――――永劫の闇の中。廃墟と化した校舎の教室で。  
 
「フフフ、もう終わりなの?」  
 
傾きかけた黒板を背に、教卓の上に脚を組んで座りながら、  
足元に転がる人影を冷やかに眺め下す、赤毛の少女・・・・桐島麗子。  
薄汚れた教室の床に蹲り、弱々しく肩で息をしているのは、  
かつて、この学び舎で彼女と机を並べていた事もある、もう一人の少女。  
 
身に纏う黄金の甲冑は、すでに往時の輝きを失い、  
あちこち毀たれヒビが入って、かろうじて原形を留めているに過ぎなかった。  
鎧の下のしなやかな肢体にも、無数の打撲や擦過の傷痕が生々しく刻み付けられ、  
乙女の柔肌は、出血や打ち身によって、無残に荒れ果ててしまっている。  
トレードマークであり、最大のチャームポイントとして全校生徒の憧れの対象であった、  
腰まで伸びた美しい蒼髪でさえも、汗と埃にまみれ、見る影もなく汚れきってしまっていた。  
 
「安心するといいわ、優子。すぐに殺したりはしないから。  
もうしばらくは生かしておいてあげる・・・・と言っても、そんなに長くではないけれど」  
 
軽快な動作で床に飛び降りると、  
目の前の元クラスメイトの顔を捻り上げて、強引に自分を振り向かせる。  
暗くて良く分からないが、薄青色の双眸には既に意志の光はなく、  
乱暴きわまる扱いに対しても、抵抗らしい抵抗は一切示そうとしなかった。  
 
フン、と、つまらなそうに鼻を鳴らした暗黒界の少女は、  
優子の身体の傍に落ちているモノに、チラリ、と視線を走らせる。  
転がっていたのは、かつて、<ヴァリスの剣>と呼称されていた存在、  
暗黒界の将兵達の畏怖の的となっていた恐るべき武器のなれの果て・・・・。  
アンチ・ヴァニティの異能によって、主である<戦士>との繋がりを断ち切られ、  
物質としての実体を維持する事すらままならなくなった挙句、  
まるで、酔っ払いの吐き出した嘔吐物のような、得体の知れないゲル状の物体と化して、  
かろうじて現実界にへばりついているだけの存在と成り果てた魔道金属の残り滓だった。  
 
「・・・・あぁ・・・・あああ・・・・」  
 
消耗しきった少女の唇から漏れる、すすり泣くような呻き声。  
絶望に侵食されきった哀れな響きに、黒衣の<戦士>は、ニィィッ、と笑みを浮かべた。  
 
「せいぜい、敗北の味を噛み締めるといいわ・・・・」  
 
囁くように呟くと、力なく半開きになっている唇に、自らの柔かい口元をあてがい、  
うっすらと血の味の滲むその花弁をゆっくりと吸い始める。  
 
「んむぅ・・・・むふぅうん」  
 
僅かに残っていたプライドの為せる業だろうか、  
なけなしの気力を振り絞った蒼髪の少女が、屈辱的な接吻を撥ね退けようと試みた。  
だが、<ヴァリス>の加護を失い、傷付き弱り果てた彼女に、抵抗の手段などあろう筈がない。  
 
「んぁ・・・・むはぁうッ!!」  
 
口惜しさと敗北感とが、ヌルヌルとした涙の滴となって蒼褪めた頬筋を流れ落ちていった。  
なす術もなく、一方的に吸い立てられ、舌先を突き入れられ、  
粘膜という粘膜を余す所なく舐め回される自分が、不甲斐なくて堪らない。  
 
「ふぁう・・・・はうくぅ・・・・ふぁはううう!!」  
 
生温かい唾液が、渇き切った口腔にじんわりと染み渡っていく。  
このままではいけない、と思いつつ、撥ね退ける事も叶わず、侵略を受け続けるしかない、懊悩。  
いつしか、巧妙な愛撫は、ぐったりと沈黙していた己れの性感をも蘇らせ、麻薬的な快楽へと誘っていく。  
 
