<灌頂の巻>
「君が必要なんだ!!」
いつもはオークヘルムに包まれた素顔をさらし、ギルマスの右腕たるKはLに詰め寄った。
テーブル上のリキュールとワインの瓶が倒れる。孤島に位置するKの自宅は時たま動物が
行き交うだけの閑静な場所にあり、Tならば避暑地として一級品といえるだろう。しかしここはF。
近所の人も滅多に見かけないほど過疎化が進み、荒涼とした木々が寒々しさを強調していた。
「知っての通り、うちのギルドは人数過多のため2班に分かれることになった。
おれの班にこないか。今のままだと不本意なアーチャーとしてやってゆくしかないぞ。
フェンサーは伝説クラスが3人も入ったからな。ウチの班ならばGMでもフェンサーとして活躍できる。」
Lは戸惑っていた。”そこの”とか”おまえ”呼ばわりしかしない幹部のKに”君”だの”必要”だの
言われたのも面食らったし、キツイ視線と酷薄そうな苦笑いしか見せたことのないKの素顔をアップで
見ているのも妙な感じだった。意外と整った顔立ちのKに熱っぽく見つめられ、
後ろめたさと不慣れな状況に、Lはヘドモドしていた。
「はぁ…その話は考えておきます。今日お伺いしたのは例の毒100%クロスボウの事です。」
「あぁ、おまぇ…いや君がすられたとかいう」
「あれから取引市場などチェックしましたが、見つけることが出来ませんでした。Kさんには本当に申し訳ないことをしました。同等の品が売りに出されたら、買ってお返ししますので、それで堪忍してください。」
「やるよ。あれは君にやる」
「そんな!あんな高価なもの頂けませんよ。それにあれはギルドの皆がスキル上げに
使えるようにとKさんが寄付された品ではないですか。」
「いいって。」
LはKに借りを作りたくなかった。先ほどは考えておくなどと誤魔化したが、
たとえ転職してでもギルマスの班に居る方が自分のためになると思っていた。
GMは純メイジであり、KはSS戦士であった関係上スパーなどのお世話になったのは
Kの方だったが、KはLを嫌っているようだし、何よりもギルマスにほのかな憧れを
抱いているのが最大の理由だった。Kにスパーをしてもらっている最中、
フェンシングがGMになり、Kに一礼して報告した後ギルマスに抱きついて喜びを
分かち合ったこともあった。そのとき口では「おめでとう」と言いながらもキツイまなざしで
睨んできたKをLは怖いと思った。その仕返しのように称号にLadyがついたLを
「お祝いのスパー」と称して袈裟懸けに切り倒しあっという間にLady落ちさせたのもKだった。
この人の下についたら毎日試し切りの材料にされるに違いない。暗黒の将来を想像して
Lはさぁっと頭から血が下がるのを感じていた。
「顔色悪いぞ。酔ったのか?」
力のない笑顔で否定するLを妙にこった視線で睨め付ける。Kのそんな態度は何か
よくないことを考えているときだ。
「…おれに借りを作りたくないんだな。よし分かったではこうしよう。あのクロスボウは
君に売ったことにする。値は”20分間言うことを聞くこと”でどうかな」
20分で何度殺されるのか、またLadyへの道が遠くなるのをLは諦観して
受け入れるしかなかった。いちいち断らずともいつだって好きなように切り刻むくせに、
Kの相手の同意を求める態度を新手の意地悪だとLは思った。
「わかりました。では鎧に着替えますね。」
「鎧はいらない。起立っっ!!」
声に気圧されて立ち上がったLをKは力強く抱きしめた。
「時計を見ておけ。今から20分だからな。」
これからどんな技に繋がるのか質問しようとしたLの唇をKの唇がふさぐ。
Kの舌がLの口中を思う様に蹂躙し尽くしてゆく。きつく抱かれているため押しのけることも
できずにLは濃厚な口づけを味わうはめになった。背中から腰にかけてビリビリと
痺れたような感覚が広がり、自力で立っていられなくなったLは、Kの顔が離れると
ぺたりと床に座り込んでしまった。
「口を吸っただけで腰が抜けたか」
「−−−ひょっとしてさっきのワインに何か盛りませんでした?
