『部屋くる?』  
 
 そんな簡単な5文字のメールで、俺と七海の時間は始まるんだ。  
   
 
「いらっしゃい。トキヤいないよ」  
 
 金曜の夜。俺は七海を寮の俺たちの部屋に招き入れた。  
 
 七海春歌。  
 トキヤのパートナーで、作曲家コースの女の子。  
 たぶんトキヤが好きな女の子で、たぶんトキヤを好きな女の子。  
 
「おじゃまします」  
 
 廊下に誰もいないことを確認して、普段よりラフな格好をした七海が部屋に滑り込んだ。  
 ドアを後ろ手に閉めて、ふぅ、と息をつく。  
 
「誰にも見つからなかったでしょうか……」  
 
「大丈夫じゃないかな。みんなもう部屋でゆっくりしてるころだし。  
 マサなんかもう寝てるかも」  
 
 時計の針は、もうすぐ夜中の12時を回るころ。  
 普段の俺なら、そろそろ寝よっかなって時間。  
 
「ごめん部屋散らかってて。あ、適当に座っていいよ」  
 
 ドアの前でちょっと居心地悪そうに立ってる七海に声をかけて、  
 俺はベッドの上でドサッとあぐらを組む。  
 少しだけ迷ってから、七海は俺の隣に、ぽすん、と座った。  
 
 七海が俺たちの部屋に来るのは初めてじゃないし、俺と部屋で二人きりになるのも初めてじゃない。  
 でも、七海はいつまでたっても慣れてなくって、今も俺の隣でちょっぴり硬くなって、きょろきょろしてる。  
 そういうところ、すごく可愛いって思う。  
 
「一十木くん、ゲームの途中だったんですね。どんなゲームしてたんですか?」  
 
 そういえば七海を待ってる間にやってたゲーム、一時停止にしたままだった。  
 
「あ、そうそう、今ちょうどさー……」  
 
 そんな感じで七海と色々しゃべったり、ゲームしたりして、気づいたら大体いつも夜中の2時くらい。  
 
「やった!俺の勝ち!ほんと、七海ってゲーム弱いよね」  
 
 レースゲームを一緒にやると、10回に8回くらいは俺の勝ちだった。  
 ちょっと拗ねた感じで七海は、  
 
「私が弱いんじゃなくて、一十木くんが強いだけですよー」  
 
「でも俺、トキヤとやったら大体負けるよ?  
 ていうかトキヤが勝つまでやめさせてくんないんだけどさ。  
 『勝ち逃げですか?卑怯ですよ』とかなんとかって」  
 
「一ノ瀬さんがですか? なんだか意外です」  
 
 七海が、くすくすって笑う。  
 
 ……やばい、なんかだめだ。  
   
 七海かわいーっていうほわほわした気持ちと、  
 トキヤの話楽しい?っていうどろどろした気持ちで、  
 どうにかなってしまいそう。  
   
「七海、しよっか」  
   
 そのまま俺は、七海をベッドに押し倒した。  
 
   
「ん、あ……」  
 
 スカートの下に手を入れて、七海の女の子の部分をショーツ越しに探ると、  
 七海のソコが、くちくち、と可愛い音を立てた。  
 
「も、濡れてるね」  
 
 かあっと七海が耳まで赤くなる。  
 
「脱がすよ」  
 
 七海のパーカーとスカート、あと下着も脱がしてしまう。  
 俺の方もジャージをぽいぽいっとベッドの上に脱ぎ捨てた。  
 
 服で隠れてた七海の首元や胸元には、俺がつけた赤いシルシ。  
 
「俺のシルシ、ちょっと薄くなってきたね」  
 
 ちょっと残念。  
 でも、目立つとこにつけ直すと七海こまるかな。  
 内ももにシルシをつけながら、七海の潤んだところをそろそろと撫でる。  
 
「指、入れてみてもいい?」  
 
「あ、はい……大丈夫、です」  
 
 ぷちゅ、と音を立てて、俺の中指が七海のソコに沈んでいく。  
 ナカで指を曲げたり伸ばしたりするたびに、ぴくぴくと七海が震えた。  
 
「気持ちいい?」  
 
 七海の好きな部分――七海の内側の手前の方を、猫の喉をなでるようにくすぐる。  
 
「はい、そこ……いい、です……」  
 
 外側の粒の部分を一緒に触ると、七海のナカがきゅん、と俺の指に絡みついてくる。  
 同じことを俺のモノにもしてもらいたい。  
 そう思ってしまうと、俺はもう我慢できなくなってた。  
 
