――――――――アシャンティ。ガルバ城内。拷問牢。
六本腕の魔人、阿修羅による麗子への責めは倦む事無く続いていた。
狡知を極める性技の前に、疲労困憊した少女の肉体は満足な抵抗も出来ず、
オカマ口調でまくしたてる変態男の欲望の赴くままに、快楽と苦痛の中で悶えている。
メディアスとは異なり、阿修羅が麗子に与える「ヴェカンタ」の力は限定されており、
辛うじて意識を維持するのが精一杯で、本格的に気力・体力を回復させる事は不可能だった。
勿論、ヴェカンタの力に依存し続ける危険性を考えれば、
メディアスの闘技場にいるよりはマシな状況と言えない事も無い。
だが、一方で、それは、阿修羅の責めに敏感に反応して、淫らな感情を催し続けている責任を、
ヴェカンタの催淫作用に帰さしめる訳にはいかないという事でもある。
汗ばんだ乳房を揉み回されて悩ましげな吐息を漏らし、勃起した乳首を舐めしゃぶられて悲鳴を上げるのも、
剥き上げられた陰核を散々に弄り回された挙句、決壊した尿道口から噴水のように潮を噴き上げるのも、
狭い膣道の中を丹念にまさぐられて快楽の中枢を探り当てられ、気の狂うような快感の中で絶頂に達するのも、全てヴェカンタの作用ではなく、自分自身の脆弱さによるものと認識せざるを得ない。
その事実は、時間の経過と共に、麗子の心を着実に蝕んでいき、
たとえ身体は汚されようとも魂までは失うまいとする最後の抗いすら無力なものに変えていく・・・・。
「・・・・ふぁうっ・・・・ぁあぁっ!!くはっ・・・・ううっ・・・・んぐ・・・・はぁうぅんっ・・・・!!」
汗でべとべとになった赤いショートヘアを打ち揺らしながら、激しくかぶりを振る麗子。
深くよじれた眉間の皺をつたって、額から滲み出る脂汗の滴がひっきりなしに流れ下っていく。
ようやく拷問台から解放されたのも束の間、少女の疲れ切った体は、今度は頭上高く万歳をするような格好で、
天井から伸びた枷付きの鎖に繋ぎ止められ、辛うじて床に爪先が着く高さに吊り下げられていた。
「・・・・あああっ・・・・や・・・・やめて・・・・んん・・・・やめてぇ・・・・っ・・・・!!
・・・・ぅくっ・・・・ううう・・・・やっ・・・・ふはぁっ・・・・むふぁああんっ・・・・!!」
阿修羅の青白い手指が、剥ぎ取られた胸当ての下から現れた、
両手の中に丁度収まるぐらいの大きさの胸のふくらみを、やわやわと揉みしだく。
白く輝く汗に覆われた乳房の頂きで、ツンツンと先端を尖らせている乳首にはわざと触れず、
時折、薄いピンク色をした乳輪の周りを、爪の先でくすぐったり軽く引っ掻いたりして焦らし続ける。
糸を引く半透明な粘液にたっぷりと濡れそぼっていた花弁の方も、
指技を小出しにしながら、充血して厚みを増した秘裂の粘膜をもてあそぶ他は、
せいぜい小陰唇に触れるか触れないかという辺りを、ちゅくっ、ちゅくっ、と浅く弄り回すに留めていた。
「・・・・ハァハァ・・・・んっ・・・・ううっ・・・・!!・・・・ひっ・・・・いひぃっ・・・・ぐっ・・・・ひぃあぁあっ・・・・!!」
歯を食いしばって快感に抵抗しようとするものの、阿修羅の指で絶頂に上り詰めさせられる以前と比べて、
肉の悦びを刻み込まれた後の心と体には、気の抜けたような緩慢な愛撫では到底不足だった。
引き攣った両頬の筋肉がプルプルと痙攣するのをどうしても止める事が出来ない。
わずかに残った理性のカケラが必死に警報を打ち鳴らすのも空しく、
だらしなく開いた口元からは、たっぷりと湿り気を含んだ生温かい吐息が漏れ、
とろとろに蕩けた双眸は涙滴を一杯に浮かべて、全身の疼きに悶え続けていた。
「ウフフ、なかなか良いカオをするようになってきたじゃないか、お嬢ちゃん。
隠そうたってムダだよ・・・・だって、身体中、もうこんなに火照って熱くなってるんだからねぇ。
フフッ、でも、いいのかなぁ?正義の味方の「ヴァリスの戦士」が、悪の誘惑なんか屈しちゃって・・・・?」
スレンダーな肢体を背後から抱きかかえるようにして、耳元で嘲弄の言葉を囁くオカマ男。
「ヴァリスの戦士」という単語に、ピクン、と反応した麗子は、
次の瞬間、その言葉の響きと自分の置かれた惨めな現状との落差に愕然となって、激しく表情を歪ませる。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべつつ、阿修羅は、さらに鋭く言葉の鞭を振り上げた。
「フフフ、どう、図星でしょう?もう欲しくて欲しくて堪らないんでしょう?
アンタのココ、こんなにいやらしくベトベトになってひくついてるわよ?
クックックッ・・・・口ではどんなに強がっていても、やっぱりカラダは正直なものよねぇ」
真っ赤に充血してひくついている耳たぶに舌を這わせながら、執拗に言葉責めを続ける阿修羅。
同時に、そそり立った肉棒を、スカート越しに尻の谷間に押し付け、キュッキュッと上下に動かしてみせる。
反射的に、鎖をガチャガチャと鳴らしつつ、懸命に身体をよじった麗子だが、
なけなしの体力を無駄に消費しただけで、オカマ男の六本の腕からは逃れられよう筈も無い。
「あらあら、往生際が悪いコト。おとなしく観念したらどうなの?
大丈夫よ、痛くはしないから・・・・大事な大事なお人形さんなんだから、優しく優しくしてあげるわ。
ウフフフ、・・・・そう、特に、この辺りを念入りにねぇ・・・・」
ねっとりとした声音で囁きかけた阿修羅の目がすっと細くなり、
柔肌に隠された性感のツボを、煽り立て、焦らし抜いていた指の動きが、より一層滑らかさを増した。
既にじっとりと蒸れ上がっている尻丘に擦り付けている勃起も、いよいよ硬さを増していく。
節くれ立った指が、少女の下半身を覆う黒いスカートへと伸びると、
絹を引き裂くような叫び声に続いて、悩ましい煩悶の喘ぎが牢の石壁に響き渡った。
「・・・・あっ!?はひぃっ・・・・ううう・・・・そ、そこは・・・・ふぐぁっ・・・・ああああっ・・・・!!」
拘束された身体に許された限界ギリギリまで首をねじり、
おぞましさと怯えとを一杯に湛えた目で、背後でほくそ笑む変態男の顔を振り返る麗子。
ニヤニヤといやらしく笑いながら、その視線を受け止めた阿修羅は、
既にショーツを剥ぎ取られて無防備な姿を晒していた丸尻を、つるり、と撫で上げてみせた。
「ひあぁっ・・・・!!くひぃっ・・・・あああっ・・・・だ、だめぇぇっ・・・・!!
