「何でこんな真夜中に新スーツのテストなんてやるよ……特別手当て出してくれるのは助かるけど、休みの前の日くらいはゆっくりしたかったわね」  
ブラックキャリアこと西条はそうぼやきつつ、ブラックファンド本社へと向かっていた。  
いつもの仕事ならば一週間前には予定が組まれているが、今夜はいきなり電話で『午前3時にスーツのテストをしたいので本社に来られたし』と連絡が入ったのだ。  
なんでも、新しい戦闘用スーツの開発をしているのだが、どうしても着用者の意見が聞きたいとの事だった。  
「確かに開発部って、私たちの仕事が終わってからもデータ収集とかしてたものね。夜勤が普通なら仕方ないわね」  
裏口から本社へ入り守衛室へ顔を出す。この時間帯であっても人の出入りは珍しくないのか、守衛はさして気にもせず、お疲れ様ですと声を掛け内扉のロックを解除してくれた。  
「人気がない会社ってなんとなく気味が悪いわね……」  
通路の照明はついているものの、並ぶドアの曇りガラスの先には闇が広がるという違和感。  
自分のヒールの音だけがやけに響き渡る通路を歩きながら、思わず寒気を感じつぶやく。  
セキュリティは万全であり、真新しいビルだけに怪談話とも無縁ではあるが、やはり人気の無い場所を一人きりで歩くのは、理屈を抜きにした恐怖感があるようだ。  
そのような事もあり、ドアから光が洩れる開発室前に着いた時は、安堵のため息がもれた。  
 
コンコン  
「失礼します」  
ノックしドアを開けると、そこに居た数人の開発員が一斉に振り返った。  
「あの、スーツのテストという事で来たんですが……」  
注目された事に戸惑いつつも、そう切り出す西条。  
すると一人の開発員が進み出て来た。  
「いやいやいや、夜分遅くにお呼び立てして申し訳ありません。  
なにぶん、ここに篭りきりなものでどうしても時間に疎くなってしまいましてね、配慮が足りませんでしたな、  
いやまったくもって申し訳ない。ただ、開発はインスピレーションが重要ですので、  
思いついた事はすぐに手をつけませんと良いものができんのですよ。  
そこのところをどうかご理解いただけますかな?」  
メガネをかけた中年の男はそうまくし立てると、卑屈そうに上目遣いで西条を見上げた。  
「は、はぁ……大変ですね」  
その勢いに押され半歩ほど後ずさりながらも、西条は理解の意を示す意味で頷いておいた。  
「いやいや、ありがとうございます。では早速ですが、こちらのスーツを着用して頂けますかな?  
準備できましたら測定室までお願いします」  
そう言われ手渡されたスーツを抱え、西条は更衣室へと向かった  
 
「着け心地といったものはどうですかな?」  
スーツに着替え測定室に入った西条に、メガネはそう尋ねてきた。  
「うーん、そうですね。若干きつめですが動きやすくはあります」  
女性心理として着ているものがきついと言うのは若干の抵抗があったが、  
これも仕事のうちと西条は割り切って感想を述べる。  
「このスーツは肌へのフィット感を高めてあるので、きつく感じられるのでしょうな。  
間接部分を柔軟にし、尚且つ動きをサポートするように設計しておるので、  
運動性は向上しているはずです。では、運動テストを行いますので、お願いします」  
「わかりました……」  
実際のところ、西条は一つだけ言えなかった事がある。  
肌に密着しすぎているため、体が締め付けられ、  
そのボディラインはおろか胸や下腹部の形がくっきりと浮かびあがってしまっている事。  
特に股間は食い込むほどで、素材が滑らかな為不快感は無いが、  
逆に動くたびに陰部をやさしく撫でられているような感覚に襲われていたのだ。  
しかし、さすがにそこまでは男性相手に伝えられるはずも無く、なんとか別な理由をつけられないかと思案していた。  
 
運動テストは、ストレッチによる各間接の動きを見た後、ランニングマシーンでの持久走が行われた。  
『アソコガちょっと気持ちいいけど、なんとか顔には出せずに済みそうね』  
西条はそう安堵しながら、30分ほど軽く走っていた。  
だが、そのうちに西条は快感とは違う別な違和感に気づいた。  
『何……?息が苦しい……それに、体がすごく重い……』  
元々体力にはそれなりに自信のある西条であり、スーツの性能のおかげか、足もいつもよりスムーズに動いていた。  
普段であれば、この程度の運動では軽く汗をかく程度でしかないはずが、今は何故か呼吸が荒く、汗が大量に噴きだし、疲労も感じていた。  
体の状態がここまで来れば足の動きも機械に追いつかなくなるはずだが、彼女の足は依然として同じペースで乱れなく動いていた。  
「す、すいません。少し休憩を……」  
さすがに、このままではいつ倒れてもおかしくないと判断し、西条は休憩を申し出た。  
「おや、大丈夫ですか?」  
メガネが近づき声を掛けるが、西条は息を荒げ返事もろくに返せなかった。  
「はぁ…はぁ…すいません…足は動くんですが、体が追いついていかない感じで……」  
やっとの思いでそう応え顔をあげると、他の開発員も集まっていた。  
「なるほどなるほど、では、このスーツは成功のようですな」  
笑みを浮かべるメガネ、その後ろの男たちもニヤニヤと笑いを浮かべていた。  
 
