その日の午後、俺は船での長旅を終えて奥津島へと辿り着いた。  
念願叶っての陸地への上陸に気持ちは逸っていたが、まずは目当ての場所の確認だ。  
周囲を見回してみると、船着場の前に観光掲示板が設置されていることに気が付いた。  
近付いて一通り眺め、意気消沈して思わず呟く。  
「……使えねぇ」  
 板の上には十数ヶ所に及ぶ島の観光名所が表示されていたが、その中に目的地は見当たらない。  
あまり有名な場所ではないのか、事前にインターネットなどで調べた際にも詳細な情報は得られなかった。  
とは言え、現地までの大雑把な道程だけは調べてある。たいした距離ではなさそうで、道すがら島の人に尋ねれば徒歩でも辿り着ける筈だ。  
島の日差しは予想していた以上に暑く、別に急いで行く必要もないが、その程度の苦労で済むなら構うことはない。  
何しろ以前から一番に訪れたいと思っていた場所だ。  
 取り敢えず行ってみるかと踵を返した瞬間、不意に右の脛に何かが当たった。  
見ると、つばの広い麦藁帽子が風に押されるようにして脚に触れている。  
屈み込んで帽子を拾い上げ、辺りに目を配ると、白いワンピースを着た少女が駆け寄ってくるのが見えた。  
「あ、あのっ、すみませんっ。急に風が強くなってっ」  
 少女はそう言って俺の正面で立ち止まり、豊かな胸に手を当てて呼吸を整え始めた。  
やや青味掛かったストレートの黒髪を腰まで伸ばし、顔はあどけなく愛らしい。  
一瞬、旅疲れと暑さによる幻じゃないのか? と自分の視覚と聴覚を疑ったほどの美少女だった。  
つまりは彼女がこの帽子の所有者ということらしい。  
「……良かったよ、すぐに持ち主が見つかって」  
 俺は相好を崩しながら帽子を差し出した。  
少女は深々とお辞儀をし、次いで帽子を両手で丁寧に受け取ってもう一度頭を下げ、顔を上げてにっこりと笑った。  
「この島に観光にいらした方ですよね? どちらからいらしたんですか?」  
「ん? ああ、東京から」  
「えぇ? すごい、都会の人なんですね。それで、どちらに行かれる予定なんですか?」  
「んと、あっ、そうだ」  
 少女の問い掛けにふと思い付き、俺はジーンズの後ろポケットから島のガイドマップを取り出して開くと、略地図の上の赤丸を指差して問い返した。  
「この赤く囲った場所、ここにある岬に行きたいんだけど、細かい道とか判るかな? あまり詳しいことが判んなくてさ。このマップにも、ここの掲示板にも出てないし」   
「え? ここって、もしかして『海の御先』ですか? 何もない所ですよ?」  
 俺の示した場所を見て少女は目を丸くした。島の人たちが件の岬のことを『海の御先』と呼んでいるということは、オヤジからも聞いていた。  
「うん、その名前で合ってると思う。別に何もなくてもいいんだ。ずっと前から行ってみたかった場所だから」  
「もし宜しかったら、私がご案内しましょうか? 道だけでなく現地まで。柵とかなくて危ない場所でもありますし」  
「迷惑じゃないの?」  
 そう尋ねながらも、俺は思いがけない幸運に胸を高鳴らせた。  
帽子を拾ってやったことで気を使ってくれているのだろうが、今の俺にとっては願ってもない申し出だ。  
こんな可憐な少女と二人で歩けるのなら、陽光なんて何でもない。  
「はい、暇を持て余していたので大丈夫です。あ、私、鳴海雫って言います。十六歳です」  
「俺は後藤凪、同い年だね。よろしく」  
「はいっ、よろしくお願いしますっ」  
 そう言って雫は優し気に微笑んだ。  
 
 
『海の御先』と呼ばれる岬には思い入れがあった。何故なら、俺を産んですぐに亡くなった母さんの思い出の場所とのことだったからだ。  
幼い頃から自宅の居間には岬を背に笑う母さんの写真が飾られていて、それを見て育った俺にとっては憧れの場所だった。  
青く澄み切った空と海、そして大地には鮮やかな色彩の花々。  
オヤジから母さんの思い出話と共に島と岬のことを聞く度に、いつの日か訪れてみたいという思いは強くなり続けた。  
「凪君、どうですか? 気に入りました?」  
 そう尋ねてきた雫に即答できないほど、俺は陶然としていた。  
『海の御先』はその場所も、そこから眺望できる景色も望外に素晴らしい所だった。神秘的と言っても過言ではない。  
肌に触れる風、寄せる波のざわめきと海鳥たちの鳴き声、潮と草花の香り、そして岬の広大さ。  
写真では知ることの出来なかった音や匂いに包まれながら、本当に来て良かったと俺は心から思った。  
「……すげぇ」  
 声を振り絞るようにしてそれだけを告げると、そよぐ風に麦藁帽子から覗く後ろ髪をなびかせながら、雫は満足そうに微笑んだ。  
「私も、この場所が島で一番好きなんです」  
 まるで自分が褒められたかのように嬉しそうに雫は笑い、俺は何とも安らかな気持ちになった。  
岬までの道中でも、雫は少しだけはしゃいだ素振りでありながら、初対面の俺に対して誠実に対応してくれていた。  
出会ってくれたことに感謝しながら俺は穏やかに笑い返し、次いで島での生活について質問してみることにした。  
この先のことを考えれば、色々と知りたいことは多い。  
そう考えて言葉をかけようとした刹那、一際強い風が吹き、目の前のワンピースの裾が大きく捲くれ上がった。  
「きゃっ!」  
 雫は必死に両手で押さえたが、俺の目には二つの白さがはっきりと焼きついた。  
内腿の艶めかしい白さと、レースの付いたショーツの白さだ。  
「み、見ましたっ?」  
 焦った様子で雫が質問してきた。既に風は治まっているのにも関わらず、ワンピースの上から内腿を押さえたままだ。  
頬は赤く、少しだけ拗ねているようにも見える。  
「白」  
「忘れてくださいいっ! 見なかったことにしてくださいいっ!」  
 駄々を捏ねるように叫ぶ雫の様子が可愛らしくて、俺はもう一度言葉をかけた。  
「でも、似合ってた」  
「もう言わないでくださいいっ! 嫌ああっ!」  
