白面との最後の戦いで力を使い果たしたとらの身体が光の渦となり霧散する。  
「とらあぁぁっ……!!」  
 悲痛な絶叫、そしてとらと同じように字伏へとその存在を化そうとする中で、  
うしおはその声を聞いたような気がした。  
『ちょっくらマユコのところに行ってくらァ』  
 それに対しああそうだよな、と呟く。  
「俺も、とらになったら麻子のところへ行こうか、そして……」  
 帯を成した光の渦はうしおから遠ざかって行った。  
 
 ヒュゥゥゥ……カアアァァンッ……!!  
「きゃっ……!」  
 光の帯が目にも止まらぬ速さで真由子に衝突する。  
「真由子さん!」「お姉ちゃんっ!!」  
 状況を把握できない周囲のキリオや須磨子から悲鳴があがる。  
「とら殿が真由子ちゃんへの別れの挨拶に来たのだな…」  
 場で唯一状況を察知した紫暮の言葉に須磨子は涙し、キリオは入り込めない  
2人の間の固い絆に、強くこぶしを握り締めた。  
「お姉ちゃん……」  
 真由子を包み込む強い輝きを見つめるキリオの心情は複雑だった。  
 
「とらちゃん……?」  
 突然の強烈な衝撃に驚き思わず目を閉じた真由子であったが、  
その光の渦の中によく知った暖かさを感じてゆっくりとまぶたを開く。  
 そして薄暗い周囲をきょろきょろと見回すと、暗がりの中にとらの姿を見つける。  
『マユコ、お前を喰いにきたぞ』  
 闇の中のとらが重々しい声で口を開く。  
「うん…!全部、終わったんだね。とらちゃん……ご苦労様」  
 すかさず抱きついて、頬擦りしてくる真由子にとらが苦笑する。  
『相変わらず話を聞かねえ女だな、わしはおめえを喰いにきたと……』  
 言いかけたとらの鼻先に軽くキスをした真由子が離れる。  
 
「うん、おいしく食べてね」  
 
『お、おい……』  
 真由子がとらの言葉を無視してくるくると回り、ちょこんとポーズをとる。  
「とらちゃん、私、おいしそう?」  
『そうだな、極上のでざぁとだ』  
「うれしいっ……」  
 再びくるっと回転した真由子の服装が、  
制服から2人が出会った時の清楚な白いブラウスとスカートに変化する。  
 少女が一つ回るたびその服装が変わり、それに合わせて  
周りの風景も変わっていった。  
 2人の出会ったデパートの屋上、数々の思い出、そこで育った絆、その一つ一つを  
刻み込むように、再び忘れることのないようにと回り続ける。  
「どう、とらちゃん?」  
「似合ってるかなぁ…?」  
 一つ一つ聞く真由子に対し、  
『うまそうだぜ』  
『ああ…』  
と相槌を打つとら。  
 その度に真由子も嬉しそうにはしゃぎ、その動きもますます軽やかになっていく。  
 
 最後に、2人の繋がりを決定的に深めたなゆらとたどかの一件のおりに着た、  
純白のウエディングドレス姿でとらを見つめると、はにかんだ微笑をみせる。  
「とらちゃん、今、あのときの誓いを……ね?」  
『わかってるぜ、マユコ』  
 少女の身体からフワッという風を残しドレスが離れると、  
光の幻想の空間で大小の2つの影が混ざり合い、闇の中に溶け合っていった。   
 
