いよいよこの時がやってきた。
私はラ○オライフの通販で購入したキーピック一式を持って、橘邸の隣にある空き家の前に居る。
閑静な住宅街、この時間なら人が通る事はほとんどない。
仮に通るとしてもこの私が遠くから歩いてくる人の気配を察知し損ねる事は無い。
準備は万全。下調べもばっちり。この家の玄関の鍵はよくあるシリンダー錠で、
私がこの日のために練習を重ねたピッキングテクニックを駆使すればものの数秒で開けられる。
同誌にはピッキングツールの他に赤外線透視装置といった怪しいものもたくさん売られていた。
それを使って通常のビデオカメラを改造すれば一夏ちゃんの…
いいえ、私が一夏ちゃんを騙して撮影するなんて事は出来ない。もし誰かがこのカメラを使っても、写されている映像を普通のものにしておく事も出来るが、
純真な一夏ちゃんを騙すなんて事は…それはまたの楽しm…ではなくて…。
ふと…。この家、何だか異常な気配を感じる。中に人が居るのだろうか? まさか先客が…。…もし一夏ちゃんを隣家から盗撮してる輩が居たとしたら、天誅を下すまでだ。
…ラジオライフの通販に一緒に乗ってたスタンガンでも購入しておけばよかったかしら。強行手段に出る時も使え…。
いえいえ、そうじゃなくて。でもどうしよう、本当に誰か居たら…。恐らくだけど、この気配は生きてる人間のものではない。…この家が空き家なのは、ここで殺人事件が起こったからとかそういうんじゃ…。
…そういえば、今朝見かけた一夏ちゃんの家庭教師だという二人の大学生の内の一人には違和感を感じた。悪い人ではなさそうだし……いえ、それよりも、もう一人の線の細い人に対する一夏ちゃんの視線だ…。
あれは間違いなく恋する女の子の視線だった。あの人は気付いてたのだろうか。
あの手のタイプは慎重派で、他人の感情を読み取るのも長けている。二面性があるタイプではなさそうだが、一夏ちゃんに手を出すような事があれば、一夏ちゃんには可哀想だけど、通報します。
何か一緒に罪をでっちあげれば一発実刑も…、ああ、そうじゃなくって…!
とにかく、今すべき事はこの玄関の鍵を開けて中に入る事だ。
…? 変な気配が無くなった。理由は分からないが、これは好機。この家について調べるのは後でもいい。今は……
ガチャン
「ぃやあったぁああああああああ!!」
思わず心の中でガッツポーズ。だが体は、早まる動機を抑え、即座にドアの中に。そして再び施錠。
この辺りはオートロックが普通だけどこの家は違うみたい。…いよいよもって、侵入者にこの家の住人が殺害された可能性が…。…いえいえ、それは後でいいの。
…私は階段を上がり二階の……一夏ちゃんの部屋と対面になってる、部屋へとついた。暗いところから明るいところは良く見えるが、その逆は見づらい。
あ、ああっ…!
何という事でしょう。カーテンの存在を忘れていました。当然といえば当然なのですが、一夏ちゃんの部屋はカーテンが閉まっていて中の様子を伺う事が出来ない。
…しかし幸いカーテンは薄く、これなら例の赤外線透視装置を改造すれば何とか…。そんな機械に頼らずに、自分のこの目で愛しい彼女の姿を焼き付けて起きたかったから、盗撮ではなく、リスクを犯してここまでしたというのn……ん?
人影が…二つ? 背の高さから一夏ちゃんのおばさんではないし、家庭教師でもない様子。…くくっ…このカーテンが…。
……! お、女の子? 一夏ちゃん、私というものがありながら……いえ、男の子よりはまだ良いのでしょうか。それに一夏ちゃんが最初からそのケがあれば手間も省けるとうもの。
…ああ、また違う。違うといえば、今一夏ちゃんの部屋にいる子は誰でしょう? 蛍子ちゃんでも皐月ちゃんでもないようですが、私の知らない子でしょうか。
それはそれで腹が立ちますが、蛍子ちゃんや皐月ちゃんを呪い殺さずに済んで…これも違う。
そもそも一夏ちゃんの部屋に居るからといって、そんな関係とは限りません。当たり前です。
明日一夏ちゃんに問い詰め…るのは不味いですね。何て聞きだせばいいのでしょうか。
「一夏ちゃん、一夏ちゃん以外の女の子の匂いがしますが、どうしs」
…これもダメ。
ああ…一体どうすれば…。今夜は眠れそうにありません。
翌日、私は出会う事になるのでした。一夏ちゃんの部屋に居た子と……