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私が居るのは海の底  
深くて暗い水の底  
傍(そば)に住まうは憎き敵  
遠くに住まう愛しき人  
我が子に逢えぬ悲しさよ  
 
 そんな詩(うた)を考えてみる。たった一人海底で役目を続け、時間の流れからも見放された我が身。  
どうしても、時間を持て余してしまう。この時間を、家族と過ごせたらどんなに良いだろう。  
私(わたくし)は、未完成の詩を頭の片隅に追いやり、紫暮様との思い出に思いを馳せる事にした。  
 
****  
 
 もう15年前も前になるだろうか。お勤めを終えられた紫暮様と共に、私は光覇明宗総本山へ帰った。  
先代お役目の日崎御角様に、伊万里での出来事を伝えると、  
「そうですか。紫暮、須磨子の事を頼みますよ」  
とだけ言って、微笑んでおられた。今にして思えば、私をあの時期伊万里へ向かわせたのは、この為だったのだろう。  
そう待たない内に直々に結婚の手筈迄整えて下り、私達は祝言を挙げた。  
「私(わたくし)の連れ合いは、私が海の底から戻った時、既に居ませんでした。  
須磨子、私の分迄幸せにおなりなさい…残された時間はたった22箇月、悔いの残らぬ様。  
紫暮はそれが出来る男です」  
御角様は、そうお言葉を掛けて下さった。本当に素敵なお方だ。私もこの様な女性になれたらと思う。  
 
 それから、私達は芙玄院へ帰った。紫暮様の両親は既にお亡くなりになっており、弟は旭川の寺の住職を任されたとかで、今迄紫暮様はこの寺で独り、暮して来たそうだ。これからは、ここは私達2人の家なのだ。そう考えると、何か胸が温かくなる様な、むず痒くなる様な不思議な感覚が芽生えた。  
「只今帰りました」  
そう、初めて入る家に対し、口に出して言ってみたが、紫暮様は何も答えて下さらず、早々に自分の部屋に籠ってしまった。  
何やらガチャガチャと音がするので、片付けておられるのかと思い、  
「もし、お片付けでしたら、お手伝い致しましょうか?」  
と声をお掛けすると、  
「バッ、馬鹿!!入って来るな!」  
と追い出されてしまった。仕方無く、その様子を遠巻きに見守っていると、  
何やら本や「びでおてぇぷ」と呼ばれる不思議な黒い箱の類を片付けられている御様子だった。  
見ると、それ等の本には、どれも女性の裸やら、性器やらが写っている。今の世の殿方は、この様な物に興味がお在りなのだろうか。  
不思議と悔しくなった私は、追い出された部屋に入り込み、  
「この様な物を御覧にならずとも、紫暮様が望むのなら、女性の裸など、いくらでも私がお見せします!!」  
と伝え、それ等を纏めて処分する事にした。紫暮様は、  
「お前っ!まだそこに居たのか!?」  
と取り乱してらしたが。  
 
 一時間もして、件の部屋の片付けは終わり、もう外は夕闇に包まれる時刻となっていた。  
「片付けたら、お腹が空きましたね。何をお作りしましょう?」  
「え?…あぁ、己(おれ)は何でも良い」  
素っ気無い答え…紫暮様を怒らせてしまったのだろうか。そんな不安が頭を過ぎる。  
まだ、私の名前すら呼んでは下さらない。本当はこんな女と結婚させられて、嫌だったのではあるまいか。  
次々と嫌な考えが頭に浮かぶ。そんな時、御角様の言葉が思い出された。  
「幸せにおなりなさい…悔いの残らぬ様」  
そうだ、時が限られているのは、私と結婚した紫暮様も同じ。だったら、私がもっと素敵な女性になって、2人で幸せな生活を送らねば。  
そう思うと、料理を作る手にも、活気が生まれた。  
 
「どうぞ、粗末な物ですが、お召し上がり下さい」  
在り合わせの物で作った味噌汁に、玉子焼き、焼き魚と質素な物では在ったが、  
比較的好き嫌いの分かれない物を一生懸命作ったつもりだ。その時…その時紫暮様が、  
「あぁ…美味いな」  
そう仰って下さった。胸がドキドキと脈打つのが判る。きっとその時の私の顔はクシャクシャで、とても見られた物では無かっただろう。  
「い、今何と?」  
「美味いと言った」  
「ま、誠でございますか?あの…ありがとうございます!」  
「己が美味い不味いに嘘を言う事は無い。美味いから美味いといっただけだ。何故、お前が礼を言うのだ?」  
この人は解っておられなかったのだろうが、料理一つの事にしても、紫暮様に初めて認められたと言う事実は、今迄の私の不安を吹き飛ばすには充分だった。  
その夜、初めて殿方と同じ布団で寝る事となった私を、紫暮様は力強く抱き締めて下さった。  
あぁ、人に抱き締められる事がこんなに心地良い物だとは!  
私は、旅疲れも在ったのだろう、その感触に包まれた侭、その日は眠ってしまった。  
 
