麗子によって仕組まれた、ヴェカンティの怪物との死闘の末、
麻痺成分を含んだ怪物の体液を全身に浴び、敗北を喫したヴァリスの戦士・優子。
当初の目的を果たした麗子は、さらに巧妙な手段で、優子の心を篭絡すべく、
次なるシナリオを実行に移すのだった。
「・・・・う・・・・うう・・・・ん・・・・」
瞼越しにぼんやりとした光を感じて、ゆっくりと目を開く優子。
大きな痛みはなかったが、全身が鉛のように重く感じられた。
「・・・・ここは・・・・何処?・・・・わたしは・・・・一体?」
身体を起こそうとするものの、まるで手足に力が入らない。
僅かに首だけを動かして周囲を眺めると、無数の菌類が繁茂する岩肌の他には何もなかった。
薄暗がりの中、明滅する光苔の燐光に照らし出される空間は、洞窟のようでもあったが、
その情景は、どこか非現実的で、掴み所が無いようにも感じられる。
「・・・・もしかしたら・・・・本当に・・・・死んじゃったのかな・・・・?」
ふと、そんな想いにとらわれる優子。
(・・・・もう・・・・戦わなくていいのかな・・・・?)
――――だが、次の瞬間。
「フン、ようやくお目覚めのようね」
皮肉をたっぷりと効かせた麗子の言葉が、優子の懐疑をきっぱりと否定した。
「・・・・れ、麗子・・・・!?どうしてここに・・・・!?」
驚きの声を上げる優子。
しかし、その声は、小さく弱々しく、ほとんど囁くような大きさでしかない。
そのこと自体にも驚きを感じながら、優子は反射的に立ち上がろうとするが、
やはり、脚も腰も言うことを聞かず、上体をほんの僅かに起こすのが精一杯だった。
「呆れたものね。
あれだけの大口をたたいてから、まだ日も浅いというのに、こうも無様な姿を晒すなんて」
優子の現状に対して、容赦のない嘲笑を浴びせながら、ゆっくりと近付く麗子。
悔しさに歯噛みしつつも、事実であるだけに反論も出来ない優子は、
麗子が傍らに立ったその時になってやっと、あることに気付いた。
「・・・・麗子。・・・・ひょっとして、これは、あなたが・・・・?」
優子の体は、床から1メートル弱ほど隆起した、テーブル状の平たい岩の上に寝かせられていた。
そして、その脇には、水中に取り落とした筈のヴァリスの剣が立てかけられている。
驚きと戸惑いと、そして、期待の入り混じった視線で、麗子を見上げる優子。
・・・・しかし、麗子は、煩わしそうに、フン、と鼻を鳴らしただけだった。
「決まっているでしょう・・・・他にそんなことをする人間がいるとでも思ってるの?
・・・・言っておくけれど、別に情けをかけた訳では無いわよ。
以前にも言った通り、ヴァリスの戦士を倒すのは、あくまで私の役目なのだから、
あなたに勝手に死なれては困るのよ」
<影の剣>の鯉口を切る動作をしながら、語気鋭く言い放つ。
「ただし、二度目はないわよ。
あんなヘマは二度としない、と、約束して頂戴。
・・・・それが出来ないなら、今すぐに、その喉笛を掻き切ってあげるわ!」
気迫のこもった動きは、優子の淡い期待感を打ち砕くのに充分だった。
代わって、心の中を満たしたのは戦慄である。
何かを口にしようとはするものの、舌が凍えて動かず、
震えながら無言でうなずくことしか出来ない優子。
麗子は、表情は変えなかったものの、唇の端に小さく笑みを浮かべた。
「・・・・なら、いいわ。これから、治療の続きをしてあげる。
・・・・もっとも、治療と言うには、少し刺激が強すぎるかもしれないけれど」
・・・・・・・・。
「・・・・うっ・・・・ううっ・・・・ひっ・・・・い、いや・・・・いやぁ・・・・」
弱々しくかぶりを振りながら、端正な顔立ちを苦悶に歪める優子。
仰向けに寝かされたままの姿勢で、両手両足を適度な間隔に広げられている彼女の体に、
ヒルに似た軟体生物が張り付き、蠢いている。
拘束されている訳ではなかったが、未だ麻痺の残る身体は、自由には動かない。
時折、精一杯の気力を振り絞って、おぞましい粘液まみれの生物を振り払おうとするものの、
蜘蛛の巣に絡め取られた蝶の如く緩慢な動作では、到底不可能なことである。
「駄目よ、優子。これが治療なんだから、我慢しなさい」
笑いを噛み殺しつつ、優子をたしなめる麗子。
時折、足元に置いた陶製の甕に柄杓を突き入れては、
その中で半透明の身体をくねらせている生物から分泌された液体を汲み出しては、
目の前で、ヒクヒクと震えている、つやのある健康的な肌を穢していく。
