――――――――ガルバ城内。拷問牢。  
 
「・・・・ハァッハァッ・・・・や、やめて・・・・ううっ・・・・陽子・・・・そんなに、動かないでぇ・・・・」  
 
張形に深々と秘裂を貫かれた優子から、弱々しい呻き声が漏れる。  
肌理の細かい色白の肌の上では、幾重にも覆う脂汗の層が淀んだ光沢を放ち、  
無残に毀たれ変形した「ヴァリスの鎧」が、これまでの間に繰り返された凄惨な陵辱を雄弁に物語っていた。  
絶え間無く続いた調教と絶頂により、限界を超えて酷使された手足は、  
本来のしなやかさを失って鉛のように重く沈み、時折、不規則な痙攣を発してビクビクと波打っている。  
 
「・・・・んぁあっ!!ゆ、優子こそ・・・・そんなに・・・・体、揺すったら・・・・あああッ・・・・!!」  
 
ギクギクッ、と、エビのように背中を仰け反らせた陽子の唇からも、鋭い悲鳴がほとばしる。  
ラピス・ブルーのアーマー・ショーツを穿ち抜いて肛門に突き刺さった張形が卑猥にうねると、  
恥ずかしい排泄器官の中を異物感と鈍い痛みとが駆け回る。  
亀頭のエラにあたる部分がニガウリのような無数の突起で覆われた、その張形は、  
根元の部分で、優子を犯す金属製の責め具へと繋ぎ合わされ、  
湧き出すゾクゾク感に耐え切れず、陽子の丸尻が切なげにひくつくたび、  
あるいは、張形の圧迫感に屈して、優子の腰が激しく捏ね回されるたび  
その動きが互いの張形に伝わって敏感な粘膜が擦り上げられる、という悪辣な仕組みとなっていた。  
 
「アアッ!!い、いやぁっ!!もう、ダメッ・・・・漏れちゃうッ!!」  
 
二人の少女を苛んでいるのは張形による責めだけではない。  
陽子は、利尿効果のある成分がたっぷりと含まれた阿修羅特製のスペシャル・ドリンクを与えられた上、  
内部にモーターが組み込まれた小さな球形の責め具によって、尿道の周りをさかんに揉み解されていた。  
キュルキュル、と小動物の鳴き声に似た音を発して、下腹部が尿意を溜め込んでいくにつれ、  
責め立てられるとば口がザワザワと粟立ち、魚の嘴のような形へと変化していく。  
 
「・・・・が、我慢して・・・・陽子っ・・・・ううっ・・・・ま、負けちゃ、ダメ・・・・あくぅっ・・・・」  
 
固く食いしばった口元から荒々しい吐息を漏らしながら、必死にパートナーを励ます優子。  
だが、その言葉は、同時に、自分自身に向けたものでもある。  
陽子の尿道口に貼り付けられているのと同じの責め具は、優子の陰核と左右の乳首にも取り付けられ、  
これら三つの突起を刺激し続けて限界まで肥大させていた。  
殊に、陰核の膨張ぶりは異様なほどで、ほとんど親指の頭ほどの大きさにまで腫れ上がり、  
ビクン、ビクン、と、心臓のように脈打ちながら、蕩けるような甘い波動を全身に向かって送り出している。  
 
「・・・・ヒィイイイッッ!!も、もう・・・・もう、ダメぇェェッッッ!!!!」  
 
水圧に堪え切れず、引き攣った悲鳴と共に決壊した陽子の堤防から、  
鮮やかな黄色に染まった液体が鉄砲水のように噴出し、石床の上に飛び散って濛々と湯気を立てる。  
羞恥心と無力感とで幼児のように泣きじゃくる赤毛の少女の姿に、  
優子は、思わず表情を凍りつかせ、左右にブルブルとかぶりを振った。  
無論、その間にも、絶望に包まれた陽子の身体のわななきは、  
張形を通じて優子の秘裂に注ぎ込まれ、苦痛と快楽の斬撃と化して少女の心を切り刻み続けている。  
 
「・・・・んぁあっ!!・・・・わ、わたしも・・・・もうッ・・・・!!  
・・・・くふぁっ・・・・イ、イク・・・・ふああっ・・・・ま、また・・・・イッちゃうぅぅッッッ!!!!」  
 
悲痛な叫び声と共に、今度は、優子の下半身が大きく飛び跳ねる。  
半透明な愛汁に覆われた肉襞が、呑み込んだ極太の張形を噛み切らんばかりに食い締め、  
屹立した陰核や乳首も、唸りを上げるローターの動きが伝染したかのような脈動に包まれている。  
気が遠くなりそうな快感によって頭の中をグチャグチャに掻き回された優子は、  
やがて子宮の一番奥から発生する全身を焼き尽くすような灼熱感以外には何も感じられなくなっていく。  
 
(・・・・ふあああ・・・・お、おしっこ・・・・漏らしちゃったよぉ・・・・ゆ、優子が・・・・見てる前で・・・・)  
 
(・・・・ううう・・・・ダ、ダメ・・・・体が動いちゃう・・・・ごめんなさい・・・・陽子・・・・我慢出来ないの・・・・)  
 
二人の調教を任されてより三昼夜、阿修羅の目論見は順調に成果を上げつつあった。  
特に陽子にはその成果が顕著に現れ、いまや脱出を試みるどころか、  
次々に繰り出される変態男の責めの前に完全屈服の寸前にまで追い込まれている。  
逆に、調教前は陽子よりもずっと精神的に不安定な状態に映った優子の方が、意外によく持ち堪えており、  
言動の端々には、未だ陽子に対する励ましや気遣いの感情が見え隠れさえしていた。  
 
「・・・・フフフ、"必ず逃げ出してやる"とか、"絶対に思い通りにはならない"とか、  
殊更に気を張った所が無かった分だけ、優子の方が精神の均衡を保ててるって訳ね・・・・」  
 
狡猾な笑いを浮かべつつ、阿修羅は、眼光鋭く二人の様子に目を走らせる。  
予想に違わず、ゼルとダリスの麗子に対する関心は日を追う毎に逓減していき、  
それに反比例して、優子と陽子への調教の進み具合を訊ねて来る回数が急増していた。  
その都度、適当に耳障りの良い言葉を並べてしのいではいるものの、それももうじき限界に達するだろう。  
だが、作業がこのまま順調にはかどれば、ゼルとダリスが完全にしびれを切らす前に、  
優子はともかく、陽子の方は完全な牝奴隷化が完了する筈だ、という手ごたえを感じている。  
 
(・・・・いいや、何としてでも、この二人は、ゼッタイにアタシのこの手で堕としてみせるわッッ!!)  
 
弱気を打ち払いつつ、握り締めた拳に、グッ、と力を込めるオカマ魔人。  
実際、目の前の二人は、麗子を別にすれば、これまで自分が扱ってきた中で最高の素質を持った、"素材"だった。  
 
縄打たれ、家畜のように四つん這いにさせられて、口汚い罵声を浴びた時の反発・・・・。  
両脚を大きく割り開かれて、身体中で最も恥ずかしい場所を露わにされた時の狼狽・・・・。  
そして、全身の快感のツボを徹底的に責め立てられて、絶頂を迎えた時の歓喜と絶望・・・・。  
 
(・・・・ああッ、素敵よ、そのカオ・・・・肉欲に溺れる間際の、必死に堪えようと足掻くその表情・・・・!!  
・・・・こうして様子を見てるだけで、もう鳥肌がこ〜んなに一杯ッ・・・・!!)  
 
ゴクリ、と大きな音を立てて生唾を飲み込んだ変態男は、  
上気した手足をくねらせ、淫靡な舞いを踊る少女達の動きをうっとりと眺め続ける。  
未だ"完成品"には程遠い状態とはいえ、すでに二人の動作には匂い立つような妖艶さが垣間見え、  
全ての馴致が完了した暁にはどれほどの痴態を見せてくれるやら、皆目見当もつかなかった。  
手に入れた最高の原石に驚嘆し、これを思いのままに磨き上げる事の出来る喜びを噛み締めながら、  
阿修羅は股間の一物を熱くいきり立たせつつ、改めて調教の完遂を心に誓うのだった・・・・。  
 
「・・・・あああ・・・・いやぁ・・・・もう・・・・もう、いやぁっ・・・・」  
 
力無く垂れたポニーテールをゆっくりと揺らしながら、弱々しいすすり泣きを漏らす陽子。  
最初の頃の威勢の良さはかき消えたように四散して、いまやその表情からは力が失せ、  
瞳には、死にかけの魚のようなドロリとした光が浮かんでいる。  
旺盛な反抗心を打ち砕き、気力を萎え縮ませるため、阿修羅が用いた徹底的な羞恥責め、  
とりわけ、優子の目の前での、尿道・肛門への集中攻撃は、今や少女の理性を完全に蝕んでいた。  
 
