翌朝。火凛を性交部屋のベッドに寝かせたまま、睡魔に取り憑かれながらも俺は学校に行った。目が覚めたら俺の部屋を掃除しておくようメモを残してきたので、帰宅までには綺麗になっているだろう。  
 二時限目は如月の授業だったが、進路相談の名目で俺だけ昨日の指導室に呼び出され、残った生徒は自習となった。パイプ椅子に腰掛けると、俺は不機嫌な口調で問い掛けた。  
「で、なんだよ?」  
「なに怒ってんだ、お前?」  
「……眠いんだよ。俺も自習が良かったんだよ。寝てたかったんだよ」  
 不貞腐れた俺の態度を見て、如月はちょこんと首を傾げながら媚びた口調で囁いてきた。  
「ごめんね、お兄ちゃん」  
 思わず俺は椅子ごと後退った。はっきり言って気持ち悪い。もしかしたら目の前の発育不全は、弱年時からのアルコール摂取により右か左かの脳が腐敗しているのかもしれない。  
「あからさまに逃げるな。私だって傷付いたりするんだぞ? だがまあ、お前が私にそういう個性を望んでいないことは判った。妹タイプは嫌いか? 私はお前の二つ年下だぞ? 不自然ではないと思うんだが……」  
「お前、本当に大学出てんのか?」  
「お前は学歴と萌え要素に因果関係があると考えてるのか?」  
「……話がよく判んねえから、要件だけ言え」  
 あり得ない物言いに鳥肌が立ったままの腕を擦りながら、俺は淡泊な口調で言ってやった。  
「なんか腹立つが、まあ、いいだろう。大盤振る舞いで驚くなよ? まずはこれだ」  
 如月はテーブルの上にクリップで留めた紙の束を放ってきた。手に取ってパラパラと捲ってみると、どうも何かの計画書らしく、文章以外に数字と図面が印刷されている。  
「何だよ、これ?」  
「お前らが目の敵にしてる花菱開発の企画書だ。主に本津島の開発計画についてのな」  
 そう言われて改めて書面を見直してみると、確かに本島の地図もあり、工程表や遊行施設の完成図なども載っている。  
「……何で知ってんだよ? 俺だってつい最近教えてもらったばかりなんだぞ?」  
「少しは私のことを見直したか? と言うか、その会社が島の開発計画を掲げてんのは公の話だぞ? ネットで検索してみろ。尤も、その書類は本社のサーバーからパクったんだけどな」  
 言われてみれば敵対予定の相手は株式会社だ。事業計画も立てずに開発を進めようとする訳がない。しかし、今のやり取りで重要なのはそこではない。  
「パクったって何だ? お前はスーパーハッカー様か? それともネットワークスペシャリスト様か? 要するに、これは非合法に手に入れたんだな?」  
「まあな。だが、その書類は役に立つと思うぞ? 恐らくは南雲ヤエもそこまでの詳細な内容は把握していない筈だ。それを渡して昨日の件を宜しく伝えてくれ」  
「ああ、それならもう話した。いつでもいいから来いってよ。俺も同席する。今晩は暇か?」  
 俺がそう尋ねると、如月は嬉しそうに笑って何度も頷いた。  
「なんだ、お前、仕事が早いな。あっちの方も早漏か?」  
 
 大盤振る舞いと言っていただけあって、如月から渡されたのは企画書だけではなかった。  
巫女神たちとの密談場所も必要だろうということで、その部屋、つまり進路指導室の鍵、隣の進路資料室の鍵、おまけに眠いなら寝て来いと、旧校舎にある使われていない用務員室の鍵まで投げて寄越してきた。  
新校舎にも用務員室はあるが、そちらは如月の昼寝場所なので譲れないそうだ。聞くと、必要と思われる場所については複数の合い鍵を作ってあるらしい。要領がいいと言うよりも、もう犯罪者と呼んでいい。  
 校内で巫女たちに寵愛を授けたいのなら保健室の鍵もあるぞ、とも言われたが、それは遠慮した。性交するならば、いつ誰が来るか判らない保健室を使うより、用務員室を使った方が安全だと思ったからだ。  
例えボロボロの部屋で布団がなかろうが、金があれば多少は居心地のいい部屋にも出来るだろう。  
 二時限目が終わるまでには少し間があり、俺は早速その用務員室を見に行くことにした。横になれる場所があるなら眠りたかったということもある。  