「あああ・・・・はぁひぃ・・・・ひはぁう・・・・ひはぁああッ!!」  
 
次第に相手のペースに飲み込まれていくのを感じながらも、  
どうする事も出来ず、己れの無力を呪うしかない蒼髪の少女。  
対する赤毛の少女もまた、敗残の宿敵の哀れな姿に、喜悦の高まりを押さえ切れず、  
燃え盛る欲情が熱い滾りとなって心身を覆い尽くす、無上の快楽に酔い痴れている。  
 
――――と、次の瞬間、麗子の視界は眩く輝く白い光に包まれ、何も見えなくなってしまった。  
 
「フン、なんだ、夢か・・・・ここは?」  
 
ぼんやりとした顔付きのまま、周囲を見渡す、赤毛の少女。  
暗黒界――――ログレスの居城から、別の次元へと強制的に移動させられたせいなのか、  
頭の芯にどんよりとした重たい感覚が纏わりつき、こめかみの辺りがズキズキと痛む。  
 
天に向かって聳え立つ、白亜の建造物。  
整然と舗装された車道を引っ切り無しに行き交う、鉄の乗り物。  
思い思いの服装で着飾り、街角に繰り出した若者達の群れ。  
 
「現実界?フン、いつもながら、退屈な風景ね」  
 
――――だが、しばらく時間が経過して、  
次元移動に伴う副作用によって一時的に減退していた五感が徐々に回復していくにつれ、  
周囲の雰囲気が普段とは全く異なっていると気付く事になる。  
 
あちこちで鳴り響く、急ブレーキの音とけたたましいクラクション。  
パトカー、救急車、消防車・・・・何種類ものサイレンが重なり合い、延々と連なる異様な多重奏。  
上空では、報道と警察を合わせて何十機ものヘリがローターの爆音を競っていた。  
そして、街頭に繰り出している群衆もまた、  
三々五々輪になっては、声高に、あるいは、ヒソヒソと、深刻な口調で会話を交わしている。  
 
「・・・・一体、何が起こっているというの?」  
 
何かの事故か、それとも、テロ事件でも発生したのだろうか?  
訝しげに首をかしげる<ヴェカンタの戦士>・・・・と、次の瞬間。  
 
「お前のおトモダチの仕業に決まってるじゃないかッ!!」  
 
不意に、背後から掛けられた言葉。  
反射的に身構えつつ、振り返った先に待っていたのは。  
 
「りゅ、竜!?」  
 
驚愕に目を瞠る麗子。  
――――勿論、現実界、それも、高層ビルの林立する東京のド真ん中に、  
ドラゴンなどという幻獣が現れた事実も驚きには違いなかったが、  
同じくらいに彼女を唖然とさせたのは、  
背中に生えた蝙蝠羽根をパタパタとせわしなくはばたかせている彼の大きさ、・・・・否、小ささだった。  
 
「・・・・ち、ちっちゃッ!!」  
 
我知らず、両目をぱちくりとさせる赤毛の少女。  
突如として現れた暗黒界の魔獣は、身の丈わずか3、40センチメートルほど、  
体長も、尻尾の先まで含めて、ようやく1メートルに達するかどうか?という程度でしかない。  
 
「ちっちゃ言うなッ!!」  
 
対する子竜は、精一杯のしかめっ面を作り、抗議の台詞を口にする。  
・・・・だが、ヌイグルミ大の体に、愛くるしい顔立ちのベビーサイズ・ドラゴンが、  
いくら威勢を張ってみたところで、滑稽以外の何物でもなかった。  
<ヴェカンタの戦士>としてログレスの傍らにあった頃、  
暗黒五邪神の一将でもある、双頭の金竜・ヴォルデスをはじめ、  
巨体を誇る邪竜ならば何匹も目にしてきたが、  
こんなミニサイズの竜を見るのは初めてで、無意識のうちに口元が緩んでしまう。  
 