「ん…ふぅ、ん……くすぐったいよ、とらちゃん」  
 一糸まとわぬ姿になった真由子が、その裸身をとらの大きな舌で舐められ声を洩らす。  
『味見ってやつよ』  
「ふぁ…私、お、おいしい……?」  
『でざぁとだからな、うめえに決まってらァ』  
 舌で舐めあげながら、自由自在に動く髪の毛で全身を優しく撫でまわす。  
「ひゃっ…!くぅ、あ、はぁ……」  
 白く滑らかな下腹部から細くて繊細な首筋まで舐めあげられ、  
まだ未熟だが形のいい乳房をこねくりまわされ、  
柔らかい髪の毛で脇腹や内腿など全身の敏感な部分を撫でられ、  
ほんのりとピンク色に上気した裸身にとらの熱く荒い吐息を感じるたび、真由子の裸体が  
ビクビクと白魚のように跳ねあがる。  
 
「と、とらちゃん……ぅんっ!わ、私……」  
『おい、マユコ、前にうしおの嫁になりてえって言ったな?』  
「え?……う、うん」  
『今はどうだよ、まだうしおと……』  
 真由子が強く抱きつき、とらの言葉をさえぎる。  
 しばしの間続く、獣、いや妖と美少女の熱く甘い抱擁。  
 
「もう、ずうっと前から、とらちゃんが大好きだよ…!私は、とらちゃんが……」  
 抱きついて子供みたいに泣きじゃくる真由子の裸身を、  
とらの髪の毛が蚕の繭のように、優しく包み込んだ。  
 
「暖かい……」  
 自身を包み込むとらの髪の毛を指先で櫛取りながら真由子が呟く。  
『おめえなぁ……あの時は寒そうにしてたじゃねえか』  
「うふふっ、そうだね。あの後、私、風邪引いちゃってね……」  
 
 真由子が嬉しそうに話続ける思い出を、とらもまた、静かに聞いている。  
「それに、とらちゃんが優しいから……」  
 童話や聖書の挿絵に出てくる、綿布にくるまれた赤ん坊を想起させる  
天使のような柔らかな笑みを見せる。  
『な、なんだとォ……?』  
 
「え、どうしたの、とらちゃん?」  
 突然顔を伏せ、わなわなと震えだしたとらに、不安げに尋ねる。  
『わしが、わしが優しいだと……!?』  
「うん!とらちゃんはいっつも……」  
『妖のわしが、優しいわけねえだろうが!』  
 裸身を包み込んでいた髪の毛を解き、その細い足を左右にガバッと広げる。  
「ひゃっ…や、やぁん……!?」  
 乙女の秘密の場所をとらの眼前に晒され、真由子が可愛らしく悲鳴をあげる。  
「と、とらちゃん、こんな格好…恥ずかしいよぉ……!」  
 羞恥心に顔を真っ赤にして首をいやいやと左右に振る。  
『おめえの素肌なんて、何度見たことかよ。いまさら恥ずかしがることじゃねえだろ!』  
 曝け出された部分を隠そうとして、ばたばたともがく真由子に冷たく言い放つ。  
 
「で、でもやっぱりこんな……」  
 なおも狼狽し、半泣き顔で悪あがきを続ける真由子を見て、  
とらはちょっとしたイタズラを思いついた。  
 
『おめえには、いっつも振り回されっぱなしだからな……仕返しをしてやるぜ』  
 そう言うと、晒されている股間を隠そうと宙を掻く腕をガッと掴む。  
『へえ…こんなふうになってんのか、マユコ、おめえもわしと同じく獣だなア。  
ここには、こんなに毛がびっしり生えてらァ!』  
 決して濃いとはいえず、むしろその年齢にしては薄すぎるとも  
いえる茂みを指してわざと大きな声で言う。  
 そして真由子は、その言葉責めに対しても顔をますます朱色に染めて抵抗を続ける。  
 