もう用もないだろうに如月は同行すると言い出し、別に断る理由もなく、俺たちは旧校舎へと向かった。  
 着いてみると、件の用務員室は予想外に綺麗な部屋だった。小さな靴脱ぎ場の先は畳が敷いてあり、確認すると押し入れには清潔そうな布団、隅には流し台もあった。  
旧校舎で現在使用されているのは反対側の一角だけの為、周囲に全く人気はない。テレビや小型の冷蔵庫、カセットコンロなどを自前で用意すれば、いい隠れ家になりそうだ。  
「どうだ? 気に入ったか?」  
 尊大な笑顔を向けて如月が問い掛けてきたが、この年齢詐称少女の手柄には違いない。頭を撫でてやりながら、俺は温和な口調で言葉を返した。  
「ああ、お前にしちゃ上出来だ。ついでに少し寝ていくから、もう帰っていいぞ」  
「折角だ、私が添い寝してやろう。但し、身体には指一本触れるなよ?」  
「いや、遠慮しとく。うなされそうだ」  
 そう言って髪から手を離すと、如月は寂しそうに俯いた。どうやら俺をからかって遊ぶつもりのようだ。案の定、媚びた瞳を潤ませながら、如月は上目遣いで俺を見つめてきた。  
「……二人きりだというのに、お前は私に欲情したりはしないのか?」  
「……お前のその性格、直ったりはしねえんだろうな」  
「む、失礼な言葉だな。何か問題があるとでも言うのか?」  
「お前が納得してんなら、別にいいんだろうよ」   
 俺が苦笑いしながらそう言うと、如月は眉間に皺を寄せて睨み付けてきた。  
「お前お前言うな。私の年齢を知った以上、それなりの呼び方があるだろう?」  
「呼び方?」  
「そうだ。何と言うか、そのな、二人の時は、えっと、珠江ちゃん、とか……」  
 その言葉と恥ずかしそうな素振りに俺が腹を抱えて笑い出すと、如月は真っ赤な顔をして尻を何度も蹴り飛ばしてきた。  
 
 如月を追い出して昼休みまで眠り、教室で弁当を食べ終えると、俺は雫を用務員室へと連れ込んだ。食欲が満たされると性欲が落ちるという話を聞いたことがあるが、俺には当て嵌まらないようだ。  
事前に二人分の早退届を如月に提出してあるので、性行為に耽っていても捜索などされる心配はない。帰宅してもいいのだが、正直、他人が授業を受けている最中に校内で交わるというのは興奮する。  
雫も同じ思いらしく、入り口の鍵を掛けてカーテンを閉め、互いに立ったまま優しく身体を抱き寄せると、それだけで目を細めて息を乱し始めた。  
「はぁ……また学校でしちゃうんですよねぇ? ふぁ……オチンポ頂けるんですよねぇ?」  
「もう発情してんのかよ? すっかりメスブタになっちまったなぁ、お前」  
 嫌味のつもりで言ってやったのだが、雫は俺に抱き付いたまま、身体をブルブルと小さく震わせた。  
「んふぁ……メスブタって言葉も素敵ですぅ……あふぅ……凪君だけのメスブタぁ……はぁん……早く凪君のオチンポでぇ……くふぁ……メスブタのオマンコ掻き回してくださいぃ……」  
 恍惚とした口調でそう言うと、雫は制服越しに乳房を擦り付けてきた。嘲りの言葉一つで性欲が抑えられなくなってしまったらしい。  
着実に調教の成果が出てきていると言えるが、少し淫欲の抑制を学ばせる必要がありそうだ。俺にその気がない時や他人のいる場所では、可能な限り清純を装わせておきたい。  
「いつまでも抱き付いてねえで座れ。畳の上に正座しろ」  
「は、はいっ、すみませんっ」  
 我に返ったかのように雫は喘ぎを止め、指示通りに座って俺を見上げてきた。顔は紅潮しているが、瞳の色は従順だ。俺は屈み込んで雫の頬を撫で、言い聞かせるように囁いた。  
「お前は俺のもんなんだからな。好き勝手にハァハァ言ってんじゃねえ。今後は俺が許可した時だけ悶えてろ。いいな?」  
「わ、判りました。そのようにします。でも、許可ってどんな?」  
「合図となる言葉でも決めとくか? ん、そうだな、俺がお前のことをメスブタって呼んだ時だけ好きに悶えてていいぞ?   
