ある日、学校からの帰りが遅くなった良太を、夜道でログレス配下の魔物達が襲う。  
良太を人質に、姉である優子を屈服させるために。  
逃げ切れず追い詰められる良太。  
間一髪のところで、セーラー服姿の優子が登場。  
 
「お、お姉ちゃん!…こ、こいつら、一体なんなの…」  
「大丈夫よ、良太!お姉ちゃんが守ってあげる!」  
 
剣を構える優子。  
そして変身。  
優子の衣服が千切れ飛び、あらわになった美しい裸身にヴァリススーツが装着されてゆく。  
始まる闘い。  
 
状況が飲み込めずパニックをおこしていた良太は、やがて  
姉の闘う姿に目が釘付けになる。  
 
(お姉ちゃん…なんて素敵なんだ…)  
 
姉の優子は、良太の知る限りとても奥ゆかしく普段から肌が露出するような服は着ない。  
弟である自分の前でさえラフな格好でいることは、まずありえない。  
その姉が素肌もあらわなコスチュームを身に着け、美しいボディーラインを惜しげもなく 
晒している。  
ふくよかな胸をつつむ黄金のブラジャー。  
そして、下半身を覆う極短のミニスカートからは、優子の動きに合わせて白いパンティが 
見え隠れする。  
女性の身体に興味が湧き始めたばかりの少年にとっては、明らかに刺激が強すぎる姿。  
そして、その姿をしているのは、普段から自分が崇拝している美しい姉。  
厳しくも優しい、大好きな姉なのだ。  
 
優子は弟を守るために、必死で剣を振るい続けている。  
躍動する肉体。  
素肌を流れる汗。  
その凛々しい表情は上気し、ハァハァと荒い吐息をついている。  
時折り見える白いパンティも汗を吸い、桃のようなお尻にピッチリと張り付いている。  
そして瞼に焼き付いている、先ほどの変身の時に一瞬だけ見えた  
姉の美しい裸身。  
それら全てが良太の心を、そして身体を熱くさせる。  
 
(お姉ちゃんが僕のために必死で闘っている時に、僕は何を考えているんだ…)  
 
そう思ってはみても心臓の大きな鼓動を止めることはできない。  
姉に対して募る思いを押し止める事もかなわない。  
やがて、良太は自分の身体の変化を自覚し愕然とする。  
勃起していたのだ。  
 
(ぼ、僕…お姉ちゃんを見ていて、こんなふうになるなんて…)  
 
罪悪感で胸をいっぱいにしながらも良太は、魅力的な姉の姿から目を逸らすことができず 
にいた。  
 
やがて闘いが終わった。  
優子が弟を守り抜いたのだ。  
やさしい微笑みを浮かべた優子が、良太に歩み寄ってくる。  
 
あられもない姿の姉が、姉の美しい素肌が、自分に近づいてくる。  
姉を真正面から捉え、良太の胸の鼓動もそして勃起も、ますます大きくなってゆく。  
 
優子は自分のかわいい弟に、やさしく語りかける。  
 
「…良太…大丈夫だった?ごめんね、お姉ちゃんのせいでひどい目に合わせて…」  
 
「お姉ちゃん…」  
 
手を伸ばせば届く場所に、姉の素晴らしい身体がある。  
良太は、自分をこれ以上抑えられそうもない、と思いそのことに戦慄を覚えた。  
 
「良太、怪我は無い?本当に大丈夫?」  
 
「う、うん…本当に大丈夫だよ、お姉ちゃん…」  
 
自分を気遣って優しい言葉をかけてくれる姉を前に、良太は己の中の情欲と戦っていた。  
すぐ目の前に愛する姉が、上気して火照った肌も露わにとても魅惑的な姿で立っている。  
上半身は金色に輝く金属製のブラジャーが、見事な胸の谷間を作り上げている。  
下半身は超ミニの白いフレアスカートが、吹く風にはためき今にもパンティが見えそうだ。  
首の赤いスカーフや、肩と手足に装着されている黄金の装甲も姉の素晴らしいプロポーシ 
ョンを引き立てている。  
思春期にさしかかったばかりの少年にとって、この上なく刺激的な姿である。  
 
(ああ…お姉ちゃんに触りたい…抱きしめたい…  
でも、でも、そんなの、いけないことだ…やっちゃダメなんだ…)  
 
良太は欲情を抑えるために、そして姉にその事を気取られないようにするため、姉の身体 
から視線を外そうと努め、しかしどうしても見てしまうということを繰り返していた。  
 
優子は当然、弟のその様子に気付いた。  
先ほどから良太は顔が真っ赤なうえに、姉である自分を見ようとしない。  
そのくせチラチラと、時折りこちらのほうに目を向けており、その視線が妙に熱く感じら 
れる。  
ハッとその理由に思い至った。  
 
(あ…や、やだ…私ったら…弟の前でこんな格好で…)  
 
優子の心に急激に恥じらいの気持ちが沸き起こってきた。  
優子は自分が戦闘服とはいえ肌を多く露出させた大胆な姿をしているということを、改め 
て認識した。  
弟はこうしている今も自分の身体に熱い視線を注いでいる。  
 
(…も、もうっ!良太ったら!…お姉ちゃんをそんな目で見るなんて…)  
 
だが、それは仕方のないことだと思う。  
弟は思春期の少年だ。  
姉とはいえ、女性の身体に興味を持つのは当然だろう。  
そう思うからこそ家の中でも普段から気を使い、弟を刺激してはいけないと努めてラフな 
格好は避けていたのだ。  
それなのに今、こんな姿を晒している。  
「ブラジャーと超ミニスカートのみ」というこれ以上ない大胆な姿を。  
悪いのは、私のほうだ…  
優子の脳裏に、「弟にセミヌードを見せつけるイケナイ姉」という言葉が浮かんだ。  
今の自分が弟にどのように見られているのかを想像するに至っては顔から火が出そうだ。  
早く変身を解いて制服姿に戻り、家に帰ろう。  
優子は平静を装って言った。  
 
「と、とにかく、家に帰りましょう、良太。詳しいことは、私の部屋で説明するわ」  
 
「う、うん…分かったよ、お姉ちゃん」  
 
良太も、この雰囲気を変えられることに胸を撫で下ろした。  
このまま姉に触ったりしたら姉を傷付け、自分も嫌われてしまう。  
それだけは絶対に避けたかった。  
 
「良太、お姉ちゃんね…もとの姿に戻るから…ちょっと、後ろを向いててくれないかしら?」  
 
弟の目を意識して、優子が言う。  
変身を解くときにも一瞬、裸になってしまうからだ。  
良太は、つい未練を口にしてしまう。  
 
「…見てちゃダメ?」  
 
「も、もうっ…良太ったら…バカ…」  
 
優子はカァーッと頬を染めて、良太から顔を背けて言った。  
 
(お姉ちゃん…恥ずかしがってる…可愛い!すごく、可愛い!)  
 
