翌日の相手は凛音だったが、昨晩の雫との行為で俺に余力は殆どなかった。  
一応は学校から帰宅してから通販で購入した怪し気なスタミナドリンクを飲んだのだが、即回復という訳にもいかず、取り敢えず俺は自室で凛音とTVゲームをして遊ぶことにした。  
 床に敷いたクッションの上に胡座をかき、膝の上に載せてやると、凛音は嬉しそうに背中を擦り寄せてきた。  
そのまま和気あいあいとパズルゲームで対戦していたのだが、適当なところで手を抜いて勝たせてやると、凛音は急に立ち上がって俺を見下ろしてきた。  
「兄ぃ兄ぃ、本気出してない」  
 今にも泣き出しそうな程に悲しい目をして凛音が言った。気を遣ったつもりが裏目に出たらしく、俺は慌てて弁解を始めた。  
「いや、そこそこ本気出してたんだぞ。その、なんだ、凛音が強いんだよ」  
 努めて優しい口調で言ったのだが、凛音は横に首を振り、寂しそうに呟いた。  
「兄ぃ兄ぃ、いつも私に遠慮してる。私は本気で兄ぃ兄ぃに相手してもらいたいのに。ほんとに兄ぃ兄ぃのこと好きなのに。私が子供だから……」  
 瞳に涙を浮かべるのを見て俺は立ち上がり、凛音の身体をそっと抱きしめた。  
「悪い、そんなつもりじゃなかったんだ。けどな、俺はちゃんと凛音のことが好きだぞ?」  
 そう言って手を離して屈み込み、頬にキスをしてやると、凛音は頬を染めて少しだけ口元を綻ばせた。  
「……私、早く大人になりたい。大人なら五つくらいの年の差なんて、何でもないよね?」  
 俺の目から視線を逸らさずに返答を待つ姿は、胸が痛くなる程に細くか弱い。以前から気付いてはいたのだが、自分が正式な巫女でなく幼いことに凛音は引け目を感じているらしい。  
俺は目の前の小さな唇に一瞬だけ口を付けてから、言い聞かせるようにゆっくりと囁いた。  
「確かに大人になれば、俺と凛音の年の差なんて何でもないだろうな。でもな、今だって俺は雫たちと同じくらい凛音のことが大切だし、その、子供だとは思うけど、それでも一人の女として好きだぞ。これは本当だからな?」  
「……でも私、おっぱいだってお尻だって小っちゃいし、兄ぃ兄ぃを喜ばせてあげられない」  
 その発言に俺が思わず笑うと、凛音は拗ねた顔をして少しだけ唇を突き出した。  
「……やっばり、兄ぃ兄ぃもそう思ってる」  
「そんなことねえよ。ただ、可愛いなって思ってさ。おっぱいやお尻が小っちゃくても、相手が凛音なら俺は充分満足してるぞ?   
それに今の内から俺に触られてたら、大人になった頃には巨乳になってるかもしんねえし。自分の年齢や身体のことで悩んだりすんな。  
今のままでも俺はずっと凛音のことを好きでいる。大人になって変わらなくてもずっとだ。約束するよ」  
 そう言ってやると、凛音は満面の笑みを浮かべて俺に抱き付いてきた。  
「すごく嬉しい。兄ぃ兄ぃ大好き」  
 
 仲直りの後、俺は凛音と改めてゲームで対戦することにした。容赦なくやり込めてやる度に凛音は再戦を希望し、何度も応じてやっている内に突然陰茎が勃起してきた。  
膝の上に載せた凛音の尻の感触を受け、スタミナドリンクが効いてきたらしい。その昂ぶりは堪えきれない程で、俺はゲームのコントローラーを床に置くと、Tシャツの上から凛音の胸を撫で上げた。  
「ふわっ、えっ? 兄ぃ兄ぃ、どうしたの? ねえ、んむっ……」  
 説明するのも面倒になって俺は凛音の唇を奪い、そのまま床へと押し倒した。舌を挿し入れて絡ませながらTシャツを捲り上げ、口を離して乳首を口に含んでやる。  
片手で平らな乳房を擦り、もう一方の手をスカートの中へ入れて内腿に這わせると、凛音は鼻を鳴らしながら少しだけ脚を開いてきた。  
