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 9月も終りに近付き、季節は秋に移行して行く。例年ならば、札幌市はこの時期、既に凌ぎ易い気候となっている筈だった。 
しかし、先日雪女の朝霧が吹雪を送り込んだ影響で、大気は不安定になり、残暑が続いていた。 
 
 「暑いなぁ…大丈夫か、垂?」 
揺らぐ大気に張りの有る、それでいて優しげな声が響く。男の名は、佐久間泰。 
両親は無く、新聞配達奨学生として生計を立てている高校2年生だ。 
「えぇ、本当に。ヤスの方こそ大丈夫?」 
そんな独りの暮らしを送って来た彼にも先日、掛替えの無い家族が出来た。 
彼女の名は垂。苗字はまだ無い。それ処か、彼女には戸籍すら無かった。 
何故なら、彼女は元々人間では無かった。札幌に降る、最も純粋な雪の結晶を集めて創られた雪の精。 
それが彼女の生まれだった。人間に恋をした彼女は、その想いを成就させる為、泰の力で人間になったばかりだったのだ。 
 
 垂の様子がおかしい。垂は今日、女物の服を買いに来る為、泰と一緒に街へ繰り出していた。 
この一週間、着る物が無い垂は、泰の服を借りていた。その為、外出も侭ならず、家で泰の帰りを待つ日が続いた。 
そんなある日、見兼ねた泰が今度の週末に垂の着る物を買いに行こうと言い出したのだ。 
彼は、その言葉を聞いた時の垂の顔を忘れられない。あんなに嬉しそうな顔をする垂は、人間になれた時以来では無かったろうか。 
その時胸に飛び込んで来た垂の体は冷たかったが、泰にとってはこの上無く温かかった。 
その垂は、先程から泰の後ろを付いて来てはいるが、泰に借りた男物のTシャツは尋常では無い量の汗に塗れ、彼女の美しいラインを透けさせている。 
そして、生気を失った彼女の目は虚ろで、自分を見ていない様に思えた。 
「おい、どうした?気分でも悪いのか?」 
心配になった泰は立ち止まり、垂に声を掛ける。 
「い、いいえ…私は……大丈夫。早くお店に行きまし……」 
垂は力無く返事をし、その場に倒れた。 
「垂!垂!!垂ィッ!!!!」 
彼女は朦朧としていく意識の中、肩を抱き、自分の名を呼ぶ泰の声を聞いていた。  
 
 垂が気が付くと、泰のアパートの天井が見えた。 
「あぁ……私、失神してしまったんだ」 
周囲を見渡してみると、この一週間で垂が片付けた御陰で、綺麗に整頓した、泰の部屋が見える。 
そして、傍らに置かれた扇風機に気付き、泰が居ない事を知った。 
その時、泰が手に大量のコンビニの袋を抱えて、部屋に飛び込んで来た。 
「垂!気が付いたか!?良かった…暫くじっとしてろよ」 
泰はコンビニの袋の中身を床にぶちまける。それは、とんでもない量の氷とミネラルウォーターだった。 
「人間の日射病なら、これで治る筈なんだが…人間の医者に診せる訳にゃいかねえからな」 
泰は垂の額に氷を宛がい、水を飲ませた。 
垂はそんな泰の気遣いが嬉しかったが、体が思うように動かないので、微笑む事も出来ず、只 
「ヤス、有難う。それと、御免ね。私の体の所為で……」 
とだけ言った。 
「御前が悪い訳じゃねえ。気にすんな。しかし、妖の医者なんてのは居ねえのかよ……」 
泰が垂に訊こうとしたその時、 
「これこれ、体を冷やすのなら、氷は額よりも首筋と腋下だぞ」 
と、不意に背後から老人の声がした。 
驚いた泰が振り返ると、そこには穏やかそうな顔をした老人が立っていた。 
「あ、あんた誰だ?何で勝手に人ん家に入り込んでんだよ?」 
「ほっほ…お主の探しておる、妖のお医者さんだ」 
老人は微笑んで、垂の方へと近付いた。垂はその老人の姿を見、泰以上に驚いて叫んだ。 
「サンピタラカムイ!」 
 