いつも優しくはあっても毅然とした態度をみせている姉が弟である自分に対して、可憐に 
恥らいをみせている。  
そのことに無上の喜びを感じて、良太は素直に姉に背を向けた。  
 
「分かったよ、お姉ちゃん。これでいい?」  
 
「え…ええ、いいわ…」  
 
しばし後、もとのセーラー服姿にもどった優子と良太は帰路についた。  
その二人を物陰から見つめる目があることを、二人は気付かない。  
それは先ほどの闘いにおいて、たった一匹だけ生き残り、身を隠していた魔物であった。  
その魔物は不敵につぶやいた。  
 
「ふふふ…あの弟…良太といったか…自分の姉に欲望を抱くとは  
…これは、人質以外にも使い道がありそうだな…ふふふふ…」  
 
その魔物は、しばらく優子達の後について進んでいたが、ふと脚を止めた。  
魔物の視線の先には、橋の下で眠るホームレスの中年男性の姿があった。  
(身体が必要だ…ヴァリスの戦士に近づく為の身体が…)  
魔物はその浮浪者へと近づいて行った。  
 
 
優子と良太は家に帰り着き、入浴と夕食をすませ、優子の部屋に集合した。  
優子は色気の無い地味なパジャマを着ている。  
良太は、そんな姿でも姉は十分愛らしいと思った。  
 
そして今、良太は優子の口から驚くべき事実を聞かされていた。  
この世には夢幻界、現実界、暗黒界の3つの世界があるということ。  
暗黒界の魔王ログレスが、他の2つの世界を滅ぼそうとしていること。  
優子が、夢幻界の女王ヴァリアによって選ばれた「ヴァリスの戦士」であるということ。  
優子の使命が、魔王ログレスと配下の魔物達と戦うことだということ。  
そして優子が今日だけでなく、これまでにも幾多の戦いを繰り広げてきたということ。  
良太は姉の置かれている過酷な状況を知り、悲痛に叫んだ。  
もう、そんな危険なことはやめて、と。  
必死に姉の説得を試みる良太。  
 
優子はそんな弟に、穏やかに、だが揺ぎない決意を込めて語った。  
「自分達が暮らしてきたこの世界を…大切な人たちを…そして何よりも良太… 
あなたを守りたいから…」  
良太は暫く声もなく考え込んでいたが、やがて強い決心を告げた。  
「お姉ちゃん!僕も戦うよ!お姉ちゃんは僕が守る!」  
「な、何を言うの、良太!そんなのダメよ!」  
慌てふためく優子に良太は静かに、だが力強く答えた。  
「…僕はずっと、お姉ちゃんを守れる強い男になりたいと思ってきたんだ! 
お姉ちゃんだけに辛い思いはさせないよ!…」  
「りょ、良太…あなた…」  
「…大好きなお姉ちゃんを、僕が放っておける訳が無いじゃないか!…」  
「…ああっ…良太ぁっ!」  
 
良太はいきなり姉の両手に頭を抱きかかえられ、その顔を姉の柔らかな胸に押し付けられ 
た。  
感極まった優子が、思わず良太を胸に抱きしめたのだ。  
「う、うぷっ…お、お姉ちゃん?!」  
良太は突然感じた姉の乳房の感触に、今しがたまでの毅然とした態度もどこへやら、慌て 
ふためいた。  
そこに姉の、まるで泣いているかのような声が聞こえてきた。  
「良太…私の良太…私の可愛い良太…」  
 
この麻生家は家庭崩壊を起こしている。  
数年前、母が浮気相手と駆け落ちし、行方知れずとなった。  
父は仕事に明け暮れ、優子達と言葉を交わすことも滅多に無く、家にすらなかなか帰って 
こない。  
この家で優子と良太は実質上、二人だけで生活しているようなものだ。  
 
そんな家庭環境の中で優子は、自分が良太の母親代わりになろうとがんばってきた。  
優しいだけでは、甘やかせるだけではダメだと、努めて厳しく弟に接したときも幾度とな 
くあった。  
厳しくしすぎたのか、むくれた良太が丸一日、口をきいてくれず良太に嫌われたかもしれ 
ないと、一人涙を流し声を殺して泣いたこともあった。  
それら今までの苦労も、辛かった想いも今、全て報われたような気がした。  
良太は、ちゃんと分かってくれていた。  
良太は、こんな私を愛し続けてくれていた。  
私の良太…私の愛する弟…  
 
「お姉ちゃん…泣いてるの?」  
「…ううん…もう大丈夫…お姉ちゃんね…嬉しかったの…」  
落ち着いてきた優子は、良太が苦しくないように腕の力を少し緩め、あらためて弟の頭を 
胸に抱きしめた。  
胸に感じる良太の感触が、体温が、今の優子にはとても心地良かった。  
 
姉を気遣っていた良太は、優子が落ち着いてきたことを悟り、自分の心も落ち着いてくる 
に連れ、今自分の置かれている状況を再認識した。  
大好きな姉の乳房に、自分の顔が押し当てられている。  
良太の心臓の鼓動が速く、大きくなっていく。  
 
(お姉ちゃんのおっぱい…柔らかいな…それに暖かくて、いい匂いがする…)  
 
姉に対して暖かな想いを向けながらも良太は、自分の中に再び欲望が沸き上がってくるの 
を感じていた。  
 
(お姉ちゃん、パジャマの下はノーブラなんだ…)  
下着に邪魔されない姉の乳房の感触に、良太の興奮は高まっていく。  
 
しかし、優子の次の言葉が、良太の情欲を吹き飛ばした。  
「良太、お姉ちゃん、決めたわ。お姉ちゃん、明日…自分から暗黒界に乗り込んでいくわ。 
そしてログレスを倒す」  
良太を抱きしめながら優子が言う。  
「お姉ちゃん!自分から敵の本拠地に?!危険だよ!」  
「ログレスを倒すには、遅かれ早かれそうする必要があるのよ。  
今日、魔物達が良太を襲った…早く決着をつけないと…」  
「また、僕が狙われるっていうの?」  
「…この現実界に魔物を送り込むには、ログレスはかなりのエネルギーを消耗するらしい 
の。今回送り込まれた魔物はさっきの闘いで全滅させたはずだから、しばらくは大丈夫だ 
と思うけど…どちらにせよ、急がないと…」  
 
