安藤一之は焦っていた。  
・・・まさか、牧村紀世子が自首するとは。まさに晴天の霹靂とはこのことだろう。  
佐藤和夫・・・あの男に付き添われて・・・  
そして、そのまま蓮見杏奈も緊急逮捕となった。  
警察内部の者による犯行。センセーショナルな幕引きを迎えた募金型誘拐。  
しかし、蓮見の証言により新たに浮かび上がってきた罰サイトの存在・・・  
 
佐藤和夫名義で立ち上げたことが何の意味も示さなくなってしまった・・・  
安藤は奥歯をぎりっと噛み締める・・・  
 
しかも・・・牧村と佐藤は愛し合っているようだ。  
雪平と佐藤をもう一度親密にさせる。そんな計画も全てが水泡に帰した。  
しかし、そんな安藤の心に何故だろう?  
ほっとしたような、そんな喜びにも似た気持ちがわきあがっては消える・・・  
安藤はかぶりを振った。  
・・・最近の僕は・・・ちょっとだけ混乱しているんだ・・・  
そう。豊を射殺した雪平夏見への復讐。それだけが僕の生きる意味。  
大幅に予定は狂った・・・しかし・・・  
安藤はPCを開いて静かにメールを打ち始めた。  
 
 
雪平がそのメールに気づいたのは、父の命日の前日深夜11時30分・・・  
残務処理は山積し、罰サイトの真の管理人をつきとめるまでは家には帰れないかもしれない。  
みおに会いたい・・・しかし、まだ・・・それは出来ない。  
 
「雪平夏見  
 おまえの父親を殺した犯人を知っている。  
 教えてほしければ、明日正午、父親の死んだあの場所に来い。  
 罰サイト管理人・X 」  
 
何度も目で読み返す。  
はったりだ。そうに決まっている・・・しかし。  
この犯人はきっと、警察内部に詳しい知識を持っている人物。  
しかも、知能はずばぬけて高い・・・  
瀬崎一郎・牧村紀世子・蓮見杏奈・・・聡明な3人を手玉にとり、自由に操ることの出来る人物。  
Xが父の死の真相を知っている・・・ありえなくは、ない。  
「蓮見・・・」  
蓮見杏奈の名を思い浮かべた瞬間、雪平は頭を抱えた。  
なぜ? ずっと一緒に闘ってきた仲間ではなかったのか? もしかして・・・彼女は自分を・・・憎んですらいた・・・?  
「雪平さん」  
不意に安藤の声がする。  
慌ててメール画面を閉じる。誰にも見られてはいけない・・・これは自分自身の問題だ。  
動揺を押し隠すように安藤を振り返る。  
「どした? 」  
安藤はにっこり笑って、サンドイッチとコーヒーを目の高さに掲げる。  
「また何も食べてないんでしょ」  
「安藤・・・」  
 
2人並んで腰掛け、サンドイッチを頬張る。熱いコーヒーが雪平を心底ほっとさせた。  
「雪平さん・・・蓮見さんのこと」  
「・・・ん。はは・・・ばっかみたいだよね。おまえに前・・・言われたとき。あたしあいつは仲間だって・・・そう言ったのにね」  
「雪平さん・・・」  
「あたしのこと・・・嫌いだったのかな・・・憎んでたのかな・・・だからっ」  
安藤の太い腕が雪平を掻き抱くようにして引き寄せた。  
「もう・・・いいですから」  
「だって・・・だって・・・ずっと一緒に・・・いつだって・・・頑張ってきたのに・・・なのに」  
最後は涙声になる。  
「蓮見は一番の友達で。仲間で・・・それで・・・」  
「僕がっ・・・僕がいますから・・・! 」  
「・・・!!! 」  
そっと体を離しながら、安藤は優しく続ける。  
「僕が。僕がそばにいます。僕は絶対・・・どこにも行きません」  
涙を流しながら雪平は安藤の瞳を見つめる。  
「あんどう・・・」  
にっこりと微笑みながら、そっと唇を雪平の頬につける。  
涙を唇でぬぐうように・・・  
「僕・・・雪平さんが好きです」  
雪平は涙のとまった瞳で驚いたように安藤を見上げる。  
「気づいてなかったんですか? ・・・はぁ〜鈍感な人だなぁ・・・」  
「馬鹿かおまえは・・・」  
そっと安藤の腰に手をまわすと、雪平は安藤の胸に顔をうずめた。  
静かに時が流れていく。雪平は久しぶりに訪れた幸福な安堵感にただ癒されていった。  
「ゆ、ゆきひらさん・・・あの・・・ちょ、ちょっと・・・はなれてもらえませんか・・・」  
目をあけると、安藤が腰をもじもじさせている。  
「あ、あの・・・ちょっと・・・まずいかんじになりそうなので・・・」  
雪平は思わず吹き出した。  
「おまえ・・・わかいね・・・」  
「いやっわかいとか関係ないんじゃないでしょうか。やっぱり好きな人と2人でこうしてたら・・・男なら・・・自然な」  
最後までは雪平の唇が言わせない。  
そっと優しく慈しむかのような口づけで、安藤の可愛い言い訳を遮っていく・・・  
安藤は思い切ったように、雪平を引き寄せ、今度は自分から激しく唇をおしつけていった。  
ちゅ・・・っじゅ・・・  
唇をこじあけるようにして、舌をねじ込むと激しく口内を刺激していく。  
次第に息を荒げ、雪平の長い髪に指をさしこみ柔らかな唇の感触を楽しんでいる・・・  
雪平も安藤の激しい愛撫にだんだんと蕩けさせられていった。  
そっと唇を離す。名残惜しそうに潤んだ瞳で安藤は雪平を見つめる。  
 