「・・・・お・・・・お願い・・・・ト・・・・トイレに・・・・行かせて・・・・ううう・・・・お願い・・・・しま・・・・す・・・・」  
 
半ばうわ言のように懇願の言葉を繰り返す、「レダの戦士」の足元は、  
垂れ流された汚物で足の踏み場も無く、濃厚なアンモニア臭が立ち込めて不潔極まりない。  
思春期真っ只中の多感な少女にとっては、それだけでも十分耐え難い恥辱であるのだが、  
その上、執拗な責めに屈して失禁や脱糞を繰り返すあさましい姿を、  
優子の目の前に晒し続けている事実は悪夢以外の何物でも無かった。  
執拗な排泄欲求に苛まれた陽子は、せめて惨めな姿を優子の視界から遠ざけようと、  
思い付く限りの手段を試みたのだが、奸智に長けた阿修羅の前ではいたずらに失敗を重ねるだけで、  
最愛の少女の前で最低の行為に耽る姿を曝け出さねばならない苦痛から逃れる事は出来なかった。  
 
「・・・・よ、陽子!?だ、駄目よ・・・・やめてっ、そんな事、言っては駄目っ!!  
・・・・あああっ・・・・お願いっ・・・・お願いだから・・・・こんなヤツに、頭なんて下げないでッ!!」  
 
懸命に引き止めようとする優子の声も、もはや耳には届かない。  
否、声は届いているのだが、絶望に打ちのめされた陽子の思考は完全に麻痺してしまい、  
優子の声を意味のある言葉として受け止める事は、すでに不可能な状態にまで陥っていた。  
陽子に理解出来たのは、悲痛な眼差しを浮かべた優子が盛んに何かを叫んでいる事だけ・・・・  
普段の陽子ならば決してありえない事だったが、度重なる衝撃ですっかり脆くなってしまった少女の心は、  
それを、あまりにも惨めな姿をさらす自分への、非難と嫌悪であると曲解してしまう。  
 
(・・・・ああ・・・・そんな・・・・優子にまで・・・・軽蔑されちゃうなんて・・・・。  
・・・・で、でも・・・・仕方ないよね・・・・あたし・・・・弱虫だもん・・・・負け犬だもん・・・・。  
・・・・こんな酷い事されても・・・・何も抵抗出来なくて・・・・おしっこやうんちまで垂れ流してるんだもん・・・・)  
 
滲み出した大粒の涙が目元から溢れ、憔悴しきった頬を伝って流れ落ちていく中、  
全ての希望と共に、最後の自我の支えをも失ってしまった陽子の精神が加速度的に崩壊を始め、  
同時に、理性の縛めから解き放たれた被虐の悦びが、悪寒となって全身を覆い尽くしていった。  
これまで吐き気を催すようなものとしてしか捉えられなかった筈の阿修羅の責めが、  
病み衰えた心の中で化学変化を生じて、耐え難いまでのゾクゾク感へと変質していく。  
生まれて初めて味わう、圧倒的な隷従の快感にとまどいつつも、  
疲れ切った「戦士」の中では、ようやく安らぎの場を得られたという安堵の想いの方が大勢を占め、  
いつしか、陽子は、弱々しく喘ぎながら、トロトロに蕩けた視線を空中に彷徨わせるまでになっていた。  
 
(・・・・あああッ・・・・こ、この・・・・き、気持ちは・・・・一体、何ッ・・・・!?  
・・・・どうして・・・・なんで・・・・こんな酷い事されてるのに、こんなに気持ち良いの・・・・どうして・・・・!?)  
 
尿道を責め苛むローターの動きがさらに加速し、荒々しいものに変化していくにつれ、  
真っ赤に腫れたとば口から、黄金色に輝く液体が、ピュッ、ピュッ、と飛び散り始める。  
前後して、上気した裸身が小刻みな痙攣を始め、呼吸のリズムもどんどん過激になっていく。  
ニヤリ、と口元を歪めたオカマ魔人は、部屋の隅に控えていたロボット兵士を招き入れると、  
抵抗もままならない陽子の体を持ち上げさせて、優子の顔の真ッ正面へと移動させた。  
 
「・・・・クックックッ・・・・さぁ、陽子、我慢は身体に毒よ・・・・一気に放出して、楽になっちゃいなさいな。  
・・・・ホラホラ、手伝ってあげるから、さっさと出しちゃいなさい・・・・ウフフフ・・・・」  
 
あまりのおぞましさに言葉を発する事も忘れ、両目を大きく見開いて陽子の会陰部を凝視する優子の目の前で、  
変態男は、六本の腕を巧みに操り、コリコリに硬くなった少女の排泄器官の周囲を円を描くようになぞり上げる。  
ただでさえ、身体の内側からは利尿剤に、外側からは責め具の震動に、徹底的に嬲り抜かれていた膀胱である。  
その上、節くれ立った指先まで責め手に加わってはひとたまりもなく、  
瞬く間に突き破られた堤防の切れ目から、美しいアーチ型の放物弾道を描く黄金色の液体が溢れ出してしまった。  
 
・・・・恐怖に凍りつき、醜く引き攣った優子の顔面に向かって・・・・。  
 
「・・・・いっ・・・・いやぁあぁぁッッッ・・・・!!!!  
・・・・や、やめて・・・・陽子ッッ!!・・・・あああっ・・・・お願い・・・・やめてェッッッ!!!!」  
 
猛烈な勢いで噴き出した聖水が、悲痛な叫び声を上げる優子の顔面を直撃し、  
白い湯気を立ち上らせながら、前後左右に無数の飛沫を飛び散らせる。  
口蓋の中に流れ込む塩味の効いた生温かい液体に喉を冒されて、ゲフッ、ゴフッ、と、盛大に咽せ返った少女は、  
唾液と尿液が入り混じった名状し難い濁り液を吐き続けながら、火のついたように泣き叫んだ。  
 
「・・・・ああ・・・・あああっ・・・・ホ、ホントだぁ・・・・すごく・・・・き・・・・気持ち・・・・良いっ・・・・。  
・・・・おしっこ・・・・出る所・・・・じんじんして・・・・すっごく・・・・気持ち良い・・・・ふはぁああっ・・・・!!」  
 
体の中の水分を一滴残らず搾り出すかのような失禁を続けながら、  
自らが放出する黄金水が大切なパートナーの身体を穢していく様子を、茫然自失の態で眺めやる陽子。  
激しい衝動に駆り立てられつつ、気泡混じりの水流が尿管の中を通り抜け、  
幾度と無く続いた失禁のため、充血しきった排泄器官へと抜けていくたび、  
下半身全体がじんわりと熱せられて、何とも言えない心地よさに包まれる。  
かなり長い時間をかけて、放物線の描く弧が徐々に小さくなっていき、  
最後に、ちょろちょろっ、と尿道口を濡らして、ようやく止まる頃には、  
少女の股間は軽い絶頂へと押し上げられ、小刻みなひくつきに覆い尽くされていた。  
 
「・・・・ホホホ、初めてにしては上出来よ、陽子。  
・・・・ウフフ、どう、アタシが言った事、本当だったでしょ・・・・?」  
 
ロボット兵士の腕の中にぐったりと体を沈み込ませた陽子に、背後からしなだれかかる阿修羅。  
真っ赤に染まり上がった耳たぶに唇を寄せ、低い声で囁きかけると、  
耳穴をねぶるねっとりとした吐息の感触に、ピクン、と敏感な震えを発した「レダの戦士」は、  
続いて、完全に力の抜けきった表情で、コクン、と小さく頷いた。  
 
「・・・・ううっ・・・・よ・・・・陽子・・・・ダメよ・・・・あ・・・・諦めちゃ・・・・ダメ・・・・。  
・・・・お願い・・・・だから・・・・くっ・・・・我慢・・・・して・・・・踏み止まっ・・・・て・・・・」  
 
必死に声を絞り出し、翻意を求める優子。  
・・・・だが、すでに正気を失って妖しい快楽の虜と成り果てた陽子は力なくかぶりを振るばかりで、  
やがて、最後の忍耐力まで使い果たしたのか、甘えるような視線をオカマ魔人へと向けてしまった。  
どうだ、と言わんばかりに、勝ち誇った笑みを浮かべる阿修羅が見下ろす中、  
衝撃に打ちのめされ、力を失った優子の身体が、陽子の尿で出来た黄色い水溜りの中に崩れ落ちていく。  
 
・・・・その姿を無表情に眺めつつ、赤毛の少女は、暗黒に閉ざされた心の隅で力無い呟きを漏らした。  
 
(・・・・ごめんね・・・・優子・・・・でも・・・・そろそろ・・・・終わりにしようよ・・・・?  
・・・・あたし達・・・・もう充分・・・・戦ったんだから・・・・もう・・・・いいじゃない・・・・ね、優子・・・・?)  
 
 
――――――――ガルバ城。ゼルの居室。  
 
「・・・・そうか、ついにユーコも屈したのか・・・・」  
 
満足げな、それでいて、少し残念そうな表情を浮かべるアシャンティの支配者。  
足元の床の上では、引き据えられた麗子と陽子が、じゃれ合う子犬のように乳繰り合いながら、  
時折、豪奢な白絹の装束の下に隠された逞しい肉体を、上目遣いにチラチラと見上げている。  
 
「良くやった。・・・・では、早速、味見と行こうか」  
 
言葉とは裏腹に、青年独裁者の声にはあまり嬉しそうな響きは無い。  
主の傍らでは、ダリスの目が、「気の利かぬ奴め」とばかりに冷やかな光を放っているが、  
六本腕のオカマ魔人は、こちらにも気付かないフリをしたまま、  
口の中に広がった苦い感情を噛み殺し、主たちの前から一時退出した。  
 
(・・・・チッ、優子め、存外だらしないヤツじゃ。  
阿修羅の責めにここまで抵抗してきたのじゃから、  
もう一日、いや、半日くらいは大丈夫、と踏んでおったものを・・・・まったく!!)  
 
