ヴェカンティ。乳白色の濃霧が垂れ込める沼沢地。  
 
「・・・・っ・・・・うっ・・・・うう・・・・んっ・・・・うううっ・・・・」  
 
泥濘の上に蹲り、震え慄く肩を抱き締める少女――――優子。  
腰まで伸ばした蒼髪には不気味な色の触手生物の体液がこびりつき、死臭に似た腐敗臭を漂わせている。  
 
――――否。  
汚辱にまみれているのは頭髪だけでは無い。  
平素の柔和な表情からは想像も出来ないくらい、冷たく強張り青褪めている頬にも、  
血の気と共に微笑をも失って、半ば土気色に変色しかけている唇にも、  
饐えた匂いを帯びた粘液が飛び散り、おどろおどろしい隈取りを形作っていた。  
 
「・・・・うっ・・・・んうう・・・・くっ・・・・はぐっ・・・・ううう・・・・あぐぅっ・・・・・」  
 
弱々しい啜り泣きを漏らし続けるその姿には、<戦士>の凛々しさなど何処にも見当たらない。  
本来ならば、やや色白気味ではあるものの、十分に瑞々しく健康的な美を湛えている筈の乙女の柔肌は、  
穢れた粘汁に覆われて見る影も無く、まるで重度の栄養失調状態にあるかの如く血色が悪い。  
肘や肩、胸や腰といった部分を保護している、<ヴァリスの鎧>の防具ですら、  
黄金色の輝きを減じて、半ば色褪せてしまったかのような、くすんだ色合いへと変じていた。  
 
「・・・・ううう・・・・嫌・・・・もう嫌よッ・・・・こんな場所・・・・!!  
どうして・・・・どうして・・・・わたしが・・・・こんな事しなくちゃいけないのッ・・・・!!」  
 
普段なら決して口にしないような、自暴自棄な言葉を口にしながら、  
泣き腫らして真っ赤になった目元を両手で何度もこすり上げる優子。  
だが、その手にもまた、触手生物の体表から分泌した粘液がたっぷりと染み付いており、  
それでいくら擦ろうとも、饐えたような異臭を放つベトベト液を塗り重ねるだけに過ぎない。  
 
「・・・・どうして・・・・こんな事に・・・・」  
 
――――触手生物による蹂躙は、結局のところ、<ヴァリスの鎧>の守りに阻まれて未遂に終わっていた。  
<ヴァリスの剣>を取り落とし、恐怖と苦痛によって集中力を乱した結果、  
沼地を覆う霧の魔力への抵抗力が失われ、<戦士>としての力の殆どを引き出せなくなったのは事実だったが、  
だからと言って、所詮、暗黒界ならば何処にでも生息しているような下等生物では、いくら数を頼んだとしても、  
行動の自由を奪うのが精一杯で、肉体に危害を与える事など到底おぼつかなかったのである。  
 
・・・・だが、肉体的には無傷でも、精神の方はそうはいかなかった。  
三界に冠絶する<ヴァリスの戦士>といえども、  
その魂の祖形は、あくまで人間・・・・それも、未だ思春期の盛りにある未成熟な存在に過ぎない。  
無数の異生物が全身に絡み付き、ビチビチのたくりながら肌の上を行き来する悪夢のような体験を味わってなお、  
ココロの安定を保っていられる程のタフネスさを持ち合わせている訳では決して無かった。  
 
「・・・・ううっ・・・・ぐっ・・・・かはっ・・・・くぅっ・・・・んううう・・・・」  
 
ひっく、ひっく、と、震えながらしゃくり上げるたびに、  
おぞましい粘液の発する刺激臭が気道を激しく責め苛み、嘔吐感を催させる。  
すでに胃の中にある物は全てもどしてしまっているため、実際に吐く訳では無かったが、  
行き場を失った不快な感触はいつまでも体内に滞留し続け、呼吸すらまともに行えなかった。  
 
「・・・・ううう・・・・もう・・・・嫌・・・・こんな所・・・・もう・・・・居たくない・・・・」  
 
俗に言う"体育座り"の格好で、地面に座り込んだまま、  
生乾きの泥に覆われて見る影も無くなった<ヴァリスの剣>をぼんやりと眺める優子。  
愛剣の刀身に付着しているのは泥だけで、触手生物の血肉は一片たりとも混じっていない  
・・・・その事実が、彼女の思考をより一層自虐的な方向へと急き立てる。  
 
本来ならば、狼藉を許すどころか、おそらくはほとんど苦戦する事すらなく、一掃する事が出来た筈の存在に、  
己れの肉体をここまで好き放題に弄ばれてしまった、という事実、  
そして、助かったのは全て<ヴァリスの鎧>のお陰であり、自分は何一つしていない、という事実の前に、  
<戦士>としてのプライドは深く傷付き、自分自身への深刻な疑念が湧き上がってくる。  
その痛みは、対象となった者の精神に干渉してその感情を乱し続ける霧の効能と相まって、  
少女の心を深々と貫き、抉り、切り刻んで、途方も無い苦しみを生み出していた。  
もし仮に、襲撃者たちの狙いが、彼女の戦意を喪失させ、この地から退散させる事にあったならば、  
すでにその目的の半ば以上は達成されているといっても過言では無かっただろう。  
 
(・・・・うっうっ・・・・分かってるわよ・・・・別にあいつらが強い訳じゃ無いって事ぐらい・・・・。  
・・・・この霧のせいで・・・・わたしの心が弱くなってる・・・・そんな事ぐらい分かってる・・・・。  
・・・・でも・・・・一体、どうすればいいの!?ここにいる限り・・・・霧からは逃れられないのよ・・・・!!)  
 
千々に乱れた少女の心に次々と流れ込んでくる、悔しさ、情けなさ、苛立ち、不安・・・・  
不可思議な霧の魔力によって増幅されたそれらの想いは、  
圧倒的な力で、彼女の意識を蹂躙し、押し潰し、窒息死させようと試みている。  
どす黒く濁った想念を頭の中から追い出そうとする試みも繰り返されてはいたが、  
その度に、未だ身体のあちこちに残る、凄惨な触手陵辱の名残りが邪魔をして、  
反対に、己れの惨めな敗北の有様を再確認させられるだけの結果に終わってしまう。  
 
――――押し寄せてくる触手の群れ。  
――――全身にぶちまけられるヌルヌルとした粘液。  
――――恐怖と嫌悪とで麻痺してしまい、完全に抵抗を放棄してしまった心と肉体。  
 
(・・・・やっぱり・・・・無理よ・・・・わたしには出来っこないわ・・・・。  
・・・・だって・・・・だって・・・・わたし・・・・結局、一人じゃ何も出来ない人間なんだもの・・・・。  
・・・・麗子やヴァルナさまがいなければ・・・・わたしなんて・・・・)  
 
――――わたし・・・・本当は・・・・<戦士>になんて・・・・全然、向いてないのよ・・・・!!  
 
・・・・それは、彼女が異世界にいる間、心の片隅でひっそりと息づいている臆病な気持ち。  
普段はまず意識する事無く、たとえ何かの拍子に、心理の水面にその影が写りこむ事があったとしても、  
たちまちのうちに否定され打ち消されてしまうような、曖昧な存在に過ぎなかった筈だった。  
だが、<戦士>としてあるまじき醜態を晒し、己れの不甲斐無さに涙するしかない今、  
それは少女の胸の中一杯に膨らみ上がり、これまでずっと抑圧され無視され続けてきた雪辱を晴らすべく、  
他のどんな感情よりも猛烈に、傷付き疲れ果てた心を攻撃し、責め苛んでいる。  
 
(・・・・そうよ・・・・だから・・・・あの時だって・・・・!!  
・・・・ヴァリアさまを失うのが怖くて・・・・辛くて・・・・だから、あんな事を・・・・!!)  
 
