ヴェカンティ。ログレスの居城。  
主を失ったばかりの玉座の前で、向かい合う優子と麗子。  
つい先程まで続いた死闘により、消耗しきった優子を、淫欲を掻き立て体の自由を奪う魔薬の力が蝕み、  
腕の中で息を引き取った筈の「親友」との再会の衝撃は、その心を混乱と戦慄とで満たしていく。  
 
「・・・・感動の再会なのでしょう?少しは喜んだらどうなの?」  
 
唇の端を僅かにゆがめ、冷え切った視線で優子を見下ろす麗子。  
大きく見開いた目を、困惑と怯えの色に染め上げ、麗子を見上げる優子。  
五感を変調させる淫薬の影響で、手足の感覚は薄れ、火照り始めた肌に、幾つもの小さな汗の粒がにじみ出る。  
思考は千々に乱れ、何か喋らなければ、とは思うものの、まるで言葉が思いつかない。  
 
「・・・・まぁ、私にとっては、どうでも良いことなのだけれど、ね。  
何しろ、死んでなんていなかったんですもの」  
 
「・・・・!!」  
 
息を止める優子。  
信じられない、という驚愕と、やはりそうだったのか、という想いとが、交互に瞳の中を行き来する。  
そんな様子には構わず、冷ややかに続ける麗子。  
 
「貴方には、どうあっても、ログレスを倒して貰わねばならなかったのよ。  
何しろ、この世界で、アイツを倒せるのは、貴方の持つ「ヴァリスの剣」以外にないのだから。  
・・・・以前、貴方を捕まえてこの城に連れてきた時、じっくり調べさせて貰ったのだけれど、  
その剣は、「ヴァリスの戦士」以外の者には扱えないように調整されていたわ。  
・・・・まぁ、当然と言えば当然ね。  
これだけの力を持つ武器、万が一、敵の手に渡った場合の事を考えておくのは当たり前ですもの。  
だからこそ、貴方に、強く・・・・ログレスを倒せる程に強くなって貰う必要があったのよ。  
・・・・この私が、ヴェカンティの支配者となるために!」  
 
あっ、と、小さく叫び声を上げる優子。  
鳩尾のあたりを、冷たいものが流れ下っていく。  
 
「・・・・私にも、「ヴァリスの剣」が使えたなら、こんな苦労は必要なかったのだけれども、ね。  
まぁ、剣を扱えるようにすることは出来なかったにせよ、剣にちょっとした細工を施すことは出来たわ。  
優子、貴方は、切り伏せた敵が本当に息絶えたかどうかを判別するのに、  
自分の感覚ではなく、剣に備わった力に頼っていたでしょう?  
・・・・分かる?貴方の、その詰めの甘さこそが、私の計画の成功の鍵となったのよ」  
 
「・・・・ぜ、全部・・・・わたしを、思い通りに動かすための・・・・嘘・・・・作り話・・・・だったの・・・・?」  
 
やっとのことで、喉の奥から絞り出すような声を発する優子。  
その直後、かろうじて保っていた体のバランスが崩れ、  
黒大理石を敷き詰めた床の上に、疲労し消耗しきった五体が崩れ落ちる。  
優子の手からこぼれ落ちた「ヴァリスの剣」を取り上げると、束の間、その刀身に視線を走らせる麗子。  
 
「・・・・全部が全部、出鱈目だったという訳でも無いわ。  
私が、リアリティでの自分の存在に満足していなかったのは事実よ。  
貴方には理解できないでしょうけれど、いくら私が桐島財閥の当主の娘だからといって、  
それだけで何もかも上手くいくほど、向こうの世界も甘くは無いのよ。  
桐島家の力を以ってしても、どうにもならない事はいくらでもある・・・・  
それでいて、私は、桐嶋の人間として、桐島の家のために一生を捧げることを求め続けられていたの。  
・・・・少なくとも、「逃げ出したかった」という言葉に、偽りは無いわよ」  
 
面白く無さそうに、フン、と鼻を鳴らし、「ヴァリスの剣」を足元に置く麗子。  
最後の力を振り絞り、剣の方向へと手を伸ばす優子。  
だが、その動きはあまりにも緩慢で、無防備だった。  
麗子は、無言のまま、その手の上に黒いブーツのつま先を重ね、ぐぐっ、と体重をかけると同時に、  
もう片方の足を使って、「ヴァリスの剣」を磨き上げられたぬばたまの床の彼方へと蹴り飛ばす。  
苦痛と絶望と無力感とで満たされた顔を床にこすりつけながら、悔しさと惨めさに涙するしかない優子。  
麗子は、聞き分けの無い子供に教え諭すように、ゆっくりとかぶりを振りつつ、  
踏みつけた手の甲を、骨が砕けない程度に加減しつつ、なおも痛めつける。  
 