「んはぁ、兄ぃ兄ぃ、ふうぁ、そんな急にぃ、はふぁ、兄ぃ兄ぃ」  
 熱に浮かされたように俺は凛音への愛撫に陶酔し、華奢な身体を裸に剥きながら自分も服を脱ぎ捨てると、両脚を脇に抱え込んで淫裂に口を付け、膣口の周囲を舌で舐め上げた。  
「はうあっ、恥ずかしいよ兄ぃ兄ぃっ、ふはうっ、まだお風呂入ってないからあっ」  
 確かに幼く甘ったるい体臭に混じって若干アンモニアの臭いがするが、それでも俺は舌で秘所を嬲り続け、頃合いを見て包皮の上から陰核を吸い上げた。  
「あふひあっ……お豆があっ……ふくはあっ……お豆が気持ちいいっ……」  
 細い腰を小さくひくつかせ、凛音は喜びの声を上げてくる。唇を離して確認すると、陰核は包皮から僅かに顔を出しており、俺はそれを舌先で弾いてやった。  
「んくふあっ……お豆すごい気持ちいいっ……はふひうっ……どんどん気持ちよくなっちゃうっ……あはひうっ……兄ぃ兄ぃ好きいっ……かはふあっ……兄ぃ兄ぃ大好きいっ……」  
 合間に漏れ出てきた愛液を舐め取っていると、凛音は小刻みに全身を揺らし始めた。ここまで前戯を与えてやれば大丈夫だろう。俺は姿勢を変えて凛音に覆い被さり、一物に手を添えて亀頭を膣口へと押し当てた。  
「凛音、入れるぞ?」  
「んふあっ……はい兄ぃ兄ぃ……あはうっ……してくださいぃ……」  
 恍惚感に溢れた笑みを見せて凛音は頷き、深く息を吐きながら俺の背中に手を回してきた。素直に甘えてくる素振りはとても愛らしい。  
その唇に俺は短くキスをし、背に触れる手のひらの温もりを感じながらゆっくりと腰を前に進めていった。  
「ひうっ……んくっ……はうあっ……んんっ……くふあっ……ああっ……」  
 陰茎が膣内を押し拡げていくのに合わせ、凛音は徐々に辛そうに顔を歪め始めた。充分に秘園は濡れているのだが、まだ挿入に関してはかなり苦痛があるらしい。  
それでも俺の身体に強くしがみ付き、懸命に微笑もうとしている。俺は一旦腰を止め、呻く凛音に囁いた。  
「無理すんなよ? 止めとくか?」  
 その言葉に凛音は嫌々をするように首を振った。  
「うくっ……大丈夫だから……んあっ……く……すぐ慣れるからちゃんとして……ひぅ……」  
「そうは言ってもよ、俺の身勝手でお前が苦しむのはちょっとな。また、今度にしようぜ?」  
「くうっ……私がしたいの……ひあっ……私が兄ぃ兄ぃとしたいの……かはっ……だからこのままして……ふうっ……兄ぃ兄ぃにしてもらえるなら痛いのなんか平気……んっ……」  
 凛音はそう言って腰を下げ、自分から陰茎を膣内に呑み込んでいく。俺は一瞬尻込みしそうになったが、そこまでの覚悟がある以上、性交を続けることにした。  
凛音に合わせて腰を前に突き出しながら、気を紛らせるべく乳首に触れ、優しく言葉を掛けてやる。  
「ありがとな、凛音。お前の中、すげえ気持ちいいぞ」  
「んくうっ……嬉しいっ……はうあっ……兄ぃ兄ぃ大好きいっ……」  
 瞳に涙を浮かべながら凛音は言い、俺はその唇にキスをした。  
 
 当初は腫れ物を扱うようにして交わり合っていたが、少しずつ凛音は身体を馴染ませ、膣内に精液を浴びると同時に快楽の頂点へと達した。  
苦痛の陰が殆ど残っていないことに俺は満足し、繋がったまま凛音を抱え上げてベッドの上へと移動すると、再び正常位で腰を動かしてやることにした。  
「ほら、凛音。さっき教えた台詞を言ってみろ」  
「はふあっ……きつきつおまんこをズボズボしてえっ……ふくあっ……おちんちんでほじくり回してえっ……あふはっ……好きなだけ拡げてくださいいっ……  
くはあっ……おちんちん気持ちいいっ……んふあっ……おまんこがどんどん気持ちよくなってくうっ……」  
