俺は、雪平と安藤を探すため、一人辺りを出歩いていた。
二人とも電話にもでない…。
路地裏の窓、向かいのホーム…などは探していないが、何処にもいなかった。
仕方なく署に戻り、安本さんに尋ねてみると、数十分前に廊下で見たそうだ。……俺は、その廊下を辿っていった。
だが、どこにも二人の姿は見られない。
その廊下の突き当たりまでくると、資料室から話し声が聞こえてくることに気付いた。
「…雪平?」
自分の見解を信じ、壁に耳を付けると、確に雪平の声がした。
「ゃあ、…痛…」
「痛いって言われても……」
「…あっ…」
「もっと開いてくれないと…入りませんよ…」
はぁ?!?!?!?
俺は思わず、壁にぴったりと身を張り付け、中の音を聞いた。
嫌な冷や汗が体を伝い、滴り落ちるのが分かる。
これを、盗み聞きというのだろうか。
何故か、中を覗きたい衝動に駆られる。
俺は、気が付くと扉に手を伸ばした。
「……」
鍵はついてないのだろう。
音もたてずに、1〜2cm程の隙間ができた。
薄暗い室内には、雪平のものと思われる腕時計と、スーツが脱ぎ捨ててあった。その隣にあるのは、安藤のものだろう、これまた脱ぎ捨ててある。
声の持ち主二人は、昼間からこんなことをする人物には見えないのだが…。
だが、暗い室内から聴こえてくる声を聞いていると、体の中心に全身の血液が集まってくるのが分かった。
何考えてるんだ、俺は。
しかし、体は心とは裏腹で、自身はより一層固さを増した。
「はっ…ん、…」
「…もうちょっと、我慢して下さい…」
俺が暫くそうしていると、ふいに、後ろに気配を感じた。
「…山路、監理官っ」
俺は、声を潜めた。
中の音が鮮明に聞こえると言うことは…
「…お前、…何してんだ?…」
「…えっと……ですね」
「……」
山路は、前を押さえる俺を気にせず、中をこっそり覗いた。
「……」
お願いだ、雪平、今そういう声をあげないでくれ
射精感が、より高まる
「…」
「…ぁ…んどう…」
「はい?」
「…はやくっ…」
「…雪平と安藤…か?」
山路が隣にいるのも忘れて、俺は普段の数倍早く、射精をした。
早く着替えなければ……悲惨なことに。
…この後、捜査会議だが……仕方がない
「雪平、安藤!」
山路は、思いきり扉をあけ、部屋に踏み込んだ。
今開けたら、全てが見えるだろう……。
雪平のそういう姿は…勿論……見たい……!
だが、この姿を晒すのは…嫌だ。
「…山路、監理官…」
俺は強く瞑っていた目をゆっくりと開けた。
雪平の服は、これといって乱れていないし、安藤も同様に、普段と変わりはない。
「…え?…」
「何、薫ちゃんいたの?」
「…まぁ」
「…いたなら手伝ってくれれば良かったのに…」
「お前ら、…何してたんだ?」
「あぁ、…雪平さんの目にゴミ入っちゃって、雪平さん無器用で取れないんでとってました…」
「…馬鹿かお前は。ったく…一言余計なんだよ」
そう言えば、雪平の目が赤かった様な……。
雪平は、捜査会議に向かう山路の後を一人ついていった。
暗い部屋に戻った安藤は、辺りを片付けている。
「…っ何だよ、…もう少しだったのに……」
吐き捨てる様に呟いた安藤が会議室へと歩いていくのを見届け、俺は、好奇心から二人がいた部屋に入った。
そういう青い臭いはしないが……何か、袋に入ったものが落ちている。
「…ゴム?」
安藤のものか、雪平のものか…もしくは、全く違う他の刑事のものか分からないが…一体…?
…。その前に、俺はトイレへと駆け込んだ。