・・・・あうう・・・・お、おねがい・・・・そこ・・・・触っちゃ・・・・はひっ・・・・ひいいいっ!!」
節くれだった青白い指に触れられ、麗子の表情が凍りつく。
白桃色の柔肉が、ひきつけでも起こしたかのように、ギクギクッ、と痙攣し、
粟立ちが、ザワザワザワッ、と瞬く間に背中全体を覆いつくす。
敏感すぎる反応に、ホホ〜〜ッ、と感嘆の声を漏らした阿修羅は、
興味深げに鳥肌立った背筋を眺めつつ、もう一度、今度は尻丘の間を走る谷間に沿って指を滑らせた。
「うあああっ!?いっ・・・・ぎひぃっ・・・・いあっ・・・・ひぃぁあああっ!!!!」
ほとばしる悲鳴に、股間と欲情とを膨らませて舌なめずりする阿修羅。
目の前では、尻たぶから発した嫌悪感の大波が、
背中は言うに及ばず、頭頂部から爪先まで五体の内をくまなく駆け巡り、粟立ちと悪寒をぶち撒けていた。
「ウフフッ・・・・ココが弱点だと分かってはいたけど、まさか、これ程とはねぇ。
ちょっと触れただけでこんなになっちゃうなんて、クククッ、よっぽどココがお気に入りのようねぇ」
変態男の嘲弄ももはや耳には届かず、麗子は、鎖に繋がれた上半身を激しくよじらせつつ、
まるで真冬の戸外に素っ裸で放り出されたかのように、全身をガクガクと震え慄かせる。
ならばこうだ、とばかりに、阿修羅は、いやらしい音を立てながら、少女の秘裂から蜜をすくい取ると、
その指を口腔にねじ込んで、中の唾液と混ぜ合わせながら、柔らかい粘膜に擦り付ける。
口の中に広がる、自らの肉体から溢れ出した体液の淫らな味と臭いとに、
麗子は、溜まった涎でむせ返りつつ、ヒィヒィとよがりながら嗚咽を漏らした。
「ふぁぁっ・・・・はぐぅっ・・・・も、もうダメぇっ・・・・!!
・・・・んぁあっ・・・・いやっ・・・・こんな・・・・こんなの・・・・も・・・・もう・・・・ふあぁあんっ!!」
荒い吐息と共に、ピンと反り返ったしなやかな身体がビチビチと跳ね回り、
乙女の割れ目はドロドロに煮え立って、卑猥に這い回る指に熱い蜜を浴びせかける。
未だ最も敏感な場所が本格的に触れられている訳ではないにも関わらず、
淫らな音を立てて蠢く30本の指先は、戦士の精神をボロボロに切り裂き、少女の心をグズグズに溶かしていく。
いつしか麗子は、涙と涎と粘液とでネチョネチョになった口元を大きく開け放つと、
ふやけきった瞳を潤ませながら、阿修羅の指から滴る自らの恥蜜に激しく舌を絡めていた。
「ひゃはぁっ・・・・き、気持ち良いっ・・・・良すぎるぅぅっ!!
・・・・ひぁあううっ・・・・だ、だめぇぇっ・・・・感じるっ・・・・あぁっ・・・・うひゃあぁぁぁっ!!!!」
六本の手と三十本の指から奏でられる徹底的な羞恥責めに翻弄され、
こみ上げてくる嬌声を止める事が出来ない麗子。
首を左右に振ってなんとか淫らな感覚を打ち消そうと、いや、認めまいと足掻いても、
もはやめくるめく快感に支配された肉体は、理性の指示など聞き入れる素振りすら見せない。
心の堤防が脆くも崩れていく様を呆然と見つめるしかない無力な少女の頬を幾筋もの涙が伝っていく。
そして・・・・。
「・・・・フィニッシュは、やっぱりお尻の穴がいいかしら?それとも、一番のお楽しみは次にとっておく・・・・?
フフフ、今回は特別に選ばせてあげるから、どっちがいいのか、さっさとお返事しなさい」
満面に嘲笑の笑みを浮かべつつ、卑猥な質問を発する阿修羅。
同時に、人指し指を一本、尻の谷間ですぼまっている排泄器官の上へと伸ばし、
麗子の最大のウィークポイントの入り口を指の腹でやんわりと押し広げる。
瞬く間に、菊座から発した刺激が電流となって脊髄を駆け上がり、脳天を直撃した。
「ひはあぁっ!?がっ・・・・はがぁっ・・・・!!
・・・・んぁっ・・・・だ、だめっ・・・・いひっ・・・・そこ・・・・拡げないで・・・・あひぃぃぃっ!!」
両目を見開き、頬を引き攣らせ、口元から熱い吐息と涎の糸を垂れ流しながら、
麗子は、喉の奥からあられもない嬌声を絞り出し、全身をガクガクと打ち揺らす。
指先でほんの少し触れられただけでも、今すぐに達してしまいそうなくらいの快感が湧き上がり、
憎んで余りある敵の手で好き放題に弄ばれているにも関わらず、酩酊したような陶酔感が五感を浸していく。
その様子にますます欲情を増大させた変態男は、二つの手で尻たぶに掴みかかると、
力任せに、ぐいっ、と大きく割り開き、充血してピンク色に染まった肛門に血走った視線を走らせた。
「オーホホホホッッッ!!やっぱり、もう我慢出来ないようねぇ!!
いいわ、お望みどおり、お尻の穴でイカせてあげる!!・・・・そぅら、いくわよぉっ!!」
阿修羅の股間でいきり勃つ、太く長い肉棒が、ビュクンビュクンと逞しく脈動し、
先端部分に透明な先走り液をうっすらと滲ませながら少女の白い躰に近付いていく。
素股の要領で、じゅくじゅくとだらしなく愛液を溢れさせている秘裂に押し当て、
濃厚な匂いを漂わせる恥蜜を、潤滑剤代わりに表面にたっぷりとまといつかせると、
本番前の試し斬りという訳か、汗の粒で白く輝く尻丘の曲線に沿って、ゆっくりと上下に擦り上げてみる。
「・・・・ふぁ・・・・あぁ・・・・やめて・・・・もう・・・・もう・・・・やめてぇ・・・・ううう・・・・」
押し付けられた肉凶器の感触に、怯えきった声を漏らす麗子。
快感に蕩けかけている尻穴に恐るべき侵略者が押し入ってくる事を想像するだけで、
みぞおちから冷たい汗が噴き出し、恐怖と、絶望と、そして、密やかな期待感とで頭の芯が痺れていく。
それは、鋭い角度で反り返り、脈動し続ける肉の槍が、
必死の懇願を無視して、ヒクヒクと淫靡にひくついている肛門を蹂躙すべく侵攻を開始した事で頂点に達した。
「・・・・ひぎぃいいいっ・・・・いや・・・・いやぁあああっ・・・・!!
やめてぇ・・・・来ないでぇっ・・・・!!あああ・・・・いやぁっ・・・・あががぁっ・・・・いひゃあァァッ!!!!」
熱く滾る野太い一物が、芳しい匂いに包まれた排泄器官にあてがわれる。
一気に突き入れるのではなく、すぼまりの周りの括約筋を解きほぐすかのように肉棒でなぞりあげると、
快感に耐えきれなくなった秘裂がパックリと口を開いて、内側に溜まっていた蜜を盛大にぶち撒けた。
充血した割れ目の上では、小さな肉の宝石が自然に反転した包皮の中から身を乗り出し、
のた打ち回る双乳の頂上でも、ツンツンに尖った乳首が、今にも破裂しそうなくらいに疼いている。
「ふぁああっ!!はひっ・・・・いっ・・・・いひぃいいっ・・・・!!