甘ったるいよがり声を発し続ける二人の少女を煩そうに睨みつけると、  
ヴェカンティの宦官は苦虫を噛み潰したような表情で、控えの間へと通じる扉へと理不尽な怒りの視線を注ぐ。  
今回のこの報告でも、優子の調教が完了した旨の返事が得られなかったならば、  
阿修羅から彼女を取り上げて、自分たち自身の手で最後の馴致を施す決意を固めていたのだが、  
目の前に畏まる人間兵器の口から語られたのは、その密やかな期待をあっさりと裏切る知らせだった。  
 
(・・・・ええい、糞忌々しいっ!!  
この上は、麗子と陽子共々、心も身体も砕け散るまで、徹底的に嬲り抜いてやるっ!!  
そうでもせねば、わしのこの気持ちが収まらんわい!!)  
 
誤算を引き起こした自分への腹立ちを、半ば強引に、不甲斐ない「戦士」への怒りに置き換えて、  
ねじくれた心の中に暗い情念の炎を燃え上がらせるダリス。  
その横で、側近の心情に思いを馳せて、やや苦笑気味に唇の端を吊り上げたゼルもまた、  
つい数ヶ月前、敗北という名の苦杯を舐めさせた少女への憎悪を再確認し、  
彼女に対する復讐の完遂を改めて心に誓っている点ではお気に入りの宦官と変わらない。  
肉奴隷と化した優子の姿を想像しただけで、ザワザワと騒ぎ出した全身の血流は、  
ゆったりとした衣服の下に隠された屈強な下半身へと集まって、その中心部を硬く勃起させていくのである。  
 
 
――――――――控えの間。ゼルの居室へと続く回廊に面した大扉のそば。  
 
「・・・・さぁてと、お嬢ちゃん。随分と手こずらせてくれたけど、どうやらこれでフィニッシュのようね。  
・・・・ま、最後は時間が無かったから、ちょっとばかり、強引な手を使っちゃったけどさ」  
 
薄暗い部屋の中、人形のように黙りこくった優子に向かい、ねっとりとした口調で囁きかける阿修羅。  
生気の無い頬を、グイッ、と引き寄せると、長い舌を伸ばし、血色の悪い唇の表面をチロリとなぞる。  
ピクリ、と小さく反応して、弱々しい嫌悪の感情を示した優子だったが、  
直前に投与された薬物の影響で、手足はひどく緩慢にしか動かず、抵抗など到底不可能な状態である。  
 
(・・・・まったく、一体、何処まで強情なんだろうね・・・・。  
こんな状態になってもまだ反抗し続けるなんて・・・・少しは麗子や陽子を見習って欲しいもんだよ)  
 
内心、本気で呆れ返りながら、懐から半透明な薬液の入ったアンプルを取り出す変態男。  
本心では、薬の力などに頼らず、己の持つ知識と技術だけで調教を完成させたかったのだが、  
気まぐれな主人達の横槍で予定より早く期限切れを迎えてしまった今、贅沢を言っていられる余裕は存在しない。  
どうせ嫌な事ならさっさと済ませてしまえ、とでも思ったのか、ガラス容器を無造作に握り潰した阿修羅は、  
安っぽい香水の匂いを何十倍にも濃くしたような品の悪い臭気に顔を歪めつつ、  
射精の後かなり時間が経った精液を思わせるどろりとした液体を、優子の口元へと滴らせた。  
 
「・・・・うっ・・・・んくっ・・・・はくぅっ・・・・んうう・・・・うくぅ・・・・っ・・・・」  
 
断続的に漏れ出すくぐもった呻きが、優子の喉をビクビクと震わせる。  
流れ出した幾筋もの唾液が、黄金の胸当てを奪い取られたため、むき出しの状態の胸元へと垂れ落ちていき、  
狂おしい動悸を刻む二つの乳房の間で攪拌されて、淡い銀色の輝きを放出した。  
最初に投与された、自我を抑制する薬物によって、思考と感情のほとんどを失っていた優子だが、  
新たに与えられた薬剤の方が強力なためか、全身をとろ火で焙られるような灼熱感に包まれている。  
 
「ウフフ、どう、新しいお薬は・・・・?  
ちょっと効き目が鈍いのが欠点だけど、クスリの力を借りてるって事がバレると色々面倒だしねぇ。  
・・・・ま、そういう事で、しばらくの間はこれで我慢して貰うから・・・・クックックッ・・・・」  
 
優子の憂悶の表情を見下ろしつつ、意味ありげに笑いを含ませる阿修羅。  
新たに投与された催淫剤には性感を高める効能こそあれ、それを快楽へと昇華させる成分は含まれていない。  
普通であれば、性感の昂ぶりは快感の増大と同義であるケースがほとんどなのだが、  
今の優子は、投与されたもう一つの薬物の影響で、自我の働きを阻害されている状態にあった。  
つまり、少女の肉体がどれだけ堪え難い疼きに苛まれて悶絶しようとも、  
その精神は何ら快楽を覚える事無く、どんよりとした淀みの中に沈んだまま、決して浮上する事は無いのである。  
 
「・・・・んあぁっ・・・・ぅくっ・・・・はぁふっ・・・・んぐぅううっ・・・・!!」  
 
口をついて飛び出してくる呻き声のトーンが強まるのに比例して、  
行き場を失った性感が、快楽という名の出口を求めて悲鳴とも怒号ともつかない喊声を上げ始める。  
優子の自我を制圧できず、薬の力に頼るしかなかった失態を隠蔽する目的で追加投与された「催淫剤」だったが、  
少女に与えている苦しみの強さから言えば、むしろ、精神を支配する薬物以上に凶悪なものかもしれなかった。  
 
「・・・・クックックッ、解毒剤が欲しいんでしょ?  
そりゃ、欲しいわよねぇ・・・・だって、このままじゃ、イキたくてもイケない生殺し状態なんだもん。  
フフフ・・・・でも、あげない。ここまで手こずらせてくれた罰よ、しばらくはそのまま我慢してなさい」  
 
酷薄極まりない宣告に、くぅぅっ、と、下唇を強く噛み締める優子。  
熱く燃え盛る全身から大粒の汗が噴出し、むっとするような牝臭が湧き上がって来る。  
だが、その心の中は、依然として空虚なまま、凍りついたように硬直しきっていた。  
冷え切ったその心を溶かすべく、薬の力を借りて勢威を増した性の波動が、何度も炎を浴びせかけるのだが、  
その度に、まるで見えない障壁によって弾かれるかのように押し返されてしまう・・・・。  
 
「・・・・さあてと、仕込みはこれで完了、いよいよお披露目の時間よ。  
ゼル様とダリス様が首を長くしてお待ちかねだわ・・・・せいぜい可愛がって貰う事ね、お嬢ちゃんッ!」  
 
冷たく笑いながら、悶え苦しむ優子に背を向けた阿修羅は、  
ゼルの居室へと続く両開きの大扉に手をかけると、勿体ぶった動作で開け放った。  
差し込んできた照明の光が牢獄生活で弱っていた目に突き刺さり、ううっ、と呻いて、顔を逸らした途端、  
六本腕の一つが素早く動いて、少女の首に小さな鈴の付いた皮製の首輪を巻き付ける。  
 
「さぁ・・・・行くわよ」  
 
抗う間もなく、手馴れた動作で留め金が固定され、  
ジャラジャラという耳障りな金属音を立てる鉄の鎖が繋ぎ合わされた。  
阿修羅の手が、鎖を、グイッ、と引っ張ると、  
柔らかい喉の皮膚に首輪が食い込み、銀色の鈴が、チリリン、と、場違いな程に澄んだ音色を響かせる。  
あまりにも悲惨な己の姿に、羞恥を通り越して恐怖に近い感情を覚えた優子は、  
何とかしてその場に踏み止まろうとしたものの、薬物に冒された手足には力など微塵も入らない。  
無念そうに顔を歪める少女に追い討ちをかけるように、  
六本腕の変態男は、薄汚れて襤褸布のようになったスカートを捲り上げ、  
すでに幾つもの醜い痣を生じている尻肉を目がけて、容赦ない平手打ちを炸裂させた。  
 
「いい加減観念したらどうだい?・・・・それとも、まだ痛い目を見たいっていうのかい?」  
 
ドスを効かせた低い囁き声と共に、阿修羅は汗ばんだ尻肉を、ギュウウッ、と掴み上げ、  
無数の皺がよじり合わさったすぼまりの表面に尖った爪の先端を押し当てて、その感触を思い出させる。  
その効果は覿面で、少女は、半ば反射的に、背中を、ギクギクッ、と三日月形に反り返らせ、  
汗でベトベトに濡れた蒼髪を弱々しく揺らして屈服の動作を示すのだった。  
 
(・・・・ううう・・・・だ・・・・だめぇ・・・・体が・・・・動いちゃう・・・・!!  
・・・・ああ・・・・どうして・・・・イヤなのに・・・・ダメなのに・・・・何故・・・・コイツの命令に・・・・逆らえないの・・・・!?)  
 
