金曜の深夜0時過ぎ。  
その晩、真由子はベッドの上でなかなか寝付けずにいた。  
もう何度目かの寝返りをうち、ふぅ、とため息をつく。  
カーテンの隙間から差し込む月の光が、暗い部屋をほんのりと明るく照らす。  
その細い光は大好きな金色の妖、とらの髪の色によく似ていて思わず笑みが零れた。  
音を立てないようにベッドから降りて、真由子はカーテンを開ける。  
「わぁ…」  
雲ひとつない空に、ぽっかりと浮かんだ満月。  
その意外なほどの光の量に、真由子は眩しささえ感じる。  
振り返ると、月光はベッドの上まで届いていた。  
カーテンは開け放したままベッドに戻り身体を横たえ、  
ふと思いついてパジャマをはだけると、月明かりの下に自分の身体を晒してみる。  
身体の至るところに残されたとらの痕跡。  
白い胸元に咲いた紅い花に、真由子は細い指先でそっと触れてみる。  
瞬間、数日前のことだというのに、あの時身体をなぞっていた  
指先の感触が驚くほど生々しく肌に蘇って、真由子は思わずきつく目を閉じた。  
鼓動が乱れて、胸が痛み、呼吸まで苦しくなる。  
「とら…ちゃん…」  
あの時肌に触れた指の持ち主の名を、真由子は口の中で小さく呼んだ。  
とくん、と急に心臓の鼓動が跳ねる。身体が、熱くなる。  
小さく火の灯った身体の奥深くが、ゆっくりと潤んでいくのが分かった。  
真由子は下着の上から水の気配を感じるその部分にそっと触れてみる。  
(あ…)  
伸ばした指先に触れた熱く湿った感触に、真由子は思わず赤くなった。  
(やだ…)  
触れてしまった指が、真由子の身体の中の熱を呼び覚ます。  
(どうしよう…)  
余計、眠れなくなってしまった。  
 
薄掛けの布団にくるまって、真由子はきつく自分の身体を抱く。  
頭ではイケナイことだと分かっているのに、身体が言うことをきかない。  
(だめだよ…そんな…)  
(でも…)  
(こんなこと…本当はダメだけど…)  
(…少し、だけなら…)  
(いい…よ、ね…?)  
我慢出来なくなって、今度は思い切って下着の中にそっと指を這わせる。  
指先が粘性の蜜に触れる。その部分は真由子の想像以上に潤っていた。  
(何で…こんなに…。やだ、どうしよう…)  
(これじゃ、下着が汚れちゃう…)  
しばらく迷っていたが、月明かりの下、  
真由子は思い切ってパジャマと下着を脱ぐと一糸纏わぬ姿で布団に潜り込んだ。  
布団の中で、生まれたままの姿の自分を抱きしめ、  
ひどく大きく響く心臓の音に静かに耳を澄ます。  
数日前のとらの指や唇の感触を思い出しながら、  
真由子は自身の身体に白い指先でそっと触れてみた。  
「ん…ふぅ…」  
滑らかな肌の感触が指先に心地いい。  
指先が触れた場所から鈍く快感が広がって真由子を包む。  
思考に淡く霞がかかりはじめて、周りの状況が徐々に見えなくなる。  
だから真由子は…窓の外をふわりと横切った金色には、気付かなかった──。  
 