「俺の名はドラゴ。  
由緒正しき風の竜、アイザード様の右腕にして、優子を誘う導き手」  
 
「はあ?」  
 
名乗りを聞いてなお、半信半疑といった表情の少女に、  
ますます怒りのボルテージを上昇させながら、幼生ドラゴンはまくしたてた。  
 
「<ヴァリスの戦士>に合流する前に、お前を抹殺するよう命を受けている。  
その身体、殺すには実に惜しいが、  
我が主の洗脳から解き放たれ、ログレスの手駒に戻ったからにはやむを得ない」  
 
ここまで事情に通じている以上、もはや話の信憑性を疑う訳にはいかないだろう。  
とはいえ、麗子が<影の剣>を実体化させるには、なお幾許かの時間と労力が必要だった。  
対して、アイザードの腹心を自称する子竜は、  
一方的にお喋りを打ち切るが早いか、先手必勝とばかり、何やら口早に呪文を唱え始める。  
 
――――ギュオオオオッッッ!!!!  
 
小さな体とは全く不釣合いな、強大な魔力の気配が渦を巻く。  
うなじの辺りに、ヒヤリ、としたものを感じた赤毛の少女が、咄嗟に飛び退いた瞬間、  
巨大なカマイタチと化した大気が彼女がいた場所を薙ぎ払い、  
背後にあった駐輪場に激突して、無数の自転車を残骸へと変えてしまった。  
 
「クククッ、俺を舐めるなよ、小娘」  
 
相変わらず、精一杯背伸びした口調と態度のドラゴ。  
しかし、外見は兎も角、続けざまに、強力な風の魔術を連発出来る実力は、  
アイザードの右腕との名乗りが単なるはったりではないと証明していた。  
自然と、麗子の表情も険しくなり、ラベンダー色の双眸に気迫がみなぎっていく。  
 
――――ギィィィンッッッ!!  
 
左右にステップを踏みながら、襲ってくるカマイタチをかわしていく。  
・・・・と、目標を逸れた大気の刃の一つが、  
破壊し尽くされた駐輪場を飛び越えて、市街地の方向へと突進していった。  
 
「くッ!?」  
 
半ば反射的な動作で、漆黒の邪剣を振るう麗子。  
剣先から迸った衝撃波は、間一髪、道路脇の人々を血まみれの肉塊に変えられる運命から救い出したが、  
その光景を目の当たりにした子竜は甲高い笑い声を放ち上げた。  
 
「うひゃひゃひゃッ!!こりゃ珍しいものを見せてもらったぜッ!!  
暗黒界の<戦士>が人助けとはねぇ。ガラにもなく、里心でも出ちまったか!?」  
 
「う、五月蝿いわねッ!!もう容赦しないわよッ!!」  
 
怒りを露わにした赤毛の少女が<影の剣>を振り払う。  
気合いと共に放たれた斬撃が、黒い旋風となって襲い掛かると、  
さすがの風のドラゴンも、呪文の詠唱を止めて、回避行動に走らねばならなかった。  
その間に、<ヴェカンタの戦士>は、背後を気にせずに戦える場所へと回り込むと、  
愛剣を正眼に構え直して、油断無く五感を研ぎ澄ます。  
 
「フフフ、やっと本気になったみたいだな。  
それじゃあ、こっちも少しやり方を変えるとしようか」  
 
言い放つなり、ドラゴは背中の翼をはばたかせ、急上昇した。  
驚きつつも、心を乱す事無く、冷静な視線で上空の敵を追尾する麗子。  
・・・・だが、次に起きた出来事には、<ヴェカンタの戦士>も慄然とならざるを得なかった。  
 
「な、何ッ!?」  
 
子竜の蝙蝠羽根からどす黒い瘴気が立ち昇り、禍々しい手指の形状を形作ったかと思うと、  
巨大な手刀と化して、つむじ風のような勢いで襲い掛かってくる。  
不気味なうなり声を上げて降り注いでくる、右手の正拳突きに、  
殆ど予備動作無しで放たれる、横殴りの左フック。  
凄まじい拳圧に、バンダナでまとめた、燃えるような赤髪がバタバタと舞い、  
寸断された幾筋かが、赤銅色に輝きながら空中へと巻き上げられていく。  
 