もはや大部分が麻痺してしまった思考の片隅で、理性の欠片が悲痛な叫びをほとばしらせる。  
だが、薬物の力によって、大方の反抗心を消し去られてしまった少女は、  
鋭利な刃物と化した指先が、肛門を突き破り、直腸を抉り抜く光景を想像しただけで、  
全身が恐怖にすくみ、冷や汗が止まらなくなる状況にまで、追い詰められていた。  
未だ完全ではないとはいえ、執拗に繰り返された調教の成果は、意識の中に確実に刻み込まれており、  
実際に痛みを感じるまでもなく、その気配を悟っただけでも、  
条件反射の摂理によって、抵抗の意志は砕け散り、萎え縮んでしまうのである。  
 
くたびれ果てた体を引き摺りながら、四つん這いの姿勢のまま、一歩、また一歩、と回廊を這い進む優子。  
もはや、自発的に何かを感じ取ったり、何かを考えようとする気力など失くしてしまった少女の中では、  
二つの薬物によってもたらされた、気だるい無気力感と快楽に結び付かない性感とが無秩序に入り混じりつつ、際限なく増幅していく不気味な膨張感だけが、唯一感じ取る事の出来る感覚と成り果てていた・・・・。   
 
 
――――――――再びゼルの居室。  
 
「・・・・くふうううっ!!・・・・うふああぁっ!!・・・・んあっ・・・・ぐっ・・・・んうああああっ!!!!」  
 
背後から優子の上に覆い被さったゼルが、憎々しげな眼差しを少女の横顔に突き立てつつ、  
汗でヌルヌルの乳房を揉みしだき、愛液でドロドロに蕩けた子宮を抉り立てる。  
グチュッ、グチュッ、という粘ついた抽送音が響き渡るたび、悩ましい喘ぎ声が響き渡り、  
憎むべき宿敵の手で激しく犯され好き放題に弄ばれる事への屈辱感が痺れと化して背筋を駆け巡って、  
薬の力で押さえ付けられている筈の感情すら、激しく煮え立たせる。  
 
「・・・・あがぁっ!!・・・・いっ・・・・いぎぃぃいッッッ・・・・!!あぐぅぅぅっ・・・・!!  
・・・・うううっ・・・・がはぁっ・・・・ぐっ・・・・うぐああッッッ・・・・!!!!」  
 
・・・・だが、それでも、快感の境地は得られない。  
逞しい剛直が粘膜を掻き回すたび、優子の下半身には発狂しそうな程の巨大な性感が生まれるのだが、  
それは、ただ衝動の嵐と化して少女の身体の中を暴れ回るだけで、決して性の悦びには変わらないのである。  
勿論、エクスタシーを感じないからと言っても、陵辱を受け続ける肉体は敏感な反応を返してしまうし、  
体液の分泌もとどまる所を知らず、目に見える部分での違いはそれほど顕著なものではない。  
ゼルもダリスも、多少の違和感は感じたにせよ、大きな疑惑を抱くまでには至らないらしく、  
結果として、(阿修羅の思惑通り)優子の隷属が薬物の働きに依存している事は上手く隠し通されていた。  
 
(・・・・あああっ・・・・く、苦しいっ・・・・!!・・・・身体が・・・・熱くて・・・・ちぎれそうっ・・・・!!!!)  
 
一人、優子だけが、性感地獄の中でのた打ち回っていた。  
結局の所、責める側の牡にしてみれば、相手が本当に感じているかどうかは重要な問題ではないのだが、  
責め立てられる側の牝にとっては、決して快楽に結び付く事の無い性行為の強要は苦痛でしかない。  
しかも、単なる冷感症という訳ではなく、性の刺激そのものは明瞭に感じ取れるという事になれば、  
それは、単なる苦痛を超えた、まさに生き地獄と言っても過言ではないだろう。  
 
(・・・・ううう・・・・く、苦しい・・・・もう・・・・もう・・・・ダメッ・・・・ダメェエエエッッ・・・・!!!!  
・・・・お、お願い・・・・助けて・・・・麗子・・・・陽子・・・・誰でも良いから・・・・あああ・・・・助けてぇッッッ!!!!)  
 
脂汗にまみれ、激しい痙攣に包まれている柔肌とは裏腹に、  
憂悶と懊悩とがどんよりと厚い雲のように垂れ込めた心の片隅では、  
クスリで弱められ封じ込められた優子の自我が断末魔の悲鳴を上げ続けている。  
だが、救いを求められた麗子と陽子も、各々、阿修羅とダリスの手で責め立てられている真っ最中で、  
優子の心の叫びに耳を傾けるどころか、苦痛と快楽の織り成す官能の渦の中でのた打ち回っていたのだった。  
 
(ククク・・・・、さすがのお嬢ちゃんも、相当参ってきたようねぇ・・・・。  
ウフフ、いいわぁ、そのカオ・・・・だらしなく開いた口元に、飢餓感で発狂しそうな瞳の色・・・・  
アンバランスな感じが最高だわ〜・・・・フフッ、これじゃあ、アタシの方が先にイッちゃいそうよ・・・・)  
 
優子の表情に好色な視線を走らせながら、床の上に胡坐をかいたオカマ魔人は、  
背面座位の体位で抱きすくめた麗子の身体に、六本の手から生えた三十本の指を駆使した愛撫を見舞っている。  
麗子を抱くのは数日ぶりの事だったが、その間、ゼルとダリスによって徹底的に嬲り抜かれていた少女は、  
あれほど頑強に調教を拒み続けていたのが嘘のように、従順な奴隷と成り果てていた。  
それは、三日前に引き渡した陽子についても同様で、  
麗子に比べれば、未だ動きや表情にぎこちない部分も存在するものの、こちらも熟成ぶりは予想以上である。  
 
「・・・・あああっ・・・・も、もうダメ・・・・お・・・・お願い・・・・ですぅっ・・・・!!  
く・・・・下さいっ・・・・阿修羅・・・・さまの・・・・コレを・・・・麗子の・・・・ココにィッ!!」  
 
三十箇所同時の性感帯責めに耐え切れなくなったのか、ろれつの怪しくなった口調で哀願の言葉を漏らす麗子。  
ピンク色に上気しきった細身の身体に、へばりつくようにして残っている黒い鎧の残骸が、  
キラキラと輝きを放つ無数の汗粒の間で、波間に漂う木の葉のように頼りなく揺れ動いている。  
快楽にふやけきった瞳には、かつてのような怜悧な知性は微塵も感じられず、  
まるで酒精に憑り付かれたかのように、とろりとした熱気を孕んだ妖しい光が漂っていた。  
ニヤリ、と笑った変態男は、愛玩人形と化した麗子を抱きかかえたまま、  
その姿が優子の視界に収まるよう体の向きを修正し、それから、わざと大きな声で呼ばわった。  
 
「アタシのコレってのは、なぁに?アンタのココってのは、どこの事だい?  
ちゃんと分るように言ってごらんよ・・・・そこのお嬢ちゃんにも聞こえるようにハッキリとッ!!」  
 
「・・・・れ、麗子の・・・・お尻に・・・・グジュグジュのケツ穴にぃっ・・・・!!  
・・・・あ、阿修羅・・・・さまの・・・・硬くて・・・・熱い・・・・オチンチンを・・・・!!  
・・・・あああっ・・・・早くっ・・・・挿入れて・・・・突き上げて・・・・掻き回してぇっ・・・・!!!!」  
 
一秒にも満たない沈黙の後、まともな神経の持ち主なら、耳にするだけでも汚らわしいと感じる質問に対して、  
麗子は何の躊躇も無く、卑猥な単語を散りばめた答えを返した。  
それを耳にした優子の衝撃は、未だ薬液の力で精神を拘束されているにも関わらず、表情を凍りつかせた程で、  
もし薬の効き目がなかったならば、卒倒しかねい程のショックを受けていた事は想像に難くない。  
 
「・・・・フフフ、"ケツ穴"なんて下品な言葉、一体誰に教わったのかしら?  
しかも、こんなにお尻をヒクヒクさせてるなんて・・・・全く大した「戦士」サマだねぇッ!!」  
 
優子の心を覆った絶望の深さに思いを馳せ、勝ち誇った笑みを満面に湛えたオカマ魔人は、  
麗子の腰を高々と持ち上げると、脈打つ勃起の上へとあてがい、ズブズブと沈めていく。  
到底正視していられず、必死の努力を払って顔を背けようとする蒼髪の少女だが、  
悲鳴と嬌声は容赦なく耳朶に突き刺さり、空気の揺らぎはまるで悪意を持っているかのように柔肌を掻きむしる。  
 
・・・・深い絶望にとらわれ、フラフラとかぶりを振り続ける優子は、しかし、一つ重要な事を見落としていた。  
尻肉の間の排泄器官を執拗に嬲られ、肉悦の頂きへと追い上げられながらも、  
麗子の瞳の中には、時折、何かを探し求めて自分の表情を窺う、真剣な眼差しが存在するという事を・・・・。  
 
