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蒼月潮は焦っていた。何を焦っているかと言えば、「ナニ」の事に関してである。
白面との死闘から―そして、とらが居なくなってから―もう3年になる。
潮は高校3年生になっていた。
当然この年齢ともなると、周囲には既に「経験済み」の者も増えて来る。
潮と同じ高校に進学し、昔からの馴染みの仲である厚池や横尾もそんな中の1人で、
この年代の男と言うのは、「経験者は偉い」と言う女性には理解不可能で在ろう心情を抱くので、
彼等は自慢を含めてその事を潮に話す。
「なぁ、潮。御前まだ中村さんとヤってないのかよ?」
「あんな可愛い娘掴まえといて、勿体無えなぁ…」
麻子も又、潮と同じく、都立みかど高校に進学し、
2人は何時しか公認のカップルとして周囲に認められていた。
「だぁ~!もう、俺は『そんな事』強要したりしねえの!」
とは言え、焦っているのは事実だった。とは言っても、
それにはこんな風に周囲から言われる事よりも大きな理由が在った。
「進路」である。もう、今年の夏迄には進路を決定しなければならない。
麻子は成績もそれなりに良かったし、
そうで無くても中学から続けて来た短距離の推薦で大学に進学出来るだろう。
一方潮はと言うと、高校に受験の時点で―麻子には口が裂けても言えなかったが―
麻子の受験校を聞いてから、死ぬ程の努力をして、何とか同じ高校に進学出来たのだ。
潮の意向としては、美大に進学したい…が、悲しい事に彼の絵画の腕は、
中学時代から大して進歩が無かった。
美大に落ちた場合、父・紫暮と約束していた事がある。
それは…自宅の住職を継ぐ為の光覇明宗の仏道修行。
先代の獣の槍伝承候補者であり、法力、体術共に最強の紫暮、先代のお役目であった須磨子。
その2人の息子であり、元獣の槍の伝承者であった潮には、父のみならず、
本山からの期待も大きかった。
「ヤバイ…仏道修行なんて絶対に嫌だ。でも可能性は無い訳では無い
(と言うか、その可能性が大きい)。そんな事になったら、麻子とは…。」
当然出来ないだろう。そう考える度、潮は益々焦るのだった。
「ねぇ、麻子。潮君とは『まだ』なの?」
「えっ!?何が?」
「だから、『H』よ」
「ちょちょ、ちょ、ちょっと礼子ぉ~!」
「『まだ』なんでしょ?潮君も相当我慢してると思うけどなぁ…
その内、無理矢理押し倒されたりするかもよ~?」
と自分で頷いてみせる礼子。
「私はその…しても良いかなぁって思うんだけど、ほらアイツそう言うのに鈍感じゃん?だから…」
もう麻子の顔面は火を出さんばかりの色だ…
彼女は知らない。その彼がどんなにしたがっているかを
「なぁ、お前等ってお互いの性格が性格だからさ、言い出せないんじゃ無えか?