・・・・嗚咽の響きが一段と大きくなり、全身の震えが一層激しくなる。  
――――何重にも重ねられた封印を押し破って、優子の脳裏へと湧き出してきたのは、  
先のメガスとの戦いの中で起こった、最低最悪の出来事の情景・・・・。  
本当の意味での<戦士>になり切れ無い、自分の弱さが招いた、おぞましい原罪の記憶だった。  
 
『・・・・だめよ、優子!・・・・戦いを放棄してはだめ・・・・!!』  
 
――――血を吐くような叫び声が耳朶の奥に突き刺さる。  
何か途方も無く巨大な怪物の胎内を思わせる、陰惨な色彩で覆われた要塞・・・・メガス城。  
その最上階、有機物とも無機物ともつかない不気味な調度によって飾り立てられた玉座の間で、  
優子は、"残忍王"の二つ名を持つヴェカンティの支配者と対峙している。  
 
・・・・否、今まさに、その対峙を終えようとしていた。  
 
『・・・・えぇ、メガス!・・・・その通りよ!  
さぁ、わたしは降伏するわ!ヴァリア様を返して・・・・!!』  
 
――――ガシャン!!少女の手から離れた<ヴァリスの剣>が、メガスの足元に投げ落とされると、  
玉座の上からそれを見下ろす、濁った血の色をした義眼が鈍い光を放ち、  
口元には、勝利への確信と敗者への侮蔑によって、引き攣ったような笑みが浮かぶ。  
対する<ヴァリスの戦士>の表情は、  
宿敵を前に膝を屈する事への怒りと、人質に取られたヴァリアを想う心との間で引き裂かれて、  
傍目にも明らかなぐらい揺れ動き、惑乱しきっていた。  
 
『・・・・よし、いい娘だ。  
・・・・では、ボディ・スーツを外してもらおう・・・・』  
『えっ・・・・?』  
 
少し間を置いて要求を告げるメガス。  
その内容に思わず絶句する優子の姿を眺めながら、  
玉座の主は、黄色く汚れた犬歯を剥き出しにして好色な笑みを浮かべ、  
・・・・そして、足元に引き据えられたヴァニティの女王を、意味ありげに一瞥してみせる。  
"ヴェカンタ砲"の威力の前に為す術も無く転移を封じられ、虜囚の身となったヴァリアは、  
捕えられてからさほど時間は経っていないにも関わらず、  
その消耗ぶりは尋常ではなく、殆ど別人のようにやつれ果てていた。  
 
『・・・・優子っ・・・・』  
 
身体を起こしているだけでも辛いらしく、擦れた呟きの中には力強さなど欠片も見当たらなかった。  
手酷い扱いは、"ヴェカンタ砲"の暴走と、それに続く混乱の中、  
厳重に保管されていた筈の<ファンタズム・ジュエリー>が忽然と姿を消したのが原因である。  
怒りを爆発させた残忍王はその矛先をヴァリアへと向け、  
宝玉の在り処を吐かせるべく、昼夜を分かたず過酷な拷問と陵辱を繰り返したのだが、  
ヴェカンティの女王は、自らの生命と引き換えになろうとも、何とかしてもう一度優子に会い、  
<ジュエリー>の行方とその力を引き出す術を伝えねばならぬ、という一心で、  
頑として自白を拒み続け、あらゆる苦痛と恥辱に耐え抜いてきたのだった。  
 
――――だが、皮肉な事に、彼女が、最も肝腎なタイミングで発した一言は、  
優子に誤ったシグナルを与え、今や最悪の事態を招こうとしていたのである。  
 
『・・・・クククッ、どうした?恥じらっておるのか?  
フッ、戦士に恥じらいなど無用・・・・外してもらおうかッ・・・・!!』  
 
敗北者に対する蔑みに加え、どす黒い欲情まで漲らせた嘲りの言葉。  
ぐっ、と怒りを堪えつつ、残忍王を睨みつける優子だったが、  
思わせぶりに動いた彼の片手が、足元に蹲るヴァリアのか細い首筋を掴もうとすると、  
たちまちその顔は恐怖で真っ青になり、反抗的な態度は四散してしまった。  
 
(・・・・ダメ・・・・抵抗すれば・・・・ヴァリアさまが・・・・今は・・・・従うしか・・・・)  
 
小刻みな震えに包まれた、ほっそりとした指先が、  
こちらもまた、激しい動揺を隠せずにいる左肩へと伸びる。  
肩口の曲線にぴったりとフィットしている黄金色の防具の表面に、軽く触れると、  
少女の細い肩先から外れた肩当てがしなやかな身体のラインをゆっくりと滑り落ち、  
石床にぶつかって、先刻の<ヴァリスの剣>同様、乾ききった金属音を立てた。  
・・・・やや間を置いて、右の肩当てがその後に続き、  
下卑た笑いを浮かべるメガスの見守る中、左右の肘当てもまた、乙女の細腕から引き剥がされていく。  
 
『・・・・待て。ブーツは履いたままで構わん。  
その、腰に巻いた布切れもだ・・・・フフフ、その方が風情があるからなァ・・・・』  
『・・・・くッ・・・・うううッ・・・・!!』  
 
愉快そうなメガスの声・・・・自尊心を踏み躙られた優子の顔が朱く染まる。  
だが、ヴァリアを人質に取られている限り、一切の抵抗は不可能であり、  
どんなに屈辱的な命令であろうと、黙って服従する以外に選択肢は存在しない。  
そして、目の前の玉座に腰を下ろした暗黒界の支配者には、  
武装解除という名のストリップ・ショーを中断する気など微塵も無かった。  
 
(・・・・ああッ・・・・私は・・・・なんて事をッ・・・・!!  
・・・・不用意な一言で・・・・優子を・・・・追い詰めて・・・・こんな事をッ・・・・!!)  
 
悲嘆に暮れるヴァリアの目の前で、  
彼女の<戦士>は、身に着けた防具を、一つ、また一つ、と、脱ぎ捨てていく。  
首元に巻いた深紅のスカーフ、繊細な象嵌の施された腰のベルト・・・・。  
乾いた金属音が石床の上に響き渡るたび、単なる屈辱感や敗北感などという言葉では言い尽くせない、  
心底からの絶望、諦め、無力感が綯い交ぜとなった負の感情が、少女の心を静かに侵食する。  
魂を貫くその痛みを、せめて眼前の男にだけは気取られまい、と必死に平静を装おうとするものの、  
欲情にぎらつく邪悪な眼差しが、次第に剥き出しになっていく乙女の柔肌を突き刺すたびに、  
身体は否応無く反応を示し、心臓は動悸を増して、内心の動揺を隠す事は困難になっていくのだった。  
 
『・・・・外した・・・・わ・・・・』  
 
最後に残った黄金の胸当てを取り去り、足元の石床に置いた時点で、  
すでに優子の気力は底を尽き、忍耐力も自制心も擦り切れてしまっていた。  
玉座の上から容赦なく浴びせられる欲望の目線に堪え切れず、  
今にも泣き出しそうな表情で胸元を覆い隠すその姿は、  
もはや、<ヴァリスの戦士>のそれではなく、無力な少女のそれに過ぎない。  
 
(・・・・あああ・・・・み、見られてる・・・・わたしの・・・・ハダカ・・・・見られてる・・・・)  
 
(異形の怪物とはいえ)劣情を露わにした異性の前に一糸纏わぬ上半身を曝け出している、という事実が、  
思春期の最っ只中にある乙女にとって、忍耐可能なものであろう筈が無い。  
いやらしく頬を緩ませるメガスの顔を正視している事に堪えかねて、  
蒼髪の少女は、ぎゅっ、と下唇を噛み締めると、ついに視線を床へと落としてしまった。  
途端に、目元に溜まっていた大粒の涙が、銀色の軌跡を描きつつ頬を伝い、  
黄金色の護りを喪失した胸の脹らみに向かって勢い良く流れ落ち始める。  
 
(・・・・い、いや・・・・見ないで・・・・あああ・・・・お願い・・・・見ちゃイヤぁ・・・・)  
 
優子の双乳は、年齢相応に、まだ成熟前の青い果実の段階に過ぎないが、  
だからと言って、二本の細腕だけでその稜線を覆い隠す事が出来るほど小粒という訳では決して無かった。  
最も恥ずかしく、他人の目に触れさせたくない部分、すなわち、淡いピンク色に色付いた乳輪だけは、  
どうにか手の平の内側に収める事が出来るものの、  
震える指先は、お椀を伏せたような形状の美しく滑らかな乳房全体を隠し切るには頼りなさ過ぎる。  
 
『・・・・フッフッフッ、なかなか美しい眺めだ。これでお前はただの小娘同然・・・・』  
 
ニィィッ、と口の端をいやらしく歪めつつ、暗黒界の帝王は、  
目の前の美しい戦利品を、頭の天辺から爪先に至るまで、どんな些細な特徴も見逃すまい、と念入りに吟味する。  
魔道と工学とが、すこぶる奇妙な形で融合した彼の肉体の中でもとりわけ特徴的な、  
濁った血の色をした高感度レンズの嵌め込まれた右目が、微かな駆動音と共に被写体を執拗に追跡し、  
その隣では、魔道によって視力を強化された左目が、邪悪な歓喜を浮べて輝いていた。  
 