『さぁて、このでざぁとの内側ってのはどうなってんのかな?』  
 少女の神秘の部分を隠そうと未だ頑なに閉じたスリットを、左右にくつろげる。  
くぱぁっ……。  
「いやぁ……」  
 薄桃色の内面を曝けだされ、その内側に溜まっていた淫らな果汁が  
とろとろと零れ出したのを感じて、真由子が小さく声を漏らした。  
『うまそうだぜ、でざぁとってのはやっぱりこう汁っけがなきゃな』  
 じゅるりと舌を鳴らし、ピンクのスリットの内側へとそれを滑り込ませる。  
「ひゃっ…ふぁぁ……!」  
 先ほどから放置されて敏感になり、愛液を滴らせている部分を刺激され、  
真由子が抑えきれないで嬌声をあげる。  
「と、とらちゃんの、えっちぃ……!」  
 その最後の抵抗にとらが生理的反応を持って答えを示す。  
「き、きゃっ……と、とらちゃん、そ、それ……!?」  
『ふん、面白くねえが、わしにも人間みたいな部分が少〜し、残っていたらしいなア』  
 
 真っ赤に火照った顔を両手で覆う真由子の視線の先には、  
およそ男性器としか想像できぬ剛直が女の身体を求め、そそり立っていた。  
 
「あ、あ、あ……?」  
 真由子がとらの股間のものを大きな目を驚愕でますます大きく見開いて見つめる。  
(ひひ、ば〜か。こんなこと、わしの能力を使えば幾らでもできるのになぁ……)  
 心の中で楽しそうにほくそえむと、さらに弄るようにスリットへと擦りつける。  
ちゅくっ、ちゅくっ……。  
「んくっ、ふぁあ……」  
 狭い縦筋を押し開き肉棒の腹を前後させると、幼く未発達な陰唇もまた  
それを求めるように絡みつき、淫らな水音を奏でる。  
『どうだ、怖えかよ?』  
「う、ううん、ちょっとびっくりしたけど……嬉しいよ」  
 
『う、嬉しいだぁっ!?』  
 落ち着きを取り戻したらしい真由子の答えに、とらがすっとんきょうな声をあげた。  
「うんっ!だって、これでとらちゃんと1つになれるでしょう?」  
 今は動きを止めて自分の秘部と触れ合っている剛直をいとおしそうに撫でる。  
「わたし、とらちゃんやうしお君と──」  
『おい、ちょっと待て……!』  
 言いかけた口を塞がれ、何が起こったか理解できずに  
目をぱちくりとさせる真由子の目尻から、溜まっていた涙がぽろぽろと零れ落ちる。  
『マユコ、今、うしおとか言ったなぁ……?』  
 顔をずんと近づけ、脅すように迫るとら。  
 
「ぷはぁっ……ご、ゴメンね、やっぱり私、ちょっとだけ……」  
 押さえつけていた手から開放された真由子が申し訳なさそうに誤る。  
『いいさ、奴のことはわしが忘れさせてやる。マユコ、いいかよ?』  
「うん、とらちゃん、お願い……」  
 とらが真由子のか細い腰を引き寄せると、真由子もまた、  
剛直を迎え入れるようにゆっくりと腰を落としていった。  
 
 
ずぬぬっ…。  
 真由子のか細い裸身を貫かんとするかのように、幼い割れ目を押し開いて  
とらのものが少しずつ内部へと埋没してゆく。  
「んっ、んっ、とらちゃん……」  
 異物が自身の中へと侵入してくる感覚に真由子が身を硬くして身構える。  
 その無意識の未知の体験への恐怖の反応が、それ以上の剛直の  
侵入を防ごうと悪あがきをみせる。  
『おいおいっ、わしたちは幻みたいなもんなんだから……と、言っても無駄みてえだな』  
「はっ……ひゅうっ、はぅ、んんっ……!」  
 なんとかその小さい身体でとらを受け入れようと奮戦する真由子だが、  
必要以上に気張りすぎているのか、それより剛直が入っていくことはなかった。  
 