 雫が再び声を上げるのと同時に先刻以上の強い風が吹き、被っていた麦藁帽子が頭を離れて宙に舞い上がった。  
雫の伸ばした手をすり抜け、俺の方へと漂ってくる。咄嗟に駆け寄って帽子を掴んだ俺に、雫がそれまで以上に大きな声で叫んだ。  
「凪君っ、ダメえええっ!」  
 その言葉に気がついて視線を移すと、俺の足元には地面がなく、身体が遥か下の海面に向けて落下し始めていた。  
 
 気が付いた時には目の前に雫の顔があった。目を閉じて俺の唇に口を付けている。  
その理由を考える間もなく、俺は咳き込んで海水を吐いた。  
「凪君? 大丈夫っ?」  
 息苦しさと口の中の潮辛さに耐えながら上半身を起こして頷き、俺は咽続けながらも懸命に呼吸を整えた。  
途中までの記憶はある。海面に叩きつけられた痛みで気を失う前に、間近に雫の姿を見たのは幻覚ではなかったのだろう。  
砂浜の波打ち際、雫は衣服を濡らしていて、恐らくは俺を助ける為に岬から海へと飛び込んでくれたのに違いなかった。  
「よかったぁ! 無事でよかったぁ!」  
 未だ呼吸を乱している俺に雫は抱きつき、顔に頬擦りを始めた。余程心配してくれていたらしい。  
俺はそんな雫の背中に力なく手を回し、宥めるようにそっと擦った。  
「……大丈夫、だよ。助けて、くれたんだろ? ありがとう」  
 そう言うと雫は瞳を潤ませながら俺を見上げ、脱力したように真横へと倒れ込んだ  
「ちょっ、大丈夫か?」  
「はい。ホッとしたら、なんだか身体の力が抜けちゃっただけです」  
 雫はそう言って微笑んだが、俺としては目のやり場に困る。  
砂浜に倒れた雫の身体に波が被り、白いワンピースが更に濡れ、ブラもショーツもはっきりと判るほどに透けていたからだ。  
助けられた上にそんな姿を楽しむ訳にもいかず、俺は視線を移動し、すぐ背後に先刻まで立っていた岬があることに気付いた  
。見上げてみると相当な高さだ。下手をすれば二人とも死んでいたかもしれない。  
「……ごめん、俺のせいで」  
 俺は雫に向き直り、視線を外しながら謝った。  
「こんな時は、謝らなくてもいいんですよ」  
 雫は穏やかな口調でそう言ってくれたが、俺がもっと注意してさえいれば、こんな目に合わせることもなかった。  
そう考えるだけで、自らの馬鹿さ加減にやり切れない気持ちになってくる。自分だけならまだしも、他人を巻き込んでしまったことに深い後悔の念があった。  
「でも、俺の不注意で落ちてさ。最悪の場合、二人とも死んじゃってたかもしんねえし……」  
「でも、生きてるじゃないですか。二人とも生きてる。だから平気です。きっと、龍神様がまだ生きてなさいって、そう言ってくださってるんだと思います」  
「龍神様?」  
 俺が問い掛けると雫はゆっくりと身体を起こし、少しだけ照れたような表情で淀みなく語り始めた。  
「この島の神話です。龍神様というのは、この島に棲んでいる神様なんです。  
大昔、さっきの『海の御先』に風と共に舞い降りて来て、この島の娘と恋に落ちて、それからずっと島を守ってくれているって、そんなお話が島には昔から伝わってるんです。  
だからきっと、その龍神様が凪君と私を守ってくれたんだと、そう思います」  
 東京にいた頃にこんな話をされたなら、俺は曖昧な笑みを浮かべて聞き流していたと思う。  
神話や伝承を否定はしないが、特に関わり合いたいと思うほどロマンチストではないからだ。  
だが、雫の言葉と態度には安易に侮ることのできない程の重さがあった。神秘的とも思える岬を見ていたこともあって、俺はその神話を信じてみたくなった。  
「そっか。じゃあ、こうして雫さんと出会えたのも、竜神様のおかげかな?」  
 雫は首を小さく縦に振り、次いで恥ずかしそうに身体を竦めながら、躊躇いがちに言ってきた。  
「あの、私のことは、その、呼び捨てで構いません。その方が、えっと、う、嬉しいです」  
 その赤く染めた頬も素振りも可愛らしくて、俺は笑いながら要求に応えることにした。  
「判ったよ、雫」  
「……えへへ、ほんとにそう呼ばれちゃいました」  
 雫は手のひらを自らの頬に添え、嬉しそうに笑った。  
 
 
 その後、岬に戻って夕暮れ間近まで雫と話し、町に移動する途中で別れると、俺は新たな住まいへと足を向けた。  
何となく雫には話しそびれてしまっていたが、この島に来た目的は観光ではなく、東京からの転居だ。  
二人家族の相方であるオヤジは、都内での仕事が一段落してから島に来ることになっている。  
何でも、隣の本津島という大きな島に現在勤めている会社の出張所があり、そこへの転勤を以前から熱望していて、やっと移動の許可が出たらしい。  
わざわざ別の島に住むこともないと思うのだが、母さんの生まれ育った島なら話は別だ。  
俺以上にオヤジは島に住むことを楽しみにしているようで、遅くとも明後日の朝までには到着するとのことだった。  
 そのオヤジの手書きの地図を頼りに借り受けたという家を見つけると、俺は玄関の鍵を開けて中へと入ってみた。  
外観からも判ってはいたが、かなり広い家のようだ。  
確認してみると、一階は十二畳ほどの和室が一部屋、同じ大きさの洋間が二部屋、そしてリビングの隣にキッチン、一度に数人は入れそうなほどに広い風呂場、脱衣所とトイレといったところらしい。  
二階は八畳ほどの和室が二部屋、同じ大きさの洋間が三部屋、それにトイレと簡易キッチンまである。  
三階は外階段から上れるテラスになっていて、アウトドア用のテーブルや椅子が用意されていた。  
先日、各種の手続きと引越し荷物の受け取りをする為に、オヤジが一人で島に来た時に設置したのだろう。  
荷物の大半はダンボールに入ったまま一階の洋間に置きっ放しになってはいたが、一階のキッチンには新規購入したらしい冷蔵庫やテーブルなども置かれており、今晩から暮らすことは充分に可能そうだ。  
 二人で住むには無駄に広過ぎるが、それでも俺はこの家が気に入った。  
オヤジの話では、この借家は築半年程、新築時から誰も住んではおらず、土地も建物も隣宅の南雲ヤエというお婆さんの所有物とのことだった。  