 「ふーむ、成る程なぁ。尤も、予想はしておったがの」 
泰から事情を聞いたサンピタラカムイは、腕組みをしながらそう答えた。 
それを聞いた泰は、サンピタラカムイの胸倉を掴んで、今にも殴りかからん勢いで尋ねる。 
「予想してただとぉ!?だったら何で放っとくんだよ!?垂が良くなるにゃ、どうしたら良いんだ!?教えろ!!」 
バシッ!! 
胸倉を掴んでいた泰は、見えない力で部屋の壁に叩き付けられた。 
そんな二人の遣り取りを見ていた垂は、起き上がり、 
「ヤス、止めて!その方は神様なのよ!」 
と、倒れている泰を抱え起こした。 
「へ?か、か、神さんだとぉ!?」 
泰は間抜けた声を出して驚く。泰は元々信心深い方では無かったが、垂の件も在り、 
最近では、その手の者の存在も信じる様になっていた。 
泰が垂に抑えられたのを見たサンピタラカムイは、ゆっくりと説明し始めた。 
「そう言う事だの。まぁ若いの、落ち着け。先ず、私は情事に首を突っ込む程、野暮では無い。 
次に、雪女を人間にする方法なのだが…『人間が真の愛情を込めて、雪女を抱いてやる事』。 
お主と垂の場合は、これが不完全だったのだな」 
その言葉を聞いて、泰は再び不機嫌になる。 
「何だと?じゃあ何だ?俺の愛情が不完全だって言うのかよ!?」 
「待って!泰が私を愛してくれてるのは、私が一番良く知ってるわ!」 
泰は再び殴りかかろうとするも、今度は垂に抑え付けられてしまう。 
「血気盛んな若者は好きだが、程が過ぎると、損をするぞ。話は最後迄聞け。 
で、不完全と言うのは、『過程』が、だな。お主位の歳なら判るとは思うが、お主はまだ、 
垂を『抱いて』いないであろう?」 
それを聞いて、怒りで真っ赤だった泰の顔が、更に紅潮する。 
「『抱く』って……その、そう言う事かよ?」 
「『そう言う事』だ。私としては、放っておいてもそうなるかと思っておったから、何も言わなかったんだがな。 
それさえ済めば、垂は完全に人間になれるだろうよ。垂も異存は無いな?では、私はこの辺でお暇するとしよう」 
そう言うと、泰と垂の返事を聞く間も無く、サンピタラカムイは消えてしまった。 
「やれやれ、私もお節介な事だな。しかし、人間は良いのう」 
彼はそんな事を言いつつ、洞爺湖方面へと飛び去った。  
 
 
「…………」 
「…………」 
泰と垂は、互いに何も言う事が出来ず、正座で向き合っていた。サンピタラカムイの焚き付け方が余りに唐突だった為、 
戸惑っていると言う事も在るが、垂は勿論、泰にも性交の経験は皆無だったのだ。 
「あの…私シャワー浴びて来るね。ほら、沢山汗掻いたまんまだし……」 
その沈黙を破ったのは、垂の方だった。垂はその何も言えない泰を置いて、脱衣所へ向かう。 
暫くすると、垂の覚え立ての曲の鼻歌が、シャワーの音に混じって聞こえて来た。 
靖はそれを聞きながら、己の不甲斐無さに溜息を吐く。 
「はぁ…俺は情け無えなぁ。好きな女一人抱けねえのかよ」 
その時、彼は垂の思いを知る由も無かった。 
 
「ヤス、お待たせ。冷水のシャワー、気持ち良いよ。ヤスも浴びて来たら?」 
垂が風呂の戸を開けるや否やヤスを呼ぶ。 
「お、おう…」 
思考を中断されたヤスは、乏しい性の知識から、「セックスの前にはシャワーをしておくべき」 
と言う事を思い出し、風呂場へ向かう。そこには、バスタオルで体を包んだ垂が立っていた。 
「へへっ…残念でした〜」 
彼女は、らしくない悪戯っぽい表情で微笑んで見せる。 
「別に期待しちゃいねえよ」 
少し…いや、かなり嘘が混じった台詞を吐き、泰は服を脱ぎ始めた。 
「後でゆっくり見せてあげるわ」 
その垂の何気無い一言に、泰の怒張は力を得るのだった。  
 
