: 160%">  
アシャンティ。森林地帯。沼地の中にたたずむ遺跡の中。  
 
「・・・・はぁうっ・・・・んんっ・・・・くっ・・・・ううっ・・・・うくぅっ・・・・あふぅううっ・・・・!」  
 
崩れかけたドーム屋根の梁の下、逆さ吊りにされた少女の身体が弱々しく震えている。  
側頭部で結わえた艶やかな赤いポニーテールを揺らしながら、  
全身を襲う激しい痒みに悲鳴を漏らし、右に左に身をよじる少女――――「レダの戦士」・朝霧陽子。  
 
数ヶ月前のガルバ城での戦いにおいて、「ヴァリスの戦士」たる麻生優子、桐島麗子の両名を助け、  
混乱を極める暗黒界を掌中に収めんと目論んだ独裁者ゼルの野望を打ち砕いた彼女は、  
手痛い敗北の後、しばらく鳴りを潜めていたゼル一派に蠢動の兆しあり、との情報を受け、  
再度、単身アシャンティへと潜入していた。  
 
(・・・・くぅっ。な、何なの、この樹液っ・・・・!?  
・・・・んんっ・・・・か、痒いっ・・・・触れたところが・・・・ムズムズするぅっ・・・・!  
・・・・ひあぁっ・・・・だめぇっ・・・・我慢・・・・出来ないよぉっ・・・・!)  
 
少し華奢な印象はあるものの、成長期の乙女に特有の若々しさに溢れたバネのある体は、  
健康的な肌の色に良く調和する、「レダの鎧」によって引き締められ、かつ、引き立てられて、  
凛々しさと可憐さを兼ね備えた青い果実の魅力に満ち溢れている・・・・筈なのだが。  
今、その肉体は、アシャンティのこの一帯に生息する巨大な食虫植物の触手に絡め取られて自由を奪われ、  
その表面を覆う無数のイボイボから分泌される、妙に甘ったるい匂いのする粘液によって穢されていた。  
 
――――全ては、雪辱に燃えるゼルと側近ダリスによって仕組まれた巧妙なワナである。  
だが、陥穽に落ち、こうして情けない格好で悲鳴を上げ続けるしかない状況に陥ってなお、  
陽子は、これが慎重に張り巡らされた計略の一部だとは気付いておらず、  
巨大な食虫植物の襲撃という単なる偶発的なアクシデントに過ぎない、としか認識していなかった。  
彼女にそのように思い込ませるように仕向けたダリスの狡猾さを割り引いて考えたとしても、  
それを見抜けず麗子への救援要請が遅れた点は、やはり判断ミスであると言う他無い。  
 
「・・・・あああっ・・・・どうして・・・・何故、防御フィールドが発動しないのぉ!?  
・・・・いやあぁぁっ・・・・たすけて・・・・痒いっ・・・・痒いよぉっ・・・・!!」  
 
間断なく襲って来る執拗な痒みに、肌理の細かい肌を醜く粟立たせながら、情けない声を漏らす陽子。  
だが、「レダの鎧」の防御システムは、多少皮膚には有害ではあっても、  
本質的に生命や身体の機能に対する脅威とまでは言えないこの種の状況に対しては、  
攻撃又は重大な危険とは認識せず、防御フィールドを発動させる事はない。  
ゼルの智嚢たる宦官ダリスは、前の戦いの折、「レダの鎧」を徹底的な分析にかけて、  
その全てとはまで言えないものの、いくつかの重要な機能の解析には成功している。  
その成果は今回の復讐計画の中に十分に活かされ、今まさに実を結ぼうとしているのだった。  
 
