――――リアリティ。東京都内。ホテルの一室。
「んふぁッ・・・・くッ・・・・あふぅうん」
ベッドの上で、甘いよがり声を漏らし、しなやかな肢体をくねらせる、<ヴァリスの戦士>優子。
腰まで伸ばした蒼髪が、多量の汗を吸ってなめらかな光沢を発し、
やや色白だが、申し分なく瑞々しい肌の色と見事なコントラストを描き出している。
現実界の娘の未熟な性感を煽り立て、すでに幾度と無く、忘我の境地へと誘っているのは、
暗黒界出身の女エルフにして、今は亡きアイザードの側近、デルフィナ。
忠誠を誓った主であり、理想を共にする同志であると同時に、
お互いに心とカラダを許し合える関係であった、元夢幻界人の青年から教え込まれた、
極上のテクニックを惜しみなく投入して、少女の心身を燃え上がらせている。
「見てみろ。もうここまで治癒が進んでいる。あと少しだ」
ベノンの炎によって黒焦げにされた剣士の右腕は、
<ヴァリスの戦士>の生体エネルギーの一部を吸収したおかげで、
数刻前の惨状がウソのように体組織の再生が急ピッチで進んでいる。
彼女自身としては、元々、優子と同衾ねるための方便に過ぎなかった『治療行為』が、
実際に効果を上げている事実に、内心、苦笑を漏らさずにはいられなかったのだが。
「ハァハァ・・・・んんッ・・・・くはッ・・・・ふはぁあああッ!!!!」
一方、パートナーによって快楽の極地へと誘われている蒼髪の少女の方は、
すでに全身を覆う喜悦以外は頭の中に無いも同然である。
最初のうちこそ、『これはセックスではなく治療行為なのだから』と自分に言い聞かせて、
感情を押さえ込み、求めに応じようとしていたのだが、
最初の絶頂へと昇り詰めた瞬間から、もはや、そんな事はどうでも良くなっていた。
すでに羞恥心も同性愛に対する抵抗感も猛り狂う快感の前に雲散霧消してしまい、
誘われるがままに体を開き、弄ばれ、気をやり続けている。
「胸当てが邪魔だな。・・・・外してくれ」
甘い声で囁きかけながら、デルフィナは、
黄金の輝きを放つ胸甲の曲線に沿って、思わせぶりに人差し指を滑らせてみせる。
実際には、素肌はおろか、鎧の表面にさえ触れられていないにも関わらず、
動きを目にしただけで、呼吸を弾ませ、悩ましげに喘いでしまう、蒼髪の<戦士>。
要求されるがままに胸当てを外すと、たっぷりと汗に濡れ、ピンク色に染まった乳房を曝け出した。
「フフフ、大きさは今一つだが、形は整っているな」
どれどれ、と妖艶な微笑を浮べて、吟味を開始する金髪の剣士。
今一つの大きさ、というのは、自分の持ち物と比較しての話であり、
目の前に行儀良く並んでいる、バストのサイズは、
これまでにベッドを共にしてきた現実界の娘たちと比べても、平均以下の部類とは感じられない。
むしろ、未だ発育途上の段階にあるにも関わらず、
これだけの豊かさを誇っているのは大健闘と言っても過言ではないだろう。
「フフ、感度の方はどんな具合かな?」
興味津々な表情で、白い湯気を立てる美乳に手を伸ばす。
触れるか触れないかの所で指先を巧みに滑らせ、産毛の先端をそっと撫でると、
蒼髪の少女はじれったそうに眉を寄せ、ピクピクと全身を悶えさせた。
「ふぁ・・・・ううッ!!はぁく・・・・あくぅううッ!!」
神経がピンと張り詰めた、左右の脹らみが、不規則な痙攣を発し始める。
その先端部、桜色の乳輪から突き出した可愛らしい突起物に向かって、
くすぐったいような、むず痒いような、明状し難い感覚が流れ込んでいくにつれ、
普段は小指の先ほどの大きさに過ぎない乳首が、みるみる膨張していった。
胸郭の内側で律動を刻む心臓の音が、異様に甲高く、せわしなく聞こえ、
口をついて漏れる吐息も、荒々しく、熱っぽいものに変わっていく・・・・。
「フフッ、こんなに濡らして・・・・太腿がビチョビチョじゃないか」
ニヤニヤしながら、片方の乳房をすくい取った女エルフは、
親指の腹を使って、ピンク色の突起の根元をサワサワと優しく刺激する。
ひゃあッ!?という可愛らしい悲鳴を発し、頤を跳ね上げる<ヴァリスの戦士>。
本格的な愛撫にさらされた胸丘が、じぃんと火照っていくのと同時に、
カラダ全体が甘い痺れに覆われてゾクゾクと鳥肌立っていく。
「どうした?もっと乱暴にして欲しいのか?」
刻々と変化する表情を冷静に観察しつつ、
強弱や間隔を調整し、左右の脹らみをリズミカルに揉み込んでいく。
喘ぎ声の調子、手足の痙攣の具合、滲み出る愛液の量と手触り・・・・、
敏感さを増した肉体は、みずみずしい胸乳に加えられる僅かな力の加減に対しても、
各々異なるリアクションを返し、責め手の好奇心を飽きさせない。
いつの間にか、背筋は見事な半月形に反り返り、
愛蜜に濡れたスカートの内側では、ピンク色に染まった淫花が妖艶に咲き誇っていた。
――――ぷちゅッ・・・・ちゅぱッ!!