きっと中村さんもOKなんだと思うぜ」
横尾が唆し、
「そうそう、お前ひょっとしたら、性欲無いのかと思われてるかも…」
厚池が茶化す。ここで潮が慌てるのが、彼等の何時ものパターンだったが、今日の潮は違っていた。
「何だとぉ!よ~し!こうなったらヤってやる!見てろよお前ら!」
「え?見てて良いの?」
…その後、厚池の頭に星が飛んだのは、容易に想像出来る。
その日の放課後の帰り道、「な、なぁ…麻子」
潮は高校に入って以来、彼女を「中村」と呼ぶ事は無くなっていた…が、キスすらまだだ。
「その…さ、今日、横尾達に…」
焦りのと素直になれない余り、セクハラとも取れる彼等との会話を麻子に話す。
話した直後に「しまった」と思って平手打ちを覚悟した…が、その苦い予測は外れた。
15年以上の付き合いで、こんな事が在っただろうか。
「何?したいの?潮も男だもんねぇ。可哀想な潮にこの麻子さんが一肌脱いであげますか」
こちらも素直になれない。こんな2人だから、今迄進展が無かったのも仕方無かろう。
それから二日。待ちに待った日が来た。今日は、白面の者との闘いの在った日。
あの戦い以降毎年、光覇明宗はあの戦い犠牲者の為、僧達が本山に集うのだ。
今日は、両親も照道さんも居ない。
ホテルなんて行ける訳も無い経済状態の潮には、絶好の日だったのだ。
今日は土曜日なので、昼から麻子が来て、一泊する事になっている。
前日から潮は準備に余念が無かった。部屋も片付けたし、コンドームも買った
(以前のコンドームを見て、使用期限と言う物に初めて気付いた)。
心残りは、ベッドが無く、煎餅布団しか用意出来なかった事だが。
麻子も準備はして来た。礼子のお節介で一緒に選んだ勝負用下着、普段は余り熱心で無い化粧。
麻子にとっても初めてなので、良い思い出に出来ればと思っていた。
「先輩」の礼子にも色々と聞いて来たし、準備は納得する迄やった。
家の方には、何も言わなくても、母・麻沙子が
「潮ちゃんも独りで大変だろうから、あんたが行って料理でもしてやんな」
と言ってくれたので、問題は無かった。その後、父・米次が
「飯食わせる代わりに、潮ちゃん食っちまいな」
と要らぬ事を言って、娘に膝蹴りを喰らう羽目になったが。
今、麻子は蒼月家の台所で自分と潮の夕食になる炒飯を作っている。
潮の鼻にも美味そうな匂いが届いている筈だが、普段は「花より団子」、
「色気より食い気」と言ったキャラである潮は、そんな事も気にならない程緊張していた。
麻子も又、今日は何時もと調子が違っていた。蒼月家の台所は、
須磨子が戻って以来、潮と紫暮の男二人暮しの頃よりは、
格段に使い易く手入れされている。
それなのに、何時もの様に料理の腕が揮えない。
彼女の性格に似合わず「何だか、新婚生活のシュミレートみたいね」
と乙女チックな考えすら抱いてしまう。
何時もの倍近い時間を懸けて、潮達の夕食は完成した…
併し、2人共全く米次直伝の炒飯を味わう余裕は無い。
潮に至っては、掻き込み過ぎて咽せながら食べている。
勿論2人共最低限の会話以外は、無言だ。
夕食を済ませ、2人共どちらから切り出すかモジモジしていた。
この2人は意地の塊の様な性格なので、自分から誘うなどと言う事は、
出来れば避けたいのだ。相手もしたがっている事を知っていても。
先に潮が折れた。素直な折れ方では無かったが。
「あ~アレ何処行ったけなぁ…在った在った!…コレ」
昨日から入念に準備した物の一つ、コンドームをさも今見付けたかの様に見せる。
「無いと困るだろ?」
何てムードの無い誘い方だ、と麻子は苦笑したが、そこも又、潮だなと思う。
同じ物が麻子のバッグの中に在る事を、潮は知る事が無かった。
潮の部屋、煎餅布団の上。
「私、キスも初めてなんだからね」潮の為に取っておいた、とは言えない。
「お…おう」
潮は設楽水乃緒とのキス―と呼べるか疑わしいが―を思い出し、
その事を麻子に伝えようかとも思ったが、麻子に悪い気がして辞めた。