何故にこんなに広い別宅を建てたのかは不明だが、格安の家賃とのことで、俺たち親子にとっては有り難い。  
 早速挨拶に出向こうと、俺は手荷物のバッグの中からオヤジに渡されていた手土産品を取り出した。  
食品用の小型断熱ケースの中にある細長く重い包みの中身は、家主のお婆さんの好きな長野県銘菓の塩羊羹とのことだ。  
それをケースから取り出して片手に持ち、もう一方の手でジーンズの前ポケットから借家の鍵を取り出すと、バッグに入れておいた携帯から着信音が鳴り響いた。  
慌てて鍵をポケットに戻して携帯を取り出し、液晶画面を確認すると、電話をかけてきたのはオヤジだった。  
特に電話をしてくる理由に心当たりはなく、多少嫌な予感がしたものの、俺は通話ボタンを押した。  
「――もしもし、俺だけど。島には着いたよ。今、借家を見て回ってたとこ」  
『すまん、凪。急に出張が決まってな、島に行けなくなった』  
 どうも予感的中のようだ。経験上、オヤジが予想外の行動をしてきた時は大抵碌なことがない。  
とは言え、そんな感慨に耽っている訳にもいかず、俺はきつい声で問い掛けた。  
「出張? どこだよ? 引っ越しは中止なのか?」  
『いや、いつ頃になったらそっちに行けるか全く判らんが、取り敢えずはお前、そこに住んでろ。出張先はニューヨークでな、単身赴任で行く』  
「ちょっと待てよっ、オヤジがこの島に住むって言い出したんだろうがっ、俺一人でどうすんだよっ」  
『身の回りの世話については、隣の南雲さんとこにさっき電話入れといたから。一人暮らしもいいもんだぞ、俺もこれから満喫する。仕送りは大目に送るから』  
 淡々とした口調でオヤジは言った。元からこういう人間と判ってはいても腹が立つ。  
「オヤジが栄転で、俺が左遷みてーじゃねえかよっ」  
『お前、上手いこと言うな。あ、そうそう、住民票や学校なんかの手続きは、先日全部済ませてあるから。そんじゃ、忙しいから切るぞ。達者でな』  
「ちょっ、待てっ、切るなーっ!」  
 俺の大声と間を置かずして、一方的に電話は切られた。  
 
 折り返しオヤジに電話を掛けて散々文句を言い、仕送りの割り増し額を確認した後、俺は当初の予定通り家主の元へ挨拶に伺うことにした。  
玄関に鍵を掛け、手土産を持って隣宅の玄関のチャイムを押すと、現れたのは人の良さそうなお婆さんと、快活そうなショートカットの少女だった。  
隣に越してきた者だと告げると、二人は俺を家の中に招き入れてくれた。  
 茶の間に通され、木製のローテーブルを挟んで向かい合う形となり、俺は改めて丁寧に頭を下げた。  
「初めまして。隣に越してきた後藤凪です。あの、これ、つまらないものですが……」  
 そう言って俺が差し出した包みを受け取りながら、お婆さんが口を開いた。  
「私は南雲ヤエ、おばぁ、と気軽に呼んでおくれ。話はお父さんから聞いてるよ。何かあったら、何でもこの火凛に言いなさい」  
 ヤエがそう言うと、隣の少女が頭を下げた。  
「な、南雲火凛です。よ、よろしくお願いします」  
 形式ばった挨拶は苦手なのか、火凛は少しばかり緊張し、戸惑っている様子に見えた。  
何か話しかけてやった方がいいのかと俺が迷っていると、ヤエが独り言のようにポツリと呟いた。  
「本当に男の子で良かった。やっと、この日が来たねぇ……」  
「え? 俺のことですか? どういう意味です?」  
 俺がそう尋ねると、ヤエは驚くべき事柄を語り始めた。  
 話によれば、俺は島で信仰されている神、雫の語ってくれた龍神の生まれ変わりであり、龍神に仕える『御先の巫女』と呼ばれる三人の巫女たちに寵愛を授け、いずれその内の一人を伴侶として選ばなければならないと言うのだ。  
俺の母さんも以前は島の巫女の一人だったが、任期中に転生した龍神は現れず、故に任期途中で一般人へと戻ってオヤジと結婚したとのこと。  
母さんの生まれ育った場所が奥津島だということはオヤジに聞いていたが、巫女の話は初耳だった。  
元巫女はほとんど女児しか産まないが、稀に先代の龍神が亡くなったのと年月を経て同日付に男児が産まれ、その男は龍神の生まれ変わりとして信仰の対象になるのだと言う。  
聞いてみると、先代の龍神が数百年以上前に亡くなった過去の日付を現在の暦に置き換えたと言う日は、確かに俺の誕生日と一緒だった。  
 更に隣の借家は、生まれた直後から俺が龍神であることを確信した上で、親父の転勤時期を見込み、家族共々住まわせることを目的として建てた家だと言う。  
つまり、俺にこの島に永住して欲しいが故に、わざわざ家まで用意したと言うのだ。信仰の対象として死ぬまで島で暮らすなど予想もしなかったことで、容易く了承などできる筈もない。  
 あまりにも突拍子のない話で受け入れられない、と俺は龍神扱いを固辞したのだが、島の長老的な立場であるというヤエは頑として譲らず、件の三人の巫女たちを呼び寄せて紹介するとまで言い出した。  
 
 隣宅を訪れてから約二時間後、俺の目の前には巫女装束姿の四人の少女たちが並んでいた。  
巫女は三人とのことだったが、火凛の妹である小学生の凛音という少女も様々な島の神事の手伝いをしており、故に同席させたと言う。  
少女たちが揃って俺に平伏したのを見計らって、ヤエは巫女たちの説明を始めた。  
 驚いたことに一人目は雫で、御先の巫女の最高位にあたる『恵みをもたらす海の巫女』であると言う。  
幼少時に出家し、現在は巫女用の家で一人暮らしをしているとのことだ。  
その態度は恭順を示すかのように丁寧で礼儀正しいものの、表情は硬く、先刻二人でいた時の明るさや無邪気さは微塵も感じられなかった。  
巫女としての責任感がそうさせているのは明らかだが、無理をして感情を押し殺しているようにも思えた。  
 二人目は御剣そよぎという名の、雫以上に青味掛かった髪をポーニーテールに纏めた少女だった。  
御先の巫女の第二位にあたる『守りを司る風の巫女』で、雫と同様に巫女用の別宅で一人暮らしをしているとのことだ。  