 
 翌朝、  
「檀家に子どもが産まれたそうだ。行って来る」  
「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」  
恐らく、世の夫婦なら、誰もが交わす会話。そんな当たり前の会話が、今の私には嬉しくてならなかった。  
その日、私は照道さんに手伝って戴いて、家の大掃除をする事にしていた。  
きっと紫暮様は、出掛ける事が多いので、家の事迄手が回らないのだろう。家の中は、荒れ放題になっていた。  
「お早うございます」  
照道さんが来る。幸せに浸りながら台所の後片付けをしていた私は、失礼だとは思ったが、勝手口から照道さんを迎え入れた。  
「わざわざ済みません。今、お茶をお出しします」  
「いえ、それよりも先に片付けましょう。…それにしても紫暮様、暫く見ない内に、随分散らかしておられるなぁ」  
私よりも紫暮様を良く知っておられる人。大掃除が済み、お茶を用意した私は、彼に紫暮様の事をお尋ねしようと思った。  
「本当にありがとうございました。私一人ではどうにも手が付けられませんでしたので。  
その…誠にお恥ずかしい事なのですが、紫暮様はいまだに私の名前すら呼んでは下さいません。  
それに、何やら素っ気無い態度で…。もしや私は嫌われているのではと…」  
「ハハハ。そんな事を気にしておられたのですか。あの方は、どんな女性に対してもそうですよ。  
幼くして両親を亡くしておられるので、甘えたい欲求が在るのかも知れませんが、『照れ』と言いますか、  
自尊心がそれを許さないと言いますか…  
要するに照れておられるのだと思いますよ。本当は紫暮様も、貴女に甘えたくて仕方無いのです。きっと慣れれば、誰にも見せた事の無い姿を貴女に見せるでしょう。今は辛いでしょうが、辛抱して下さい」  
それを聞いて、私の心は楽になった。その後、照道さんに「掃除機」、「洗濯機」等の便利な道具の使い方を教えて戴き、彼が帰った後、私は夕飯の支度に取り掛かった。  
 
 それから一週間。紫暮様は私を名前で呼んで下さる様になり、私も彼を「貴方」と呼ぶ事に慣れた。  
だが、彼は子どもを作ろうとはして下さらない。何故だろう。結婚前には、私のその話もきちんと聞いて下さったのに。  
毎晩腕の中に抱いて下さるだけだ。私はその度、胸と股間に不思議な疼きを覚えていた。  
結婚してから私は、中村米次さん(「『様』付けは失礼な事も在るんだぜ」と仰られた)のお宅に、料理を習いにお邪魔していた。  
米次さんは、活気に満ち溢れた、紫暮様の昔馴染みで、私達の結婚式にもお出でになった方だ。  
私達の家の近所で今は「青鳥軒」と言う拉麺屋さんをご夫婦でを営んでおられ、そのご夫婦のご好意で、  
私は連日、お手伝いをさせて戴きながら、中華料理を習っているのだった。  
昼過ぎ。この時間は何時も、お店の中は閑散とし、私達は暇を持て余す。  
今、米次さんは居間にお煙草を飲みに行かれ、奥方の麻沙子さんは食器を洗い、  
私はそれを食器棚に仕舞うお手伝いをしていた。  
麻沙子さんは、女性の私から見ても、小顔の可愛らしい女性だ。  
彼女のお腹には二箇月になるお子さんが居る。私は思い切って彼女に尋ねてみる事にした。  
「あの、卒爾ながらお尋ねしますが、麻沙子さんはどの様にお子さんをお作りになったのでしょう?」  
ガシャーン!!皿の割れる音。どうやら、洗っている食器を落としてしまわれたらしかった。  
「え?え?何だって!?」  
彼女の美しい顔が真っ赤に染まり、慌てふためいている。そんなに拙い事を訊いてしまったのだろうか、  
と私はこの一週間の紫暮様との事を話した。  
「あぁ、そう言う事ね」  
漸く普段の落ち着きを取り戻した麻沙子さんは、割れた食器を片付けながら、  
時には女の方から迫る事も大事だと教えて下さった。  
話を聞いていた米次さんも出て来て、  
「そうそう。でも、あいつは頑固だからなぁ。何か思う処が在って、  
あんたを抱かねえのかも知れねえぜ。ま、あいつに直接訊いてみな」  
と助言を下さった。  
 