「くううっ・・・・せめて・・・・両手が自由になれば・・・・!  
はぐうっ・・・・こ、このままじゃ・・・・気が変になっちゃう・・・・ああああっ・・・・!」  
 
既に全身の露出部分をくまなく覆い尽くした樹液の「威力」に悲痛な声が上がる。  
唯一の武器である「レダの剣」は、食虫植物の奇襲を受けた際に弾き飛ばされて、  
陽子の吊り下げられている場所からはずっと離れたぬかるみの中に沈みかけている。  
全身の力を振り絞って、ツタ状の触手を振り払おうにも、  
逆さ吊りにされた不安定な姿勢では普段の半分の力も出せず、  
縛めから逃れる事はおろか、間断なく襲い来る堪え難い痒みを鎮める事すらままならない。  
ネバネバした黄色い粘液によって侵蝕されるがままの柔肌をビクビクと打ち震わせながら、  
必死に手足をばたつかせるものの、何の効果も無く、体力と気力を無駄に浪費するばかりだった。  
 
「・・・・あうぅぅっ・・・・た、助けて・・・・お願い・・・・誰か来てぇっ・・・・!  
ひぃあぁっ・・・・このままじゃ、わたし、本当に・・・・ああっ・・・・おかしくなるうぅっ・・・・!!」  
 
「・・・・フフ、ヨーコめ。余程この責めを気に入ったと見えるな」  
 
修復工事の続く浮遊要塞ガルバ城。一室。  
ダリスを脇に従え、スクリーンに大映しにされた「レダの戦士」の苦悶の表情に唇の端を歪めるゼル。  
 
「ふぇっふぇっふぇっ。誠にごもっとも。仰るとおりにございます、総統閣下。  
ご覧なされませ、小娘めのあの情けない顔を・・・・  
「ヴェカンタの炎」に炙られ、ヒィヒィよがっていたあの折と、何ら変わらぬブザマさにござりまする」  
 
主人の傍らに侍り、大仰な身振りを交えつつ合いの手を入れる宦官ダリスは、  
目も鼻も口も曲面だけで構成されたカエルのような顔に、  
どの角度から見ても「下品」という形容詞が真っ先に思いつくような笑いを浮かべていた。  
 
「ヴァリスの戦士」の前に手痛い敗北を喫してから数ヶ月、  
動力系統を破壊されアシャンティの大地に墜落した浮遊城は、  
飽くなきゼルの野望と共に再び天空へと飛翔を果たし、彼の王国の睥睨を再開していた。  
側近ダリスの指揮の下、城塞機能の修復は急ピッチで進み、昔日の威容を取り戻す日も間近い。  
 
だが、傷付いたゼルのプライドは、このままアシャンティの支配者として君臨し続け、  
あるいは、混乱の続くヴェカンティに進軍して征服者となるだけでは、もはや到底癒し難かった。  
これまでの生涯で最悪の敗北を味わわせ、破滅の一歩手前まで追い詰めた  
――――実際、それまでの徹底的な粛清と恐怖政治によって、  
アシャンティ内の反抗勢力を文字通り根絶しにしていなければ、権力の維持は不可能だっただろう――――  
あの三人の少女を、捕らえ、嬲り、犯し抜いて、足下に這いつくばらせる事、  
復活を遂げたゼルの関心は、いまやその一点にのみ集約されていると言っても過言ではない。  
 
「クックックッ、どうやら、ヴァニティから救援が来たようにござりますぞ。  
・・・・フムフム、この反応は、おそらく・・・・麗子じゃな・・・・予想した通りじゃ・・・・。  
ヒッヒッヒッ、久しぶりじゃのう・・・・麗子。  
この前はお主の力を見くびり過ぎて思わぬ不覚をとったが、今回はそうはいかぬぞ・・・・」  
 
別の次元からアシャンティの存在する時空間に転移してくる者の存在をキャッチしたダリスが、  
手元の端末から吐き出された解析結果に舌なめずりをしながら、主の顔を見上げる。  
待ちに待った復讐の時を前に、普段は滅多に感情の起伏を顕わにしないアシャンティの支配者も、  
高揚感を禁じ得ないのか、まるでダリスの芝居がかった所作が伝染したかのような身振りで許可を与える。  
 
「さぁ、行け!!・・・・阿修羅!メディアス!今こそ、お前達の出番じゃ!!  
あの糞忌々しい小娘共にお前達の力を見せてやれ・・・・ククク、このわしが与えたその力をっ!!」  
 
――――――――たあぁぁっ!!!!  
 