『まったく、世話のやけるやつだぜ…』  
 大きな舌で真由子の裸身をひと舐めすると、その緊張を解こうと  
髪の毛で少女の全身を刺激し始める。  
「は、あ…はぁぁ……んっ……!」  
 脇腹や内腿などを柔らかいとらの毛で撫でられ艶かしいため息を洩らす。  
「ひゃぅうん……!?あ、あ、くふぅぅっ……!」  
 毛先で器用に女の子にとって最も敏感なクリトリスを刺激されると、その  
華奢な身体がビクビクと跳ねる。  
 小豆を覆っていた包皮も剥かれ、性感帯の塊となったそれをこねくりまわし  
同時に突っつくようにして刺激を与え続ける。  
 
「と、とらちゃん…きゃふっ……こんな、わたし、おかしくなっちゃ……」  
 裸身がビクっと跳ね、真由子の陰唇が淫猥に蠢くたび、先端のみを咥え込んだ  
結合部からとくとくと潤滑液が溢れ、とらのものを淫液で浸していく。  
「や…は……!あ、ああああああぁぁぁぁっ……!」  
 不意に後方の穴をも弄られ軽く絶頂に達する真由子。  
 その身体が快感に仰け反り、幾度かの痙攣を見せたあと、ふッと全身から力が抜けた。  
 
ぬきゅっ!ぬくくッ……!  
 締め付けの緩んだ一瞬の隙を突いて、綺麗なピンク色の花びらに肉の杭が打ち込まれる。  
「んぅ、、あ、あぁ……ぐ、んんっ……!イ、痛ッ……!!」  
『きたな、我慢しろよォマユコ!』  
 折れそうなくらい細い腰をがしッと掴むと一気に引き寄せる。  
「はんっ…!くぐ、あ、あああぁぁぁっ……!!」  
 灼熱の剛直は狭い膣内を最奥まで貫くと、その動きを止めた。  
 
「ふぁっ…はっ…んくぅ…はぁっ……」  
 虚ろな瞳でで呼吸を落ち着けようと必死に努力する真由子の頬に  
とらが顔を寄せ、その耳元に囁く。  
『マユコ、わしとひとつになったおめえは自由だ。好きなように動いてみな』  
「あ、あ……とらちゃん……?」  
 落ちついて正気を取り戻した真由子が、幻の空間でのこととはいえ、  
破瓜の涙を頬につたわせながら繋がったままのとらに抱きつき、強い抱擁をする。  
「ごめんねえ……わ、わたし、自分のことばっかりで……」  
『いいってことさ、それよりほれ!』  
 とらが真由子に動けと促す。  
「うん、気持ちよくしてあげるね……!」  
 
 腰をゆっくりとグラインドさせて引き抜くと、結合部から一筋の鮮血が  
つうっと肉棒を伝い落ちる。  
『演出過剰なやっちゃな……』  
 ここが現実ではなく、妖力と霊力が創りだす幻想の空間である以上、それが本物  
の血ではないと悟ったとらが呟く。  
「うふふっ、わかった? でもわたし、やっぱりとらちゃんとが初めてだし  
雰囲気を出したくて……」  
 真由子はイタズラっぽくチロっと舌を見せると、その尊い行為を  
刻み込むようにゆっくりと動き出した。  
 
「う…んふっ、と、とらちゃん……はぅん!」  
 真由子が腰を動かすのに合わせ、とらの髪の毛が全身をさわさわと撫でる。  
ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ……。  
 繋がっている2人の距離が離れ、再び零になるたび  
その結合部からは少女の愛液が溢れ、淫靡な音色を奏でる。  
「ん、んっ…!きゃうっ……あ、あっ!」  
 刺激の強さに真由子が動きを止めるたび、とらが結合部の上にある  
敏感な突起を弄んで絶え間ない行為を要求する。  
 真由子のそこは始めての愛の繋がりにすっかりほころび、さきほどより大きさと  
硬さを増したとらの剛直をその小さな秘処に出入りさせるのにもうなんの抵抗も  
ためらいもなかった。  
 
