如月の件は考えてから対応を決める、と俺が告げた後も話し合いは続いた。  
俺はその大半を聞いているだけだったが、本島に移住させるべき島民のリストの中に海斗の名があったのには再び驚いた。  
島津というのが名字だと聞くくらいには何度か会話をしていた相手だ。何故移住が必要なのかと尋ねると、そよぎは丁寧に説明してくれた。  
 話によると、海斗の父親は本島の漁協に勤めており、とんでもない見栄っ張りの上、女と金銭に滅法弱いらしい。  
更には件の観光会社の人間と何度もこっそり会っているとのことで、危険度の高い人物なのだそうだ。確かにそれなら仕方がない。  
既に代理人を立てて移住を頼んであり、その際には法外な金額を要求してきたとのことで、望み通りにしてやれば明日にでも島を出るだろうとのことだった。  
 特筆すべきはそのくらいで、一通り話が終わると、俺は巫女たちを先に自宅に帰らせた。ヤエに確認しておきたいことがあったからだ。  
「もしかして、オヤジのニューヨークへの転勤も、おばぁの差し金ですか?」  
 そう俺が尋ねると、ヤエは笑いながら首を横に振った。  
「その点については誓って何もしとらんよ。お前さんのお父さんはの、昔から何度も私の知り合いの会社に破格の待遇で迎え入れると言っても、絶対に頷かんかった。  
私としては島に来てくれるのを楽しみにしとったんんじゃが。お前さんのお母さん、宮古の話も出来るでの。残念じゃが、いずれは島に来るじゃろうし、それを待つかの」  
 言い終えてからヤエは僅かに遠い目をした。その素振りから嘘は感じられない。  
「もう一つ。俺が島に来てすぐに雫と出会ったのも偶然ですか?」  
「そうじゃよ。私は何も指示などしとらんし、雫もお前さんのことを知らんかったのは確かじゃよ。三人、いや、四人揃って紹介するまで、娘たちにはお前さんの名も伝えとらんかったでの。元より写真もない」  
 その言葉も偽りではないようで、俺は安堵して息を吐いた。  
「なんじゃ? 不安じゃったか?」  
「……まあ、多少は」  
 苦笑いしながら俺が答えると、ヤエは真剣な顔で頭を下げてきた。  
「誠に済まなかった、龍神。今後は一切の隠し事をせんでの。疑問があったらいつでも問い掛けておくれ。納得いくまで誠意を持って説明させてもらう」  
「いや、もう判りましたから、頭を上げてください」  
 そう言ってやるとヤエは急に立ち上がり、戸棚の引き出しを開けて掴んだ物を俺の前へと差し出してきた。小さな化粧箱だ。  
「これは?」  
「開けてみい」  
 手に取って蓋を開けてみると、中には石の付いた首飾りが入っていた。かなり古い物のようだが、破損している箇所はない。  
「何ですか。これ?」  
「この島に古くから伝わる龍神の証じゃ。お前さんが持っていておくれ」  
 ヤエはそう言って満足そうに微笑んだ。  
 
 隣宅から自宅へと戻ると、俺はそよぎと風呂に入ることにした。昨日何度も性交したばかりだが、当番制では仕方がない。  
当のそよぎは嬉しそうに笑っており、体力も回復しているようだ。犯しても問題はないだろう。適当に愛撫を加えながら身体を洗ってやった後、ソープマットの上に仰向けに横になり、俺はそよぎと騎乗位での性交を始めた。  
「はふあっ……ご主人様どうですかああっ……ふうあっ……私の濡れ濡れオマンコはあっ……あふはっ……勃起オチンポ気持ちいいですかあっ……」  
 俺が腰を振らないことに文句も言わず、そよぎはうっとりとした顔で膣での奉仕を続けている。指示通りに上体を後ろに反らしてM字開脚している為に、愛液塗れの接合部が丸見えだ。  
「ああ、気持ちいいし、いい眺めだぞ。しっかし、お前のマンコは本当に美味そうにチンポ咥えてんな。マンコ汁が泡立ってんじゃねえか」  