細い指で安藤の形のいい唇をなぞりながら雪平は囁く。  
「知ってる・・・? ここ・・・12時を過ぎると誰もこないの・・・」  
「え? 」  
「廊下のシャッターが閉まっちゃうの。最新セキュリティーって・・・やつ? で中からしか出られない・・・」  
2人、PCのモニターに表示される時計をそっと確認する。  
0時・・・03分。  
そっと見詰め合うと、もう一度激しく唇を合わせる。  
「ゆ、きひらさん・・・このまま・・・? 」  
雪平は安藤の髪をぐしゃぐしゃとかき回すようにしながら、小さく頷く。  
安藤はおもむろに雪平のブラウスのボタンを荒々しく途中まで外すと、無理やり黒のシンプルなブラからひねり上げるようにして豊かな乳房を曝け出させる。  
そのまま激しく揉みしだき、先端の突起にむしゃぶりついた。  
「はぅっ・・・んんっ・・・」  
安藤の頭を胸に掻き抱き、雪平は乳首への刺激に小さく喘ぐ。  
じゅるじゅると大きな音をさせて乳首をすいあげる安藤。  
雪平の小さな尻をパンツの上からぎゅむぎゅむと揉みこむようにする。  
「あぁんっ・・・やっん・・・」  
かすれた喘ぎ声を安藤の大きな耳に直接聞かせていく。  
安藤はぶるりと腰を震わせると、慌ててジャケットを脱ぎシャツをはだけさせる。  
そのままズボンのジッパーに手をやり、弾けそうなほど熱く屹立した自身を取り出した。  
軽く手でこするようにして雪平に見せつける。  
「あんどう・・・すごい・・・」  
欲望に潤んだまなざしで長い髪をかきあげる雪平・・・さらけだした乳房は安藤の唾液でてらてらと光っている。  
「雪平さんっ僕っもう・・・」  
涙声でうわずった叫びをあげる安藤を見ると、雪平は自分自身の本当の気持ちに気づく。  
そう・・・もうずっと前から・・・  
雪平はそっとかがむと、椅子にこしかけた安藤の足の間に体をさしこむ。  
荒々しいまでに立ち上がる安藤自身をねっとりと舐め上げていく・・・  
安藤は天を仰いで、雪平の頭をぐっとつかんだ。  
雪平はうっとりと亀頭をしゃぶりたてたかと思うと、根元を横から咥えるようにしながら先端を手のひらでしごきあげる。  
「〜〜〜〜〜!!! あぁっ! ゆきひらさんっそれ・・・あ〜っ! 」  
安藤は雪平の髪をかきむしるようにして感じきっている。  
先端をちろちろと舐めながら、雪平はゆっくり体を起こしていく。  
名残惜しそうにちゅっと尿道口にキスすると、そのままパンツとショーツを脱ぎ捨てる。  
雪平はゆっくりと安藤をまたいでいった。  
安藤の怒張は痛いくらいにそりあがり、ぴくぴくと蠢いている。  
雪平は自らの濡れそぼった秘所をみせつけるようにして、椅子に片足をかけ、ゆっくりと腰をおろしていく。  
 