「むふぁああっ・・・・んっ・・・・ぁあんっ・・・・!!くふぅっ・・・・あううっ・・・・んはぁあああっ・・・・!!」  
 
一方、陽子もまた、肘掛けと背もたれの付いた黒い金属製の椅子に座らされ、  
丈夫な皮製のベルトで首と両手両脚を固定されて身動きを封じられていた。  
身体の各所には、背後の不気味な装置から伸びた、電極付きのニクロム線が取り付けられ、  
微弱な電流を送り込まれた乙女の柔肌が、絶えず、ピクッピクッ、と震え続けている。  
 
「・・・・はぁん・・・・んんっ・・・・ひはぁあっ・・・・!!・・・・んぁああ・・・・うくぅっ・・・・んふぅうううっ・・・・!!」  
 
それだけならばまだしも、椅子の下には、男根の形を模した硬質ゴムの突起を配した車輪が取り付けられ、  
低く唸るようなモーター音と共に、ゆっくりと回転を続けている。  
太腿を割り開かれた恥ずかしい格好で腰掛けさせられている座台には、車輪と同じ幅の溝が穿たれており、  
アーマー・ショーツのクロッチ部分も無残に切り取られて、車輪上に並んだ擬似男根の亀頭部分が、  
尾骶骨の真下から尿道口を抜け会陰部に至る、いわゆる"蟻の門渡り"と呼ばれるラインに沿って、  
順番に、少女の恥ずかしい場所を揉み解していく様子が一目で分るようになっていた。  
唯一の救いは、今の所、会陰部より先の秘裂の中心部と陰核とは、  
露出こそはしているものの、擬似男根の届く範囲からは辛うじて外れているという事だけだったが、  
それとて、車輪の位置を少し変えれば、たちまち攻撃可能となるのは明らかである。  
 
「ひっひっひっ、特製スペシャル電気椅子の座り心地はどうじゃ?  
んん〜、どうしたんじゃ?そんなに股の間をムズムズさせて、さてはまたお漏らしか・・・・?」  
 
電気ショックと回転ペニスの協奏曲に喘ぎ悶える陽子を眺め、ニヤニヤと好色な笑いを浮かべるダリス。  
蛙のように飛び出した目から発せられる粘ついた視線が、アーマー・ショーツの破孔へと絡み付き、  
尾骶骨に押し当てられた擬似男根の先が、尿道口をこそいでゆっくり通り過ぎるたび、  
拘束された少女の身体が発する隠し切れない歓喜のわななきに、うんうんと満足そうに何度も頷いている。  
優子の前で強制的に放出させられて以来、これまでに幾度と無く責め立てられた少女の排泄口は、  
失禁時のゾクゾク感が病みつきになったらしく、最近ではそれだけで絶頂に達する事さえ珍しくなかった。  
 
「・・・・んああっ・・・・くっ・・・・んんっ・・・あくぅっ・・・・!!な、何なの・・・・これぇっ・・・・!?  
・・・・あああ・・・・だっ・・・・だめぇっ・・・・気持ちいいっ・・・・!!お・・・・おしっこ・・・・漏れちゃうぅぅっ!!」  
 
ダリス特製のスケベ椅子に拘束された身体を切なそうによじりつつ、さかんに尿意を訴える陽子。   
時々、体の各所に取り付けられた電極から青白い火花が飛び散ると、  
子宮の奥で波長の異なる二つの痙攣が重なって、下半身全体を包み込む快美感となって共鳴し合い、  
擬似男根に圧迫された尿道が、じぃんじぃん、と、疼きを増していく。  
僅かに残っている理性のためか、それとも、そうする事で失禁時の快感をより大きくする事を狙う本能の故か、  
下腹にググッと力を込めて、擬似男根の圧迫感が通り過ぎるのをひたすら耐えようとする陽子だが、  
車輪の回転が停止しない以上、その努力は無駄な足掻きでしかなく、決壊は時間の問題と言う他無い。  
 
――――――――プシャァアアアッッッ!!!!  
 
鈍い光沢を帯びたゴムの塊が十回ばかり擦れたところで、限界に達した尿道口から黄金色の噴水が迸った。  
勢い良く跳び散った飛沫が、電極の火花と触れ合って白い湯気の花を咲かせ、  
むっちりとした太腿が、丈夫な革製の拘束具を引きちぎらんばかりに跳ね上がる。  
ダリスの期待に違わず、強制放尿の快感と羞恥によってしたたかに打ちのめされた少女は、  
そのまま絶頂へと突き上げられ、表情を引き攣らせたまま、口元をパクパクと動かして呼吸を弾ませた。  
 
「・・・・あ・・・・ああ・・・・んっ・・・・んふっ・・・・あうう・・・・んくぅ・・・・」  
 
溢れ出る尿液が異様に熱く感じられ、下半身を伝って流れ落ちていく感触が譬え様も無く心地良い。  
失禁の水流が途切れた後も、絶頂の余韻は延々と持続し、  
白い汗の粒に覆われて妖しくヌメる柔肌は、ピクピクと不規則な痙攣に覆われ続けていたのだが、  
それが、体外の拷問装置から流し込まれる電流によるものなのか、  
それとも、陽子自身の体内で作り出される電気信号によるものなのか、到底判じかねる状態だった。  
緩みきった唇の端から涎の糸を垂らしつつ、焦点を失った赤い瞳でぼんやりと空中を見上げた陽子は、  
やがて、半ば無意識のうちに、座台の鉄板に尻たぶを擦り付ける、ゆっくりと前後に動かし始めた。  
 
「ふぇっふえっふぇっ、そうじゃろう、そうじゃろう。  
どんなに耐えようとしたところで、この椅子に座った女は必ずそうなるのじゃからのう。ひッひッひッ」  
 
愉快そうに笑いながら、拷問装置を操作する宦官ダリス。  
車輪の位置が、数センチ分上にせり上がると共に、回転スピードも向上して、  
ゴム製の肉槍が、より深く、かつ、よりテンポ良く、少女の股間を抉る事が可能になる。  
 
「ふああっ・・・・!?ひあっ・・・・ひぎぃいいいっ!!!!あぐっ・・・・ひぐあぁあああっ!!!!」  
 
その事自体も恐るべき脅威には違いないのだが、やはり、最も致命的だったのは、  
これによって今まで擬似男根の攻撃範囲を外れていた場所にも亀頭の先端が届くようになる事だろう。  
回転する擬似男根は、強制的に失禁に導かれた直後の尿道口を容赦なくまさぐり押し潰した上、  
さらに会陰部から裂け目の中に侵入して、割り拡げた肉襞を散々捏ね回し、  
あまつさえ、陰核を収めた肉莢を亀頭の先で弾く事までやってのけた後、やっと通り過ぎる。  
だが、その頃には、次の肉棒が汗に濡れそぼった尻たぶの下へと迫っており、  
文字通り、息つく暇もなく、同じ責めを味わわねばならないのだった。  
 
(・・・・むああっ・・・・れ、麗子ッ・・・・まだなの・・・・まだ、耐えなきゃならないの・・・・!?  
・・・・このままじゃ・・・・あ、あたし・・・・んふあっ・・・・また・・・・また・・・・おかしくなっちゃうよぉッ・・・・!!)  
 
休む間もない連続攻撃に、少女の股間は、為す術も無く揉み解され掻き乱されて、  
再び尿管を膨れ上がらせると共に、粘膜の間から生温かい半透明な液汁を滲ませていく。  
・・・・だが、優子と一緒に阿修羅からの調教を受けていた頃と異なり、  
今の陽子は、それによって、全てを諦め、投げ出そうとはしなかった。  
 
(・・・・ううう・・・・そうよ・・・・陽子・・・・もう少しだけ・・・・頑張るのよ・・・・。  
・・・・わ、私が・・・・必ず・・・・チャンスを見つけるから・・・・んううっ・・・・だからッ・・・・)  
 
阿修羅の腕の中で、全身がバラバラになりそうな程の激痛と快感に苛まれつつ、  
陽子に向かって必死に励ましの目線を送り、挫けかけた心に喝を入れる麗子。  
拘束された体をガクガクと揺らしながらではあったが、陽子の目も懸命に頷き返す。  
 
・・・・ゼルとダリスの横槍によって、阿修羅、そして、優子の傍から引き剥がされた事は、  
陽子に関する限り、プラスの方向に作用していた。  
あのまま、阿修羅の監視の下で調教を受け続け、次第に飼い慣らされ、  
また、飼い慣らされる事自体に快楽を覚えるようになっていく姿を優子の前に晒し続けたならば、  
陽子の精神は、立ち直るどころか、とうに砕け散っていた事だろう。  
皮肉な事に、陽子に立ち直りのきっかけを与えたのは、  
不屈の精神で抵抗を続ける優子の姿ではなく、同じく調教に屈した麗子の惨めな有様だった。  
陽子は、そこに、優子の傍にいた時には感じる事の無かった、ある種の連帯感を感じ取ったのである。  
 
(・・・・あああっ・・・・うそ・・・・嘘よ・・・・こんな・・・・こんな事・・・・!!  
・・・・ううう・・・・私には・・・・もう・・・・どうする事も出来ないの・・・・!?  
麗子も・・・・陽子も・・・・誰一人・・・・守れずに・・・・このまま・・・・堕ちていくしかないの・・・・!?)  
 