「チッ、チビのくせして、色々とやってくれるじゃないッ!!」  
 
紙一重のところで攻撃を見切り、回避を続ける黒衣の少女。  
深々と地面に突き刺さった筈の拳は、まるで、ゴムで出来ているかのようにすぐに元に戻り、  
ほとんど間を置かず、神速の突き手となって撃ち込まれてくる。  
 
「ほれほれ、逃げてばかりじゃ、すぐに息が上がっちまうぞ〜」  
 
幼い容姿には似つかわしくない、冷酷な笑みを浮かべながら、  
風竜は的確な攻撃で麗子を追い詰め、防戦一方へと追いやっていく。  
対する赤毛の少女も、反撃の糸口を掴もうと、懸命に<影の剣>をふるって剣圧を放つものの、  
子竜の周囲に張り巡らされた大気の防壁は、多少の衝撃波ではビクともしなかった。  
かといって、呼吸を整え、精神を集中して、より強力な斬撃を生み出そうとすれば、  
必然的に回避動作が緩慢となり、漆黒の拳の餌食となるのは目に見えている。  
 
「くぅぅッ・・・・この程度の攻撃で、あたしを仕留められるとでも思ってるのッ!?」  
 
嘲りの言葉に悪態で切り返す、暗黒界の<戦士>。  
だが、体勢は不利となる一方で、好転の兆しは全く無かった。  
次元移動の直後というコンディションの悪さも重なり、体力の消耗はいつも以上に激しく、  
クソ生意気なドラゴンの指摘通り、手足の筋肉は早くも悲鳴を漏らし始めている。  
そして、このままでは後が無くなる、という焦燥が、ジワリジワリと滲み出してきては  
許容限界をオーバーするプレッシャーとなって圧し掛かってくるのだった。  
 
――――――――そして、ついに・・・・。  
 
「くぅッ!?し、しまったッ!!」  
 
撃ち出されてきた豪拳を紙一重の差でかわしたところを目がけて、  
反対方向からの、回避動作の限界点を完璧に見切った掌底。  
かわす事など到底不可能なタイミングでの一撃に、  
反射的に受け身を取ってダメージを減らそうとする麗子だったが・・・・。  
 
「つ〜かまえた、とッ!!」  
 
酷烈な衝撃の前に、一瞬、意識が途切れ、  
正気に戻った時には、鉤爪の生えた黒い手指によって全身を絡め取られてしまっていた。  
ウロコの剥がれ落ちた爬虫類のような不快な感触と、  
華奢な体躯をへし折らんばかりに容赦なくギリギリと締め付けてくる圧力とが、  
傷付いた少女に、己れの置かれた絶望的な状況を認知させる。  
 
「ウヒャヒャッ、やわらかボディがたまんねぇぜッ!!」  
 
その上、ドラゴは、勝ち誇った笑いを放ち上げながら、  
苦痛に表情を歪め、呻き声を上げる<ヴェカンタの戦士>のカラダを、  
まるで、新しく買い与えられた玩具を手にした幼児の如く、弄り回し始めた。  
 
「なッ!?ど、どこ触ってるのよ、この変態ドラゴンッ!!」  
 
人間としての尊厳など歯牙にもかけず、柔肌を無遠慮にまさぐる破廉恥な所業に、  
<戦士>としての、というよりも、むしろ、一人の乙女としてのプライドをズタズタにされて、  
麗子は顔面を真っ赤に紅潮させながら、猛然と糾弾の言葉を投げ付ける。  
・・・・だが、緑色の鱗の幼竜は、彼が主と認めた元夢幻界人の魔道士と異なり、  
敗者の正義など、負け犬の遠吠え以外の何物でもない、という考え方の持ち主だった。  
 
「そのキツイ顔で罵られるのは、なかなかのご褒美だなァ〜。  
フフフ、すぐにラクにしてあげても良かったけど、気が変わっちゃったよ。  
やっぱり、あの世に旅立たせてやる前に、たっぷりとオシオキしてあげないとね〜」  
 