シャアァァァァァァ…… 
泰は中断された思考を再開した。垂が何を考えているのか解らない。 
と言うよりも彼女は、サンピタラカムイが来てから少し変わった様だった。 
そこでふと考えてみる。自分は垂と交わりたいのだろうか?自問自答するだけ無駄な事柄だ。 
泰は垂と狭いアパートに同居して一週間、禁欲を続けて来たし、垂の事が誰よりも好きだ。 
そして次に、垂の立場に立って考えてみた。彼女は自分とやりたいのか…それは解らない。 
17年間、女に縁が無かった泰には、女心など解る筈も無いし、加えて今の垂は雪女と人間との半妖だ。 
互いに愛し合っている事は解っても、それ以外の事は何一つ解り合えていないのだ。 
パシィッ! 
泰は自分の両の頬を叩くと、風呂の戸を開けた。そんな事は、これから解っていけば良い。 
時間はたっぷり在る。そんな前向きな結論に辿り着いた彼は、堂々と垂の待つリビングへ向かった。 
 
 目の前に愛する相手が居る。二人は何も言わずに抱き合った。人間の慣習を良く知らぬ垂からしてみれば、 
それは至極当たり前の行為であったし、泰も彼女のふわふわとした抱き心地が大好きだった。 
垂の体に、泰の体温と共に不思議な感覚が流れ込んで来る。それを受けて、彼女の体は徐々に火照っていった。 
泰は、彼女の体温が上がって行くのを感じ、彼女もこうなる事を望んでいたと思い、先の不安は完全に吹き飛んでいた。 
恐らく人間になったばかりの垂は、自分の内に在る欲求を満たす術を知らなかったのだろう。 
言葉も無く、泰は本やビデオの見様見真似で、垂の唇を食んだ。 
「ん!…ふぁ…」 
垂の口から驚きの声が漏れるが、それはすぐに快楽による物へと変化する。単に唇を重ね、舌を絡ませるだけの行為。 
それがこんなにも気持ちの良い物だとは、御互い意外だった。 
「ぷはっ!ヤス…今のすっごく気持ち良かった。もっとして…」 
唇を離した垂は、素直に泰に更なるキスをねだった。彼女には、普通の女性に有る様な、意地や恥じらいは殆ど無い。 
それはそれで困るのだが、今の泰には、そんな素直な彼女がとても可愛く見えた。 
「もっと気持ち良い事してやるよ。えぇと…」 
泰は、経験が無い事を垂に見破られぬ様、手馴れた手付きを装いながら、垂のバスタオルを解き、彼女のたわわな胸へと手を伸ばした。  
 
 ゆっくりと手を触れる。垂のその部分は泰の想像よりも遥かに柔軟性に富み、それでいて弾力性も兼ね備えていた。 
彼はそれを意外に思ったが、顔には出さずに垂の乳房を優しく揉みしだく。 
「ンンッ…ヤス、何だかそこ、気持良いよ」 
垂の胸から頭へと、フワフワとした快感が上って来る。彼女はそれを素直に泰に伝えた。それを聞いて安心した泰は、己の手に更に力を込めた。 
「あっ…何かァッ!こ、声が、ン…出ちゃう!」 
垂の乳首が、その快楽を溜め込んでいるかの様に膨らみ始める。泰も彼女が感じている事に興奮し、己の一物を膨らませた。 
「垂、気持良いか?」 
「うん。何だか…変な感じ」 
普通の女性ならば野暮と取る様な問い掛けも、垂は自分を気遣ってくれている優しさと受け止めた。 
泰はその侭唇を膨らみ始めた彼女の乳首に付け、それを吸い立てた。 
ちゅちゅ… 
「はぁ…ん」 
性的な知識の全く無い垂が、男が聞けば誰しも興奮してしまう様な嬌声を上げる。 
つまり、今垂が悶えているのには、演技は一片も含まれていないのだ。 
性交経験の無い泰には、その事実は余りにも興奮のボルテージを高め過ぎる物だった。 
居ても立っても居られなくなった彼は、垂の乳首を甘噛みする。彼は、それがどんな結果をもたらすかを予測出来なかった。 
 