『・・・・フフフ、どうだ、優子、戦いに敗れ、勝者の前に膝をつく気分は・・・・!?  
負けた己が情けないか?無力な自分が歯痒いか?・・・・それとも、このメガスが憎くて憎くて堪らんかッ!?』  
 
傲然と胸を反らしながら、玉座から立ち上がる残忍王。  
長く伸びた黒い影が、蒼髪の少女の細身の体をすっぽりと包み込む中、  
不吉な赤い輝きを帯びた両目が、彼女の心を奥底まで見透かすかの如く、油断の無い光を放っている。  
 
(・・・・どうやら、こやつ自身は、<ファンタズム・ジュエリー>の在り処については何も知らんと見える。  
だが、ヴァリアに口を割らせる役には立つかもしれん・・・・とりあえずは生かしておくとするか・・・・)  
 
ヴェカンティの帝王は、好色なニヤニヤ笑いの裏側で冷酷な計算を働かせる。  
先王ログレスの遺臣であったガイアスは、息を引き取る直前、優子の前で彼を殺人機械と呼んだが、  
どうやら、その評価は、正鵠を射ていたようである。  
その肉体が魔道と科学各々の粋を結集した呪われたパーツで埋め尽くされているのと同様、  
メガスの内面にも、欲望と打算、狂熱と怜悧、支配欲と破壊欲、等々、相反する感情や欲求が常に混在し、  
自我の覇権を巡って果てしない争奪戦を繰り広げており、  
彼の知性は、その時々の状況に応じて、  
それらの中で最も有用なものを、恐ろしく器用に、かつ、冷徹に、選び出す事が出来るのだった。  
 
(・・・・ヴァリアの前で、この小娘を嬲り者にしてくれる。  
自分の<戦士>が死にも勝る恥辱と苦痛によがり泣く姿を見せ付ければ、  
さすがにあの女も耐え切れなくなるやもしれん・・・・ククク、最強の<手駒>を失う恐怖になァ・・・・)  
 
決断を下した残忍王は、玉座の脇に蹲るもう一人の女囚に向かって、チラリ、と、冷やかな一瞥を投げかける。  
度重なる拷問や精神走査にも頑として沈黙を続けたばかりか、  
メガス自身による情け容赦ない陵辱をもってしても、真実を吐かせる事が出来ずにいる不快極まる女は、  
しかし、目の前で次々に起きた一連の出来事にはショックを隠せないらしく、  
血の気の無い表情で震え慄いており、ある程度の期待は持てそうな気配だった。  
 
『・・・・フンッ、どうやら図星だったようだな。  
クックックッ、まあよい、そう簡単に従順になられては、こちらとて興冷めなだけだ。  
・・・・そうだ、良い考えを思いついたぞ・・・・どうだ、優子よ、私と賭けをしてみる気はないか?』  
 
『・・・・賭け?一体、何を賭けるというの・・・・?』  
 
一旦、思索を脇に置いたヴェカンティの支配者は、目の前の少女に向き直ると、  
内心の打算などおくびにも出さず、指先を、パチンッ、と鳴らす。  
そして、唐突な申し入れの意図を測りかねて、怪訝そうに聞き返してくる優子に向かい、  
妙に上機嫌な口調を装いつつ、あたかも今思いついたばかりのアイデアのように、<賭け>の内容を披露した。  
 
『・・・・なぁに、簡単な事だ。  
これから、私が、貴様に3つの事を命じる。  
もしも、それら全てをやり遂げ、なおかつ、最後まで正気を保っていられたならば、  
・・・・そうだな・・・・ヴァリアを解放してやろう・・・・<ヴァリスの剣>と共になァ』  
 
『・・・・えっ!?ほ、本当なの・・・・!?本当に、ヴァリアさまを・・・・』  
 
メガスの言葉に、反射的に、パッ、と、顔色を明るくする優子。  
・・・・だが、そこへ、ほとんど間髪を入れず、ヴァリアの声が割って入る。  
 
『優子・・・・騙されてはなりません。どのみち、私はもう助かりません。  
あなたには大切な使命があります・・・・なによりも世界に平和を取り戻すことを第一に考えなさい。  
私のことはかまわずに、さぁ、今すぐ<剣>をとり、メガスと戦うのです!!』  
 
声を振り絞って、目の前の<戦士>に訴えかける夢幻界の女王。  
弱りきった身体に残った最後の力を込めた、瞳孔の無い双眸が、カッ、と見開かれると、  
その気迫に打たれたのか、束の間、玉座の間全体が、重い沈黙の帳によって覆い尽くされる。   
 
――――だが、力を失った幻想王女に可能だったのはそこまでだった。  
 
『・・・・ええいッ、ヴァリアよ、いい加減善人面をするのはやめにしたらどうだッ!?  
優子がそんな言葉に耳を貸す訳が無いのは、先刻承知の事だろうがッ!?』  
 
残忍王の口から発せられる、苛烈な罵倒、そして、容赦ない足蹴り。  
ううっ、と小さく呻いて押し黙ってしまった、夢幻界の女王の胸倉を掴んだ暗黒界の支配者は、  
怒りの収まらぬ表情で、衰弱したその身体を強引に引き摺り上げ、  
瞳孔の無い両目を睨み据えながら、続けざまに言葉の鞭を打ち鳴らす。  
 
『・・・・分かっておるのだぞ、ヴァリアよ。  
貴様と<ヴァリスの剣>さえ無事であれば、たとえこのまま優子が戻らずとも、  
新たな<戦士>を召喚して、この私と戦う事が出来るのだろうがッ!?  
フンッ、このメガスを見くびるなよ・・・・貴様の本心がそこにある事ぐらい、とっくにお見通しよ。  
聞き入れる筈も無いと知りながら、敢えて<戦士>として戦う事を求めるのもそれが狙いだろうッ!!  
・・・・どうだ、ヴァリア!!図星だろうがッッッ!!」  
 
『・・・・もう、やめてッ・・・・!!!!』  
 
広間に響き渡る、苦悶の叫び。  
悲しみで掠れかかった声の主は・・・・優子。  
悲嘆のあまり、裸身を隠す事すら忘れ、喉から声を絞り出す。  
 
『・・・・もう・・・・やめて・・・・ヴァリアさまを・・・・傷付けるのは・・・・!!  
メガス・・・・貴方の要求は・・・・呑むわッ・・・・!!  
・・・・わたしは・・・・わたしは・・・・どうなってもいい・・・・だから・・・・ヴァリアさまは自由にしてッ!!』  
 
ぐったりと生気の無い幻想王女の体を振り捨て、背後を振り返る残忍王。  
何処まで愚かな娘だ、と言わんばかりの侮蔑の視線に相対するのは、大粒の涙で濡れそぼった気弱な瞳・・・・  
だが、少女は、顔をクシャクシャにし、言葉を詰まらせながらも、ヴァリアへの揺るがぬ信頼を口にし続ける。  
それを眺めた彼はやや不快そうに渋面を作り・・・・そして、その裏ではしたたかな笑みを浮かべていた。  
 
『・・・・フム、まあ、良かろう。ならば、<賭け>を始めるとしようか。  
まず最初は・・・・そうだな、その腰のヒラヒラを持ち上げて、中がどうなっているか、見せて貰おう  
・・・・クックックッ、勿論、両手を使ってなァ・・・・』  
 
『・・・・くぅッ・・・・!!』  
 
メガスの発する淫猥な要求に、優子の目元が、かぁっ、と赤らみ、  
それまでの悲嘆の涙に代わって、羞恥心に起因する恥辱の涙が涙腺を脹らませる。  
 
『・・・・どうした、<ヴァリスの戦士>・・・・?先程、どんな要求にも従う、と取り縋ったのは戯れ言か・・・・?  
・・・・まぁ・・・・それならそれで、一向に構わんぞ・・・・。  
・・・・お前が約束を守らんなら、この女に代わりを努めさせるだけだからなァ・・・・』  
 
低く喉を鳴らしながら、欲情にギラつく目でヴァリアを見下ろす残忍王。  
それが単なる脅しではない事は、  
その部分だけ、重厚な鎧を押し上げるようにして盛り上がっている股間の様子を見れば明らかである。  
元より、その名の示す通り、心優しき少女にとっては、  
三界で最も敬愛している人物が、それも、瀕死の重傷を負ってもはや満足に動く事も叶わない状態のまま、  
自分の目の前でおぞましい獣欲の贄となる事など、耐えられよう筈も無かった。  
 