 だらしなく口を開きながら凛音は息を荒げ、俺の唾液に塗れた乳首を尖らせ続けている。  
幼女を少しずつ淫欲に目覚めさせていくというのは堪らない心地で、俺は抽送を速めながら手を伸ばし、凛音の弱点である子宮と陰核とを共に責め始めた。  
「ふくひあっ……兄ぃ兄ぃそれすごい気持ちいいっ……はうくあっ……おちんちんと指どっちも気持ちいいっ……んくひいっ……おまんこからエッチなお汁がいっぱい出ちゃううっ……」  
「好きなだけマンコ汁出せ。その代わり、ちゃんとマンコで俺のチンポの形を覚えろよ?」  
「くはふうっ……はい兄ぃ兄ぃっ……ふくはあっ……もっと覚えるからズボズボしてえっ……あはひあっ……おまんこがおちんちんの形になってくうっ……んかふあっ……  
おまんこがどんどんおちんちん好きになるううっ……はくうあっ……とっても気持ちいいよおっ……」  
「可愛いぞ、凛音。これからは子供だからって遠慮せずに、たっぷりとチンポで犯してやる。その内に尻マンコもチンポの形にして、お前の身体を全部、俺のものにしてやるからな?」  
「はひうあっ……兄ぃ兄ぃ嬉しいっ……くひはあっ……なんでもするからなんでもしてえっ……ふうひあっ……お尻おまんこも好きに使ってえっ……あひくうっ……  
もっと兄ぃ兄ぃのものになりたぁいっ……んはひいっ……兄ぃ兄ぃ大好きおちんちんも大好きいっ……」  
 甘美な喘ぎ声を上げながら、凛音は全身を引きつらせ始めた。絶頂が近い証拠だ。俺は細い脚を抱え込んで屈曲位の体制となり、腰の反復に円運動を加えて膣奥を抉ってやった。  
小さな生殖器は未だに狭くきついが、それでも陰茎を根元近くまで取り込むことが可能になってきている。亀頭で子宮を押し上げて更に深くまで一物を突き入れてやると、凛音はプルプルと震えながら俺に強くしがみ付いてきた。  
「はひくふうっ……おまんこ汁止まんないよおっ……くはひうあっ……もうイっちゃうイっちゃううっ……あくふはあっ……兄ぃ兄ぃ早く中に出してえっ……んひくはあっ……  
兄ぃ兄ぃと一緒にイきたいいっ……ふはくひあっ……おちんちん汁でイきたいのおっ……」  
 愛らしい全裸少女にこんなことを言われたら、無理をしてでも望みを叶えてやりたくなる。微妙な収縮を繰り返す膣肉を楽しみながら、俺は射精を意識して腰を速めた。  
「少しだけ待ってろよ? すぐに凛音の子宮にチンポ汁引っかけてやるからな」  
「ひうはくあっ……頑張るから早く出してえっ……はあくふあっ……もうおまんこイっちゃうよおっ……ふくひうあっ……ダメもうイっちゃううっ……おまんこイくうううううっ!」  
 凛音は先に達して全身を小刻みに揺らし、俺の背中に爪を立てた。と言っても然程痛くもない。俺は陰核に触れ続けながら空いた手でその愛らしい身体を抱き、耳元で囁いてやった。  
「そのまま余韻を楽しんでろ。あとちょっとだから」  
「はひくへあっ……またイくうううううっ! ふくかへあっ……またイっちゃうううううっ! んくひあうっ……イくのが止まんないよおっ……あへはひあっ……  
お願い早くおちんちん汁出してえっ……ひきくはあっ……またイくイっちゃうううううっ! あひくへあああああっ!」  
「悪かった。ほれ、お待ちかねのチンポ汁だっ」  
 そう言って、俺は半ば半狂乱になっている凛音の膣奥へと白濁液をぶち撒けた。   
「はひゃくへあっ……おちんちん汁気持ちいいっ……かはひくふあっ……すごいのがくるうっ……んああっ……あひっ……くうっ……ひっ……きつきつおまんこイくイくうううううっ!」  
 
 性交の後片付けを終えてから、俺は凛音を連れて風呂へと入ることにした。  
洗い場の風呂椅子に腰掛けて手のひらに直接ボディ・シャンプーを付けると、俺は正面に立たせた凛音の首や胸、腹や脚などを撫で回してやった。  