本人は意識していないのだろうが、顔に掛けた眼鏡の奥の眼差しは少しばかりきつく、態度にも戸惑いが感じられる。生真面目さと不器用さ、そして気の強そうな印象を受けた。  
 三人目は火凜、御先の巫女の第三位にあたる『繁栄をもたらす火の巫女』とのことだ。  
赤味掛かった髪をショートヘアにしており、些細なことでも表情がよく動く。  
そよぎ以上に態度がぎこちないのは、先の挨拶の時と同じく、堅苦しい礼儀作法が不得手な為だろう。  
容姿や眼差しから察するに、本来は活動的で気さくな性格であるように思えた。  
 念の為にヤエに確認してみたところ、単に巫女たちに寵愛を授ければいいだけの話で、他に龍神として俺が何かしらの役目を負うことはないとのことだった。  
寵愛とは即ち性交、もしくは性行為であるという。  
四人の少女たちも頬を染めながらヤエの言葉に頷き、今後、寵愛を賜るべく俺の言葉に絶対服従し、どんな奉仕も厭わないと言ってきた。  
三人共に十六歳の高校二年生で、タイプは違うが美少女揃いだ。言われて三人の顔や身体つきを見ている内に、こんな少女たちに傅かれて暮らすのも悪くないような気がしてきた。  
状況に流されているのは判っているが、それほどに魅力的な提案ではある。  
 その後、俺と同居する予定だったオヤジがニューヨークへ長期出張となった旨をヤエが話すと、三人揃って今晩からでも俺の家に住み、引越し荷物の片付けも手伝うと言い出した。  
流石にそれは拙い。荷物の中には自慰用の写真雑誌やDVDなども入っている。  
俺は料理も掃除もそれなりに得意なので必要ない、と言って断ろうとしたのだが、生活全般の面倒を見るのも巫女としての役目と三人から迫られ、明後日からとの条件で同居を受け入れることにした。  
 そのやり取りをヤエは微笑んで見守った後、更にとんでもないことを言い出した。  
まだ十一歳の凜音も補佐として同居させ、望むなら寵愛を与えても構わないと言うのだ。  
凜音も眼鏡越しに瞳を潤ませて頬を染め、嬉しそうに頷いている。  
腰まで達した長い黒髪の上からカチューシャ代わりに白いリボンを付け、幼い顔は端整で愛くるしいほどだ。美幼女と言っていい。  
こんな少女に何かしらの性的行為をするのはどう考えても犯罪だが、保護者であるヤエと当人が寵愛を望んでいるのならば警察に訴えたりはしないだろう。  
確かにこの時点から色々と教え込むのも楽しそうではある。理想的な女性へと育て上げられるかもしれない。  
 とんでもないことになったと思う反面、俺は正常な男の反応として、この成り行きを喜んで受け入れることに決めた。  
身体は細身だが年齢以上に胸と尻は豊かに見える雫、身体つきは雫以上に豊満で腰も細くくびれていそうなそよぎ、胸も尻も雫より薄そうだが年相応の身体つきに思える火凛、そしてどう見ても幼女体型の凛音。  
こんな四人の美少女を好き勝手に出来るのならば、名目上くらいは信仰神の生まれ変わりになってやってもいい。  
ヤエの言葉を信じるならば、役目は少女たちに寵愛を授けるだけだ。もし先々に俺の不利益になるようなことがあれば、その時点で対処を考えればいい。  
 それでも一時腕を組んで考えてから、俺は重い口調でゆっくりと言った。  
「……判りました。ですが、はっきり言いいますと、出来るかどうかは判りません。それでも構わないということでしたら、新たな龍神としての役目、務めさせて頂きます」  
 俺が決意を告げると、その場の皆、長老のヤエまでもが口元を綻ばせ、後に四人の少女と共に真剣な顔で平伏をしてきた。  
 こうして龍神としての俺の生活が始まることとなった。  
 
 
 その後、皆と一緒に茶の間で夕食を御馳走になり、雫とそよぎが自宅へと帰ると、ヤエは火凛と凛音に席を外して部屋に行っているように言い、改めて俺に頭を下げた。  
釣られて俺も頭を下げると、ヤエは顔を上げて注意をしてきた。  
「龍神たるもの、頭を下げなくともよい。常に堂々として頂きたい。特に巫女たち、あの子たちの前では、不遜なくらいで丁度いい」  
「……はあ」  
 言われて俺は頭を掻いた。傲慢に振舞っても構わないのなら俺としても楽だが、何しろ相手は初対面だ。  
多少は言葉を交わしたとは言え、どの程度まで許されるのか加減が判らない。  
「驚いたとは思うがの。じゃが、何も心配はいらんよ。寵愛に関しても、あの子ら四人は既に受け入れる準備が出来ておる」  
「は?」  
 俺は思わず奇声を上げた。巫女と言うだけあって、全員が処女だろうと思っていたからだ。それはつまり、凛音も含めて経験があるということなのだろうか。  
巫女になるに当たって誰かに処女を奪われたり、張型を使う儀式などがあるのだとしたら、勿体無さ過ぎて涙が出てきそうだ。  
「いらぬ勘違いをしているようじゃが、巫女となった以上、恋愛事も自ら身体を慰めることも禁止させておる。四人とも間違いなく未通女じゃよ。断言してもいい。身体でなく、気持ちの話じゃ」  
 俺は黙って首を捻った。四人揃って処女ならば当然嬉しいが、寵愛を受け入れる気持ちと言われても、今日初めて会った俺にそれほどの好意を抱いているとは思えない。  
「仰っている意味が、よく判りません」  
 俺が正直にそう言うと、ヤエは楽しそうに笑った。反応を楽しんでいるのは明らかだが、気分を害するような嫌味な笑い方ではない。  
「まあ、そうじゃろうな。あの四人は幼い頃に巫女となった時から、転生した龍神、つまりお前さんのことを、ずっと待っておったんじゃよ。  
会ったこともなく、今日まで名も知らせてもらえなかったお前さんから、いずれ寵愛を授けられることを心待ちにしておった」  
「……言い方は悪いですけど、それって幼児期から洗脳を受けていたって、そういうことですよね? 逆に、可哀想な気がします」  
「それは勘違いというものじゃ。寵愛を受けるのが嫌であるとか、好いた相手がいるとかであれば、巫女の任期中であっても辞めればいいんじゃからな。強制は一切しとらんよ。  
それに、寵愛とは人として当たり前のことじゃ。ありのままに生きようとすれば、それを与え、得ようとするのは自然なことじゃよ。男も、女もな」  