「無駄な足掻きはおやめなさい、今の貴方に、私は倒せないわ。  
・・・・いいえ、優子。たとえ、万全な状態であっても、貴方に私は倒せない。  
私を殺せば、もう一度、あの時と同じ苦しみを味わうことになるのだから。  
・・・・そう、今度は一生、罪の意識を背負ったまま、生き続けなければならなくなるわ・・・・それでもいいの?」  
 
「・・・・ううっ・・・・くうっ・・・・」  
 
優子の口から漏れる呻き声が、一段と高く、大きくなった。  
そんなことはない、と、言おうとしたものの、その言葉は、口に出す遥か手前で力を失い、消滅してしまう。  
 
・・・・麗子の言葉を否定する事は、優子には不可能だった。  
 
自らの手で麗子の生命を奪う苦しみと悲しみが、どれほどのものなのかを味わってしまった今、  
もはや、どんな状況に陥ろうと、優子は、二度と麗子に刃を向ける気にはなれなかった。  
・・・・それが、麗子の計算ずくの行動によって誘導された心理的陥穽であることに、薄々は気付いていたとしても。  
 
「安心なさい、優子。貴方の命を取ろうなんて事は、全く考えてないから。  
むしろ、貴方には、これから、私のパートナーとして働いて欲しいと思ってるわ。  
・・・・分かる、優子?  
ログレスが消えた今、私たち二人が協力すれば、ヴェカンティはおろか、ヴァニティもリアリティも、三界の全てを支配する事が可能なのよ」  
 
今度は一転、片膝をついて、身を乗り出し、あざの出来たその手をとる麗子。  
そのまま、優子の体を引き寄せ、優しく顎を持ち上げると、頬を濡らす涙の滴にそっと唇を這わせていく。  
微細な感覚に、優子は、我知らず、切なげに唇を震わせる。  
 
「・・・・ん・・・・んっ・・・・」  
 
慣れた動作で唇を重ね、舌の先端を使って、唇の内側や歯茎の粘膜を、丹念にくすぐり、刺激していく麗子。  
眉間にしわを寄せて、抗議の表情を見せていた優子の白い頬が、ほんのりと薄桃色に染まっていく。  
儚い抵抗など意に介さず、麗子の舌先は、清潔な白い歯並びを押し割り、さらに奥へと入り込む。  
口腔の奥でおびえている舌を巧みに絡めとり、ピチャピチャと音を立てて甘い唾液を注ぎ込むと、  
優子は、耳たぶまで真っ赤になりながら、瞳を潤ませる。  
頭を左右に転がしながら、快楽に押し流されていく感情を押し留めようと試みるものの、  
その抵抗が、徐々に形だけのものに過ぎなくなっていくことに、自分自身でも気付き始めていた。  
 
「つまらない意地を張るのは体に毒なだけよ。  
この薬の効き目は、十分に分かっているでしょう?  
・・・・フフッ、まぁ、あくまで抵抗するなら、それでも構わないわ・・・・その分だけ、じっくり楽しめる訳だしね」  
 
ひとしきり優子の唇を堪能すると、麗子は、静かに体を離した。  
全身を小刻みに震わせつつ喘ぐ優子を、鎌首をもたげて獲物を狙う毒蛇のような視線で睨めつけながら、  
妖艶な微笑を浮かべた口元を、唾液に濡れた舌で、ペロリ、となぞる。  
 
「すでに勝敗は決しているわ・・・・今更、貴方がどう否定しようと、この結果は決して動きはしない。  
貴方が、そのことを理解できないなら、理解できるようになるまで付き合ってあげるだけのこと。  
世界をこの手に掴むのは、それからでも決して遅くはないのだから・・・・」  
 
言い放つなり、麗子は、勢いよく立ち上がり、腰に帯びた「影の剣」を外すと、あらぬ方向へと放り投げる。  
突然の行動に驚く優子の目の前で、全身を覆った漆黒の鎧を、次々に脱ぎ捨てていく麗子。  
 