「次は後ろな、背中向けてみろ」  
「はぁ、はい、はぁ、兄ぃ兄ぃ」  
 身体の前面を泡立たせた凛音は切なそうに息を漏らし、いそいそと小さな尻を向けてきた。肉付きの薄い臀部に色気はないが、僅かに丸みを帯びているところが何とも可愛らしい。  
俺は両手を尻たぶに押し付け、下から肉を持ち上げるようにして洗ってやった。  
「はぁ、兄ぃ兄ぃに洗ってもらえるの嬉しいぃ、はぁ、でも、ちょっとくすぐったいぃ」  
 繰り返し尻を撫でてやると、凛音は微かに身を捩らせた。見ると、秘所からは愛液が漏れ出てきている。こんな愛撫でも感じてしまう程、急速に肉体が開花しているらしい。  
ヤエから以前に、然程の回数をこなさなくても身体を馴染ませてくると聞いてはいたものの、四人の適応力には感嘆するばかりだ。とは言っても、現時点で雫のようになられるのは困る。  
面倒な手間が不要なのは正直言ってありがたいが、雫以外の三人はもう少し時間をかけて調教してやらないと、俺の体力が保たなくなる恐れがある。  
「ひあっ、兄ぃ兄ぃ、はうぁ、そこはぁ、んんっ」  
 凛音の声が高くなったのに気付いて我に返ると、無意識に尻の穴を撫でてしまっていたらしい。まだ凛音の菊門を愛撫してやったことはないが、あの火凛の妹だ。敏感であってもおかしくはない。  
俺は小指の先で尻たぶの泡をすくい取ると、肛門周囲の襞を一本一本擽ってやり始めた。  
「ここも綺麗にしとかないとな」  
「ふあっ、兄ぃ兄ぃっ、うあっ、恥ずかしいっ、はうっ、恥ずかしいよおっ」   
「さっき言ったろ? いつかは尻マンコにもチンポ突っ込むって。その練習だと思って我慢してろ。それとも、ここはずっと取っておくか? 凛音が嫌ならいいんだぞ?」  
 そう言って小指の先を尻穴にほんの少しだけ挿し入れ、腸壁をそっと撫でてやると、火凛は明確な喘ぎ声を漏らし始めた。腰を艶かしく左右に振り、徐々に足を開いていく。  
「んひゃっ、兄ぃ兄ぃがしたいならあっ、あふあっ、頑張って我慢するうっ、ふはあっ、でも変な気持ちになっちゃうっ、ひうあっ、お尻がムズムズしてきちゃうよおっ」  
「でも、尻マンコ触られんの気持ちいいだろ? ちゃんと言わないと止めちまうぞ?」  
「ひゃんっ、気持ちいいっ、くふうっ、お尻おまんこ気持ちいいっ、はあうっ、恥ずかしいけど気持ちいいのおっ、んひあっ、お尻おまんこがすごく気持ちいいのおっ」  
 この反応なら先々、尻穴性交も可能だろう。火凛も加えて姉妹同時プレイという手もある。いや、凛音にペニスバンドを付けさせて、一緒に火凛の二穴を犯すという方が楽しそうだ。  
 そこまで考えて不意に思いついた。この先、四人を相手に体力不足となるようならば、誰か一人を調教役にすればいい。一番加虐的なのは火凛だが、それでは安易過ぎて面白味がない。  
となると、矢張り凛音か。幼女が少女を嬲る様は一見の価値がありそうだ。  
「うくあっ、兄ぃ兄ぃお尻気持ちいいっ、くひあっ、お尻おまんこ気持ちいいっ」  
 凛音の尻穴に小指をゆっくりと呑み込ませていきながら、俺は今後のことを考えて薄く笑った。  
 
 風呂から出て皆と一緒に夕食を取り終えると、俺は一人で自室に戻って調教の予定表を作成することにした。パソコンの電源を入れて表計算ソフトを立ち上げ、取り敢えずワークシートに夏休みまでの日付を入れていく。  
 重要なのは現時点での各々の資質だ。マゾ資質のある雫は被虐奴隷の露出狂、臭い好きな火凛は加虐も可能な淫臭狂に育てていくとして、残り二人はどうするべきか。  
そよぎに関してはこのまま言葉による二面性を持たせてギャップを楽しむのもいいが、それだけでは方向性が定まらない。特化すべきはその献身の度合いか。  