 何となく言い含められている気がしないでもないが、性行為を求めるのは確かに人として当然の事でもある。俺は黙って頷いた。  
「じゃからな、あの娘たちは未通女とは言え、然程の回数をこなさなくても、すぐに身体を馴染ませてくるじゃろう。心はもう、お前さんの方を向いておるんじゃからの。  
心というのは不思議なもんでの、例えどんなに痛かろうとも辛かろうとも、それに耐えることが愛情の証と思えるならば、恐らくは凛音でさえもそれに耐え、耐えることによって更に強い想いを抱くじゃろう。  
だからこそ、優しく大事に扱ってやって欲しい。お前さん、好きな相手は虐めたくなる性質かい?」  
 ヤエはそう問い掛けながら、じっと俺の目を見た。それはつまり、俺に加虐的な嗜好があるのかと問い掛けているのだろう。この状況で嘘を吐いても仕方がない。  
「そうですね。虐められるよりは、虐めるのを喜ぶ方だと思います」  
「ほっほっ、正直なことじゃな。娘たちが望むのならそれもいいじゃろう。じゃが、気持ちだけは優しく、大事にな。それは忘れんでくれんかね?」  
「努力はするつもりですけど。はっきり言えば、その時になってみないと判りません」  
 俺の言葉を聞いて、ヤエは心底愉快だとでも言うように大口を開けて笑った。  
 
 ヤエとの対話を終え、借家に帰ろうと玄関で靴を履いていると、不意に火凛が姿を見せた。どこへ行くのかと問われ、借り受けた家に戻ると言うと、必要なら添い寝もするので今晩は泊まって行って欲しいと言い出した。  
確かにヤエの言う通り、今日会ったばかりでも、既に心は俺を受け入れているのかもしれない。だが、だからといって添い寝などしてもらったならば、結果的に身体を開かせることになりかねない。  
俺は家の片づけがあるからと言って火凛の申し出を断り、そのまま自宅に帰ることにした。  
が、それなら自分が泊まりに行くと火凛は言い、あまりの積極性に面食らった俺の腕を掴むと、引き立てるようにして借家へと連れて行った。  
 玄関の鍵を開けて家の中に入ると、火凛は素早く電灯のスイッチを押してリビングの室内灯を点けた。  
聞くと、この家が建てられてから定期的に掃除に来ていたので、凡そのことは判っており、今日は食材も補充しておいたと言う。  
確かに築半年を経過している割に家の中は綺麗で、キッチンに置かれた外国製の大型冷蔵庫の中には、言葉通りに様々な食材がぎっしりと入っていた。  
先刻は気付かなかったが、他に見覚えのない調味料なども揃えられていて、俺はその甲斐甲斐しさに申し訳ない気持ちになり、ヤエの言葉も忘れて火凛に頭を下げた。  
「お風呂の準備をしてきますから、ナギ様は休んでいてください」  
 火凛は俺の態度に苦笑いすると、そう言って風呂場へと向かった。  
俺はその間に荷物置き場となっている洋間へと行き、見られたら困る物をダンポールごと押入れの中へと隠した。  
次いで電灯のスイッチの場所を確認しつつ二階へと上がり、改めて各部屋を眺め、自室を選ぶことにした。  
 明日には机やベッドなど引越し荷物の第二陣が届く予定で、それで荷物の運び入れは完了となる。自分の荷物はいいとしても、既に到着しているオヤジの荷物は東京へ送り返さねばならない。  
加えて同居する四人の部屋も割り当て、その荷物の運び入れもある。思った以上に忙しくなりそうで、俺は溜息を吐きつつ、取り敢えず自分の部屋を決めた。  
元々は俺とオヤジが住む筈だった家だ。自室くらいは先に決めてしまっても構わないだろう。  
 そう考えていると、階下から火凛の呼ぶ声が聞こえた。試しにドアを閉めてみると全く聞こえなくなる。各部屋共に防音対策もなされているようで、これならばいずれ寵愛を授ける際にも声を気にすることはないだろう。  
だが、隣の部屋同士だと勝手が違う可能性もある。一度機会を見て、各部屋や場所の音漏れの状態を確認しておいた方がいいかもしれない。  
「ちょっとナギ様、聞いてんの?」  
 不意に部屋のドアが勢いよく開けられ、不貞腐れた表情で火凛が部屋に入ってきた。その言葉遣いに俺が驚いていると、火凛はすぐに慌てた素振りで自分の口を押さえた。  
「あっ、すっ、すみません、ナギ様。つい、うっかり……」  
 そう謝りながら火凛は肩を竦ませ、上目遣いで俺の様子を窺ってきた。その極端な変わり様に、思わず俺は笑った。  
「別にいいよ、普段の言葉遣いで。その方が一緒にいて楽だろ?」  
「いえ、それはダメです。ちゃんと立場をわきまえないと」  
「自然に接してくれる方が嬉しいんだけどな」  
 俺がそう言うと、火凛は目を丸くした。  
「ほんと? いいの?」  
 途端に遠慮のない口調になったところをみると、予想通り今までは無理をしていたらしい。だが、この方が火凛には似合っている気がする。  
「もちろん。その方が火凛さんに親しみが湧くし」  
「あの、それじゃ、お言葉に甘えて。それと、私のことは呼び捨てにして欲しいな」   
 雫にも同じことを言われたなと思い、俺は再び笑った。この分だと、そよぎにも言われるかもしれない。  
「で、どうしたんだよ? 火凛?」  
 呼び捨てにして俺が問い掛けると、火凛は頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。  
「お風呂の準備できたよ。一緒に入る? 身体洗ってあげよっか?」  
 
 性欲は溜まっていたが、俺は火凛の言葉を遠慮して一人で風呂に入ることにした。共に裸で風呂などに入ったら、その場で事に及んでしまうかもしれないからだ。  
流石に初体験が風呂場というのは可哀想な気がする。また、相手のことをよく知りもしないで交わるのも、何となく失礼な感じがした。  
明後日からは同居するのだし、急がなくても時間はたっぷりとある。そう思ってシャワーを浴びていると、入り口の磨りガラスの向こうから火凛の声がした。  
「ねえ、ナギ様。裸じゃないなら入ってもいい?」  
「駄目に決まってんだろ。火凛が裸じゃなくても、俺は裸なんだぞ」   