『・・・・うッ・・・・くッ・・・・うううッ・・・・』  
 
きつく噛み締めた唇の隙間から漏れる、弱々しい喘ぎ。  
一本、また一本、と、形の良い乳房を離れていった震える手指が、  
ベルトを取り払われ、いまや頼りなげな布切れを残すだけのスカートへと伸びていく。  
 
覆い隠されていた形の良い脹らみが、少しずつ山容を露わにしていくにつれ、  
白桃色をした柔肌が、ザワザワザワッ、と、騒がしく粟立ち、  
胸の鼓動もまた、トクン、トクン、と、次第にその間隔を狭めていった。  
その一点を意識すまい、とすればするほどに、  
胸丘の頂にある桜色の突起は敏感さを増していき、硬く、熱く、しこりを帯びていく。  
 
『フフフ、乳首が勃ってきたぞ・・・・おっと、今度はピクピクし始めた。  
なかなかに良い眺めだ・・・・のう、ヴァリアよ、お前も、目を逸らさずに、よぉく見てみるがいい・・・・』  
 
眼前で繰り広げられる痴態に舐めるような眼差しを這わせていた残忍王は、  
いよいよ鼻息も荒くなり、口調にも声音にも煮え滾る欲情がわななきとなって現れ始めていた。  
殊更にヴァリアの名を強調してみせるのは、  
ともすれば、羞恥心が昂じて動きが鈍りがちとなる優子に、人質の存在を再確認させるためでもあったが、  
同時に、一部始終をヴァリアが目にしている事をアピールし、更なる恥辱を呼び起こすためでもある。  
実際、メガスがヴァリアの名を口にするたびに、  
蒼髪の少女は、己のあさましい姿に涙を浮かべつつ、激しい自己嫌悪にとらわれ、  
まるで高圧電線に触れでもしたかように、その細い身体を、ビクビクッ、と大きく震え上がらせるのだった。  
 
『・・・・い・・・・いやぁ・・・・お願い・・・・そ、そんな事・・・・言わないで・・・・くうううっ・・・・!!』  
 
憎むべき仇敵が相手だというのに、口をついて出る言葉はどんどん哀願の調べを帯びていく。  
だが、屈辱感によって轢き潰されそうなその気持ちとは裏腹に、  
左右の胸丘の上では、脂ぎった視線を容赦なく浴びせられて、危険なピンク色に色付いた乳首が、  
早くも、プルン、プルン、と、その身を卑猥にくねらせ、淫蕩なダンスに打ち興じていた。  
その事を自覚出来るだけの理性はまだ残っていたのだが、  
それがために却って、彼女の心の傷口は、大きく、深いものとならざるを得ない。  
 
『・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・はぁッ・・・・だ、だめ・・・・はずかしい・・・・もう・・・・見ないで・・・・ううう・・・・』  
 
――――だが、哀れな少女の苦しみはそれだけにはとどまらない。  
胸の脹らみを露わにするのと並行して、  
腰に巻き付けている丈の短い白いスカートを持ち上げて、  
隠されたその中身を曝け出す、というもう一つの苦行が待ち構えていた。  
こちらは乳房とは異なり、乙女の柔肌それ自体を白日の下に晒す訳ではないものの、  
何と言っても、下半身――――その中でも一番見られたくない場所――――に関わる話である。  
優子にとって、その行為は、もはや女性としての羞恥感情云々という生易しいものではなく、  
人間としての尊厳そのものを踏み躙るものとさえ感じられるレベルのものだった。  
 
『ムフフフ、どうした・・・・?  
もっと上まで持ち上げて貰わん事には、中がどうなっているか、さっぱり分からんではないか?  
・・・・それとも、もう<賭け>は負けだ、と認める訳なのか、んん〜〜!?』  
 
メガスの嘲りに、思わず、意識が何処かへ弾け飛んでいきそうになる優子だったが、  
最後の一言が効いたのか、両腕に残った力を振り絞り、何とかスカートを上まで引っ張り上げる事には成功する。  
だが、暗黒界の帝王は、その二つ名に恥じない残酷さを発揮して、  
囚われの<戦士>の心を弄び、痛めつけるべく、  
彼女のすぐそばまで近付いていくと、あろうことか、石床の上に、どっか、と腰を下ろした。  
 
『クックックッ、ここなら良く見えるぞ・・・・おおッ、丸見えだァ・・・・!!。  
・・・・おっと、力を抜くんじゃない・・・・このまま、良い、と言うまでじっとしているんだ!!』  
 
そう、冷酷に言い放った残忍王の目線は、  
ブルブルと震える少女の指先が摘み上げるスカートの端とその奥に見える純白の薄布を、  
丁度、真正面、それも、ほぼ水平の高さに捉える絶好の場所に占位していた。  
口元から漏れる熱い吐息が掛かりそうな程の近距離から、  
大きさも形状も異なる、だが、欲情の輝きに満ちている点は全く同じ、紅い双眸にまじまじと見つめられて、  
優子の顔面は、サアアッ、と血の気を失い、頭の中は真っ白に変じていった。  
 
(・・・・あああ・・・・見られてる・・・・わたしの・・・・はずかしい所・・・・全部・・・・見られてる・・・・)  
 
熱く紅潮した頬を伝う滂沱の涙。  
いくら下着越しにとはいえ、宿敵の目の前で、  
自分の肉体の中で最も他人の目に触れさせたくない場所を晒しているという事実はあまりにも重く、  
羞恥心と敗北感とで頭が変になりそうになる。  
 
――――それは、優子の意識の奥底に眠る、ある性癖を目覚めさせるに充分な刺激だった。  
 
(・・・・ッ・・・・な、なにッ・・・・この感じは・・・・!?)  
 
ヴァリアを人質に取られて已む無くとはいえ、  
あられもない姿を晒し、屈辱的なポーズを強要されているうちに、いつしか抵抗感は薄らいでいき、  
代わりに、得体の知れない心地よさが少女の全身に行き渡り始めていた。  
厚さ1ミリにも満たない、薄手のショーツの下では、  
ぴっちりと閉じ合わさっていた筈の肉花弁が少しずつ熱を帯びていき、  
内側からの圧力によって、ヒクンヒクンと妖しく蠢きながら、解きほぐされていく・・・・。  
 
『・・・・んんッ?おや、これは・・・・何とした事、純白の下穿きの真ん中に何やら染みのようなものがッ!?  
優子、これは一体どうしたというのだ・・・・よもや、このメガスに見られて感じている訳ではあるまいなァ!?』  
 
目ざとくその変化に気付いたメガスは、  
まるで速射砲のような勢いで聞くに堪えない淫語を連発し、  
清純な、――――否、未だ清純を保っていると必死に思い込もうとしていた――――乙女の心を嬲り回す。  
そんな筈はない、馬鹿な事を言わないで、と泣きながら叫び返そうとした蒼髪の少女だったが、  
開いた口から真っ先に飛び出してきたのは、抗議の言葉ではなく、甘く蕩けた喘ぎ声だった。  
 
(・・・・や、やだッ!!・・・・わたしったら・・・・何て声をッ・・・・!?  
・・・・ち、違う・・・・違うわッ・・・・ゼッタイに・・・・感じてなんかないッ・・・・!!  
・・・・こんな事させられて・・・・気持ち良くなるなんて・・・・そんな事、絶対にッ・・・・!!)  
 