裂帛の気合を込めて、磨き上げられた黒曜石のような輝きを放つ漆黒の剣が振り下ろされ、  
切っ先からほとばしったエネルギーが光の刃と化して、陽子を拘束する触手を天井の梁ごと一刀両断にする。  
きゃあっ!と悲鳴を上げて石床に落下する「レダの戦士」の上に、  
支えを失って崩壊を始めた遺跡の石積みが飛礫となって降り注いだものの、  
これは「レダの鎧」によって危険物と認知され、発動した防御フィールドによって簡単に弾かれた。  
建物が完全に倒壊しきり、濛々と立ちこめた砂塵が収まるのを待って近付いて来た少女の姿に、  
安堵のため息を漏らした陽子は、しかし、思わず口を尖らせずにいられなかった。  
 
「・・・・麗子。助けてくれるのは有難いんだけど、出来たら、次からはもっと優しくして貰えない?」  
 
「あら、ご挨拶ね・・・・まったく、口だけは一人前なんだから」  
 
苦笑を浮かべながらも、麗子は、頭から土埃をかぶった陽子に手を貸して立ち上がらせる。  
腰に帯びた愛剣と同じ漆黒の光沢を纏う鎧に身を包んだ外見は、ほとんど変わらないにも関わらず、  
落ち着いた物腰と無駄の無い動きは、陽子よりも遥かに成熟した印象を漂わせている。  
さすがに少しばつの悪そうな顔で、「ヴァリスの戦士」を見上げた「レダの戦士」。  
・・・・と、次の瞬間、ぶり返してきた全身の痒みが、再度その表情を歪めさせた。  
 
「ちょっと、いくらなんでも気を緩め過ぎよ。もっと、しゃんとしたらどうなの?」  
 
「・・・・そ、そんな事、言われても・・・・」  
 
麗子に注意され、しゅんとする陽子。  
さりとて、執拗な痒みが収まる訳でもなく、傍目にも集中力を欠いている状態にあるのは明らかだった。  
 
(嫌な感じね・・・・偶然にしては出来すぎている・・・・もしかしたら・・・・)  
 
・・・・麗子の胸中をよぎった不吉な予感は、ほどなく的中する事になる。  
そして、その戦いの結果は、彼女の予想すら上回って、状況を最悪の方向へと展開させていくのだった。  
 
 
――――夢幻界。ヴァニティ城。  
 
王女の命により、完全に人の出入りが止められた大理石の回廊。  
幾重にも連なる白亜の円柱とアーチの間を、一対の足音が足早に通り過ぎていく。  
必死に自制を働かせつつも、じりじりと高まる焦燥を反映してか、リズムの乱れを隠しきれない長靴の音と、  
不安に慄く内面を表面に出すまいと、懸命に平静を装い続けている衣擦れの音・・・・。  
最も信頼する友であり同志である麗子の危機を知り、ヴァニティ城に駆けつけた優子と、  
リアリティから召喚した彼女に、ひと通り状況を説明しつつ、陽子の許へと案内するヴァルナのそれである。  
 
(・・・・麗子。・・・・今、一体、何処にいるの・・・・?まさか・・・・)  
 
ヴァルナの手前、上辺は冷静な態度を取り繕ってはいるものの、  
胸の中はザワザワとさざ波立ち、とても落ち着いて何かを考えていられる状況ではない。  
目的地に近付くにつれ、その傾向は更に強まり、ともすれば、悪い方向にばかり考えが向かいがちとなって、  
時折、遠慮がちな視線をやり取りする他は、めっきりと言葉少なになっていた。  
 
「麗子捕わる」の凶報は、ヴァニティ全体を震撼させて余りあるものだった。  
ヴェカンティの事情に最も精通した者として、暗黒界に対する諜報活動の中核にあった麗子は、  
先帝ヴァリアの死後、ヴェカンティの脅威への備えを十分に確立出来ていない中にあって、  
極めて重要な、攻守の要とでも言うべき位置を占めていた。  
ヴェカンティ情報の収集も分析も、陽子をはじめとする幾人かの「戦士」を用いた実力行使も、  
彼女の豊富な知識と的確な判断力を抜きにしては事実上不可能と言っても過言ではない。  
その麗子が捕囚の身となった影響は、数ヶ月前、陽子が囚われた時の比ではなかった。  
 