魔物が一匹生き残っており、自分を狙っていることなど、優子には知る由もなかった。  
 
「お姉ちゃん!僕も行くよ!」  
「ダメよ…良太。ヴァリスの戦士しか暗黒界には行けないの」  
「そんな!お姉ちゃん、ひどいよ!」  
「…待っていて…必ず…必ず、帰ってくるから…」  
暗黒界に行けば、この現実界とは比べ物にならないほどの苛烈な戦いが待っている。  
命を落とすことも十ニ分に考えられる戦いが。  
良太は姉の声の様子からそのことを察したが、なにも言わなかった。  
いや、言えなかった。  
自分がどんなに止めても、姉は戦いに赴くだろう。  
自分の知っている姉は、そういう女性だ。  
自分が駄々をこねたところで、姉を悲しませ辛い思いをさせるだけだ。  
だから良太は姉を信じることにした。  
それしかなかった。  
「お姉ちゃん…絶対だよ!絶対に、無事に帰ってきてよ!」  
「…ええ…分かったわ、良太…約束よ…」  
 
 
良太は優子の背中に両手を廻し、姉の身体を抱きしめるようにしながら自分から胸の谷間 
に顔を強く押し付けた。  
そんな弟の頭を優子は、豊かな二つの乳房としなやかな両腕で優しく包み込む。  
「お姉ちゃん…大好きだよ、お姉ちゃん…」  
「…良太…私の良太…」  
優子も良太もお互いへの愛情に胸をいっぱいにしながら相手の名を口にする。  
 
良太は首を振り、グリグリと自分の顔を姉のふくよかな乳房に擦りつける。  
姉のパジャマ越しの乳房の感触を、弾力を、体温を、少しでも多く感じられるように。  
そして鼻で大きく何度も呼吸して、姉の身体の匂いを胸いっぱいに吸い込む。  
(お姉ちゃん…お姉ちゃんのおっぱい…お姉ちゃんのいい匂い…ああっ…  
お姉ちゃん、お姉ちゃん…)  
優子は良太のその行動と、そこに込められた想いをすすんで受け入れ、乳房にあたえられ 
る弟の感触と体温と呼吸を心地良く感じていた。  
(ああ…良太…私の大事な良太…ああぁ…)  
 
もしかしたら、二人でこんな時間を過ごせるのは、今夜で最後になるのかもしれない。  
今のこの時間が永遠に続けばいいのに。  
いつまでも、いつまでもこのままでいたい…  
二人の想いは同じだった。  
 
だがしばらく後、優子は弟の感触に未練を感じながらも良太を自分から静かに引き離した。  
これ以上一緒にいたら、本当に離れられなくなりそうな気がしたから。  
「さあ、良太。今夜はもう寝なさい…明日も学校なんだから…」  
「お姉ちゃん…」  
 
優子に促され、部屋を出て行こうか良太は迷った。  
姉は明日、いつ頃旅立つつもりなのか。  
もしかしたら自分に黙って家を出るつもりではないのか。  
今自分の部屋に戻ったら、もう二度と姉に会えなくなるのでは…  
そうだ、なにか話をしよう。  
会話が続いている間は、姉も出て行けとは言わないはずだ。  
だが、こういうときに限って何を言えばいいのか分からない。  
(なにか言わなくちゃ…早く、なにか言わなくちゃ…そ、そうだ!)  
 
「お姉ちゃん!!お、お願いがあるんだけど…」  
「な、なあに?良太?」  
良太は咄嗟に頭に浮かんだ台詞を、姉の闘う姿を見た後ずっと抱いていた願望を口にした。  
「お姉ちゃん…今、ここで…もう一度、変身してくれない?」  
「えっ?…良太、どうしたの。いきなり…」  
「ぼ、僕…お姉ちゃんのヴァリススーツ姿を、もう一度見たいんだ!」  
 
 
 
ひと気の無い深夜の町。  
麻生家の前に、一人の中年の男が立っていた。  
ボサボサの長髪。  
継ぎはぎだらけのボロボロの衣服。  
全身に漂う不潔感。  
明らかに浮浪者だとわかる風体である。  
だが、それは外見だけの話だ。  
この男は魔物に身体を乗っ取られているのだ。  
優子と良太を見つめていた、たった一匹だけ生き残った魔物に。  
それはたいした戦闘能力も無い、人間の女を犯して快感に耽るぐらいしか能の無い下級の 
淫魔であった。  
この淫魔は今回、暗黒界から現実界に送り込まれることになった  
戦闘部隊に、自分からすすんで志願した。  
志願の理由は、下級淫魔らしい分かりやすい考えによる。  
「ヴァリスの戦士はすごくいい女らしい。だから犯してやりたい。  
ものすごく強いらしいが、しょせんは女。速攻で押し倒して、  
ヒイヒイ言わせてやるぜ」  
その程度の思いで、現実界までやってきたのだ。  
そして、弟の良太を人質に取ろうとしたところ、そのヴァリスの戦士麻生優子が現れた。  
 
変身の際に一瞬だけみせた裸身。  
ヴァリススーツを装着した魅力的なプロポーション。  
それらを見て、この下級淫魔は興奮し、大喜びした。  
(いい身体してやがる…来た甲斐があったぜ!)  
だが闘いが始まり、この淫魔は自分が甘かったことを思い知った。  
強い。強すぎる。  
自分などでは到底、近づくことさえできそうにない。  
すっかり恐れをなしたこの淫魔は、ヴァリスの戦士に切り倒されてゆく仲間たちを見捨て 
て、自分だけコッソリと戦場から逃げ出し身を隠した。  
そして一匹だけ生き残ったのである。  
 
この淫魔に限らず、暗黒界の多くの魔物が持つ能力に「同化能力」というものがある。  
人間の肉体と合体し、取り込んでしまうというものだ。  
その能力の利点は主に二つ。  
ひとつは、取り込んだ人間の持っていた知識や経験、能力を自分の物にできるということ。  
そしてもうひとつは、魔物としての本性を現さずに人間の姿のまま行動する際、「魔物と 
しての気配」をほぼ完全に消すことができるということ。  
 