「これは、さっきの奴の、さしずめ幼生体といったところかしら。
・・・・正確なところは、私にも分からないけれども、体液には成体の麻痺毒を打ち消す成分が含まれているから、
解毒剤としては、まず申し分ないわ。
・・・・まぁ、多少、効き目が遅いのが欠点ではあるけれど」
優子の反応を楽しみながら、「治療行為」の内容を、ごくごく簡潔に説明する。
無論、「患者」である優子は、全身を汚辱する軟体生物を相手に、
果敢ではあるが絶望的な防戦を強いられており、
麗子の言葉に対して、何かを考えたり、ましてや、答えたりする余裕など、あろう筈も無かった。
・・・・しかしながら、結果から言えば、麗子の語った内容に関する限り、その言葉に嘘は無く、
優子の身体の機能は、ゆっくりとではあるが、確実に快方に向かっていた。
「・・・・うぁっ・・・・あぁ・・・・こんな・・・・こんなのって・・・・んあぁぁっ!」
だが、それは同時に、体中を陵辱する軟体生物の感触を、否応無く、より鋭敏に感じ取ってしまうことでもある。
けがらわしい原形質の塊が、身体の上を、蠢き、這いずり、繊毛に覆われた口で柔肌を舐め啜るたび、
優子は、左右にかぶりを振り、精一杯身をよじりながら、くぐもった呻き声を洩らし続ける。
「・・・・ああああ・・・・だめよぉ・・・・くぅぅ・・・・このままじゃ・・・・ふあぁぁっ!」
いま、優子の体の上でのたくっている軟体生物は4匹。
しなやかな太ももに絡みついた一匹は、ヴァリス・スーツのブーツに護られたふくらはぎに、体を滑り込ませる機会を窺っており、
小刻みに上下する腹の上に陣取った一匹は、臍の穴をまさぐりながら、活発に体液を分泌している。
左腕にへばりついた一匹は、柔らかい腋の下を抜け、黄金細工の胸当てに覆われた、柔らかく敏感な二つの丘を侵し、
最後の一匹は、ぐっしょり濡れて重くなっている青髪を絡め取りながら、背中を下って、
形良く引き締まったウェストラインの先にある、少女らしい丸みを帯びた腰のふくらみを目指している。
倦むことを知らない執拗な責めは、いつ果てるともしれなかった。
おぞましい愛撫に晒され続けるうち、嫌悪感と屈辱感のみで構成されていた筈の苦悶の喘ぎには、
いつしか、甘く気だるい、じっとりと熱を帯びた欲情の響きが混じり始める。
気付かないうちに、肌は上気し、ほんのりと薄いピンク色に色づいている。
浮かび上がった汗と軟体生物の分泌する半透明な体汁とが入り交じり、
光苔の燐光を浴びて、悶え疼く少女の裸身を官能的に彩っている。
「・・・・くぅぅ・・・・うぁっ・・・・あっあっ・・・・ひはぁっ!」
脂汗を流しながら、未だぎこちない動きしか出来ない体をよじらせる優子。
全身から押し寄せる、嫌悪感と快美感とが無秩序に交錯した、明状し難い感覚に対して、
息を切らせながら抵抗を続けているものの、到底堪えきれる筈も無い。
「フフ・・・・まったく、だらしないったら無いわね。
仮にも戦士なんでしょう?もっと、しゃんとしたらどうなの?」
麗子の嘲弄に、一瞬だけ、表情を強ばらせるものの、
次の瞬間には、白い喉元をさらして、あられもない悲鳴をほとばしらせる優子。
鳩尾がふいごのように上下し、腹筋がヒクヒクとせわしない間隔で律動を刻む。
スカートの中では、二枚の花弁が熱気に蒸され、柔らかく蕩けかけながら、
その内側に生温かい愛汁をたっぷりと溜め込んでいる。
甕に柄杓を突っ込み、5匹目をすくい取った麗子が、
ゆっくりとした動作で、優子の顔のすぐ手前に突きつけると、ひときわ悲痛な叫び声が響き渡った。
「・・・・い、いや・・・・いやぁ・・・・お願い・・・・麗子・・・・もうこれ以上は・・・・ひあぁぁっ!!」
今にも泣き出しそうな声で、哀願の言葉を口にする優子。
目の前の、ピチャヒチャと不快な音を立てて粘液まみれの体をくねらせている半固形物を正視出来ず、
顔を背け、ぎゅっと目をつぶって、駄々をこねる幼児のようにイヤイヤをする。
もはや、限界だった。
既に、ヴァリス・スーツの中にまで浸透を果たした軟体生物の前に、
ツン、と、先を尖らせて硬くしこっている桜色の乳首も、
剥けかかった包皮の中から、おずおずと顔をのぞかせている充血した陰核も、
生汗でつるつるになった尻肉の狭間で、フルフルと震えている可愛らしい菊門も、
遮るものとて無い、全くの無防備状態の中、間近に迫った陥落の時を待つばかりだった。
「これ以上続けると、どうなるのかしら?