3年前、ミノルに嘘を吐いた事で旨くいったのだ。今回も、「言わない方が良い事」
なのだろう。潮も成長したのだ。
鼻がぶつかり合う、不器用でぎこちないキス。唇を触れ合わせるだけのキス。
それでも麻子は充分だった。キスだけで満足な様にも思えた。
「…炒飯の味がするな」
「もう!当たり前でしょ!」
潮の腕の中で麻子は少し不満げなふりをして答える。
潮は、腕の中の麻子の柔らかい事に驚いていた。成り行きで、
女を抱き締めた事は一度や二度では無い。だが、麻子は違うと思っていた。
バリバリのスポーツウーマンで、並の男など相手にならぬ程喧嘩が強い。
そんな麻子も「女」なんだと今更ながらに実感していた。
潮は無言で、麻子の服を脱がせにかかる。麻子も口には出さない物の、
同意の上なので、何も言わない…が、Tシャツを脱がせた時点で潮の手は止まった。
「あれ?どうすんだコレ?」
ブラジャーの外し方が判らずにしどろもどろする。
「礼子、やっばりこいつに勝負下着なんて無駄だったわ」
と心中苦笑いしつつも、麻子は
「馬鹿ねぇ。背中の方、見てみなさいよ」
と言って、後悔した。これでは、自分が脱がせて欲しいと明言している様な物だ。
とは言っても、潮にそんな事を考える余裕は無かったが。
何とかブラジャーを外した潮は、その侭下も脱がせにかかった。しかも、
ズボンとパンツの一気脱がせ。大体、初めての麻子に対して、部屋の照明もその侭だ。
流石に麻子も少しムッとしたが、潮は既に裸だし、こんな情緒の無いSEXも又、
潮らしいと思い、何も言わなかった。
それに麻子は、自分のスタイルには自信が有ったし、潮になら見て貰いたいと思っていたのだから。
「どう?私の裸じっくり見るなんて、もう随分久しぶりでしょ?」
実際には、石喰いの件の時に見はしているのだが、じっくり見るのは、小学生の夏、
麻子と真由子と潮の三人で、潮の家の風呂での行水遊びの時以来だった。
2人の脳裏に、その時の思い出が甦る。麻子は真由子の事を思うと、少し胸が痛んだが、
きっと真由子にそんな事を言ったら怒られるだろう、と思って、頭の片隅に追いやった。
潮は「ばれてたか」と内心思う。あの時は、別に下心なんて無く、
純粋に自分と違う性への好奇心で、麻子と真由子の裸を、彼女達に悟られぬ様、
観察していた積もりだったのだが。
そして、その時との麻子の体の変化に驚いていた。当然と言えば当然なのだが、
「女ってのは本当に化けるんだな」
と思いながら、今の麻子の体を舐める様に見る。
「ちょっと、恥ずかしいから、そんなにジロジロ見ないでよ」
と麻子が言うと、潮は麻子の胸を揉みしだきつつ、吸い付いて来た。
横尾達から教えられた事を実行した迄だが、本能的にも
何と無くそうしたかったから、そうしたのだ。
「フフッ…潮、赤ちゃんみた…!…いね…ひっ!」
少しお姉さんぶってみたかったのだが、それも今迄体験した事の無い感覚に邪魔されてしまう。
麻子に自慰の経験は無かった。したいと思わなかった訳では無いが、潮に悪い様な気がして、
今迄我慢して来たのだ。
「ん~?どうした麻子、気持良いのか?」
と、間崎が「礼子にばれた」と回して来たビデオの真似をしてみるが、何処かぎこちない。
潮は潮で、とても冷静では居られなかった。昔は自分と変わらなかった胸。
潮が麻子の胸の膨らみを意識し始めたのは、小学6年生の時だったか。
タンクトップの隙間から見える微かな膨らみに興奮した覚えは在る。
が、此処迄膨らんで、張りを持つ様になっているとは、想像出来なかった。
胸だけでは無い。腰の括れ、尻の膨らみ…純粋に麻子の身体のラインを美しい、と思えた。
「んん…ねぇ、潮。潮も下、脱いで」
潮は裸にはなっていた物の、まだヒーロババーンの柄のトランクスを履いた侭だった。
麻子は、「何時迄経っても子どもねぇ…」と思ったが、口には出さなかった。
「あ、悪い。麻子ばっかり脱がせちまったな」