「入れるよ」  
 
 七海からあふれたぬるぬるを俺のものになじませて準備して、  
 俺は七海に俺のものをねじ込んだ。  
 
「んっ……いた」  
 
 でも、七海の方の準備は、まだちょっと足りないみたいだった。  
 まだ途中までしか入ってないのに、俺のものでぎちぎちになっている。  
 
「ごめ、いったん抜くよ、っあ」  
 
 焦って腰を引こうとした拍子に、ベッドの上に放りっぱなしの服とか、  
 マンガとか、テレビのリモコンとかが、バサバサとおちた。  
 
『おはやっほ〜っ!みんな元気かにゃあっ!』  
 
「!」  
 
 息をのむ。  
 
 テレビの液晶越しに、HAYATOと――トキヤと目があった。  
 俺じゃどうやったって敵わない、七海のアイドル。  
 
『今日は〜ボクの新曲を紹介しま〜すっ! この曲は――』  
 
「いちのせ、さん」  
 
 ぽかん、とテレビの中のHAYATOを見つめている七海。  
 七海と繋がってる部分が、俺を拒むようにきゅ、と締め付ける。  
 
「や……一十木くん、わたし……」  
 
「……どうしたの?」  
 
「い、一ノ瀬さんが、お仕事をされている間に、わたし、こんな……」  
 
 七海のソコは、きゅうきゅう俺を締め付けるのに、  
 奥の方からぬるっとしたものがあふれてくる。  
 
「ごめんなさい、一十木くん。やめて、ください」  
 
「嫌だ、やめない」  
 
 七海の腰をぐっと掴んで、俺は七海の一番奥まで潜り込んだ。  
 
「――っいっときく、あっ……ぅ」  
 
「俺をみてよ、七海。今、七海と「してる」のは、俺だよ」  
 
 七海の腰を押さえたまま、さきっぽのほうまで引き抜いて、根本まで押し込む。  
 何回も腰をゆすっていると、七海のナカがちょっとずつ柔らかくなっていく。  
 
「いっときくん、だめ、です……んっ……」  
 
 七海は「ダメ」だっていうけど、七海のナカは俺をゆるゆると受け入れ始めている。  
 HAYATOの――トキヤの声を聞いて、興奮した?  
 
「音也だよ。音也って呼んで」  
 
「い……や、おとや、くん……」  
 
 
『それじゃあ聞いてくださぁいっ!』  
 
 
「だめ……いちのせ……さんの、うたが……」  
 
 今度は、ぐりぐりと七海の奥の方に押しつける。  
 だめだってわかってるし、七海が絶対いやがるからしないけど、  
 七海の一番奥の部分で俺を全部受け入れてもらえたら……って思った。  
 
「今だけでいいから、俺のこと、好きになって」  
 
 行き止まりになっているところに、何度も俺の先っぽを押しつける。  
 七海の一番深い部分にいるのは  
 HAYATOでもトキヤでもなくて、俺なんだって、そう言ってしまいたかった。  
 
「う、だめ……ですっ。お……くっ」  
 
 俺はすげー気持ちいいけど、七海にはつらいらしかった。  
 今まで気持ちよさそうだった声が、今はちょっと苦しそう。  
 
「ん、ちょっとだけ、がまんして……」  
 
 かわりに七海が一番弱い外側の部分をくりくりといじめる。  
 動き方も、押し込むような動きじゃなくて、円を描く要領でナカで動くようにしてみる。  
 
「――――っ! ぅあ、あっ……んぅ」  
 
 とたん、ぎゅ、と七海のナカが、俺のものをしごくようにうねる。  
 
「あ、ちょ、だめだっていきなりっ。――俺もう出るっ」  
 
「……ん、ん――――ッ!」  
 
 あっけないくらいすぐに、俺と七海はイってしまった。  
 
 
『いっつも応援してくれてるファンのみんな〜っ! ありがとね〜っ!』  
 
 
「トキヤの今日の仕事、さっきの生番組だったんだね」  
 
 終わった後、七海の身体に残ったべとべとを拭う、俺。  
 ほんとは、終わった後もずっと七海にくっついてたいけど、  
 俺は七海の恋人ってわけじゃないから、そういうのは我慢。  
 
