安藤は浴室で一人、痛みに耐えていた。  
「痛っ」  
かといって、雪平一人を責めることはできない。  
浴室から出ると、独特の香りと共に、雪平はまだ、ベッドの中で眠っていた。  
 
―たしか…今日は捜査があったはず…―  
「雪平さん?」  
安藤はできるだけ優しい声をかけ、雪平の側に座った。  
「起きません?」  
雪平は安藤に合わせるように、こちらを向いた。  
「雪平さん?」  
無駄に美しい雪平の寝姿に安藤は少し、見とれていた。  
「起きないんですか?」  
雪平の剥き出しになった白い肌。  
安藤は雪平から目を離し、雪平に近付いた。  
「雪平さん?」  
流石に今日は叩かないようだ。  
そのかわり安藤はその白い首筋に口付けた。  
唇を離すとそこには、小さな紅い跡が付いていた  
「っん」  
雪平は恥ずかしがるように身を背けた。  
「雪平さん?」  
安藤は雪平を見つめた「っ…安藤?」  
安藤は名前を呼ばれ、照れたように雪平にキスした。  
二人の口から聞こえる水音に紛れ、雪平は声をあげた。  
どちらの物ともつかない唾液が安藤の手によって毎日洗濯されているシーツに溢れた。  
 
「目ぇ覚めました?」  
安藤はいつもの人なつこい笑顔で雪平を見つめた。  
「バカかお前は」  
雪平は顔を少しだけ赤くして目をそらした。「なんか」  
「何よ?」  
雪平は安藤に不信な目を向けた  
「今日、仕事行きたくなくなってきちゃいました」  
「は?」  
安藤はその笑顔のまま雪平を抱き締めた。 「お前、」  
「昨日、背中すっごく痛かったんでそのお礼に…」  
「ゃっちょっと」  
 
安藤は雪平に体重をかけないように、移動し、再び雪平の首筋に口付けた。  
「それ、見えたらどうするんだ?」  
「…そのときは、そのときです」  
安藤は自分で作った紅い印に触れた。  
そしてその手を段々と下に下げた。  
「お前、今、朝だろ?」  
「それが何です?」  
「…触んなっ」  
「雪平さんのここ、もうこんなに起ってますよ?  
そういって雪平の胸をもて遊びはじめた。  
「もう薬きれてるはずなのに感度高いですね」  
「ぃやぁっ」  
「雪平さん、普段のときよりも、今の方が可愛いです」  
安藤は、下腹部に手をのばした。  
そこは、前のこともあり、既に十分すぎるほど濡れていた。  
安藤は、そこに口付けた  
「さっきよりもドロドロになってますよ」  
「んっ、あぁ」  
感じている雪平をみて安藤は、いじめたくなり、口付けたままワザと音を立てて舐めはじめた。  
「っ汚っいからぁ」  
「汚くないですよ?」  
しばらく安藤が続けていると雪平は安藤の頭を撫でた。  
「離して」  
「嫌です。イクならこのままイッて下さい」  
 
「ん、もぅ、無理っ」  
安藤の頭を離そうとしている雪平の手を安藤は押し退け、限りなく溢れでてくる液体を粗方舐めとった。  
「雪平さん、こんな姿他の誰にも見せないで下さい」  
安藤はその言葉を言い終わると、すぐに目をそらし、服を脱いだ。―安藤は、誰に嫉妬してんだ?―  
賢い雪平は口に出さずに考えた  
安藤は雪平を後ろから抱き締め、自分の上に座らせた。  
「イキたかったら、自分で入れて下さい?」  
安藤は後ろから囁いた先ほどとは違い、何も考えられなくなっている雪平は少し戸惑いながらも、自分に当てがった  
「んっ」  
その雪平の姿に興奮した安藤はいきなり雪平の腰を押さえ、深く入れた。  
「ん、やぁぁぁん」  
安藤は雪平の細い腰を激しく動かした  
既に今日何度目か分からない絶頂を向かえた雪平は安藤をみた  
「安藤っ」  
 
安藤は、目があった雪平に首筋にもう一度別の印をつけた。  
雪平の記憶は、そこで途切れた。  
 
数時間後、雪平と安藤は何事もなかったかのように半日遅れで意味のない捜査会議に出席した。  
そしていつものように雪平の意見にヒヤリとさせられたまま、会議も終了、雪平と安藤は今回の殺人事件の現場へと向かうために、駐車場へと歩き出そうとした。  
「雪平」  
名前を呼ばれた雪平が振り返ると蓮見が、何かの紙束を持っていたのだ。  
「このまえ言ってた、容疑者リスト出来たよ」  
そういって、その束を雪平に渡した。  
「それと雪平、その首筋の紅い跡、どうしたの?」  
いつもは絶対に揺れない雪平の表情が少しだけ、変わった。  
その場にいた誰もが―といっても、山路、三上、蓮見、そして雪平と安藤だが―その変化を見落とさなかった。  
三上は安藤に視線をうつした。  
そして安藤も三上に視線をうつした  
三上は、少しだけ雪平に視線を送り、また安藤に戻した  
安本と山路は何事もなかったかのように目をそらした。  
同時刻、蓮見は雪平の紅い跡を見つけたときとは、明らかに違う表情で仕事に戻った。  
三上も安藤から視線を外し、ゲームに集中したが、既に画面にはゲームオーバーの文字がでていた。  
その状況はまるで、今の三上を表しているようだった。  
そんなことを気にせずに雪平は、安藤をひきつれ部屋から出ていった。  
その場にいた誰もが、雪平と安藤が遅刻した理由も、雪平があまり動かず、大人しい理由を推理せずとも分かった。  
そして、安藤が少なくとも自分の味方ではないことが分かった二人を除いて、他の一課のやつらは純粋に雪平と安藤を応援するだろう。  
しかし雪平は、そんなことを気にも止めず、お気に入りの部下と共に、新しい、結婚式でおきた殺人事件の捜査を始める。  
 
 

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