少女の背後に回ったブロンド美女は、目の前の身体を前屈させると、
たっぷりと唾液を含んだ真っ赤な舌先を汗ばんだ背中に押し当て、美味しそうに舐めしゃぶっていく。
ザラザラとした味蕾が性感帯をくすぐるたび、甘美な電流が背筋を走り抜け、
不随意筋が、ピクン、ピクン、と、活発に震えを発して、硬直と弛緩を繰り返した。
「んぁあッ・・・・あくぅ・・・・はぁうッ・・・・!!」
腋の下を通って、胸元へと回された左手は、
切迫した呼吸のたびに、プルン、プルン、と、大きく弾む肉の果実にねっとりと絡み付き、
力強いストロークで、テンポよく、揉みしだいていた。
先端部分で、ツン、と身を尖らせている乳首に対しては、
強過ぎず弱過ぎず、絶妙な塩梅の愛撫が繰り出され、限界まで勃起を促している。
トドメを刺したは、デルティナ自身の豊満な双乳・・・・。
執拗な口唇愛撫によって極度に感じ易くなった背中の上に、
マシュマロのような脹らみが押し付けられ、上下左右に動き始めるや否や、
口元から漏れる弱々しい喘鳴は、たちまち歓喜の絶叫へと引き摺り上げられてしまう。
「ふぁ・・・・あはぁああああッッッ!!!!」
次の瞬間にも絶頂へと昇り詰めかねない勢いで、
あられもない悲鳴が室内に響き渡り、ダブルベッドのスプリングがギシギシと軋む。
水分を含んでぐっしょりとなったシーツを破り千切らんばかりにきつく握り締めながら、
優子は高々と振り上げた下半身をガクガク揺さぶった。
捲れたスカートの中から、大量の愛液を吸収して半ば透き通った極薄の下穿きがまろび出し、
ほのかに甘酸っぱい匂いと共に、たっぷりと蒸されて凝縮された牝のフェロモンが周囲に飛散する。
「ハァハァ・・・・あぁ・・・・いやぁッ・・・・下着ィ、脱がしちゃあ・・・・ひはぁぁッ!!」
今にも消え入りそうなぐらい、擦れかかった抗議を無視して、
ぴっちりと素肌に密着したショーツに手をかけたデルフィナは、
その薄布を、一気にではなく、わざと時間を掛けて摺り下していった。
ビショビショに濡れそぼった純白の下着の中からまず現れたのは、白桃色をした瑞々しい尻たぶ。
続いて、じっとりと汗に濡れたあわいの奥から、繊細な小皺が寄り合わさった、可愛らしい菊座が姿を見せ、
最後に、しなやかな太腿の間、未だ十分に生え揃っていない若草に囲まれて、
ピクン、ピクン、と不規則な痙攣を発し続けている、サーモンピンクの秘唇があらわになる・・・・。
「あああ・・・・だ、だめぇ・・・・こんな所まで・・・・はぁうううッ!!」
恥ずかしいすぼまりの表面に吹きかけられる生温かい吐息に、
蒼髪の少女は、顔面を真っ赤に紅潮させ、弱々しくかぶりを振った。
淫靡な感触に、あさましく振り立てられた腰がヒクヒクと震え慄き、
毛穴という毛穴が、ザワザワザワッ、と、一斉に鳥肌立つ。
「もしかして、前よりも後ろの方が良いのか?
フフッ、純真そうな顔をして、意外と経験を積んでいるみたいだな」
「・・・・ち、違ッ、そんなんじゃ・・・・ひゃあああッ!!」
しどろもどろに否定の言葉を並べる少女のお尻を、ピシャン、と軽く叩くと、
隻眼の美女は、真っ赤な舌先を、ググッ、と伸ばし、ぱっくりと口を開けた秘裂の狭間へと捻じ込んでいった。
最初に発せられた素っ頓狂な叫び声は、すぐに、切なげな擦れ声へと切り替わり、
しばらくすると、本格的なよがり泣きへと変貌を遂げていく。
視界全体で極彩色の花火が何発も大輪の花を咲かせ、
うなじの辺りが、じぃん、と熱っぽく痺れていくのが、優子自身にも良く分かった。
・・・・ぴちゅッ・・・・ちゅぱッ・・・・ぶちゅるるッ!!
たっぷりと唾液を含んだ舌先が、恥ずかしげに慄く花弁を丹念に舐め回す。
手前から奥へ、そして、また手前に・・・・、
執拗に、同時に、単調に陥らぬよう、細心の注意を払いつつ、
花弁をしゃぶり、トロトロと溢れ出して来る蜜を美味しそうに啜り上げた。
「ひはぁああッ!!ふぁあッ・・・・あくぅううッ!!」
ヌメヌメとした肉ナメクジに膣内を犯されて、
蒼髪の少女は弱々しい悲鳴を漏らし、快感に手足を打ち震わせる。
敏感な粘膜に触れられるたび、えも言われぬ快楽の電流がしなやかなカラダを駆け巡り、
鼻先に小さな星屑が舞い散って、僅かに残っていた理性さえ粉々に打ち砕いた。
子宮口の近くまで舌を突き入れられては、故意に時間をかけてゆっくりと引き抜かれ、また捻じ込まれる・・・・
一連の動作をテンポよく繰り返されていくうちに、
大量に分泌された脳内麻薬の働きで頭の中が真っ白になっていき、
全身の血液が瞬時に沸騰してしまったかの如く、煮え滾る灼熱感が体の隅々にまで広がっていく。
「アアッ・・・・く、来るッ!!凄いのが・・・・あああ・・・・も、もう、ダメェェェッ!!!!」
アクセルを全開にして動きを加速させる女剣士。
舌先をプルプルと震動させつつ、秘裂に深々と埋没させては、
絡み付いてくる媚肉をねちっこく舐めしゃぶり、
ようやく引き抜いたかと思えば、今度は入り口付近を弄んで徹底的に焦らし抜いた。
勿論、甘酸っぱい果汁が蜜壷から零れ落ちそうになるたびに、唇を尖らせて飲み干してしまうのも忘れない。
細長い指もまた、蠢動を再開していた。
噴き出した汗でヌルヌルになった胸の脹らみを鷲掴みにして揉みしだき、
時折、コチコチに屹立してしまった乳首に寄り道しては、爪の先で、ピンッ、と弾いてみる。
負傷して自由が利かなくなっていた筈の右手の指でさえ、多少ぎこちないながらも責めの一翼を担い、
あさましく脹らんだ陰核に向かって、巧みな愛撫を送り込んでいた。
乳首と陰核と膣襞・・・・各々異なる肉悦を発する三箇所の快楽中枢を刺激されるたび、
優子は、背筋を波打たせ、四つん這いになった手足の筋肉をガクガクと痙攣させつつ、
涎まみれの口元からあられもない嬌声を迸らせる・・・・。
「ひぃあッ!!・・・・あはひゃあああああッッッ!!!!」
ひときわ鋭い絶叫と共に、汗まみれの下半身が艶めかしく揺れ動く。
次の瞬間、網膜の内側で、何百ものフラッシュを一斉に浴びたかのような閃光が迸り、
視界全体が、眩い輝きを放つ極彩色の火花によって埋め尽くされた。
狂おしいまでに甘ったるい快楽の波動が押し寄せてきて、
自我を呑み込み、五感を蕩けさせ、思考を木っ端微塵に粉砕してしまう。
――――じょぼぼぼぼぼッッッ!!!!
