ここまで逃げれば奴だって追いつけないだろう。  
神威はほっと息をついて繋いだ手の方を見た。手の主―昴流はひどく申し訳なさ  
そうな顔をしていた。  
「神威、ごめんね。僕のせいで…」  
昴流は優しすぎるが故にしばしば余計な問題を抱え込んだ。今回もそうだ。  
あんな奴に血を与えてやる必要なんて無かったのに。  
神威は何も言わずに昴流を抱き寄せた。  
奴との戦闘の傷はほとんど治りかけていたが、昴流からは芳醇な血の匂いが惜しげもなくしていた。  
どこまでも純粋な昴流には似合わない、暗い欲望を掻き立てる香り。くらくらする。  
耐えきれなくなってその白いうなじに牙を立てた。  
「ッ…!」  
昴流の顔が僅かに歪んだが、それさえも美しいと思う。血はどこまでも甘く、とろけるような味がした。  
俺以外の人間にこの血を与えただって?カッと頭に血が上るのを感じた。  
(渡さない…)  
「昴流、」  
神威は昴流のドレスシャツを勢いよく引っ張った。  
先の戦闘でボロボロになっていたそれはビリビリと耳障りな音を立て簡単に破れた。  
小振りだが形の良い胸が露わになる。  
「神威…!?」  
昴流は慌てて離れようとするが神威が手首を掴んでそれを許さない。体ごと引き寄せて耳元に囁いた。  
「昴流、しよう。」  
 
 
 

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