――返事はイエスでいい。  
そんな口癖を持つ張本漲はいつに至っても妹想いな姉である。  
その妹想いな姉は、今柿崎柿のものを加えている。  
 
――ほんの30分ほどまえ、柿は張本漲に呼び出され、書物庫ともミニ図書館ともつかないような部屋に佇んでいた。  
「私はね柿崎くん。帳のためならこの命すら惜しまないわ。わかるわね、私には妹を守らなければならない義務があるの」  
凛とした態度で、張本漲はそう放つ。  
柿は、まともに取り合う様子こそ見せないものの、逆らうことの恐ろしさを知っているのでなにも言わない。  
「もしキミと帳が、性行為に及んだときに万が一キミに不備があっては困る。だから私が検査すると言っているのだ。もちろん返事はイエスでいい」  
柿は意を汲めないといった様相で、立ちすくんでいる。  
「どうしたのだ、早くズボンをおろさないか。気にするな、なにも恥じることはない、帳の彼氏ならば私の弟分のようなものだ」  
今しれっとひどいことを言わなかったかと、柿は口の中でつぶやいた。  
いつまでも微動だにしない柿崎に痺れを切らしたのか、あきれ口調で、  
「仕方ない、脱がせてやるからここに座れ」  
と、漲は言って今の今まで座っていた豪奢な椅子を柿に譲った。  
張本漲は手慣れているのか、さすがというべきか苦もなく柿のズボンと下着を踝までずりさげた。  
あらわになった柿のものを見て、張本漲が唾を飲む音が聞こえた。  
「ふむ。キミも男だね。だが、勃起したからといっていけるとは限らないからな」  
張本漲はそう言うやいなや、柿のものを手に取り握った。  
そしてそのまま、ドリンクを振るように柿のものを扱く。  
「どうだ、いけるのか?」  
張本漲は柿のものを扱きながら上目遣いで、詰問口調で質す。  
柿崎はどう取り合うべきか困惑し、「まあそうですね、うまければいくんじゃないですかね」などととりあえず言ってのける。  
張本漲はにこりと頬を綻ばし、「返事はイエスでいいと言っただろう」と笑顔で言った。  
しかし、言ったはいいものの、張本漲は動きを止めて柿のものを正視していた。  
「ど…どうかしましたか?」と、不穏な空気を感じた柿は恐る恐る口に出してみた。  
「いや、そのなんだ……。別に君のためにやるわけではないのだ。あくまでも私は妹のためを想い、このようないかがわしい行為に及んでいるのだ。勘違いするなよ、い…妹のためだ」  
なにを言っているのかよくわからないという様子で、柿はその台詞を耳に留めた。  
「お、男はこういうのが好きなんだろう」  
少し顔を赤らめて、張本漲はためらいながらも、柿のものを舌で舐め始めた。  
「――っ〜」  
ざらざらとした舌の触感が柿の性の部分をかき立てる。  
ねっとりとして仄かな温かみを有する唾液と、ざらざらとした猫のような舌のコンビネーションに、思わず情けない声を出してしまった。  
 