「あ…。んんっ…」  
真由子の手が指が自身の身体の敏感な部分を探り、そこをゆっくりと刺激する。  
白い指先は更なる快感を求めて、肌理細やかな皮膚の上を滑っていく。  
利き手が身体の下の茂みを分け、少女の身体でいちばん敏感な部分に触れる。  
慎ましやかな花芽に指先でそっと触れ、ゆっくりと円を描くように動かした。  
身体の奥からじわり、と溢れた蜜を指先で掬うと、  
ぬるぬると花芽に擦り付けて、その指の動きを徐々に速めていく。  
「うっ…くっ…、やぁ…っ」  
華奢な身体がベッドの上で跳ね、上気した肌に汗が滲む。  
はぁはぁと荒い息を吐きながら、  
真由子は小振りながらも均整の取れた胸に反対側の手を伸ばす。  
胸の頂の淡い蕾を指で弾くと、背中をぞわりとした快感が這いのぼる。  
蕾を指先で引っ張っり、指の腹で潰すように摘むと、  
真由子の唇から思わず声が漏れた。  
「んんっ…!あああ…っ、やあっ…!と、らちゃん…」  
いやいやをするように頭を振り、身を捩る。  
きつく閉じられた目から涙が零れて、息が乱れる。  
両の手指の動きはますます激しさを増して、  
荒い息遣いと粘性の水音が月光に照らされた部屋の中に満ちる。  
「あああっ…とらちゃん…そ、こは…ダメぇ…っ!」  
背中を強張らせて、息を詰めて、真由子は自身の与える快感に酔いしれる。  
「い、やぁぁぁぁ…っ!」  
かたちのよい足を突っ張って、びくびくと身体を震わせる。  
高みに上り詰めた瞬間、身体の奥からどっと蜜が溢れて、胎内がきゅうきゅうと収縮する。  
「あっ…あぁ…っ、ぅん…」  
強張っていた背中や、突っ張っていた足から力が抜け、  
甘い余韻に浸る気怠い身体。  
火照って敏感になった皮膚は、触れるだけで力が抜けてしまう。  
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」  
口をぱくぱくさせて肺いっぱいに酸素を取り込み、  
遠くなりそうな意識を身体の内に留める。  
乱れたシーツの上で寝返りを打ち、ベッドの下に手を伸ばす。  
床に落ちた薄掛けの布団を身体に巻きつけてようやく人心地つくと、  
真由子はふうっと深いため息をついた。  
 
ふと何かの気配を感じて、寝転がったまま窓の方に視線を向ける。  
「あ…」  
窓の外に金色の毛並を持つ大きな妖の姿を見つけた。  
「とらちゃん!」  
がばりと身体を起こす真由子。  
慌てたように窓辺へ近付くとからからと窓を開け、空中に浮かぶとらを見つめる。  
とらがそっぽを向いたままぼそりと口を開く。  
『…わしを呼んだかよ、マユコ』  
真由子の目が大きく見開かれた。  
「…とら…ちゃん…いつ、来た、の…?」  
開け放たれた窓から、とらはふわりと部屋の中へ飛び込んだ。  
ベッドの上の乱れたシーツにちらりと視線をやると、  
真由子の顔をじっと見つめ、呆れたような口調で言った。  
『いつ来たも何も…。おめぇ…わしにちっとも気付いてなかったんだな』  
とらの言葉に真由子は真っ赤になる。  
「え…。あ…やっ、やだっ!とらちゃん…見てた…の?」  
『見てたの?じゃねぇぞ。わしの名なんぞ勝手に呼びやがって…。  
いいか、マユコ。切羽詰まった声でわしの名を呼ぶんじゃねぇ。  
おめぇの声はどこにいてもわしに届いちまうんだよ。  
呼ばれて来てみりゃ…これだもんなぁ』  
とらはにやりと笑って、真由子に言う。  
『ひとりあそび…最初の方から見てたぜ』  
「!!!」  
『おめぇ…わしとのふたりあそびじゃ、最近は物足りないみてぇだな…』  
「そ、んなこと…」  
とらの言葉に目を伏せた真由子が小さな声で言う。  
『ねぇか?…わしが来たことにも気付かずに…己を貪ってたように見えたがなぁ』  
膝から力が抜けて立っていられなくなった真由子は  
乱れたベッドの上にぺたりと座ると潤んだ瞳でとらをじっと見つめる。  
『おめぇの声に呼ばれて来たが…、その様子を見る限りじゃ、  
用無しみてぇだしよ、わしゃ帰るぜ』  
真由子にくるりと背を向けて、とらは窓辺へ飛ぶ。  
 