 先程、日射病で倒れた為に、泰に大量の水を飲まされた垂は、快楽と共にもう一つの感覚を覚えていた。 
それは、人間になって一週間、泰に教えて貰いながらようやく覚えた尿意だった。 
人間になった直後は、その感覚の意味が解らず、何度も失禁してしまったが、泰はそれを咎める事はせず、 
そんな時は素直にトイレへ向かうのだと教えてくれた。そして、彼女は最近やっと、それを我慢する術を会得したのだ。 
だが、先程から泰に乳房を愛撫されていると、どうしてもその部分に力が入らない。 
それでも垂は、せめてこの行為が終わる迄は、尿意を我慢していたかった。だが、その意思も泰に乳首を甘噛みされた瞬間崩壊し、 
同時に彼女の水門も決壊した。 
「あっ!あぁぁぁ…ダメー!!」 
泰は今迄と違う垂の反応に驚き、彼女の乳首から口を離した。 
布団を微妙に生暖かい液体が濡らす。 
「あ…何だ、我慢してたのか…その、そう言う時は遠慮しねえで言えよ」 
「御免なさい。でも、続けて欲しかったから」 
「そっか…ま、気にすんなよ。誰だって失敗するさ」 
垂の言葉に嬉しくなった泰は、彼女を責める気にもならず、垂の放尿が終わるのを待って、布団を干しにベランダへと向かい、 
垂はシャワーを浴びに再び風呂場へと向かった。  
 
「ねえヤス、続きを……」 
布団とついでの洗濯物を干し終えた泰の背中に、冷水のシャワーを浴びて元気さを増した垂の声が届く。 
泰は、世間知らず故に、余りに性欲に正直過ぎるのも困りものだと思ったが、今はそんな事はどうでも良かった。 
「そうだな。じゃ、御前の布団使うか。って、もう準備してたのか…ハハ」 
泰は、乾いた笑いを浮かべながら、子どもの頃に聞いた雪女の伝説を思い出していた――地方に依って多少伝承に違いは在るが、 
その中には、男の精を全て搾り取って、氷付けにしてしまう話も含まれていた。 
勿論、垂がそんな事をする筈は無いが、元・雪女である彼女は知識こそ無くとも性のプロフェッショナルに違い無い。 
先程から彼女の様子がおかしかったのは、彼女の本能が目覚めつつある事を暗示していたのだ。 
「こりゃ、明日には腰壊れてるかもな…」 
微妙な恐怖を覚えた泰は、ぼそりと呟く。幸い、その声は彼女に聞こえる事は無かった。 
 
 二人はもう一度キスから始める。泰は垂の唇から伝わる体温で、彼女が人間になりつつある事を実感していた。 
泰は先刻迄とは戦略(?)を変え、そうそうに垂を絶頂に導く事にした。唇を重ねている彼女の体を抱き寄せ、 
その両脚の間に己の太腿を差し入れて、彼女の性器を圧迫し、加えて胸板で彼女の乳房を押し潰す。 
「ん!ふうぅ…んん…」 
唇を塞がれている垂は、その刺激に鼻息を荒げた。 
泰としては、彼女をゆったりとした刺激に溺れさせてやりたいのは山々だが、早く満足して貰わないと、冗談では無く本当に命が危うい。 
やがて、刺激を与えている太腿を彼女の快楽の証が濡らし始めた。 
「あっ!ヤス!ア!ン!はあぁ!」 
唇を解放された垂は、泰も驚く程の嬌声を上げ続ける。昼間で無ければ、隣から苦情が来ているかも知れない程だ。 
だが、垂は先程から泰の太腿を動かす刺激でかなりの快感を得ている筈なのに、一向に絶頂の気配を見せない。 
流石は雪女。一筋縄ではイかないのは判ってはいたつもりの泰だったが、次第に疲れを見せ始めた。そして、太腿が攣りそうになった頃、 
垂が恐ろしい一言を放った。 
「ヤス…私も貴方を気持良くしてあげたい。私のしたい様にしてみても良い?」 
 