ただちに、王女ヴァルナは、ヴァニティの有する最強の切り札たる「ヴァリスの戦士」優子を召喚し、  
麗子の文字通り身を挺した闘いによって、辛くも虎口を逃れた陽子の回復を待ち、  
共に麗子奪還の任にあたらせることを決定したのだった。  
 
・・・・全ての状況は、ゼルとダリスの二人が企図した通りに運んでいた。  
 
 
(・・・・っ・・・・んくっ・・・・麗子・・・・んはっ・・・・麗子っ・・・・うっ・・・・ううっ・・・・)  
 
灯りを消した病室の中。ベッドの上に蹲り、頭から毛布を被って震えながら、弱々しくすすり泣く陽子。  
真っ赤に泣き腫らした目元はどんよりと曇って輝きを失い、  
半分解けかけてグシャグシャになったポニーテールが、涙に濡れそぼった頬に貼り付いている。  
つい先刻まで身に着けていた「レダの鎧」は、その大半が脱ぎ捨てられ、周囲の床に散らばっている。  
 
(・・・・ううっ・・・・あ・・・・あたしの・・・・せいだわ・・・・。  
・・・・んんっ・・・・うっ・・・・あたしが・・・・不甲斐ないばかりに・・・・麗子が・・・・)  
 
ヒックヒックとしゃくり上げながら、震える指先を薄い恥毛に覆われた陰阜へと伸ばす。  
既にじっとりと蜜を滴らせている鮮紅色の陰唇粘膜を、  
ちゅくっ、ちゅくっ、といやらしい音を立てながら愛撫すると、  
Mの字型に割り開かれた太腿の内側を、ビクビクッ、と敏感な反応が走り抜ける。  
んはぁっ、という切迫した喘ぎ声と共に、上体が大きく仰け反り、頤が突き上げられた。  
 
「・・・・あっ・・・・あふぁぁっ・・・・麗子・・・・ううぅ・・・・麗子・・・・麗子ぉ・・・・っ・・・・!!」  
 
――――無論、陽子とて、今はこんな事をしている場合ではない、という事は百も承知である。  
一刻も早く、戦いで受けた傷を癒し疲労を回復させて再戦を挑まねば、と固く決心し、  
ヴァルナの前で、必ず彼女を救い出す、と涙ながらに誓ってもいた。  
 
・・・・だが、その決意とは裏腹に、ヴァルナの前を退出して一人きりになると、陽子の胸の中は、  
単なる親友や同志の域を遥かに超越した、深い紐帯で結ばれていた筈の麗子を、  
自らの未熟と慢心の結果、目の前で為す術も無く奪い去られた上、  
彼女を置き去りにして自分一人だけ逃げおおせてしまった事への後ろめたさで一杯になっていた。  
心に重くのしかかる痛恨の想いは、僅かな時間のうちに、自分自身への激しい怒りと嫌悪感に変じて、  
消耗しきった心を責め苛み、自らを罰し貶める事を声高に要求し始めていた。  
 
・・・・その、自分自身の弱さを検察官席から厳しく指弾するもう一人の自分の声の前には、  
決意も誓いも、麗子が自ら望んで自分を逃がすための囮となった事実でさえも、恥ずべき言い逃れでしかなかった。  
 
「・・・・んんっ・・・・はっ・・・・あくっ・・・・ああ・・・・んぁうぅっ!・・・・ふあっ・・・・ふぁはぁぁっ・・・・!」  
 
ほんのりとピンク色に上気した体をガクガクと揺らしながら、クチュクチュと両手を動かし続ける陽子。  
最初のうちは、少し音程を外している程度の、せわしない呼吸音の連続に過ぎなかった喘ぎ声も、  
湿り気と熱っぽさが加わって、官能の響きに満ちたよがり声と化していく。  
泣き腫らした眼尻からは、未だ涙の滴が頬を伝っていたものの、  
瞳の中には、先程までとは明らかに異なる、自虐と綯い交ぜになった喜悦の輝きが瞬いていた。  
 