 その夜。紫暮様と共に床に就く際、彼に尋ねてみた。  
「貴方…何故私を抱いて下さらないのですか?私にはもう、時間が無いのです。早く『潮』を作らないと…。  
私達は幸せにならねばならないのです」  
今思えば、その時の私は狂気に駆られていたのかも知れない。  
「やれやれ…お前は、幸せになる事が『義務』だと考えているのだろう?『潮』にしてもそうだ。子どもと言うのは、作ろうと思って作るもんじゃ無い。己はそう思う。全ては自然に起こる事なのだ。  
お前がその考えを捨てぬ限り、己はお前を抱くつもりは無い。第一、そんな義務で作った子どもは幸せになれるのか?」  
そう仰って、紫暮様は昔使っていた布団を引っ張り出し、居間へ持って行ってしまわれた。  
私は悟った。紫暮様は、義務感に駆られる私の事を心配して下さっていたのだ。そんな事にも気付かずに私は…私は…。  
独り残された布団の上で、私は東の空が明るくなる迄泣き続けた。  
 
 泣き疲れた所為だろうか、何時の間にか眠ってしまった様だ。だが、私の体には布団が掛けられ、枕元には、  
[言い過ぎた。済まん。妖(ばけもの)の報が在った。行って来る。もう泣くな]  
との書置きが在った。きっと、私の啜り泣く声が聞こえてしまったのだろう。  
そんな紫暮様の精一杯の優しさに触れ、疾うに涸れたと思っていた涙が、再び溢れて来た。  
ふと、時計を見ると、10時を過ぎている。  
「あぁっ!もうこんな時間!!」  
私は化粧もそこそこに、青鳥軒へ向かった。  
「済みません、遅れました!」  
扉を開けるや否や、私はそう謝った。だが、中村さん夫妻は、私の泣き腫らした目と真っ赤になった鼻を見て、  
「ちょっと、どうしたの須磨子ちゃん!?まさか昨夜、旦那と大喧嘩?」  
「あの野郎!須磨子ちゃんみてえな良い嫁さん泣かすなんざ、許せねえ!!」  
と心配して下さった。紫暮様の処へ向かおうとする米次さまを何とか抑え、昨夜の事情を説明する。  
「そうか…俺の言った通りだったろ?幸せなんてもんは、義務で掴むもんじゃ無え。幸せになりたいから、幸せになろうとするのさ」  
「そうさ、あんたがそんなんじゃ、旦那も喜びゃしないよ。ビシッとしな!さ、そろそろ戦場になるよ。手伝っとくれ」  
そうだ…私は既に幸せなのだ。とても良くして下さる中村さんご夫婦、不器用ながらも私の事を真摯に気遣って下さる夫。  
そんな幸せを感じつつ、私はサラリーマンの方達に、昼食を振舞った。  
何時だったか、紫暮様を叱り飛ばした事が在る―「幸せになる事こそが、人本来の生きる目的だ」と。  
そんな事も忘れてしまう程、私は焦っていたのか。  
きっとこの人達にしても、幸せになりたい一心で、今日も家族の為に働いているのだろう。  
そんな事を思うと、私の考えの何と愚かだった事か、と反省された。  
 
 その日の帰り道。私は川原に佇んでいた。紫暮様をどうお迎えしよう。妖を滅すると仰っていたが、ご無事だろうか。  
様々な思いが頭を巡る。既に日は傾き、そろそろ夕飯の支度に取り掛からねばならない時間になっていた。  
「悩んででも仕方無いわ。ビシッとしなくちゃ」  
麻沙子さんの言葉を思い出し、家に帰ろうと立ち上がったその時、  
二つの影が私の前に転がり込んで来た。  
「貴方!?」  
そう。一方の影は、紫暮様だった。そしてもう一方の影は…  
「『外道』だ…この辺りに現れるとは、珍しいな。依頼主の妻に憑いていた。何とか追い払ったんだが…」  
『外道』と言う名を私は御角様から聞いた事が在った。人に憑き、  
その心の妬み、恨みを喰らって増大する、妖の中でも一際強力な物だ。  
四国の設楽の里と言う処では、獣の槍に制され、『お外堂さん』と言う神になったらしいが、  
御角市にはまだ、生き残りが居たのだ。  
見ると、紫暮様の法衣は、血で真っ赤に染まり、息も荒い。私はすぐに、彼に法力を分け、傷を癒した。  
その隙に『外道』は私のすぐ傍迄迫り、私の口へと入って行った。  
「しまった!!」  
紫暮様の声が遠く聞こえる。  
「油断したな坊主。へへ…どうやらお前の連れ合いらしいな。そんな女をお前はどうする?どうするんだよォ!?」  
私の口から、意思とは無関係の言葉が紡がれる。  
「こいつの法力で、お前をぶっ殺してやるぜ。どれ…こいつの心は…あ、あれ?  
…貴方、心配には及びませぬ。私の心には、此奴に付け入らせる隙などございませんから」  
今の私の澄み切った心は、この妖にはさぞかし居心地が悪いのだろう。  
私が念を集中させると、殆ど抵抗も無く、体から出て来た。  
「貴方、今!!」  
その侭動きを封じた『外道』に紫暮様の千宝輪が突き刺さる。  
私が『外道』に奪われた視力を完全に取り戻した時、  
そこに『外道』の姿は無かった。  
 