安藤は雪平自身に目をやると、苦痛に耐えるかのように吐息を漏らす。  
「あぁ〜〜〜っ!! あっ! ゆ、ゆきひらさんっあっ・・・はい・・・っちゃいます・・・」  
舌なめずりしながら、雪平はじっくりと先端がのめりこむ感触を楽しんでいる。  
腰をぐりぐりと回すように埋め込む雪平の陰唇からはぬちゃぁっといやらしい音が聞こえた・・・  
「あんどう・・・ちゃんと目・・・あけて・・・こっち見て? 」  
安藤はそっと目を開けると雪平の瞳を見つめる。  
「ね? 入れ・・・るからね・・・? 」  
こくこくと安藤は少年のように頷く。  
「あ・・・んんっ・・・」  
太い怒張を飲み込む感触に、雪平はゆっくり息を吐く。  
「お・・・おっきぃ・・・ね・・・」  
ごぼりと白濁した愛液が太い竿を伝っていく・・・  
「ゆ、ゆきひらさん・・・やばい・・・僕・・・すぐ・・・」  
雪平も小さく頷きながら、腰を沈めていく。  
「ん・・・あたしも・・・多分・・・」  
照れくさそうに笑う雪平を見ると、我慢できなくなったように安藤は下から思い切り突き上げた。  
ぶちゅっと音がして愛液が飛び散るように吐き出された。  
「!!!ひゃっ・・・はっあぁぁっん・・・! 」  
小さく叫び声をあげる雪平は、安藤の瞳をじっと見詰める。  
「だめ・・・も・・・すぐ・・・いっちゃうよ・・・? いい? あんどう・・・いいぃ? 」  
可愛く首をかしげる雪平を見つめ、安藤は腰からかけあがる射精感を必死でこらえるように雪平を抱きしめ豊かな乳房に舌を這わせた。  
「・・・!!! あっあっあっあっぁぁああああ〜〜〜〜!!! だめっいくっごめ・・んっいっちゃうぅ〜〜〜!!! 」  
安藤は乳首をしゃぶりたてながら、何度も頷く。  
雪平は体をのけぞらせるようにしながらがくんがくんと体を脈打たせていく・・・  
肉壁は安藤自身を食いちぎりそうなくらいに激しく痙攣している。  
乳首から慌てて口を離すと安藤も小さく叫ぶ。  
「ゆ、ゆきひらさんっぼ、ぼくもっ・・・! 」  
雪平は体を小刻みに痙攣させながら、安藤の唇をふさいだ。  
「ふっむっぅんっ〜〜〜〜!!!! 」  
安藤は雪平の唇を激しく吸いながら、子宮口めがけて、白い欲望の液を注ぎ込むようにして激しく射精していく。  
ごくごくと美味そうに吸い上げる膣のうねりに一瞬気が遠くなりそうになる。  
何度も何度も続く吐精感に安藤はぴくんぴくんと小さく体を震わせた・・・  
 
 
しばらくそうしていただろう。  
「あんどう・・・ごめん・・・」  
「え? 」  
安藤はそっと顔をあげて雪平の大きな瞳をのぞきこむ。  
「これ・・・じゃ・・・帰れない・・・ね? 」  
雪平は照れくさそうに繋がった部分を見つめた。  
安藤のスーツは自身の吐き出した精と、雪平の愛液でびしょびしょに濡れている。  
「へへ・・・ごめん・・・ね? 」  
困ったように笑う雪平の笑顔を見ると、安藤は心の底から誰かを・・・生まれて初めて愛おしいと、そう思った。  
 
 
 
父の命日である今日。  
みおの誘拐計画を影で操っていた人物に会う。  
父の仇を教えてもらうために・・・?  
何だか出来すぎているような気がする。  
恐ろしいような・・・それでいてワクワクしてくるような。  
自分自身が根っからの刑事なのだと、痛感する瞬間。  
 
現れるのは・・・一体?  
 