だが、未だ二人の真意に気付く事の無い優子は、わずか数歩を隔てた場所で繰り広げられる麗子と陽子の痴態を、心臓が締め付けられるような悲痛な感覚にとらわれたまま、見つめているしかなかった  
ヴァニティの「戦士」として共に戦ってきた同志であり、同じ年頃の乙女として語り合った親友であり、  
そして、互いに恋愛とほぼ等価な感情を共有していると認め合っていた筈の二人の少女が、  
目の前で嬲られ辱められているのを指一本動かせず見守るしかないのも無論ショックな事だったが、  
何より大きな苦痛は、彼女達自身が、自発的に淫虐な責めに体を開き、歓喜の声を上げているという事実だった。  
 
(・・・・信じてたのに・・・・たとえ体は汚されても、心までは奪われていない、って・・・・いる筈がないって・・・・!!  
・・・・なのに・・・・どうして・・・・!?・・・・麗子も・・・・陽子も・・・・一体、どうして・・・・!?)  
 
二人への詰問は、同時に、あまりにも惨めな自分を罵倒し、弾劾し、呪詛する言葉でもある。  
魂がちぎれ飛びそうなくらいの無力感、屈辱感、敗北感・・・・  
二人の表情の底にあるものを理解していたならば、感じる必要など無かった筈の深い絶望が、  
優子の心を鷲掴みにし、暗黒に染め上げていく。  
全ての光と熱が掻き消え、五感も思考も意識そのものも渾然一体となって無秩序に交じり合う中、  
尻穴を貫かれた麗子と尿道を捏ね回される陽子の苦悶に満ちたよがり声が頭の中一杯に響き渡っていた。  
全ての事象が混沌と混じり合った世界の中で、唯一、確かな感覚として認識出来るのは、  
もはや、背中越しに感じる荒い牡の息遣いと子宮の奥壁に叩き付けられる男根のリズムとなっていた。  
 
(・・・・もう・・・・ダメ・・・・なのかな・・・・?  
・・・・わたしたち・・・・このまま・・・・闇に堕ちていくしか・・・・ないのかな・・・・?)  
 
いつの間にか、あれほど抵抗を試みても揺らぎもしなかったクスリの縛鎖が弱まり始めていた。  
・・・・あるいは、優子の心を覆った深い闇の力が、魔薬の効き目をも上回ったためなのか・・・・?  
薬物によって抑え付けられていた筈の官能がゆっくりと息を吹き返していく。  
優子の変化を知ってか知らずか、ゼルの腰使いも荒々しさを増していき、  
絶望に打ちひしがれ、疲労の極に達した優子の心身を、これでもか、とばかりに責め苛む。  
 
――――傷付き弱りきった少女の心の中で、何かが乾いた音を立てて砕け散った。  
 
その瞬間、意識の中に沈殿していた夥しい量の性感が一斉に火を噴き、  
自らを燃料として、立て続けに大爆発を引き起こし、赤黒い炎で出来たエクスタシーの火柱を立ち昇らせる。  
太陽の中心に叩き落されたような灼熱感に全身の神経を焼き尽くされ優子は、  
汗で白くヌメった柔肌をガクガクと震わせながら、肺腑の奥から意味不明な絶叫を迸らせた。  
 
・・・・・・・・幾本かの視線が交錯する。  
 
最初に動いたのは、阿修羅だった。  
絶頂の余韻に浸る麗子の体を床に放り出し、猛ダッシュで優子の傍に駆けつける。  
――――その原因が何であれ、こんなにも早く薬の効果が途切れるとは全くの予想外で、  
速やかに次の手を講じねば、これまでの苦労が水泡に帰すおそれすら充分にある。  
 
(・・・・こうなったら、余計な事を喋られないうちに一旦正気を失わせるしかないわね・・・・。  
問題はどうやってそれを実現するか?って事なんだけど・・・・)  
 
反り返った胸を激しく上下させる優子に目を走らせ、素早く状況を確認する変態男。  
・・・・だが、一瞬の黙考の後、顔を上げたオカマ魔人は、余程の妙案が浮かんだらしく、  
解読不能とされていた古代の碑文を読み解くことに成功した考古学者の如き至福の笑みをこぼしていた。  
早速、思い付いたばかりのその姦計を実行する事にした阿修羅は、  
息も絶え絶えな有様の優子に向かって六本の人差し指を一斉に突き付けると、  
傍らで見ているダリスも斯くやと思わんばかりに芝居がかった口調で、言葉の鞭を振りかざした。  
 
「お嬢ちゃん、アンタは・・・・アンタだけは、麗子とも陽子とも違ってたんだねぇ!!  
麗子は「戦士」としての自分をグチャグチャにされて堕ちて行ったし、  
陽子は清純な娘としての自分を穢される事に耐え切れなかった・・・・でも、アンタはそのどっちでもないッ!!」  
 
弾指を受け、嘲弄と侮蔑の視線に晒されて低く呻く優子。  
汗まみれの柔肌はビクビクと震え、吐息は悩ましげに弾んでいる。  
阿修羅の位置からはくびれた脇腹と臀部のふくよかな曲線こそ良く把握出来るものの、  
その下にある、充血してトロトロに蕩けきっている筈の肉の果実を直接目にする事は難しい。  
だが、そこから滴る大量の愛液の発する、えも言われぬような馥郁たるフェロモンは、  
少女のその場所が、一時的な発情などではない、明確な自律意志により燃え立っている事を雄弁に物語っていた。  
 
「・・・・優子、アンタは、最初から調教の必要なんか無い、正真正銘のマゾ女だったんだ!!  
そう、辱められ、痛めつけられ、穢し尽くされる事に快感を覚える変態女、そいつがアンタの正体さッ!!」  
 
双眸に異様な気迫を漲らせた変態男は、悪鬼の如き形相で目の前の少女を糾弾し続ける。  
その狙いは、激しい口調と身振り、そして、その裏に隠された巧みな心理誘導により、  
優子の意識を、一時的に催眠状態に置き、自分は根っから奴隷根性の持ち主だと思い込ませる事。  
薬物の影響をかろうじて脱したばかりで未だ混乱しきった状態にある今ならば、簡単に引っかかるだろうし、  
何より、今この場で実行可能な手段の中では、ゼルやダリスに気取られるリスクが最も少ないやり方だろう。  
――――窮余の策にしては上出来のハズよね、と、内心、誇らしげな感情さえ抱きつつ、  
なおも、激しく、かつ、慎重に、阿修羅は優子の心を打ち据え続けるのだった。  
 
「・・・・ハハッ、理由さえ分かれば、何の事ァないじゃないかッ!?  
アンタは、アタシの調教に抵抗してた訳じゃあ無く、ただただ、責められる事に病みつきで、  
より激しく責められる事を求め続けてただけだったんだッ・・・・今の、こいつらのようにねッ!!」  
 
指弾の視線が、ぐるり、と部屋の中を一周する。  
拷問椅子の上で失禁を繰り返している陽子も、投げ出された床の上で自ら恥裂を捏ね回していた麗子も、  
一瞬、みぞおちの辺りに冷たいものを感じたものの、阿修羅は特に何かに気付いた様子も無く、  
すぐに、全身を覆った火照りに恍惚とした表情を浮かべている優子へと注意を戻した。  
 
「・・・・勿論、アンタ自身は、自分がそんな変態性癖の持ち主だなんて夢にも思った事ないんだろうけどねぇ。  
でも、アンタの意識の奥底には、間違いなく、そういう歪んだ欲望がとぐろを巻いていやがるんだよッ!!  
・・・・どうだいッ、反論出来るモンならしてみなよッ!!どスケベなお嬢ちゃんッッッ!!!! 」  
 
――――それは違う、自分はそんな人間ではない、という言葉が浮かんだものの、  
未だ痺れの残った舌と声帯では、反論する事は叶わなかった。  
・・・・否、阿修羅の卓越した言葉責めと、その中に巧妙に刷り込まれた心理的圧迫によって、  
再び昏迷の底へと引き戻された優子は、再び正常な判断が出来ない状態に陥る中、  
否定の意思を失い、代わりに、「そうなのかもしれない」という自己への猜疑を膨らませていく。  
 
(・・・・そうかもしれない・・・・いいえ、きっとそうなんだわ・・・・。  
・・・・いやらしい事されて・・・・汚い言葉を浴びて・・・・恥ずかしくて、怖くて・・・・嫌で嫌で堪らないのに・・・・、  
・・・・わたし・・・・わたし・・・・胸の奥で・・・・もっと虐めて、もっと酷い事して、って・・・・あぁああッ!!)  
 