「成…功…?」  
酸素が不足し意識が朦朧となりかけ、言葉の意味を理解しかねている西条に、メガネは手に持った何かのリモコンを見せた。  
「このスーツは動きをサポートする以上に、着用者を強制的に動かす事も可能でしてな。  
貴女は軽いランニング程度に思われていたかもしれませんが、全力疾走並みの速さで30分ほど走り続けていたのですよ。」  
「……え?」  
混乱する西条。確かに自分では軽く走っているつもりだったし、足の動きもそれにあったスピードだったはずだ。  
そして、なんとか現状を理解しようと、呼吸を整え周囲を見回すと不意に気づいた。  
耳に聞こえてくる声と、目の前でその言葉を発しているはずのメガネの口の動きがあっていない。  
さらに、他の者の動きもどこかスローモーションのような奇妙な光景だった。  
「気づかれましたかな?そのスーツには薬剤投与の装置もついてましてな。  
本来は緊急時の鎮痛剤等を入れるのですが、今回は視覚から脳への情報伝達速度を落とす薬を使用したのですよ。  
加えて、体の感覚を鈍くする作用もあるので、実際に自分がどういった動きをしているか、把握しきれないのですよ。  
走るという一定の行動に集中していては、変化に気づくのは難しいでしょうな」  
メガネはそう言うと、リモコンを操作した。  
「えっ?…きゃぁっ!」  
その瞬間、西条の体は支えを失ったように床に倒れこんでしまった。  
「30分も全力で走り続けては、しばらくは疲労で動くのも辛いでしょう?  
貴女がご自身で立っていると思っていたのも、スーツがその姿勢で固定されていただけなのですよ」  
 
「どうして、こんな事を……」  
痙攣する膝を押さえ込み、なんとか立ち上がろうとしながら、西条はメガネを睨みつける。  
「理由は色々とありますが、完成した物を実験するのは当然でしょう?  
あとは日夜仕事に励む部下に息抜きをさせてやりたいと、上司である私の親心といったものですかな」  
難しい顔でメガネはそう答える。  
「何、すぐに解りますよ」  
そう言いながら、メガネはリモコンを操作する。すると床に座り込んでいた西条の体が一気に立ち上がり歩き出した。  
「くっ……」  
「抵抗するのはあまりお勧めできませんな。  
説明は省きますが、無理に動きに逆らおうとしますと、筋肉が断ち切れますぞ?」  
脅しとも取れる言葉に歯噛みしつつ、西条の体はリハビリに使われるような、手すりの付いたスロープと階段が組み合わされた台に向かっていく。  
そして、スロープを登りきるとそこで一度立ち止まった。  
「で、その実験とやらでこれを上り下りさせるのかしら?」  
自由になる首だけを横に向け、棘のある言葉を投げかける。  
「惜しいですな、もう少し複雑な実験ですよ」  
メガネの口元がゆがむ。  
「きゃっ!」  
西条の片足が上がり、手すりをまたぐ。  
「少しご協力願いますかな?上半身は自由にしましたので落ちないようにしてください」  
言われるまでも無く、反射的に西条は手すりを掴んでいた。  
膝が微妙に曲げられており、バランスを崩したらそのまま手すりを支点にして倒れてしまうだろう。  
そうなれば、頭は台に叩きつけられるしかなく、下手をすれば即死しかねない。  
「ちょっと!いくらなんでも冗談じゃ済まないわよ!」  
 
