学年で仲の良い男女数人が集まっての海水浴での出来事である。
最初に「それ」に気がついたのは厚池だった。
見間違えか。
夢じゃないのかと首を激しく振ってみる。
いや…見間違えではない。
確かに見える。
パーン、自分で頬を叩いてみる。
痛い…間違いなく夢ではない。
「どうした厚池〜」
先ほどから身動きもせずにボ〜ッと突っ立ってる厚池をからかおうと
彼とよく行動をともにする横尾がやってきた。
「さっきから君はボサッと…なにしとんの?」
「いや、さ…井上さんなんだけど」
「井上さんがどうした…あ〜さてはお前、狙ってんな!?
先に唾つけた、もとい肩に手をかけたのは俺だぞ!!」
「お前…いつの間に…いや、そうじゃなくてよ」
「あによ」
「井上さんの今日の水着、白いよな」
「それで?」
厚池が水辺でビーチボールをしている真由子を黙って指指す。
その指を下方へもっていく。
釣られて横尾の視線が下がった。
「あっ!」
「それ」に気がついた横尾が声をあげた。
顔を見合わせる2人。
「な?」と目で合図する厚池に横尾が目で頷く。
2人の表情がスケベな妄想をしている時のそれに変化した。
「それ」とは───
真由子はちょっと子供っぽい、短いフリルのスカートのついた白い水着を着ていた。
スカートの影になって見えない時もあるが、
その股間の部分が海水に濡れて、くっきりと栗色の茂みが浮かびあがっていたのだ。
真由子も、一緒に遊んでいる女の子たちも夢中で気がついていない。
しばらくすると、ビーチバレーの輪に加わっていた男子のひとりが厚池と横尾の方へやってきた。
「お前ら…気がついてるんだろ?イ・ノ・ウ・エ・さ・ん・の…」
さすが男の子というか、女の子を見る視線の鋭さでは2人に負けていない。
こくこくと頷く2人。
そこへ「なんの話だ」と別の方へ行っていたひとりが加わる。
「井上さん、やっぱりあそこの毛も茶色いんだなあ」
「濃さは?濃いのか…いや、清純な井上さんだからきっと薄いに違いない」
「見えないのか?」
「ここからじゃちょっとな」
「一緒に遊んで近くにいた俺はわかったぜ」
「で、どうよ?」
「イメージよりは、ちょっと濃い目かな」
「さすがにあそこまでは見えないよな…」
思春期真っ盛りの中学生である。
一度そっちの方向へ行ってしまった話題は止まることを知らない。
その様はもはやエロ親父の集団の様相を呈していた。
「誰か、カメラ持ってないか」
その言葉によりある作戦が立案、迅速に決行される。
もちろん真由子の水着姿を、というよりも水着が透けて
浮かび上がる秘毛を激写するためである。
カメラは横尾が防水のデジカメを持っていた。
男子たちは真由子や女子らに意図を悟られないようにビーチバレーの輪の中に加わった。
横尾はカメラマンとして。
「カメラマン」という言葉を聞いた女子たちが、訝しげな目つきで男子たちを見渡す。
男子諸君のよこしまな思惑など、本来ならば女の子たちは見透かしているはずだった。
女の子の自覚があるのか、いつも通り能天気で無防備な真由子以外は。
しかし、今の彼らの目的は彼女たちの眩しい水着姿ではなく、
真由子の恥ずかしい部分、そこ一点であった。
「まあ、いいけど…変な目でみないでよ〜」
口ではそう言いつつも、一様にまんざらでもない様子である。
むしろ横尾に対して「可愛く撮ってよ」という期待の念波が痛いくらいに突き刺さる。
横尾はそれを察してか「ナムサンッ!」と口の中で唱える。
君らは適当にしか撮らないよ、という意思表示と非難に対する覚悟である。
それでこそ男の子というべきか、否か。
男子は女子の視線から真由子の姿を隠すように布陣を組む。
誰かに水着が透けているのに気がつかれてしまうことのないようにである。