これからは俺がそう呼んだり、耳打ちしたりしたら、人前だろうが授業中だろうがマンコ濡らしとけ。一旦呼ばれたら俺が止めるまでずっとだ。いいな?」  
「で、でも、それって授業中とかに自分でオマンコ触るってことですよね? そんな……」  
 雫は少しだけ青ざめた顔になった。そこまでするのは流石に恥ずかしいようだ。  
「安心しろ。別に教室でオナニーしろってことじゃねえから。そういう気構えでいろってことだ。  
それにこの先、そんなことしなくても、メスブタって呼ばれただけでマンコ汁垂らすような心と身体に仕込んでやる。お前ももっと俺好みになりてえだろ?」  
「はいっ。凪君好みになりたいですっ」  
 迷いなく答えた雫の頭を撫でてやり、唇を数秒だけ奪ってから俺はその場に立ち上がった。  
「ご褒美だ。チンポしゃぶってもいいぞ、メスブタ」  
 そう言って股間の膨らみを見せつけてやると、雫はうっとりと微笑みながら俺のズボンに手を掛けた。  
 
「ふはあっ……オマンコが溶けてるうっ……はくあっ……もう溶けちゃってますうっ……んくうっ……オチンポ気持ちいいっ……あはあっ……すごく硬くて気持ちいいですうっ……」  
 二度ほど精液を飲ませてから座位で膣を犯してやると、雫は指示も待たずに腰を揺り動かしてきた。合間に自らブラウスの前を肌蹴て乳房を露出させ、気持ちよさそうに乳首に触れてもいる。  
もう一方の手は穿かせたままのショーツの中に入れられており、どうやら指先で陰核を擦っているらしい。言ってみれば俺を利用した自慰だが、まあ仕方ない。  
言葉による態度の切り分けをさせていく為にも、ここは了承した褒美として快楽を与えておくべきところだ。これで清純と淫乱の二面性を楽しんでいくことが出来る。  
既に無愛想と従順のギャップを楽しませてもらっているそよぎ、被虐と加虐の隔たりのある火凛にも、近い内にキーワードとなる言葉を与えてやろう。  
残る凛音はどうしようかと思いつつ、俺は雫に合わせて抽送を加速させてやった。  
「んふあっ……カリ太オチンポすごいいっ……くうあっ……オマンコの奥を突かれるの好きいっ……あふあっ……勃起乳首とクリトリスもいいっ……はひあっ……オマンコ幸せえっ……」  
「チンポでもバイブでも、マンコに入ってりゃ何でも気持ちいいんだろうが」  
「はふあっ……そんなことないですうっ……かはあっ……バイブなんかじゃダメなんですうっ……うくはっ……凪君のオチンポじゃなきゃダメなのおっ……  
ふくあっ……凪君の硬いオチンポが一番いいっ……んあうっ……凪君のカリ太オチンポだけが大好きなんですううっ……」  
 そう言いながらも、雫は罵られたことに興奮しているようだ。茎部に触れているショーツの布の湿りは増し、当人の腰と手の動きも激しくなってきている。  
「なら、もっと尻を振ってチンポに尽くせ。淫乱マンコでチンポ汁飲みたくねえのか?」  
「ふくはあっ……飲みたい飲みたいですうっ……はうふあっ……もっとオマンコで尽くしますうっ……くふうあっ……オチンポ汁大好きなんですうっ……  
うはふあっ……凪君のオチンポ汁大好きオマンコなのおおっ……あふはあっ……淫乱オマンコにしてもらったのおっ……」  
 自身の性感帯に伸ばしていた腕を俺の首に巻くと、雫は上下に大きく腰を揺さ振り始めた。自慰を止めて俺本位の動きで尽くす代わりに、子宮に亀頭を強く打ち当てることで愉悦に浸ろうとでも思っているのだろう。  
その考えは浅ましいが、快楽に依存して痴態を見せる様は可愛らしくもある。俺は腰の動きを合わせながら、乳房に手を添えて乳首を優しく噛んでやった。  
「はうふあっ……それ気持ちいいですうっ……ひふはあっ……噛まれるの好き気持ちいいっ……くふうあっ……勃起乳首と淫乱オマンコが溶けてくうっ……  
あくはうっ……凪君早くオチンポ汁出してくださいいっ……んふうあっ……もうメスブタ便器オマンコが限界ですうっ……」  
 懇願される必要もない程、俺の陰茎も射精間近だ。雫の尻を片手で押さえ込んで一際奥まで膣を貫くと、俺は亀頭で子宮を押し潰しながら精液をぶち撒けてやった。  