必死にバランスを取りつつ叫び声を上げる西条。  
それを愉快そうに眺めながら、メガネは手すりを確認しリモコンを操作する。  
「な…何?」  
西条の腰が手すりに沿ってゆっくりと前後しだした。  
そしてその動きの範囲内にはジョイント部分があり、西条の股間に一定の刺激を与えてくる。  
「何考えてるのよ変態!すぐにやめなさい!」  
うっすらと頬を赤らめながら、西条が叫ぶ。  
メガネはそれを無視してリモコンの動きを調整すると、それに合わせ西条の腰の動きが少しずつ早まってきた。  
「なっ……!あ、危ないでしょ!やめて、やめてったら!」  
動きが早くなるにつれ体のバランスを取るのが難しくなる。  
そのために西条は手すりに体を近づけ、落ちないようにしなければならない。  
だが、それは同時に彼女の腰を手すりに押し付ける事になり、より一層の刺激を彼女自身の手で自らの秘所に与える事になっていた。  
「おやおや、そんなに手すりがお気に入りになりましたかな?ご自分で押し付けられるとは、よほど気持ちいいのでしょうな」  
すべて解った上で、メガネは嘲笑うかのように西条へ言葉を投げかける。  
「き…気持ちいい訳ないでしょ…こうし…ないと、落ちそ…あふ……」  
事実、西条の体は感じていた。  
腰の動きはさらに早くなっており、股間が熱く疼いていた。  
『だめ…感じたら、こいつの思い通りに…でも…激しすぎる……』  
懸命に自分を抑えようとする西条だったが、それも限界に達しようとしていた。  
「だめっ…止めて…こんなので…いやっ…いっちゃ…あっ…あ、あああぁぁっ!」  
体を仰け反らせ、西条は絶頂に達してしまった。その体がゆらりと傾ぎ、そのまま横に倒れこむ。  
『!?』  
我に返ったときはもう遅かった、すでに手で体を支えられる勢いではなく、なすすべもなく西条の眼前に台が迫っていた。  
『ぶつかるっ!』  
目を閉じ、衝撃が来る事を覚悟する。だが、一向にそれは来なかった。  
恐る恐る目を開けてみると、台の数センチ手前で彼女の体は止まっていた。  
気づけば、いつの間にか傍に来たのか、開発員の一人が彼女の体を支えていたのだ。  
 
「あは…は…は……」  
西条の口からは笑いのようなものが洩れる、しかし顔は蒼白であり、股間からはうっすらと湯気が立ち上っていた。  
間近に感じた死の恐怖に対し、感情が混乱しているのだろう。  
開発員は、茫然自失としている西条を担ぎ上げ、テーブルの上に横たえさせた。  
彼女は身動き一つせず、ぐったりと横になっている。  
「ふむ、こちらが楽しむ前に壊れて貰っては困るのですがね。君、気付けに水でも掛けなさい。いや、余計な所が濡れては大変か、洗面器に水を汲んできなさい」  
メガネは開発員の一人にそう命じると、西条の髪を掴み頭を水の中に突っ込んだ。  
バシャッ  
「げほっ、ごほっ」  
「頭ははっきりしましたかな?これからという時に魂が抜けられては困りますな」  
髪を掴みながらメガネは西条の顔を覗き込み、それを睨み返した目に満足したようだった。  
『好き勝手してくれるわね…おかげで目が覚めたわ。見てなさい、今に逆襲してやるから』  
西条は心の中でそう誓う。  
彼女にはまだ希望があった。彼らの目的は自分の体なのは解った。  
このスーツは上下一体型であり、自分を抱くにはこれを脱がせなければならない。  
来ている内は身動きできないが、裸になってしまえばいくらでも暴れられる。  
それまで衰弱して動けない振りをしてその時を待つ。そう思っていた、だが……  
「さて、それでは私どもも楽しませて貰うといたしましょうか。  
おっと、その前にスーツを脱がさなければなりませんな」  
そう言ってメガネは手を掛ける。  
「などという展開を期待していましたかな?」  
「……え?」  
思わず聞き返す西条。  
パサ  
乾いた音が聞こえると、不意に胸にあった圧迫感が消え、ひんやりとした空気を感じた。  
『嘘……』  
確認するのが恐ろしかった。それでも見ずにはいられない、西条はゆっくりと視線を落とした。  
 
ありえない、あってほしくない光景だった。スーツの胸の部分だけがすっぽりと剥がれ落ちていたのだ。  
「なんで……繋ぎ目なんて無かったはず……」  
呆然と呟く言葉に、メガネは嬉しそうに説明しはじめる。  
「これも新しい機能の一つでしてな、必要に応じて部分的に分離させる事ができるのですよ。  
もちろん、胸だけではありませんよ、実践しましょう」  
西条の顔に明確な絶望が浮かぶ。そして心が折れた……  
「い…いやああああああ!!助けてっ、誰かあああ!!」  
今までに無い悲痛な叫び。それに対しメガネは満面の笑みを浮かべた。  
「そう!その救いの無い叫び!それがいいのですよ。思う存分叫んでください、どんなに声をあげても、それが聞こえるのは私たちだけですからな」  
悪魔の如き醜悪さを持った笑みを浮かべたメガネは、他の開発員を近くに招き寄せる。  
西条の体は操られ、自分自身の手で両足を抱え股を広げさせられていた。  
「ではブラックキャリア様のオマンコを拝見いたしましょう」  
4対の視線が自分の大事な部分に注がれる事を感じ、西条は狂ったように叫ぶ。  
「いやぁっ!見ないでぇ!」  
股間に大気を感じた。同時にどよめきが起きる。  
「そういや漏らしてたな、小便くせぇ」  
「男が居ないからって毛がボサボサじゃねえか」  
「ぶち込めればなんでもかまわねぇよ」  
男たちが口々に勝手な感想をあげる。それを聞いた西条の目から涙が溢れてきた。  
「一番手は当然私ですな。君たちも使えるとこは自由に使いなさい」  
そして陵辱は始まった……  
 
 
 
 
 
 
 

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