言い終えるなり、ドラゴは、今しも華奢な体を捻り潰さんとしていた黒い拳を、  
再度、全く別の形状へと変容させた。  
 
「きゃぁああッ!!」  
 
あたかも黒い磔柱の如く、背中に張り付いた本体部分に、  
四肢の付け根へと絡み付いて身動きを封じてしまう、先端部分のツル状の触手。  
さらに、生ける磔刑台と化したドラゴンの片翼がX字状に展開されると、  
漆黒の拘束具によって繋がれた手足は、否応無く、引っ張られていく。  
抵抗する術とて無いままに、両手両足を目一杯広げてバンザイをするポーズを強要される赤毛の少女。  
肩甲骨と股関節とが許容可能なギリギリの角度まで、大きく開脚開腕を強いられた姿は、  
あたかも、車に轢かれてペシャンコになったカエルのように屈辱的な代物だった。  
 
「こ、殺すのなら、さっさと殺しなさいよッ!!」  
 
ラベンダー色の瞳を血走らせながら悪態をつく、<ヴェカンタの戦士>。  
しかし、その語尾は、かすかにではあったが、  
間近に差し迫った危険――――拷問への恐怖に震えている。  
 
「もちろん、殺してやるとも。お前のカラダをたっぷりと味わった後でね。  
まず最初は・・・・ココからだッ!!」  
 
高らかに宣言するなり、子竜は麗子に向かって躍りかかり、  
120度に開腕を強要された状態で磔柱に結わえ付けられた、ほっそりとした右腕の付け根部分・・・・  
黒曜石を磨き上げたかのような胸甲との対比によって、  
その生白さを一層引き立てられている、腋の下へとしゃぶりついた。  
 
「ひぃいいいッ!!!!」  
 
東京都心のど真ん中に響き渡る、引き攣った悲鳴。  
普段であれば、たちまち人だかりが出来、カメラのフラッシュが殺到するところだが、  
ベノンの襲撃で都内各地が騒然としている現状では、皆、それどころではないらしい。  
それでも、何人かの足音が近付いてくる事に気付いたドラゴは、  
小さく、現実界人め、と舌打ちすると、背中から新たな蝙蝠羽根を出現させ、  
地上の人間共の視界から遠ざかるべく、地上数百メートルの高度まで一気に急上昇した。  
 
「フヘヘヘ、ここなら泣こうが叫ぼうが誰も邪魔は出来ないぜ。  
・・・・まぁ、衆人環視の中でお前を嬲り尽くす、ってのも一興だったけどなァ」  
 
耳元で囁くと、幼生ドラゴンは、早速、中断していた作業を再開した。  
ヒクヒクとひくつく上腕筋の様子を見やりつつ、  
甘酸っぱい匂いのこびりついた白桃色の谷間にざらついた舌先をなすりつけ、  
アイスキャンデーをしゃぶるように、丹念にペロペロと舐め回す。  
 
「ひぁあッ!!や、やめなさいよ、このヘンタイッ!!」  
 
羞恥のあまり、声が裏返りかけている赤毛の少女。  
胸や尻、いや、せめて太ももぐらいならばまだしも、  
こんなマニアックな場所を集中して責め立てる子竜の神経が腹立たしく思えてならない。  
だが、変態呼ばわりにもめげる事無く、否、むしろ一層、目を輝かせながら、  
ドラゴは、腋の下のくぼみに鼻先を押し当て、汗腺の発する芳香を堪能し続けるのだった。  
 
「こ、このォッ!!やめなさい、って言ってるでしょッ!!」  
 
完全に頭に血が上った少女が、全身を無茶苦茶に揺らして子竜を振り解こうとする。  
 
・・・・と、激しい動きに拘束が緩んだのか、はたまた、故意によるものか、  
左手首――――舐め回されているのとは反対側の腕――――に絡み付いていた触腕が、スルリ、と解けて、  
バランスを崩した左半身全体が、ガクン、と大きく傾いた。  
 