 ちゅ…ちゅぱっ…ちゅちゅ… 
今、垂は泰のペニスを握り、扱き、咥え、しゃぶっている。恐らく、知識では無く、雪女の本能で動いているのだろうが、 
その手付きは、泰が今迄見たどんなビデオの女優よりも手練れていたし、自分で性欲を処理する時とは比べ物にならぬ程の快感だった。 
泰の興奮を手に取る様に把握した垂は、その美しい髪を彼自身に絡め付け、更なる刺激を与えようとする。 
「垂…巧いんだな。気持良いぜ」 
「ほんほう?ふれひいは(本当?嬉しいわ)」 
先程の決意は何処へ行ってしまったのだろうか。垂と同居して一週間、性欲を処理出来なかった泰はもう、どうでも良くなっていた。 
そして、垂の小さく可愛らしい舌が、泰の亀頭の表面をなぞった瞬間、泰は己の精を垂にぶちまけた。 
「垂、済まね……え?」 
泰は図らずも垂の顔にそれをぶちまけてしまい、罪悪感に苛まれたが、垂の表情を見て、すぐにその心境は一変した。 
「はぁ…。これが泰の…美味しい」 
処女なら誰しも不味いと感じるであろう男のスペルマを垂は美味そうに舐め取っているでは無いか。 
その恍惚とした表情に、泰は安堵と共に不安を覚えた。  
 
「今度は垂の番だな」 
「えぇ、気持良くして」 
泰は彼女の股間に顔を埋(うず)める。それは、情け無い話だが、己の一物が回復する迄の時間稼ぎも兼ねていた。 
ゆっくりと垂の女の部分に手を掛ける。その部分は、薄い毛を纏ってふっくらと膨らみ、柔らかで優しげな印象を与えた。 
その玉門を両手でゆっくりと開くと、内から籠っていた臭気を含んだ空気が流れ出す。 
元々普通の人間よりも汗の分泌量が多く、その部分の洗い方も知らない垂なので、かなり汚れてはいたが、 
そんな物は泰の興奮を高める材料に過ぎなかった。そして、それを含めて見ても、垂の秘部は美しかった。 
そこは、全く卑猥さを感じさせないシンプルな構造をしており、今日迄殆ど摩擦に晒されなかった小さな小陰唇は薄い桜色をしている。 
その上端で一つに纏まっているクリトリスは、雪女故の性欲の象徴か、懸命に自己主張をするかの様に包皮の下で膨らみ、 
膣孔は殆ど開口しておらず、処女の様相を呈し、泰が貫通するのを待ち兼ねていた。 
泰は開いた指で、彼女の薄い花弁を撫で摩り、上端の雌蕊を包皮の上から圧迫した。 
「ひぅっ!!ひ、あっぁ!アハァッ!」 
明らかに先程迄とは違う垂の嬌声。それに気を良くした泰は、垂の陰核を少し乱暴に剥き出し、口に含んだ。 
「ひやぁっ!やっ!はぁっ!イィ!」 
その部分を始めて剥かれ、舐められた垂には強過ぎる刺激なのだろう。泰の腕で妨害されながらも、懸命に脚を閉じようとし、腰が逃げて行く。 
泰は、口に含んだ彼女の急所のコリコリとした感触を舌に感じながら、彼女を壁際迄追い詰めた。 
男ならばさぞかし立派だったであろう、垂の女根を先のフェラチオを思い出し、舌使いを真似て舐め、しゃぶる。 
「あーーーっ!!あぁーーーー!!」 
既に嬌声と言うよりは悲鳴に近い声。耐えられない程の刺激から逃れる事すら阻まれた垂の向かう先は、一つしか無かった。 
そして、そんな垂の状況に不思議と興奮し、股間の怒張の力を取り戻した泰は、彼女のクリトリスを優しく歯で挟む。 
「い、ひぃぃぃぃ!!」 
そして、その顎を動かした時、流石の雪女でも堪え切れぬ刺激が、垂の体に流れ込んで来た。 
 