まさかとは思うけど、感じすぎて我慢できなくなるとでも言うのかしら?」
嘲りと蔑みに満ちた辛辣な皮肉を、容赦なく優子に投げつける麗子。
必死にかぶりを振り続ける優子だったが、すでに、全身を襲う悪寒にも似たゾクゾク感は、
彼女の自制心を完全に上回る水位にまで達し、その堤防を今にも決壊させようとしている状態だった。
とどめの一撃とばかりに、麗子は、ベトベトに汚れた柄杓を、優子の口元に押し付ける。
途端に、中の軟体生物が、ビチビチッ、と大きく撥ね、
はずみで、柄杓の中の液体が、恐怖に引きつった優子の顔面一杯に降り注いだ。
「い、いやぁぁぁぁッッッ!!!!」
その刹那、優子の中で、何かが音を立てて崩れ落ちた。
下腹部の筋肉がギクッと痙攣し、股間がカクッと躍り上がる。
既にじっとりと濡れそぼっていた尿道口が、まるで魚の口のように尖り始めたかと思うと、
下半身全体に、猛烈な噴尿欲求が襲ってくる。
・・・・勿論、今の優子に、その衝動を食い止められるだけの自制心など、残ってはいなかった。
「・・・・だ、だめぇぇぇ・・・・!お、おしっこが・・・・!」
「漏れちゃう!!」という、悲鳴とも嬌声とも判別できない絶叫が口から発せられるのと、
子宮が、ビクン、と収縮し、熱い液体が、尿道口から、ジュワジュワッ、と噴出するのとが、ほぼ同時だった。
間欠泉のような勢いでほとばしる愛液が、見る間に、白いスカートを水浸しにし、
しなやかな太ももを、びちょびちょにして、その下に大きな水溜りを作り上げる。
性についての知識も経験も、決して豊かであるとは言えない優子が、それを失禁と見誤ったのも無理はない。
麗子ですら、驚きの表情を隠せなかった程の大量の吐淫だった。
「・・・・むうぁっ・・・・!!んぅっ・・・・!!はうっ・・・・んん・・・・!!むぐうぁっ・・・・んんっ!!」
子宮の奥から突き上げてくる、気の狂いそうな程の巨大な快感が、優子を絶頂に追い上げる。
自分の身に何が起きているのかも分からず、半ばバニックに陥りながら、愛液を放出し続ける優子。
その都度、彼女の腰は、ビクンビクンと卑猥に跳ね上がり、のたうち回る。
大きく見開かれた目からは喜悦の涙が流れ出し、口の端からは涎の糸が何本も垂れている。
「・・・・うあぁぁっ!・・・・とめてぇっ!・・・・ひぁうっ!・・・・どうにかなっちゃうっ!!
・・・・ああっ!おねがい!!・・・・たすけてぇっ!!!!」
無論、頭の中は真っ白で、性欲が爆ぜるたび、意識も遠くなりかけていたのだが、
後から後から湧き出してくる快感の連打が、失神という形での安息の訪れを許そうとはしなかったため、
ひたすらに、悶え、よがり、泣き叫びながら、更なる快楽を引きずり出される他なかった。
・・・・それでも、膣内に溜まった蜜をあらかた放出してしまう頃には、
このまま永遠に続くかと思われた性欲の地獄も、潮の引くようように過ぎ去っていく。
消耗しきって、抜け殻のようになった身体を横たえ、浅くかすれがちな呼吸を繰り返す優子。
いまだ、体のそこかしこで蠢く軟体生物の感触にも、腰椎の下の辺りでかすかに疼く悦楽の余韻にも、
気の抜けたような反応を示すばかりである。
ボロボロに疲れ果てた肉体と精神に、まず途方もない脱力感と虚無感がのしかかり、
すぐに、羞恥心と情けなさと惨めさとが、それに加わって、優子を責め苛む。
「・・・・ごめん・・・・なさい・・・・もう・・・・ゆるして・・・・」
ふらふらと視線を彷徨わせながら、今にも消え入りそうなくらい弱々しくかぼそい声で、懇願の言葉を口にする優子。
醜悪な軟体生物によって、全身を陵辱された挙句、潮吹きの極みにまで達してしまった優子の中では、
麗子への反抗の気持ちは完全に萎え、自分自身を恥じ、責める感情のみが増幅していた。
(・・・・全て期待通り、上々の仕上がり、と言うべきかしら)
その優子の表情を、あくまで冷徹に観察しながら、思案気味に表情を変化させる麗子。
(・・・・とはいえ、あまり追い詰めすぎるのも考え物ね。
たしかに、私に対する反抗の芽を確実に摘み取っておくことは重要だけれど、
同時に、私以外の存在に対してまで受身に回るようでは、意味が無いのだから・・・・)
許しを請う言葉を途切れがちに繰り返しながら、咽び泣く優子を見下ろしながら、
何か、いま一つ物足りないような思いにとらわれて、考え込む麗子。
(・・・・人間の心を縛るものは、何も恐怖と限った訳ではない、か)
ややあって、麗子は、小さくうなずくと、身を屈めて、優子の耳元に優しく唇を近付ける。
「・・・・もう少しよ、優子。あともう少しだけ、頑張りなさい・・・・」
――――――――TO BE CONTINUED.