「・・・・こんな物は、もう必要ないわ。  
これから、私たちは、ログレスやヴァリアから与えられた運命を捨て去って、私たち二人の時代をつくるのよ!」  
 
麗子の手が、胸当てへと伸びた瞬間、優子は、思わず、顔を赤くし、視線を逸らした。  
その様子を眺めて薄く笑いつつ、ためらいなく胸当てを外し、これ見よがしに足元の床へと落とす麗子。  
乾いた金属音が、幾重にも反響しつつ、優子の心をかき乱す。  
 
「・・・・こっちを見て、優子。恥ずかしがらずに」  
 
しかし、優子は、おびえる小動物のように、びくっ、と肩を震わせ、体を固くして、ぎゅっ、と目を瞑る。  
小さく舌打ちしながら、優子の髪をつかんで、強引に引き上げようとする麗子。  
だが、何かを思いついたらしく、急にその動きを止め、ニ、三歩後ろに下がって、床に腰を下ろす。  
 
・・・・そして、白く細い指を、まろびでた胸のふくらみへと伸ばす。  
 
「・・・・ふっ・・・・くっ・・・・んんっ・・・・アッ・・・・ンむッ・・・・くぅぅっ・・・・」  
 
麗子の口元からこぼれ落ちる甘く切ない喘ぎ声。  
ますますきつく目を閉じ、両手で耳を塞いで、必死にかぶりを振り続ける優子。  
だが、火照った願望を、完全に押さえ込むまでには到底至らなかった。  
むしろ、そうやって激しく拒絶すればする程に、欲望の炎は着実に火勢を増し、燃え上がっていく。  
心臓が、早鐘のように激しく鼓動を刻みながら、  
身体の奥底から湿り気を帯びた熱気を汲み上げては、所構わず、ぶちまける。  
「見たい」、「いや、見ては駄目」という相反する感情が激しくせめぎ合う度に、乱れた呼吸が肩を上下させた。  
 
「・・・・あン・・・・くふっ・・・・うぅん・・・・あはぁ・・・・いい・・・・気持ち良い・・・・」  
 
麗子の自慰の喘ぎは、多少、演技がかってはいたものの、優子の想像力を掻き立てるには充分だった。  
両耳を塞いだ指の隙間から、麗子の乱れた息遣いが、耳の中に流れ込むたび、  
きつく閉じた瞼の裏に、快楽に酔い痴れる麗子の汗だくの表情と弾む白い肌が浮かび上がり、優子を苦しめる。  
 
(・・・・も、もう駄目・・・・このままじゃ、頭がおかしくなりそう・・・・)  
 
懊悩の果てに、とうとう耐え切れなくなり、羞恥心に身を震わせながらも、おそるおそる顔を上げる優子。  
 
・・・・黒いバンダナはほどけかけ、赤いショートヘアが乱れて汗に濡れていた。  
麗子は、仰向けの姿勢で、一心不乱に胸のふくらみを愛撫し、先を尖らせた薄桃色の突起物をしごき上げては、  
たまらないといった表情で、喜悦の声を上げ、卑猥な言葉を発し続けている。  
 
「・・・・アアッ・・・・イイ!凄くイイわ・・・・!くぁッ・・・・ウッ・・・・凄い・・・・ン、あッあァッ・・・・!!」  
 
優子の喉が、ごくり、と鳴った。  
 
(・・・・ああ・・・・麗子・・・・麗子が・・・・あんなことを・・・・)  
 
無論、目の前で繰り広げられる痴態には、嫌悪感を催さずにいられなかったものの、  
それ以上に、優子にとって、その光景は衝撃的で、何よりも魅惑的だった。  
リアリティでも、ヴェカンティでも、名家の令嬢として、ヴェカンタの黒き戦士として、  
(友好的ではなかったとはいえ)常に知的な雰囲気に包まれ、誇り高く振舞ってきた麗子が、  
欲情に身を任せ、はしたない声を上げ続ける姿を、優子は、食い入るように見つめ続ける。  
 
 
優子の視線に気付きつつ、敢えて気付かない風を装って、更に自慰をエスカレートさせていく麗子。  
左手で、乳房への愛撫を続けつつ、右手を伸ばして、スカートの裾をたくし上げると、  
シルクに似た光沢と手ざわりのする、黒いショーツへと指先を這わせる。  
ぷっくりと膨らんだ恥丘の上を、ゆっくりとすべらせながら、少しずつ少しずつ、真ん中の方に寄せていくと、  
すでにじっとりと湿り気を帯びていた秘裂の中から、小さな染みが浮かび上がり、  
表面積を増すと同時に、麗子の指先に絡みついてくる。  
 