あさましい決壊音を発して尿道口が破裂し、微かに黄色みを帯びた生温かい液体が噴出した。
間一髪のタイミングで、ベッドから飛び退いたパートナーが両目を丸くする前で、
蒼髪の少女は、壊れかけの自動人形の如く、ギクン、ギクン、と全身を跳ね回らせながら、
膀胱からは屎尿を、秘裂からは愛潮を噴き上げ、溢れ返らせる。
許容量の限界を軽々と凌駕する性感の嵐に、完全に白目を剥いて意識を失ってしまった表情は、
『凄惨な』という形容詞以外、正確に表現する単語が思い付かない程、
無残に引き攣り、まるで別人の如く、変貌を遂げてしまっていた。
「・・・・さすがに、少しやり過ぎたか?」
アンモニア臭の漂うダブルベッドの脇で、苦笑いを浮べる女エルフ。
半透明な体液と薄黄色の排泄液とが入り混じった、得体の知れない汚汁にまみれ、
手足のそこかしこから、ピュクン、ビュクン、という不規則なひくつきを発している少女を見やりつつ、
これではどちらが怪我人か分からないな、と、軽くため息を漏らす。
(おかげで、腕の方はかなり良くなったんだが・・・・)
実際、彼女の利き腕は、皮膚の一部に赤黒く腫れが残ってはいるものの、
筋肉も神経もほぼ再生し、動作や感覚も、火傷を負う以前の水準まで回復を遂げていた。
試みに、愛刀を抜き払って、治癒したばかりの右手で掴んでみると、
殆ど何の違和感もなく、負傷前と変わりなく、しっくりとなじむのが分かる。
思わず、ほおっ、と息をついたデルフィナは、抜き身の曲刀を握ったまま、
未だエクスタシーの余韻の中で浅いまどろみに落ちている現実界の娘に視線を転じ、
フフッ、と、小さく微笑みつつ、黙礼を送った。
――――――――と、次の瞬間ッ!!
ドドドドォォォ――――ッ!!!!
突如として、部屋全体が激しく揺れ動き、壁面に亀裂の入る不快な音が走り抜けた。
固定されていない調度類が次々に床に転げ落ちては、
砕け散り、あるいは、ひしゃげ潰れ、用を為さない存在へと変わっていく。
さらに――――咄嗟の判断で、防御呪文を発動させたデルフィナが、
自分と優子の二人を包み込む大きさの不可視の障壁を展開し終えた直後――――、
窓の外から飛び込んできたオレンジ色の火球が、室内の可燃物に引火して盛大に炎を噴き上げた。
「・・・・ま、まさか、ベノンがッ!?」
まだ少しフラフラとしながらも、どうにか正気を取り戻した現実界の少女が、
防壁を展開する女剣士の傍らで驚愕に目を瞠る。
防衛本能の働きによるものだろうか、<ヴァリスの剣>が両手の中で実体化を始め、
続いて、黄金の胸甲以下、脱ぎ捨てられて床に散らばっていた防具が、
磁石に吸い寄せられる砂鉄のように身体の各部へと集まり、再装着されていった。
――――だが、隻眼のエルフは、直感的に、
パートナーの心の奥底に横たわる疑念が未だ払拭されてはいない、と見抜いていた。
(やはり、導き手で無ければ、進むべき道を示す事は不可能だったのか。
・・・・この様子では、まともに戦うのは到底無理だろうな)
ぎりッ、と奥歯を噛み締めるアイザードの剣士。
元より、戦場での迷いは、不安や不信の温床となり、
本人のみならず、周囲に対しても破滅的な結果をもたらすものとなる。
ましてや、敵は狡猾残忍で知られる暗黒五邪神・・・・、
少女の心に生じた隙に気付けば、情け容赦なく付け込んで来る事は明らかだった。
(私がやるしかない。血路を開いて、<ヴァリスの戦士>だけでも逃がさなければ・・・・!!)
そう、意を決した直後、
構造上の限界に達した天井がガラガラと崩れ、四方の壁が砕け落ちて、
真っ黒に黒ずんだ無数の瓦礫――――鉄骨とコンクリートの塊――――が降り注ぐ。
時を同じくして、負荷に耐え切れなくなった床が断末魔の悲鳴と共に崩壊し、
球状の防御障壁に包まれた二人の体は、
数十メートル下の奈落の底に向かって、真ッ逆さまに吸い込まれていった。
――――数秒後。
「大丈夫か、返事をしろッ!?」
濛々と立ち込めている粉塵の中、女エルフは傍らに蹲っていた少女に声を掛けた。
無言のまま、頷き返す、<ヴァリスの戦士>。
・・・・だが、(予期した通り)その表情は固く引き攣り、真っ青に蒼褪めている。
「無理をするな。お前は後ろに退がっていろ」
有無を言わさぬ口調でパートナーに畳み掛けると、
隻眼の美女は、愛刀をひと薙ぎし、正眼に構え直した。
一方、言われるがままに位置を譲った優子は、落ち着かなげに<ヴァリスの剣>に視線を落とす。
白銀の刀身に映り込んだ己れの相貌は、
生死を賭けた戦いを目前にしてなお、闘う意義を見出せないまま、
不安と焦燥だけを募らせる、ひとりぼっちの女子高生のそれだった。
「オーホホホホッ!!やあ〜っと見つけたわ、ネズミ共ッ!!