「やだ…。とらちゃん、帰っちゃやだ」  
背後から追いかけてきた真由子の細い声。とらは足を止めると首だけ振り返る。  
『やだ、っつってもよ…。おめぇもう、散々己を貪って満足したんじゃねぇのかよ?』  
泣き出しそうな真由子と目が合った。  
胸の奥がさわ…、と小さく動いて、とらはひどく落ち着かない気分になる。  
ため息をひとつ吐いて、とらは身体ごと振り返ると窓枠に凭れたまま真由子を見つめる。  
窓の下、月の光を浴びてきらきらと輝く金色の毛並。  
その神々しいまでの姿に、真由子は状況も忘れて思わず見惚れる。  
呆けたように自分を見つめる真由子の視線に首を傾げながら、  
とらはゆっくりと口を開いた。  
『それとも…まだ足りねぇか?マユコ』  
「え…」  
再びふわりと飛んで、とらは真由子の隣にどさりと座る。  
不安そうに見つめる真由子の瞳を覗き込んでとらは尋ねた。  
『どうなんだよ、マユコ』  
視線が揺れて、真由子が目を伏せる。  
「…ひとりより…ふたりの方が…」  
『聞こえねぇなぁ、もっと大きな声で…』  
とらの言葉に顔を上げる真由子。  
覗き込むとらの瞳の中に悪戯っぽい光を見つけて、思わず涙が滲んだ。  
首筋に腕を伸ばし、ぶら下がるように抱きつく。  
さらさらした髪に隠れているとらの耳元に、真由子は唇を寄せる。  
「ひとりより…ふたりの方がずっと好きだよ。…とらちゃんが、欲しい…」  
真っ赤な顔でそう言うと、  
両手で包むように触れたとらの鼻先に真由子はそっと口付けた。  
 
照れくさそうな笑みを浮かべる真由子に  
とらはちらりと視線を向けると、そっけなく口を開く。  
『おめぇ…けっこう好き者なのな』  
「スキモノ…?え…どういう…」  
『意味分かんねぇか?…助平な女だ、っつってんだよ』  
とらのストレートな言葉に真由子は息を呑んで俯いてしまう。  
『…ま、そんなおめぇも…わしゃ嫌いじゃねぇけどな』  
とらはそう言って薄く笑うと真由子を薄掛けの布団ごと胸元に抱き寄せる。  
「…本当…に?」  
『あ?何がだ?』  
「…とらちゃんは、こんな私でも…嫌いになったり、しない?」  
とらを見上げる黒目がちな瞳の奥で期待と不安がゆらりと揺れた。  
『…へっ、何下らねぇこと言ってやがる。まだわしが分からねぇか?マユコ』  
「え…?」  
『わしゃ嫌いなものやキョーミのねぇものは相手になんぞせんのよ。  
おめぇの小さな声だって聞き逃せねぇわしだぞ。嫌いだったらわざわざ来ねぇ。  
それにな…わしもまだ、おめぇを喰い足りねぇのよ』  
その言葉に耳まで真っ赤になった真由子を見て、  
とらはにやりと不敵な笑みを浮かべる。  
抱き寄せた小さな身体をやんわりとベッドの上に押し倒し、  
身体を包んでいる布団をゆっくりと取り去った。  
ひんやりとした夜気に晒され微かに身体を震わせた真由子を  
とらは壊れ物のようにそっと抱きしめた。  
月明かりに照らされた部屋にしんしんと沈黙が降り積もる。  
絡み合った視線に引き寄せられるように、息が触れるほど近く顔を寄せた。  
真由子が小さく笑って瞳を閉じると白い顔に影が落ちて…互いの唇がそっと、重なった。  
 
『…で?何を思いながら…ひとりあそびしてんたんだ?』  
ベッドの上、とらは真由子を身体の下に組み敷いて、  
その滑らかな肌を触れるか触れないかの力加減で撫でている。  
「んっ…」  
『言わないなら…』  
白い首筋に顔を寄せると、滑らかな肌に舌を這わせ舐めあげる。  
「ひゃうっ!やぁ…っ」  
『ふぅん…わしにゃ教えちゃくれねぇのか?』  
「だ、って…。とら、ちゃん…本当は…知ってるでしょう?」  
『さぁな。知ってても…聞きたいことはあるけどな』  
真っ赤な顔でいやいやをするように真由子は頭を振る。  
「…とらちゃん…だもん…。身体が、とらちゃんを覚えてるんだもん…。  
私、知らなかった。身体の記憶って…あんなに簡単に蘇るんだね…」  
消え入りそうな声でそう言うと、恥ずかしさに耐え切れなくなったのか  
真由子は両手で顔を覆った。  
『わしはおめぇのひとりあそびを見てたが…。あれはわしの記憶じゃあねぇな』  
顔を覆った両手をとらはそっと引き剥がす。  
「え…、そんなこと…」  
自身を見つめるとらの視線を受け止めきれず、真由子は長いまつ毛を伏せた。  
『いーや、あれはなぁ…おめぇがわしにして欲しいこと、だろ?』  
とらの手が真由子の胸のふくらみに触れると、ゆっくりと撫でて手のひらに包む。  
『例えば…こんな風に…』  
「あぁ…っ」  
白いふくらみを下から持ち上げるように撫で上げ、  
ふくらみの頂にある淡い色の蕾を指先で軽く弾く。  
『…違うか?マユコ』  
「くっ…ぅうん…、やぁ…っ」  
『でも、これじゃ…物足りないんだろ?本当は…こうして欲しいんだよな?』  
 