・・・・も、もう、だめぇっ!!・・・・もう・・・・が・・・・我慢・・・・出来ない・・・・でぇぎぃなぁひいいっっっ!!!!」
押し寄せる快楽に、涙を流してかぶりを振る麗子。
阿修羅の6本の腕と30本の指が、乳房や秘裂は勿論の事、
うなじも、耳たぶも、口蓋も、首筋も、鎖骨の窪みも、腋の下も、手指の股も、臍穴も、脇腹も、太股も、
全身の性感帯を、くまなく探り当て、まさぐり、煽り立てながら弄び続ける。
だが、阿修羅は、肝心の尻穴だけは、何度も何度も執拗に周りをなぞりあげるだけで、突入の断を下さない。
括約筋の守りがグジュグジュに崩れ、直腸内から漏れ出した腸液がえも言われぬ芳香を漂わせるに至っても、
まだ何か足らない、とでも言いたげに、徹底的に焦らし抜く姿勢を変えようとはしなかった。
・・・・目の前の獲物に残されたプライドの、最後のひとかけらまで完全に打ち砕くために。
「あああ・・・・あが・・・・うあ・・・・ああ・・・・ひぐああ・・・・んあ・・・・ひああ・・・・ああああ・・・・」
敏感な耳に小指の先を突っ込み、ぐにゅぐにゅと穿り回しながら性感を昂ぶらせる。
執拗なくすぐり攻撃を受け続けていたアーモンド形の臍穴から、ゾクゾク感が溢れ出す。
まろびでた乳房を醜く歪ませつつ揉み上げながら、コリコリにしこった乳首を、クニュッと押し潰す。
節くれだった指が卑猥な音を立てて陰唇粘膜を割り広げ、
爪の先で肉芽の包皮を器用に剥がしながら、綺麗なピンク色をした真珠玉を弄ぶ。
ぐちゅぐちゅになった秘裂から、まるで麗子の理性と誇りが熔けだしたように溢れ返る熱い蜜をすくい取り、
呆けたようにブツブツと意味不明な呟きを繰り返している口元へとなすりつける。
「・・・・あ・・・・あが・・・・んっ・・・・はぁっ・・・・ううう・・・・あ・・・・ふはぁっ・・・・。
・・・・ん・・・・んんんっ・・・・ぐっ・・・・うぐ・・・・くうっ・・・・ふあ・・・・あぁん・・・・」
絶頂に達する手前でお預けを喰らい、激しく疼く媚肉に責め苛まれ続ける麗子。
だらしなく歪んだ唇の間から舌先を突き出し、涎を滝のように垂れ流しながら、
ヒィヒィと喘ぐその表情は、まさしくさかりのついた牝犬のそれに他ならない。
待ちきれなくなった美尻が、ぐぐっ、と後ろに突き出され、
淫らな欲情に突き動かされるまま、クイッ、クイッ、とあさましく求愛のダンスを踊った。
グジュグジュに崩れたすぼまりの隙間から、芳しい腸液の匂いが漂い始める。
「・・・・ああっ・・・・熱い・・・・お尻・・・・お尻の穴・・・・もう・・・・だめぇ・・・・!!
あああっ・・・・熱くて・・・・もう・・・・我慢、出来ない・・・・お尻の穴・・・・・とろけそうぅぅっ!!」
涙で曇った視界は、薄ぼんやりとした乳白色の靄に覆われて何一つ映らず、
漏れ出す吐息には、快楽への期待とそれを与えられない事への苛立ちが如実に現われている。
とうの昔に絶頂に達していてもおかしくないだけの快感に包まれる中、
麗子は、しかし、自らの欲望が本当の意味での満足を得るためには、
阿修羅のおぞましい肉棒によって不浄な排泄器官を犯されるしかない事を本能的に確信していた。
「・・・・も・・・・もう・・・・だめぇっ・・・・!・・・・これ以上は・・・・もう・・・・うぁあああっ・・・・!!
・・・・ああ・・・・お願い・・・・早く・・・・お尻の穴・・・・ふああっ・・・・入れて・・・・お願い・・・・犯してぇェェッ!!!!」
気も狂わんばかりの激烈な疼きに、恥も外聞も無く、あさましい哀願の言葉を喚き散らしながら、
麗子は突き出した尻肉をビュクンビュクンと踊らせて、硬く勃起した肉槍に擦り付ける。
頃合いは良し、と判断した阿修羅は、邪悪な笑みを浮かべ、小刻みに震え慄く耳元に口を寄せると、
低い声で、一言、「なら、ちゃんと口に出して言ってごらん」と囁きかけた。
同時に、びっしりと汗の粒に覆われた白い尻肉に擦り付けていた下半身をゆっくりと動かし、
逞しい肉の凶器で尻穴の周囲を円を描くようになぞり上げて、完全屈服への決断を強く促す。
「さぁ、言ってごらん。
『阿修羅様のモノが欲しいです。私の中に突き入れてグチヤグチャに掻き回してください』って。
ちゃんと言えたら、ご褒美をあげる・・・・ウフフッ、そうよ、最後までイカせてあげるわ」
うう、と、か細い呻き声を発しつつ、最後の自制心を振り絞り、首を横に振ろうとする麗子。
だが、芯までトロトロに蕩けきった肉体は、もはや頑としてそれに応じようとはしなかった。
もはや清楚で勇敢な「戦士」の姿も、凛々しく可憐な「乙女」の面影もそこには無い。
やがて、うなだれたように頭を垂れ、足元の石床に力尽きた視線を這わせた麗子は、
もそもそと唇を動かして、阿修羅の要求した通りに屈服の言葉を漏らし始めた。
「・・・・あ・・・・あ・・・・阿修羅・・・・さま・・・・の・・・・モノが・・・・んんっ・・・・ほしい・・・・です・・・・っ・・・・!
わ・・・・わたしの・・・・中に・・・・うくっ・・・・突き入れて・・・・んあぁっ・・・・グ・・・・グチャグチャに・・・・・!!