まったく、アンタ達がコソコソ逃げ隠れしてる間に、現実界人が何匹消し炭になったと思ってんのよッ!!」
猛火の彼方から響き渡る、けたたましい哄笑。
忘れる事も出来ない邪悪な声音の主を探して、周囲を見回す二人の頭上高く、
窓という窓から黒煙とオレンジ色の炎を噴き上げている、雑居ビルの屋上から、
彼――――暗黒五邪神が一将、炎邪ベノンは、嘲りの言葉を投げ付ける。
「黙れ、ゲス野郎ッ!!
アイザード様の無念、今度こそ晴らしてやるッ!!」
デルフィナの口から憎悪に満ちた叫びが迸り、
眼帯で覆われていない方の瞳が血走って憤怒の色に染まった。
「フン、死に損ないのクセに口先だけは達者ねぇ。
いいわ、アイザードの所に送ってやる前にタップリと地獄を味わわせてあげる」
そう、鼻先でせせら笑った暗黒界の大貴族は、
眼下に陣取る金髪の剣士を見下ろし、残忍そうに舌なめずりすると、
相手を小馬鹿にした仕草で指先を突き出し、炎の魔力を集中させる。
「来るぞ、油断するなッ!!」
張り上げられる、警告の叫び。
直後、ベノンの人差し指がオレンジ色に光り輝いたかと思うと、
毒蛇の如く不気味にうねる炎の帯が、地上へと急降下してくる。
「風よ・・・・!!」
そっと呟きつつ、精神を集中する隻眼の剣士。
全身から湧き立った魔力が、白銀色の刀身に蓄積され、急速に練り込まれていく。
次の瞬間、集束された清冽な霊気は、大気の刃と化して押し寄せる邪悪な業火を見事に両断し、
更にそのまま直進して、驚愕に両目を見開いた炎の魔人の許へと殺到していった。
「ぎゃああああッッッ!!!!」
ひび割れた悲鳴が空気を震わせると同時に、
肘の真ん中からスッパリと斬り飛ばされた右腕が宙を舞い、
どす黒く濁った血飛沫が、切り株のような切断面から、噴水の如く飛散する。
信じられない、という表情を浮べて、傷口を押さえる暗黒五邪神の姿に、
千載一遇のチャンス到来、と判断したデルフィナは、
一気に勝負を決めるべく、渾身の力を込めて大地を蹴り、宿敵の許へと跳躍した。
(もらったッ!!)
裂帛の気合と共に振り下ろされる、白銀の斬光。
肩口を断ち割り、胸板を切り裂き、脇腹にまで達する必殺の一撃――――!!!!
・・・・・・・・だが、その直後、彼女の顔色は一変した。
「げ、幻影だと・・・・いったい、いつの間にッ!?」
斬り落とされた右腕だけを残して、すううッ、と消え失せていくベノン。
愕然となった女エルフの頬筋が、一気に血の気を失い蒼褪めていく。
敵を罠に嵌めたつもりで、陥穽に陥っていたのは自分の方だったとは・・・・。
――――では、あの狡猾なオカマ野郎は、一体、何処へ消えたというのか!?
(しまった、優子ッ!!!!)
切り揃えたブロンドを翻したデルフィナが、
恐怖と悔悟にとらわれながら背後を振り返った、その刹那。
生命に代えても守り抜くと誓った筈の少女は、
苦痛に満ちた悲鳴と共に、放物弾道を描いて空中高く跳ね飛ばされ、
・・・・直後、ぞっとするような衝撃音と共に、コンクリート製のビル壁へと叩きつけられた。
「オホホホッ!!惜しかったわねぇ、デルフィナちゃん」
冒してしまった取り返しのつかないミスに、茫然と立ちすくむ女剣士を、
けたたましく響き渡る狂笑が冷酷に打ちのめした。
数秒前まで優子のいた場所に立ち、勝ち誇った視線で自分を見上げる魔将軍・・・・、
その右腕は、肘から先が無くなったままの状態だったが、
彼にとっては、この程度の傷など負傷のうちに入らないらしく、気にかけている様子は微塵も無い。
――――と。
「ぐッ・・・・ううう・・・・」
弱々しく呻きながら、身を起こそうとする現実界の少女。
おそらく、壁に衝突するギリギリのタイミングで<鎧>の力が発動したのだろう、
消耗こそ激しいようだが、体には目立った外傷は見当たらない。
最悪の事態だけは回避されていた幸運に、僅かに胸を撫で下ろす隻眼のエルフだったが、
状況は何ら好転した訳ではなく、自分達の窮状に変わりはなかった。
「フン、しぶといわねぇ。まだ生きてたの?」
舌打ちを漏らしつつ、炎の魔人は、瓦礫の中から這い出そうともがく優子に向き直った。
ビルの屋上から発せられる、やめろ、という悲痛な絶叫。
――――だが、決死の覚悟で飛び掛ろうとした動きは、狡猾陰険な宿敵によって完全に見切られていた。
「おっと、動いちゃダメよ。
一歩でも動いたら、コイツでお嬢ちゃんを丸焼きにしてやるわ」
単なる脅しではないぞ、と威嚇するかのように、ベノンの右腕が<ヴァリスの戦士>へと向けられる。
手首から先の部分が切り落とされた利き腕からは、
鮮血の代わりに青白い炎がチロチロと舌先をのぞかせていた。
先刻の宣言通り、女剣士が一歩でも踏み込もうものなら、
回避はおろか満足に立ち上がる事さえままならない蒼髪の少女など、
訳も無く魔性の業火に押し包まれて、骨のカケラさえ残さず焼き尽くされてしまうに相違ない。
「それにしても、アンタ、てんで弱っちいのねぇ。
少しは楽しめるかと期待してたのに、がっかりしたじゃない」
足元に縫い付けられたかの如く、ピタリと動作を止めたデルフィナの姿を満足げに眺めつつ、
もう一方の獲物へと歩み寄った暗黒五邪神は、
コンクリートの粉塵にまみれて白く煤けた蒼髪を乱暴に掴んで、無理矢理に上体を引き摺り上げた。
耐え難い苦痛に襲われて、醜く歪んだ<ヴァリスの戦士>の表情を、
切断された肘の中から噴出する青白い炎が不気味にライトアップする。
「こ、この・・・・人でなしッ!!」
苦しい息の下から搾り出した面罵の言葉にも、涼しい顔の炎の魔人。
今の状況で何を喚こうが、所詮、負け犬の遠吠え、
処刑台に送られる直前の囚人の最後の足掻きと何ら変わりは無い。
「当たり前でしょ。人じゃないんだから」
そう、平然とした口調で返した暗黒界の大貴族は、
ビルの上のデルフィナを振り返り、意味ありげに、にんまりと笑いかけた。
次の瞬間、右手――――否、溢れ出す高熱を帯びて焼きゴテと化した手首が、
目の前の少女の無防備な脇腹に、容赦なく押し付けられる。
「いッ・・・・ぎひッ!!あひぃぎィィィッッッ!!」
ジュウウウウッッッ!!!!