とらはやや乱暴な手つきで真由子の白いふくらみを揉みしだくと  
淡い蕾を指先で摘んでこりこりと捏ね回し、上に引っ張る。  
「ああっ、そんな…っ。とら、ちゃん…」  
真由子は身体を震わせて、白い首筋を仰け反らせる。  
『ふぅん…随分と感度が良くなったみてぇだな、マユコ』  
露になった白い首筋にとらは舌を這わせ舐め上げる。  
「バカぁ…。とら、ちゃんが…そうしたんじゃない…」  
『…嫌なのか?』  
にやりと笑んだ顔にくらくらしながら、真由子は首を左右に振った。  
「…嫌じゃ、ない…よ。とらちゃんが触れた場所、は…」  
切なげにとらを見上げながら、真由子は切れ切れに言葉を続ける。  
「…全部…気持ち、いいの…。  
それをずっと…覚えてて…ふとした瞬間に、思い出す、の…」  
『そうかい。なら…こんなのも、覚えてるんだな…』  
胸元に唇を寄せて、頂の蕾を舌先でつつく。  
「ん…ふぅ…。っ…ぁ…」  
真由子は眉根を寄せて、とらの与える刺激に耐える。  
『これは…覚えてても、自分じゃ出来ないよなぁ、マユコ』  
舌先でつついていた蕾を舐め上げ、口に含んで舌先でそっと転がす。  
ちゅっちゅと音を立てて吸い上げると、真由子の身体が跳ねた。  
「ああっ…!だ、から…ひとりより…ふたりの方が…」  
弾む息の下、とらを見つめながら真由子は小さく言葉を続けた。  
「…好き、なの…」  
大きく胸を上下させて喘ぐ真由子の口を、とらは自身の唇で塞ぐ。  
触れた唇が小さく動いて、真由子のそれはとらに柔らかく食べられた。  
誘うようにうっすらと開いた隙間からとらの悪戯な舌が忍び込み、  
温かな口内を舌先でくすぐっていく。  
真由子の舌もすぐにそれを追いかけ、微かな水音を立てながら絡み合う。  
歯列を撫で、舌を吸い、互いの甘い唾液を交換し、  
強く抱き合いながらふたりは深く口付けた。  
 
唇が離れると、つうっと伸びた銀色の糸がふたりを繋いだ。  
頬を上気させた真由子が、潤んだ瞳でうっとりととらを見つめる。  
「とらちゃん…好き…」  
艶っぽく掠れた声。  
その微かな声がとらの耳を弄り、ぞくぞくとした感覚が背筋を這い上がる。  
とらは露になった真由子の白い額にそっと唇を押し当てた。  
「とらちゃん、大好きだよ…」  
嬉しそうに顔を綻ばせた真由子が小さな声でもう一度囁く。  
『ばぁか。知ってらぁ』  
組み敷いた小さな身体を、幾度も柔らかく舐め上げる大きな舌。  
温かで濡れた感触が肌に触れる度に、真由子は身体を震わせ息を弾ませる。  
「や…ぁん…。と、らちゃ…ん、くすぐったいよ…」  
荒い息の下で切れ切れにそう言って、真由子はとらの腕を抜け出そうと身を捩る。  
『逃げようとしても無駄だぞ、マユコ…』  
とらは真由子の耳に唇を寄せ低く囁くと、桃色に染まった耳朶をやわやわと食んだ。  
「んぁっ、ふぅ…」  
真由子の口から甘い溜息が漏れ、伸ばされた細い腕がとらの首筋をぎゅっと抱き寄せる。  
 