まずは奉仕奴隷として育成し、その経過を見て最終目標を設定した方がいいだろう。残る凛音についても当面は被虐も加虐も可能なように色々と教え込み、当面はロリ奴隷として貧弱な肉体を充分に可愛がってやろう。  
 ある程度の目標が決まれば必要な物も限られてくる。シートに予定の行為を入力しながらネット通販でそれらの購入手続きを取り、何度か見直して変更を加えていくと、不意にノックの音がした。  
「開いてるから入っていいぞ」  
 そう声を掛けると、パジャマ姿の火凛が姿を見せた。足早に部屋に入って椅子に座った俺の背に抱き付き、そっと頬を擦り寄せてくる。  
「どした? チンポのおねだりか?」  
「むうっ、違うもん。さっき隣へ行ったらね、おばぁがナギに用があるんだって。明日の夕方家に来るように伝えてくれって、そう言われたから。何か予定があるんだったら別にいいらしいけど、どうする?」  
「別に予定はねえし、いいぞ。明日の夕方、隣へ行けばいいんだな?」  
 俺は笑って火凛に告げた。どんな用かは知らないが、ヤエには充分に世話になっている。断る理由は何もない。  
「よかった。なんか真剣な顔で頼まれたから。じゃあ、これから大丈夫って言いに行ってくるね?」  
「ちょっと待て」  
 真剣な顔で頼んだという点が頭に引っ掛かり、俺は火凛を引き留めた。もしかしたら龍神として俺に何かさせるつもりなのだろうか?  
「なに?」  
「お前、どんな用だか聞いてるか?」  
「ううん。私も気になったんで聞いてみたんだけど、話してくれなかったし。直接ナギに言いたいみたい」  
 つまり、秘密の用事ということらしい。  
「俺が返事を伝えに行くから、お前は自分の部屋に戻ってろ」  
 時刻を確認すると二十二時四十六分。家族でもない人間が訪問すべき時間帯ではないが、寵愛を授けることだけが役目だと聞いていただけに不信感を拭いきれず、俺はヤエの元に出向くことにした。  
 
 以前と同じように茶の間に通され、俺が座布団の上に正座すると、ヤエは徐に口を開いた。  
「もう三人には、いや、四人には寵愛を授けたのかい?」  
 突然言われて俺は息を噴きそうになったが、辛うじて堪えながら頷いた。  
「はあ、一応は四人全員に、その、授けさせてもらいました」  
「別に恥ずかしがらなくともよいだろうに。共に暮らしておれば当たり前のことじゃ」  
「そうかもしんないですけど。でもまだ、暮らし始めて二週間にもなってませんし。なんて言うか、急ぎ過ぎたかな、と……」  
 ヤエは俺を興味深そうに眺めて微かに笑った後、真意を探るような目で見つめてきた。  
「もしかしてお前さん、誰か一人を選ぶのが嫌なんじゃないかい?」  
 胸の内を見透かされ、俺は焦って目を逸らした。龍神として寵愛を授けるのは、いずれその内の一人を伴侶として選ぶ為だ。そんな気がないと告げたなら、今の同居生活は終わってしまうかもしれない。  
「図星かね? いいんじゃよ、それでも。長く続いてきた風習だろうと、変えたいのなら変えればよい。他の氏子たちならどうにでもなる」  
「どうにでもなるって、どうしてそんなこと言い切れるんですか?」  
 言葉に疑問を抱いた俺が問い掛けると、ヤエは再び微笑んだ。  
「この島の住民八百十二名、おっと、昨日、徳坊のところに稚児が生まれて八百十三名かの。その内、龍神を信仰している者五百八十六名。全員、私の一存でどうにでも出来るという意味じゃ。  
何しろ十五年前からお前さんを迎える為に、色々と図ってきたからの」  
 何でもないことのようにヤエは言ったが、俺は驚きを隠せなかった。ヤエが島の長老として祭事を仕切っているのは聞いていたが、それは単に年功序列の結果だとばかり思っていたからだ。  
