意識がはっきりしない。
それもそうだ。肉体を失ってどのくらい経っただろう。
長くも感じ、短くも感じる。
夢を見ているような気持ち。
生き返りたいとも思う。でも、このままで良いとも思う。
・・・長い長い夢を見ている。
ふと気付くと、ざわめきのようなものが聞こえる。
肉体が無いため、五感などない。あるのは直感のみ。
と、突然生気が注ぎ込まれてきた。
生き返ることができる・・・!
気付かなかったが、私は無性に生き返りたかったのだ。
何かしなくてはならない事があった気がする。
私はなんの躊躇いもなくその生気を受け入れ、肉体の再生されるままを楽しんだ。
「・・・見ろ、幽霊だぞ」
一人の戦士は、ふと虚空に目を見やり、呟いた。
「ああ。」
・・・と、そばにいた魔法使い。
もう一人いた。先ほどから無言でリュートを奏でている・・・バードだ。
「こんな所に幽霊がさまよっているなんて珍しいな。」
ロストランドの雪原地帯。
今時のブリテインの活気についていけず、こころ安らぐ所を探して冒険をしていた。
「女・・・」バードが呟く。
「ここには何もなさすぎるな」
魔法使いが言う。
「たまには人のぬくもりを感じるのも悪くない。」
「よし、いっちょ蘇生してやるか」
そういうと、戦士は幽霊に包帯を巻き始めた。
――――――――――――
久々に見る青い空。
辺りは・・・一面に白。ここはどこだろう。
すがすがしい空気。狼の遠吠え。
生き返った・・・帰ってきたんだ。
雪景色に慣れない目をこすりながら、思い出したかのように蘇生してくれた人を探す――――
――――――――――――
「おひょぉ!いい女だ」
「焦るな。抵抗でもされたら面倒だ」
魔法使いは慎重だ。常に警戒を怠らない。
外敵から身を守るため、キャンプの周りにもさまざまな魔法・仕掛けを施している。
「そんなもの心配あるかって。どうせ徳の精神は受けていないんだ。な、今にも倒れんばかりにふらふらしてる。」
「だが・・・」
「このローブ・・・邪魔だな。さっさと剥いじまうか」
待ちきれない・・・といった様子で、戦士はダガーを持ち、蘇生した女のローブを切り裂いた―――――
――――――――――――
「えと、ありg・・・・・・キャッ」
幽霊ローブが重さをなくし・・・いや、体から離れていく。
とっさに身を屈める。何がおきたのか分からない。
いつの間にか裸になっていた。
身につけていたローブを探しても、どこにも見つからない。
「え・・・キャアアッ」
突然、大きな影・・・男が襲い掛かってきた。
男も、裸だ。
身をもがくが、蘇生したばかりでは力も出ない。
今、何がおきているかもわからず、ただ、生き返ったことを後悔していた―――――