「キヒヒヒ、あんまり派手に暴れない方が身のためだぜ。  
この高さから落ちたら、いくらお前でもひとたまりも無いだろうからな〜」  
 
ドラゴの嫌味を聞かされるまでも無く、  
赤毛の少女は、眼下に広がるコンクリート・ジャングルに冷や汗を浮べていた。  
わざわざこんな高空までやってきたのは、人目を避けるためだけでは無かったのだ、と気付いた彼女に、  
子竜はいやらしく笑いかけると、再度、黒々とした触手を伸ばして、  
空中に投げ出された左腕を絡め取り、ぐぐぐッ、と磔刑台に手繰り寄せる。  
今度は、さすがのヴェカンティの<戦士>も、口をつぐんで屈辱的なポーズに甘んじる他なかった。  
 
「フフフ、ほんのり甘い汗の香りがたまんね〜ぜ。  
暗黒界に来てからも、お手入れは毎日欠かしてないみたいだな、感心感心」  
 
「くッ・・・・うううッ」  
 
思わず、眉根を寄せながら目を瞑る麗子だが、  
ピチャピチャという淫靡な水音とねっとりとした感触までは防げなかった。  
更に時間が経つと、最初は不快なだけだった腋の下への愛撫が、  
くすぐったさと心地よさが綯い交ぜになった、不可思議な感覚を生むようになっていく。  
 
「どう?ここを責められると、どんどんエッチな気分になってくるでしょ?」  
 
「そ、そんな訳無いでしょッ!!」  
 
口では躍起になって否定するものの、彼の言葉が嘘ではないのは自身が一番良く理解していた。  
今や、子猫のようにザラザラとした肌触りの舌先が敏感な皮膚をチロチロまさぐるたび、  
微弱な電流が、交感神経を伝って、うなじや背筋へと這い登ってくる。  
とりわけ、影響が顕著なのは、漆黒の胸甲に包まれた柔かい脹らみで、  
むっくりと勃起した乳首の先端が擦れて生じるゾクゾク感が、際限の無い増殖を続けていた。  
 
「へえ、そうなんだ?じゃあ、本当かどうか、カラダの方に聞いてみるとするよ」  
 
じゅるり、と、舌なめずりしつつ、腋の下から離れるドラゴ。  
(一抹の不満と共に)安堵の息をついたのも束の間、  
次の標的を見定めるべく、身体の周囲を旋回していた子竜が、  
背後・・・・大きく割り拡げられた太股の間に近付いてくると、再び顔色が変わっていく。  
 
「ウヒョ〜〜〜ッ!!いい眺めだぜ〜!!  
ミニのスカートが捲れ上がって、ピッチピチのケツが丸見えだァ〜〜!!」  
 
「こ、殺すッ!!アンタだけは、ゼッタイに、ギッタギタにして殺してやるッ!!」  
 
もう何度目だろうか、憤怒の感情を爆発させる、<ヴェカンタの戦士>。  
だが、触手が解ける危険性を考えると、それ以上の抵抗は不可能である。  
何より、たとえ、スカートが用を成さず、中身が丸見え状態とは言え、  
乙女のの一番大事な場所は、<ヴェカンタ>の加護によって守られた、黒絹の下着によって覆われていて、  
破られる事など、まずありえないハズだ――――と、タカを括ってもいた。  
 
「ヘッヘ〜〜〜ン!!思った通りだぜ〜ッ!!  
食い込みショーツにメコスジがくっきり、ついでに、うっすらとシミまで現れてやがるッ!!」  
 
嬉々として囃し立てながら、風のドラゴンは、さらに近付いて詳細を確認しようとする。  
最初は無視を決め込むつもりでいたものの、  
スカートの中を無遠慮に視姦されたばかりか、  
スベスベとした内股の表面に生温かい吐息を吹きかけられまでしては、とても平静ではいられなかった。  
 
(や、やだ・・・・私、一体、何考えてるのよッ!?  
こんなマセガキに下着を見られたぐらいで、変な気分になるなんて・・・・)  
 