「ふうあっ……だってほんとにオチンポ美味しいんですうっ……はふあっ……食べさせて頂く度に中毒になってますうっ……あふはっ……もう私オチンポがないとダメなんですうっ……」  
「別に誰のチンポでもいいのかよ?」  
「あくうっ……違いますうっ……くひあっ……ご主人様のオチンポだけえっ……はひあっ……ご主人様のオチンポだけですうっ……んくあっ……他のオチンポなんか見るのも嫌あっ……」  
「お前が欲しいのは俺のチンポだけか? 気持ちはいらねえのかよ?」  
「はうあっ……それはご主人様がお決めになることですからあっ……くふあっ……例え想って頂けなくてもおっ……んくうっ……私はご主人様のお傍にさえいられればあっ……」  
 悶えていながらも、そよぎの言葉には真摯な響きがある。その健気さは愛しい。俺は上半身を起こして、招くように両手を拡げた。  
「ほら、抱っこしてやるからこっちへ来い。ここから先は俺も動いてやる」  
 そよぎは呼びかけに満面の笑みを浮かべ、息を乱しながら俺の身体に抱き付いてきた。  
「あふうっ……嬉しいご主人様あっ……んふあっ……好きです大好きですうっ……」  
「俺だってそよぎのことが大好きだぞ。だから安心してセックスを楽しめ」  
 そう言って腰を使い始めてやると、そよぎは俺の肩に頬を擦り付けながら自らの動きを合わせてきた。膣内は滑りを増し、脳髄まで蕩けそうな快楽が押し寄せてくる。  
「いい具合だぞ、そよぎ。お前のマンコ気持ちよくて、そろそろ出ちまいそうだ」  
「かふはあっ……私もとっても気持ちいいですうっ……はくふあっ……ご主人様の勃起オチンポ最高ですうっ……んふうあっ……  
お好きなだけオチンポ汁出してくださいいっ……くふひあっ……私の濡れ濡れオマンコをドロドロにしてくださいいっ……」  
 背中を撫でてやりながら、俺はそよぎの耳に口を付けた。  
「しっかりと中出しを楽しめよ?」  
 告げた後に膣肉を精液で汚してやると、そよぎは腰をガクガクと震えさせて天を仰いだ。  
「んくかはあっ……中出し気持ちいいですうっ……あひくふうっ……オチンポ汁美味しくてえっ……はひくへあっ……中毒オマンコがイくイくイっ……くうっ……イくうううううっ!」  
 
 
 島の教師の人数は少なく、生徒は小学一年生から高校三年生までいるというのに、校長と教頭を含めてもたった一四名しかいない。  
専門教科以外の科目を教えることも多く、例えば俺たちの数学の授業は教頭が担当している。  
 翌日の火曜日。五時限目の古文の担当教諭は如月で、俺は板書きをノートに写しながら教壇に立つ貧乳娘を観察していた。  
朝から事ある毎に様子を見ていたのだが、矢張り十三歳にしてコロンビア大学を卒業した才女には見えない。いつも通りに酒臭く、行動は支離滅裂だ。  
「ん? どうした後藤? 何じっと見てんだ? 私に惚れたか?」  
 当人がそう尋ねてきたのを俺は鼻で笑ってやった。見てくれは悪くないが、ヤエに頼まれたように口説く気にはなれない。とは言え、聞きたいことはある。  
「なあ、成長期。お前、何歳から酒飲んでる?」  
「む、女に過去を尋ねるのか? まあ、いいだろう。お酒は二十歳になってからだ」  
 昨日ヤエに見せられた書類によると、如月は名目上、二十三歳ということになっているらしい。  
仮に言葉の通りに三年前から飲酒しているとなると、現在本当に十四歳だった場合、十一歳からアルコール摂取をしていることになる。  
例え頭脳明晰だからといって、そんな人間を国の機関が調査員に任命するだろうか?   
実年齢で二十歳を超えており、教職の免許を持っている他の人間に頼んだ方が面倒は少ないだろう。それとも何か裏があるのか?  