「私、見ても笑わないよ?」  
 物凄く失礼な言い方をされた気がして、俺は思わず息を噴いた。こんなことを言われて我慢をしていたら、後々何を言われるか判らない。  
ここは勃起した陰茎を間近に見せて、多少は怯えさせてやった方がいいかもしれない。手早く扱き始めると欲求不満であったが故に陰茎は僅かな時間で完全に勃起し、俺は薄く笑いながらガラスの向こうへと声をかけた。  
「裸じゃねえなら、いいぞ。入ってきても」  
 俺がそう言うと風呂場のドアが開き、身体に大きなバスタオルを巻いた火凛が照れ笑いしながら入ってきた。俺の目を見て恥ずかしそうに俯き、勃起状態の陰茎に目を留めると、たじろいだ様に後退さっていく。  
「ご、ごめん。やっぱ、無理かも。なんていうか、物理的に無理っぽい」  
 そう言いながらも、火凛は真っ赤な顔をして一物を見続けている。そんな火凛の素振りを見て、俺はもっと意地悪をしてやりたくなった。性交はせずとも、ここまできたら多少の悪戯は構わないだろう。  
「ここも洗ってくれんじゃねえのか?」  
 言いながら火凛に近付いてその身体を抱きしめ、バスタオルの越しの下腹部へと陰茎を押し当てて、その感触に俺は少しばかり驚いた。どうせタオルの下には水着でも着ているのだろうと思っていたのだが、何も身に着けていないらしい。  
からかうつもりじゃなかったのか、と問い掛けようとして、俺は火凛の顔から怯えの色がなくなっていることに気付いた。顔は紅潮したままだが、抱きしめられて拒むこともなく、うっとりと目を細めている。  
「おい、火凛? お前、こんなことされてて怖くねえのか?」  
 俺の問い掛けに、火凛は首を小さく横に振った。  
「……怖いよ。だけど幸せ。私たち、巫女の任期中は、こんなことしちゃダメだって言われてたから。でも龍神としてナギ様が現れて、ナギ様とならこんなこともできるんだなって思ったら、なんか嬉しくなっちゃって。  
だから、ナギ様がしたいなら、しちゃっていいよ。さっきは初めて見たからびっくりしたけど、覚悟は出来てるから」  
 言い終わってから火凛は俺の唇にそっとキスをしてきた。ほんの一瞬のことだったが、それでもう俺は我慢が出来なくなった。交わることなく可愛がってやるのなら、別に場所は風呂場でもいい。  
俺は火凛の巻いていたバスタオルを外して床に落とし、目の前の裸体を優しく抱きしめ直してやった。火凛はそんな俺の背に手を回し、申し訳なさそうに呟いた。  
「あんまりジロジロ見ないでね? 私、雫やそよぎほど、胸、大きくないし……」  
 そう言って目を伏せた火凛の唇を、今度は俺が奪ってやった。  
 
 俺は火凛を風呂場の壁際に立たせたまま何度も唇にキスをし、後に舌を首筋から鎖骨へと這わせながら、ゆっくりと乳房を揉みしだいた。  
本人が恥じているほど身体は貧弱でなく、予想通り年相応に出るところは出ている。  
火凛は初めての愛撫を受けてくすぐったそうに身を捩じらせていたが、薄紅色の乳首を俺が口に含んだ途端、小さく喜びの声を上げた。  
その反応に俺は嬉しくなり、片乳首を舌先で弄びながら無毛に近い局部を手のひらで包み、そっと揉み解してやった。  
「んはぁ、ナギ様ぁ、んんっ、恥ずかしいよおっ、ふあっ、こんなの恥ずかしいっ」  
 俺は火凛の訴えを無視し、その右手を取って陰茎へと押し付けた。火凛も何をしたらいいのか判ったようでらしく、恐る恐るといった様子でそれを握ってきた。  
流石に扱きはしないが、ぎこちなく触れてくる指先の感触が心地いい。俺は乳首から口を離し、耳元で優しく囁いてやった。  
「火凛、そのまま、握った手を上下に動かせ」  
 火凛は秘所を嬲られながらも、俺の指示に従って懸命に手を動かし始めた。動かし方は拙いものの、何しろ相手は全裸の美少女だ。  
微かに濡れてきた秘裂に触れ、甘い体臭を嗅ぎ、その恥じらいの声を聞いているだけで陰茎がどんどん硬くなっていく。  
「はふぁ、私触ってるぅ、ふはぁ、ナギ様のを触ってるぅ、はうぁ、触られて触ってるぅ」  
 状況に興奮してきているのだろう、火凛の息は徐々に荒くなってきている。いい機会でもあるので、俺は淫語を教え込んでやることにした。  
「火凛、言ってみろよ? チンポ握りながらマンコ触られて気持ちいいって」  
「くはぁ、そんなの嫌あっ、ふうぁ、そんな言葉は嫌あっ、んくぁ、言いたくないいっ」  
「言ってくれたら、ここも気持ちよくしてやるから」  
 俺はそう言って局部を揉みながら一本の指を陰核に当て、何度も軽く擦り上げてやった。  
「はくふあっ、そこダメえっ、んんくあっ、そんなのダメえっ」  
「でも気持ちいいだろ? 言ってみろよ? クリトリス触られて気持ちいいって」  
 火凛は嫌々をするように首を振ったが、それでも陰核を責め続けてやると、やがて一物を扱きながら左手で俺の頭を抱き寄せ、乳房に押し付けながらか細い声で言葉を口にした。  
「んくひあっ、クリトリスうっ、あはひあっ、クリトリス触られて気持ちいいっ」  
 一旦堕としてしまえば後は容易い。俺は陰核に触れていた指先を陰唇の中に少しだけ挿し入れ、愛液を塗りたくるようにして膣口を撫で上げた。  
「次はここだ。ほら、オマンコ気持ちいいって言ってみろよ? 俺の何を握ってるのかもな」  
「あひはあっ、オマンコ気持ちいいっ、ふくひあっ、ナギ様のおちんちん触ってえっ、はくああっ、オマンコ触られて気持ちいいっ、んくひあっ、オマンコが気持ちいいっ」  
 全身を震わせて喘ぎながらも、自らの激しい快楽に合わせるかのように、火凛は陰茎に触れている手の動きを加速させた。  
そろそろ俺も射精間近だが、何とか先に高みに導いてやりたいところだ。  
俺は指を勃起した陰核に戻して摘み上げ、もう一方の手で乳首も摘まんでやり、それらを同時に激しく擦り上げてやることにした。  
「んはひはあっ、一緒はダメええっ、かひはふあっ、身体がおかしくなっちゃううっ」  
「我慢せず、気持ちよくなっていいんだぞ? ほらっ」  
「はくふああっ、だってこんなの知らないよおっ、きひくはあっ、ヤダヤダ怖いよおっ」  
