う〜〜〜〜虫干し虫干し!
今、くそ親父から古本の虫干しを言い付かって全力疾走している俺は
ミカド中学に通うごく一般的な男の子
強いて違うところをあげるとすれば
こ〜んな眉毛をしてるってとこかナーー
名前は蒼月潮
そんなわけで本堂の隣にある蔵にやって来たのだ
ふと見ると
壁に化け物が縫い付けられていた
ウホッ!いい化け物…
ハッ
そう思っていると突然その化け物は
俺の見ている目の前で
肩に刺さる槍に手をかけもがきはじめたのだ…
ギシ
この槍を抜きな小僧…
そういえばこの蔵は
蒼月家の御先祖が悪い化け物を封印したことで
有名なところだった
いい化け物に弱い俺は誘われるまま
ホイホイと槍を抜いちゃったのだ
こいつーー
ちょっと虎っぽい
隈取りの化け物で
命ってなんだ動けることか、と言った
魚妖とも戦い慣れているらしく
蔵から飛び出るなり
雷で蹴散らしてしまった
よかったのかホイホイ槍を抜いちまって
わしゃー女子供だって容赦なく食っちまう大妖怪なんだぜ
こんなこと初めてだけどいいんです…。
俺、獣の槍の伝承者らしいから。
うれしいこと言ってくれるじゃないの。
それじゃあわしが白面を倒すのにとことん付き合ってやるからな。
言葉どおりとらは凄まじく強かった。
俺はというと獣の槍に魂を削られながら
とらと一緒に次々と襲い掛かる白面の使いを倒していった。
しかし、その時予期せぬ出来事が…。
うっ、うそだろ…!
白面が自分の目を潰した…
ああ、奴は獣の槍の気配でわしらが分かるらしい。
いいこと思いついた。
お前、わしの背中に獣の槍を刺せ。
えーっ!?妖を滅ぼす槍をですかぁ?
男は度胸。何でも試してみるものさ。
きっと白面から槍の気配を隠してくれるぜ。
ほら、遠慮しないで行こうぜ。
とらはそう言うと稲妻を撒き散らしながら白面に向かって駆け出していった。
あんな強大で邪悪な妖にたったひとり立ち向かうなんて、
なんて勇敢なんだろう。
とらの逞しい姿を見ているうちに、そんな危険もとらと一緒に乗り越えてみたい欲望が…
それじゃ…俺も行くぜ、とらぁ!
7つの尾のうち、残った2つは字伏が退治したぜ。
ああ…次は槍の尾だ。
いいぞ、白面が槍を怖がっているのがわかるぜ。
気を引き締めてかからないとな。
ううっ!でも強い…!
白面はいままで戦ってきたどんな妖よりも強い。
攻撃のあまりの強さに魂が削られ
俺の人間でいるための時間がどんどん少なくなっていく。
くそったれ、またあの忌々しい獣になっちまうのかよ。
まだだ、まだ槍が待ってくれる…。
ところで白面の様子を見てくれ。こいつをどう思う?
すごく…強いです…
強いのはいいからさ。
このままやられっぱなしじゃおさまりがつかないんだよな。
あっ…
ドン!ドン!ドン!超特大の稲妻。
こんどはわしの番だろ?
ああっ!!
いいぞ…白面の野郎、うろたえてやがる…!
く、くだける…
なんだぁ?白面本体まで倒したのに9本目の尾があるってのか?
精力絶倫なんだな
ちっ、ちがう…!!
なにぃ?こんどは赤ん坊ぉ?
白面の奴、赤ちゃんになりたかったのかな。
さぁな。でもいい散り様だったな。さてわしもそろそろ時間だ。
おまえ、俺を喰うんだろ。
もう喰ったさ、ハラァいっぱいだ。
とらぁぁぁぁぁ!
と、こんなわけで僕のはじめて獣の槍伝承者体験は日本を沈没から救う結果に終わったのでした…