「おい、後藤? ほんとにどうした? 元気がないな?」  
 如月はそう言って教壇を降り、俺の席へと近寄ってきた。大股で歩いているにも関わらず、全く揺れることのない胸が哀しい。  
「何があったか知らんが、私が元気を与えてやろう。ほれ」  
 俺の席の前まで来ると、如月はそう言って腕を取り、自分の胸へと押し付けた。試しに指を動かしてみるが、あまり揉み応えはない。仮に十四歳だとしても未発達過ぎるだろう。  
「んあっ、こらっ、はうっ、ほんとに揉むなっ、くうっ、もっと優しくうっ」  
 頬を染めて息を漏らす如月に向かい、俺は真顔で呟いた。  
「これ、本当に胸か?」  
 挑発に釣られて怒鳴って来るかと思ったのだが、如月は慌てて俺の手を払い除けると、両手で胸を抑えて俯いてしまった。横顔は真っ赤だ。  
「……酷い」  
 寂しそうにそう言われ、急に罪悪感が湧いてきた。もしも二枚目の調査書の通りなら、俺は年下の少女に狼藉を働いた上、罵声を浴びせたことになる。  
「悪かった、つい……」  
「……誰にも触らせたことなかったのに」  
 その台詞には噴き出しそうになった。何度も自分から触らせたてきた上に、私の上を通り過ぎていった男は星の数ほど、とか何とか言っていた気がする。  
が、突っ込みを入れるよりも改めて謝罪した方がよさそうな雰囲気ではある。  
「本当に悪かった。何でもするから許してくれ」  
 そう言って頭を下げようとした途端、如月は顔を上げてニヤリと口元を歪めた。  
「何でもするんだな?」  
 失言だとは思ったが、今さらそう言っても聞いてくれそうにない程に、如月は邪悪な笑みを浮かべている。  
しかし、本性を見極めるのにはかえって都合がいいかもしれず、俺は黙って頷いた。  
 
 特別に無茶なことでも要求してくるかと思ったのだが、放課後に進路指導室へ来い、と言うのが如月の提示してきた条件だった。  
それを了承しなければ俺の行為を許さないと言う。もちろん、俺は首肯した。  
 全ての従業が終わると、同行すると言ってきたそよぎを他の巫女たちと共に帰宅させ、俺は約束通りに進路指導室へと向かった。  
ノックをして入室の許可を得た後、小さな机を挟んで如月と向かい合い、パイプ椅子へと座る。そんな俺の様子を見て如月は薄く笑い、突然に切り出してきた。  
「お前、何か知っているな? 私のことか?」  
 普段とは異なる淡々とした口調で問い掛けられ、俺は一瞬言葉を詰まらせた。いきなり相手から本題に入ってくるとは予想外のことだ。だが、考えようによっては面倒がなくて済む。  
「……お前の本当の歳は?」  
「質問を質問で返すか。中々に話し合いの相手としては優秀だな。大方、南雲ヤエあたりから聞き及んでいるんだろ? 今さら隠しても仕方がない。私は十四歳だ」  
 その返答に俺は息を呑んだ。如月は正体を隠すつもりがないらしいが、それはつまり、ある程度の調査が終わっていることを意味しているのかもしれない。  
敵対はしない、書面の再提出で済む、とヤエは言っていたが、果たして本当にそうなのだろうか? ここはもう少し状況を確認する必要がありそうだ。  
「何でそんな年の奴が教師をしている? 何の為に島に来た?」  
「まあ、そう急くな、龍神」  
 その言葉が挑発であることは判っていたが、思わず俺は眉を潜めてしまい、如月は満足そうに微笑んだ。  
「……どこまで、何を、お前は知ってんだ?」  
「急くなと言ったろ? 別に争う必要もない。まずは私の説明からいくか? 私は単にこの島の教師になりたかっただけだ。教員免許もちゃんと取得している。  
まあ、簡単な調査報告書を提出するという名目で、文科省には便宜を図ってもらったがな。特に宗教法人審議会の調査員という訳じゃない。この程度のことはお前たちも掴んでいるんだろ?」  
