「…そこはここに書いてある通りで……そう、そうです…」  
 
今、土曜日の午後2時ごろ。私は自分の部屋で未知留ちゃんの講習を受けていました。  
何故、折角の休日で未知留ちゃんも忙しいでしょうに、  
わざわざ家に来てもらってまで講習を受けさせてもらっているのかというと、  
きっかけは本当に、本当に些細な事でした。  
 
昨日あった国語の授業が何故か頭に入ってこなくて、授業が終わった時に溜息をついていました。  
すると、  
「どうしたの…?一夏ちゃん…?」  
という声が聞こえたのでびっくりして顔を上げると、そこに未知留ちゃんの顔がありました。  
迷いましたが、真っ直ぐに私の目を見る未知留ちゃんの視線に負けて打ち明けると、  
「なら…明日は空いていますので、家まで行って教えましょうか…?一時頃になると思います…」  
と、未知留ちゃんは即答で言ってたので、突然の事だったので気が動転したのでしょう。  
反射的に「はい」と答えてしまいました。  
 
未知留ちゃんはほんの些細な事で決まってしまった約束事を律儀に守ってくれて、  
休日だというのにわざわざ私に講習をしてくれているという訳です。  
 
「あの、本当にこの後、してくれますよね…その…」  
 
…そうでした。確か、未知留ちゃんは「講習を受けさせてくれる代わりに、「お礼」をしてほしい」  
と言っていたという事を忘れていました。お礼、ですか。マッサージをする、くらいしか思いつきません。  
確かに未知留ちゃんは普段色々と疲れていそうですし、  
「休日にゆっくりと知り合いにマッサージをしてもらって疲れをほぐすのも悪くない。」  
とかを思ってわざわざ私に講習を受けさせてくれているのでしょうか。  
ここまで良くしてもらっているのですから、それくらいの事は喜んでしようと思っています。  
 
「…手が止まっていますよ…?」  
 
えっ、あ、は、はい…  
 
「ふふ…じゃあ、ここが終われば、授業は終わりにしましょうか…?」  
 
突然の言葉にびっくりした私を笑う未知留ちゃんは、少し嬉しそうにしています。  
見ると、昨日の授業の内容がもうすぐ終わりそうなところまできていました。分かり易い未知留ちゃんの説明を聞いていると、  
聞き取ったり書き写すのに気がいって、授業の時のように別の事まで気がいきません。  
 
 
ノートに書く事も全て書いて、勉強道具の片付けをしていると、  
未知留ちゃんがやけにそわそわしているのが気になりましたが、お礼の事でしょうか?  
今日はいつもと違ってせっかちですが、どうしてなのでしょうか……?  
 
「じゃ、じゃあ、お礼を……」  
 
未知留ちゃんは、案の定私が片付け終わったと思った声をかけてきましたが、やっぱりお礼の事なんですね…  
いつも落ち着いている未知留ちゃんがここまでそわそわする程の「お礼」というのは、  
どうやらマッサージ程の事ではない様に思えますが……気になります。  
 
「一夏ちゃんの準備が良かったら、今すぐにでも始めたいのですが……」  
 
…私の方の準備は良いですが、その「お礼」っていうのは、何の事なんですか?  
 
「え……!?…あ…えっと……ま、まっさーじ…」  
 
え?何ですか?  
 
「ま、まっさーじをして下さい……!」  
 
未知留ちゃんが顔を赤くして、搾り出した様な声を出した事に少しびっくりしましたが…  
……マッサージ…?それじゃあ、私が予想していたのと同じって事ですか……?  
もっと衝撃的なお願いを期待していた私は、拍子抜けしてしまいました。  
やっぱり未知留ちゃんも疲れているのですかね。  
…でも、何であんなに恥ずかしそうに言ったのでしょうか?  
 
「ま、まっさーじ、して下さい…」  
 
…大丈夫ですよ、ちゃんと聞こえてます。未知留ちゃんも疲れてるんですね……  
なら、そこのベッドに横になってくれますか?  
 