少女の心の中で、先程と同じように、何かが砕け散る乾いた音が響き渡った。  
だが、今度のそれは、優子の意識に、めくるめくエクスタシーの嵐ではなく、  
風邪薬の量を間違って服用したときのようなドロリとした粘性を帯びた不快感をもたらし、  
感覚も感情も思考も一緒くたに飲み込んで、腐臭を放つ真っ暗な胃袋の中へと放り込んでいく。  
 
(・・・・わたし・・・・やっぱり・・・・ダメなんだわ・・・・。  
・・・・麗子・・・・陽子・・・・ごめんね・・・・ヒドイ事言ったりして・・・・。  
・・・・本当は・・・・わたしが・・・・一番・・・・最低・・・・なのよ・・・・わたし・・・・が・・・・)  
 
へなへなと力を失った優子の身体が、変態男の足元に崩れ落ちる。  
心の奥底で汗を拭ったオカマ魔人は、擬似的な催眠状態に陥って意識を無くした少女の頬に、  
ペッ、と唾を吐きかけると、成り行きを見守っていたゼルとダリスに、初めて視線を向け、破顔してみせた。  
束の間、訝しげに顔を見合わせる主従だったが、結局、その演技に気付く事は無かったらしく、  
阿修羅はようやく事無きを得て胸を撫で下ろす事が出来たのだった。  
 
――――――――だが・・・・。  
 
「・・・・それが、なんだっていうの・・・・?」  
 
・・・・突然、背後から突き刺さる女の声。  
研ぎ澄まされたナイフの刃先を思わせる冷酷な響きが、阿修羅の体温を一瞬にして吹き冷まし、  
ほっと一息ついたばかりの意識をしたたかに張り飛ばす。  
今度は一体何事だ、と、頭に血を上らせながら振り返ったオカマ魔人は、  
しかし、声の主を一目見た途端、ぎょっとして大きく両目を見開いた。  
 
「・・・・もし仮に、お前の考えが全部正しかったとしても、それでも、優子は優子よ。  
私も陽子も、優子を・・・・良い点も悪い点も全部ひっくるめた・・・・ありのままの優子を信じてるの。  
お前がどう言おうが、お前の言ってる事が正しかろうが間違っていようが、そんな事は関係ない。  
私達は優子を信じ続ける・・・・そして、優子を傷つける者は許さない・・・・!!」  
 
(バ、バカな・・・・)  
 
信じ難い光景に、我が目を疑う変態男。  
目の前にいたのは、つい先刻、阿修羅自身の一物で尻穴を穿ち抜かれ、淫欲に悶え狂っていた筈の麗子。  
だが、今はまるで別人のようで、そんな気配など微塵も感じさせない怜悧な微笑みを湛え、佇んでいる。  
漆黒の鎧の残骸がへばりつく痩躯には陵辱の痕が先程までと何ら変わらぬ惨状を呈し、  
汗と精液とでベトベトに汚れた赤い乱れ髪も、疲労の極に達して青白く憔悴しきった顔色も、  
外見上は何一つ変化していないように見えるのだが、  
その一方で、全身には異様なまでの精気が漲り、表情には力強い輝きが戻っている。  
 
(・・・・なっ、何なのよ、これはッ!?一体・・・・何がどうなってるっていうのッ!?)  
 
恐慌に陥りかけた阿修羅の前で薄く笑った麗子は、無言のまま右腕をかざした。  
途端に、少女の周囲の空気が、というより、空間そのものが、ミシッミシッと不気味に軋んで、  
頭上にかざされた白い手の平を中心に不可視の渦巻きを形成する。  
ほぼ同時に、三人の中では一番早く何が起きたかを悟ったダリスの口から、狼狽しきった声が迸った。  
 
「・・・・ま、まさか・・・・麗子、お主ッ・・・・操っているのか・・・・"ヴェカンタ"をッ!?  
・・・・そ、そんな、馬鹿な・・・・一体、いつの間に・・・・!?  
・・・・い、いや、そんな事はどうでも良い・・・・ッ!!今すぐ、馬鹿な真似は止めろッ!!  
・・・・そんな状態で"ヴェカンタ"を扱ったら・・・・お主とて、ただでは済まんぞッッ・・・・!!!!」  
 
「馬鹿なのはお前の方よ・・・・こんな状態になるまで気付かないなんて、迂闊にも程があるわ。  
ここがヴェカンタリアだったら、とっくにその首と胴が離れていたぐらいのね」  
 
真っ青な表情のヴェカンティの宦官を、チラリ、と一瞥した麗子が、煩わしそうに右手を振ると、  
集まっていた負のエネルギーが、不可視の拳となって小太りな体に掴みかかった。  
見えざる力によって摘み上げられたダリスは、空中で、二、三度、玩具のように振り回された後、  
部屋の隅へと弾き飛ばされ、隔壁に衝突して派手な音を立てて動かなくなる。  
まるでそれを合図にしたかの如く、天井の照明灯が、バァン、バァン、と連続して破裂し、  
室内を包んだ薄暗がりの中、麗子の体を禍々しく覆う、赤黒い瘴気の炎が浮かび上がった。  
 
「・・・・ま、まさか・・・・レ、レーコ・・・・本当に・・・・狂ってるのか・・・・!?  
・・・・いくら貴様が"ヴェカンタ"を扱えるとはいえ、一時にこれだけの量を用いれば・・・・うがぁああっ!!」  
 
衝撃のあまり、優子の膣から引き抜いた男根を元に戻す事すら忘れて、  
情けない格好でその場に立ち竦んでいたゼルもまた、側近の後を追い、吹き飛ばされていく。  
その頃には、すでに、空間のひずみは部屋の外にも漏れ広がり、  
ガルバ城のあちらこちらで、アシャンティの世界を律している諸々の法則が変容し始めていた。  
 
「・・・・狂ってる?フフ、そうかもしれないわね・・・・けれども、きっとアンタ達よりはマシな筈よ。  
"ヴェカンタ"を操るうちに、"ヴェカンタ"に魅入られ、逆に操られるようになっていったアンタ達よりは、ね」  
 
どこか自嘲気味な呟きを漏らしながら、浮遊城の上げる断末魔の悲鳴に耳を澄ませる麗子。  
あらゆる敵の攻撃を予想して、その全てに耐えうるよう建造された難攻不落の城塞も、  
構造材が分子レベルで変質し、運動エネルギーが物理法則を無視して暴走する事態までは想定外だった。  
まるで、城全体が、白昼夢の世界に引き摺り込まれていくかの如く、  
ガルバ城は、一秒毎に、より醜悪な、おぞましい存在へと、その姿を変化させていく。  
 
「・・・・うあッ・・・・ああああッ・・・・!!・・・・ア、アタシの・・・・アタシの体がぁッ・・・・!!」  
 
悲鳴の漏れた方を見ると、周囲を歪曲した空間によって包囲された阿修羅の身体が、  
プスプスと白い煙を噴き上げながら、得体の知れない有機物の塊へと変化を始めていた。  
アシャンティの物理法則が及ぶ範囲内では無敵だった筈の肉体も、  
まるで癌に冒された細胞が、他の正常な細胞を食い荒らしつつ、次々とこれを同化していくかのように、  
猛烈な勢いで別の物質へと置き換えられ、文字通りの化け物へと変成されていく。  
 
『次元・・・・移動・・・・エネルギー・・・・発動・・・・』  
『"ヴェカンタ"・・・・パワー・・・・全開・・・・』  
 
薄れゆく意識の中、耳慣れない合成音声の単語が、辛うじて残っていた鼓膜から入ってきたが、  
すでに大部分の機能を停止して腐り果てていた脳細胞では、その意味は判らなかった。  
やがて、その声も聞こえなくなると、阿修羅の体は本格的に崩れ始め、  
ブクブクという気味の悪い水音を幾度か響かせた後、  
最後は、骨も筋肉も内臓もまるで見分けがつかない、ブヨブヨの肉塊へと変わってしまった。  
 
――――――――ガッシャーンッッ!!!!  
 
・・・・まるで、製作者の偏執的な性格が乗り移ったかのように、  
この期に及んでも作動を停止しようとしないスケベ椅子を、渾身の力を込めて蹴り倒す麗子。  
割れ鐘のような大音響を発して、バラバラに砕け散った邪悪な拷問機械は、  
ショートした電線からバチバチと線香花火のような火花を発した後、ようやくその動きを止める。  
 
「・・・・ああ・・・・麗子・・・・夢じゃないのね・・・・あたし・・・・助かったのね・・・・」  
 
拘束を解かれ、意識を取り戻すなり、  
救出された安堵感に涙ぐみながら、麗子の体に抱きつこうとする陽子。  
・・・・だが、少女の予想に反して、その身体はやんわりと押し返され、  
続いて、噛んで含めるような、優しい、だが、有無を言わせぬ響きを帯びた言葉が発せられる。  
 
「・・・・時間が無いわ。陽子。すぐに優子を連れて、ここを脱出して。  
もう、「ヴァリスの剣」は扱えるわね?"ヴェカンタ"による封印は解除してるから、すぐに召喚して。  
ヴァニティ城に緊急連絡を送って、次元転送を要請するのよ・・・・分かったわね」  
 
「・・・・う、うん・・・・分かったわ・・・・やってみる。・・・・でも・・・・麗子はどうするの・・・・?」  
 
冷たい、という訳では無いものの、やや素っ気無い態度に違和感を覚え、怪訝そうに訊ね返す陽子。  
麗子は、慎重に言葉を選びながら、努めて冷静な口調で説明を加える。  
パートナーの真意が明らかになっていくにつれ、「レダの戦士」の違和感は不吉な予感へと変わっていき、  
やがて、それは、ある確信を伴った、戦慄へと昂じていった。  
 
他に方法が無かったとはいえ、"ヴェカンタ"の制御システムを一時的に乗っ取り、その上、暴走させた事。、  
ガルバ城をこのままにしておけば、アシャンティ全体に甚大な被害を及ぼしかねない事。  
それを避けるためには、城をアシャティの存在する時空から切り離し、別の次元に移動させるしかない事。  
次元移動システムの稼動を維持するため、誰かがこの場に留まらねばならない事・・・・。  
 
(・・・・う、うそ・・・・うそ・・・・なんでしょ・・・・麗子・・・・?  
・・・・イ、イヤよ・・・・麗子・・・・お願いだから・・・・うそだと言って・・・・!!)  
 