皮膚の焼け焦げる不快な音と共に、ぞっとするような異臭が立ち込める。
家畜さながらに灼熱の烙印を押し付けられた哀れな女囚が、
悲痛な絶叫を放ち上げ、激痛と恐怖に全身をばたつかせる様子に、
サディスティックな快感を覚えて、ベノンは天を仰ぎながら踊り狂った。
「あが・・・・あああ・・・・あぐぅううう・・・・!!」
瓦礫の上に倒れ込み、脇腹の傷口を押さえて呻き声を漏らす優子。
防御障壁が本来の力を発揮できていれば、どんな熱線も平気だった筈だが、
この期に及んでも、やはり、<戦士>として戦う事への憂悶が、
心の内側に澱となって沈殿し、意志のエネルギーを減退させ続けている。
夢幻界の女王から与えられた幾つもの加護も、明暗の均衡が失われた今となっては失われたも同然で、
生命活動をギリギリの水準で維持するだけで手一杯の状態だった。
「さぁて、デルフィナちゃん。武器を捨てて、降りてきて貰おうかしら」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべつつ、
炎の魔人は、呻き続ける優子を引き据えて、もう一人の獲物を振り返った。
そして、悔しさに唇を噛み締める彼女に、最後の決断を迫るべく、
今度は、五本の指の先端からシゥウシュウと真っ白な煙の立ち上る左手を、
人質の胸元――――黄金の甲冑に包まれた形の良い乳房へと近付けていく。
「や、やめろッ・・・・やめてくれッ!!」
屋上から降り注ぐ女剣士の声は、ほとんど悲鳴に近かった。
だが、暗黒界の魔将軍は、何も聞こえないフリをしたまま、
焼け火箸のように赤熱した指先を、情け容赦なく、乙女の柔肌へと食い込ませる。
<鎧>に残った僅かな加護の力が侵入者を阻もうと必死の抵抗を試みたものの、
難なく打ち破られて、ほどよく実った脹らみは、防具もろとも、鷲掴みにされてしまった。
再び、肉の焼ける異臭と異音が周囲に立ち込め、
淀みきった空気を切り裂いた悲痛な叫びが、辺り一面に轟き渡る。
「クックックッ、やめて欲しいの?だったら、さっさとアタシの言う通りにした方が賢明よ。
・・・・まぁ、この小娘が黒焦げになる所を見たいのなら、話は別だけどねぇ」
「くぅ・・・・わ、分かった」
低く、声を落とすデルフィナ。
元より、<鎧>がアテにならないからには、要求に従う以外に目の前の少女を救う道は無かった。
無論、卑劣さが服を着て歩いているような男が相手では、指示通りにしたからといって、
最終的に優子の安全が保証されるとはとても思えないが、
それでも、隙を見付けて、彼女一人だけでも逃がすぐらいは可能かもしれない――――。
(どうか、お許しを・・・・アイザードさま)
断腸の思いで亡き主に詫びつつ、愛刀の切っ先を足元に突き立てる隻眼の剣士。
にやつきながらパートナーの胸を揉み回している、暗黒五邪神の顔を、きッ、と睨み付けた。
可能ならば、無感情を装いたかったが、努力の甲斐なく、その表情には無念さが滲み出している。
戦いに敗れた暗黒界の住人に可能なのは、勝者の前に膝を屈し、慈悲を願う事だけ、
まして、<ヴァリスの戦士>という人質を握られている以上、反抗の素振りさえ示す訳にはいかない、と、
頭では理解していても、やはり、降伏の意を示すのは無性に腹立たしく、情けないと感じられてならなかった。
「フフフ、やっと素直に言う事を聞く気になったのね」
愛用の曲刀を打ち捨てて、丸腰のまま近付いてくるエルフの姿に、
ヴェカンティの大貴族は、遊び飽きた人形を放り投げる幼児そのままに、優子の体を振り落とした。
もっとも、さすがに逃亡の可能性は考えているのだろう、
手早く呪文を唱え、周囲に炎の檻を幾重にも張り巡らせるのは忘れなかったが。
(チィッ、ベノンめ、さすがに完全に警戒を解いてはいないか・・・・)
勝利に酔いつつ、万一の事態への備えは怠らない意外なしたたかさに、
己れの考えの至らなさを思い知らされ、暗澹たる気分に襲われる、隻眼の美女。
優子を――――主から託された<ヴァリスの戦士>を逃がすためならば、
たとえ、剣士のプライドをかなぐり捨て、女としての恥辱にまみれようとも悔いは無い、と決意してはいたが、
それすら叶わないのであれば、何の意味も無いのではないだろうか・・・・?