ヴァリスの戦士には、魔物の気配を敏感に察知する能力があるという。  
だから、この淫魔は適当な人間…浮浪者と同化したのだ。  
しかしこれにより思わぬ収穫があった。  
この浮浪者は、どうやら普段からしょっちゅう民家に盗みに入っていたらしい。  
その為、開錠の技術を持っていたし、他の人間に比べて隠密行動の能力も優れているよう 
だ。  
なにより手先が器用であった。  
(オレには丁度都合の良い身体だ…今からオレがすることを思えばな…フフフフ…)  
周りに人がいないことを確認すると、その淫魔は…  
中年浮浪者は、麻生家の玄関の扉に手を伸ばした。  
 
 
 
一方、優子の部屋では……  
「僕、お姉ちゃんのヴァリススーツ姿を、もう一度見たいんだ!」  
弟の突然のお願いに優子は戸惑った。  
「りょ、良太…どうして?どうして、お姉ちゃんのヴァリススーツ姿を…」  
「だって…お姉ちゃんの、あの姿…すごく素敵だったから…」  
「え…」  
「す、すごく格好良かったし!」  
「………」  
「す、すごく綺麗だったし…」  
「あ…」  
「すごく…セ、セ…セクシーだったし…」  
「!…」  
「だから…だから…もう一度、見たいんだけど…」  
「………」  
 
思うままに言葉をつむいでしまい、顔を真っ赤にしてうつむく良太。  
 
そんな弟を前に優子もまた、頬を紅く染めてうつむいてしまう。  
弟に思わず聞かされた、自分のヴァリススーツ姿に対する感想の告白に恥じらいの気持ち 
を抑えられなかったからだ。  
(ああ…良太に…自分の弟に…セクシーって、言われちゃった…)  
 
セクシー(sexy)=性的な魅力のあること。  
良太が自分を賞賛してくれていることは嬉しく思う。  
良太が自分の身体に興味を持っていることも感じていた。  
でも、弟に面と向かってそんなことを言われたら、姉としては一体どんな反応を返せばい 
いのか。  
ちまたの今時の若者達ならば、たいした意味もなく軽い気持ちで女性に対して使う言葉な 
のかも知れないけれど……  
やはり優子は、古風な奥ゆかしい女の子であった。  
 
感想を聞いたこともだが、あの姿をもう一度見せて欲しいと言われたことも優子の羞恥心 
を激しく掻き立てた。  
魔物たちとの闘いの後、自分の身体に向けられていた良太の熱い視線。  
今しがた良太の口から聞かされた「セクシー」という言葉。  
良太は自分のあの姿に対し、間違いなく性的な興味を持っている。  
そのことを解かっていてなお、あの姿を見せるなんて…  
(良太ったら…お姉ちゃんの、あの姿を…また、エッチな目で見るつもりなのね…お姉ち 
ゃんのヴァリススーツ姿を見て、愉しみたいのね…ああっ…どうしょう…)  
 
良太はうつむきながら、チラリと優子の様子をうかがった。  
やはり恥ずかしがって、とても困っているようだ。  
(僕…大変なこと言っちゃったかな…お姉ちゃんに嫌われたらどうしょう…)  
落ち込む良太であった。  
 
優子はそんな様子の良太を見て、憐れみを感じた。  
(良太もきっと、とても恥ずかしかったのね…お姉ちゃんのこと、  
いっぱい想ってくれていて…だから一生懸命褒めてくれたのね…  
…どうしても…どうしても、お姉ちゃんのあの姿を見たかったのね…)  
 
良太の自分に対する想いは、すでに痛いほど解っている。  
誰よりも自分を信頼してくれている。  
誰よりも自分のことを考えてくれている。  
誰よりも自分を見つめてくれている。  
誰よりも自分のことを必要としてくれている。  
……そう、良太は…誰よりも自分を愛してくれている……  
 
世間一般的に、弟が姉の身体に性的な興味を覚えることは、とてもいけない事だと思う。  
『お姉ちゃんをエッチな目で見ちゃダメよ』  
『お姉ちゃんなんかよりも、他の女性に目を向けなさい』  
姉としては弟にそう言って、ハッキリと断るべきなのだろう。  
それこそが正しい姉としての態度なのに違いない。  
でも…  
良太が、他のどんな女性よりも…自分に「興味」を持ってくれている。  
そのことを、とても嬉しく思えてならない。  
もし良太が他の…自分以外の女性の身体に夢中になったりしたら自分はきっと激しく嫉妬 
して、とても悲しくなるに違いない。  
 
それに…  
もしかしたら二人で過ごせる時間は、これが最後になるのかもしれない。  
もっと、もっと一緒にいたいのに。  
自分が良太を残して死ぬなんて、考えたくもないけれど…  
良太もきっと、自分と同じ気持ちなのだ。  
だからとても恥ずかしい思いをしながらも、自分に対する本当の気持ちを言わずにはいら 
れなかったのだろう。  
 
良太はこんなにも、自分のことを想ってくれている。  
そしてそんな良太を自分は、世界中の誰よりも、どんな男性よりも大切に思い、愛してい 
る。  
世間や一般の考え方がどうだというのだ。  
正しい姉としての態度がどうだというのだ。  
今、良太の望みを叶えてあげなかったら、自分は一生後悔するかもしれない……  
 
沈黙に耐えかねた良太が、オドオドとした態度で弱々しく言う。  
「お、お姉ちゃん…や、やっぱりダメだよね…ごめんね…」  
 
優子はそんな良太を、愛しげに見つめた。  
(そんなに落ち込んで、可哀想に…でも…かわいい…)  
 
そうだ、良太はまだまだ子供なのだ。  
性に対しての興味を持ってはいても、まだ12歳の子供。  
自分のよく知っている、おとなしい甘えん坊の可愛い弟。  
そして自分は、そんな弟をいつも見守り、励まし、ときには厳しく叱りつける、母親代わ 
りの姉なのだ。  
 
優子は何か、吹っ切れたような気がした。  
(私は「お姉ちゃん」なんだもの…弟のお願いくらい、きいてあげなくちゃね…)  
 
良太は姉を怒らせてしまったと思い、なおもオドオドと言葉を続ける。  
「ぼ、僕、お姉ちゃんを、こ、困らせるつもりなんて…」  
その言葉を遮るように、優子が言う。  
「いいわ…」  
 