 少し迷ってから俺は頷いた。多少は話に差異があるが、まずは全て語らせ、後に内容を吟味した方がよさそうだ。  
「過疎化の進んでいるこの島の教師になるには、別に歳を誤魔化さなくとも良かったのだが、実際の年齢では教師として受け入れてもらえるかどうか不安でな。  
当たり前の話だが、住民票などの書類を変更するのは罪になるので、ちゃんとその筋の許可は得た。例え裁判になっても負けることがないように証拠も残してある。  
省庁の意思決定者の協力があれば、この程度のことは簡単でな。私も少し気が抜けた程だ。ここまではいいか?」  
「ああ、続けてくれ」  
 そう俺が答えると、如月は再び口を開いて語り始めた。  
 
 その後の如月の言葉を要約すると、こういう話になる。  
 古代民俗学の教授を父に持つ如月は、幼い頃から信仰に興味を持ち、関連の本などを読み漁っていたらしい。  
その中に古代信仰が根付いているという奥津島の記事もあり、一度は島に行ってみたいと幼少時から思っていたそうだ。事情は異なるが、その気持ちは俺にも判る。  
 後に頭脳明晰と認められ、外国の大学に行くことになったが、そこでも時間を作っては信仰に関する文献などを調べていたと言う。  
合間に日本の審査機関の許可を得て小・中・高の教員免許状をも取得していたというのだから、本当に頭と要領がいいのだろう。  
 大学卒業後は教師として奥津島への赴任を希望したが、余所者には閉鎖的な地であるという理由から許可が下りなかったとのことで、仕方なく父親の人脈を利用して文部科学省と取引を行ったとのことだ。  
まあ、閉鎖的かどうかはともかく、優秀な人材を僻地に送るのは勿体無いとでも思われていたのかもしれない。  
 その取引として、ヤエの予想していた通り、宗教法人の調査書を提出することになったそうだが、龍神信仰の法人として『津ノ龍ノ理』と言う団体名があることは俺も初耳だった。名前だけなら怪し気な新興宗教団体に思えなくもない。  
 とは言え、当人が口にした通り、争う必要はないだろう。件の報告書は既に提出してあるらしいが、その内容は適当で、書面を再提出するようなことにはならない筈とのことだ。  
「報告書にはお前や鳴海たちの名前も書いてない。私は担任だからな、そのくらいの配慮はするぞ?」  
 そう言って笑う如月は、どことなくすっきりとした顔をしている。恐らくは隠し事をしていた為、後ろめたい気持ちでも抱いていたのだろう。  
「じゃあ、全部知ってはいるんだな? 俺や巫女たちのこと」  
「まあな。これで教師という肩書きは便利でな。人の出入りは生徒たちの増減にも関わるし、島の人間の入れ替えについても掴んではいる。  
私が知らないのは、お前が鳴海たち巫女神に与えている寵愛の内容くらいなもんだ」  
 その言葉に、俺は唖然として黙り込んだ。  
「別に驚くことはないだろ? 歴史学上、寵愛なんてものは当たり前のことなんだよ。ここ百年で変になってるだけだ。  
大半は儒教の影響だがな。で、全部話したが、私をどうする? 島から追い出すか?」  
「そんな必要はねえだろ? 敵って訳でもねえし。って言うか、お前はどうしたいんだ?」  
 そう問い掛けると、如月は目を輝かせた。  
「なら、もっと信仰に携わりたいと南雲ヤエに伝えてくれ。祭事を仕切ってんだろ? 私はもっと龍神伝説の色々なことが知りたい。  
一生を掛けて記録に残したいんだ。もちろん、私的な記録にな。そのくらいなら構わんだろ?」  
 俺はしばし考えた。如月の語った内容が嘘でないのなら、ヤエも協力者として引き入れたいと言っていたことだし、直接紹介してもいい。反応を見ながら話の内容の精査も出来る。  
「じゃあ、近い内に会わせるから自分で話せよ。俺は決められる立場にない」  
 
 自宅に帰ってから後、俺は同居の四人を連れて隣宅を訪問し、ヤエたちに如月のことを告げた。俺の話にヤエは何度も相槌を打ち、一通り話を聞くと朗らかに笑った。  