ゴソゴソと何やら恥ずかしそうにパンツを脱ぐ潮。
麻子は昔見た時とは形の違う、潮のペニスに目が釘付けになった。
「潮…それ…」
「あぁ、これか?元が皮被ってて、剥けたんだよ。俺のばっか見てないで、麻子のも見せろよ」
と、潮は麻子の股間に張り付く。
「うん。恥ずかしいんだけどなぁ…」
と、麻子は鍛えられた美しさを持つ脚を開いて見せる。
潮も又、麻子同様の驚きを覚えた。昔見た時、その部分は、
「麻子も真由子も前にも尻が付いてんだな。麻子の方が割れ目が長いな」
程度にしか思っていなかった物が、今では薄らと毛に覆われ、中から少し何かがはみ出していたし、
長かった筈のその割れ目自体も、短くなっている気がした。
「えぇと…」潮は無遠慮に、その割れ目を開く。
「麻子のチンポは、まだ皮被った侭なんだな」
「!だからこれは、チン…」潮がニヤニヤして聞いているので、言葉を止められてしまう。
「チン…何だって?」「う…兎に角、これはそんなんじゃ無いの!」
潮が幼い頃は、父が留守にする度、中村家の世話になっていた。
その時、決まって麻沙子や米次は、潮と麻子を一緒に風呂に入る様仕向けた。
或る時、風呂で潮と遊んでいた麻子が、浴槽の縁から飛び込もうと、
脚を開いて、潮の前に件の部分を晒した事が在った。
その時、潮は自分に付いている物ソックリな物を麻子の開いた割れ目の中に見付け、
「あ~!麻子男だったんだ!」とそれを摘んだのだ。勿論麻子は転倒し、
その後潮は窒息寸前迄湯の中に沈められたのだが。
麻子を「男女」と呼んだり、「麻吉」と呼んだりしていたのは、この辺りが理由でもある。
「悪い悪い。いや、知ってるって。あの頃は若かったんだよ」
麻子も経験の在る友達―大抵は礼子だが―から、潮も横尾達の話や間崎経由の裏ビデオで、
その部分―クリトリス―がどの様な場所かは知っていた。
「こっちも気持ち良くしてやる…触るぜ」と、その部分に触れる。
既に其処は乳首同様勃起して膨らんでいたが、
それにしても活発な彼女の男性部分を象徴する様に大き目だった。
包皮の上から優しく撫でてみる。大き目のクリトリスは、
潮が自分の物を触るのと然程変わらない要領で扱う事が出来た。
だが、彼らしくもなく、どうにも遠慮して弱い刺激しか与えない。
麻子はそれが物足りず、自らその部分を彼の指に押し付けた。
潮も長い付き合いで、麻子が何をして欲しいかは理解出来た。
「此処、剥いた方が良いか?」
そんな事を聞かれても、素直に「はい」なんて言える訳も無い。
麻子はその部分に触れた事が無かったので、剥いた状態を想像する事も出来ず、
「潮の思う通りにしてみて」とだけ言った。
潮はその突起に指を掛けると、ビデオで見た通りにその包皮を引っ張り上げてみた。
「っ痛!」
「!悪い、痛かったか?」潮はどうすれば言いか判らず、オロオロする。
「生兵法は大怪我の元」…そんな言葉が思い浮かんだが、
「ううん。もう平気。でも、何だかスースーする…ねぇ、もう触ってみて」
ホッとした潮は、彼女の股間を潤す愛液を付け、その部分に塗りたくった。
「ヒアッ!あ~!あぁぁぁ!」潮はその声に驚いて、愛撫の手を止める。
「気持良いか?」
「うん…でも、ちょっと刺激が強過ぎる感じ」
麻子も段々素直になり、潮にそうして欲しいか伝えられる様になった様だ。
「それじゃあ、舐めてみようか?」「う~ん、それじゃ、舐めあいこしよ!」
彼等は、まだクンニ、フェラ、69の様な言葉は知っていても、それが今、
自分達のしている事だとは知らない程に純粋だった。
麻子は、潮の物を見て、素直に気持ち良くしてあげたいと思った。今迄潮は不慣れながらも頑張ってくれたのだから。
一方、潮は、麻子の小陰唇に夢中だった。「へぇ~」とか「伸びるなぁ」とかブツブツ言いながら、それで遊んでいる。
「もう!ちゃんとしてよね…あ、でも其処も気持良いかも」
「御免、御免」と謝りつつも、麻子を気持良くしてやれる場所を新たに発見出来た事は嬉しかった。