「・・・・あぁ・・・・くぅっ・・・・うっ・・・・ふあ・・・・んっ・・・・くぅぅ・・・・ん・・・・」  
 
(・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・ふぅっ・・・・くっ・・・・はぁっ・・・・あぁ・・・・)  
 
麗子の口から漏れるじっとりとした喘ぎ声に、優子のためらいがちな息遣いが絡み合う。  
何度も目を背けようとはしたものの、身体の芯から発せられる熱気は既に耐え難く、  
時に切なく、時に甘い、麗子の声が響き渡るたび、少しずつ少しずつ、  
頭の位置は高く、目線の角度は水平に近くなり、耳を塞ぐ指の間隔は拡がっていった。  
 
「・・・・ふうっ・・・・ぐぐっ・・・・!・・・・んうっ・・・・あうっ・・・・!・・・・くふぁっ・・・・あああっ・・・・!!」  
 
右手全体を、黒いショーツの内側に突き入れ、激しく動かす麗子。  
頤を上げて白い喉を惜しげもなくさらしつつ、頭を左右に振って、絶頂への誘いに耐える。  
快美感が増すにつれ、V字型を形成していた両脚が、さらに大きく開き、M字型へと変化していく。  
弓のようにしなりながら、びゅくびゅくと浮き沈みする身体は、透明な汗の粒に覆われて白く輝き、  
痺れきって火花が飛び交う頭の中には、深いピンク色の靄がかかっていた。  
 
「・・・・うっうっ・・・・ああっ・・・・あっ・・・・!・・・・も、もうっ・・・・ひあっ・・・・!!  
・・・・あぐっ・・・・うあっ・・・・!・・・・く、来るわ・・・・!・・・・ああ・・・・もう、すぐっ・・・・ううっ・・・・!!」  
 
激しさを増す麗子の声。  
きれいな三日月形に反り返った身体を、頭と左腕で器用に支えながら、肉襞の中で指を泳がせるたび、  
やや小ぶりだが、形良く締まったヒップが空中を跳ね回り、  
ショーツの中に収まりきらなくなった愛液が、太股をつたって、石床の上にいくつもの染みを作っていく。  
足腰の感覚がおぼつかなくなって来たのか、下半身の重心がぐらぐらと不安定に揺れ動き、  
筋肉にも、時折、ぴくぴくっ、と不規則な痙攣が現れ始める。  
 
「・・・・あああっ!!・・・・イ、イイっ!凄くっ・・・・!!・・・・あっ!・・・・あぁっ!ああぁぁぁっ!!」  
 
金切り声のような甲高い嬌声と共に、絶頂に達する麗子。  
限界まで突き上げた腰から、大量の熱い液体がほとばしる。  
ビクンビクンと、何度も全身を大きくのた打ち回らせた後、  
精根尽き果てたように、ぐったりと身体を投げ出し、深い陶酔感と恍惚感を噛みしめる。  
 
「・・・・っ・・・・ふぅっ・・・・くっ・・・・んんっ・・・・あっ・・・・ふうっ・・・・ん・・・・」  
 
そこから、ほんの数歩離れただけの場所で、全身汗だくになり、荒く肩で息をしながら、  
体内からの熱で蒸し上げられた身体を揺さぶる優子。  
胸の谷間から大量の汗が噴き出し、喉はからからに渇ききっていた。  
焦点の合わない、ぼんやりとした瞳を、フラフラと彷徨わせながら、  
ほとんど無意識的な動作で、右手を、純白のスカートの奥へと潜り込ませ、  
濡れそぼった薄い布地越しに、谷間の上を、おぼつかなげになぞっている。  
 
(・・・・わたし、一体・・・・なんで・・・・こんなこと・・・・してるんだろ・・・・?  
・・・・ログレスは・・・・倒したのに・・・・どうして・・・・元の世界に・・・・戻れないの・・・・?  
これ以上・・・・わたし・・・・何を・・・・すれば良いの・・・・?)  
 
朦朧とする意識の中で、千々に乱れた思考を手繰り寄せながら、自問する優子。  
涙でぼんやりとふやけた視界の奥では、小さな白い光が誘うように明滅している。  
 
(・・・・「ヴァリスの剣」・・・・?)  
 