「あー、何だ。その…」「あ…あのぅ…」  
同時に口を開き、私も紫暮様も黙ってしまう。  
「お前が先に…」「貴方がお先に…」  
「昨夜は済まなかった」「昨夜は御免なさい」  
「ハハハハ」「クスッ…」  
言い終えて、どちらからとも無く吹き出す。  
私は紫暮様の胸に飛び込む。そう言えば、自分から男の人に抱き付くなんて、産まれて初めてでは無いだろうか。  
「貴方…お帰りなさい」  
「あぁ、只今。今、戻ったぞ。一緒に帰ろうか…『己達の』家に」  
既に私の悩みは吹き飛んでいた。  
 
 明日は青鳥軒は定休日。紫暮様の許にも妖在りの報は届いていない、そんな晩。  
「須磨子…」  
初めての接吻。単に互いの唇と舌が触れていると言うだけなのに、  
何故こんなにも興奮するのだろう。触れているのは唇なのに、何故全身が熱くなるのだろう。  
「前に、私は裸ならいくらでも見せると言いましたね。どうか、御覧になって下さい」  
異性に裸を晒すのは恥ずかしい事だと分かっている。しかし、唯一の例外が、本当に心根から信じあえる相手。  
私にとっては紫暮様が正にそうだった。この方と一緒に幸せになりたい。この方の為なら何だって出来る。  
きっとこれが、「愛しい」と言う感情なのだろう。  
そんな私を紫暮様は抱き締めて下さった。裸での抱擁。ああ、人の肌の何と心地の良い事!  
何か、心にも心地良さを感じ、全てが安心出来た。  
彼が私の乳房を弄り、乳首を吸う。体験した事の無い快楽に、私の口から熱い息が漏れた。  
照道さんの仰る通り、顔には出さない物の、この人もきっと、こうして甘えたかったのだろう。  
私はそんな彼の頭を優しく撫でていた。  
 
 不意に、全身を愛撫していてくれた手が、下半身に移る。紫暮様は、私の性器に口付けなさろうとしている風だった。  
「駄目です。そこは汚れております故、口などお付けにならぬ方が…」  
その部分は、小水や経血、下り物の出て来る場所だ。その様な場所を、紫暮様に舐めさせる訳にはいかなかった。  
だが、紫暮様は、  
「俺の体はお前の物でもあり、又お前の体は俺の物でもある。結婚とはそう言う物だ。  
自分の体に触れる事を躊躇う者は居まい?」  
と仰り、執拗にその部分を舐め、撫でた。私の口からは、無意識に声が漏れている。  
私は今迄、これ程の快感が存在する事を知らなかった。しかも、その感覚は段々と大きくなって来る。  
やがて、その感覚の大きさに限界が見え始める。そこに辿り着いた時、私は絶頂した。  
気の遠くなる程の快楽の波。落ちて行く様な不安の中、抱き締められている安心感。  
私は、彼に愛されている事を実感していた。  
 
 彼の一部が私の中に入って来ている。最初は物凄い痛みに襲われたが、  
愛する男性と一つになれる事を思えば、取るに足らぬ些事だった。  
白面を封じる力を授かった私の体の傷は、すぐに出血も止まり、痛みも消えた。  
鋼の様に鍛え抜かれた彼の体が、私の上で動いている。私は先刻迄とは異なり、体よりも心が気持良くなり、その心が涙と共に溢れ出す。  
この人もきっと、この一週間、抱く事の叶わぬ私に対する欲求を堪えておられたのだろう。  
彼は何度も何度も私の中に溜め込んだ欲求を解き放った。  
湧く泉にも水涸れ在り、と言うのだろうか。疲れを知らぬ紫暮様は、私を濡らす液(つゆ)が尽きる迄、私を愛してくれた。  
その夜は結局眠らず、朝食を作る私に紫暮様が  
「昨夜は少し張り切り過ぎたな。前日、お前は殆ど寝ていなかったと言うのに…」  
と苦笑いしながら、謝る。  
「いいえ、私の望んだ事ですから。貴方もお疲れでしたでしょうに、無理をさせてしまって…。  
さ、朝食が出来ましたよ。これを召し上がって、元気を付けて下さいな」  
その朝食には、普段よりも一層心を込めていた。彼との心の距離は、一夜にして縮まっていた。  
 