「で、このあと、おはやっほーニュースかぁ。  
 トキヤ、じゃなくてHAYATOってほんと忙しいんだね」  
 
 七海の方はまだ余韻が抜けきっていないみたいで、  
 ぼんやりとしたまま、俺にされるがままになってる。  
 
「トキヤが帰ってくるまでまだ時間あるね。もっかいしてもいい?」  
 
 七海の耳元で囁く。  
 びくん、として七海は。  
 
「……ごめん、なさい。今日は……」  
 
「あ……うん。ごめん、今の冗談。忘れて」  
 
 ほんとは、半分くらい本気だったけど。  
 
「風呂、入ってくよね。わかしてくるよ」  
 
 
 俺と七海で交互に風呂に入って、お互いが落ち着く頃には、  
 時計の針は4時を指していた。  
 
 ぶかぶかな俺のTシャツを着た七海は、ベッドの上で三角座りしている。   
「あの……一十木くん。さっきはごめんなさい」  
 
「ん?さっきってなに?」  
 
 風呂上がりの七海もやっぱかわいー、とか  
 そういうとりとめのないことをぼんやりと考えていて、  
 七海が何て言ったのか聞き取れなかった。  
 
「……している時、いきなりテレビがついてHAYATO様が映ってしまったものですから、  
 わたし、動転してしまって……」  
 
「ああ、うん。リモコン、ベッドの上に置いたままだったからさ。  
 偶然電源がはいっちゃったみたいだね」  
 
 偶然っていうのは、わりと嘘だ。  
 あの時間なら、ちょうどHAYATOが出てるだろうなって思っていたから。  
 
「その、一十木くんにひどいことを言ってしまいました。ごめんなさい」  
 
「あれ、そうだっけ。  
 俺もういっぱいいっぱいだったから、覚えてないや。ごめんね」  
 
 違うよ七海。謝るのは俺の方なんだ。  
 だまし討ちみたいにして、七海を試して、そして、勝手に嫉妬した。  
 ごめんね、七海。  
 
「そう、ですか……」  
 
 そのまま七海は黙り込んでしまう。  
 沈黙がおりてくる。  
 
「心配しなくても、俺、怒ってないから。  
 約束はちゃんと守るよ」  
 
「ち、ちがいますっ……わたし」  
 
「トキヤがHAYATOだって、誰にも言ってないし、言わないから」  
 
「ちがいます、わたし、あの、そういうことではなくて」  
 
「あ、もちろん俺と七海のことも誰にも言わないよ。もちろんトキヤにも」  
 
 
 そう、それは本当に偶然のことだった。  
 俺は、HAYATOの正体がトキヤであることを、知ってしまったんだ。  
 
『お願いです。このことは誰にも言わないでください!』  
 
 そう言って七海は俺に頭を下げた。  
 
 確かに俺はトキヤのことはライバルみたいに思っていたけど、  
 それでもあいつは親友だし、七海にそんなことされなくても、  
 誰かに言ったりするつもりなんてなかったのに。  
 
 ……俺ってそんなに信用ないのかな。  
 
『わたしができることなら、何だってします』  
 
 そんなにトキヤが大切なの。  
 ――そうだよね、大切だよね。  
 トキヤは君のパートナーなんだから。  
 
 でも俺だって、出来ることなら君のパートナーになりたかった。  
 君の歌を、俺だって歌いたいんだ。  
 君が、好きなんだ。  
 
 トキヤにだって、誰にだって渡したくないんだって、思う。  
 
『だったら七海、俺とセックスしてくれる?』  
   
 だったら、むりやりにでも、俺のものにしてしまえばいい……?  
 
 
「あの、そろそろわたし、部屋にもどります」  
 
 時刻はもうすぐ5時。  
 もうすぐおはやっほーニュースの時間だ。  
 やっぱ七海、部屋にもどったらテレビ見るのかな……。  
 
「うん。見つからないように、気をつけてね」  
 
「はい。それでは、お邪魔しました」  
 
「七海、あのさ」  
 
 もうちょっと一緒にいたい、とか。  
 七海のこと好きなんだ、とか。  
 ごめん、とか。  
 言いたいこととか、言わないといけないことはたくさんあった。  
 
「はい、なんですか?」  
 
 でも、結局俺は何も言えなくて。  
 
「なんでもないよ。またね、七海」  
 
 END  
 

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