・・・・くふぁっ・・・・掻き回して・・・・ふぁうっ・・・・くだ・・・・さぁ・・・・い・・・・ひっくううう・・・・!!」
言い終えた途端、プツン、と糸が切れたかのように全身の力が抜け、目の前がス〜〜ッと暗くなる。
だが、嘲笑を浮かべた阿修羅の手が、麗子の体を容赦なく責め嬲ると、
無明の闇に向かって落ち込もうとしていた意識も、すんでの所で引き戻されてしまう。
力尽き矢折れて抵抗の意志すら喪失した麗子は、もはや失神すら許されず、
間もなく降りかかる筈の、想像を絶する苦痛と快楽に思いを馳せながら、全身を震わせる事しか出来なかった・・・・。
――――――――ガルバ城内。ゼルの居室。
「そうか、とうとう来たのか!間違いなく、奴なのだな!?」
待ちに待った報告を携えて現れた側近の宦官の前で、高揚感に包まれる独裁者。
常日頃は滅多に内に秘めた感情を表に出そうとはしないゼルだったが、今日だけは違っていた。
美しく整った怜悧な面貌に歓喜を露わにし、押さえ切れぬ昂ぶりに身を任せる。
豪奢な白絹の装束が大きく波打つたび、色とりどりの宝石が燦然と輝きを発して、
アシャンティを支配する青年の、時ならぬはしゃぎようを強調してみせた。
「100パーセント、いや、200パーセント、間違いござりませぬですじゃ。
・・・・まずは論より証拠、これをご覧じませ。総統閣下。
次元の狭間を抜けてこの世界に跳躍して来る際に生じる空間の歪みをパターン化したものでございまするが、
こちらが、前回、彼奴らが侵入した折の波形、そして、こっちが、つい今しがた現れたものにござりまする・・・・」
恭しく説明するダリスの声も、心なしか弾んでいるように感じられる。
主君の前に記録を差し出す手も興奮に震え、喜びに湧き立つ内心を如実に物語っていた。
何枚かの紙片に、素早く目を走らせたゼルが、大きくうなずきつつ、いよいよだな、と独りごちると、
ハハッ、と意気込んで応じた腹心の部下のカエルのように飛び出した大きな眼も、異様な熱気を帯びる。
多元宇宙に存在する無数の世界は、本来、各々が閉じられた空間であり、
これらを行き来する事は、不可能ではないにせよ、非常に大きな困難を伴っている。
一つ一つの世界は、その森羅万象を生み出し、律している根源的な法則からして異なっており、
別の世界の者が迷い込んだとしても、たちどころにその存在を消去されるか、
あるいは、入り込んだ世界の法則に従って再構成されるかのどちらかである場合が普通だった。
勿論、僅かではあるが例外も存在している。
たとえば、このアシャンティと陽子の住む世界――――アシャンティ人の言う「異世界ノア」、のように、
ごくごく限定されたものであるにせよ、二つの世界に何らかの相関関係が存在しているケースも無い事はない。
だが、それはあくまで特殊な例であって、多くの世界には、それ以外の世界との交わりは存在しない。
たとえば、陽子の住む世界と優子の住む世界とは、一見、非常に良く似通っているように感じられるが、
その本質において、全く別の世界であり、直接行き来する手段も皆無である。
ただ一つ、否、二つだけ、多元宇宙に存在する全ての世界とつながりを有している時空間、
それが、夢幻界ヴァニティであり、暗黒界ヴェカンティだった。
ゆえに、この二つの世界で起こった出来事は、全ての世界に対して大なり小なり影響を与える力を持つ。
ヴァニティの勢力がヴェカンティのそれに比して強大なものとなれば、世界は収束と安定へと向かい、
逆にヴェカンティの力がヴァニティを凌駕すれば、分裂と混沌とを志向するようになる。
これこそが、遥かなるの太古の昔、多元宇宙の始原の時より現在に至り、そして、終局に至るまで続く、
数多の世界の誕生と終焉、繁栄と衰亡とを規律する、絶対不変の真理だった。
現時点では、ヴァニティとヴェカンティの勢力はほぼ拮抗している。
暗黒王ログレス亡き後、残忍王メガスによって幻想王女ヴァリアが不帰の人となった事を受け、
ヴァニティの支配者となったヴァルナは、偉大なる先代に比べて、あらゆる面で未熟さが目立ち、
一方のヴェカンティも、メガスが「ヴァリスの戦士」優子の手にかかり、壮絶な最期を遂げた後、
次代の支配者の座を巡る有力諸侯同士の衝突が繰り返される、血で血を洗う抗争の只中にあった。
全体としては、ヴァニティの側が若干有利な状況ではあったが、
ヴェカンティに、ログレスやメガスに比肩するような強力な指導者が出現し、
諸侯を切り従えて、全ての権力を手中に収めたならば、ヴァルナでは到底対抗できないだろう。
その可能性のある人物の筆頭格が、残忍王の懐刀であったダリスを軍師に迎え入れた事で、
恐ろしく不安定ながら強大無比な暗黒界の諸力「ヴェカンタ」を、かなりの水準まで制御する術を入手した、
ここアシャンティの支配者・総統ゼルに他ならない。
元々、緩やかな衰亡の道を辿りつつあった自らの世界に見切りをつけ、
「異世界ノア」への侵攻に活路を見出そうとしていたゼルにしてみれば、それこそ、渡りに舟だった。
ダリスも、メガスの治世の下、気まぐれで危険な主人の下で生き長らえるために行った数々の所業によって、
ヴェカンティ内に多くの敵を作っており、再び故郷の土を踏むためには、
ゼルのような外来の者を、支配者として迎え入れさせる以外の方法は存在しないと言っても過言ではない。
利害の一致が、自己陶酔癖のある青年独裁者と、陰険姑息な宦官とを結び付け、
その後の、ヴァニティの「戦士」達との戦いと敗北、再起の日々が、その関係をより一層強固なものとしていた。
・・・・そして、今、二人の前では、憎んでも余りある宿敵に対する雪辱という、
何物にも代え難い程重要で、甘美な響きを帯びる大事業が、現実となる瞬間を迎えようとしているのである。
「すでに迎撃の準備は整ってござります。
彼奴等の動きは全て我らの監視下、総統閣下のご下命あり次第、
阿修羅とメディアスに命じて二人を捕らえ、御前に引き据える事が可能にござりまする」
揉み手をしながら、主人の命令を待つ宦官ダリス。
細い顎に手をやり、形ばかり思案に耽るポーズを示したゼルは、
しかし、こみ上げて来る熱い感情に衝き動かされて、形式ばった行為には早々に見切りをつけた。
「よかろう、出撃だ。必ず生かしたままで、ここに連れて来い。良いな、決して殺してはならん。
牢の中の戦士・・・・レーコと言ったか、あれと一緒に並べて、じっくりと嬲り抜いてやる。・・・・行けッ!」
その言葉が余程嬉しかったのか、ははっ、と一声発しただけで、
辞去の礼も忘れてその場を退出する側近の姿を、別に見咎める風でもなく見送りながら、
浮遊城の主は、水晶を彫り込んだかような美しい双眸に妖艶な微笑みを浮かべ、想像力を湧き立たせる。
自由を奪われ、囚われの身となった三人の少女が、無残な、しかし、この上なく美しいその姿を自分の前に晒し、
屈辱と無力感に喘ぎながら、押さえ切れぬ快楽の虜となって堕ちていく、その光景を・・・・。
――――――――アシャンティ。ガルバ城に程近い森林地帯。
木漏れ日の降り注ぐ中、疲れた体を休める二人の少女。
次元の狭間を渡っての移動は、夢幻界最強の「ヴァリスの戦士」たる優子にとっても決して楽なものではない。
まして、「レダの戦士」である陽子の消耗は激しく、傍目にも休息を必要としているのは明らかだった。
「・・・・ねぇ、優子。優子が暮らしてる世界・・・・リアリティ、っていったっけ・・・・どんな所なの?
あたしが住んでるトコロとそんなに変わらない世界みたいだけど、学校とかお店とか全く同じなの?」
病室での一件以来、優子、と名前だけで呼ぶようになった陽子が、
興味津々な表情で発した質問に、少し考え込むような顔になる優子。
ここ数日、ずっと親密さを増した二人の間では、以前よりもずっと気さくに話をする機会も増え、
興味の対象も、ヴァニティやヴェカンティの事、すなわち、「戦士」としての立場に関係する話題から、
生まれ育った世界は違えど、同年代の少女としての、
友達や家族、勉強や遊びなど、お互いの日常についての話へと移りつつあった。
「・・・・そうね。多分、陽子の世界にある学校やお店と、ほとんど変わらないと思うわ。
地球という惑星の上に、日本という国があって、東京という大きな街があって・・・・。
学校の名前とか、一人一人の街の人たちは違っているかもしれないけど、
学校の教科書に載っている事や、お店に並んでいる品物の形や機能は、きっと一緒じゃないかしら?」
柔らかい下草の上に腰を下ろし、ポプラに良く似た背の高い樹木の根元に背中を預けた優子と陽子。
ヴァニティから陽子が持ってきた、甘いお菓子と紅茶に似た香りの飲み物を口にするその姿は、
身に帯びた、黄金の「ヴァリス・スーツ」とラピス・ブルーの「レダの鎧」を除けば、
何処から見ても普通の女子高生のそれにしか見えないだろう。
「ふ〜〜ん。・・・・何だか、ちょっとつまんないわね。
別世界っていうと、魔法とか使えたり、ロボットや怪獣が町を襲ってきたりする世界が頭に浮かぶんだけど」
能天気な口調で、ひどく物騒な感想を口にする陽子に、クスクスと笑いながら、
「それじゃあ、こっちにいるのと変わらないじゃない」と返す優子。
陽子は、まるで悪戯がばれた小児のような表情を浮かべ、ペロッと舌を出した。
完全に元気を回復したポニーテールの少女は、思春期の少女らしく時々ナイーブな一面も覗かせるものの、
基本的には、明るく快活な、思った事をそのまま口に出す積極的な性格を取り戻したように見える。
「・・・・じゃあ、優子、「スケバンGメン」ってテレビ番組、そっちでも放送してる?