「…えっ?」  
良太はいきなり聞こえた姉の言葉に、耳を疑った。  
 
優子は優しい微笑みを浮かべ、愛情のこもった瞳で良太を見て、そして言った。  
「いいわよ…お姉ちゃんのヴァリススーツ姿…見せてあげる…」  
 
「ほ、本当にいいの、お姉ちゃん!」  
「ええ……じゃあ、良太。そこに座って」  
「うん!お姉ちゃん」  
弟を床のクッションの上に座らせ、優子はその前に立ち、そしてヴァリスの剣を取り出し 
た。  
 
(僕、また後ろを向いたほうがいいのかな?)  
さっきの姉が変身を解くときのことを思い出し、良太は思った。  
 
だが、優子はもう、良太に後ろを向くように、とは言わない。  
恥じらいの気持ちは、いまだにある。  
でも、良太に対する想いはそれ以上にあった。  
 
私はこんなに良太のことが大好きなんだもの。  
私と良太はこんなに強い絆で結ばれているんだもの。  
ほんの3,4年前まで一緒にお風呂に入っていたんだもの。  
そうよ、私達、姉弟なんだもの。  
ほんの一瞬、裸を見られるくらい平気。  
変身した姿を見られるくらい全然平気。  
優子は良太の顔を見て、優しく微笑んだ。  
そしてヴァリスの剣を構えた。  
 
(お、お姉ちゃん…僕の目の前で変身してくれるの?)  
良太は期待に胸を高鳴らせて姉を見つめた。  
 
優子は構えた剣に念を込め、変身のキーワードを唱える。  
「ヴァリスソード!バトル・チェンジ!」  
剣と優子の身体が光に包まれる。  
そして優子のパジャマが千切れ飛び、一瞬光の中に裸身が浮かび上がる。  
いま、良太はその様子を真正面から間近で見ることが出来た。  
光が収まったとき、ヴァリススーツを着た姉が立っていた。  
 
良太は姉のパジャマが千切れ飛んでから変身が完了するまでのその一瞬を、強く瞼に焼き 
付けることができた。  
姉は変身する時、パンティ以外の衣服が千切れ飛び、ヴァリススーツが装着されていくよ 
うだ。  
つまり、一旦パンティ一枚のみのトップレス姿になる訳である。  
さっきの闘いの時は少し離れた場所だったことと、光に包まれていたせいで、細かいとこ 
ろが見えなかったので、姉は全裸になったと思っていたのだが…  
そうではなかったことに良太は少しガッカリした。  
でも、そうすると……闘いのときにチラチラと見え隠れしていたあの白いパンティは正味、 
「姉のパンティ」だったということになる。  
ヴァリススーツの一部などではなく、アンダースコートでもない、  
姉自身の生下着……  
それはそれで、すごく良い、と良太は思った。  
それに、姉のバストを見ることができた。  
豊かで美しい二つの膨らみが、とても素敵だった。  
光のせいで細かいディテールまではわからなかったものの乳首の位置まで確認できたし…  
(全裸でなくってもいいや…トップレスもいいなぁ…)  
ほんの一瞬のことを細かく思い出し、良太は幸せに浸っていた。  
 
「…良太?…どうしたの?…」  
「えっ?!あっ?!な、なんでもないよ、お姉ちゃん」  
姉の声に現実に戻された良太は、改めて目の前に立つ姉の姿を見つめた。  
今、初めて明るい場所で見る、姉の変身した姿。  
夜の野外で見るのとは違い、細かいところまで良くわかる。  
(お姉ちゃん…やっぱり、素敵だ…)  
 
スレンダーでありながら出るところはしっかり出ている素晴らしいプロポーションと、つ 
ややかな白い素肌。  
そしてそれらを引き立てるヴァリススーツのパーツの数々。  
 
金色に輝く金属製のブラジャーが優子のふくよかな乳房を下から寄せて上げて、魅惑的な 
谷間を形成している。  
このブラジャーは、カップが乳房の3分の2ほどしかカバーしていない。  
その為、カップに収まりきれていない乳房の上部3分の1が、美しい盛り上がりを見せて 
いる。  
白いスカートは、股下が数センチしかないであろう超ミニのフレアスカートである。  
その下には優子の純白の生パンティが隠されている。  
白い喉元に巻かれた赤いスカーフ。  
細い腰に巻きつく腰のベルト。  
その他、黄金のプロテクターがなだらかな肩、たおやかな腕、長くてしなやかな脚にも。  
 
芸術品を思わせる美しさ。  
女神のような気品と優しさ。  
闇を打ち破る聖なる戦士としての、気高さ、凛々しさ、そして格好良さ。  
それでいて、可憐で清純な少女らしさと、男を惑わさずにはおかない女としての艶やかさ。  
 
そんな素晴らしい…まさしく素晴らしいとしか言いようのない姿の姉が、  
自分の前に立ち、頬を紅く染め、優しい微笑みで自分を見つめている。  
 
良太はしばらく惚けたように優子の姿態に見とれていたが、やがてソワソワして姉の身体 
から視線を外しはじめた。  
(お姉ちゃん…ダメだよ、僕…困っちゃうよ…)  
明るい場所で間近で見る姉のヴァリススーツ姿は、あまりにも魅力的すぎた。  
自分から、見たいと言い出したくせに良太は、姉のその眩し過ぎる姿態を直視することに 
気恥ずかしさを感じた。  
すっかり、目のやり場に困ってしまったのである。  
 
「良太?ソワソワして、どうしたの?」  
優しく尋ねる姉に、良太は思っていることを正直に言う。  
「あ、あのね…お姉ちゃん。僕…見ていてもいいのかな?」  
「え?」  
「お姉ちゃんが…すごく、も、ものすごく魅力的で、セ、セクシーで…」  
「りょ、良太…」  
「僕ね…その…お、女の人の身体、今まで全然見たことなくて…  
ど、どうしたらいいのかな?…」  
 
……どうしたらいいのか、と聞かれても……  
優子は弟の反応に、再び恥じらいの気持ちが強くなってきた。  
両腕で自分の身体を隠してしまいたい衝動が沸き起こる。  
(もうっ!良太のバカ…自分から見たいって言ったのに…)  
 
顔を真っ赤にして目のやり場にこまっている良太。  
そして、良太が言った「女の人の身体」という言葉。  
自分の姿はいま、間違いなく良太に『女の身体』として見られている…  
わかっていて変身して、この姿を見せているのだけれど…  
 