 それからは、毎晩の様に紫暮様は私を愛して下さり、休みが取れる度、  
130年も海の底で暮して来た私に今の世を見せに連れて行って下さった。  
そして、二箇月と少し過ぎた頃、私の体に嬉しい変調が起きていた。  
乳首が以前より色付き、乳房や下腹が以前より少し膨らんだ様に思える。  
何より、先月も今月も月経が来ていない。  
それは、もう130年以上も前、母から聞かされた受胎の兆候だった。  
ある日、紫暮様に、  
「あの…まだはっきりとは判りませぬが、赤ちゃんが出来た様なのです」  
とその事を伝えると、  
「な、何ィ!?そ、そうか…判った」  
と驚きはした物の、すぐに何時もの素っ気無い態度に戻り、出て行ってしまわれた。  
私はこの二箇月で、それが彼の不器用さから来ている事を知っていたし、その事で憂いを感じる事は無かった。  
しかし、今度は事情が違う。妊娠と言う、私達の人生を大きく左右する一大事なのだ。  
もしも、紫暮様が子どもを望んでいないのだとしたら、この子はどんなに不憫だろう。  
私はこの子を大人迄育てあげる事は出来ぬ身なのだ。  
それから、一時間程して帰って来られた紫暮様の手には小さな箱が握られていた。  
「『妊娠検査キット』と言う物だ。己は使い方を知らん。説明書きを読め」  
と、私にそれを渡す。どうやら、女性の小水を検査し、妊娠の有無を調べられる道具らしかった。  
「クスッ…ウフフ」  
「な、何が可笑しい!?」  
「いえ…フフッ。貴方がこれを薬局でお求めになる姿を想像すると…フフフ…どうにも笑いが…クックック」  
「煩い!早く調べてみろ!」  
怒らせてしまったのだろうか?私は結果が気になるので、取り敢えず調べてみる事にした。  
結果は赤の二本線。まだ、確実では無いが、妊娠している可能性が高い様だった。  
紫暮様に検査の結果を伝えると、  
「明日は病院へ行くぞ」  
とだけ行って寝てしまわれた。やっぱり怒っているのだろうか。  
 
 翌日。紫暮様と病院へ向かう途中、車から降ろして戴き、青鳥軒に立ち寄った。今日はお手伝いを休ませて戴く旨を伝えようと、  
店に入ると、私が口を開く前に、中村さんご夫妻が、  
「お早う!おめでただって?」  
「あたし等もう、仲間だねえ。おめでとう!」  
と声を掛けられた。何で知っているのだろうと、不思議に思っていると、米次さんが  
「いやぁ、昨日の夕方、紫暮の奴が向かいの薬局に入ってったのよ。で、声を掛けてみたら、何時に無く興奮した調子で、『うちの嫁が妊娠した!』って言ってなぁ。奴のあんな顔見るのぁ、初めてだったぜ」  
それを聞いて、昨日の杞憂が無駄だと知る。  
「須磨子ちゃん、今日給料日でしょ。はい、これ」  
と既にお腹がかなり大きくなっている麻沙子さんから封筒を手渡される。その中には、先月戴いたお給金の倍以上の額が入っていた。  
「いえ、先月も申しましたが、私はここにお勉強に来ているのでして、お給金を貰うなど…  
それに、額をお間違えになっている様なのですが」  
と封筒を付き返したが、  
「良いって良いって、何時も手伝って貰って、こっちは助かってんだ。妊娠祝いに取っときな」  
と米次さんが、私の着物の胸元に封筒を押し込んだ。  
「あんたそりゃ、セクハラだよ!須磨子ちゃん、外で旦那待たしてんだろ?早く行ってやんな」  
きっとこの子は、皆に望まれ、祝福されて産まれて来るのだろう。それを思うと、涙が溢れた。  
「ちょっと…どうしたの?ほら!あんたがあんな事するからさ!」  
「えぇ!?いや、その…申し訳無え」  
と米次さんが頭を掻き掻き謝っている。だが、私の涙にはそんな意味は微塵も含まれていなかった。  
 
「おめでとうございます。2箇月半と言った処ですね」  
お医者様の口から、検査の結果が伝えられる。続けて、妊娠生活中に注意すべき事、  
性交渉について、次回の検査の事等を話しておられる様だったが、私の耳にはもう、何も入っていなかった。  
私の体に新しい命が宿っている。その事を実感すると、目に映る物全てがとても愛しく思えた。  
帰宅すると紫暮様は、蔵に向かい、何やらゴソゴソと引っ張り出して来られた。  
それは、『れこど』と言う、音を出す不思議な黒い円盤だった。  
「びぃとるず、はぁまんず・はぁみっつ、ふらんす・ぎゃる、びーじーず…これは何でしょう?」  
「胎教と言ってな。今の世では、胎児に音楽を聴かせたり、話し掛けたりする事で、  
感受性豊かな子が育つと言われているのだ。足りぬ分はまた買って来る」  
その時の私には良く判らなかった機械を紫暮様が操作すると、とても気持の良い音が流れた。  
聞きなれぬ言葉なので、歌詞を見てみると西洋の歌らしく、邦訳に目を通す。  
[目を閉じて――キスしてあげる  
明日になれば二人は別れ別れ  
……………………………  
有りっ丈の愛を君に送ろう  
僕の愛は君だけの物]  
そうだ。明日とは言わずとも、20箇月後には、紫暮様やお腹の中の潮とも別れねばならないのだ。  
だが、悲しくはない。この歌詞の様に、それ迄の間、有りっ丈の愛を送り、そして貰おう。そう決心した。  
 