「面白そうな人物じゃな。いつでもいいから連れてきておくれ」  
 その言葉に、そよぎは僅かに顔を曇らせた。  
「おばぁ、話の内容を再調査してからの方が……」  
「こういう時は腹を割って話すのが一番じゃよ。心配なら同席せい」  
 そうヤエに言われ、そよぎは渋々と頷いた。  
「でも、如月先生がほんとに年下だったなんて、なんか変な感じです」  
「うんうん、判る判る。先生って呼ぶの、なんか考えちゃうよね?」  
 雫と火凛の話を聞いて俺は苦笑した。実際の年齢では不安と言っていた如月の言葉の通りだったからだ。ここは念を押して置いた方がいいだろう。  
「この話は他の誰にもすんなよ? 敵どころか、味方になってくれそうなんだからな?」  
「判ってるってば。態度に出ないように気を付ける。それでいいんでしょ、ナギ?」  
「私も今まで通りの態度でいられると思います。巫女ということで、私たちも年上の方から様付けで呼ばれることもありますし、成績優秀というのは尊敬できますから。  
凪君の言う通り、如月先生に味方になってもらえれば心強いです」  
「でも兄ぃ兄ぃ。あの先生、まだ子供なんだよね? いつもお酒臭いよ?」  
 凛音にそう問い掛けられて、俺は自分の失態に気付いた。確かに飲酒については確認していなかった。  
「まあ、酒など子供でも飲めるしの。大方、欲求不満が原因で飲み始めたんじゃろ」  
 ヤエの言葉に一同が首肯する中、俺は少しだけ首を傾げた。如月が欲求不満を抱えているとしたら原因は何だろう?   
頭脳明晰と言うことで周囲に何か言われたとか、肉体の貧弱さを恥じているとかだろうか?   
酒を飲むきっかけはそれとして、未だに欲求不満を抱える日々が続いているが故、いつも酒臭いのか? それともアルコール中毒なのか?   
年齢詐称と同じく、飲酒についても許可を得ているのだろうか?  
「どうしたんだ龍神? 深刻な顔をして」  
「もしかして凪君、如月先生のことでも考えていたんですか?」  
「ちょっとナギ? あの先生も同居させるとか、そんなこと考えてんじゃないよね?」  
「兄ぃ兄ぃはもっと女の人が欲しいの? 夏休みが終わったら三人増えるのに?」  
 そよぎ、雫、火凛、凛音に問い詰められ、俺は我に返って首を横に振った。年下と判った以上は如月も多少可愛く思えるが、何せあの物言いと態度だ。  
肉体関係など持ったら今以上に偉ぶるに決まっている。が、明確な否定の言葉が浮かんでこない。  
「……いや、その、そうじゃなくて」  
「まあ、それでも構わぬが。出来れば面談の後にしてもらえんかの、龍神」  
 ヤエにまでそう言われて、俺は愛想笑いをしながら黙って頭を掻いた。  
 
 例の如く就寝前、俺は火凛を自室に呼んだ。だが、後から行くと言っていたにも関わらず、中々やって来ない。  
何かあったのかと心配になり、探しに行こうとベッドから立ち上がったところで、当の本人がノックもせずに入ってきた。  
見れば、透けた赤いネグリジェ一枚だけを身に纏い、ショーツも穿いていない。  
「ごめん、準備に手間取っちゃって……」  
「まあ、いいけどよ。何の準備だよ?」  
 そう尋ねると、火凛は赤い頬を膨らませた。  
「この前、ナギが言ったんじゃない。自分一人で準備出来るようにしとけって。私、浣腸なんてするの、生まれて初めてだったんだからね?」  
 そう言えば一昨日の初の尻穴性交の際、そんなことを言った気がする。風呂を出てから浣腸器を渡しておいた覚えもある。  
「……お前、尻でする気満々だな」  
「だって、すっごい気持ちよかったんだもん。綺麗にした後で、ちゃんとシャワーも浴びてきたよ? で、まずはどうすんの? またおちんちん虐めてあげよっか?」  