あたしの住んでる所だと、最初、佐藤由貴ってアイドルを主役にして人気が出たんで、
今は北野陽子ってコが二代目になって続編やってるんだ。今度、映画にもなるんだって・・・・」
本来ならば、次元間の移動によって体力を消耗した身体を休めるための休憩時間だった筈だが、
いつの間にか、年頃の女の子同士の取り留めのないおしゃべりタイムと化している。
一度、優子が遠慮がちに注意を喚起したものの、結局うやむやになってしまい、
その後は優子もついつい会話に引き込まれて、結局、既に小一時間ばかりも話し込む羽目になっていた。
「・・・・え〜と、「スケバンGメン」じゃなくて「スケバン探偵」って名前の番組ならあるわよ。
斉藤由紀子ってアイドルが主役で、続編の方は・・・・たしか、吉沢春絵って人だったと思うわ」
優子と話す時は、大抵、陽子の方から話題を切り出した後、
優子が返した答えに対して陽子が感想を述べ、さらに質問や次の話題を提示するというパターンが多い。
麗子と違って、やや直情的で、隠し事や遠まわしな言い方が苦手なせいだろう、
陽子の言葉は、時に乱暴な方向に向かう事もあるものの、いつも歯切れがよく誠実な響きに満ちていた。
話に夢中になるあまり、時間の経つのを忘れてしまいがちなのが欠点といえば欠点なのだが、
優子もまた、溌剌とした陽子の話しぶりが微笑ましく、ついつい水を差すのを躊躇ってしまう事が多かった。
「・・・・あ〜〜っ、もう太陽がこんなに傾いてる。ごめんなさい、すっかり話し込んじゃった・・・・」
陽子がようやく話を切り上げたのは、辺りがオレンジ色に染まり始めた頃だった。
さすがにばつの悪そうな表情で軽く頭を下げる「レダの戦士」に、
「お互いさまね」と答えた優子は、少し横になって休むように促した。
ありがたく好意に甘えさせて貰う事にした陽子は、
片膝を抱きかかえた格好で、上半身を大木の幹に預けると、すぐに眠りに落ちていく。
(本当に可愛らしい寝顔ね。・・・・一体、どんな夢を見てるのかしら)
スースーと健康的な寝息を立てる陽子を見守りながら、穏やかな微笑を浮かべる優子。
少しあどけなさの残る寝顔は幸せそうな表情に包まれ、
時折、形の良い桜色の唇から、ムニャムニャと幼児のように寝言を漏らしている。
夕暮れ時の静けさの中、安らぎに満ちたその表情を眺めるうちに優子の緊張も解きほぐれて、
いつしか、ウトウトと浅いまどろみの中へと引き込まれていった・・・。
(・・・・ん・・・・っ・・・・?)
何かが頬に触れたような気がして、目を覚まし、きょろきょろと周囲を見回す陽子。
既に太陽は沈み、雲間から覗く三日月が、暗い森の中におぼろげな青白い光を投げかけていた。
まだ眠気の残る頭を、二、三度、軽く振りながら、五感を働かせると、
優子の姿はなく、やや離れた潅木の繁みの中で、ガサゴソと何かが蠢く物音が聞こえてくる。
「・・・・優子、どこにいるの・・・・ふぁっ!?」
不吉な予感がして、パートナーの名を呼びつつ、急いで立ち上がろうとした陽子は、
次の瞬間、何かに躓いてバランスを崩し、派手な音を立てて転倒した。
暗くてよく分からないが、何か太いツタのようなものが足元の地面で蠢いている。
一瞬、陽子の脳裏に、沼の中の遺跡での記憶がフラッシュバックし、
恐怖と生理的嫌悪感とが、体の中に残っていた睡魔の残滓を叩き出す。
凍りつくような悲鳴を上げた陽子は、無我夢中で「レダの剣」を掻き寄せると、
実体化した剣を無茶苦茶に振り回して、周囲の地面を徹底的に薙ぎ払った。
「・・・・優子っ、優子ぉ!!何処にいるの、返事をしてっ!!」
強い焦燥に駆られて、声を上擦らせながら、前方の繁みに向かって走り出す陽子。
「レダの剣」の刀身から発せられる白い輝きを頼りに優子の姿を探し回る。
胸の奥に広がる恐ろしい予感に、心臓は激しく動悸を刻み、喉はからからに干上がって、
直線にしてわずか十数歩の距離が、果てしなく続く長く険しい隘路のように感じられた。
「・・・・優子、お願い・・・・返事を・・・・返事をしてっ!!・・・・優子ォっ!!」
ようやくの思いで問題の場所に辿り着くと、無我夢中で茂みを掻き分け、優子の姿を捜し求める陽子。
案の定、潅木の根元には、以前沼地で目にした植物のそれと酷似した不気味な触手が、
何とも言えない甘ったるい匂いのする樹液を分泌しながら、グニョグニョと蠢いていた。
こみ上げてくる嘔吐感をこらえながら、なおも繁みの奥へと踏み込んでいく少女の耳朶に、
多数の触手が絡み合う、ビチュッビチュッビチュッというぬめり気を帯びた音が容赦なく飛び込み、
樹木の枝に絡み付いた、粘汁まみれのブニョブニョした器官が、
まるで味見でもするかのように、うっすらと汗の滲んだ陽子の柔肌へと食指を伸ばしてくる。
「・・・・ゆ・・・・優・・・・子っ・・・・!!あああ・・・・こんな・・・・こんな事って!!」
――――――――やはり、不吉な予感は的中していた。
目の前に現れた酸鼻な光景に言葉を失い、表情を凍りつかせる陽子。
「レダの剣」の発する光の円の中に照らし出された優子の身体は、グロテスクな触手に覆い尽くされていた。
腕よりも太い、体表にニシキヘビを思わせる不気味な斑紋のある触手が、両手両足に巻き付いて動きを封じ、
それより細い、ウナギのようなヌメリに覆われた触手は、清らかな乙女の肌をむごたらしく穢すだけに留まらず、
あろう事か、「ヴァリスの鎧」の中にすら潜り込んで、ねちょねちょと卑猥な音を立てつつ這いずり回っている。
(・・・・うそ・・・・こんなの・・・・嘘よ・・・・)
本能的に触手からの逃げ場を求めようとしたのだろう、頭上高く限界まで突き上げられた所で、
追いかけてきた触手に捕えられ、幾重にも絡め取られてしまった両手がビクビクと痙攣を続け、
左右に大きく拡げられた二本の美脚も、赤黒い色の触手が蠢く度に敏感にひくついている。
愛らしい口元を割り広げて口腔内に侵入した何本もの触手に喉を犯され、呼吸困難に陥っているせいだろう、
