撮影が始まると、俺は不機嫌になる。
だが、もちろん、そんな感情を表に出したりしない。現場の雰囲気が悪くなるだけや。
だから誰も知らない。俺がこんなこと考えているなんて。
さっきからずっと、理花は一哉は顔近づけて、セットの隅で打ち合わせ。
次のシーンのカメラワークについて、あーだこーだと話している。
一哉は理花の才能に全幅の信頼を置いている。それは理花も同じことで。
2人が意見をぶつけあってきた今までの作品がヒットし続けているのも、
2人の才能の賜物なんだろう。
カメラマンとしては、この状態は歓迎すべきこと。そんな事、言われなくても充分分かっている。
しかし、理花の彼氏としては、撮影が始まると理花が常に一哉と一緒にいるという状態は、
決して歓迎できないもので。
別に2人の関係を疑っているとか、そんなことじゃない。
ただ単に、俺以外の男と理花が多くの時間を過ごすのが気に入らない。
しかも、理花は一哉と似ていて、撮影に集中する癖がある。完璧主義者なんや。
だから撮影が終わるまでの数ヶ月、あっちもほうも、しょっちゅうお預けをくらってしまう。
本人曰く、「仕事に集中したい」だそうで。仕事仲間としてはその考えを尊重したいけど、彼氏としては別や。
その日の撮影が終わり、皆三々五々帰路につく。
久しぶりに早く終わったので、飲みに行くかと言う也寸志達の誘いを断って、理花を探す。多分、スタッフルームだろう。
スタッフルームに着き、ドアを開けると、そこには理花と一哉がいた。
どうやら明日の撮影の打ち合わせをしているらしい。熱心なことで。
「どうした、収?」
一哉の言葉を無視して、理花に話しかける。
「なあ、あとどれくらいかかるん?」
「あ、うーん。30分位かな?」
理花は腕時計を見て、そう答えた。
「じゃあ、終わったら携帯に電話してや。待ってるから。」
「あ、うん。」
「じゃー、お2人とも、頑張って下さいな」
そう言って笑顔を見せて、スタッフルームのドアを閉めた。
笑顔とは裏腹に、俺は腹を立てていた。
なんで密室で2人っきりでおるねん!幾ら相手が一哉で、仕事の為とはいえ、女としての危機感は無いんか!
俺は最近お預けをくらっているからか、無性に腹が立った。
結局理花から電話があったのは、1時間以上も後。申し訳なさそうに電話口で謝るから、とりあえず「ええよ」と受け、
スタッフルームに向かった。
スタッフルームには、既に一哉の姿が無く、理花が台本に何か書き込んでいた。
まだお仕事中ですか。
「一哉は?」
「大友君から電話があって、これから飲みに行くって。可児君はいかないん?」
「俺、大事な用があるから断った」
「用があるのに待っててくれたん?時間大丈夫なん?」と心配顔で聞かれた。
俺が用があるのは、おまえだっちゅーねん。
部屋の隅にある黒いソファーに腰掛け、理花に「おいで」と手招きをする。
素直にソファーに寄ってきた理花を隣に座らせ、指をからめる。
「出かけなくていいん?」そう心配する理花の言葉を、「いーのいーの」と適当に聞き流し、
理花の手の甲にキスをし、理花の体を抱き寄せた。
とっさのことに驚いていたが、それでも理花は俺の背中に腕を回し、抱きしめてくれる。
温かいなぁ、久しぶりの理花の温もりに、心までほんわか温かくなった。
が、勿論それで済むはずもなく。
俺から理花に口付けを始めた。始めは唇を角度を変えて何度も合わせるだけ、そして段々と理花の口内に舌を入れ、
理花の舌を絡めとり、深い口付けをする。
付き合い始めの頃は、どうしていいか分からなくて、俺にされるがままだった理花も、
最近は俺の動きに答えようとしてくれるようになった。
その変化が俺にはめちゃくちゃ嬉しい。
全ての行為を俺が教え、日に日に俺好みの女になっていく理花。
本人は気づいていないだろうけど、その吐息の音色まで、まさに俺好み。
正直、「初めての女」がここまで俺の征服感をそそらせるとは思わなかった。
今まで多くの女性と体を重ねてきても、得れなかった快感。
理花の着ていたブラウスのボタンをひとつひとつ開けていくと、俺が何を望んでいるか理花が気づき、