意外なほどの強さで抱きしめられ、とらの動きは封じられた。  
『…これじゃ動けんぞ、マユコ…』  
「いいの。そのままじっとしてて、とらちゃん…」  
自身の腕の中で身動きできずにいるとらに、真由子は小さく安堵の息を吐く。  
触れた場所から伝わる真由子の早鐘のような心臓の鼓動。  
しがみついてくる温もりが愛しくて、もっと知らない別の顔が見たくて、  
とらは真由子に悟られないようこっそりと金色の髪を変化させた。  
ふいに脇腹を撫で上げる柔らかな感触に、真由子の身体が大きく跳ね、  
思わずとらを抱きしめていた腕から力が抜ける。  
視線を下に落とせば、封じられた舌の代わりに  
艶やかな金糸が踊るように動いているのが見えた。  
「やっ…。ズ…ルイよ、とらちゃん…」  
頬を上気させ、熱に浮かされたような潤んだ瞳で真由子は切なげにとらを見上げる。  
『ばーか。何度も言っちゃいるが、わしゃ妖なんだぜ?』  
とらはそう言って不敵な笑みを浮かべると、金色の髪で柔らかく真由子の身体を撫でる。  
丹念に、しかし確実に真由子の快感のポイントを探り当て、刺激を与えていく。  
真由子の透き通るような白い肌がさあっと淡い桃色に上気する。  
眉根を寄せた苦しげな表情が、噛んだ唇の隙間から漏れる小さな喘ぎ声が、  
とらをじわじわと煽っていく。  
 
普段の清楚で美少女然とした真由子からは想像もつかない寝乱れた姿。  
自身の身体の下で艶やかに肌を上気させ、甘い喘ぎを漏らす真由子。  
自分だけが知っている真由子は普段の何倍も美味そうに見え、  
実際に味わってみればまさに極上の「でざぁと」なのだ。  
とらは何とも言えない満足げな笑みを浮かべ、真由子の白い頬を指先で優しく撫でる。  
『マユコ…』  
真由子は頬を撫でるとらの指を捕まえて、その指先に大事そうに口付けた。  
小さく笑みを零して、とらは真由子の唇を指先でなぞる。  
「とらちゃん…。な…んか、何かね…ヘンな感じに…なってきちゃった…」  
息を弾ませた真由子が戸惑ったような声で言う。  
『…何がどう、ヘンなんだ?』  
紅く色付いた唇を指先でたどりながら、とらが淡く笑う。  
「……」  
何も言えず恥ずかしげに瞳を伏せた真由子を抱きしめて、とらは足の間に手を滑り込ませる。  
「あっ…」  
触れた指先が立てた微かな水音。  
『…もう、欲しくなっちまったか?』  
とらは喉元でくくっと嬉しそうに笑う。  
「…だ、って…」  
『だって…何だ?』  
「とらちゃん優しいし、キスも…上手なんだもん…」  
さらりと零れた金色の髪をぎゅっと握り締めて、困ったような顔がとらを見上げた。  
『…いいじゃねーかよ。それとも、嫌なのか?』  
「イジワル。…嫌なんかじゃ、ないよ…」  
手の中の金糸に唇を押し当てて、真由子が上目遣いにとらの表情を伺う。  
 
『…どうした?』  
何か言いたげに見つめる視線に気付いて、とらが言葉を促す。  
逡巡するように瞳が揺れ、小さく息を吸うと思い切ったように口を開く。  
「とらちゃん、早く…。私、もう…」  
そう言って首筋にぎゅっとしがみつく真由子に、  
とらの中で堪えていた何かがぷつりと音を立てて切れた。  
 