 それから3箇月が過ぎた。青鳥軒の方にも、暫くお休みさせて戴く許可を戴き、家で過ごす毎日が続いた。  
紫暮様はと言えば、連日の様にショパン、モォツァルト、ベェトォベン、バッハ等の『れこど』やら、育児の本、産着、赤ちゃんのオモチャ、『べびぃべっど』なる、潮の為の寝床やらを買って来ては、嬉々として私に見せて下さった。  
流石にオモチャなどは気が早過ぎる気がしたが、きっとこれが、あの方なりの喜び様なのだろうと思って、何も言わなかった。  
私が妊娠してから、紫暮様は変わられた。毎晩の様に飲んではケロリとしていたお酒も、お煙草も一切止められ、自分の事を  
「己」では無く、「私」と呼ぶ様になっていた。何よりも、以前は絶対に見せられなかった、  
お茶楽気た一面を見せて下さる様になられた。  
 
 何時だったか、私が、  
「貴方もお腹の潮に話し掛けてみてはどうですか?」  
と言った際、  
「いや、己は良い」  
と紫暮様は断ったが、私が  
「きっとこの子も、父親の声を聞きたがってますよ」  
と強く説得すると、  
「お前は本当に押しの強い女だなぁ。保険の勧誘でもしてみたらどうだ?…ったく、仕方無い。  
…あ、あー…己だが、聞こえるか?」  
と戸惑いながらも話し掛けた。その様子の滑稽な余り、私が吹き出すと、自分でも可笑しかったのだろう。  
紫暮様も一緒に笑われた。その時から、紫暮様の中に愛想が生まれた様に思える。  
 
 紫暮様は、本当に潮の誕生を望んでいる様だった。今日も  
「今日は潮に何を聴かせた?」  
とお尋ねになられ、私のお腹に触っては話し掛けられていた。私が、  
「この調子だと、潮は末は絵描きさんか作曲家かしら。お寺を継ぐ者が無くて、困ってしまいますよ」  
と冗談混じりに言う程だ。  
私はと言うと、連日の様に嘔吐し、以前よりも尿意の間隔が短く、堪えられずに漏らしてしまう事も在った為、遠出が出来ない体になっていたが、そんな事もこれからの幸せを考えれば、苦にはならなかった。  
 
 だが、不満も在った。紫暮様は以前の様に私を抱いては下さらない。毎晩、私の体を愛撫し、慰めては下さるが、それ以上の事はなさらないのだ。それは、お腹の子を気遣っての事だと言うのは私にも解る。  
今は、私よりも潮が大切なのだろう。だが、そう解ってはいても、私の中に募る欲求は抑えられなかった。  
紫暮様との交わりで、女性にも男の方の様な「おちんちん」が在る事を知った。そこを摩れば気持良くなれる事も。  
紫暮様が外出なさる度、あの方の手付きを思い出しながら、満足出来ぬ私の指は、それを撫でる。  
同時に、片手でもう、かなり膨らんだ乳房を揉みしだき、快楽に身を委ねた。早くも体内で準備されている母乳が溢れる。  
この快楽を知ってしまった私には、もうどうする事も出来なかった。膣に触れずにいる事だけが、唯一残された理性だったが、満足する迄果てた後は何時も、お腹の子と、紫暮様に対する罪悪感が募り、泣いてしまう。  
だが、そうであっても、その習慣が止められぬ日々は続いた。  
 
 3箇月後のある日、出産間近の私の処に、麻沙子さんが、赤ん坊を抱いて遊びに来られた。本当に可愛い女の赤ちゃんだ。  
「この子はね、あたしみたいにサバサバした子に育って欲しいから、麻子って名付けたのさ。  
須磨子ちゃんはもう、赤ちゃんの名前考えてるのかい?」  
「はい。何物にも負けぬ、力強き丈夫(ますらお)に育つ事を祈って、『潮』と…」  
「そうかい。じゃ、潮ちゃん、産まれて来たら、麻子と仲良くしてやってね」  
そう言って、麻沙子さんは帰って行った。  
そう…もうすぐこの子の名前を呼ぶ事が出来る。この子の為なら多少辛くとも、湧き上がる性欲も我慢しなくては…。  
紫暮様も我慢していらっしゃるだろうに、私は何と嫌な女だったのかと、自分を恥じた。  
 