しかし優子は、モジモジ、ソワソワしている良太を見て、弟を可愛いと思う気持ちも強く 
感じていた。  
(良太にとって…お姉ちゃんって、そんなに素敵なの?そんなに…魅力があるの? 
…お姉ちゃん、少しは…自信を持っていいの?)  
自分の魅力をまるで自覚していない、罪な姉であった。  
そんな優子も、良太の態度に少しは優越感を感じ、自分のほうがリーダーシップをとって 
いるという事実に、心の余裕が生まれつつあった。  
(そうだわ、私…良太に見せてあげるって…良太を喜ばせてあげるって…決めたんだもの 
ね)  
そうよ、恥ずかしがってちゃいけない。  
私はもっと、大胆にならなくちゃいけない。  
私は良太のお姉ちゃんなんだから。  
…良太を満足させてあげなくちゃ…  
 
「良太、お姉ちゃんを…見て…」  
「お姉ちゃん…」  
優子の優しい声に、良太は顔を上げ姉を見つめる。  
「いいの?お姉ちゃん…僕、見てもいいの?」  
「もうっ、おかしな子ね…良太が見たいって言ったんでしょ?  
いいのよ…好きなだけご覧なさい…」  
優子は、まだ恥じらいを残したままの慈愛に満ちた笑顔で、良太に言った。  
 
(そうよ、良太…いっぱい、いっぱい見ていいのよ…これがお姉ちゃんの……これが、 
女の身体よ…)  
 
(お姉ちゃんが…好きなだけ見ていいって言ってくれた…)  
良太は姉の許しを得たことで、真っすぐに優子の身体に視線を向ける。  
 
(そうよ良太…それでいいの)  
自分の身体を何も言わず、真っ赤な顔で一生懸命に見つめる良太。  
自分の全身が良太の視線に包まれているのが分かる。  
その熱心な視線が心地良い。  
 
でも優子は、このままジッと立ったままなのも、無言のままなのも、なんだか気恥ずかし 
くて……  
「さぁ、良太。良太はどんなポーズがお好みなのかしら?」  
優子はわざとおどけて見せて言った。  
 
「え…ポ、ポーズって…?」  
「お姉ちゃんのこの姿、いろんなふうに見てみたいでしょ?」  
「え、えーと…い、い、いろんなふうにって…」  
「お姉ちゃんにおまかせで、いいの?」  
「う、うん…」  
 
まだ恥ずかしがってるのね…かわいい良太…  
やっぱり、この子は私がリードしてあげなくちゃ。  
お姉ちゃんがしっかり、良太を喜ばせてあげるからね。  
とは思ってみても、どうすれば……  
このまま、ただ立ってるだけじゃダメよね……  
 
優子は良太の顔を見つめ、良太の視線を追った。  
良太が自分のどこを見ているのか。  
自分の何を見たがっているのか。  
それを知りたいと思った。  
(そうよ…良太が見たがっているものを、見せてあげるの…  
良太が何を望んでいるのか、考えてあげなくちゃ…)  
 
ふと、優子は良太が自分のブラジャーのあたりをジィィィっと直視していることに気付い 
た。  
座っている良太には立っている姉の胸が、高く遠くにあり、もどかしいのだ。  
 
(そう、良太…お姉ちゃんの胸元をよく見たいのね。いいわ…いま、見せてあげる…)  
しかし、露骨に見せつけることはやはり恥ずかしかった。  
だから優子は、さりげなさを装うことにした。  
「良太、顔が赤いわよ。どうしたの?大丈夫?」  
顔が赤い理由をちゃんと解かっていながら、優子は自分の顔を、座っている良太の眼前に 
持っていく。  
立ったまま上半身を前に倒し、両手を膝にあてがい、胸を寄せるポーズをとって。  
それにより、良太の目に優子の顔と、胸の谷間が大写しになった。  
「な、なんでもないよ、お姉ちゃん…」  
良太は自分がたった今見たいと思っていた姉の胸が、すぐ目の前に現れてうろたえた。  
金属製のブラジャーによって、もともと寄せ上げられていた胸だが、姉のポーズによって 
カップから溢れ出している乳肉がより一層よせられ、深い谷間を強調している。  
再び目のやり場に困り、良太は顔を背けようとするが…  
(ダメよ、良太…もう、目をそらさなくていいの…)  
優子は両手で良太の顔を挟み、固定した。  
「熱でもあるんじゃないかしら?どれどれ…」  
良太の額に、自分の額をコツンッ…と押し当てる。  
顔を動かせなくなった良太の目には、姉の美しい顔のアップが、  
そして視線をそれより少しだけ下に向けると、姉の美しい胸の谷間。  
たちまち良太の視線は釘付けになった。  
「別に、熱は無いみたいね…」  
しばらくして優子は、良太の顔から額を少しだけ離し、良太の顔を見つめた。  
良太はそのことに気が付かず、まだボーッと、でも幸福そうな顔で優子の胸の谷間を見続 
けている。  
優子は良太が幸せそうな顔をしてくれたことが、何よりも嬉しくて。  
そんな弟のことが、かわいくて、愛しくて。  
優子は、羞恥心よりも幸福感のほうを強く感じていた。  
 
でも、ひたすら自分の胸の谷間を見続ける良太の視線に、  
優子は自分から見せておきながら、どうしても恥じらいを感じてしまう。  
(ああ…良太…お姉ちゃんの胸をそんなに見つめないで………………いやん…)  
 
優子は自分の恥じらいを振り払うように、わざと茶目っ気たっぷりな感じを出して、良太 
に微笑みかける。  
「うふっ…良太。お姉ちゃんのおっぱい、そんなに気に入ってくれたの?」  
良太は姉の言葉にビクッと反応し、視線を自分の顔の真ん前にある姉の顔へ向ける。  
胸ばかり見ていたことを姉に知られ、良太は戸惑いながら答える。  
「う…うん。すごく…すごく、気に入っちゃった…僕、僕…  
…お姉ちゃんのおっぱい、大好きだよ…」  
 
「そう?お姉ちゃん、嬉しいわ」  
そう答えながらも優子は内心では、また恥じらっていた。  
(私…いま、「おっぱい」って言っちゃった…エッチな言い方じゃなかったかな…  
…良太に、変に思われなかったかしら……良太も「お姉ちゃんのおっぱい大好き」だなん 
て……………………やぁん…)  
 