「・・・・あひぃぃっ・・・・ひぐぅぅっ・・・・だ、だめぇ・・・・こんな事してちゃあ・・・・んあぁっ!  
・・・・あふぁああっ・・・・こんな事してちゃ・・・・だめなのにっ・・・・だめなのにぃぃっ!」  
 
汗ばんだ柔肌から鼻腔をくすぐる発情臭が立ち上り、切なげな吐息にも蜜が滴るような粘り気が混じる。  
女芯の奥に生じたむず痒い圧迫感が絶え間なく疼いて、欲望の解放を迫り続ける。  
わずかに残った羞恥心に頬を赤く染め、弱々しくかぶりを振りながらも、  
陽子は、取り去った胸当ての跡がうっすらと残る乳房に左手を添えてやわやわと揉みしだき、  
残る右手を股間に伸ばすと、ぱっくりと割れた秘裂に沿って、すす〜〜っ、と指を這わせていく。  
 
「・・・・んあぁっ・・・・いやぁ・・・・だ、だめぇ・・・・止まらない・・・・指が・・・・止まらないよぉっ・・・・!!  
・・・・あたしの・・・・あたしのせいで・・・・麗子はあんな事になったのに・・・・、  
・・・・最低・・・・最低よ・・・・あたしなんて・・・・あたしなんてぇぇっ・・・・ああっ、嫌ぁあああっ・・・・!!」  
 
自分自身を激しく罵る言葉と共に、汗に濡れた白い乳房を、ぎゅううっ、と絞り上げる。  
やや小ぶりだが、程よい弾力に富んだ二つの胸丘が悲鳴を上げ、  
指の間から不恰好に飛び出した乳輪の先端が、見る間に充血してコリコリに強ばっていく。  
ツン、と尖りきったそれを容赦なく摘み上げて引き捻ると、今にも千切れ飛んでしまいそうな激痛が迸り、  
感極まった叫び声を張り上げる陽子の目の前で、無数の星屑が炸裂した。  
左手の指の間で弾ける乳肉の感触と、右手の指に吸い付いてくるような陰唇の濡れ具合とが、  
罪悪感と共に一層の興奮を煽り立て、少女の意識を快楽の頂きへと容赦なく追い上げていった。  
 
「・・・・陽子!?」「・・・・泣いているの・・・・!?」  
 
病室の中の異様な雰囲気に気付き、顔を見合わせる二人。  
入り口の前で足を止めたヴァルナが、扉越しに漏れてくる激しい喘ぎ声に表情を歪めて衝撃を露わにする。  
 
「・・・・よ、陽子・・・・一体、どうしたというの!?  
つい先刻、様子を見に来た時は落ち着いていたのに・・・・どうしてこんな・・・・!?」  
 
一方、優子の方は、真っ青になっている夢幻界の王女とは対照的に、  
口元を引き結んで押し黙ったまま、病室の扉をじっと目つめて何事かを考え込んでいた。  
 
(・・・・そう・・・・苦しくて堪らないのね・・・・陽子・・・・自分を責め立てずにはいられないほどに・・・・)  
 
(・・・・わたしも・・・・同じだったわ・・・・)  
 
脳裏にフラッシュバックする苦い記憶。  
最後の瞬間に理解し合えたとはいえ、結局、ログレスの魔手に操られた麗子を救い出す事は叶わず、  
自らの腕の中で物言わぬ躯となっていく様子を、茫然と見つめているしかなかったあの時・・・・。  
優子もまた、失われたものが戻ってくる訳ではないと分かっていて、  
それでもなお、激しい後悔と自責の念に囚われ、無力な自分への憎悪をたぎらせずにはいられなかった。  
 
傍目には吹っ切れているように見えても、その実、心の中はすさみきり、  
世界で一番大切だった人間を救う事が出来なかった自分に対する怒りと不信とが荒れ狂っていた。  
人前では辛うじて保たれている自制心も、周囲の人波が途切れて独りきりになればたちまち弾け飛び、  
濁流と化した感情に押し流されるまま、自分自身を傷つけ、罰し、侮蔑するためだけに、  
自慰に没入してあさましい行為に溺れる日々が、一体どれだけ続いた事だろう・・・・?  
 