激しいショックを受け、狂ったようにかぶりを振りながら、  
自らの心理の表層にまで出没し始めたマゾヒスティックな衝動を打ち消しにかかる優子。  
そんな忌まわしい性癖が自分の中に潜んでいるなどとは、  
今まで考えた事さえ無かっただけに、余計に衝撃は大きく、激烈で、  
どう足掻こうとも、自分自身への深い疑心を生じずにはいられない。  
打ち消しても、打ち消しても、次から次に湧き出してくる自己不信は、  
傷付き消耗しきった彼女の心を完全に打ちのめし、絶望の淵へと突き落とすのに充分なものだった。  
 
『ハッハッハッ、どうした、優子、顔が赤いぞ・・・・!?  
んんッ!?なんとなんと・・・・下穿きの染みがどんどん広がっているではないか・・・・!!  
詰られているのに濡れてしまうとは、さては変態の素質を秘めているようだなァ・・・・!!!!』  
 
『・・・・い・・・・いやぁっ・・・・もう・・・・言わないで・・・・』  
 
かろうじて搾り出す事の出来た反論は、蚊の鳴くようなか細いものでしかない。  
執拗に繰り返される羞恥責めに抗しきれなくなった少女の心身は、  
あろうことか、背筋がゾクゾクと粟立っていくような倒錯的な興奮さえ覚えるようになっていた。  
頭の中はすでに真っ白な状況で、目の前の淫語魔王から発せられた卑猥な言葉が、  
まるで壊れかけのテープレコーダーの如く、延々と再生され続けている。  
 
あと数分、その状態が続いたならば、  
彼女の理性は完全に屈服し、自己否定と歪んだ肉欲の虜と堕していたに相違ない。  
――――だが、ヴェカンティの支配者は、  
押し寄せる快楽に抗いながらも流されていくのを止められない<戦士>の姿には、頗る満足を覚えつつも、  
敢えて、この状況を継続する事は望まないのだった。  
 
『・・・・ようし、それまでだ。  
・・・・いささか甘いとは思うが、第一の課題には合格点をやろう』  
 
――――元より、これはその場の座興などではなく、  
ヴァリアから消えたジュエリーの所在を訊き出すための策であり、  
その目的を達しない限り、勝とうが負けようが、結果自体には何の意味も無い。  
 
(・・・・あッ・・・・はぁッ・・・・ん・・・・ふはぁああッ・・・・)  
 
だが、そんな思惑など知る由も無い優子の身体は、  
残忍王の言葉に、緊張の糸が切れたのか、グラリ、と大きく傾ぎ、そのまま床の上へと沈み込む。  
思わず失笑を漏らしたメガスは、だが、すぐに表情を改めると、  
足元に蹲るヴァリアを横目で眺めやりながら、少女の頭上に怒声を落とした。  
 
『馬鹿者ッ、誰が休んで良いと言ったッ!?  
賭けはまだ始まったばかり、課題はあと二つも残っているのだぞッ!!  
 
『・・・・・さあ、次の命令だ、心して聞けッ・・・・!!  
今から"これ"に奉仕し、そして、満足させろ・・・・  
ただし、手を使ってはならん・・・・使って良いのは、お前の、その口だけだッ・・・・!!』  
 
有無を言わさぬ口調のメガスの言葉に、おそるおそる顔を上げる優子。  
 
――――次の瞬間。  
 
耳を劈くような盛大な悲鳴が上がり、少女の目蓋が大きく見開かれる。  
 
目の前に、ぐいっ、とせり出していたのは、縮れた剛毛に覆われたメガスの巨根、  
性器と言うよりも、むしろ、凶器と呼ぶのがふさわしい、黒ずんだ肉の槍先だった。  
子供の腕ほどもありそうな太さの肉棒の表面では、青紫色のミミズのような血管がビュクビュクと脈打ち、  
特大サイズの亀頭の表面は、半透明な先走りの体液に濡れて不気味な光沢を放っている。  
 
反射的に顔を背けようとしたものの、  
衝撃の巨大さは、彼女の手足から、一時的に、自由を奪うほどのものだった。  
哀れな少女の双眸は、呪縛から解き放たれるまでの数秒間、  
グロテスク極まりない、しかし、目も眩まんばかりに強烈な、眼前の光景に釘付けとなり、。  
目を瞑る事も視線を逸らす事も叶わないまま、その姿を凝視し続けるしかなかった。  
 
『・・・・いやッ・・・・嫌ぁあッッッ・・・・!!  
ひィッ・・・・お、おねがい・・・・そんなモノ・・・・こっちに近付けないでェェェッ・・・・!!』  
 
やっとの思いで最初の衝撃を乗り越えるや否や、  
空っぽになっていた頭の中に雪崩れ込んでくる戦慄と嫌悪・・・・。  
まるで駄々をこねる幼児そのままに、左右に激しくかぶりを振りながら、  
優子は、メガスの身体から――――その中心で猛り立つ恐怖の象徴から――――逃げ出そうとする。  
だが、気が動転するあまり、足元もおぼつかない状態では、逃走など全く不可能であり、  
数歩も離れないうちに足がもつれてしまい、気が付けば、薄笑いを浮べる残忍王に組み敷かれていた。  
 
『"そんなモノ"とは、ご挨拶だな・・・・リアリティでも男の股間には同じ物が生えている筈だろうが?  
ええッ!?どうなんだッ・・・・お前の世界の男は、どんなイチモツを生やしているッ!?』  
 
『・・・・ひっ・・・・し・・・・知らないッ・・・・そんな事ッ・・・・!!』  
 
蒼白だった少女の顔が、一瞬にして、真紅へと変貌を遂げた。  
思春期の真っ只中にいる女子高生にとっては、まさに悪夢のような質問だろう。  
勿論、彼女とて、汚れ無き少女達の学び舎に在籍する身とはいえ、その種の情報と全く無縁という訳ではなく、  
保健科の授業は勿論の事、級友達との他愛ない会話の中でも、  
異性の身体の構造や機能について耳にする機会は日常的に存在したし、  
(年頃の娘として自然な程度には)そういった話題にも関心を持っていたのも事実である。  
・・・・だが、異性の身体に興味を持つ事と、実際に男性の肉体を求める事とは、勿論、イコールではない。  
 
『・・・・何ィ、知らない、だとぉ!?見え透いたウソを言うなッ!!  
男のカラダを知らん小娘が、見られただけで肌をこんなに熱く火照らせたりするものかッ!!』  
 
羞恥心に突き上げられ、為す術も無く狼狽する優子の姿に、メガスの嘲弄も一層辛辣さを増す。  
容赦なく浴びせられる口汚い言葉によって、少女の胸は張り裂けそうだった。  
 
・・・・だが、もはや、彼女に反論は不可能だった。  
 
燃え上がるような熱を帯び、ヌルッ、とした脂汗すら噴き出している柔肌、  
胸郭の中に響き渡る、隠し切れない心臓の高鳴り、  
だらしなく半開きになった口元から漏れる、異様に生温かい吐息・・・・。  
執拗な言葉責めの中で開花させられたマゾヒスティックな性癖が束の間の休息を終えて再び発現し、  
淫靡な全身の変調となって、自己の存在を強烈にアピールし始めたのである。  
 
(・・・・ああ・・・・あああ・・・・こ・・・・こんな・・・・こんな事って・・・・)  
 
自らの本性に愕然となり、深く打ちひしがれる蒼髪の少女。  
ここに至っては、彼女も、自分の心の中の、あさましい被虐の快感の存在を、  
――――そして、その欲求が猛烈な勢いで増殖し続けている事を、事実として認める他無かった。  
重く垂れ込めた無力感が、なけなしの気力を完膚なきまでに叩き潰し、  
その代わりに、おぞましくも魅惑的な、抗い得ない感覚が、疲弊しきった精神に染み渡っていく。  
 
(・・・・だ・・・・だめ・・・・こんな気持ち・・・・だめなのに・・・・いけないのに・・・・!!  
・・・・あああ・・・・でも・・・・でも・・・・もう・・・・わたし・・・・自分を・・・・抑えられない・・・・!!)  
 
薄青色の瞳には、ようやく完全な自由を得た欲情が、トロリ、と濁った光となって溢れ出し、  
視界全体が、デフォルメされた前衛絵画の如く、グニャグニャと捩れていた。  
すでに十分な大きさに屹立していたピンク色の乳頭部は、  
何十本もの極細針で突き刺されるかのようなチクチク感に包まれており、  
あまつさえ、プルプルと繊細な痙攣に覆われて妖艶に蠢いている。  
しなやかな太腿に挟まれた最も敏感な場所への入り口もまた、内側からの熱気に蒸されてぷっくりと膨張し、  
濃密なフェロモンと共に、汗の香りとは明らかに異なる、独特の芳香を吐き出していた・・・・。  
 
『クククッ、どうやら、ようやく素直になったようだな。  
・・・・ならば、優子よ、今の正直な気持ちを行動で示してもらおうか?』  
 
にんまりと笑いながら、股間の怒張を押し付けてくる残忍王。  
再び目の前に突き出された肉槍は、先刻にも増してその禍々しい威容を際立たせており、  
もはや、羞恥心や生理的な嫌悪などを通り越して、原初的な恐怖感すら抱かせる存在へと変貌している。  
 
・・・・・・・・だが。  
 
『ムフフフ・・・・そうだ、亀頭の周りに沿って舌を這わせろッ。  
ゆっくりと・・・・丹念に・・・・よしよし、その調子だ・・・・なんだ、やれば出来るではないか!!  
とても素人とは思えん・・・・一体全体、何処の誰に仕込まれたというのだ・・・・!?』  
 
(・・・・ハァハァ・・・・お、大きい・・・・それに・・・・ヒドイ臭い・・・・頭がクラクラしそう・・・・)  
 
トロン、と酒に酔った様な眼差しを浮べつつ、  
蒼髪の少女は、殆ど何の躊躇いも無く、メガスの汚らわしい逸物に舌を這わせていた。  
最初のうちこそ、饐えたような悪臭が鼻孔に突き刺さり、  
苦いようなしょっぱいような何とも言い難い不快な味覚が口の中一杯に広がったのだが、  
それも束の間で、幸か不幸か、あまりの酷さに彼女の味蕾は麻痺してしまい、何一つ感じなくなってしまう。  
 
『・・・・はぁう・・・・くッ・・・・うううッ・・・・うぶ・・・・んむぅうう・・・・』  
 
小さな口元を全開にして、鈴口を頬張る優子。  
亀頭の部分だけでも、顎が外れそうなくらいの大きさがある肉棒を、無理矢理口腔内に詰め込んでいく。  
 
・・・・チロッ、チロッ、チュパッ・・・・!!  
・・・・ピチャッ、ピチャッ、ジュルルッッ・・・・!!  
・・・・チュルッ、チュルッ、ブチュルルルッッッ・・・・!!  
 