 巫女として自慰は禁止とヤエが言っていた通り、知識としては知っているのだろうが、火凛は絶頂を迎えたことがないらしい。  
ならば初めての絶頂は俺の手で与えてやりたい。俺は更に指の動きを速めながら、安心するように言葉をかけた。  
「火凛、気持ちいいのを怖がったりするな。これから先、何度だってお前のことを気持ちよくしてやるから、その第一歩だと思って素直に受け入れろ」  
「ふくひはあっ、だってだってえっ、んんくひはあっ、もうダメえっ、ダメええええええっ!」  
 初めての絶頂を迎えて火凛は俺に強くしがみ付き、全身を小刻みにひくつかせた。  
感極まった短い声と息を吐き続け、恍惚感に満ちた顔で余韻に浸っているようだ。  
俺は火凛を引き剥がして風呂椅子に座らせ、限界直前の陰茎を自ら扱いて、その勃起した乳首の上へと精液を浴びせてやった。  
 
 火凛の様子が落ち着いてからは互いに身体を洗い合い、一緒に浴槽へと浸かった。火凛は俺に背中を預けて抱っこされ、何度も首を伸ばしては頬にキスをしてきた。  
そんな愛らしい素振りのお返しにと俺は背後から乳房と陰核に触れてやり、火凛は再び歓喜の声を上げて高みへと昇りつめた。  
その後はふざけあって相手の身体に触れては笑い合い、長い入浴を終えた後、元の服を身に纏おうとしていた火凛に俺は自分のパジャマを与え、自身は荷物の中から別のパジャマを着て眠ることにした。  
 ベッドは明日届く荷物の中に含まれており、取り敢えず今晩は布団を敷いて寝るしかない。  
二階の和室に布団を運んで就寝の準備をすると、火凛は当たり前の顔をして俺の隣に並んで横になり、布団の中でパジャマを脱いで全裸になった。  
だが、俺はセックスまでしてしまうつもりはない。そのことを告げると火凛は少しだけ拗ねた顔になり、それでも一緒に裸で寝てみたいと言い出した。  
既に互いの身体を見せ合っていたとは言え、そんな状況で同衾して俺に我慢が出来る筈がない。正直にそう言うと、ならば一緒に裸で寝ても大丈夫なように陰茎を満足させてあげたいと火凛は言い、俺はその言葉に頷いた。  
 一度は暗くした部屋の灯りを点け、布団の中で一物を握らせると、火凛は照れ臭そうに扱きながら俺の唇にキスをしてきた。  
その態度はまるで昔からの恋人のようで、俺は愛撫を受けながら自然にその身体を抱き寄せて口腔に舌を挿し入れた。  
舌を絡ませ合い、互いの唾液を飲んでいる内に段々と堪らなくなってくる。俺は陰茎への愛撫を止めさせ、火凛の脚を大きく広げると、その間に座り込んで陰核を舌で舐め上げてやった。  
「んくひあっ、ナギ様それ気持ちいいっ、はうふあっ、クリトリス気持ちいいっ」  
 火凛は俺の行為を拒むことなく、身体の力を緩やかに抜いて快楽を受け入れている。  
出会ったばかりとは言え、俺も既に火凛に惹かれており、故に丹念に舌を這わせていると、風呂場の時以上に愛液が満ちてもくる。  
その甘酸っぱい体液を心行くまで味わうと、俺は先刻までのように火凛の隣に横になり、自分の陰茎を扱き始めた。  
「火凛、俺の顔を跨げ」  
 俺の指示に火凛は頷き、四つん這いになって掛け布団の中に潜り込むと、ぺろぺろと陰茎を舐め始めた。  
俗に言うシックスナインの体勢だ。俺は逆向きに顔を跨らせ、火凛の秘所を舐めながら自慰をするつもりだったのだが、どうも勘違いしたらしい。  
それでも滑る舌の感触は心地よく、止めさせる気にはなれなかった。  
尚も自分で一物を扱きながら掛け布団を退かし、空いた手と舌を使って目の前に晒された秘所を弄び、合間に陰茎に舌を這わせる火凛を観察していると、二度目の射精が近付いてくる。  
遠慮がなくなってきているのか、やがて火凛は自分から尻を動かして舐めて欲しい場所を俺の舌先へと移動させてきた。  
その場所を舐め、吸い、甘噛みし、指で撫で、擦り、弾いてやると、その度に火凛は身悶えして陰茎への愛撫を中断し、切ない声を上げ続けた。  
「はふあひあっ、こんなに気持ちいいこと覚えちゃったらぁ、くふひはあっ、私ダメになっちゃうよおっ、んくふはあっ、ナギ様そこいいっ、うはひはあっ、クリトリス気持ちいいっ」  
「そろそろ出すぞ」  
「うくふはあっ、判ったあっ、ふはくうあっ、飲んであげるうっ、はむっ、んぶむごっ、んべおれっ、むぼごおっ」  
 そう言って火凛は亀頭を口に含み、激しく舌を絡めてきた。  
そこまでする必要はないと言おうと思ったのだが、快楽に負け、そのまま俺は火凛の口腔へと白濁液を放った。  
「んぶごぼもっ、ぶむぼもごっ、んごくっ、むぶぼおれっ、んぶぐぼもっ、んごくっ」  
 必死になって火凛は精液を嚥下し続け、正直、その一途さには感動した。  
巫女の役目とは言え、初めて会った男の精液を飲むなど処女のやるべきことではないとも思えるが、それだけ俺を受け入れようとしてくれているのだろう。  
そんな想いに応えるべく、俺は精液を放出しながら火凛の秘所へと武者振り付いた。  
 
 互いに相手の性器を舐め合い、追加で火凛を二度ほど悦楽の極みに昇らせてやった後、俺は元のように並んで眠ることにした。 
陰茎は再び勃起していたが、これ以上性行為を続けていると本当に我慢ができなくなる。火凛は未だ蕩けた顔をしながら、そんな俺の耳に口を寄せてきた。  
「ナギ様、ほんとにしなくていいの? 私ならいいのに。それに、その、安全日だよ?」  
「このまま勢いでしちゃうのもなんだしな。今日は止めとこう。それより、俺の飲んで大丈夫だったか? 嫌だったら、別にそこまですることないんだぞ?」  
「大丈夫、嫌じゃないよ。苦くて生臭かったけど、ナギ様のなら飲んでも平気。きっと他のみんなも躊躇わずに飲むと思うよ? 喉にくっ付くから飲み込むのは大変だったけど、ゴーヤほど苦いって訳でもないし」  
 まさかウリ科の植物と比べられるとは思っていなかったので、その言葉に俺は笑った。  
「もう、笑わないでよ。それに、男の人は飲んであげると嬉しいんでしょ? 雑誌に書いてあったよ? だから平気。ナギ様が喜んでくれるなら、私、何でもするよ?」  