「ちょっと待ってろ。尻に入れんなら準備があんだから」  
 そう言って俺はクローゼットを開け、中からアナル用ローションを手に取った。と、火凛も中を覗き込み、カップ型オナホールを指差して問い掛けてきた。  
「これってなに? ウェットティッシュ?」  
「オナニー用のスポンジだ。中にチンポ突っ込むんだよ。使い捨てだけどな」  
「ナギってば、四人も囲ってんのに一人でしてんの? 気持ちいいの、これ?」  
「島に来てからは使ったことねえけどな。それはローションが元から入ってる奴で、そこそこ気持ちいい」  
 そう答えると、火凛はオナホールに手を伸ばして取り上げ、勝手に包装を剥がし始めた。  
「色々種類があんの? なんだか面白そう、ちょっと見せてね」  
「おい、何やってんだよ? お前にチンポ突っ込むんだから、それは必要ねえだろが」  
 俺が文句を言っている間に火凛は手早く包装を剥がし、キャップを外して視線を筒の中へと向けた。興味深そうなその顔を見ていると、取り上げるのも可哀想な気がする。  
「うわっ、ほんとに濡れたスポンジが入ってる。この隙間に入れるんでしょ? けど、簡単な作り過ぎない? こんなので気持ちいいの? 島に来る前はナギも使ってたんだよね?」  
「女抱くよりそっちの方が好きな人もいるみたいだぞ? 俺は生マンコの方がいいけどな」  
「ふうん、ナギはオマンコの方がいいんだ。ちょっと安心」  
 火凛は納得したように何度か頷くと、、オナホールから俺へと目線を移し、可愛らしく首を傾げてきた。  
「私、ナギがこれ使ってるとこ見てみたい」  
 
 火凛に自慰を見せるのは今さら恥ずかしくもないが、請われてするのは話が別だ。相手を見世物扱いにするのはいいが、立場が逆では自尊心が傷付く。  
 と思ってはいたのだが、半裸の火凛に甘えた口調で何度もねだられ、寝間着のズボンの上から陰茎を撫でられている内に、いつの間には俺は裸に剥かれてベッドの上へと転がされていた。  
中々に火凛は目聡いようで、クローゼットの中にあった模造毛皮付きの手錠を後ろ手に嵌められてもいる。  
そんな俺の横に寝転ぶと、火凛は心底楽しそうに笑って陰茎にオナカップを被せ、焦らすようにゆっくりと扱きだした。  
「今日は私がしてあげるから。おちんちんからいっぱいピュッピュしようね、ナギ?」  
「ちょっ、ちょっと待て、火凛。いくら何でもこれはねえだろ?」  
「だって、この前ので私、お尻マンコと同じくらい、ナギのおちんちん虐めるのに目覚めちゃったんだも〜ん。身動き取れないナギの裸見ているだけで、オマンコとお尻がヒクヒクしてきちゃうんだから。ちゃんと責任取ってよね?」  
 そう言いながら火凛は手の動きを少しずつ速めてきた。膣内ほどの快感はないが、それでも滑りの気持ちよさに陰茎がどんどん硬くなっていく。  
呻き声を押し殺していると、火凛は一旦シックスナインの体制になってから上半身を起こして逆行顔面騎乗となり、俺の顔に局部を押し付けたまま腰を前後に動かし始めた。  
当然、鼻や口を陰部で塞がれて呼吸に支障が起こり、俺は藻掻きながら必死に頭を横に振った。  
「もぶごもっ、んぶもがっ」  
「あれ? 苦しかった? ごめん」  
 慌てて腰を少しだけ浮かせてくれはしたものの、依然として火凛の濡れた淫裂は俺のすぐ目の前だ。呼吸するのに難はないが、淫臭の甘い匂いに酔いそうになる。  
「いっぱい嗅いでね、私のオマンコの臭い。私をおちんちんの臭い好きにさせたんだから、ナギも私のオマンコの臭い好きになってよね? 舐めてくれるともっと嬉しいな」  
 その言葉に惹かれ、臭いに朦朧としながらも俺は火凛の陰唇に舌を這わせた。扱かれ続けている一物の快楽と甘酢っぱい愛液の味とが、更に意識を混濁させていく。  
「はふぁ、気持ちいいよナギぃ、んはぁ、もっとオマンコ舐めてぇ、ふうぁ、おちんちん虐めながら舐めてもらうのいい気持ちぃ、あふぁ、このままオシッコしちゃいたいくらいぃ」  