麻子は必死で潮のペニスを舐めるが、元々クリトリスとペニスとでは感度が違う。
潮が麻子のクリトリスや小陰唇を愛撫していると、直ぐにフェラは中断せざるを得なかった。
潮は、自分の物は当然日常的に触っていた事も在って、まだ性感に慣れていない麻子を絶頂に導くのは、
麻子が潮にそうするよりも容易だった。麻子のその剥かれたクリトリスや小陰唇は、まだ洗い慣れていない所為か、
白い恥垢が付着していたが、彼女の物だと考えると、舐める事にそれ程抵抗は覚えなかった。
それから程無くして…
「あぁっ!駄目!何か来る!あぁ~!」と叫んで、麻子は果てた。
「なぁ、もう…良いかな?」
潮も麻子の―たどたどしくは在ったが―必死の愛撫で、
然も中途半端な処でそれを止められた事も在って、かなり興奮していた。
「うん。そうっと、優しくね」
言わなくても、今迄の愛撫からして、潮は気を遣ってくれるだろう、そう思っていたが、
それが嬉しくて、言葉に出してみたかったのだ。
「お…おう」
潮はとゴムを着ける。この部分にはさっき迄のぎこちなさが無い。
「きっと昨日練習したんだ」と内心麻子は微笑ましく思った。
「じゃ、いくぜ」「うん…来て」
潮は麻子の割れ目を広げて見、場所を確認して挿れようとするも、中々入らない。
「あれっ?あれっ?」「もう!」
焦れったくなった麻子は、自分の指でその割れ目を広げて見せる。
そのポーズの卑猥さに潮は更に興奮して、理性を失いかけていた。
「麻子ォォッ!!」潮が麻子に飛び掛る。その時、偶然にも潮のペニスは麻子の膣に飲み込まれていった。
元々、体を鍛えている麻子の締め付けは強い。それが潮の性感を更に増す事となった。
「ちょ…潮待って!もっとゆっくり!」麻子に痛みは無いが、快感も無い。
「オォォォ!!」既に潮の目は、明後日の方向を向き、歯を食い縛っている。潮が理性を無くした時の表情だ。
「麻子ッ!いくぞっ!!」と、当然の事ながら、程無くして潮は果てた。
冷静になった潮が謝っている。
「いや、本当に悪かった!何か、折れ独りで良くなっちゃったみたいで」
「ううん、潮は頑張ってくれたもん。それに、こう言う事出来るのは、
今日だけじゃ無いし、今日だってまだまだ時間が在るんだから」
「じゃ、じゃあ麻子…」
「第2ラウンド開始ね」
2人は知る事は無かったが、陸上部の麻子の処女膜は既に破れていたので、
初体験に痛みを伴わなかったのだ。それが原因で、この後潮は地獄を見るのだが。
翌朝、妙に精力溢れる麻子は帰宅し、ゲッソリになった潮は彼女を家迄送って行った。
米次と麻沙子には何が在ったか察しが付いたであろう。そんな潮が自分の部屋で懲りずに悶々としていると…
「うしおーっ!やったな!」
と、イズナが潮の机の上の自画像を書く際に使う鏡から飛び出して来た。
「いっイズナ!?」
白面との戦いの後、残された妖怪達は人間との親睦を深めて行った。
イズナなどは、しょっちゅう雲外鏡を通じて遊びに来るし、その度に潮に妖の友人を紹介していたのだ。
妖達は物見高い。彼等が、親しい潮が何やら恋人と珍しい事をしている。そんな場面を見逃す筈も無かった。
人間に詳しいイズナが得意気に妖達に解説している姿が目に浮かぶ。
今回の件の模様は、恐らく全国の妖や雲外鏡に親しい人達の傍らの鏡を通じて、全国ネットで流されたのだろう。
「(貴方のPCのディスプレイに向かって)あ~お前等見てたんだなぁ~!」
潮はこの事も、「言わない方が良い事」だと判断した…麻子に言ったら殺される。
する前に鏡を全て蔵にでも放り込んでおけばよかった、と後悔する潮であった。
「楽しんでみてくれたかの?人間共はあぁやって生殖するのじゃな。わしも初めて見たよ。
では、又見たい物語が在ったら、この雲外鏡に会いにおいで」
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