「あひくへはああっ……オチンポオチンポオチンポ汁ううっ……ひくはきへあっ……熱くて染みて気持ちいいですううっ……  
んくかへふあっ……オチンポ汁で私もイくうっ……はくふへあはっ……イくイくイくイくオマンコイくううっ……淫乱オマンコイっ……くうううううっ!」  
 珍しく腰を跳ねさせることもなく、雫は達しながら更に子宮を押し付け、必死にしがみ付いて接合部から大量の体液、恐らくは潮を垂れ流してきた。  
まさか学校で初の潮吹きを見られるとは思わなかったが、褒美としては都合がいい。だが、素に戻っていく様子はない。  
果て続けているのか余韻に浸っているのかは判断つかないが、その全身は何度も収縮と弛緩を繰り返している。まさかと思って腰を引こうとすると、案の定、雫は黄色い尿をも漏らし始めた。  
「んかはへえっ……オヒッコ気持ちいひぃ……ふくはかあっ……こんな幸へオヒッコ初めてれふうぅ……あひくへあっ……もうわらしシェックスなひじゃ生きていけまへぇん……」  
 
 その晩、俺や雫たち同席の下、如月とヤエとの初の面談が行われた。  
時には如月でも緊張するのか、不遜な態度は若干陰を潜めており、今後は喜んで信仰の発展に協力していくと厳かに告げるのを見て、一同揃って安堵の息を吐いた。  
 改めてその場の全員と互いに挨拶を交わし、ヤエから信仰についての詳細な説明を受け、如月は満足そうに笑っていた。  
が、花菱開発の株取得の段になると不意に怪訝な顔になり、一頻り黙り込んだ後に小さな声で呟いた。  
「無駄だな、それは。時間と金と手間の無駄だ」  
「どういうことだよ?」  
 そう尋ねると、如月は情けないものでも見るような視線を俺に向け、踏ん反り返って口を開いた。  
「まあ、考えは判る。株の過半数を取得し、経営権を掌握したいんだろ? だがな、そこそこ大きな株式会社が素人にそんな買い占めをさせると思うか?   
通常の会社でも何らかの対策はしているぞ? 危険になったら第三者割当増資という方法もある。やるだけ無駄だ」  
 その言葉に茶の間は静まり返った。確かに俺は素人で、そこまで考えが及んでいなかった。  
しかし、ヤエたちにしてみれば希望の芽を摘まれたに等しいだろう。特にそよぎは困惑した顔でじっと如月を見つめている。  
「ああ、鬱陶しいから落ち込むな。株なんか買わなくても、要は相手に島から手を引かせりゃいいんだろう? 簡単なことだぞ? 信用を落として経営難にさせよう」  
「ど、どうやったらそんなことが出来んだよ?」  
 俺の問い掛けに如月はニヤリと笑った。  
「まず、本社のサーバーにファイル共有ソフトを仕込んでだな、違法ファイル、そうだな、児童ポルノでもダウンロードさせて、同時に暴露ウイルスに感染させる。  
で、意図的に外部に社内の重要な情報を漏らさせる訳だが、粉飾決算の証拠になりそうな偽の書類も混ぜておく。噂が拡がるよう、ハメ撮り写真とかも混ぜておくといいかもしれん。  
後はブログや掲示板などで煽ってやれば相応に話が広がり、担当機関が調査に入るだろう。例えそれが事実でないと判っても、株主や取引先、金融機関との信頼関係は揺らぐ。そうなれば新たな開発なんて出来なくなる」  
 俺は開いた口が塞がらなかった。年齢詐称の件と同じく、国の機関の助けでも借りるのかと思っていたのだが、話し振りからすると陰険な罠に嵌めるつもりらしい。  
「話がよく判らなかったんですけど、それって罪になったりしないんですか?」  
「なるよ」  
 雫の問いに平然と答え、如月はヤエへと視線を向けた。  
「もちろん、特定されるような証拠を残したりはしません。必要なら今言った程度のことは、私一人でどうにか出来ます。なので、今後ともよしなに」  
 その言葉に一瞬目を丸くした後、ヤエは楽しそうに笑った。  
 

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