顔色はもはや土気色に近く、意識は朦朧として、表情にも視線にもまるで生気が感じられない。
唇の端からは、不気味な粘液が混った唾液が、長く糸を引きながら垂れ落ち、
襟首に巻いた赤いスカーフの上に、汚らわしい染みを作っている。
「・・・・いやぁああぁっっっ!!!!」
森の中に響き渡る悲痛な声が、樹木の幹や枝に反響して、わぁんわぁん、と木霊する。
目の前の惨状に打ちのめされ、今にも泣き出しそうな表情で後じさる陽子。
力の失せた指の間からスルリと滑り落ちた「レダの剣」が、
地面に落ちると同時に、不可思議な光の粒子と化して実体を失い、円形の柄だけになってしまう。
パニックに陥った陽子は、その場に、ガクリと膝をつくと、腰砕けになってへたり込んでしまった。
(・・・・い・・・・いやぁ・・・・こんなの・・・・こんなの、見たくないっ・・・・。
・・・・優子が・・・・あたしの優子が・・・・あああ・・・・こんなの嘘よ・・・・嘘よ・・・・)
呆けたようにぼんやりとした眼差しを前方へと向ける陽子。
視線の先では、自由を奪われ意識すら混濁しかけた優子が、どろりと濁った目で宵闇の奥を見つめながら、
全身を這いずり回る触手の群れによって、美しい肢体を嬲られ続けている。
蛇のようにのたくるおぞましい触手は、黄金の鎧によって護られていない、
清潔な腋下にも、程よくくびれた脇腹にも、やや縦長の浅い臍穴にも、容赦なく喰らい付いているばかりか、
ふくよかな胸の谷間や、太腿の間の大切な所にさえ侵入し、身の毛もよだつような感触を送り続けていた。
(・・・・ああ・・・・こんな・・・・こんな事って・・・・。
・・・・お願い・・・・夢なら醒めて・・・・優子が・・・・こんな事になるなんて・・・・)
・・・・だが、陽子にとって最も衝撃的だったのは、優子の体が示した隠しようの無い悦楽の反応だった。
汗でベトベトに濡れた髪の毛が張り付いた両頬は、上気してピンク色に染まり上がり、
野太い触手を咥え込まされ、喉の奥まで汚辱され続けている口元には、ねっとりとした笑みが浮かんでいる。
触手の群れが蠢く太腿は、時折、ビクビクビクッ、と卑猥なリズムに乗って悶え狂い、
乙女の大切なところから流れ出した蜜液をベットリと付着させて、淫靡な光沢を放っていた。
(・・・・優子・・・・もしかして・・・・もしかして、本当に、気持ち良いの・・・・?
・・・・ダメ・・・・そんなモノを口の中で舐め回しちゃあ・・・・あああっ・・・・そんな蕩けた目をしないでぇ・・・・)
大きく開脚を強いられた両脚の付け根から漏れる、クチュッ、クチュッ、という淫靡な水音に、
我知らず頬を紅潮させながら、優子の一番恥ずかしい場所に魅入られたような視線を注ぐ陽子。
優子の身体が、ビュクッ、ビュクッ、と艶かしく打ち震えるたび、
灼熱感を伴った性衝動が、視神経を焼き、脳髄を貫き、頭蓋骨の内側に激しい火花を飛び散らせる。
鼻腔粘膜を冒す樹液の濃厚な薫香が、熱く湧き立った血液に乗って全身に運ばれていくと、
陽子の心は、火照った体を甘く蕩かしていく快感に悲鳴を上げ、戦慄すら覚えつつ、
同時に、抗い難い魔力によって、吸い込まれるように強く激しく惹きつけられていく・・・・。
(・・・・だ・・・・だめよ・・・・陽子っ・・・・しっかり・・・・しなくちゃ・・・・・。
・・・・こ、このままじゃ・・・・この前と同じ事に・・・・あたしのせいで・・・・今度は・・・・ゆ・・・・優子が・・・・)
クラクラするような甘ったるい感覚に包まれながらも、気力を振り絞り、抵抗を試みる陽子。
今にも昏倒してしまいそうなくらいの心地よさを、必死の思いで振り払うと、
必死の思いで、足元に落ちている「レダの剣」へと手を伸ばす。
眩い閃光と共に再び刀身を実体化させた愛剣が、手の中にいつもと変わらぬ感触を作り出すのを確認した陽子は、
心底からの安堵を覚えつつ、地面に突き立てた剣を杖代わりに、どうに再び立ち上がる事に成功した。
(・・・・待ってて・・・・優子・・・・今・・・・自由に・・・・してあげるから・・・・)
異変を察知した一部の触手が、威嚇するかのように身を起こし、
不気味な粘液にまみれたグロテスクな体をうねらせながら、シュルシュルと地面を這い進んで来る。
まだ足元のふらついてる状態ではあったが、かろうじてバランスを崩す事無く、「レダの剣」を構え直した陽子は、
その切っ先を、鎌首をもたげた毒蛇のような赤黒い触手の群れにではなく、その下の地面へと向けた。
(・・・・あいつらを、一本ずつ相手にしていたら、キリが無いわ・・・・
いずれ対応出来なくなって、動きを封じられてしまう・・・・まして、こんな状態じゃあ・・・・)
半ば無意識のうちに、前回の戦いの経緯を反芻しつつ、
陽子は、足首に絡み付こうとした触手を横にステップを踏んでかわし、
同時に、目測で、優子の体の下の土の中にある筈の触手生物の本体までの距離を計算する。
いくら触手を切り裂こうが本体には殆ど影響がないという事実を、苦い経験を通じて学んでいた陽子は、
剣先に集束させたエネルギーを、土の中に隠れた本体目がけて叩きつける事に、唯一の勝機を見出していた。
(・・・・大丈夫、この距離だったら、いける・・・・!
万が一、衝撃波が優子を巻き込んだとしても、「ヴァリスの鎧」が護ってくれる筈!)
「レダの剣」から放たれた閃光が、一直線に宵闇を切り裂いて、周囲を真昼のように煌々と照らし出す。
手足の自由を失った優子の脇をかすめるようにして、目標地点に着弾した白銀の飛礫は、
あやまたず、地面の中に隠れ潜んでいた触手生物の本体――――グロテスクな形をした巨大な地下茎を捉えた。
大音響と共に炸裂した白い清浄な光が、地面から飛び出したその醜い姿を覆い尽くした瞬間、
全ての触手が、狂ったように痙攣を発し、体表から色とりどりの樹液をほとばしらせる。
(・・・・ッ・・・・ングッ・・・・ハァハァ・・・・や、やっつけた・・・・の・・・・?)