束の間、その光に目を凝らし、考え込む優子。  
―――――――-だが、次の瞬間、その視線は、力なく床に落ちる。  
 
(・・・・だめ・・・・わたしには・・・・麗子は・・・・殺せない・・・・。  
・・・・たとえ・・・・ログレスの跡を継いで・・・・ヴェカンティの支配者になって・・・・、  
世界を・・・・自分のものにしようとしているとしても・・・・。  
・・・・そのために・・・・・わたしを・・・・騙して・・・・利用して・・・・きたのだとしても・・・・)  
 
がっくりと肩を落し、うなだれる優子。  
その深く蒼い瞳は、無力感と諦めとに支配され、暗い淵へと沈んでいく。  
 
(・・・・もう・・・・いいわ・・・・わたし・・・・十分・・・・戦ったもの・・・・。  
・・・・もう・・・・これ以上・・・・戦いたくない・・・・麗子とも・・・・誰とも・・・・)  
 
ううっ、と、低い呻き声を漏らし、上体を仰け反らせる優子。  
左手を後ろについてバランスをとりながら、右手の指を、一本、また一本と、ショーツの中に忍び込ませていく。  
ピチャピチャと恥ずかしい音を立てながら、薄い恥毛の生えた陰唇の粘膜をくすぐるたびに、  
快感と羞恥とが、甘く切なげな喘ぎ声となって流れ落ちていく。  
 
「・・・・そうよ、優子。貴方は、もう十分に戦ったわ。  
これからは、私と二人、愛し合って生きていくの・・・・誰にも邪魔されない・・・・私たちの世界で・・・・」  
 
いつの間にか、背後に回っていた麗子が、優子の体にしなだれかかり、  
汗ばんだ髪の毛の香りを嗅ぎつつ、形の良い耳たぶを、つるり、と舐める。  
もはや、完全に抗う気力も失せたらしく、嫌悪の反応を示すでもなく、  
むしろ、さらなる愛撫を期待するかのように、喘ぎ声のトーンを高くする優子。  
 
「・・・・そう。それなら、優子、もっと、私を感じて・・・・私を受け入れて・・・・」  
 
無言のまま、曖昧な表情でうなずく優子の視界の端で、白い光が輝きを失い、漆黒の闇へと呑み込まれていった・・・・。  
 
――――――――。  
 
 
「・・・・んんっ・・・・くっ・・・・うっ・・・・ふうっ・・・・んんんっ・・・・あっ・・・・ううんっ・・・・」  
 
長い青髪を振り乱しながら、白い裸体をくねらせ、悶える優子。  
自分よりもやや背の高い優子を、腰の上に座らせ、背後から抱きかかえるようにして愛撫を繰り返す麗子。  
邪魔なヴァリス・スーツは取り去られ、わずかに残された深紅のスカーフだけが、首元で頼りなげに揺れていた。  
せめてもの慈悲という訳か、純白のスカートだけは、剥ぎ取られずにいたものの、  
M字型に開脚を強いられた太股の間の大事な部分を覆い隠すには、その面積はあまりに狭小すぎた。  
 
 
「・・・・くううっ・・・・んふっ・・・・ああっ!・・・・いやっ!・・・・ううっ・・・・んぐっ・・・・ひぃっ・・・・あああっ・・・・!」  
 
股間を覆っていた薄い生地のショーツは、今や、折り曲げられた右脚の膝の上にあり、  
愛液に濡れそぼって、濡れ雑巾のようにびちょびちょになった無残な姿を優子の前に晒している。  
代わりに、今、優子の陰部を覆うのは、脇腹から回された麗子の右手首から伸びた、細くしなやかな5本の指と、  
なんとかしてその動きを止めようと、いじらしく重ねられる、力の抜けきった優子の右手である。  
・・・・勿論、現在の、消耗と快楽の頂点へと追い上げられている真っ最中の優子には、  
たとえ麗子の指の1本であれ、動きを妨げるだけの体力も敏捷さも気力も残ってはいなかったのだが。  
 
「・・・・くひっ・・・・ひぃぃっ・・・・!あああっ・・・・くっ・・・・ぐぐっ・・・・あうぅぅ・・・・!」  
 
親指と小指とで、優子の恥丘のふくらみを押さえながら、  
残る三本の指で、柔らかい粘膜をまさぐり、弄ぶ麗子。  
まだ少女のあどけなさの残る、薄い恥毛に囲まれた、ふくらみの一番上では、  
度重なる愛撫にもかかわらず、これまで、一度も触れられること無く取り残されてきた最も敏感な突起が、  
焦らされ続けるのに我慢ならず、自然に剥け返った包皮の間から、充血したピンク色の姿をのぞかせている。  
だが、麗子には、そう簡単に優子に絶頂を許すつもりはないらしく、  
巧みな指の動きで、優子の性感をコントロールしつつ、危険水域に達したと見るやすぐに作業を中断してしまう。  
 