腰に力が入らないんですけど。それにこーゆー事要求するのは卑怯ですよ。
私初めてだったんですよ!!」
「何も盛っていない。感じたのはそっちの勝手だ。」
スカートから露出した太ももを撫でられ、Lはまた立ち上がれなくなってしまった。
「やたら感じやすいな。しょうがない、しかるべき場所に移動するか」
横抱きに抱え上げ、Kは寝室へと移動し、中央にでんと聳えるダブルベッドへLを横たえた。
「こんなゲームみたいなやりとりで貞操を失うなんてやですよ。あっ、あんっ」
「ファーブーツ脱がしてやっているだけで変な声出すな。
寝床に靴履いたまま上がるヤツがあるか」
それもそうだと抵抗せずにいると、KはLの服のボタンをはずしはじめた。
「なんだ皮ブラと皮パンツつけているのか。色気のないやつめ。」
「だからちょっと待ってください。Kさん奥さん居るでしょう、奥さんどうしたんですか、
奥さん奥さん!!今ここにいなくても後で言いつけますよ」
「あれはギルマスのヨメと一緒に引退した。それに結婚式を挙げた覚えはないから、
奥さんではない。そうばたばたされてはやりづらいな。よし、ルールを決めよう。
20分の間絶対にこの皮プラや革パンツを脱がしたり指を入れたりはしない。
体を触ったり口で触れたりはするけれど君からの要求がないかぎり
それ以上の行為はしない。20分したらリコールで逃げるのも、戦闘を仕掛けるのも
そちらの自由だ。」
「わかりました。時間になったらリコールして帰りますよ。いいですね」
また唇を合わせると、ルールが決まって安心したせいかLの舌も反応を返すようになった。
先ほどよりもゆっくりとLの口中を探索する。時折耐えきれないかのように鼻にかかった
Lの声が漏れる。もうだめとKの肩をつかむのだが、なかなか許してはくれなかった。
Kが顔を離すと、Lの瞳はすっかり潤んでいた。
「これはおれが付けた傷か−−−痕になったのか」
Lの鎖骨のあたりから胸の間を通り、へその近くまで赤くひきつれた刀傷があった。
Lady記念に袈裟懸けに切られたときのものだ。Kの指がそっと傷跡をたどる。
「…大げさな傷になったから、もう嫁に行くのは諦めていたんですよ。だから私本当は
貞操なんてどうだっていいんです。でもね、戦士としては名誉な傷だし、赤ネームに
襲われても女性としての辱めも受けなくてすむし、結構気に入っているんですよ。
…あっ、んん」
Kの唇が傷跡をたどり始める。吸ったり舌で擽るたびにLの息が荒くなる。
声を出すまいと堪えているのだが、どうしても漏れ出るそれはL自身が驚くほど
甘く艶めかしい。
皮ショーツのガーターを指に絡めてはじく。Kの指がそのままショーツの縁をなぞる。
Lは悩ましげに腰をくねらし、腿をすりあわせ、切なげな瞳でKを見つめた。
「もうとっくに時間は過ぎたんだが。リコールしなくていいのかい」
彼女はうらめしげな顔でにらみつける。
「なんなら、ゲートでも開こうか。−−−もし、続きをご希望されるならば、
ご自分でお召し物を脱ぐことですな」
しばし躊躇しながらも、Lは自分のショーツに手をかけ、そろりそろりと下ろしていった。
「よし…いい子だ」
もうこれで何度目か、Lの下腹の一番柔らかいところは、軽く達してひくひくと痙攣していた。
Kの指が中を探るたび、Lの下半身はとろけてゆく。先ほどからあえぎっぱなしで、
Lの息は上がっていた。腰に当たるKのその部分が、そのたび自己主張を始める。
Lは自分を相手に男としての力を発揮できるKを不思議な人だと思っていた。
ギルマスもPKもこの傷を見て気分をそがれてしまったというのに。
今も吐息混じりに上げる声で、Kが少しずつ興奮してゆくのを、無上の喜びとして感じていた。