「はぁ……や、やぅん!? そんなところ……!」  
 尻のすぼまりに刺激を受けて真由子が間の抜けた悲鳴をあげる。  
『マユコ、おめえはこっちも凄く感じるみたいだなァ。まったく、助平な女よ』  
「んふっ…そ、そんなこと……」  
 否定したくても、現に感じている自分にそれができず、  
真由子の顔は羞恥心で耳まで真っ赤に染まった。  
 
にゅるんっ!  
「ひゃあああぁぁぁっ……!?」  
 とらの身体からもう一本、細い肉棒が屹立し真由子の菊の蕾に侵入する。  
「や、やぁ……こ、こんなの、動け、ないよぉ……」  
 さすがに敏感になりすぎた性感が、前後の穴を同時に貫かれる感覚に  
限界を超えた快楽を感じストップをかける。  
『じゃあ、わしが動かしてやるよ』  
 とらは少女を前後から貫いたまま、それを大きくグラインドさせ始めた。  
 
ぬっちゅ、ぬっちゅ、ぬっちゅ……。  
 前後の穴を肉杭が出入りするたびに粘質な音が大きく響き渡り、  
さすがの真由子もその恥ずかしさにとらの胸に顔を埋めるしかなかった。  
「……ふぁ……くぅ……んくっ……」  
 快感に真っ白になり擦り切れそうな意識の中で、洩れる嬌声を  
抑えようと必死に歯を食いしばる。  
 
『マユコ、なんでもっと声をださねえ?』  
 動きを止めてとらが聞く。  
「だ、だって……んふっ、お尻の穴まで、こんなの恥かしいよぉ……」  
『ばァ〜か、お前が恥かしいってタマかよ! それに、わしが妖ならおめえはなんだ?』  
「…………?」  
『獣だろうが、だったらもっと鳴きな!』  
 とらは真由子に覆い被さるようにして組み敷くと、より激しく剛直を膣奥へと打ちつける。  
 
ちゅぱん!ちゅぱん!ちゅぱん!  
「あっ、あっ、あっ、あっ、ああああぁぁぁぁっ……!」  
 かろうじて声が洩れるのを抑えていた手が外れ、すがる場所をもなくした  
真由子が大きく声をあげ、嬌声のスタッカートを奏でる。  
 真由子の快感はあっという間に高まり、限界を超えて立て続けの絶頂を迎えた。  
 
「…………? と、とら、ちゃん……!?」  
 霞みが掛かったような意識の中で真由子はとらと、色濃い肌の男の影が  
重なるのが見え驚きの声をあげた。  
 
『どうした?』  
 様子のおかしい真由子にとらが聞く。  
「それが、あんっ…とらちゃんの人間だったときの姿なの……?」  
 質問に逆に聞き返す真由子。  
 もうすでにとらの姿は半分薄れ、男──シャガクシャの姿と完全に重なっていた。  
『ああ、そうだ…名を、シャガクシャという』  
「しゃがくしゃ? んふっ、変わった名前だね……でも、名前が2つもあったら  
なんて呼んでいいか、困っちゃうね……」  
『いつものとおり、とら、でいい』  
 そう言うと真由子と濃厚な、一度きりの熱いキスと抱擁を交わす  
シャガクシャの姿で、だ。  
「とら、ちゃん…とらちゃん……!」  
 真由子も口内に侵入してくる舌に積極的に自らの舌を絡ませ、  
シャガクシャと幾度も唾液の交換を繰り返した。  
 
「はんっ、あぅ…はああぁぁん! あっ、ああっ……!」  
 真由子とシャガクシャ、それと重なるようにとら。  
 3つの影が一体となり、まるでひとつの生き物のように光と影の幻想の中で踊りつづける。  
 