「・・・・はぁはぁ・・・・くっ・・・・お、お願い・・・・もっと!・・・・ああ・・・・意地悪しないで・・・・!!」  
 
涙ながらに懇願の言葉を口にする優子。  
あと少しで昇りつめることが出来るというタイミングにさしかかるたび、  
責めを中止し、刺激を弱め、攻撃の力点を別の場所へと移してしまう麗子のあくどいやり口に、  
もはや矢も盾もたまらず、恥じらいも慎みもかなぐり捨てて、哀訴を繰り返す。  
・・・・無論、麗子が、そのような訴えに耳を貸すことは一切ない。  
 
「・・・・ああ・・・・い・・・・いやぁ・・・・こんなの・・・・くぅぅっ・・・・いやよぉ・・・・」  
 
腋の下を通って回された、麗子の左手が、手のひらの面積よりも少し大ぶりな左の乳房にかかる。  
親指と人差し指と中指とで、硬くしこった桜色の乳首を挟んでしごき上げつつ、  
大きく円を描くように、ゆっくりと丹念に揉み込み始めると、すぐに、甘い喘ぎ声が漏れ始める。  
 
そうかと思えば、やや小ぶりだが、形の良い張りのある乳房に、唾液をたっぷりと垂らし、  
白く輝く汗の粒に覆われた、剥き出しの背中に押し付けると、  
普段は、優子自身、意識することもない背筋の性感帯の上を、何度も上下させたりもする。  
固く先を尖らせた乳首と、つきたての餅のような柔らかい胸のふくらみとが、背中を行き来するたびに、  
優子の蜜壷からは、まるでここが責め立てられているかのように、大量の淫水がほとばしる。  
 
その一方、うなじに唇を寄せた麗子に、熱い息を吹きかけられながら、  
こちらは既にこれまでの性交によって啓発済みの、耳たぶと耳の穴に舌を差し込まれた時には、  
一瞬、呼吸を止めて、白い頤を、ピンッ、と、のけ反らせたかと思うと、  
次の瞬間、全身の筋肉を脱力させて前のめりに倒れ込み、しばらく起き上がれなかった程だった。  
 
「・・・・はぁっ・・・・はぁっ・・・・んぐっ・・・・ひぐっ・・・・ううっ・・・・お、おねが・・・・くあっ!  
・・・・おねがい・・・・だから・・・・イ・・・・イカせてぇ・・・・ひうっ・・・・くっ・・・・ううう・・・・ああああ・・・・!!」  
 
端正な目鼻立ちの表情を苦悶に歪めつつ、  
麗子によって与えられる刺激に対して、次々と身体と感覚を反応させ、快美感を引き出されていく優子。  
息も絶え絶えになりながら、哀願を続ける。  
快楽地獄の中で、いつしか形ばかりの抵抗の動作すら影をひそめ、  
全身は蒸しあがったばかりの肉饅の如く、熱く火照り、湯気を立ち上らせていた。  
理性など既に弾け飛んで久しく、ただひたすらに、快楽と苦痛の中でのた打ち回りながら、  
麗子の指と舌に反応して、声を上げ、身体をのた打ち回らせ、愛液を垂れ流すことしか出来なくなっている。  
 
(・・・・そろそろ、フィナーレと行こうかしら・・・・?)  
 
薄く笑みを浮かべながら、優子の胸と腰に回した腕を振り解く麗子。  
体の支えを失った優子は、ふらふらと身体を前後に揺すると、麗子の腰の上から滑り落ち、  
身体をくの字型に折り曲げて、ぐったりと横倒しに崩折れる。  
麗子は、両手を、二人分の愛液に濡れてヌルヌルしている、黒いスカートの中へと差し入れると、  
湿り気を帯びて肌に張り付く黒いショーツの端に指をかけた。  
 