良太もまた、姉と同様恥じらっていた。  
(お、お姉ちゃんの口から「おっぱい」なんて聞くと…なんだかエッチで良いなあ………僕、今、「お姉ちゃんのおっぱい大好き」って言っちゃった……お姉ちゃん、イヤじゃな 
かったかな…)  
姉弟揃って、ウブであった。  
 
次に、優子は良太が自分の下腹部のあたり…スカートをジィィィッと見ていることに気が 
付いた。  
(良太、もしかして…お姉ちゃんのスカートの中を…パ、パンティを見たいの?  
もうっ、困った子ね…)  
困った子、と思いながらも優子は良太のことが、やはり可愛くて仕方がないのだ。  
それに優子は、さっき良太を喜ばせたことに、自信を持った。  
(ウブな弟を、お姉ちゃんがもっと、もっとリードしてあげなくちゃね…)  
自分がウブであることを棚に上げて、そんなことを思う優子であった。  
可愛い弟を、少しだけいじめてやりたい、という気持ちも沸き起こり、優子は自分がとて 
も大胆になっていくのを感じていた。  
 
「良太?どこ見てるの?」  
「え…いや、あの、その…」  
「ひょっとして良太、お姉ちゃんの下着を見たいのかしら?」  
「いや、あの…お姉ちゃん…僕、その…」  
図星を指されてうろたえる良太。  
「もうっ、しょうのない子ね…そうね…じゃあ、こんなのはどうかしら?」  
「お、お姉ちゃん?…」  
 
優子は茶目っ気たっぷりの微笑を浮かべ、良太を見つめた。  
そして…  
「うふふ……えいっ!」  
その場で素早く、片足を軸にしてクルッと一回転した。  
当然、白い超ミニのフレアスカートはフワッと舞い上がり、僅かの間、優子の純白の生パ 
ンティが露わになった。  
座っている良太にとっては、正に、自分の目の前で。  
 
(わぁ…お、お姉ちゃんが…パンティを見せてくれた…)  
少しの間だけど、姉のパンティに包まれたお尻や股間を間近に見て、良太の心臓は跳ね上 
がった。  
 
「どう?良太。気に入ってくれた?」  
頬を紅く染めながらも優しげに、でも楽しげに微笑む優子に聞かれ、良太は幸せいっぱい 
の興奮した様子で答える。  
「う、うん!…す、すごいよ、お姉ちゃん!」  
 
(良太ったら、そんなに嬉しかったの?…わかったわ…  
…お姉ちゃんの、このヴァリススーツ姿をもっと、もっと愉しませてあげる…)  
 
そう思いながら優子は、自分の身体がどんどん熱くなっていくのを感じていた。  
 
優子は先ほどからの良太の反応から、良太がどういうものを見たがっているのかを、だい 
たい理解した。  
良太は自分のセクシーな姿を堪能したいのだ。  
自分のバストも、スカートの下に隠されている部分も、たっぷりと見たいのだ。  
(いいわ、見せてあげる…良太のために、うんとセクシーに振る舞ってあげるわ…)  
 
優子はかつて雑誌やポスターで見たことのある女性モデルの、自分の憶えているあらゆる 
ポーズを真似てみることにした。  
胸を突き出すようにして、両手を首の後ろに廻し髪を掻き揚げてみたり。  
背中を向けて両手を後ろで組んで、肩越しに振り返ってみたり。  
仰向けに寝転んで片膝を立ててみたり。  
うつ伏せの状態で、両肘を床に着いて上半身を起こしてみたり。  
床に寝転んでゴロゴロとゆっくり転がってみたり。  
体育座りをしてみたり。  
体育座りのまま、ゴロンと横に寝てみたり。  
四つん這いになってみたり。  
つねに体勢をかえながら、おおよそ考え付く限りのポーズを、優子はとり続ける。  
 
ヴァリススーツ姿でこれらのポーズをとるのである。  
当然、胸の谷間が強調されたり、パンティが見えたりする。  
優子は気にしない。  
否、良太の視線をイヤというほど気にしていた。  
良太に自分を、いろんなポーズで見せてあげたい。  
いろんな角度から愉しませてあげたい。  
いろんな部分を見せてあげたい。  
優子は、つねに良太に視線を向けながら、あらゆるポーズをとり続けた。  
(いいのよ、良太…お姉ちゃんを見て…お姉ちゃんの胸の谷間も、パンティも、好きなだ 
け見せてあげるわ…)  
 
良太はまるで、夢でも見ているような気分であった。  
自分の大好きな姉が、自分の目の前で、ありとあらゆるポーズをとって見せてくれている。  
グラビア雑誌やアイドル写真集でしか見たことがないような、女性を美しく色っぽく見せ 
るためのポーズ。  
それも、胸元や下着が見えても構わないかのように。  
いや、構わないのではなくて………  
自分に見せてくれている。  
自分の為に、サービスしてくれているのだ。  
自分が少しでも多く、いろんな部分を、いろんなアングルで、いろんなポーズで見れるよ 
うに。  
そして常に自分の視線を捉えて、自分が見たいと思うものを見せてくれる。  
 
きっと表情でも自分を愉しませようと努力してくれているのだろう。  
肩越しに振り返りながら流し目で見つめてくれたり。  
胸を強調するポーズでウィンクしてくれたり。  
軽く目を閉じて口を半開きにしたまま首を後ろにのけぞらせてくれたり。  
 
考えようによっては、過剰ともいえる「お色気」の演出。  
下手をすれば、「いやらしい」「はしたない」と思われかねない見せ方。  
 
だが、そんな姉に対して良太が一番強く思うことは  
(お姉ちゃんって……なんて、可愛らしいんだろう……)  
ということであった。  
 
姉は、こういうことに全然慣れていないのだろう。  
セクシーポーズも色っぽい表情も、やはりどこか、ぎこちないのだ。  
自分のために「努力してくれている」「頑張ってくれている」ということがどうしても窺 
い知れてしまう。  
どんなポーズが色っぽく見えるか、いろいろ考えてくれてはいても、やはり大胆になりき 
ることができないのだろう。  
その仕草や表情には、常に恥じらいが付きまとっている。  
 
良太は嬉しかった。  
姉がしてくれていることも、姉の想いも、姉の存在も、その全てが。  
姉は、弟である自分のことをとても大事に思ってくれていて、恥ずかしいのを我慢して、 
自分を愉しませてくれようとしてくれている。  
姉の自分への愛情も、姉の奥ゆかしさも全て嬉しく、愛しかった。  
そして良太はそんな姉に対して、十二分に惹きつけられ、魅せられていた。  
 