(ダメだッ。これぐらいで諦めてどうする!?
あの方の理想を実現できる者は、もう私しか残っていないんだぞッ!!)
心の中で強くかぶりを振ると、デルフィナは、弱気に陥りかけた自分自身を叱り飛ばし、気力を奮い立たせた。
アイザードの部下として、否、同志として、彼の理想に殉じる覚悟は出来ている。
たとえ、カラダを汚され、白濁にまみれようとも、
生命尽き果てる瞬間まで、眼前の下劣漢に一矢報いる機会を狙い続けてやるのだ・・・・!!
(ほう、まだこんな生意気なカオをするワケ?
クククッ、さすがはあの若僧の情婦ってところかしら。
まぁ、いいわ。その態度がいつまで保つか、試させてもらうとしましょう)
圧倒的に劣勢な状況下にあってもなお、
矜持を捨て去る事無く、昂然と自分を睨みつけてくる女エルフに、
暗黒五邪神の双眸の奥では暗い嗜虐の炎がメラメラと燃え上がった。
この期に及んでもなお、楯突くのを止めぬ、というなら容赦はしない。
いっそ殺して欲しい、と懇願するようになるまで、徹底的に責め抜いて、
抵抗心をへし折り、プライドをひしゃぎ潰して、絶望のどん底に叩き込んでやるだけだ。
(フフフッ、後悔させてやるわよ・・・・このアタシを本気で怒らせた事をねぇッ!!)
「まずは・・・・そうねぇ、ここに這いつくばりなさい。
そして、立派なお尻を、小娘にもよぉく見せてやってちょうだい」
プライドをしたたかに打ち据える、嘲りの眼差し。
だが、デルフィナは、屈辱に蒼褪めながらも、一言も発さずに、
ゆっくりと地面に屈み込み、赤ん坊の如く、四つん這いの姿勢を取った。
「そんな・・・・デルフィナさんッ!!」
叫んだのは、炎の檻に囚われた少女の方だった。
だが、金髪のエルフは、敢えて、目を合わせようとはせず、沈黙を決め込む。
今の彼女の様子を視界のうちにとらえようものなら、
自分の中に充満している、悔しさやら情けなさやらが、理性の箍を弾き飛ばして、一気に暴発しかねない。
そうなれば、一巻の終わり・・・・武器を捨てた剣士と戦う意志を失った戦士に勝ち目などあろう筈もなく、
二人仲良く魔性の業火に包まれて、消し炭に変えられる末路が待っているだけだろう。
「ほらほら、お嬢ちゃんも心配してるわよ。
ボロボロになるまで犯されて、おつむがパーになる前に、何か言い残してやったらどう?」
「・・・・・・・・」
悲壮な決意を知ってか知らずか、変態貴族の嘲弄は執拗に続く。
容赦ない言葉の暴力に、美しい口元が醜く引き攣っていった。
パートナーの前で、無様に地面に這いつくばらされているだけでも充分に屈辱的だったが、
更に臀部を高々と振り上げ、交尾を仕掛けられる雌犬のような姿勢を維持しなければならないのである。
「アハハハッ、いいわぁ、その表情・・・・眺めてるだけでゾクゾクしてきちゃう」
これで何度目だろうか、けたたましい哄笑が響き渡る。
加えて今度は、斬り落とされずにいた左手を使って、目の前で揺れ動く革製のスカートを捲って、
下に隠された、簡素な麻のショーツを露出させるというおまけ付きだった。
下着越しに感じるおぞましい感触に、顔面を朱に染める隻眼の美女・・・・
かろうじて、握り締めた拳をブルブルと震わせる以上の行動に出たりはしなかったものの、
激しい怒りとそれに倍する悔しさに責め苛まれているのだろう、
張り裂けんばかりに見開かれた双眸の奥には、我知らず、熱い涙滴がジワリと浮かんでいる。
「クックックッ、どうしたの、まだ下着の上から触ってるだけよ?
今からこの調子じゃあ、いくらも保たないわよォ?」
悦に入りながら、耳障りな声で囁きかける暗黒五邪神。
四つん這いになった女囚は、ぎりりっ、と、奥歯を噛み鳴らし、唇を血が滲むほど強く食い締めて、
下穿きの表面を這い回る、節くれだった指先の動きに堪え続ける。
何度か愛撫を繰り返して、おおよその性感帯の位置を確認し終えたベノンは、
ひと呼吸の後、ショーツの縁を鷲掴みにし、にんまりといやらしい笑みをこぼした。
「ほ〜〜〜ら、ご開帳よォ。
アンタの恥ずかしいトコロ、たっぷりと拝見させてもらうわ」
荒々しい息遣いと共に、左手から毒々しい緑色の炎が立ち昇り、薄布へと燃え移る。
一瞬、全身を硬直させるデルフィナだが、
さいわい、彼の行為は邪魔になる布切れを燃やし尽くすのが目的であり、
彼女の下半身をバーベキューにしたいという訳ではなかった。
魔性の炎は、簡素な布切れをメラメラと炎上させ、瞬く間に灰へと変えてしまったものの、
たわわに実った豊満な美尻にも、肉付きの良い、むっちりとした太腿にも、
そして、勿論、頭髪と同色の縮れ毛に覆われた恥丘にも、一切危害を及ぼす事は無かったのである。
「へへぇ・・・・さすがエルフの牝ねぇ。
見てくれといい、弾力といい、肌触りといい、最高だわ」
一糸纏わぬ姿に剥き上げられた、妖艶な腰、
分けても、豊かな質感に恵まれたヒップの曲線に、熱い眼差しが注がれる。
暗黒界の大貴族は、不健康な紫色をした長い舌先で、人差し指をベロベロとしゃぶると、
唾液を塗りつけた先端部分を、白桃色の尻たぶの間――――左右の脹らみに挟まれた肉溝へと伸ばし、
小刻みに震え慄く柔肌のわななきとじっとりと汗の滲んだ淫靡な感触とを愉しみ始める。
「あうッ・・・・くッ・・・・うううッ!!」
敏感な場所をネチネチと弄ぶ、ベノンの手付きは、悪辣なまでに巧妙だった。
これに後押しされる形で、肺腑の底から押し寄せてくる熱い衝動に対して、
隻眼の剣士は、自制心を総動員して口元を引き締め、必死の防戦を試みたものの、
ともすれば、湿り気を孕んだ吐息の塊は切迫した喘ぎへと変化して溢れ出してしまう。
恥ずかしいやら情けないやらで、思わず、真っ赤に赤面する女エルフ・・・・
その様子を冷やかに見下しつつ、炎の魔人は責めの対象を尻たぶ全体へとエスカレートさせ、
匂い立つような白いフルーツを力強いストロークで揉みしだいた。
「はくぅッ!!こ、これぐらいの事で・・・・ひはぁッ!!