「・・・・フフッ。美味しい」  
 
鮮やかなピンク色の花弁に、人差し指を軽く突き入れ、ねっとりとした液体を指の腹ですくって口に運ぶ麗子。  
足元に倒れ伏したまま、全身をびくびくと細かく震わせ、荒く息を注いでいる優子を見下ろすと、  
改めて、嗜虐と征服の快感が背筋をぞくぞくと這い上がり、口元がほころんでいく。  
脱ぎ捨てたばかりの黒い下着を拾い上げ、  
汗と涙と涎とでびしょびしょになり、清楚さなど微塵もなくなった優子の顔に向かって、無造作に投げつける。  
 
「・・・・んっ・・・・くっ・・・・ぐふっ・・・・ぐくうっ・・・・!」  
 
濃密な臭いに鼻腔をくすぐられて、むせかえる優子。  
だが、体力も気力も失われた今となっては、麗子の愛液にまみれた顔を小さく震わせるのが精一杯だった。  
対する麗子は、上下に折り重なったしなやかなふくらはぎの間につま先を突っ込むと、  
そのまま身体を沈み込ませ、互いの下半身を、丁度、二本のピンセットが交差したような形に組み合わせる。  
 
「・・・・んあっ・・・・!!ああっ・・・・んん・・・・!!」  
 
むっちりとした太ももの感触に、鼻にかかったような声を上げる優子。  
優子の左脚を持ち上げて、肩の上に担ぐような姿勢で、麗子は、ゆっくりと前進を開始する。  
無論、その先には、ぱっくりと口を開き涎を垂れ流している優子の花弁が待ち構えていた。  
すべすべとした肉付きの良い太腿の上に跨った麗子の腰が、もったいぶるように数センチずつ移動するたび、  
優子の口からは、催促するような、切迫した喘ぎ声が漏れ続ける。  
 
「・・・・っ・・・・ふっ・・・・あッ・・・・熱いィッッ!!・・・・ひっ・・・・いっ・・・・ああああン!!!!」  
 
一番敏感な部分と一番敏感な部分とが絡み合った瞬間、甲高い嬌声を上げ、全身を大きくうねらせる優子。  
突き刺すような快感が、興奮して勃起した陰核を貫き、充血して厚みを増した陰唇を震わせる。  
ピンク色の衝撃波が、膣道を収縮させ、子宮の奥壁を突き破らんばかりに暴れ回って、下半身をガクガクにする。  
留まる所を知らない快感のうねりが、電流が走り抜けるかのように脊椎を駆け上り、  
視床下部に到達すると、そこで、ばぁん、と火花を発しながら弾け飛んで、頭の中を真っ白な閃光で焼き尽す。  
さんざんに焦らされ、昂ぶらされていた優子の肉体は、あっという間もなく、絶頂に達してしまった  
 
「・・・・クッ・・・・ンッ・・・・ウッ・・・・・ンンッ!」  
 
快楽の頂点を迎え入れる優子の腰の動きに、さしもの麗子も、気圧されるような表情で呻く。  
まるで小水を噴き上げるのような勢いで、熱い愛液をほとばしらせながら、  
ぷっくりと突き出した恥丘が、本能のままに猛り狂い、ぐいぐいと押し込んでくる。  
だが、元より、その動きは計算されたものではなく、闇雲なエネルギーの発散に過ぎない。  
すぐに、麗子は冷静さを取り戻すと、一旦、腰を引いて、優子のエクスタシーの波が収まるのを待った。  
相手を失った優子の腰が、クイックイッ、と、空しく空中に突き上げられるたび、  
内股の括約筋が不規則に痙攣し、花弁が大きく開いて、中の赤い粘膜を露わにする。  
半ば呆れたような顔で、優子の痴態を眺めていた麗子は、  
やがて、その狂気じみた肉体の勢いにも衰えが見え始めたと観て取ると、ただちに反撃にとりかかった。  
 
「・・・・あふっ・・・・い、いやぁっ・・・・!!・・・・ううっ・・・・だ、だめぇっ・・・・休ませてぇっ!!」  
 
悲鳴を上げる優子。  
だが、一方では、一度頂点まで昇りつめて、気をやったことで、ある種緊張が解れた状態になったためか、  
彼女の中に、より強烈な快感を求める衝動が芽生え、急激な勢いで増殖を始めていた。  
その変化を目ざとく見つけた麗子は、ほくそ笑みながら、  
持ち上げていた左脚を下ろすと、体を更に深い角度で交接させ、優子の上半身を抱え上げる。  
倍増した下半身の密着感に、堪えられないといった表情で上体を仰け反らせる優子  
彼女自身もまた、両腕を麗子の胴に絡め、腋の下の少し下の位置で、ぎゅっ、と交差させる。  
四つの乳房が重なり合って、上下に揺れ動くたび、乳首同士がこすれて、性感を高め合う。  
 