裏に策士としての影働きがあり、信者たちの上に君臨しているなどとは想像も出来なかった。一見素朴な老婆に見えるだけに、印象には大きな違和感がある。  
「それって、島の五百名以上を束ねているってことですか? 龍神の信仰だけで?」  
「この島だけじゃなくての、本島には七千人を超す氏子たちもおる。本土にもおる。合わせて一万名前後、全員が私の言葉に従うじゃろう。無論、信仰だけで属させている訳ではない。金銭や人脈も大いに活用しておるがの」  
「……どうやってそんな大人数を? 失礼ですけど、おばぁって何者なんです?」  
その内容に息を呑んだ俺が尋ねると、ヤエは真顔になって語り始めた。  
 
 話によると、ヤエもまた以前はこの島の巫女であり、途中で役目を捨てて結婚したとのことだった。その結婚相手というのが本土でも有数の資産家だったらしい。  
しかし、夫は病で早世してしまい、その親族とも遺産相続で揉めたが故に、本土から娘を連れて島に戻ってきたとのことだ。この娘というのは火凛と凛音の母親だろう。  
はっきりとは言わなかったが、夫が若くして他界したのは自分が巫女を辞めた罰なのだ、とでも考えているような口振りだった。  
それならば龍神を恨みそうなものだが、この島で畏敬の念を抱き続けて育ったヤエには、例え心中であっても逆らうことが出来なかったのかもしれない。恐らくは俺の面倒を見てくれているのも贖罪の一環なのだろう。  
 島に帰ってきてからのヤエは相続した財産を土地購入に回し、奥津島の七割、本津島の三割を現在所有しているとのことだ。  
今は神事の仕切り役としてしか働いてはいないものの、株や国債にも手を出しており、損失分を差し引いても年に数十億は手元に入ってくるらしい。  
 正直、俺は話を聞いていて唖然とするしかなかった。住んでいる世界が違い過ぎる。  
「じゃからの、法律だろうが世間だろうが、この島でなら大概のことはどうにでもなる。お前さんは好きにせい。四人を大事にしてくれるならば、他の女子に手を出そうとも、同居に加えようとも構わん。  
仮に誰かを妊娠させても心配はいらんよ。その相手が凛音じゃろうとな。堕胎は止めて欲しいが、生ませて育てるつもりなら周囲の人間には何も言わせん。  
有り体に言えば妊娠は四人の内の誰か、更に言うなら火凛か凛音に子を生ませて欲しいがの。早く曾孫に会ってみたいもんじゃ」  
「ちょっ、ちょっと待ってください。話が突飛過ぎて、その、何て答えたらいいのか……」  
 ありがたい話だが、都合が良過ぎて逆に怖い。どこかに落とし穴があるような気がする。  
「判らんか? この島にいる限り何をしようとも構わんということじゃよ。島の過疎化が進む度に信用できる者たちを招き入れ、同時に信用出来ない者の排除もやっておるでな。  
あと数年もすれば、島に住む者は全て信心深い氏子たちばかりになるじゃろう。そのくらいのことは簡単じゃ。さすればお前さんは龍神としてこの島を統べる存在になる。お前さんも男なら島を支配してみたいとは思わんか?」  
 面食らいながらも俺はぎこちなく頷いた。ヤエの言う通りなら、確かに好き勝手に出来る環境が手に入る。  
「うむ、そうじゃろうて。但し、子を作る程度のことはいいが、島の統治となるとまだまだ時間が必要じゃ。ついては、お前さんの役目を少しばかり増やしても構わんかの?」  
 ヤエの言葉に俺は背筋を伸ばした。どうやらここからが本題らしい。  
「……増やす役目って何ですか?」  
 俺がそう尋ねると、ヤエは楽しそうに笑った。  
 

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