・・・・か、感じたりなんか・・・・はひゃあッ・・・・するものかぁッ!!」
端正な顔立ちを苦悶に歪め、額には脂汗まで浮べつつも、
襲い来る悦楽の大波に抗い、押し返そうと試みる。
だが、快楽を否定する言葉の合間に漏れる切迫した呼吸音は、
着実に蓄積していく性感の影響だろう、甘い響きを増し続けていた。
「ホホホ、痩せ我慢はカラダに良くないわ。もっと自分に素直になった方が楽になれるわよ?」
「う、うるさい・・・・んはぁぁッ!!」
むっちりとした尻たぶに絡み付いた左手がゆっくりと弧を描くたび、
適度な弾力と瑞々しさを兼ね備えた柔肉の塊がガクガクと震え上がった。
陰険姑息な陰謀家であるベノンの性格は、性技の面にも色濃く現れており、
焦らず急がず、ネチネチと獲物を嬲り抜こうとする。
無論、デルフィナとて、アイザードに処女を奪われて以来、幾度と無く、色事の修羅場も経験し、
多少の責めでは動じないという自負を抱いてさえいたのだが、
宿敵の技量の高さは、率直なところ、予想外と認めざるを得なかった。
「あらあら、オマンコから垂れたおツユで太腿がベトベトじゃない。
アナルもぷっくり膨らんで良い匂いがしてきたわ・・・・ウフフ、やっぱり、カラダは正直なモノねぇ」
「だ、だまれッ・・・・あひぃぃッ!?」
未だ口だけは達者だが、冷酷な指摘通り、女エルフの熟れた肢体は、
暗黒界を離れて以来、久方ぶりとなる牡との交わりに興奮し、肉のヨロコビを受け容れ始めていた。
だが、それを認めるという事は、彼女にとって、一人の女としての陥落というだけではなく、
アイザードの最後の部下、あるいは同志の敗北を意味している。
(ま、負けない・・・・絶対に負ける訳にはいかないッ!!)
子宮の奥から湧き出してくる熱い衝動が下半身全体へと広がっていくのを自覚しつつ、
女剣士は歯を食いしばり、続けざまに何度もかぶりを振った。
忠誠を誓った主であり、理想を分かち合った友であり、
何より、夜毎に寝床を共にし、朝まで互いを睦み合った愛しい男の生命を奪った、憎むべき敵・・・・
その外道によって組み敷かれ、好き放題に弄ばれているだけでも屈辱だというのに、
ましてや、こんな男の性技に屈して快楽に溺れるなど、死んでも御免である。
たとえ、優子を逃がすためであろうと、そんな痴態を晒すような事があれば、
デルフィナは、自分自身を決して許さない、と心に固く誓っていた。
――――そう、奸智に長けた指先が、鋭敏さを増した排泄器官へと押し入り、
あの青年魔道士ですら与える事の出来なかった、禁断の快感を刻み付ける瞬間までは・・・・。
にちゅッ・・・・ぢゅぐちゅッ!!
「ひぎッ!?な、何・・・・そこはッ!?」
何の前触れも無く、不浄のすぼまりを抉り抜かれて、
女エルフは苦痛に顔面を引き攣らせ、甲高い絶叫を炸裂させる。
――――否、単に肛門に異物を突っ込まれただけならば、
いくら不意をつかれたとはいえ、こうまで無様な姿を晒したりはしなかっただろうが、
ベノンの尻穴責めには、いかにも彼らしい、陰虐な第二段階が用意されていた。
「フフフ、覚悟なさい。今から、アンタの尻穴、こんがりとローストしてあげる」
高らかに宣言すると、炎邪の二つ名を冠せられた暗黒五邪神は、
狭苦しいアナルに突き入れた指先から、直腸めがけて火炎を噴射した。
無論、内臓器官へのダメージを与えるのが目的ではないため、
致命的な損傷を引き起こす事の無いよう、熱量を最低レベルに絞ってのものだったが、
さしもの女偉丈夫も、身体の内側に火を放たれては、とても冷静さなど保てない。
無防備状態の粘膜が炎に焙られ、括約筋が、ギクギクギクッ、と狂ったような痙攣を発するのと同時に、
彼の目論見通り、デルフィナの理性は吹き飛び、感情は焼死への恐怖によって支配されてしまった。
「あぐぁうぅッ・・・・ひあぎぃいいいッッッ!!!!」
凄絶な絶叫を迸らせる、隻眼の美女。
真っ赤に充血した菊門からは、湯気とも煙とも付かない白い気体が漏れ出し、
かすかに焦げ臭い匂いが、しばらくの間、周囲に立ち込める。
その瞬間、すでにパニックに陥っていた思考は完全に崩壊し、彼女の抵抗は最後の時を迎えた。
「ヒャハハハッ!!さすがに、アナルに放火されるなんて思わなかったでしょう!?