最初は、それでも、おずおずと遠慮がちだった舌先の動きも、  
しばらくすると、ぎこちなさがとれ、積極的なものになっていった。  
喉奥の粘膜が巨大な亀頭に擦り上げられるたび、  
悪寒にも似たゾクゾク感が背筋を駆け巡り、倒錯した快楽の波動が頭の中をグルグルと攪拌する。  
 
・・・・悔しい、と思う気持ちが完全に消え失せてしまった訳ではない。  
だが、それ以上に少女の心の内を占めていたのは、  
あまりにも惨めな自分への絶望であり、情けない自分を罰したい、という自虐的な願望だった。  
本来ならばメガスに向かうべきところの怒りと憤りは、  
圧倒的な屈辱感と無力感によって、方向性を180°捻じ曲げられてしまい、  
遂には、その矛先を自分自身に向けるまでになってしまったのである。  
 
(・・・・はぶぅッ・・・・く、苦しい・・・・大きすぎて・・・・息が・・・・あああ・・・・続かない・・・・)  
 
加えて、先刻から全身の毛穴をチリチリさせている、快美な被虐感が、  
憎んで余りある宿敵の性器を咥え込み、舐め回すという最低最悪の行動を糧として、  
ますますエネルギーを増大させ、神経中枢への支配力を強化しようとしていた。  
意識の深層に宿ったまま、これまでずっと深い眠りの中に沈んでいたマゾの素質だが、  
一旦、禁断の快楽として性感との間にダイレクトな繋がりを確立してしまった今、  
それまでの沈黙が嘘のように猛威を奮い始め、もはや、その甘美な感覚を忘れる事など全く不可能な状況である。  
 
『・・・・ああ・・・・がッ・・・・あぐぅ・・・・はがッ・・・・うぐ・・・・ぐぶぅううッ・・・・!!』  
 
そんな優子の変化を目聡く察知した残忍王の肉槍は、  
すでに充分過ぎるほど勃起している筈にも関わらず、更に怒張ぶりを増していく。  
猛り狂う肉の塊が、狭い口腔を押し破り、気道の入り口付近まで到達して、  
柔かい喉奥の粘膜を擦り上げながら、肺腑に向かって咽せ返るような牡のフェロモンを放出し始めると、  
少女の細い気管は、たちまちのうちに半分以上塞がれてしまった。  
さすがに奉仕どころではなくなって、口内の巨大な肉棒を吐き出そうとするものの、  
呼吸困難に陥って麻痺しかけた舌先の感触が、ますます気に入ったらしいメガスは、  
それを許すどころか、反対に、更に力を込めて、恐るべき肉の凶器を喉の奥へと押し進めていく。  
 
『・・・・あぐぅッ・・・・ぶ、ぶぎへぇ(ぬ、抜いてェ)・・・・!!  
ぐッ・・・・ふぐぅッ・・・・ぶぁ、ぶぁべぇ(だ、駄目ぇ)・・・・ぼぉ・・・・びぎぐぁ(もう・・・・息がぁ)・・・・!!』  
 
無我夢中で、口腔内を暴れ回る肉塊から逃れようとする優子。  
だが、メガスの体を突き放そうと伸ばした両腕は無情にも撥ね付けられ、  
そればかりか、手首を捻り上げられて、身体全体を更に前へと手繰り寄せられてしまった。  
苦しさのあまり白目を剥く蒼髪の少女は、涙と唾液と鼻汁とで顔中を濡らしながら悶絶する。  
本来の桜色はとうに消え失せ、今や蒼白から更に土気色へと変色していく唇から発せられるのは、  
喉奥の粘膜を掻き回す卑猥な水音を除けば、今や潰れた悲鳴と断続的なえずきでしかない。  
 
『・・・・ふはははッ!!いいぞッ・・・・実に良いッ!!  
プリプリの唇にヌルヌルの舌先、おまけに、このキツキツさが堪らんわッ!!  
ヴァリアのも良かったが、優子、お前のフェラチオは最高だッ・・・・!!』  
 
うなり声を上げながら、ヴェカンティの支配者は、(優子にとっては有難くもない)賛辞を口にする。  
勿論、誇張も少しは混じっているのだが、  
実際に、(その部分だけは生身のままの状態を保っている)陰茎の中では、射精感が急速な高まりを見せていた。  
正直なところ、そこまでは期待していなかった残忍王にとって、この事は嬉しい誤算であり、  
一瞬、このまま精を放出せず、少女が窒息死するまで喉を犯し続けようか、と、危険な誘惑に駆られた程である。  
 
(・・・・フフッ、まあ、そういう訳にもいかんだろう。  
多少勿体無い気もしないではないが、ファンタズム・ジュエリーには代え難いからな・・・・)  
 
珍しく自嘲気味な笑みを口元に含ませながら、  
残忍王は、下腹に、グググッ、と力を込め、股間の剛刀に意識を集中する。  
少女の口の中の暴れ棒が、ビュクン、ビュクン、と、ひときわ大きなうねりを発し、  
同時に、口内には収まり切らない、その付け根部分が、  
ビクビクビクッ、と、こちらは逆に、至極小刻みな震動に覆われ始めた。  
 
『・・・・ぶがっ・・・・ぶぁびッ(・・・・なっ・・・・何ッ)・・・・!?』  
 
かろうじて異変に気付いた優子だが、  
半ば窒息しかけ、しかも、両手を拘束された状況では打つ手など無い。  
僅かに目線を上げて、怯えの混じった瞳でメガスの表情を見上げるのが精一杯だった。  
 
――――そして、彼女の置かれたその状況は、  
その直後、柔らかい口腔粘膜の間に埋まっていた肉棒が、ブルブルッ、と痙攣し、  
喉奥まで突っ込まれた亀頭の先から白濁した精液が迸り始めても、  
しばらくの間は全く変化しなかったのである・・・・。  
 
――――どびゅッ!!どぶゅびゅッ!!どびゅどぶゅぶぶッッッ!!!!  
 
肉先から物凄い勢いで弾き出された白濁の粘塊が顎裏に直撃する。  
ネバネバとした飛沫が、殆ど一瞬のうちに、鼻腔から肺臓に至るまで飛散したのを手始めに、  
身動きできない彼女の喉が、口腔が、唇が、ぶちまけられる精液によって、悉く汚されていった。  
信じられない量の、強烈な生臭さと粘り気を帯びた牡汁が、  
気管と食道の双方から、少女の体内へと乱入し、激しい嘔吐感を催させる。  
 
『・・・・ぐがッ・・・・げぼッ・・・・あぐぁッ・・・・げぶッ・・・・がッ・・・・はがぁぅうううッッッ・・・・!!』  
 
唾液と胃液と精液がグチャグチャに混じり合ったゲル状の吐瀉物が、食道を逆流して口内に溢れ返ると、  
さすがに不快感の方が勝ったらしく、メガスも、ようやく肉棒を引き抜き、少女の体を解放した。  
真っ青な顔色のまま、胃袋が完全に空になるまで吐き続ける優子・・・・  
灼け付いた喉から発した信じ難いほどの汚穢感が脳髄を直撃し、  
これまでに感じたものとは比べ物にならないほどの被虐感が全身を駆け巡る。  
総毛立つようなゾクゾク感は、吐く物が完全に無くなってしまった後も執拗につきまとい、  
哀れな虜囚の感覚と感情とを徹底的に打ちのめすのだった。  
 
