不安だったんだ。
何時まで、この気持ちが抑えられるか。
例え記憶を失くしたサクラでも、
おれにとってはさくらで
いつも自分を抑える事で精一杯。
「小狼くん?」
サクラの声に、はっと我に返った。
サクラは不思議そうな顔で、おれを覗き見る。
「どうしたの・・・?」
白い手が、おれの腕にそっと触れる。
サクラにとっては何でもないような行動でも、おれにとっては一大事だ。
呼吸を止めるように、想いを押し込める。
「何でもないです。」
静かにそう言って、サクラの手をゆっくり掴み、自分から離れさせた。
笑えているだろうか・・・。
サクラから、笑みが漏れたのでほっとする。
ちゃんと笑えていたみたいだ。
サクラが俺の部屋に、チョコレートという甘い飲み物を持ってきたのは、数十分前。
サクラはあの日から、いつも持ってきてくれるようになった。
そう、対価の重さを改めて知ったあの日。
今も同じように、ベッドに二人並んで、
他愛も無い事を話して居る。
だけど凄く幸せな時間だ。
「あッ・・・」