私がそう言うと、未知留ちゃんは私のベッドに敷いてある布団の上に仰向けで横になります。  
私もベッドに入り、未知留ちゃんの右足にまたがる様な体勢になりました。  
 
「じゃ、じゃあ、始めて下さい…」  
 
私はマッサージなんてした事がなかったので、最初何処を揉めばいいのか分かりませんでしたが、  
肩揉みをする時に腕も揉む事を思い出したので、まずは腕を揉んでみました。  
 
「い、一夏ちゃん、ち、違うの……そこじゃないの……」  
 
す、すいません…マッサージとかした事無いんで…どこを揉めばいいですか?  
 
「……」  
 
また顔を赤くして顔を横に向けてしまう未知留ちゃんですが、何でなのでしょうか…?  
さっきからずっとこんな感じですが、どうしたのでしょう、未知留ちゃんは…  
 
…えっと、どこを揉めばいいんでしょうか…?  
 
「……わ、…」  
 
「わ」…?  
 
「…わ、私が揉んでほしいのはぁ……」  
 
……?  
 
「……ここですっ…!」  
 
えっ?  
 
「あっ……!?はぁ…ぁぁ……!!」  
 
えっ?えっ?何ですか?何なんですか?  
 
私の手の中にあるのは、未知留ちゃんの、胸?  
 
「やぁぁっ…!……つ、強過ぎ…ですっ……!」  
 
強過ぎ…?  
 
「だめっ……ですっ…!そんなに強くしたらぁ……!」  
 
え、っと…少し待って下さい。今どういう状況なんでしょう?  
確か、未知留ちゃんが急に私の両手を掴んで、胸に乗せて……  
 
……混乱してて気付きませんでしたが、私は知らない間に未知留ちゃんの胸を…  
それも足を跨ぐような体勢で上半身にある胸を揉んでいるので、体重がかかって凄い力が……  
 
「きぅぅ……!も…だめ……ですぅっ…!!!」  
 
未知留ちゃんはシーツを掴み、一回身体をビクンと跳ねさせました。  
……?付いている右膝に、何か水が付いたような感触が……?  
 
水が付いた感触がした辺りを見てみました。  
…確かに、とろとろした水……液体…が付いています……ですが、これは何の水なのでしょうか…?  
 
「い、一夏ちゃん……?」  
 
未知留ちゃんが私の様子に気付いてか、顔を上げてこちらを見てきます。  
まだ息を荒げていますが、やっぱり私が胸を揉んだからなのでしょうか…あ、そう言えば……  
 
え、えっと、未知留ちゃん、何で胸、揉んでほしかったんですか……?  
 
「……え……!?…えっと……その…あの…」  
 
未知留ちゃんは顔を赤くして、俯いてしまいます。  
……そう言えば、女の子は胸を揉まれると気持ちが良くなるって、どこかで聞いたような……  
 
…え、えーと、じゃあ、胸を揉まれて、気持ちが良かったんですよね?  
 
「え…!?…あの…その………はい……」  
 
未知留ちゃんは一瞬驚いて、恥ずかしそうに言いましたが、やっぱり胸をマッサージしたら気持ちがいいらしいです。  
 
「……あ、そう言えば足に水が付いてたんですけど……分かりますか?」  
 
そう言うと、私は足に付いていた水を掬って未知留ちゃんに見せました。  
 
「あ……っ!……わ、分かりませんっ……」  
 
未知留ちゃんはまた顔を真っ赤にして、焦ったようにそう言います。  
 
「未知留ちゃんがビクンってなった時に付いたと思うんですけど……本当にしり……未知留ちゃんっ!?」  
 
未知留ちゃんは耳とか額まで赤くさせて、ふらっとこっちの方に倒れてきました。  
どうしてこんなに恥ずかしがるのか分かりませんが…何かあるのでしょう。やっぱり。  
気になりますが…未知留ちゃんは教えたそうにありませんから、諦めましょうか…。  
そんな事より、まずは未知留ちゃんの事が心配です。  
 
