
誰より大好きなツバメ姉さんの笑顔を曇らせたら、汚せてしまえたら、もう苦しむ事はなくなる。  
何もかも壊せてしまえたら、失えたら、いっそ楽になれる―そう信じてしまったんだ。  
 
ここ数日の僕の変調を見かねて声をかけてきた優しい姉を(こんな時ばかり)一喝して、  
乱暴にフローリングへと叩きつける。そして彼女の服の胸元に手をかけると、  
ボタンを弾き飛ばすような勢いで一気に引き裂いてみせた。まろび出た乳房は  
まるで完熟の果実みたいで、おまけに柔らかさをたたえるようにいやらしく揺れたんだ。  
―そんなツバメ姉さんのおっぱいを、僕は今力強く握りつぶすようにとらえている。  
「…っ…!」  
たまらず姉さんは首を仰け反らせた。だけど僕はあえて構わないようにしながら、  
そのふるふると震えるような胸の手触りを何度も確かめるのだった。  
 
…いつか見た悪夢で「もう一人の僕」が囁いた、僕の本当の望みが叶おうとしている。  
愛しさの裏返しの―暗く陰鬱な、性的欲求から引き起こされる破壊衝動。  
あの時(悪夢)は…もう一人の僕の声を、僕は必死に否定し格好いい言葉も叫んだけれど、  
やっぱりアイツが正しかった。僕は…自分に負けて欲望に流される弱虫なんだ。  
 
「…何が…『大丈夫ですか』なんだよっ…!…ハッ、大丈夫なワケないじゃないか、  
いつもいつも男を…僕を誘うような仕草ばっかり、して…!…この大きい胸は何なんだよ!?」  
まだかろうじて隠れている、姉さんの胸の先端―乳首を、ブラウスの中に滑り込ませた指先でつかんだ。  
緊張しているのか、別の他の理由かはわからないけど、それは充血して固くなっているように感じられた。  
「んっ!」  
頬を朱にするツバメ姉さんの吐息は官能混じりにも思えて、僕の胸の暴走は勢いを増していく。  
 
「僕は…僕は、いつもガマンしていたんだ!『弟』だから…姉さんとたった二人きりの、弟だから…!  
こんないやらしいおっぱいをいつも見せつけられても…無防備に、スキだらけで見せられても…!  
姉さんは姉さんだから、僕はちゃんとガマンしてたんだ…!胸のドキドキを、抑えて…!!」  
「タイガ…君…っ…!?」  
姉さんの乳首を指の股で挟みながら、僕は改めて豊満な乳房を鷲づかみにしてみせた。  
「…あ、ぅ…っ!」  
「痛い!?痛いかもね、でも…僕の胸は、きっともっと、痛い…!ドキドキをガマンして、  
本当の自分をガマンしていた僕の胸は、ずっと痛かった…!!」  
まるで僕の指が、ツバメ姉さんのおっぱいへと沈んでいく…ようにも感じられた。  
ほんのり熱を帯びた彼女の胸は、まるで本人の受容の心そのもののように僕の手を受け止め、  
少し力を加えるだけでやわやわと形を変えてくれる。…それは至福の心地良さだった。  
「ぁ…あっ…、タイガ…君…」  
「胸が…胸が、あったかいよ、姉さん…!あったかくて、柔らかい…!」  
僕は興奮したような口調になって何度も姉さんの胸をもみしだく。それに合わせて、  
ツバメ姉さんも艶めかしい声を可憐な唇から漏らしていった。  
「あ…あっ、あっ…。…ん、ああっ…!…」  
―くそ、暴いてやる…!こんなに気持ち良くて、僕の手に媚びるようにしてくるものの正体、  
今すぐ暴いてやるんだ…!この目で、しっかりと確かめてやる…!  
 
(姉さんを恥ずかしい目に合わせて…姉さんも同じようにドキドキ、させてやる…!!  
そうだ…僕と同じような胸の苦しみ、味わわせてやるんだ…!!)  
僕の胸が、動悸のリズムで激しく訴える。瞳を潤ませたツバメ姉さんの視線を無視しつつ、  
僕は一旦おっぱいから手を離すと…千切れかけの彼女のブラウスを翻してみせた。  
 
…すると、僕の目の中に、今まで見た事もない綺麗な色が飛び込んできたのだった。  
 

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