「・・・・ああっ・・・・ふあっ・・・・い、いいっ!!・・・・あうっ・・・・すごい・・・・すごく・・・・気持ちいいっ!!」  
 
溢れ出す性欲が頭の中で渦を巻き、普段の優子からは想像も出来ない、はしたない言葉が次々に飛び出す。  
麗子が、緩急をつけながら腰を動かすたび、その揺れは、性器は勿論、身体の各所に、各々違った強さで伝わり、  
それらの刺激が渾然一体となって、優子の性感を高めていく。  
時折、体をぐっと密着させて、髪をかき分けながら、首筋や耳たぶを舐め上げたり、  
腋の下や背中の性感帯に、指を這わせるのも効果的だった。  
申し訳程度に腰の周りを覆っているだけの存在と成り果てた、びしょびしょのスカートの中に手を入れ、  
尻丘の間の谷間を人差し指でこすったり、汗まみれになった尻たぶを、ぎゅっと掴んだりするたび、  
肛門の周りの筋肉が、きゅっ、と、固くすぼまり、その動きが膣にも伝わって、麗子を楽しませた。  
あらゆる手段で優子を責め立てる中で、いつしか、麗子自身も深い快感に酔いしれていく。  
 
「・・・・ウッ・・・・クッ・・・・いい・・・・いいわよ、優子・・・・うぐっ・・・・あふぅうっ!!」  
 
優子の体を極限まで引き寄せた麗子が、紅潮した顔で叫ぶ。  
同時に、優子の身体にも、ひときわ大きなわななきが走った。  
固く勃起した乳首が、張りのある乳房に押し潰されかけ、びゅくびゅくと跳ね回りながら逃げ道を探している。  
その痛みが、甘美なパルスとなって、麗子の性的中枢を容赦なく責め立て、忘我の境地へと突き上げていく。  
赤い髪を振り乱し、何度も顔を仰け反らせながら、体の芯からこみ上げてくる熱い感覚に声を震わせる。  
 
「・・・・アッ、アッ、アァァァッ・・・・!!凄いィィっ・・・・!!も、もう、我慢できないっ・・・・!!!!」  
「・・・・ああっ!!・・・・も、もう・・・・駄目・・・・!!ダメ・・・・えぇぇぇ・・・・!!!!」  
 
重なり合った二人の叫び声が、広間の柱や壁に反射して、何重にも共鳴しあう。  
ほぼ同時に絶頂へと達した優子と麗子は、絡み合った手足を引き抜いて、後ろに倒れ、  
白と黒のスカートの奥から、大量の淫水を噴出させて、互いの体をびしょびしょに濡らす。  
白い磁器のような整った顔を、快感にゆがめ、涙と涎と鼻水を垂れ流す麗子。  
エクスタシーの大波に飲み込まれ、泣きじゃくりながら、激しく全身を痙攣させる優子。  
二人とも、我を忘れて、快楽を貪り、それに酔い痴れる。  
 
・・・・・・・・。  
 
どれくらいの時間が経っただろうか。  
麗子は、絶頂に次ぐ絶頂によって、鉛のように重くなった手足を、苦労して動かしながら、身を起こした。  
傍らでは、白濁した液体にまみれた優子が、ピクリとも動かず、白目を剥いて失神している。  
荒淫がたたって、ズキズキと痛むこめかみを押さえながら、麗子は、ふと不安に駆られて、  
広間の中心、暗黒王の玉座へと視線を送った。  
 
「・・・・考え過ぎ、か・・・・」  
 
空っぽの玉座の姿に、安堵の笑みを浮かべて、ほっと息をつく麗子。  
 
――――――――その、刹那だった。  
 
 
「・・・・いや、的確な判断だぞ、麗子・・・・わが下僕よ」  
 
今度こそ、本物の殺気を感じて、後ろを振り返った麗子の目の前に、ありえざる光景が出現する。  
歪んだ空間に走った断層の中から、悠然とこちらを凝視する不定形の靄のような黒い影が、  
自らを縛め、隔離する次元の障壁の隙間から、ヴェカンティの存在する地平へと浸み出し、  
恐怖に凍りつき、声を失った麗子の前で、この世界における実体を再構築し始める。  
 
ヴェカンティの支配者、暗黒王ログレスの帰還であった。  
 
 
―――――――TO BE CONTINUED.  
 

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