時間が経つにつれて良太は、もうオドオドしたりせず、真っすぐに姉の姿態を見つめるよ 
うになっていった。  
姉の許しは得ているし、姉は自分に見せようとしてくれている。  
目を逸らす必要など、どこにもないのだ。  
いまや自信を持って、姉に熱い視線を注ぐ良太であった。  
 
(いいなぁ…お姉ちゃん、やっぱりいいなぁ…)  
多少のぎこちなさと恥じらいがあるとはいえ、いや、だからこそ、色っぽいポーズや表情 
は、可愛さや可憐さも感じさせて魅力たっぷりだったし、そうでなくても姉は美しく素晴 
らしい肉体をもっているのだ。  
自分のために、普段は清楚な姉が大胆な姿を晒してくれている……  
そう思うだけでも良太の心臓の鼓動は速く大きくなってゆく。  
呼吸も少しずつ荒くなってゆく。  
そして……下半身への血の巡りも活発になっていった。  
 
優子は弟の熱い視線を感じ続けていた。  
(良太…ああ…見てるのね…お姉ちゃんを見てるのね…お姉ちゃんの恥ずかしい姿を…胸 
を…パンティを…見てるのね…………ああっ…)  
 
良太を喜ばせてあげたい。  
良太の望みを叶えてあげたい。  
自分はその一心で今こうやってポーズをとり続けている筈だ。  
恥ずかしくて仕方ないはずなのに。  
いま心と身体に感じている、この「熱さ」は何なのだろう。  
自分のほうがリーダーシップをとっているという安心感はある。  
良太のウブな反応に、少しばかり優越感も感じている。  
かわいい良太をいじめてやりたいという、少し意地悪な思いもある。  
それでも…自分はこんなに大胆だっただろうか。  
最初のうちは、恥ずかしくて堪らなかったのに。  
良太に見られているうちに…  
ポーズをとり続けているうちに…  
少しずつ、少しずつ、心が昂揚してきて…  
身体が…熱くなってきて…  
 
優子はこれを「恥じらい」によるものだと解釈した。  
恥ずかしくてしょうがないから、こんなに顔や身体が熱くなる。  
恥ずかしいから、こんなに胸がドキドキする。  
自分が今、少しばかり荒い息をついているのも、恥じらいのせいだ…  
…でも…この感じは…少し違うんじゃ…  
自分の「熱さ」の正体を認識できないまま、優子はポーズを変え続けた。  
 
良太は姉の様子が少しずつ変わってきたことに気付いた。  
はじめの頃にあったぎこちなさが無くなってきた。  
恥じらっている雰囲気も少しずつ抜けてきたようだ。  
(お姉ちゃん、だいぶ慣れてきたんだね)  
そんな風に良太は思った。  
それにしても…  
ぎこちなさや恥じらいの代わりに、妖しさや色っぽさが増してきたように見える。  
ポーズのとり方も自然な感じで…いや、なんだか…自分の考えすぎだろうか…  
…なんだか姉が、自分を…誘ってでもいるかのように…なんだか表情までも、さっきまで 
とだいぶ違うような…目が潤んでいて…なんだか妖しい感じの微笑みで…それに…なんだ 
か少し息が荒いみたい…  
(お、お姉ちゃん、どうしちゃったのかな?…なんだか、なんだか…セクシーすぎる 
…色っぽすぎるよ…そ、そんな目で見られたら…僕、僕…)  
良太は自分のいちもつが大きくなっていることを、ハッキリと自覚していた。  
 
優子は良太が自分に熱い視線を送りながら、パジャマのズボンの前を両手で押えているこ 
とに気付いた。  
(良太、もしかして…そ、そこ…大きくしているの?…ああっ…お姉ちゃんの、このヴァ 
リススーツ姿を見て…興奮しているのね……お姉ちゃんに、お姉ちゃんに……  
欲情しているのね………ああ…いけない子…)  
 
そう思ったとき優子の身体に、ゾクッ…とした感覚が走り抜けていった。  
そして次の瞬間、優子は良太に、自分でも驚くようなことを言っていた。  
その表情に良太に対する深い愛情と優しさを漂わせながらも、  
妖しい微笑を浮かべ、潤んだ瞳で弟を見つめながら。  
「ねえ、良太……もう、我慢できないんじゃないの?」  
 
「お、お姉ちゃん!…な、な、な、なんのこと言ってるの?…」  
良太は姉にいきなり本当のことを言われてうろたえた。  
(お姉ちゃん…なんか、いつもと全然違うみたい……でも、でも……こんなお姉ちゃんも 
…すごく素敵だ……)  
良太は優子の言葉に動揺しながらも、姉の新たな魅力に出会えたことに、  
激しく興奮していた。  
 
「良太…そこ、そんなにして…どうしちゃったのかしら?…」  
優子が妖しげに、そして少し楽しげに言葉を続ける。  
まるで弟をいじめるように、からかうように。  
 
「ぼ、僕…その…」  
「お姉ちゃんを見ていて、そうなったのね?」  
「……………」  
「うふふ……良太ったらエッチなのね…ふふっ…」  
 
良太は姉に図星を指され、恥ずかしくて追い詰められたような気持ちになった。  
そして、つい姉に対してぶっきらぼうな言い方をしてしまった。  
「もうっ!そんなこと言うなんて!お姉ちゃんって、いやらしいんだね!」  
 
ビクッ……と優子の身体が震えた。  
良太のその一言が、優子にとってはまるで、冷水を浴びせられたように感じられた。  
身体から、心から、急速に熱が引いていく。  
(わ、私…今まで…なにを…)  
良太の言葉が優子の心の中で反芻されていく。  
お姉ちゃんって、いやらしい。  
お姉ちゃんって、いやらしい。  
お姉ちゃんって、いやらしい。  
いやらしい、いやらしい、いやらしい……  
(私…私……良太の前で…弟の前で、こんな格好で…いやらしいポーズで…こんな、こん 
な……)  
 
「いやぁっ!見ないで!お願い、見ないでぇっ!」  
優子は悲痛に叫び、両腕で自分の身体を隠すようにして、その場に座り込み、うずくまっ 
た。  
 
良太は姉のいきなりの変わりように戸惑いを隠せなかった。  
(えええっ!お、お姉ちゃん、どうしちゃったの?!)  
 
 
 
 

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