「顔を上げてご覧」
ベットの足下にある鏡には、男に抱きかかえられ足を大きく開かされた女の姿が映っていた。
乳房を揉まれてのけぞり気味に、中をかき回す男の指を最大限の反応で受け入れている。
それが己の痴態であると認めると、Lは耳まで赤くなった。あまりの恥ずかしさが刺激となって、
中から震えて達してしまった。不意に訪れた本物の絶頂に、なすすべもなく悲鳴のような声を上げる。
このまま失神できたらいいのにと思っても、Lの戦士としての体力がそれを許さなかった。
「商売女というのは、腿のここのとこの肉が落ちてて味気ないんだ。それにほぼ全員が
腕のいい巾着切りだから、いついかなる時でも油断出来ない。お互い腰を動かし頑張っている
ときでも、バックバックに伸びた手をにっこり笑ってねじ上げなくてはならない。
たまにならいいけど、いつもだとしんどくてね」
ぐったりしたLを横たえる。
「素人娘はあいつ以来久しぶりだ。まぁよろしく頼むよ」
「よろしくって…?あっあんっ」
Kのその部分がLの入り口をこすり上げる。あふれ出た蜜がKにからみつく。
Lの熱さが伝染するようにKのそれも熱く、臨戦態勢を整えはじめた。
「こーゆー事だ」
一気に突き入れる。とろけきった下半身のおかげで侵入は容易であったが、Lの表情は
苦痛にゆがみうめき声を漏らしている。めりめりと中がひび割れて破壊されるような感覚を
味わい、Lは思わずずり上がって逃げてしまった。Kに腰を捕まれ、根本までしっかりと
接続される。チクチクとするKの堅い毛がLの柔らかな部分に密着する。中が非協力的な
状態となったため、Kは先ほど探り当てたLの弱いところを刺激し始めた。
苦痛とは違う響きがLの声に混じる。その唇をふさぎ舌をからめる。よほど口の刺激には
弱いらしく、Lのそこは十分すぎるほどあふれ出してきた。ゆっくりと動きながら中の状態が
持続することを確かめると、Kは非常に狭いそこを本格的に攻め始めた。
初めての苦痛とあふれんばかりの快楽とでLは声を上げる。上気した白い肌に斜めに走った
赤い傷がLとともに艶めかしくうねる。その姿はKの嗜虐心をそそり、あくまで優しく最初は
奉仕に徹しようとしていた気持ちを忘れさせてしまう。乳房を強く揉みしだき、
つい激しく攻めかけたが、ほのかに漂う血の匂いで我に返った。
ゆっくりとじらすような動きに改め、お互いの高まりを合わせるようにもってゆく。
もうだめだとLが頭を振り、Kに力一杯抱きついてくる。Kは軽くLの唇を啄み、
ちょっと我慢するようにと言い含め、彼女のもっとも敏感な部分を刺激しながら
己の快楽を追求した。
これは死ぬときと似ている、強い絶頂の波とともに意識が遠のくのを心地よく感じながら、
Lは失神した。中にどくどくと注ぎ込まれる感覚ももうわからないようだ。
ふと気がつくと、LはKの腕の中にいた。自分の乳首がKの素肌に触れているのが
妙に恥ずかしい。両足でKの左足を挟み込むように絡めていたことに気づくと、
あわてて足を引っ込めた。
「起きたのか。まだ集合時間まで間があるから、横になってろ」
人肌に触れる暖かさに包まれながら、LはそっとKの胸板に手を置いた。
Kさん本当はそんなにひどい人では無いかもしれない、普段味わったことのない
甘い気分に酔いながら、Lはとりとめのないことを色々考えていた。
「……今でも『私って不幸だわ』とか思ってる?」
「まぁ、多少は…」
ベシッ
「イタッ!何で頭叩くんですか?」
「うるさい。さっさと寝ていろこの湯たんぽ娘が」
前言撤回、やはりこの人ものすごく意地悪だ。LはKに背を向け、二人の隙間に
毛布をぎゅうぎゅう詰め込んでから目を閉じた。
(おしまい)