『・・・・うっ・・・・ううっ・・・・あうう・・・・ぐっ・・・・ううう・・・・』  
 
ようやく、えずきが収まった後も、優子は顔を上げる気力すらなく、  
時折、くぐもった擦れ声で何かを呟きながら、咽び泣くばかりだった。  
その様子を無感動に眺めていたメガスは、やがて、ふんッ、と軽く鼻を鳴らすと、  
汗と精液がベットリこびりつき、清楚な雰囲気など微塵も感じられなくなった蒼髪を、むんず、と掴み、  
弱々しく漏れる悲鳴を無視して、強引にその体を引き摺り上げた。  
 
『・・・・フフ、どうだ、まだ勝負を続けたいか?  
クククッ、そうだな、<賭け>の条件を変えてやっても良いぞ。  
今この場で、這いつくばって赦しを請うのなら、お前だけは解き放ってやろう・・・・どうだ、悪い話ではあるまい?』  
 
鮮血の色を湛えた機械の目が狡猾な輝きを発する。  
半透明な赤いガラス・レンズに映り込む優子の顔は、見る影もなくやつれ果て、  
瀕死の重病人もかくやと思わせる程の死相に覆われていた。  
あれほど執拗につきまとっていた、被虐の戦慄きでさえ、すっかり息を潜めてしまい、  
心身共に、あたかも、骨と皮だけを残して、全てが燃え尽きてしまったかの如く、空虚な感覚に支配されている。  
 
『・・・・・・・・』  
 
重い、・・・・否、重過ぎる、沈黙。  
その緊張に堪えきれなかったのだろうか、  
メガスの背後で、ついに、苦悶の喘ぎとも失意のため息ともつかない微妙な音階の吐息が漏れる・・・・。  
 
(・・・・そうだ、ヴァリアッ!!ジュエリーの存在を明かすのは今しかないぞッ!!  
今この時を逃せば、あの小娘は永遠にお前の駒ではなくなる・・・・  
さあ、ファンタズム・ジュエリーの在り処を言うのだッ・・・・優子の心を繋ぎ止めるためにッ!!)  
 
残忍王の(機械の入っていない方の)目に、勝ち誇った光が閃めく。  
待ち望んでいたその瞬間がついに訪れた事を悟り、  
血色の悪い頬を、ピクピクピクッ、と不規則な痙攣が走り抜けた。  
最後の力を振り絞り、よろよろと身を起こすヴァリア。  
生乾きの血の泡がこびりついたままの唇を開きかけた、その時――――!!  
 
 
 
『・・・・勝負を・・・・続けるわ・・・・』  
 
 
 
(・・・・・・・・優子ッ!?)(・・・・・・・・ゆう・・・・こ・・・・!!)  
 
陰惨な空間に響き合う、二つの驚愕。  
メガスの哂い顔が凍りつき、ヴァリアの唇が動きを止める。  
 
――――そして。  
 
『・・・・何故だッ!!!!』『・・・・な・・・・ぜ・・・・!?』  
 
期せずして重なり合う、二つの問い。  
・・・・無論、声量でも迫力でも勝っていたのは、ヴェカンティの魔王のそれだったが、  
優子の答えを得られたのは、彼ではなく、ヴァニティの聖母の方である。  
彼女が<戦士>として選んだ少女の声は、喉へのダメージが残っているのか、ひどく掠れていたものの、  
しかし、周到に用意した罠をあと一歩のところで台無しにされ、激発寸前の残忍王を前にして、  
言い淀む事も、うわずる事もなく、何処か静謐ささえ感じさせる響きを帯びていた。  
 
『・・・・だって・・・・約束した・・・・から・・・・。  
・・・・必ず・・・・たすけて・・・・みせる・・・・って・・・・』  
 
『・・・・莫迦、な・・・・』  
 
呻くようなメガスの口調が、その衝撃の大きさを何よりも雄弁に物語っていた。  
信じられない、という表情が、彼の顔面に浮かび上がったのは、一体、何千年ぶりの出来事だろうか?  
完璧な計画に沿って、細心の注意を払い、あらゆる不確定要素を排除しつつ遂行してきた筈の策略が、  
単なる手駒でしかなかった筈の存在の、絶対にありえぬ筈の行動によって、水泡に帰した、という事実の前に、  
さしもの殺人機械も、しばしの間、完全に言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。  
 
(――――・・・・・・・・殺ス・・・・殺シテヤル・・・・ッ・・・・!!!!)  
 
・・・・やがて、その驚愕は、憤怒へと変化していく。  
否、それは、単なる感情の暴走、発作的な怒りの爆発ではなく、  
鬱積と凝縮と純化のプロセスを経て、限りなく鋭利に研ぎ澄まされた、負の感情の発露だった。  
実際、怒号と共に優子に襲い掛かるその姿は、まさしく荒れ狂う悪鬼以外の何物でもなかったが、  
一方で、瞳に浮かぶ赤い輝きには、それ以上の、何処か必死さすら感じられる異様な雰囲気が漂っている。  
 
『良いだろうッ!!続けてやる・・・・続けてやるともッ!!  
ええい、いつまでも寝ているなッ・・・・後ろを向いて、四つん這いになれ!!』  
 
鳴り響く怒声は、先程までとは異なり、欲情ではなく、殺意によって満たされている。  
返事をする間もなく、容赦無い蹴りが脇腹に炸裂し、  
少女の身体は石床の上を数メートルあまり転がって、うつ伏せの姿勢で停止した。  
 
『尻を持ち上げろ・・・・高く、もっと高くだッ!!さっさとせんかッ!!』  
 
怒りを露わにしたメガスへの恐怖で表情を歪める優子。  
その背後に迫った半人半機の怪物は、打ち伏したまま動けずにいる<戦士>を睨み据えながら、  
再び高々と隆起した肉棒を、こんなものではまだ足りぬ、とばかりに扱き立てていた。  
憎しみに満ちた視線は、薄汚れて至る所に無様な染みの出来ているスカートの下、  
鳥肌だった太ももの肉に挟まれた薄い布切れを凝視し、  
その中にくるまれた青い果実を、貫き、掻き回し、汚辱し尽す、復讐の悦楽に、早くも酔い痴れようとしている。  
 
――――ビリィィィッッッッ!!!!  
 
起き上がる事の出来ない優子の身体を背後から抱え上げた残忍王は、  
丈の短いスカートを無造作に捲り上げると、無言のまま、汗ばんだ下着に手を伸ばし、一気に引き千切る。  
抵抗らしい抵抗も出来ぬまま、短い悲鳴と共に切り裂かれた極薄のショーツが、  
無残な砕片となって宙に舞ったと思った瞬間に、  
まだ先程の口淫射精の名残りがこびりついたままの肉槍は、彼女の秘裂へとの突進を開始していた――――。  
 
『・・・・ひッ・・・・ああッ!!・・・・いぎっ・・・・ぐッ・・・・あぐぅぁああああッッッ・・・・!!!!』  
 
猛然とうなりを上げた肉の刃が、まだ男を知らぬサーモンピンクの裂け目を刺し貫く。  
幸い、すでに愛液の滴に覆われていたせいで、最初のうちは予期していた程の痛みを感じる事も無かったが、  
侵入者の巨大さは尋常ではなく、また、優子自身に異性と性交した経験が皆無だったのは、やはり致命的で、  
膣内に押し入ってきた肉の塊に対しては、冷静な対処など全く不可能だった。  
 
『持ち応えてみせろッ!!<ヴァリスの戦士>!!  
それが最後の<賭け>だッ!!俺の責めに耐え抜くか・・・・さもなくば、死ねッ!!!!』  
 
憎悪を滾らせた叫び声と共に、股間の破城槌を突進させる残忍王メガス。  
充血して厚味を増した膣壁を突き破り、押し退け、捲り上げながら、ひたすら子宮を目指す。  
その前に立ち塞がるべき純潔の象徴は既に取り払われていたため、破瓜の激痛こそ味わう事無く済んだものの 、  
メガスの下半身には、およそ相手を愛しみ情感を共有しようなどといった甘い感傷は全く存在せず、  
むしろ、彼女の未成熟なオンナの部分を徹底的に嬲り尽くし、  
死にも勝る苦痛に悲鳴を上げる様子を愉しもう、というサディスティックな欲望が充満していた。  
 
