今夜は新月だというのに、少女の髪は何を反射してこうも照り輝いているのだろう。  
艶めくそれを一束すくいあげ、黒鋼はふと疑問を持った。  
少女自身の内なる光を受けているのか、それとも新月ゆえによく見える、遠い星々の明かりを  
受けているのか。  
唇を押し当てると、それはひんやりと冷たかった。神経など通っていないのに、少女は唇が髪に  
触れた瞬間、ぎくりと肩をこわばらせる。  
その途方に暮れたように揺れる瞳が、どうしようもなく愛しかった。欲しかった。  
「黒鋼、貴方、怖い顔をしていますわ」  
「元々だ」  
「護衛はどうしたのです」  
「人を殺めちゃいけねぇんじゃなかったのか?」  
「そういう意味ではなくて」  
「知世姫」  
呼びかけると、平生は余裕綽々といった風に微笑んでいる知世の顔が、ほんの少しだけ歪む。  
これから起こることへの羞恥に、期待に、ほんのりと赤らむ顔を抑えられないのだ。  
普段ならまず拝むことのできないその表情を見ることができるのは確実に黒鋼一人だけで、  
それだから彼はこの行為をたいそう気に入っている。  
頬に手をかけると、知世はいよいよ困ったように眉を下げた。  
嫌なら抵抗すればいいのだ。彼は彼女の本気の命令には決して逆らえないし、彼女には力がある。  
抵抗できる力があるのにそれを行使しないのは、行為を肯定してしまっているからに他ならない。  
「……知世姫」  
唇が合わさる刹那、知世は目を閉じた。  
 
「……ふっ、はあ……んん」  
少女の口内にある快楽のスイッチとでもいうものを、黒鋼はすでに熟知していた。  
舌先に頬の裏、上顎。それらを熱い舌で舐っていくと、知世の息は次第に上がってくる。閉じた  
まぶたはふるふると震え、黒鋼の腕を掴むてのひらの力は強くなる。  
息苦しいのだろう、時折小さな拳で黒鋼の胸板を叩くが、彼は口付けを止めてやらない。  
舌を擦り合わせ、口内すべてを嬲り、ようやく離す。  
くた、と力の抜けきった知世は、黒鋼が床に彼女を押し倒しても、もはや潤んだ目を向けるだけだ。  
その唇の端から、飲み込みきれなかった唾液がツ、と零れ落ちる。舌先で舐め取ると、知世は  
そっと熱いため息を吐き出した。  
「感じたか?」  
言いながら黒鋼の指は着物を左右に開く。するりと入り込んできた冷気に肌が粟立つ。と同時に  
いきなり太腿に添えられた指の感触に、知世の体はビクンと震えた。  
「く、黒鋼、やめ、やめなさ……」  
すべてを言い切る前に声は吐息に変わった。黒鋼の指が、敏感な肉芽を掠めたのだ。  
「っふぁあ……!」  
「どうした、随分濡れてるな」  
「あ、ちが、違います……ああっ!」  
体を知世の足の間に割り込ませ、黒鋼はひくひくと蠢くそこにふっと息をかけた。  
そのまま顔を柔らかな腿に寄せる。闇の中でもほのかに浮かび上がる白い腿は美しく、しかし  
嗜虐心を妙にそそった。甘噛みするように犬歯でなぞり、そこに舌を這わせていく。  
舌はだんだん上にのぼっていくというのに、それは決して知世の溶けきった部分、先程から蜜を  
たらし黒鋼を呼んでいる場所に触れない。  
「ふぅ、うう……く、ろ……黒鋼ぇ……」  
「何だ」  
触れてもいないのに蜜は溢れてくる。足の付け根にちゅうと吸い付きながら、黒鋼は唇を歪めた。  
「やめなさい、と命令したじゃねぇか」  
そうして、指先で円を描くように秘所のまわりをくるりと撫ぜる。  
顔を持ち上げて知世を見下ろせば、彼女は泣き出しそうな顔をいやいやと振って黒鋼に  
縋りついた。  
「黒鋼、もう、私はっ……!」  
それでも最後の言葉を口にしない知世をからかうように、秘所のまわりを掠める指はそのままで、  
空いた手が敏感になった乳房の先端をピンと弾いた。  
「ひゃぅっ!」  
弓なりに体をしならせて知世が喘ぐ。とうとう瞳からは涙が零れ、こめかみを伝って落ちていく。  
水分を過剰に含んだ瞳はそれ以上に欲情に濡れており、荒い息の下、とうとう黒鋼の望むままに、  
自らの欲望を口にした。  
「黒鋼、触って、ください……くろがねぇ……!」  
 
すべて言い終わらないうちに、黒鋼の指は秘所に差し込まれていた。ぐちゅぐちゅと激しい  
水音をたてながら抜き差しされる指はたちまち本数を増やし、自由に知世の膣内をかき回す。  
「あっ、あん! んっ!」  
望んだ快感を与えられ、知世はびくびくと震えながら声を上げた。無意識であろう、高々と  
上がった足は反り返り、爪先が小刻みに揺れている。  
顔を再び沈め、黒鋼は舌でつんと尖った肉芽を思う存分いじめた。強く押しつぶし、また  
くすぐり、舌全体でじっとりと舐める。  
最後にきゅっと肉芽を吸い、知世の甘い嬌声をひとしきり聞いてから顔を上げた。  
熱く浅い呼吸を繰り返す知世の体は桜色に染まり、それが汗で淫靡に輝いている。涙と汗で  
額に貼りついた知世の前髪を指先で撫ぜつけると、彼女は切なそうに鼻をくすんと鳴らした。  
「黒鋼……」  
「欲しい」と唇が形作る。音はない。黒鋼の心臓が疼いた。欲情に、少女への確かな想いに、  
ズクズクと音を立てた。  
 
 
 
 
 
鈍く霞みがかる頭のうちで、知世の顔が緩やかに掻き消えた。  
窓の外は未だ、すべてを飲み込まんとするかのような漆黒の闇が広がっている。  
起き上がればベッドがギシ、と軋んだ音をたてた。彼の国にはなかった寝具。夢の終わりを  
告げる現実に、知らず息が漏れる。  
闇のなか、常ならば白々と部屋を照らす月明かりが今日はない。  
あの夜と同じ、すべてが黒にまどろむことのできる新月の夜だから、こんな夢を見たのだろうか。  
もう一眠りしようかと一瞬思い、しかし結局黒鋼は起き上がった。眠れば今度はきっと違う夢を  
見るのだろう。知世との思い出の上に、夢の上書きをしたくなかった。  
月の巡りは、やはり国々で異なってしまうだろうか。日本国でも今は月が隠れていればいいと  
思い、そんなことを考えた自分に、黒鋼はそっと自嘲の笑いをこぼした。  
焦がれる姫の髪色を髣髴とさせるしっとりした闇の中、思い出を枕に夜が明けるのを待っている。  
 
 
 
(終わり)  
 
 

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