急に胸板を押される。
「・・・・なんやねん。いいところなのに」俺が不満を言うと、
「・・・ここをどこだと思ってるねん。仕事場やないの。誰かに見られたらどうするつもりなん?」
上目遣いで、反論の声が上がった。
が、そんなことにめげる俺やない。
理花をソファに押し倒し、その上に体重をかけないように慎重に乗って、
「もう誰もいないって。それに見られたっていいやん。俺達のことはみんな知っているし」
と、再度口付けを開始し、理花の服を脱がせ始めた。
口付けの合間に「でも」とか「そういう問題じゃ」なんていう理花の言葉が聞こえたけど、
俺はもうそれどころじゃなくて、理花をその気にさせることで、頭は精一杯やった。
理花の肌は透き通るように白くて、そこに赤い所有の証を幾つも残す。
ブラをたくし上げ、胸のふくらみにキスをして、舌先と唇で愛撫する。
「あっ・・・・」
聞こえてきた耳に心地よい喘ぎ声が、俺をさらに刺激する。
スカートの中に手を入れて、パンティの上からあそこを触ったら、既に熱くなっていた。
そのままパンティを脱がし、片足から抜いて、直接あそこを攻める。
そこは温かく、俺の指を受け入れてくれた。
締め付けがきついのは、初めてのときからどれくらい時間が経っても変わらない。
まるで「初めて」のように俺の指を締め付けてくる。
「可児くん・・・・・」
呼ばれて理花を見ると、視線で求められていることを感じた。
理花にキスをすると、理花からも舌を絡めてきた。
理花が自分の愛撫で感じているのがすごく嬉しいと同時に、早く理花の中に入りたくて、腰がウズウズする。
ジーパンの前を開け、待ちきれず、局部だけ出して理花の中に自分自身を直接挿入した。
「あっ!・・・・・」
何度経験しても、挿入には慣れないのだと理花は言っていた。
その圧迫感が理花を不安に陥れるらしい。
俺はゆっくりと腰を進めつつ、理花を抱きしめ、キスをした。
「大丈夫か?」
「・・・・・もう、大丈夫、だと思う」
理花が慣れてきたところで、理花の中で自分自身の抜き差しを繰り返す。
俺の腰の動きに合わせて喘ぎ声を上げる理花の声に煽られて、頂点が近くなるにつれ、自制が効かなくなり、激しく腰を動かす。
そして俺は理花の中に自分自身を全て開放した。
「何も急いで身支度整えなくてもいいやん」
そう言う俺ののんきな言葉にため息をついて、理花はさっさと身支度を整え、再度脚本に向かった。
俺も身支度を整え(と言っても、ジーパンのチャックを閉めるくらいだけど)、理花のそばに行く。
「明日撮影するところ?」
「そう。熊谷くんに、明日の朝までにチェックを頼まれているねん」
なんと、宿題もあるんですか。大変ですね。
「可児くんの用事って何なん?急がなくていいの?」
そんな理花の言葉に、「うん、ええんや。今終わったところやさかい」と言うと、理花が呆れた顔をした。
心配して損した、1人そう言っている。
「なあ、それより一哉とスタッフルームでふたりで打ち合わせする時、ドア開けとく訳にいかんの?」
俺は何気なく希望を言った。
「他のスタッフに聞かれたくない話もあるし、わざわざ開けておく必要ある?」
・・・・・・・・どうやら本気で一哉を信頼しているらしい。まあ、俺の親友やし信頼するに値するヤツやけど、男であることに変わりないんやで?
なんて言っても笑われるだけやろな。
「じゃあ、一哉や也寸志達以外の場合は、ドアを開けるか、人がいるところで打ち合わせすること。一応奴らも男なんやから」
約束!ってことで小指を差し出した俺に、理花は笑って「心配し過ぎやって。」と言う。
「いいんや、心配しすぎでも。心配するのが恋人の役目やろ?な?」とさらに小指を差し出したら、理花も笑って小指を出し、俺達は指きりをした。
「俺は今日車できてるから、帰り送るで。終わったら声かけてや」
そういって、俺はコトに及んでいたソファーに横になった。ありがとうという理花の声がして、ペンを走らせる音がする。
さて、あとどれくらいかかることやら。しかし、惚れた弱み、ゆっくりと待ちますか。