 喘ぐ火凛の言葉を聞いて、俺は咄嗟に陰部から顔を背けた。小便を漏らすくらいに感じてくれるのは嬉しいが、どんなに愛しい相手でも飲尿までしてやるつもりはない。  
「んくぅ、ちょっとナギぃ、ふぁ、なんで止めちゃうのぉ?」  
「顔に小便されたくねえからに決まってんだろ。中断していいからトイレ行ってこい」  
「もぉ、ほんとに出しちゃったりしないってばぁ、だから続きしてよぉ。してくんないとぉ、おちんちんもこのままにしちゃうからねぇ?」  
 止むなく俺は舌を伸ばし、火凛の花弁を舐め上げてやった。  
 
 オナホールの中に一度射精すれば解放してくれると思っていたのたが、その考えは甘かったようだ。局部を舐められて俺と同時に達した筈なのに、火凛の性欲は衰えることがなかった。  
絶頂の余韻に浸りながら汚れた陰茎を舐め回して再び勃起させると、火凛は自らローションを尻穴に塗りたくり、背面騎乗位となって尻穴性交を開始した。  
もちろん、俺の許可など得ずにだ。もしかしたら育て方を間違えたかもしれない。  
「んくあっ……やっぱりお尻マンコすごいいっ……ふうあっ……病み付きになるうっ……」  
「おい、お楽しみのとこ悪いけどな、無茶し過ぎだろうが。さっきチンポ綺麗にしてくれた時もな、チンポ汁だけじゃなくてローションも舐めてんだぞ? 害があったらどうすんだよ?」  
「はふあっ……ちゃんと無害って書いてあったもぉんっ……あはうっ……だから舐めたんだもぉんっ……くふあっ……  
ナギこそちゃんと確認して買ってよねえっ……んはうっ……またしてあげるからたくさん買っといてえっ……ふくあっ……おちんちん太くて気持ちいいっ……」  
 発情していても、冷静な部分があるらしい。だが、その会話中にも尻の動きを加速させ、火凛はどんどん激しく身悶えし続けている。  
一方的にされているのも悪い気がして、俺は条件付で腰を振ってやることにした。  
「おい、ちょっと休憩して手錠外せよ? そしたら俺も動いてやるから、」  
「かはあっ……それはダメえっ……はうあっ……ずっと私がするんだからいいのおっ……あふあっ……ナギは朝までそのままあっ……んくあっ……ずっとおちんちん硬くしててえっ……」  
 火凛の言葉に俺は背筋が寒くなった。冗談だと思いたいが、迂闊に安心は出来ない。  
「お前、俺を殺す気か? 朝まで搾り取られてたら、枯れて死んじまうだろが」  
「あふうっ……じゃあ休憩も入れるからあっ……くはあっ……いっぱい私を可愛がってえっ……ふはうっ……そよぎみたいに失神させてえっ……はんあっ……私も失神させてよおっ……」  
 成程、と俺は思った。火凛の陰獣振りの背景にはそよぎへの対抗心があるようだ。  
無論、それだけでなく、単に肉悦の虜となってもいるのだろうが、希望を叶えてやればしばらくは大人しくなるかもしれない。俺は優しい口調で火凛に囁いた。  
「まずは手錠を外してくれよ。このままじゃ手が使えねえだろ? 朝がくるまで、もしくはお前が気を失うまで相手してやるから。たくさん気持ちよくしてやるから」  
 そう言ってやると、火凛の尻の動きが止まった。恐る恐るといった風に振り返り、俺を真顔で見つめてくる。弛緩した表情だが、瞳にはまだ光彩が残っている。  
「はぁ……ほんと? はぁ……朝までか、気を失うまでって? はぁ……ほんとに?」  
「約束すっから外してくれ。両手も使って犯してやるから」  
「はぁ……もう一回イってからでもいい? はぁ……お尻からおちんちん抜きたくない……」  
 その真剣な物言いに、俺は微かに噴き出した。まあ、それもいいだろう。  
「判ったよ。けど、イったらちゃんと外せよな?」  
「はぁ……うんっ……はぁ……ナギもちゃんとお尻マンコに出してね?」  