(・・・・陽子・・・・あなたも、そうなのね・・・・)  
 
今、陽子を支配しているのは、在りし日の自分と同じ鬱屈した負の感情の連鎖に他ならないと直感して、  
深い同情を覚えると同時に、心のどこかで、複雑なものを感じずにはいられない優子。  
だが、「ヴァリスの戦士」は、敢えてわだかまりには目を瞑ると、逡巡を断ち切るように小さくかぶりを振り、  
・・・・そして、おろおろと慌てふためくヴァルナに、この場は自分に任せて欲しいと頼み込んだのだった。  
 
――――――――キィィィ・・・・・・・・。  
 
かすかに軋んだ音を立て、病室の扉が押し開かれる。  
だが、入り口の方向に背中を向けたまま、自慰に没頭し続けている陽子には全く気付いた様子がない。  
 
(・・・・・・・・)  
 
小さく苦笑した優子は、敢えて言葉を発する事無く、薄暗い部屋の中へとすべり込んだ。  
一歩近付くたび、陽子の身体にまとわりつく牝臭は、ねっとりと密度を増していくように感じられ、  
よどんだ空気の中を伝わる喘ぎ声と相まって、優子の心に微妙なさざ波を立たせていく。  
薄暗がりの中、いつ終わるともしれない自虐のダンスを踊っている少女の白い背中は、  
不規則な痙攣に覆われて、じっとりと濡れそぼり、煮えたぎった鉛のような陰鬱な熱気に覆われていた。  
 
「・・・・陽子・・・・」  
 
荒々しく肩を上下させながら指を動かし続ける陽子の背後から、そっと声をかける優子。  
ビクッ、と肩先を震わせて後ろを振り返った少女の、想像以上にやつれた表情に驚きながらも、  
すぐに穏やかな微笑みを浮かべてそれを打ち消し、汗でベトベトに濡れた身体を優しく抱擁する。  
 
「・・・・あっ・・・・あああっ!?・・・・ゆ・・・・優子・・・・さん・・・・!?  
・・・・ご、ごめんなさい・・・・!・・・・あたし・・・・取り返しのつかない事を・・・・本当に、ごめんなさい!!」  
 
突然現れた優子の姿に動転し、泣き腫らした目を大きく見開くと、謝罪の言葉を並べ立てる陽子。  
じっとりとした火照りに覆われ、ビクビクと波打つ少女の裸身を抱きしめながら、  
優子は、あくまで柔らかい、むずかる赤子をあやす慈母のような口調で語りかけた。  
 
「・・・・何も言わなくていいわ。陽子・・・・あなたが悪い訳じゃない。  
あなたは、精一杯頑張ったんだから・・・・だから、もう自分を責めるのはやめて」  
 
「・・・・うっ・・・・ううっ・・・・ゆ・・・・優子・・・・さん・・・・!  
・・・・んっ・・・・グスッ・・・・で、でも・・・・んんんっ・・・・麗子は・・・・麗子は、あたしのせいで・・・・!」  
 
優子の言葉に喉を詰まらせながら、激しくかぶりを振る陽子。  
その肌に宿った異様な熱気とむせ返るほど濃厚な体臭に、内心たじろぎかけた優子だったが、  
今はとにかく陽子を落ち着かせる事だけを考えて、その身体をより強くしっかりと抱き寄せる。  
 