時計の針が丁度真上をさした瞬間。じゃりっと足音が聞こえる。  
誰・・・? あたしを恨んでいる人間・・・多分・・・この世界中の誰よりも。  
 
ビルの影から一人の男が静かに現れた。  
逆光の中から黒いスーツが見える。  
まさか・・・いや・・・彼であるはずがない・・・  
だって・・・彼は・・・  
 
「安藤・・・」  
安藤一之は小さな拳銃を構えた状態で現れる・・・  
昨日の夜、雪平を優しく愛したその、右手で。  
「なんで・・・おまえが・・・」  
「・・・5年前・・・」  
 
安藤は静かに語り始めた。狂気といくばくかの悲しみのこもった声で・・・  
5年前の事件。雪平が射殺した犯人・・・豊とは安藤にとって一体どんな存在だったのか。  
涙を流しながら静かに語りつづけている。  
雪平の頬も次第に涙に濡れていく・・・安藤への愛と、彼の憎しみの深さを知った・・・哀しみで。  
 
「僕は少し混乱しているんです」  
「・・・? 」  
「昨日だって・・・ほんとは・・・あなたを悲しませるために・・・」  
「安藤・・・」  
「信頼して身をまかせたはずの僕が・・・Xなら・・・それを知ったらあなたが・・・苦しむんじゃないかって・・・そのために・・・だけど」  
雪平はじっと安藤の言葉に耳を傾けている。そうだ・・・昨日の安藤の気持ち・・・あれが嘘じゃないことは自分が一番よく、知っている。  
「だけど僕は・・・」  
安藤は唇をかみしめながら、雪平を見据えている。  
「いいよ」  
雪平はそっと微笑むと拳銃を投げ捨てる。  
「いいよ撃って・・・それでおまえの・・・気がすむなら」  
「・・・!!! 」  
「撃って・・・いいよ」  
安藤は涙の滲んだ目でじっと愛する女を見つめた。そして彼女を撃つために、そっと安全装置を外す・・・  
・・・5年間。  
短くはなかった・・・辛かった・・・一人で。悲しくて。憎くて・・・憎くて憎くて憎くて・・・なのに・・・! ぼくは・・・  
「みお! 」  
慌てた調子で雪平が叫ぶ。  
安藤が振り向くと、驚いたような表情でみおが立っている。  
急いで拳銃をしまうと、みおに向き直ってしゃがみ優しく声をかけた。  
「ど、どうしたのみおちゃん・・・車の中で・・・退屈しちゃった・・・? 」  
みおはうつむいて何かを書いている。  
安藤はそっと覗き込んだ。  
−−−ないてるの  
みおは顔をあげて、安藤の頬に手をやる。  
もう一度うつむいて何かを書く。  
−−−なかないで  
安藤はそのままひざから崩れ落ちていく・・・  
「あんどう・・・」  
雪平はそっと安藤に近づく。  
「あたし・・・」  
安藤はさえぎるようにして叫んだ。  
「僕は・・・僕は5年間・・・あなたのことだけを考えて生きてきました」  
みおと雪平は安藤を囲むようにしてじっと聞いている。  
「でも・・・憎しみだけで・・・生きるのは・・・もう・・・疲れました・・・」  
みおはそっと何かを書く。  
安藤と雪平に見せながら、みおは曇りのない晴れやかな笑顔になる。  
−−−ずっといっしょ。ままとあんどうとみお  
「みお・・・」  
安藤はみおを抱きしめると、そのまま泣き崩れていった・・・  
 
 
がらんとした捜査会議室に、安本と三上がコーヒーとミルクを片手にたっている。  
「蓮見の件がありますからね・・・上層部は安藤一之の精神鑑定を要求したようです」  
「ん・・・」  
苦々しげに安本はコーヒーを飲む。  
「2人も犯罪者が出たとなっては警察の信頼も地におちます。是が非でも無罪に持っていくでしょう」  
「あぁ・・・確かにサイト運営によってアドバイスをしていただけだからなぁ・・・黒幕というには物的証拠も弱すぎる」  
「牧村はどうなりました」  
「ん・・・蓮見が首謀者ということでほぼ決着がつきそうだ。情状酌量、雪平への娘への態度・・・何より佐藤自身が告訴しないって言ってるからなぁ」  
「刑事の方では執行猶予3年ってところですか」  
安本は小さく頷く。  
「あれ・・・そういえば雪平は」  
「安藤の病院だろう・・・精神鑑定ってやつは結構時間がかかるそうだからな・・・」  
「みおちゃんと? 」  
2人は頷き合って、そっと息を吐いた。  
 