 
首筋に回された細い腕を解いて身体を起こすと、  
とらは真由子のしなやかな両足に手を掛け左右に大きく広げる。  
そこは先程からの丹念な愛撫と口付けによって既にとろとろに蕩けていた。  
大きく猛り立った昂ぶりに手を添え、溢れる蜜で潤んだ入り口をつつくと、  
真由子はびくりと身体を震わせとらを見上げる。  
「と、ら…ちゃん…」  
消え入りそうな声で名を呼んで、真由子が小さく頷いた。  
真由子と目を合わせたまま、とらはじわりと体重を掛け腰を進める。  
ちゅくり…と微かな水音を立てて、とらの昂ぶりは真由子の胎内へと沈み  
ゆっくりと押し広げながら深い場所を目指し進んでいく。  
「んっ…あぁ、ん…。と、らちゃ…ん、大きい、よ…」  
狭い胎内を押し広げながら、じりじりと割り入ってくる熱い塊。  
隙間なく満たされていく感覚に、真由子の背筋を震えにも似た快感が駆け上がる。  
きゅうきゅうと締め付けてくる真由子に、とらは思わず苦笑いを零す。  
『マユコ…そんなに、締め付けるな』  
「だ…ってぇ…。気持ち、いいんだもん…」  
甘い吐息とともに吐き出される囁き。  
とらは覆い被さるように身体を倒し、組み敷いた小さな身体を抱きしめる。  
『痛くねぇか?』  
最奥まで昂ぶりを納めたとらが耳元で小さく尋ねた。  
「うん…大丈夫…。とらちゃん…優しいね…」  
身も心もとらでいっぱいに満たされて、真由子の顔には自然と笑みが浮かぶ。  
とらは顔を寄せて綻んだ目元に柔らかく唇を押し当てる。  
くすぐったそうにくすくすと笑う真由子の  
額に、頬に、まぶたに、とらは次々と口付けの雨を降らせた。  
「…とらちゃん…」  
『…何だ?』  
真由子の小さな両手が包み込むようにとらの頬に触れ、  
細い指先がとらの唇をゆっくりと撫でる。  
「…好き、大好き…」  
とらの大きな顔を零す息が感じられるほど近く引き寄せ、  
真由子が啄むような小さな口付けを目の前の唇へ落とした。  
 
火照って敏感になった真由子の身体は、とらの手が触れる度にぴくりと反応を返す。  
粘性の蜜を滔々と溢れさせている蜜壷を、  
とらは深く沈めた昂ぶりで緩く掻き混ぜながら  
その上の花芽を指先で弄び、胸元の蕾を舌先で転がす。  
「や…っ!と、ら…ちゃん、こ…んなの、ダメぇ…っ」  
敏感な部分を一度に責められ、真由子はあっという間に高みへと追い立てられる。  
『なーにがダメなんだよ。気持ちいいんだろ?』  
「んんっ!で、も…っ、お、かし…くなっちゃう…」  
『いいぜ。おかしくなっちまいな、マユコ』  
壊れないように壊さないように、繋がった腰をゆったりと動かし、  
深く突き立てていた昂ぶりを浅い場所まで一気に引き抜いた。  
「っ…!」  
ざらざらとした快感が真由子の背筋を乱暴に撫でていく。  
もっと──もっと深い場所にとらを感じたい。  
身体の中をとらでいっぱいに満たして欲しい。  
快感の高みを漂っている身体は、しかし最後の最後を越えられずにいる。  
霞む視界の中に眉根を寄せたとらの顔が見える。いつになく熱い息が頬に触れた。  
「と、ら…ちゃん、いいよ…」  
浅い呼吸の合間に言葉を紡ぐと、とらが不思議そうな顔をする。  
『…何がだ?マユコ…』  
「こ…わして、も…いいよ」  
真由子の口からうわ言のように零れた言葉に、とらがニヤリと笑う。  
『バーカ、壊さねぇよ…。  
壊しちまったら、もう二度とおめぇを喰えなくなるだろ?』  
細い腰に手を掛け、ぐちゅぐちゅと淫らな水音を立てながら  
とらは浅い部分を小刻みに刺激する。  
焦らすようなとらの動きがもどかしい。  
「と…ら、ちゃん、もっと…」  
胎内がじわりと狭くなり、とらを奥深くへ引き込もうと蠢く。  
『まだだ…。でざぁとはよく味わってゆっくり喰うもんだ…』  
「イ、ジワル…」  
泣き出しそうな顔で見つめられて、とらの嗜虐心が更に煽られる。  
 
