とある日曜日の午後。  
白絹の部屋にヴィヴィアンが遊びにきていた。  
白絹はベッドに寝転びながらマンガを読み、ヴィヴィアンはカーペットに座ってパラパラと雑誌を眺めている。  
つぼみは大切な用事があるとかで今日は秋葉原に行っているらしい。  
 
「・・・・ヴィヴィ、ジュースのお代わり持ってこようか?」  
 
テーブルに目を向けた白絹が言う。  
 
「へ?あ、うん。おねがい。」  
 
「それじゃ、ついでにお菓子も持ってくるね・・・。」  
 
グラスを手にした白絹は立ち上がり、後ろ手で静かにドアを閉じる・・・が、完全には閉めずに僅かな隙間を残しておいた。  
ヴィヴィアンは当然、白絹がキッチンに向かったものと思っているだろう。  
白絹はくるりと向き直り体をドアに密着させると、息を殺し小さな隙間から部屋の中を覗き込んだ。  
 
『・・・やっぱり・・・またしてる・・・・』  
 
ひとりになったヴィヴィアンはあらかじめ狙っていたかのように、テーブルの上にある飲みかけの白絹のグラスに手を伸ばしていた。  
ごくりと喉を鳴らす音が、白絹の耳にもはっきり聞き取れた。  
彼女は両手で大事そうにグラスを持つと、コケひとつ付いていない綺麗なピンクの舌を伸ばして、先ほどまで白絹の唇が触れて  
 
いたであろうグラスの縁を恍惚とした表情で舐め回しはじめた。  
フンッ、フンッ、と鼻息も荒く、白絹の体液のかすかな味わいを求めてグラスに舌を這わせるその姿は、ヴィヴィアンの美しい容姿  
 
からは想像もつかないほど滑稽で、破廉恥だった。  
 
『ヴィヴィ・・・どうしてそんなことするの・・・・?』  
 
白絹がヴィヴィアンの痴態を目にするのはこれが初めてではない。  
最初はほんの偶然だった。  
美術の時間、忘れ物を取りに教室に戻った白絹は、同じく忘れ物をしたと先に行っていたヴィヴィアンが、夢中になって白絹の  
 
机の角に股間を擦り付けている姿を目撃してしまったのだ。  
あまりの驚きに思わず声をあげそうになったが、興奮に我を忘れていたヴィヴィアンはそれに気付くこともなく、結局白絹はそのま  
 
ま美術室へと逃げ帰ったのだった。  
 
白絹に見られているとも知らず、相変わらずヴィヴィアンはグラスに自らの唾液を塗りたくっていた。  
一通りヴィヴィアンの痴態を確認した白絹は、どこかおぼつかない足どりでキッチンへと向かう。  
あまり遅くなっては怪しまれてしまう。  
手早くジュースを注ぎクッキーと一緒にお盆に載せると、白絹は大きくため息をついた。  
『わたしね、全部知ってるんだよ?昨日だって、わたしが食べたアイスの棒、捨ててきてくれるって言ったけど、本当はポケットの中に隠したんだよね・・・・?』  
『わたしのブルマにいっぱい染みがついてたのも、ヴィヴィがやったんだよね・・・・?』  
『ねえ、ヴィヴィ。わたしはどうしたらいいの・・・?』  
自分を恋愛の対象として見ているのを知ったあの日以来、できるだけ自然に振舞ってきたつもりだ。だけど・・。  
「・・・もう分からないよ・・・・。」  
ぽつりと呟く白絹。  
 
「どうして苦しいの・・・?だって、わたしは・・・わたしが好きなのは・・・・。」  
グラスに注がれたジュースに、歪んだ白絹の顔が映りこんでいる。  
「・・・・ヴィヴィのせいだからね・・・・悪いのは、ヴィヴィなんだよ・・・・だから・・・これはお返し・・・。」  
白絹は口元をグラスに寄せると、舌に絡んだねっとりとした唾液をグラスの中に落とし込んだ。  
 
白絹は気付いていない。  
自分がヴィヴィアンと同じ表情を浮かべていることに。  
 
「わたしの望みは・・・・なに・・・・?」  
 
--------つづく?---------  
 

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