クククッ、でもね、こんなのはまだまだ序の口よ。次はもっと素敵な経験をさせてあげるッ!!」
「ひいいッ!!い、いやぁッ・・・・来ないでェェッ!!」
ベノンの言葉に、哀れな敗北者は、もはや生きた心地も無く、
必死に体をよじって逃げ出そうと試みる。
・・・・だが、生きながらにして内臓をホルモン焼きにされる戦慄は、
先程までの気丈な表情を微塵も無く消し去り、手足を萎え縮ませてしまっていた。
憎むべき敵の目の前で、地べたを這い摺り回るしかない無残な変わり様に、
クククッ、と喉を鳴らした炎の魔人は、肛門から引き抜いたばかりで腸液の滴る手指で、
振り乱され、ベットリと汗に濡れそぼったブロンドを引っ掴み、無理矢理に顔を上げさせる。
「ハッ、甘ちゃんのアイザードなら兎も角、アタシから逃げられるとでも思ってるのかい!?」
パニックに陥り、泣き喚く生贄に向かって残忍な笑いを浮べると、
ベノンは、ゴミの袋でも投げ捨てるかの如く、彼女の身体を放り投げた。
さらに、瓦礫の中に倒れ込んだ彼女の周囲を取り囲む形に、
とぐろを巻いた大蛇の姿をした炎の帯を展開させ、オレンジ色の鎌首をもたげて威嚇する。
「さあ、続きを始めるわよ。
今度逃げようとしたら、そいつにアンタの尻穴を食い破らせるから、覚悟なさい」
四方から業火に押し包まれ、逃げ場を失った女囚に近付きながら、
暗黒界の大貴族が冷酷極まりない宣告を発すると、
魔力で出来た蛇は、まるで意志を持っているかの如く、猛々しく燃え盛る。
その様子を恐怖に凍てついた目で眺めながら、自動人形のようにコクコクと何度も首肯する隻眼のエルフ・・・・。
禍々しく舞い踊る炎光が絶望に駆られた哀れな犠牲者の横顔を照らし出し、
見る影も無く憔悴しきった表情を、グロテスクなまでに写実的に浮かび上がらせた。
「フフフ、じゃあ、コレをしゃぶってもらおうかしらねぇ?」
ニィィ、と唇を歪めた炎の魔人の手が、小高く隆起して、テントを張っている股間へと伸びる。
悪趣味なまでに華美な装飾で飾り立てた甲冑の下から姿を現したのは、
一体、どれだけの女を犯せばこんな色に染まるのだろうか?
信じられない程、どす黒く濁りきり、ぞっとするような臭気に包まれた醜怪な肉の盛り上がり・・・・。
「ひィィッ・・・・!!」
ビュクン、ビュクン、と不気味に脈打つ陰茎を一目見るなり、
囚われのエルフはおぞましさに口元を強張らせ、弱々しくかぶりを振った。
だが、ベノンは、お構い無しに、大きくエラの張り出した亀頭を唇に押し付け、
左手を彼女の後頭部に回して動きを封じつつ、そのまま強引に突入させようとする。
歯並びを割って押し入ってくる侵入者の不気味な感触に、
猛烈なえずきに襲われたデルフィナは、くぐもった悲鳴を漏らして悶絶するだけ・・・・。
「ヒャハハハッ!!どう、アタシのイチモツはッ!?
アイザードのフニャチンなんかとは比べ物にならないでしょう!?」
狂気じみた哄笑を放ち上げながら、
暗黒界の魔将軍は、口腔を冒した肉槍を喉奥にまで突進させた。
気道を塞がれて呼吸もままならなくなったのだろう、
デルフィナの声が弱々しくなり、顔色に至っては蒼白を通り越して土気色へと近付いていく。
「あうう・・・・も、もう・・・・うぐッ・・・・やめて・・・・い、息がぁ・・・・!!」
苦悶に満ちた表情を浮かべ、息も絶え絶えに赦しを乞う女剣士。
それでも、責めの手は緩められる気配さえ無く、
否、むしろ、もはや呻き声すら擦れかけている獲物の姿にサディスティックな悦びを見出して、
酸欠状態に陥りかけた美しい犠牲者の喉の中で、イマラチオの快楽を堪能し続ける。
(これは・・・・これは本当に現実なの・・・・?)
禍々しい瘴気を帯びた火牢の中から、今まさに朽ち果てなんとしているパートナーを眺めつつ、
敗残の<戦士>は、地面に突っ伏し、茫然と呟きを漏らした。
(デルフィナさん・・・・ごめんなさい・・・・私のせいで・・・・)
残された最後の希望が、呆気なく潰え去ろうとしている事実を目の当たりにして、
少女の精神もまた、果てしない虚無に呑み込まれようとしていた。
敗北感と無力感、そして、絶望感――――圧倒的なマイナスの感情が大波となって押し寄せ、
己れの内面にある全てが、漆黒・・・・<ヴェカンタ>の暗色によって塗り潰されていく。
(何もかも・・・・無駄だったというの?
わたしの戦いも・・・・アイザードの自己犠牲も・・・・)
邪悪な魔道の業によって生み出された炎の牢獄・・・・
時折、隙間から垣間見える市街もまた、破壊と殺戮に満ち溢れている。
自分の見慣れた街が、自分が生まれ育った世界が、
信じられないくらいに容易く、叩き壊され、焼き尽くされていく光景に、
優子の心はポッキリと折れたまま、回復する兆しさえ無く、
ただひたすら、無力な自分自身に向かって、血を吐くような呪詛の言葉を投げ付ける事しか出来ないでいた。
「何が<ヴァリスの戦士>よッ!!わたしには何の力も無いじゃないッ!!
誰かを救うための力も・・・・何かを守るための力も・・・・私には何一つ出来やしないッ・・・・!!」
――――――――TO BE CONTINUED.