横尾は適当に走り回りながらシャッターを切り始めた。
もちろん真由子の下半身を主役として。
ビーチボールを隠れ蓑としての
「真由子のスケスケ水着激写計画」は順調に進行していた。
「きゃっ」
不意に強いボールを受けた真由子がバランスを崩す。
キラーン…厚池、横尾たち男子の間でなにか次元を超越した存在が目を覚ました。
この後数秒の男子たちの連携は神業の域に達していただろう。
横尾はこの瞬間をあらかじめ知っていたかのように一瞬で「連続撮影」に切り替える。
男子たちは横尾が撮影しやすいように、女子から真由子が見え難いように
驚くべき素早さでポジションを整える。
真由子がカメラに大股開きを向けて倒れていくところから、
厚池が手を貸して助け起こすまでを激写し終え、我らの英雄横尾はついに力尽きた。
厚池たちには横尾の心身の疲労が股間が痛いほどよくわかった。
期待通りというべきか。
水に濡れて透けた純白の水着は、恥毛だけではなく
恥ずかしいスリットからお尻の窪みまでをもくっきりと浮かび上がらせていた。
しかも、真由子が足を開いたがために
割れ目の内側の薄桃色の媚肉さえも僅かにはみ出て見えた。
それを極限の集中力を持って直視し脳裏に焼き付けた厚池たちもまた…
前屈みによる戦線離脱を余儀なくされた。
突如卒倒した横尾を引きずっていく厚池らをポカーンと見送る女の子たち。
結局、彼女たちが真由子の水着が透けているのに気がつくことは最後までなかった。
民宿へ戻った厚池と横尾たちは部屋にこもりデジカメの画像を確認していた。
女子たちには「後で選んで現像する」と言っておいた。
「横尾…すげえ!」
「横尾さん神!!」
「天は…エロに命を賭ける者にエロ才を与える」
横尾の驚異的なカメラワークに賛美の声をあげるエロ魍魎ども。
真由子の動きに合わせてスカートが捲くれ上がった時のみならず、
隙あらばカメラの視点を下げて激写。また激写。
誰も気がつかないくらいの早業である。
それでいてなお、文句を言われないくらいに他の女子の写真もきちんと撮っていた。
渡せないものを除けば、むしろ真由子の写真の方が少ないくらいである。
そして、肝心の例のシーンの写真であるが───。
「この後だ…」
ごくりという唾を呑む音。
真由子がバランスを崩し片足を上げる。
この段階でぷっくりとした土手と中心のスリットが見えている。
さらにもう片方の足がツルリと滑り、大股開きで頭から水面に落ちる。
この間、カメラは恥部を正面に捉え続け、
しかも横尾は手動で少しずつズームに切り替えていた。
最後は水着越しとはいえ未成熟な局部の度アップである。
「なんだこりゃ?」
知らない間に部屋に入って来た潮が
デジカメに写る真由子の秘部画像を見て言う。
「うわわわわわわわわわわっ!?」
慌てふためいてカメラを隠す厚池たち。
「なーにやってんだおまえら?」
「いやーちょっとデジカメの調子が悪いみたいでよ」
「そーかー…せっかくの記念なのに残念だな」
「は…ははっ、まーな!」
「おまえら、晩飯食わんのか?」
「いや、遊びすぎて疲れちまってよー後で行くわ」
「あんまり遅いと俺が全部食っちまうからなー」
潮がドタドタと階段を降りて行く音を聞いて全員がホッと胸を撫で下した。
「潮には内緒だからな」
「おうっ」
「で、どうするこの井上さんの写真」
「エロ雑誌の読者投稿に出すとか」
「はっきり写りすぎだろこれは」
「学校で売りさばく!」
「そりゃバレたら…死ぬぞ」
「この写真をネタに井上さんを脅していろいろやっちゃう、とか…」
「お前はエロゲのやりすぎだ」
結局、この場にいる皆の夜の友になるということで話の決着はついた。
余談ではあるが、横尾がネット上で流した写真は
今でも時々見ることがあるという。