 その時は、死んでしまった方が楽な様に思える程の痛みを延々味わった事を覚えている。  
今迄の人生で、これの一割の痛みすら味わった事は無かった。紫暮様は、私の手を握り、  
「頑張れよ、須磨子。私が付いているぞ!」  
と励まして下さった。きっと今の私の姿は、苦痛に歪み、とても見せられぬ程無様だろう。  
本来なら、愛する夫に見せたくは無い姿では在ったが、彼が付いていて下さる事は、とても励みになった。  
その時、お医者様の助手の方が、分娩室に飛び込んで来られ、  
「蒼月さん、光覇明宗の方がお見えになっています」  
と伝えた。きっと、妖滅殺の依頼だろう。  
「貴方、行ってあげて。私は大丈夫だから」  
と言うと、あの方は、  
「私は仏じゃ無い。全ての人々を救うなんて、到底無理な話だ。だから私は、私達の幸せを優先する。  
本山からの依頼なら、代わりの僧が派遣出来るだろう。断って来るから、それ迄産むんじゃ無いぞ!」  
と言って、出て行ってしまわれた。そんな紫暮様の態度に、苦痛の中でも笑みが漏れた。  
 
 元々法力の御陰で傷の治りの早い私は、出産の翌々日には退院出来た。お医者様も驚いておられたが、  
これ以上入院していても仕方が無いと言うなので、すぐに家に帰れた。  
今思い出しても、紫暮様の喜び様と言ったら…  
臍の緒を切るや否や、周囲の静止も聞かずに潮を掴み上げ、  
「私の子か!潮も須磨子も良く頑張ったな!」  
と祝福して下さった。きっと私などよりも、紫暮様の方が、心労は大きかっただろうに  
 
 潮は本当に可愛かった。私と愛する人の分身。目に入れても痛くないとはきっとこの事なのだろう。  
母親になった私は、初めて世の親の気持が理解出来た。それは、  
言葉では言い表せぬ程の大きく深い愛情と、子どもに寄せる期待。  
それを思い、今は亡き私の両親に心から感謝した。きっとこの子も、  
何時かはこの気持を理解する時が来る。だが、私はこの子をそれ迄育てる事は出来ないのだ。  
でも、きっと大丈夫。紫暮様は潮を立派に育てて下さる。それは、親として無責任な感情にも思えたが、  
私とて、家族を護る為に役目に行くのだ。潮は、遠くから見守る事しか出来ぬ母を許してくれるだろうか。  
 
 程無くして、紫暮様は私を連日抱いて下さる様になった。出産後暫くは、  
「裂傷が開いちゃまずいだろ」  
と取り合ってくれなかったのだが、私が傷口を見せ、傷がすっかり治っている事を主張すると、  
すぐに抱いて下さった。あぁ、もう何箇月も味わっていなかったこの悦楽。  
だが、依然と違っていた事が一つだけ。紫暮様は、避妊具なる物を使われる様になった。  
確かに、子どもを身篭った侭では、役目に付けない。だが、それでは紫暮様も気持良くないだろうに。  
何時も私は、この方に我慢させてばかりだ。私も紫暮様を気持良くして差し上げられぬかと、  
性に関する書物を読み、学んだ。紫暮様は、  
「須磨子はそんな事知らんでも良いのだ」  
と仰ったが、私の気が済まないのだ。  
それを実践すると、紫暮様の欲望が、私の口に注がれた。  
初めて味わうそれは、とても苦く、お世辞にも美味しいとは言えない物だったが、  
紫暮様は満足して下さった様なので、私も嬉しくなった。  
紫暮様はと言えば、性交の度に私の乳首から、潮の飲み残しの乳を吸われる。  
先日、潮と私と紫暮様の三人で湯浴みした時など、  
「乳鉄砲だ!」  
などと言って、潮に飲ませる母乳が無くなる程に私の乳を搾った。  
本当、この人もまだ子どもの部分が在り、今迄はそれを見せて下さらなかっただけなのだと実感した。  
残り1年間。この人にも、潮にも思い切り甘えさせてあげたいと思った。  
 