・・・・だが、この行為が予想外の事態を招く事になる。  
 
「・・・・優子さん・・・・!!あたし・・・・あたし・・・・アアアッ・・・・優子さんッッ・・・・!!!!」  
 
激しい嗚咽と共に、陽子の頤が跳ね上がる。  
次の瞬間、衝動に我を忘れた陽子は、目の前で微笑む優子の口元に己れの唇を重ね合わせた。  
 
「・・・・んんんっ!?うっぐぐっ・・・・んんっ・・・・!?うっ・・・・ううぅん・・・・んふぅん・・・・!!」  
 
無我夢中でなめらかな口腔粘膜の感触を堪能する陽子。  
唇を激しく吸い立てながら、歯並びを押し割って強引に捻じ入れられた舌先が、  
ピチャピチャといやらしい水音を立てながら、生温かい口腔内を縦横無尽に這い回る。  
口唇愛撫と言うには荒々しすぎる、むしろ、ほとんど暴力的とも言うべき接吻の前に、  
驚きのあまり、半ば呆然としていた優子も、その意味するところを理解しない訳にはいかなかった。  
 
「・・・・はぁっはぁっはぁっ、・・・・あああ・・・・ご・・・・ごめんなさい・・・・優子・・・・さん・・・・。  
・・・・優子さんに・・・・こんな事するなんて・・・・あ、あたし・・・・本当に・・・・どうかしてる・・・・。  
――――あああ・・・・で、でも・・・・お願い・・・・どうか・・・・今は・・・・今だけは・・・・このまま・・・・」  
 
燃え盛る愛欲の炎を瞳に宿し、必死の形相で哀願の叫びを繰り返す陽子。  
落ち着かせるつもりが逆に火に油を注ぐ形となってしまい、困惑を隠しきれない優子だったが、  
だからと言って、今更、陽子を突き放す訳にもいかなかった。  
 
(・・・・い、一体・・・・どうすればいいの!?・・・・陽子を傷付けないためには、どうしたら・・・・!?)  
 
激しい動揺の中、それでも、優子は、麗子ではなく自分に向けられた叫びを心の中で反芻してみる。  
どう考えても、いま現在の陽子の心理は、一時的な狂躁状態に陥っているとしか思えない。  
それは、対処方法を誤れば、取り返しのつかない精神的外傷を与えかねない事を意味している  
・・・・かつて、自分が直面したような。  
 
――――そこに考えが及んだ時、優子の前に残された選択肢はただ一つしかあり得なかった。  
 
――――ごめんね、麗子・・・・。  
 
心の奥底で麗子に詫びつつ、今この瞬間だけ、陽子の求愛を受け入れる事を選択する優子。  
黄金の胸当てに覆われた胸の奥で、押し付けられた裸体のわななきに伝染したかのように、  
心臓の音がドクドクと激しい律動を刻み、体の隅々まで大量のアドレナリンを送り出す。  
鋭い刺激が背筋をゾクゾクと走り抜け、腰の奥まで染み通って愛液の湧出を促すと、  
まるで、じわじわと小出しに尿を漏らしているかのような感触が、ショーツの中に広がっていく。  
 
「・・・・ゆ、優子さ・・・・ううんっ・・・・優子・・・・そう呼んでもいいでしょ・・・・ねぇ、優子ッ!?」  
 
クシャクシャになった顔を優子の胸元に埋めながら、感情を爆発させる陽子。  
勢いに流されるまま、優子の身体は寝台の上へと崩れ落ちる。  
間髪入れず覆い被さった「レダの戦士」が、歓喜に湧き立つ五体を密着させてキスの雨を降らせると、  
「ヴァリスの戦士」もまた、甘い芳香を漂わせる唾液をたっぷりと含んだ唇の感触に、  
我知らず腰を浮かせてつつ、切迫した喘ぎ声を漏らし始めた。  
 
「・・・・ふあぁっ!!・・・・陽子・・・・そうよ・・・・「優子さん」・・・・なんて言うのはやめて・・・・!!  
・・・・はふぁあっ・・・・お願い・・・・陽子・・・・「優子」・・・・って呼んで・・・・んあっ!!ああああっ!!!!」  
 
 
――――――――TO BE CONTINUED  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!