じゅぱん!じゅぱん!じゅぱん!じゅぱん!  
「ひゃうん、とらちゃん! とらちゃん!あ、ああああぁぁぁ……!!」  
 真由子の膣壁が、その可愛らしい顔からは想像できない淫猥な動きをみせ  
まるで別の生き物のようにシャガクシャのものをきつく締め付ける。  
『う、おお……真由子、いくぞ!』  
 シャガクシャは全ての精を吸い取ろうとするかのような少女の膣奥の  
子宮へと、己の分身たる種子を開放した。  
 
 全身を包み込む心地よい気だるさと体内へと放たれた精子の暖かさを  
感じながら真由子は幸せな眠りの闇へと落ちていった。  
 
 
「う…、ん……とら、ちゃん? おはよう……」  
 目を覚ました真由子の視界に、覗き込んでいるとらの姿が映る。  
『なにがおはようだ、のん気にぐうぐう寝やがって!』  
「えへへ……」  
 照れ笑いを浮べる真由子。  
『ほれ、ほっぺたによだれの跡がついてるぜ……』  
 
すかッ。  
 伸ばした手が、触れるはずのものを素通りして通り抜ける。  
「え……?」  
 真由子がなにが起こったか分からずに呆けた表情を見せる。  
『いよいよ、わしも時間だな…』  
 そこにはもうシャガクシャの影はなく、ぼやけたとらの輪郭だけが  
うっすらと弱弱しい光を放っていた。  
 
「とらちゃん! とらちゃん! いや、いやぁ…やっと……」  
 何度も何度も細い腕でとらに触れようとするが、そのたびに虚しく空を抱くだけだった。  
 半狂乱で泣きじゃくる真由子の頭にポンと手を乗せるしぐさをすると、  
真由子もまた頬擦りをするようにとらの半透明の手にすがってくる。  
「触れることはできなくても、暖かい……やっぱり、人間には戻れなかったんだね……」  
『まぁ、分かってはいたがな…マユコ………』  
「なぁに…とらちゃん?」  
『はんばっか、うまかったぜ…』  
「わたしは、食べてくれないの?」  
『うしおにも同じこと言ったが……もう…喰ったさ……真由子、またな……!』  
「とらちゃ───ん!!」  
 悲痛な悲鳴をあげる真由子を置き去りにして、光の渦の中にとらの存在が飲み込まれていった。  
 
 
「お姉ちゃんっ!」  
 真由子の身体が一層強い光を放つのを見たキリオがその側へ  
行こうとするのを紫暮が制止する。  
「どうやら真由子ちゃんが帰ってきたようだ」  
 
「と、ら…ちゃん……」  
 現実世界へと意識を戻した真由子が、失ってしまった大切な者の名前を呟く。  
 自分を包み込む暖かい光が弱く、小さくなっていくのを感じ、強い喪失感が真由子を襲った。  
 残った光は最後に真由子の下腹部の中に納まるようにして消えた。  
「あ……」  
 とらの最後の言葉を思い出して溢れた涙がポロポロと頬を伝う。  
 
「おねえちゃん、大丈夫!?」  
 駆け寄ったキリオが細い肩を震わせて涙を流しつづける真由子の手を優しくその手に抱いた。  
 2度と離さないという決心をその胸に秘めて。  
 
『真由子、またな………!』  
 とらの笑顔と、その言葉の意味するところ───  
 
 
 
 白面の破壊の爪あとを微塵とすら感じさせぬほどに復興した街中を  
若い父親と母親、2、3歳の幼い男の子が仲良く手をつないで歩いている。  
「なにが食べたい?」  
 年若い母親が子供に優しく尋ねる。  
「はんばっか! てろやけばっかが食べたいー」  
 無邪気な様子で跳ねながら幼子が答える。  
「テリヤキバーガーよ、いい? て・り・や・き」  
「てろやけばっか、てろやけばっか!」  
 その様子を見た父親がぷッと噴出すと、釣られて母親や子供にも  
楽しそうな笑い声が広がった。  
 その家族連れは幸せそうだった───その様子を形容する言葉はそれで十分であろう。  
 

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