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漸く雨の上がったその日の夜、蒼月潮は独り抜け出し、湿った砂浜に腰を下ろして月を見ていた。以前、日輪に聞かされた話を思い出す。
月は陰の属性。妖であるとらと同じ。何故だか月がとらの色に見える。そして、今の自分も陰に属するのだろうか。
潮は両親の事を思い出していた。今、自分がここに居るのは、どうにも紫暮に謀られた気がしてならない。
どうにもこっちに来てからの周囲の態度が気になる。まるで、腫れ物に触るかの様に自分に接するのだ。
大体が、須磨子のあの話。あれも如何にも紫暮が拵えそうな嘘だ。
そう思うと、簡単に嵌められてしまった自分に怒りを覚え、潮は砂浜ゴロリと横になった。
東京都みかど市、芙玄院。
「御馳走様」
「御粗末様でした」
「あぁ、洗い物は私がやっておくから、風呂に入って来ると良い」
「では、私は湯浴みをして来ます」
蒼月須磨子は食器を片付けると、風呂へと向かう。ふとその足を止め、
「あ、良かったら貴方も一緒に入りませんか?」
と冗談っぽく台所に居る紫暮に声を掛けてみると……
ガシャーン!!
台所から盛大に、皿の割れる音が響いた。
長く、美しい黒髪が泡に包まれる。今日の須磨子は特に念入りに髪を洗っていた。
何せ、最後に紫暮に思う存分抱かれたのは、6月に潮が修学旅行に行った時切りだからだ。
紫暮は照れている所為か、愛してくれている事は伝わって来ても、余り須磨子の事を熱心に抱いてはくれない。
年齢の差も在るのだろう。だが、女盛りの須磨子にはそれは堪えられなかった。
紫暮に会えない14年もの間、何度彼を想って自分を慰めた事か。
髪を漱ぎ、体を洗い始める須磨子。こちらも入念に洗う。
その手が乳房を撫でた時、須磨子はその部分が自分の気持に反応している事に気が付いた。
「…ふ…」
経産婦にも関わらず色素が殆ど沈着していない小さな乳首は硬く尖り、彼女はついついそこを洗う指に熱を入れてしまう。
「ん……くぅ…」
自分がこの様な淫らな行為に没頭している事を紫暮に知られるのは恥ずかしく、声を殺してそこを摘む。
そして、体を洗う為と己に言い聞かせ、薄めたボディソープを手に取って、既に充血し切っている秘部へと手を伸ばした。
「ひっん!」
ぬるぬるした手で、薄紅色の小陰唇を摘み、擦ると、抑え切れない吐息が漏れてしまう。
既にそこの潤滑は、ボディソープ以外の滑りも混ざり始めていた。
「あ…ふぅ…」
押し殺した声が浴室に響く。ここ迄来てしまっては、一度上り詰めるしか無いと判断した須磨子の指は、更に力が籠り、
淫らな部分への刺激を何度も何度も繰り返す。
人が見れば、淫乱と言われてしまうだろうか。だが、今の彼女は紫暮の事を本当に愛していたし、この昂ぶりもそれ故の物なのだ。
もう、須磨子は嬌声を上げる喉も、秘所を蹂躙する指も己の意思ではどうする事も出来なくなってしまっていた。
「ん…く…ふ…」
女の掌では包み切れぬ程に豊かに実った乳房を押し潰し、中指と人差し指の付け根に乳首を挟んで締め付ける。
もう一方の手は、綻びかけた包皮口から顔を出した真珠を指先で触れるか触れないかの刺激を与えていた。
「あっ…あっあっ!紫暮様ぁ……」
徐々に嬌声の感覚が短くなり、その声量も大きく、トーンも高まって行く。愛する夫の名を呼ばずには居られない。
達しそうになっては指を止め、何度も焦らしてはいたが、須磨子の性感は確実に絶頂に近付いていた。
それを受けて彼女の指は大きく尖り切った乳首と陰核をまるで男の様に扱き立て、貪欲にも絶頂の快楽を大きくしようと動く。
やがて、須磨子を翻弄していた悦楽の波が激しく、そして乱暴に彼女の理性を押し流した。
「ひっ!いっ!いあぁぁっ!!」
彼女の断末魔の如き嬌声は台所迄はっきりと聞こえる程の物だった。