多摩警察病院。  
ゆったりとした個室のベッドには安藤が腰掛けている。  
「みおちゃん・・・寝ちゃいましたよ・・・」  
コーヒーを手に戻ってきた雪平に安藤は小さくささやきかける。  
見ると、みおは安藤の足元につっぷすようにしてスヤスヤと眠っている。  
コーヒーを安藤に手渡すと、雪平はみおにそっとブランケットをかける。  
「ありがとね」  
安藤は熱そうにコーヒーを吹きながら雪平を見る。  
「みお・・・おまえのおかげで・・・元気になってきてる」  
安藤は小さく首をふると、雪平をそっと笑顔で見つめている。  
その瞳にはほんの小さな闇も見当たらない。澄んだ美しい瞳だ。  
「雪平さん。僕考えたんです」  
「? 」  
「まず、僕多分1ヵ月後に精神鑑定でグレーになって。そのまま不起訴で無罪確定です」  
「う・・・ん。まぁそうなるだろうね」  
安藤は屈託なく続ける。  
「で。半年・・・んん〜1年・・・やっぱ半年かな。で。ここ出ます」  
雪平は怪訝な表情で聞いている。  
「で・・・探偵事務所でも開こうかと思ってるんです」  
「たんていじむしょぉ? 」  
雪平は呆れた表情で安藤を見つめる。  
「だって、僕かなりの天才ですから。ハッキングはプロ級だし、なんせ5年間も一人の人を追いつづけたんですよ? 相当タフですし」  
「安藤・・・」  
微笑みながら雪平は聞いている。  
「それに、射撃の腕も結構いいんです。多分、雪平さんより」  
「探偵に射撃は関係ないでしょ」  
腕を組んで雪平は微笑む。  
「で。雪平さんより先にお父さんを殺した犯人・・・見つけます」  
雪平はそっと頷く。安藤のくれたヒント。公安部にまつわる謎・・・  
「っと、それが僕の復讐。検挙率ナンバーワンの捜査一課の刑事が長年追いつづけた謎をうら若き探偵が解明する! かっこいい〜」  
「馬鹿かおまえは」  
雪平は笑顔で安藤をにらむ。  
「・・・あっそれか〜」  
「? 」  
「みおちゃん・・・もしかして・・・僕が初恋なんじゃないかと思うんですよね〜みおちゃんと僕15歳しか離れてないし? 」  
雪平は少し真顔で安藤をにらみつける。  
「夏見おかあさんっみおちゃんを僕にくださいっなんて・・・」  
思いっきり真顔で雪平は安藤の頭を殴る。  
「いてっ・・・! ・・・って・・・」  
2人はそっと顔を見合わせると笑顔になる。  
 
「あ・・・もう一つ思いつきました」  
「なに」  
「雪平さんに逆プロポーズしてもらうんです。プライドの高い雪平さんにとってはかなりのダメージがありそうな・・・」  
呆れた顔で雪平は笑う。  
「馬鹿だおまえは」  
2人はもう一度顔を合わせて小さく笑った。  
「あ・・・ん・・・ど」  
みおが寝顔で小さくつぶやく。  
「みおっ・・・」  
「みおちゃん・・・」  
2人は驚いた顔で見詰め合う。  
声がもどった・・・みおに・・・自分のせいで失った声が・・・  
雪平は泣き出したいような喜びで、安藤に頷きかける。  
安藤は笑顔でうんうんと頷き雪平の手にそっと自らの大きな手を重ね合わせた。  
「あんどう・・・」  
「はい? 」  
「もしかしたら遠くないかもね」  
「ん? 」  
「最後に言ってた復讐・・・果たせるの」  
慌てて安藤が姿勢を正す。  
「えっ・・・な、なんですかっもっぺん・・・もいっぺん言ってくださいっ」  
照れくさそうに頭をかきながら、ぶっきらぼうに雪平は言う。  
「ば〜かかおまえは。そう何べんもプロポーズできるかっつ〜の! 」  
安藤と雪平は顔を見合わせて笑う。  
 
 
安藤。そして牧村。  
 
哀しみから生まれた冷たい復讐の心。  
その心の闇を照らしていったのは、権力でも・・・ましてや暴力でもなかった。  
それはただ・・・  
ただ・・・愛の力で・・・  
 
赤く大きな夕日が全てを染め上げていく。  
佐藤と牧村が笑う。  
安藤と雪平が笑顔でみおを見つめている。  
全ての人の哀しみを癒すことは出来ないかもしれない・・・  
それでも・・・今日も・・・夕日は沈む。  
明日という日に、希望を託して。  
 
 
 

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