火凛はそう言って一物を握り、優しく扱き始めた。風呂場の時と違い、拙さが取れて格段に気持ちがいい。その言葉と快楽に俺は恍惚となり、思わず火凛の身体を抱き寄せて呻いた。  
「くっ」  
「うわぁ、ナギ様の声、可愛い。私、もっと頑張るね」  
 火凛は蕩けた顔で俺の唇にキスをし、そのまま身体中に舌を這わせ始めた。首筋、胸、脇に唾液を塗し、乳首を舌先で転がしながら一物を愛撫する手の動きを早めてくる。  
その愉悦に俺は抗いきれず、夢中になって火凛の身体を弄った。  
「んれっ……ナギ様が感じてくれてるうっ……んちゅっ……もっと気持ちよさそうな顔を見せてえっ……れおっ……んはあっ……ナギ様のおちんちん、どんどん硬くなってきたあっ……」  
 自らの行為に興奮しているのか、火凛は俺の胸に乳房を押し付けて徐々に喘ぎだした。それでも手の動きは緩めず、絶妙の力加減で擦り上げてくる。  
「はふうっ……ナギ様の臭い好きいっ……はくうっ……頭がボーっとしてきちゃううっ……」  
 妖艶な表情で小鼻をひくつかせる火凛を見て、俺は自身の欲求に逆らえなくなった。身体の向きを変えて布団の上に火凛を押し倒し、陰茎を取り上げて自分で扱きながら亀頭で淫裂をなぞってやる。  
火凛は少しばかり焦った顔をしたが、すぐに笑って俺を招くように両腕を差し出してきた。  
「はくふあっ……好きなようにしてえっ……んくはあっ……私の初めてあげるううっ……」  
 陰茎で嬲っている秘裂からは絶え間なく愛液が溢れ、そうしてしまいたい気持ちもあったのだが、俺は首を横に振った。今の火凛の様子なら嫌がることはないだろう。  
「言ったろ、今日はしねえって。けど、今からお前の処女膜に精液ぶっ掛けてやる。お前のマンコは俺のもんだって、チンポ汁の臭いを付けてやるからな」  
 その言葉に火凛は快美的な笑みを浮かべ、目を細めて頷いた。  
「んふはあっ……好きなだけ掛けてえっ……ふくはあっ……オマンコに臭い付けてえっ……はうひあっ……私はナギ様のものだからあっ……くふはあっ……オマンコ気持ちいいっ……」  
「出すぞ、受け取れっ」  
 そう告げると同時に、俺は亀頭を火凛の膣口へと当てて精液を放った。  
 
 
 日曜日の朝、自宅へと戻っていく火凛を見送った後は、予想通りの忙しさだった。  
午前中の早い時刻に引越しの荷物を受け取り、隣の本津島から来たという引越し業者三人の手伝いを借りて各部屋に家具などを設置し終えると、細かな品々の配置と片付け、それに加えてオヤジの荷物の纏め上げだ。  
お昼になると火凛が弁当を持って差し入れに訪れ、朝食をカップめんで済ませていた俺に豪勢な食事を取らせてくれた。  
火凛の話によると、夕方までには雫とそよぎも来訪する予定で、二人の大きな荷物は本日の夜までに島の運送屋が運んでくれることになったとのことだった。  
その前に俺は火凛の部屋からベッドなどを運び入れようと思ったのだが、当人がそれを断った。  
取り敢えず雫たちの荷物も火凛の家の倉庫に運び、明日の昼間、島民数名の協力を得てヤエが家に運び入れ、設置まで行なう手筈になっているらしい。  
部屋の割り当てが終わった時点で希望する配置図を描いてさえおけばいいとのことで、俺は更なる肉体労働が不要となったことに深く感謝した。  
ついでにオヤジの荷物の運送業者への引渡しもヤエに頼むことにした。  
 その後の片付けは火凛にも手伝ってもらい、夕方になって雫とそよぎが家に来ると、俺は凛音も呼び寄せ、リビングで今後の共同生活の取り決めをすることにした。  
途中、そよぎが火凛の口調に不満を述べたが、構わないと俺が言うと大人しく引き下がった。そんな気遣いも嬉しい、と俺はそよぎに声を掛け、気を取り直した様子を確認してから話を進めた。  
まずは部屋割りだ。俺と火凛と凛音は二階の洋間、雫とそよぎは二階の和室を使うことにし、食事は一階のリビングか三階のテラスで取ることとした。  
借家の所有者であるヤエからは、信仰神の生まれ代わりとして島で暮らす以上、好きなように改装や改築をしても構わないとの許可は得てある。  
部屋の模様替え等は各個人の好きにすることにし、未だ各人の家にある小荷物などの運び入れの算段を話し合っていると、凛音が急に隣の自宅に出かけてくると言い出した。 
何か持ってきたい物でもあるのかと笑って見送ると、すぐに戻ってきて俺にヤエ名義の貯金通帳とカードを差し出した。今後は色々と物入りが多くなりそうだとヤエに話したところ、これを使えと渡されたらしい。  
通帳には島で生活する分には不必要なほど多くの金額が記されていた。  
 俺は慌ててヤエに会いに行った。  
分不相応な金を貰う訳にはいかないと告げると、引っ越し祝い金として取っておけと言う。その代わり巫女たちを幸せにするよう努力しろと言われ、俺は迷った挙句に頷き、有り難く施しを受けることにした。  
 自宅に戻り、皆に必要な物を尋ねて紙に書き出し、島で手に入らないものはインターネットの通販で後日購入することにした。  
過疎化の進んだ島とは言え、電話や携帯、インターネットなどのインフラは整備されている。隣の本津島に行けばホテルやデパートなどもあるようだ。  
コンビニエンス・ストアがないのは少し痛いが、まあ仕方がない。これで取り敢えずは住居に関しての話し合いが終わった。次いで炊事や洗濯などの当番だ。  
食事については日替わりで俺と火凛と雫で、料理が苦手だというそよぎは毎日の掃除、洗濯は巫女三人で交代で行なうことにした。  
自分も何か手伝いたいと言ってきた凛音には、気付いた時に適当に手伝ってくれればいいと話し、これで一通り話も済んだと思って息を吐くと、四人が俺をじっと見つめていた。  
何か決め忘れたことでもあったかと尋ねると、寵愛の順番を決めてくれと言う。交代制で俺の相手をする気なのは判ったが、それは今後の様子を見て決めようと告げ、その日のリビングでの話し合いは終わった。  
 

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