淡々と語られる麗子の説明に、表情を歪ませ、肩を震わせる陽子。  
だが、麗子自身が否定するまでもなく、次元移動システムの稼動開始を城内に知らせる合成音声の自動警報は、  
今聞かされている話が真実であると理解させるに充分な効果を持っていた。  
 
「・・・・い、いやよ・・・・麗子・・・・そんな事・・・・麗子と別れるだなんて・・・・そんな・・・・!!  
・・・・第一、麗子がいなくなったら・・・・誰がヴァルナ様を補佐するの・・・・!?  
ううん、ヴァルナ様だけじゃなく、他のみんなも・・・・優子だって・・・・麗子じゃないと、駄目なんだからッ!!」  
 
涙を浮かべ、ガクガクと全身を揺らしながら、さかんにかぶりを振る陽子。  
麗子から、これが今生の別れという訳ではなく、次の転生まで会えなくなるだけだ、と告げられても、  
別離を拒む感情の方が優って、取り乱した言葉が飛び出すのを止める事は出来なかった。  
麗子の言う通り、ヴァルナの力を借りれば、三度目の生を手にする事はおそらく可能なのだろうが、  
だが、たとえどんな正当な理由からでも、あるいは、それがどんなに短い期間に過ぎないとしても、  
最愛の少女が死地に赴こうとするのを黙って見送る事など、陽子には到底不可能な事だった。  
 
『次元・・・・座標軸・・・・確認・・・・誤差修正・・・・』  
 
・・・・遠くの区画から重々しい崩落音が響き渡り、前後して、地鳴りのような震動が床や壁を伝ってやってくる。  
浮遊城の外壁――――アシャンティの大地を睥睨するゼルの力の象徴たる居城部分――――が剥がれ落ち、  
仮面の下に隠された真の面貌、次元の狭間を移動する悪魔の乗騎としての姿が露わになっていく音である。  
その主たる二人の男・・・・部屋の隅に転がって泡を吹いていた筈のゼルとダリスは、  
何とか意識を取り戻すなり、恐慌に陥り意味不明な事を喚きながら、這うような足取りで逃げ出していった。  
咄嗟に追いかけようとした陽子だが、麗子の声は、やや苦笑まじりにそれを制止する。  
 
「・・・・放っとけばいいわ。たとえ逃げおおせたとしても、この城が無ければあの二人も終わりよ。  
少なくとも、アシャンティ以外の世界にとっての脅威は完全に排除できる。  
・・・・その後の事は、この世界に住む人々の判断に任せておけば良いの」  
 
出来の悪い生徒を指導する教師のような口調で、陽子を諭す麗子。  
その冷静さが無性に腹立たしく感じられて、赤いポニーテールをひるがえして向き直った「レダの戦士」は、  
食ってかかるような目で先輩戦士を睨みつけながら、大きな声を張り上げた。  
 
「・・・・だから、麗子ッ!!・・・・あたしには、こんな時どうしたら良いのかなんて、全然分かんないのよッ・・・・!!  
・・・・あたしには、麗子の代わりなんて、どだい無理な話なのッ・・・・!!・・・・だからッ・・・・ッ・・・・!!!!」  
 
――――行かないで、という末尾の言葉は、  
激昂した感情に誘発されて再び込み上がってきた嗚咽によって掻き消されてしまい、  
麗子の耳には届かなかったのだが、勿論、麗子は陽子の言いたかった事など、手に取るように理解していた。  
自暴自棄に近い響きを帯びた怒鳴り声から一転、激しくえずきながら泣きじゃくり始めた陽子を見つめつつ、  
しばらくの間、愛おしさと課せられた義務感との間で逡巡を続ける麗子  
・・・・だが、取り縋る陽子の腕を振り解いた少女は、半分自分に言い聞かせるように、ひどく低い声で言い放った。  
 
「・・・・ごめんね、陽子。辛い役目、押し付けちゃって。  
・・・・この次、会った時には、必ず埋め合わせするわ・・・・約束よ」  
 
「・・・・麗子・・・・っ・・・・」  
 
断続的に走り抜ける震動により、内装が剥がれて金属の地金が剥き出した床に突っ伏したまま、  
立ち上がる事はおろか、顔を上げる事すら出来ず、幼児のようにひたすら泣きじゃくる陽子。  
だが、麗子が、悲しげな表情を浮かべつつも、無言のままその場を後にしようとすると、  
心の中に残っていた最後の衝動に背中を押されて、声を嗄らしながら問いを発した。  
 
「・・・・このまま、行っちゃう気なの!?優子に・・・・何も言わずにっ・・・・!?」  
 
問い質すと言うよりは、詰るという言い方が正確に思えるような口調。  
声自体は弱々しいが、その奥に込められた想いは烈しく、そして、苦痛に満ちている。  
事実、陽子は、麗子を責め立てる以上に、自分自身に対する激しい怒りを覚えていた。  
 
・・・・この期に及んで、麗子を引き留めようとする、情けない自分。  
・・・・しかも、自力でそれが叶わないと知るや、優子を持ち出してまで目的を達しようとする、あさましい自分。  
・・・・結局、自分では何も出来ず、最後の最後には麗子や優子に頼ってしまう、無力な自分・・・・。  
 
――――心底からの悲しみ、怒り、絶望・・・・だが、それでも、陽子は自分を抑える事が出来なかった。  
 
「優子に引き止められたら、決断が鈍るから!?だから、このまま行っちゃうのねっ!!  
・・・・そうなんでしょっ!?ねぇっ!!麗子、答えなさいよッ!!」  
 
・・・・そう叫んだ瞬間、ピクン、と震え上がった麗子の背中に、陽子の心も跳ね上がる。  
 
時が、凍りついた。  
 
『・・・・次元・・・・座標軸・・・・混乱・・・・』  
 
スピーカーから流れる無機質な合成音声。  
次第に大きくなる足元の揺れ。  
大きな爆発音が轟き、天井から何かの破片が降り注ぐ。  
 
・・・・麗子がこちらを振り向く・・・・いたたまれない表情を浮かべながら。  
・・・・自分に走り寄り、抱きつき、号泣しながら詫びる。  
・・・・やっぱり、アシャンティなんてどうなってもいい・・・・一緒に逃げよう、と・・・・。  
 
(・・・・やめてッ、麗子ッ!!・・・・振り向かないでッ!!)  
 
――――――――咄嗟に、そう、思った。否、想ってしまった。  
 
再び、時が、流れ出す。  
 
「・・・・ずるいわよっ、麗子っ!!・・・・あたしには・・・・あたしにだけは・・・・こんな思いさせてっ・・・・!!  
あたしだけ・・・・こんなに、泣いたり、怒ったり・・・・まるで、馬鹿みたいじゃないのッ・・・・!!!!」  
 
目の前には、立ち止まりはしたものの、背中を向けたまま、声一つ漏らそうともしない麗子。  
唯一、グシャグシャに乱れた、赤いショートヘアの先が、微かに揺らいで見えはしたものの、  
陽子の泣き腫らした双眸の位置からは、俯いた頬を伝う涙の軌跡をとらえる事は出来なかった。  
 
泣き疲れた陽子の目の前に、白い光の粒子が集まり、次第に「剣」の形へと変じていく。  
半ばヤケクソじみた表情で、完全に物質化を終えていない「ヴァリスの剣」を掴み取った陽子は、  
もう一方の腕を伸ばして、未だ意識を失ったままの優子の身体を手繰り寄せると、  
麗子の背中を睨みつけ、あらん限りの気力を総動員して声を振り絞った。  
 
「いいわよッ、そんなに行きたいなら、何処へでも行っちゃえばいいんだわッ!!  
・・・・でも、これだけは覚えときなさいよッ!!  
今度会った時は、あたしの言う事、何でも聞くんだからねッ!!  
あたしが「ヴァリスの戦士」で麗子が「レダの戦士」・・・・毎日雑用にコキ使ってやるから、覚悟しといてよねッ!!」  
 
(・・・・陽子・・・・!!)  
 
「・・・・約束破ったら・・・・ただじゃ済まさないんだからッ・・・・!!!!」  
 
堪えきれずに振り返ろうとした瞬間、陽子の手の中で「ヴァリスの剣」が眩い閃光を発し、  
燦然たる輝きが二人の姿を呑み込んで、涙で曇った麗子の視界から奪い去る。  
溢れ返る光の中で、麗子の名を叫ぶ陽子の声だけが何度も何度も響き渡るが、姿は見えない。  
・・・・そして、唐突に、途切れた。  
 
(・・・・陽子・・・・)  
 
ゆっくりと目を開けた麗子の前には、すでに二人の姿は無い。  
仕方無く目を瞑り直した少女は、  
瞼の裏側に僅かに焼き付いた残像に向かって、小さな呟きを漏らした。  
 
(・・・・ありがとう・・・・陽子・・・・)  
 
 
 
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