 ある日の公園での事。中村さん、井上さん、横尾さん、厚池さんの奥様方と、赤ちゃんを連れて来ていた時だった。  
「この子はね、真由子。繭から作られる絹の様に繊細な子に育って欲しいから、真由子って言うの。潮君、宜しくね」  
と井上さんの奥様。  
「それにしても潮ちゃん、眉や目鼻立ちと言い、本当に母親似ねえ。何にしても、二人の子どもなら、  
優しくて強い人間になるだろうよ。麻子もそんな子になって欲しいねえ」  
と麻沙子さん。彼女は、お母さん仲間の取り仕切り役になっていた。  
「時に中村さんも蒼月さんも、初産だから大変だったでしょう?二人目の時は、時間は短いけど、もっと痛いのよ。あ、和夫、そろそろ帰るよ〜!買い物済ませなきゃなんで、これで…」  
井上さんのお宅には、もう1人7歳になるお子が居た。その子がこちらへやって来て、潮を覗き込んだ。  
「おばさん、この赤ちゃんの名前、何て言うの?」  
「潮よ。仲良くしてあげてね」  
「潮かぁ。良し潮、大きくなったら遊んでやるから、楽しみにしてろよな!」  
そう言って、親子で帰って行った。私の子もあんな風に育ってくれると嬉しい。  
「二人目ねぇ。あたしゃ子どもは1人で充分だよ。皆はどうなんだい?」  
と、麻沙子さんは笑い、皆も笑っていた。  
だが、その中に在って、私は独り、笑う事が出来なかった。  
 
 それから一年近くが経過し、私は、毎日の潮の成長を記録するのが日課になっていた。  
記録と言っても、日記とさして変わらぬ内容だったが、その内容は潮の事で埋め尽くされていた。  
何時か、これを潮に読ませてあげよう。私達が、どんな気持で彼を育てたかを。  
この時期の子どもは成長が早い。私はそれに夢中になり、自分の使命を忘れ掛けていた。  
「潮、ハイハイ上手ね。ここ迄おいで」  
潮は笑顔で寄って来る。何と可愛いのだろう。そんな潮を抱き上げた時だった。  
キン!!  
空気を裂く音が聞こえた。この音は…  
「須磨子、非常に酷な事では在りますが、明日の朝にはここを発たねばなりません。  
本当に可愛い赤ちゃん…私も転生した時、子どもと離れて役目を果たした身、  
貴方の辛さは痛い程解るので、頼みたくは無いのですが…」  
やはり、初代お役目・決眉様だった。  
「いえ、解っております。私がいかねば、この子も紫暮様も、私に良くして下さった周囲の方達も  
皆、諸共に死ぬ事になりましょう。私は再び海に戻ります。但し、今度は役目としてでは無く、  
大切な方々を護る為に」  
後悔は無い…無い筈だったのに、潮を見ていると、心が挫けそうになった。出立の準備をする手が何度も止まり、いっその事、皆で異国へ逃げ出せばどうか、などと言う愚かな考えが頭を過る。それでも結局、いずれは何処に逃げても同じ事になるのは解っているのに。  
私は決心した。大切な方達を護る為のみならず、この国や余所の国、全ての親と子が引き裂かれぬ様、闘おうと。  
これは私の闘いなのだ。  
 
「では、言って参ります。この22箇月、本当に幸せでした。ありがとうございます。  
中村さん夫妻や、井上さん夫妻に宜しくお伝え下さい。それから…潮の事をお願いします」  
疾うに涙は涸れた。私は、22箇月前の御角様の言葉を思い出していた。  
「幸せになりなさい。紫暮はそれが出来る男です」  
本当に、紫暮様と結ばれて良かった。この人で無かったら、私はどんなに後悔しただろう。  
その紫暮様を見ると、目には涙。この方が泣かれた事など、これ迄在っただろうか。  
私の頭に、潮の胎教以来聴いて来た歌の歌詞が思い出される。  
[目を閉じて――キスしてあげる  
明日になれば二人は別れ別れ  
……………………………  
有りっ丈の愛を君に送ろう  
僕の愛は君だけの物]  
だが、まだ足りない。幾等愛しても足りないのだ。紫暮様の食い縛った口が開く。  
「須磨子、お前が戻る迄私は死なん。それでも戻って来ぬ時は、私が迎えに行く。  
それも叶わぬと言うのなら、生まれ変わったらまた逢おう。そして、もう一度愛し合おうぞ」  
そうだ。これは永劫の別れでは無い。遠い時の輪の中で、まだ逢える可能性は残されているのだ。  
「はい、貴方…」  
紫暮様に口付けする。自分から接吻したのは初めてだった。  
「では…必ず、必ず迎えに来て下さいね!」  
 
**** 
 
 潮に逢いたい、紫暮様の腕に抱かれたい。  
だが、今私(わたくし)が此処で役目を務めるのは、愛する家族を護る為。  
彼等は元気にしているだろうか。2人で喧嘩なぞしていないだろうか。  
何時かきっと、家族を引き裂くこの憎い敵が滅び、  
一家三人で幸せに暮せる日が来る。そう信じて、私は待つ。  
 
私が居るのは海の底  
深くて暗い水の底  
傍(そば)に住まうは憎き敵  
遠くに住まう愛しき人  
我が子に逢えぬ悲しさよ  
何時か何時かは此処を出て  
役目を終えて廻り逢いたい  
でもそれ迄は海の底  
白面外道と水の底  
 

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