『フンッ、やっぱりそうか!!  
さっきから怪しいと思っていたが、優子、お前は、もう処女では無いのだなッ!?  
・・・・ええい、忌々しい!!一度ならず二度までもこのメガスの期待を裏切りおって・・・・一体、相手は誰だッ!?』  
 
ヴェカンティの支配者の侮蔑の言葉と、ずちゅッ、ずちゅッ、という重く湿った抽送音とが、  
頭の中で幾重にも木霊し絡み合って、不気味な和音を奏で続けている。  
適度に引き締まった美しい尻丘を貫く肉杭は未だ全体の半分近くを残していたが、  
すでにその先端は膣道を抜け、子宮の奥壁へと達しようとしていた。  
無論、そのセックスには、愛情など欠片も含まれてはいないのだが、  
一方で、ただ粗暴なだけという訳では決して無く、荒々しさの中にもツボを心得たテクニックが存在して、  
初めは圧倒的な恐怖しか感じなかった少女も、徐々に官能の疼きを覚えるようになっていく。  
 
『ハーッハッハッ!!どうした、尻の穴がヒクついているぞッ!!  
ははあ、さては、ここにも何か挿入れて欲しいのか!?  
クククッ、いいだろう・・・・お望みどおりにしてくれるッ!!さあ、受け取れぃッッッ!!』  
 
節くれ立った人指し指が、小皺の寄り集まったすぼまりを深々と抉る。  
鋭い痛みと異物感に悲鳴を上げ、反射的に、括約筋を、ギュギュッ、と引き絞ったものの、  
そうすると、子宮口の開閉を司り、膣圧の強弱を調節している筋肉までもが連動して収縮するのは避けられず、  
結果、突き入れられている巨根を力一杯食い締め、その逞しさをより一層強烈に感じるようになる。  
その快感の凄まじさは、排泄器官を襲った痛みや異物感を忘却させるに充分であり、  
あっという間に抵抗力を失ってしまった尻穴は、野太い指を一気に第三関節まで呑み込んだばかりか、  
丸く引き伸ばされた肛門自体、真っ赤に腫れ上がって、異様な火照りとゾクゾク感に覆い尽くされてしまった。  
 
『・・・・さあ、言えッ!!お前をオンナにしたのは何処のどいつだッ!?  
まさか、ヴァリアやヴァルナではあるまい・・・・とっとと白状した方が身のためだぞッ!!』  
 
(・・・・れ、麗子・・・・麗子ォッッッ・・・・!!!!)  
 
メガスの問いに、思わず、最愛の友の顔を思い浮かべてしまう優子。  
途端に、涙が溢れ出し、息が詰まって、全身の血液が沸点に達した。  
失神しそうな程の快美な感覚が脳天を直撃し、  
身体中が性感帯と化したかのように、刺激に対して敏感さを増していく  
 
『クククッ、小娘めが、尻穴をほじられて興奮しておるわッ!!  
おまけに膣壁の締め付けも増して来たぞ・・・・全く、何たる淫乱ぶりッ!!』  
 
残忍王の嘲りも、もう殆ど耳に入らなかった。  
きつく食いしばっていた口元も、今やだらしなく弛緩して唾液の糸を垂らし、  
熱い吐息と切迫した喘ぎ声とが、引っ切り無しに漏れ出している。  
パン、パン、と妙に乾いた音を立てて突きまくられる子宮壁に、腹膜一枚を隔てただけの直腸の痙攣が届くと、  
溶鉱炉の中で煮え滾る銑鉄のような熱い滴りが湧き上がり、腰椎がバラバラになるような衝撃が走り抜けた。  
子宮を、膣道を、直腸を、肛門を、好き放題に掻き回され汚辱され続けているというのに、  
少女のカラダは肉悦に躍動し、あさましい欲情の虜となって飛び跳ね続けている。  
 
(・・・・そ、そうよ・・・・あの時も・・・・こんな風だったわ・・・・)  
 
――――気が狂いそうなくらいの苦痛、意識が遠退きそうなほどの快楽。  
――――情け容赦ない罵声、相手の意志などお構いなしの一方的なセックス。  
――――憎悪に満ちた双眸、欲望に歪んだ眼差し。  
 
それら全てが融合して、強烈な既視感を伴った想念の暴風となり、優子に襲いかかる。  
 
大切なバージンを奪い去ったのは、ログレスの<戦士>だった麗子。  
ここと全く同じ場所ではないけれど、同じヴェカンティの中の、ここと良く似た雰囲気の漂う、陰鬱な城。  
泣けど叫べど、自分の意志など全く顧みる事無く、  
却って、欲情の炎を燃え上がらせるだけだったのも、たしかに今のメガスと変わらない・・・・。  
 
(・・・・あああッ!!・・・・でも・・・・それでも・・・・麗子は・・・・麗子にはッ・・・・!!!!)  
 
熱く火照りを帯びた媚肉を休む間もなく責め立てられ、  
一度は完全に涸れ果てた筈のあさましい被虐の悦びも息を吹き返す。  
すでに肉体はトロトロに蕩け、精神にもまた、破綻の時が迫りつつあった。  
下半身を舐め尽した熱い感覚は、全身の神経索を通じて上半身へも燃え広がり、  
全ての感覚と感情が、たった一つの狂おしい衝動へと収斂していく・・・・。  
 
(・・・・ごめんね・・・・麗子・・・・約束・・・・守れなく・・・・て・・・・)  
 
フラッシュバックする世界。  
追憶の時間が終わりを告げられて、  
四散した意識が、現実の地平――――呪われた霧に覆われた陰惨な沼地へと、引き戻される。  
 
「・・・・あの後、わたしは・・・・麗子に、救われた・・・・」  
 
散々泣き腫らした顔を膝の間から持ち上げる優子。  
その表情の大部分は未だ弱々しいが、少なくとも、空虚ではない。  
 
(――――ヴァリアさまの犠牲と引き換えに・・・・)  
 
苦吟に満ちた思索が、追憶と感傷・・・・過去と現在とを繋いでいく。  
 
・・・・ヴァリアさまは、あの時、麗子がすぐ近くまで来ている事を知っていた筈・・・・。  
・・・・わたしを切り捨てさえすれば、確実に自分は助かる、って事を・・・・。  
・・・・そうしてでも・・・・生き抜かねばならないのが、幻想王女の責務だ、って事を・・・・。  
・・・・麗子だって・・・・それは承知だった筈・・・・。  
・・・・あの時・・・・優先しなければならなかったのは・・・・わたしじゃなく、ヴァリアさまである事を・・・・。  
・・・・わたしを犠牲にして・・・・ヴァリアさまを生かす・・・・それが、自分に課せられた義務だ、って事を・・・・。  
 
・・・・それでも・・・・ヴァリアさまは・・・・そして、麗子は・・・・。  
 
(・・・・嗚呼・・・・ヴァリアさま・・・・麗子・・・・)  
 
閉じられた瞼の隙間から漏れた小さな光が銀色の滴りとなって頬を伝い、  
黄金の胸当てへの上へと零れ落ちる。  
 
――――その刹那。  
 
涙の粒から発した仄かな光が胸元で瞬いたかと思うと、体の中がじんわりとした温もりで満たされていく。  
みるみるうちに全身へと広がったその暖かい光は、  
まるで愛しい我が子を抱擁する慈母の如く、優しく少女の体を包み込んだ。  
・・・・その懐かしい感触に、何が起きたかを悟った優子は、殆ど無意識のうちに天を仰いで、叫び声を上げていた。  
 
「・・・・あああッ・・・・こんな・・・・この感覚はッ・・・・!!  
・・・・まだ・・・・この上まだ・・・・戦えと・・・・仰るのですかッ!?  
こんなわたしにも・・・・まだ・・・・戦う事が出来ると・・・・そう、仰るのですか!?)  
 
その言葉に呼応するかのように、<ヴァリスの鎧>から、キーン、と澄みきった波動が放出される。  
次いで、全ての防具が、一旦、実体を失い、白い光の粒子へと還元されたかと思うと、  
新たな姿・・・・否、かつて、一度だけ目にした事のある、聖なる戦衣の形へと再構築されていった。  
 
めくるめく光芒の中に姿を現わし、ひときわ美しく光り輝いているのは、  
<明>の精髄・・・・ファンタズム・ジュエリー。  
清浄なる生命の息吹が邪悪な霧の魔力を退散させ、  
絶望と悲しみに囚われ自縄自縛に陥っていた優子の魂を、沈鬱な桎梏から解き放った・・・・。  
 
 
 
――――――――――――TO BE CONTINUED.  
 
 
 

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