 泰は、極まった垂の体をそっと抱き締めた。本で得た知識だが、女性がイった後は、落ち着く迄こうしてやるべきだと知っていたからだ。 
「ヤスぅ…気持良かった。もう大丈夫」 
普段の彼女ならば絶対に出さない様な甘えた声。今、泰が抱き締めている体は、遥かに彼の体温を超えていた。 
完全に人間になっていない彼女には、避妊具は要らない。そして、完全に人間にしてやるには、これから最後の儀礼が必要だった。 
だが、既に二人の目的は、垂を人間にする事から、互いに一つになる事へと摩り替わっていた。泰の心臓が高鳴る。 
「垂…良いか?」 
「えぇ…しっかりと抱き締めていてね」 
ゆっくりと二人の性器が近付く。だが、良いムードもそこ迄だった。 
「あれ?れ?えぇと、ここがこうなっていて…だから…」 
童貞の泰には、彼女の小さな膣に己を差し込む事は、困難を極めた。ここに来て、とうとうボロが出てしまった泰。 
そんな彼を見て、じれったくなった垂は、 
「泰、初めてなの?」 
と、遠慮も何も無い質問を彼に投げ掛ける。 
「う、うるせえ!んな事どうでも良いだろ!」 
泰はそれをはぐらかすが、真っ赤な顔の色が、垂の質問を肯定している。 
「ううん…良いの。泰は、初めてなのに、あんなに頑張ってくれたもの。だから、ここは私が…」 
そう答えた彼女の髪の色が雪の様に白く変化していき、体には雪女だった頃の和服が具現化されていた。 
「私、何でか判らないけど、『やり方』知ってるから…。御互い初めてだもの。失敗しても仕方無いわ」 
そうして、泰を横たわらせ、その股間にゆっくりと跨り、彼を呑み込んでいった。  
 
 初めて体験する女性――垂の中は、今迄の泰の17年間の人生で体感した事の無い感覚を彼に与えた。 
雪女として、男の精を搾り取る為に存在するその器官は、泰自身に絡み付き、締め上げて、悦楽を与えようと蠢く。 
その上、垂は殆ど人間になりかかっている為に、純粋な雪女では決して真似出来ない、心地良い体温を体内の泰に伝えていた。 
恐らくこれ程の快感を与えられるのは、人間に変化した雪女か西洋のサキュバス位の物だろう。 
垂は無意識に蠢く膣の動きに加え、激しく上下に動いて、泰を絶頂に導こうとする。 
泰も負けじと垂の動きに合わせて腰を振り、彼女の乳首と陰核に手を伸ばして、摘み潰した。 
「ハッ…ハッ…垂ぃ、俺もう…」 
先に限界を向かえた泰は、彼女にそれを宣言する。 
「えぇ!出して!私に泰の愛を沢山頂戴っ!」 
「おぉっ!」 
ビクビクと脈動するペニス。垂はそれを感じて、泰の体に凭れ掛かった。 
「ヤス、力一杯私を抱き締めて。私もそろそろ…」 
ぼんやりと覚醒し始めた意識の中、泰は言われた通り、垂の体を力一杯抱き締めた。 
「ンウン……!!」 
垂は泰の腕の中で、ビクンと体を震わせると、既に力を失っている泰の終ペニスを締め付けた。 
垂の髪が元の黒髪に戻り、纏っていた和服も消え去る。そこには、しっかりと抱き合う人間の男女が居た。 
 
***** 
 
 あれ以来垂は、多少暑さには弱い物の、倒れたりする事は無くなった。寒くなり始めた最近では、雪女の姿の方が具合が良いのか、 
しょっちゅう俺を抱えて札幌の空を飛び回っている――俺は寒くて堪らないんだが。しかも、どうもあの姿になると性欲が増す様で…… 
俺の最期は腹上死かもな。あっちに逝ったら、親父とお袋に何て説明しようか。  
 

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