「とらちゃんは…後悔してない?」  
『あぁ?何をだよ』  
「私と…こういう関係に、なったこと」  
一糸纏わぬ姿でとらの腕に抱かれながら、真由子がぽつりと零した。  
『…おめぇは、後悔してるのか?』  
「ううん。全然」  
真由子がそう即答したことに、とらは一瞬唖然としたような表情を見せた。  
淡く笑みを浮かべている真由子にちらりと視線をやって、口を開く。  
『…おめぇがそれでいいと思っているなら、  
わしがどう思っているかなんざ別にどうでも…』  
「でも…ね、とらちゃんが無理して私に付き合ってくれてたら、やっぱり…」  
真由子の白い額を指で軽く弾きながら、とらはため息混じりに言う。  
『だからおめぇは…愚か者だってんだよ、マユコ』  
「え…」  
『あのな、ここまでやっておいて、無理しても何もねぇだろが。  
今の今まで、おめぇとわしはここで何をしてた?  
だいたいおめぇ、毎度毎度…自分以外の奴のことを気にしすぎだぜ』  
その言葉に、真由子はほんの少し前まで  
とらと肌を重ね、身体中でとらを感じていた自分を思い出し、頬を赤く染めて俯く。  
「だけど…」  
『これだけわしの側にいて…まだわしが分からねぇかよ?  
わしはおめぇらと違って、周りの奴に気を遣ったり、無理したりする必要なんかねぇんだ。  
やりたいこと、好きなことしかしねぇし、そうじゃねぇことは相手にしねぇ。  
わしがそういう妖だってことは、おめぇだってよく知ってるだろうが』  
「うん…」  
『そこまで分かってて、それでもまだ、わしにそんなことを聞くかよ。マユコ』  
とらの胸元に抱かれたまま、真由子は上目遣いにとらの顔を見上げる。  
「…知ってても、分かってても、  
それでも聞きたいことって、あるんだけどなぁ…。とらちゃん」  
『けっ、下らんね。わしゃメーワクだ』  
「…ダメ、なの…?」  
今にも泣き出しそうな真由子の顔をちらりと見やって、  
とらはひとり胸の中で悪態をつく。  
…ったく。これだから色恋事なんざ面倒なんだよ。  
言葉があっても不安がるし、言葉しかなければ他の何かを求める。  
どうせ両方手にしたところで、もっと欲しがるんだろ?  
妖よりも人間の方がよっぽど強欲だ。欲には限度などないのだから。  
とらは頭に手をやってガリガリと掻くと、真由子の顔を覗き込む。  
瞳にうっすらと涙を浮かべながら、  
それでも期待のこもったまなざしで自身を見つめる真由子に根負けしたのか、  
盛大なため息と共にとらは言う。  
『わしはおめぇを喰うと言っただろ?  
…おめぇとのことは、わしが望んだことでもあるんだ。  
後悔なんぞするものか。おめぇを喰うためなら…何でもしてやらぁ』  
面倒であっても、それを決して嫌がっているわけではないことは、  
とらがこうして真由子に付き合っていることからも明らかだ。  
とらの言葉に弾けるような笑みを浮かべて、  
真由子は大好きな金色の妖に思い切り抱きついた。  
 
甘い甘いふたりの時間は、まだ始まったばかり。  
 

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