 火凛はそう言ってから、それまで以上に淫らに腰を使い始めた。  
 
 数時間後。ネグリジェを脱がせて全裸にし、効率よく快楽を与えることを念頭に置きながら後背位で責めてやると、火凛は何度も繰り返し果て続け、三度目の腸内射精を終えた頃には失神寸前となった。  
白目がちな目に光はなく、口からは涎と若干呂律の回らない淫語を漏らすばかりだ。途中から上半身は崩れ落ち、尻を高く突き出したまま、身体の彼方此方を痙攣させ続けてもいる。  
この分ならもう一回交われば意識を失ってくれるだろう。とは言え、あまり反応が薄いようなら膣にバイブを突っ込んでやろうと思っていただけに、少々残念な気がしないでもない。  
 陰茎を引き抜くと火凛は力なく喘ぎ、菊門から噴水のように精液と腸液とを辺りに撒き散らした。が、先日から家中のベッドのシーツ下には防水シートを入れてあるので、大した問題ではない。  
時計を見ると、時刻は夜中の三時半過ぎ。もう一度の性交で済めば、学校に行く前に少しは眠れそうだ。  
「ちょっと休憩な。チンポが立ったらまた入れてやっから」  
「はへぇ……おひんひん美味ひいのぉ……ふはぁ……おひりマンコが美味ひいのぉ……」  
 俺の言葉は届いていないらしく、火凛はうわごとを呟いている。思い返してみれば、そよぎも完全に失神していた訳ではなく、今回はもうこれで終了にしてもいい気がしてきた。  
「おい、限界か? 終わりにすっか?」  
「ひふぁ……おひんひん太くて硬いのぉ……へはぁ……おひり拡げてもらったのほぉ……」… 埒が明かず、取り敢えず俺は萎えた陰茎の臭いを嗅がせてみることにした。二人分の体液に  
塗れて淫臭が濃いが、いい気付け薬代わりになるかもしれない。  
「ほれほれ、お前の好きなチンポの臭いだぞ? 尻マンコ汁も付いてるから舐めんなよ?」  
 とは言っても相手は意識が混濁している。間違っても舐めたりしないよう、頭頂の方から一物を鼻先に近づけてやると、火凛は鼻をフンフンと動かして臭いを嗅ぎ始めた。   
「ほふぁ……すごく臭くていい臭いひぃ……ふひぁ……おひんひんの臭い大好きひぃ……」  
「限界だな、お前。もう終わりにすっけど、そんなに好きならもう少し嗅がせといてやるよ」  
「ふへぁ……臭くて幸へぇ……かふぁ……幸へ過ぎて出ひゃうぅ……」  
 何を出す気かと問い掛ける間もなく、火凛は再び肛門から体液を噴き上げた。一見、鯨の潮吹きのようにも見えるが、火凛の弱々しい態度から餌が欲しくて芸をする戦時中の象の童話を連想してしまい、堪えきれずに俺は笑った。  
「はひぃん……おひりから出ひゃうの気持ちいひぃ……んひぃ……まら出ひゃううぅ……」  
 少量の液体を続け様に排出する火凛を見て、俺は少し勿体無い気がしてきた。動画に撮って効果音を入れ、作品として残しておくべきだったかもしれない。  
しかし、シーツを取り替えて後片付けをしない限り、この部屋で眠るのは無理そうだ。今日は性交部屋で寝るか。  
「好きなだけ出していいぞ。全部出し終わったら一階へ連れてってやるからな」  
 そう言って頭を撫でてやろうとした瞬間、つい気付かずに鼻に陰茎を押し当ててしまい、火凛は鼻息荒く臭いを確かめると、全身を大きく震わせ始めた。  
「あひぃ……臭い強くて出ひゃううぅ………んくぁ……出ひゃううぅ……」  
何を今さら、と思ったが、それまでと明らかに様子が違う。相変わらず声に力はないが、絶頂を堪えているような素振りだ。俺は不安になって問い掛けてみた。  
「おい? どした?」  
「ふひへぁ……ダメ出ひゃううっ……んくっ……かはっ……あっ……はあああああぁ……」  
 こうして火凛は性交時に初めて、困ったことに俺のベッドの上で小便を漏らした。  
 

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