息を切らせながら、暗闇の中に目を凝らす「レダの戦士」。
渾身の力を込めて振り下ろしたせいで、地面を深く抉った愛剣を引き抜くのに時間がかかり、
あたふたと狼狽した表情を見せたものの、どうやらとどめを刺す必要は無さそうだった。
陽子に向かって伸びてきたものも、優子の体に巻き付いていたものも分け隔てなく、
目の前の触手全てが、まるで最後の精を放出し終えた陰茎のように、次々に萎れて力尽きていく。
執拗なまでに優子の口腔を犯し続けていた、あの野太い触手さえもが、
ずるり、と口元から抜け落ちて、惨めに痩せ細った体を、優子の胸元に横たえる頃には、
もはや五体満足な触手は皆無となって、死臭を思わせる生臭い匂いがあたりに漂い始めていた。
「・・・・ゆ・・・・優子ッッッ!!!!」
湧き上がって来る安堵感と勝利の歓喜に足をもつれさせながら、愛する人の傍に駆け寄る陽子。
ヌルヌルとした樹液が全身を汚すのも気にかけず、優子の身体から触手の残骸を引き剥がすと、
むっとするような熱気と気色の悪い粘液に覆われたその胸を、力一杯抱き締める。
改めて間近で確認した優子の惨状は、遠目に見たときよりもずっと酷く、
つい数時間前まで、柔和な微笑を絶やさず陽子の長話に付き合っていた表情は、
見る影も無くやつれ果て、焦点の合わない瞳から発せられる虚ろな視線だけが空中を彷徨い歩いている。
一目見るなり、恐慌に駆られたポニーテールの少女は、半狂乱になって優子の身体にとりすがり、
自分が名を知る全ての神仏に向かって、優子を助けて、と祈り続けた。
「・・・・・・・・っ・・・・んっ・・・・よ・・・・・・・・陽・・・・子・・・・っ・・・・・・・・?」
必死の祈りが天に通じたのか、ダークブルーの瞳の中に僅かな輝きが戻り、
執拗に汚し尽くされた唇からも、容易には聞き取れない程たどたどしくはあったが、呟きが漏れる。
無我夢中で優子の顔を掻き寄せ、口元に耳を押し当てる陽子。
あまりにも小さくかすれかかった声だったため、最初のうちは何を言っているのか見当もつかなかったものの、
やがて判別できるようになったその言葉は、一瞬にして、陽子の心を湧き立たせた。
「・・・・泣かないで・・・・陽子・・・・わたしは・・・・大丈夫だから・・・・。
・・・・ちょっと・・・・疲れただけ・・・・ごめんなさい・・・・心配かけちゃって・・・・」
うっ、うっ、と声を詰まらせる陽子。
喜びのあまり、頭の中が真っ白になって、言葉が思い浮かばない。
こんな状態になってまで、まだ自分を気遣い、安心させようとする優子の優しさが身にしみるようで、
感極まった陽子は、優子の体にすがりつくと、大声を上げて泣きじゃくり始めた。
先刻までの激しい陵辱によって、疲労の極に達していた身体にとって、
その抱擁は、強すぎると言うより、むしろ、暴力的ですらあったのだが、
優子は、敢えて何も言わず、陽子の真っ直ぐな感情を、真正面からしっかりと受け止めた。
「優子っ、もう離さないっ!!もう二度と、あんな辛い想いはさせないっ!!
だから・・・・だから、お願いっ!!優子、ずっと・・・・ずっと、あたしと一緒に居てっ!!」
感情に身を任せて大声を上げ、抱き締めた優子の体をがくがくと揺さぶる陽子。
口元に穏やかな微笑を湛えたまま、優子はむずかる子供をあやすかのように、
汗ばんだ体を両腕で優しく包み込み、ゆっくりと撫で回す。
もっとも、陽子は、落ち着くどころか、いよいよ燃え盛る激情の虜となって、
もはや引き返す事が出来ない所にまで上り詰めてしまったのだが。
「・・・・優子!!好き・・・・好きなの、あああっ、優子・・・・あなたが好きっ!!
世界中の誰より・・・・そう、麗子よりも、ずっと、ずっと、あなたの方が好きっ!!
もう・・・・あたし、もう・・・・我慢、出来ないっ!!お願い、優子・・・・好きだと言ってっ!!ねぇ、お願いッ!!」
泣き腫らして真っ赤に充血した陽子の目元に、熱にうなされるような光が浮かび上がる。
激情に駆られてのものとはいえ、その表情も言葉も真剣そのものだった。
これまで長い時間をかけて心の中に堆積してきた優子への想いの一切合財が、
最後の一線を踏み越えて、何の誇張も修飾も無い、ストレートな告白の言葉となって溢れ出す。
・・・・その瞳から放たれる真摯な光に気圧されて、優子は、はじめて言葉を失った。
(・・・・そんな・・・・陽子・・・・急に・・・・どうしちゃったの・・・・?)
強い困惑を覚えつつ、だが同時に、優子は、体の奥が、じぃん、と熱せられていくのを感じていた。
食い入るように自分の瞳を捉えて離さない、陽子の剥きだしの眼差しに感情が激しく衝き動かされ、
気付けば、胸腔の中の心臓が、高く激しいビートを刻んでいる。
密着した陽子の手足が異様に熱く、緩み始めた汗腺から生温かい汗が滲み出す。
泣き腫らした陽子の目元でキラキラと輝く真珠の涙が、優子の動揺に一層拍車をかける。
(・・・・そもそも・・・・わたし・・・・陽子の事を、どう思ってるの・・・・?
「戦士」とか、仲間とかじゃなくて・・・・友達?恋人?それとも、それ以上の・・・・何か?)
陽子の求愛をかわす方法を考えていた筈の思考が、いつの間にか、自分の真意をはかる方向に向かっていた。
あるいは、それは、優子自身、心の何処かで、陽子の事を、
単なる友人や同志といった枠では括れない存在としてとらえていた面があったからだろうか?
麻痺しかかった思考の中、幾つもの言葉と記号が、浮かんでは消え、また浮かび上がる。
・・・・今の陽子が一種の狂躁状態に陥り、精神の平衡を欠いているのは分かり過ぎる程に分かっているのだが、
優子自身の中の何かが、それだけの理由で陽子の告白を退ける事を断固として拒んでいた。
――――――――どうしよう。分からない。一体どうすれば・・・・!?
千々に乱れ切った感情と思索の中、肉体の疼きだけが着実に存在感を増し、意識の大部分を支配下に収めていく。
多少は鎮まったとはいえ、無数の触手に責め嬲られ、催淫効果のある樹液を全身に塗りたくられて、
刺激に対して極めて敏感な状態に置かれていた優子の感覚は、
逡巡を繰り返すばかりの思考に比べて、ずっと決断が早く、そして、正直だった。
ほんのりとピンク色に染まっていた肌理の細かい色白の肌が、
甘く心地よい芳香を発散しながら、ゆっくりと上気の度合いを増していく。
(・・・・ああっ・・・・感じるっ・・・・感じるよ!!
優子の胸の鼓動・・・・肌のぬくもり・・・・凄い・・・・どんどん高まってるぅっ!!)
無論、触手植物の置き土産たる樹液の効果は、優子だけではなく陽子の体にも作用している。
だが、今の陽子は、鼻腔をくすぐる濃厚な薫香に含まれる成分によって欲情するまでもなく、
重なり合った肌を通じて伝わってくる優子の肉体の昂ぶりの前に、十分過ぎる程の興奮に包まれていた。
逡巡を続ける優子の口からは依然として何も発せられていない事に、一抹の不安はあったものの、
全身を覆った熱い血の滾りは、陽子の心を、ひたすら前へ前へと衝き動かしていく。
「・・・・お願いよ、優子・・・・受け取って・・・・あたしの気持ち。
・・・・あたし・・・・あなたが、好き・・・・あなたが、欲しい・・・・あなたの、何もかも全てを・・・・」
「・・・・・・・・!」赤裸々な告白の言葉に、困惑を超えて、恐怖すら覚える優子。
だが、陽子は、絡めた手足に力を込めて優子の退路を封じると、
決断を促すかのように、ゆっくりとした動作で形の良い唇を優子の口元へと近付けた。
強い決意の宿った美しい瞳は、真っ向から優子の目を見据えて逃げ出す事を許さず、
同時に、その心の水面に浮かび上がる葛藤の全てを見逃すまいと、神経を研ぎ澄まして待ち構えていた。
(・・・・ううっ・・・・陽子・・・・そこまで・・・・わたしの事を・・・・?)