「未知留ちゃん、起きて下さいっ」  
 
未知留ちゃんの身体を両手で強請りながら呼びかけてみましたが、返事がありません。  
強請っていると、偶然私の顔の前に未知留ちゃんの顔がくるような体勢になります。  
その時に、私の頭の中に、ある気持ちが芽生えました。その気持ちはひどく場違いで、  
何でそう想うのか、自分でも分かりません。  
ですが、本当に、正直にそう思ってしまったのです。  
 
「かわいい…」  
 
思わず、口から声が零れます。本当に、かわいい。と感じてしまったのです。  
切り揃えられた藍色の長い髪、高く、気品を感じさせる鼻。スプーンがようやく入るくらいの、小さな口。  
今は閉じていますが、開けると大きな目。赤い頬。普段の不思議な感じとは違って、  
こうやって寝ている…のかどうかは分かりませんが、とにかく今の未知留ちゃんは、とてもかわいく感じました。  
 
ふと、未知留ちゃんの唇が目に付きました。  
……小さくて、ピンク色の唇。何故か、その唇に吸い寄せられるようにして、知らない間に顔が動いていました。  
 
未知留ちゃんの、唇……何故か凄く興奮してきますが、これはなんなのでしょうか……?  
舌を入れてみると、暖かい感触がかえってきます。これは、舌でしょうか。  
 
「あっ……ふっ……」  
 
……知らない間に声が出てしまったようです。ですが、そんな自分の声に更に興奮して、  
未知留ちゃんの口の中で激しく舌を動かします。  
おいしい。と、正直にそう思いました。  
 
ショーツの下がムズムズしてきたので、手で触ってみると何ともいえない感じになりますけど、これは……  
気持ち良い……です。  
 
「はぁ……はっ……ぁっ……」  
 
……だめです…本当に気持ちいい……  
 
くちゅくちゅと水がたれるいやらしい音が聞こえてきます……  
 
も……だめ…ですっ……!  
 
「あっ……!!!」  
 
ショーツの下のトコロから、一気に水が吹き出たような感じが……  
でも、気持ちよすぎてどうでもいい気がします……  
 
大分治まった時に、唇を離しました。唇と唇の間に、細い糸のようなものができています……  
 
「一夏ちゃん……?」  
 
え……?未知留ちゃん……こんな時に……  
 
「一夏ちゃん……何して……えっ……!?」  
 
未知留ちゃんが、まだ糸を引いている唇で驚きの声を上げました……。  
 
注意してみなくても、どこを見ているのか分かります。私が、いじっていたトコロを見て……。  
 
「み、見ないで下さい……!」  
 
何故か今更恥ずかしさが沸いてきて、両手でスカートを押さえます。  
 
「もしかして……一夏ちゃん……私と、ちゅーしながら……?」  
 
唇の違和感に気付いたのか、未知留ちゃんが赤くなった唇を押さえます……。  
もう、駄目です……こんな変態みたいな事して……許してくれる筈、無いですよね……。  
うう……私が悪いのに、泣きたくなります……。  
 
「あの……う、嬉しい、です……」  
 
「……え?」  
 
「私……一夏ちゃんに、そういう風に見られて……嬉しいです……」  
 
「えっ……?えっ……?」  
 
「一夏ちゃん……!好きですっ……!」  
未知留ちゃんは、いきなり抱きついてきました。……でも、好きですって……?  
 
「一夏ちゃんがこういう事……したい時には、いつでも言って下さいね……?  
喜んで相手しますよ……?」  
 
頬を赤くしてそういう未知留ちゃんを見ていると、未知留ちゃんがそういうのなら、何でもいいか。  
という気持ちになるのが、自分でも不思議でなりません……。  
 

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