「――っ〜」  
ざらざらとした舌のそんな柿の狼狽えたようなくぐもった声を聞いて、張本漲はこれと言わんばかりに、柿のものを舐めあげる。  
右手で柿の棒を握りしめ、あいた左手は睾丸や肛門のあたりを指先でなで回している。  
舌は睾丸あたりからスタートして、徐々に亀頭に向けてゆっくりと進んでいく。  
頂にたどり着くという寸前で、またすぐに舌を根元まで戻し再スタートさせる。  
そればかりではなく棒を横から舐め回したり、裏筋を丹念に唾液を塗りたくるように何度も舌を行き来させた。  
いくほどかそれを繰り返した後、舌で亀頭を押しつけるように舐める。  
鈴口のあたりを舌先でつついたりしながら、先の口からでてきた柿の先走り液を掬いとる。  
「すごい匂いと味だな」  
張本漲は苦虫を噛み潰したような顔でそう言う。  
舌だけでは飽きたらず、右手で再度上下運動を始めた。  
しごかれる快感と、舌で亀頭をなめられカウパーを掬われる快感の波が一気に押し寄せてきた。  
柿の顔はさど快感に埋もれているのだろう、下から柿を見上げる張本漲はにやりと目尻と口元をつり上げている。  
それは小悪魔のしるしであったのか、前触れもためらいもなく、張本漲は柿のものを口いっぱいに頬張った。  
あの張本漲が、一人の男の性器を貪るようにくわえているのだ。フェラチオに興奮しない男はそうはいないだろう。  
水よりも粘着性を帯びた唾液が、柿のものをくわえて上下に動かす度に、いやらしい音を立てて書斎の中に響き渡る。  
じゅぶっじゅぶっ、と音が水を含んでいるのが、聴覚と敏感になった触覚が感じ取る。  
両の掌で包み込むように柿のペニスを握り、窄めた唇と濡れきった咥内、そして一層に快感を伴う猫の舌。  
それらすべてが絶妙に絡まり、音は心地よくシンフォニーを奏でる。  
両の手は時折、頭の上下運動に合わせて、同じように動く。  
棒を啜られ、吸われながらも、機敏な舌は口腔内を棒をいじくるために動き回る。  
「張本さん……っ、い、いきそうで…す」  
柿は事実、快楽の波に押し負けていた。  
張本漲は棒を口から離すと、「いいわよ、だしなさいよ汚い精液を」といい、右手で荒々しくも素早くしごき始めた。  
摩擦する音が、快楽を連れて聞こえてくるようだ。  
柿は高鳴る鼓動が張本漲にも聞こえてしまうのではないかと心配するほどに、高ぶっていた。  
さらに張本はしゃぶってはしごきしゃぶってはしごき、を繰り返し、違う快感を届けた。  
 
それは、二回三回と繰り返された。  
四回目で奥までくわえられ、舌を土台にすすり上げ、口から柿のものを出した瞬間に、白濁としたものが迸った。  
柿自身すら信じがたいほどに勢いよく飛び散り、さらにはたまりきった性欲が大量の精液を外に走らせた。  
張本漲は「あ……」と声にならない声を出し、目を瞑ってその大量の白色を受け止める。  
顔にべっとりと飛びかかり、鼻梁や頬を辿って口元に流れ、スカートや太ももに落ち着く。  
三度か四度ほど柿のペニスは脈動し、張本漲が白濁にまみれたあたりに、流動はおさまった。  
張本漲は目を開け、口元についた男の汁を舌なめずりの形をとり、掬いとった。  
こくん、と可愛らしい嚥下の音の後、やはりというべきか、苦渋に満ちた顔になった。  
柿は試しと言ったように、自らのペニスを張本漲の眼前に差し出す。  
張本漲はえもいわずに、柿のものをすすり上げ始めた。  
掃除のようなものである。  
柿のものを丹念に舌で拭き終えた漲は、顔や太ももに降りかかった白の暴力を、指ですくい掌に集めてから、覚悟を決めたような顔つきで口に含んだ。  
「男はこういうのも好きなんだろう」  
と含みのある声で言う。  
張本漲は顔を斜めにし、力を抜いたような表情で、口元から精液をこぼし始めた。  
一滴垂れては、顔を歪め、二滴目を垂らした後で、一気にそれを飲み干した。  
「ひどい味だな、それにこの匂い。臭いなんて言うものじゃないな。みろ、手やら脚やら制服がべっとりだ、ああ髪の毛にまでだ」  
にべもなく張本漲は舌鋒を柿に向ける。  
「いけるのならば、帳との性行為に問題ないな。柿崎くんよ、用は済んだから帰りなさい」  
柿はズボンと下着を履き直し、なにかを言いたそうな、しかし逆らうべきでないと判断したようで、黙って書斎を出た。  
柿崎は最後に、張本漲が地面に垂れた白濁を、掬いとり口に運ぼうとしたのを目にした。  
それをどうしたかまでは、柿崎には知る由もない。  
 

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