『言っただろ?わしは妖なんだ、親切なわけねぇだろが』  
荒い息と共に吐き出された言葉に、真由子は大きく首を左右に振った。  
いつだって優しいとそう伝えたかったのに、  
漏れるのはすすり泣くような声ばかりでもう言葉にならない。  
休むことなく切れ目なく与えられる快感の波。  
溺れてしまわないように降り注ぐ金糸を指先が白くなるほど強く握り締める。  
浅い部分を捏ねていた昂ぶりが奥まで押し込まれ、  
その強烈な衝撃に身体が震えた。  
『マユコはここが…イイんだよな…』  
奥の柔らかい場所に繰り返し突き立てると  
腰を跳ね上げ身を捩って、真由子が細く高い声で啼いた。  
「あああっ、やっ!と…らちゃ…ん、もうっ…!」  
びりびりとした快感に身を捩り甘い喘ぎを漏らしながら、  
真由子の華奢な身体はとらの下で幾度も絶頂の波に震え、  
その度にとらの昂ぶりは真由子にリズミカルに締め付けられる。  
とらの腰の辺りにじわじわと忍び寄る射精感は、  
度重なる強烈な締め付けに今や耐え難いものとなっていた。  
もっと深く長く繋がっていたいのに、牡の性はそれを許さない。  
とらの口元に淡く自虐を帯びた笑みが浮かぶ。  
喰ってしまいたいと思い、近付いて、身体を繋いでみれば、  
実際に喰われて呑まれているのはいつだって己の方だ。  
いつだって最後は…小さな弱っちい人間の女に  
こんな風に囚われ溺れてしまう。  
全身を上気させうっすらと汗を浮かべている真由子は、  
焦点の合わない瞳でとらを見つめ、幸せそうに微笑んだ。  
その穏やかな表情に、とらの胸の奥で沸き起こる強い感情。  
喰うことよりも手許に置いて愛でることを選んだのは他でもなく自分だ。  
とらは更に深い場所を求め、真由子の両足を抱えると真上から突き立てるように深く  
 
貫く。  
「んあぁ…っ、と、ら…ちゃん!とら、ちゃ…ん!」  
名を呼ぶ声が一段と高くなる。  
『マ、ユコ…いくぞ…』  
急激に膨張していく欲望に任せ、とらは一際強く腰を打ち付けると、  
ぶるりと身体を震わせ真由子のいちばん深い場所へ己の精を放った。  
胎内を満たす熱に背中を仰け反らせ、  
真由子の身体は幾度も痙攣した後、とらの下で崩れ落ちた。  
 
荒い息を吐きながら力なくぐったりと横たわる真由子の身体を、  
とらはそっと抱きしめる。  
「とら、ちゃん…ありがとう…」  
艶やかに上気した顔に穏やかな微笑を浮かべ、真由子が眩しげにとらを見上げた。  
『今日も美味かったぜ、マユコ…』  
そう言ってとらは真由子の白い額に柔らかく口付ける。  
ぱあっと弾けるような笑みを零して、  
真由子はとらの胸元にぴったりと身体を寄せた。  
「とらちゃん…優しい、よ…」  
『あぁ?何言って…』  
「親切なわけない、って言ってたけど…いつだって優しいよ…」  
ふかふかとした金色の胸に顔を埋めて真由子が小さく言う。  
返事の代わりに、とらは真由子の身体を胸元に抱き寄せた。  
身も心もすっかりとらに満たされた気怠い身体は、  
とらの温もりに包まれて急速に眠りの淵へと誘われていく。  
「とら、ちゃん…」  
『ん?』  
「目が覚めるまで、側に…いて、ね…」  
小さな手に探し出したとらの指を握り締めて、真由子は目を閉じる。  
程なくして腕の中から小さな寝息が聞こえ始めた。  
何もかもを預け、曝け出し、安心しきった寝顔を晒す真由子に  
とらは仕方ねぇなと言いたげに僅かに口の端を上げる。  
規則正しい寝息に眠気を誘われ、とらは欠伸をひとつすると目を閉じる。  
腕の中の頼りない、だけと確かな温もりを大事そうに抱え  
とらは深く息を吐くと訪れた穏やかな眠りにそのまま身を任せた。  
 

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