熱を帯びた視線に射すくめられ、優子は小さく呻きながら必死に思考を紡いでいく。
時間の経過と共に、陽子の言動に対する恐怖は薄らいでいき、
反対に、こんなにも真剣に自分の存在が求められている事への、不思議な感動が湧き上がってくる。
陽子の瞳に宿る切ないまでの純粋な想いが、一陣の清涼な風となって胸の中に吹き込むように感じられ、
迷走を続ける思考に振り回されて、無秩序に攪拌されるばかりだった感情も、
少しずつ落ち着きを取り戻して、まとまっていく気配を見せ始めた。
(・・・・わたし・・・・陽子の事、本当はどう思ってるんだろう・・・・)
脳裏に去来する、出会いから今に至るまでの記憶の数々。
最初に出会った頃は、「ヴァリスの戦士」と「レダの戦士」としてしか、意識していなかった筈だ。
三界最強の「戦士」たる自分を目映げに仰ぎ見る、憧憬の視線が印象的だったのが忘れられない。
・・・・それとも、あれは、戦いの中で垣間見えた、麗子との深い絆に対する羨望の眼差しだったのだろうか?
いずれにせよ、あの頃は、陽子も自分も、無論、無意識のうちにではあるものの、
麗子を介してのみ、相手とつながりを持ち、麗子との比較によってのみ、相手の人格を把握していた筈だった。
(・・・・だけど・・・・今、わたしたちの間に、麗子はいない・・・・)
独りごちながら、やや上目遣いに、熱っぽい光に支配された陽子の表情を窺い見る優子。
その瞳がとらえて放さないのが、麗子ではなく、自分自身である事を再確認し、小さく息を吐く。
ほんの二、三日前、薄暗い病室の中で肌を重ねた時には、
陽子の瞳に映っていたのは自分でも、陽子の心が見ていたのは自分の中の麗子だった。
それが、今では、本当に自分の姿しか映っていない・・・・陽子の瞳にも、陽子の心にも。
そして、優子自身もまた、麗子の代用物としての陽子ではなく、陽子自身としての陽子から、
麗子の代用物としての優子ではなく、優子自身としての優子に対して、
こうして激しく告白され結合を求められている事を、心地よく感じ始めているのに気付いていた。
長かった逡巡がようやく終わりの時を迎える――――そこから先は、もはや思索など不要だった。
(・・・・陽子・・・・私も・・・・貴女が・・・・好き・・・・。
世界中で一番かどうかは・・・・正直言って、自分でも分からないけれど・・・・。
・・・・でも・・・・麗子にも負けないぐらい・・・・陽子の事・・・・好きになれそうな気がする・・・・)
優子の唇が、陽子の口元に向かって静かに動き、微かに震えている桜色の花弁にそっと触れる。
重なり合う二つのクチビル・・・・蕩けるようなキスの感触が、少女たちの性感を一気に燃え上がらせる。
口の中一杯に湧き出した甘酸っぱい唾液を流し込みながら、貪欲に優子の唇を求め続ける陽子と、
小さな喘ぎ声を漏らしながら、情熱的な口付けと、それに続く口唇愛撫を満喫する優子。
ピチャピチャと大きな音を立てながら、唾液をたっぷりと含んだ二つの舌先が複雑な動きで絡み合う。
(・・・・ああっ・・・・よ、陽子っ!!・・・・そうよ・・・・もっと・・・・もっと強く抱いてっ・・・・!!キスしてっ・・・・!!)
喜びに湧き立つ優子の肉体。
心の底からこみ上げて来る幸福感が、えも言われぬ快美感となって全身を駆け巡った。
恍惚のあまり、指先の感覚が妙にふわふわと頼りなく感じられて、
陽子の身体がまるで雲か霞のように消え失せてしまうのではないかという錯覚に囚われ、
細かい汗の粒に覆われたその背中を、ありったけの力を込めて抱き寄せる。
びっくりして目を見開いた陽子は、しかし、自分でも驚くほどの落ち着きでそれを受け止めると、
唾液まみれになって半ば痺れかかっていた優子の舌を咥え込み、
前歯と舌を器用に使って、やんわりと甘噛みしながら、ざらつきのある表面を前歯で軽くこそいでみせる。
「ふわあああっ・・・・!!うふっ・・・・はぁふああっ・・・・!!」
舌先から発した快感の衝撃波が、たちまち頭頂まで突き上げ、そこから一気に全身へと広がっていく。
下顎が、かくん、と、だらしなく落ちて、口元から溢れ出した涎が銀色の糸となって垂れ流れると、
陽子の華奢な体を抱き締めていた両腕の筋肉も力を失い、ふにゃふにゃに弛緩してしまう。
なおも容赦なく、口腔粘膜を舐めしゃぶられると、
興奮のあまり呼吸も出来なくなくなった優子は、弱々しくかぶりを振り、涙目になった。
(すごい・・・・優子。本当に気持ち良さそう。もう、キスだけでもイッちゃいそう、ってカオしてる。
・・・・いいわよ、優子、イカせてあげる。何度でも好きなだけ・・・・キスだけじゃなく、他にも一杯っ!!)
わずかにだが意地悪そうにも見える笑みを浮かべつつ、乱暴なくらいに強く唇を吸い続ける陽子。
優子の身体が、ビュクン、とひときわ大きく跳ね上がって、激しい痙攣に包まれていく。
背中に食い込んだ優子の爪がもたらす熱い痛みに、表情を引き攣らせつつも、
陽子は、なおも貪欲に、優子と舌を絡め合い、唾液を交換し続けた――――――――。
――――――――――――闇の中。
「・・・・フン、何をやってのるかと思えば・・・・。
・・・・どうする、阿修羅。今なら簡単にやれるが・・・・?」
先行させた偵察ポッドから転送される映像が受像機に映し出されるなり、呆れた声を発するメディアス。
一応、パートナーの意思を確認しようとしたものの、
画面の中で絡み合う二つの女体に好色な視線を注いでいた阿修羅は振り返ろうともしない。
事前に予想した通りの反応に、豪奢な金髪が揺れて、チッ、という舌打ちの音が漏れると、
六本腕のオカマはモニターを注視したまま、わずらわしそうに6つある手の中の一つを振ってみせる。
「・・・・こんなご馳走を目の前にしてかい?
フフッ、そんなにがっつかなくても、あのお嬢ちゃんたちは何処へも逃げたりはしないって。
メディアス。アンタ、もうちょっと、ゆとりってモノを持った方が良いわよ」
「もういい」と、吐き捨てるように言うと、苛立たしげに席を立つメディアス。
フン、と軽く鼻を鳴らした阿修羅をその場に残して、戦闘ユニットの一団を引き連れ森の中に消えていく。
チラリ、とその後ろ姿に視線を走らせたオカマ男は、
すぐにモニターの中の少女たちに関心を戻しつつ、口の中で小さく毒を吐いた。
(・・・・でないと、思わぬ所で墓穴を掘る事にもなりかねないわよ・・・・)
――――――――――――TO BE CONTINUED.