羞恥心に負けて、かあぁぁッ、と、頬を真っ赤に染め、  
同時に、下腹部・・・・熱い眼差しを注がれている薄布の内側に、じゅん、と湿った感触を生じてしまう。  
我知らず、ぶんぶんとかぶりを振って、忌まわしい感覚を振り払おうとする赤毛の少女。  
だが、一度、明確に意識してしまった性感は、理性だけで忘れ去る事は不可能だったし、  
興味津々で注がれている視線や荒々しくなる一方の息遣いも、  
心の中で、今まで以上に(セクシャルな意味での)存在感を増していく。  
 
「おやおや〜?何だか様子が変だぞ〜?  
もしかして、大事なトコロを覗かれてコーフンでもしちゃったのかな〜〜?」  
 
勝ち誇った表情でまくし立てるドラゴ。  
対する麗子は、腹立たしいやら恥ずかしいやらで、反論の言葉が見付からなかったが、  
沈黙を肯定と受け取ったらしく、子竜の鼻息はますます猛々しくなる一方だった。  
 
「お〜し、それじゃあ、ど〜なってるか?今から確かめてやるからな。  
ちょっとの間、おとなしくしてるんだぞ〜」  
 
言うが早いか、鉤爪の一つを触手へと変形させて、目の前の黒下着を掴み取り、  
渾身の力を込めて、ぎゅぎゅぎゅッ、と引っ張り上げていく。  
<鎧>に込められた護りの魔力が発動して、バチバチと青白い火花が飛び散るのも意に介さず、  
伸縮性に富んだ黒絹の下穿きの股布部分を引き伸ばすと、  
今度は、別の指先を、研ぎ澄まされたナイフさながらの、鋭利な刃物状に変化させた。  
 
――――次の瞬間。  
 
極薄の布切れの上で、これを捻じ切らんとする魔力とそうはさせじとする魔力が真っ向から衝突し、  
幾つものスパークが、まるで夜空に打ち上げられる花火のように大輪の花を咲かせる。  
格闘戦においては一歩を譲ったとはいえ、  
<ヴェカンタの戦士>を守る暗黒の加護は依然として強大であり、  
彼女の肉体や防具を直接害しようとする試みに対しては十二分に太刀打ち可能・・・・な筈だったのだが。  
 
「な、何ッ!?魔力が吸い取られていく!?」  
 
驚愕の叫び声を迸らせる赤毛の少女。  
漆黒の甲冑に込められた防御力が、ストローで吸われるかの如く、引き寄せられ、奪われていく。  
 
「フヒヒヒ、残念でしたね〜。  
戦う相手をちゃんと調べて対抗策を立てておくのは当然でしょ?」  
 
嫌味ったらしく笑いながら、子竜は、掴み上げた股布を、くいッ、くいッ、と、左右に動かした。  
侵入者を寄せ付けまいとする力が、何度目かの火花となって飛散するのが感じられたものの、  
そのパワーは、最初の頃とは比べ物にならないほど、低下してしまっている。  
どんな手段を使ったのか?皆目、見当も付かないが、  
彼の言う通り、<鎧>の魔力はあっという間に吸い尽くされてしまい、  
今や、パーティー用の仮装コスチューム同然の存在にしか過ぎなくなっていた。  
 
(な、なんて事なの!?こんなクソガキ相手に、手も足も出ないなんてッ!?)  
 
ショックのあまり、半ば呆然となる麗子。  
下半身では、防御障壁の消滅に伴って、  
捩り合わされ紐状になった下着が直に恥丘と擦れ合うようになったため、  
摩擦熱と共に、痛みとむず痒さとが入り混じった、淫靡な感触が生まれ始めていた。  
 
「キヒヒヒ、駄目だなぁ、もっと辛抱しないと。  
ホラ、ちょっと擦っただけで、愛液が滲んできてるじゃないか」  
 
必死に否定しようと試みるが、  
無様に割り拡げられた股関節の中心部・・・・未だ殆ど使い込まれていない、サーモンピンクの秘唇は、  
己れ自身の下穿きをブラシ代わりにした悪辣なマッサージの前に、早くもピクピクと痙攣を発していた。  
愛液そのものの湧出は未だ本格化していないとはいえ、  
前触れとなる半透明な体液(またの名を、我慢汁)は膣腔内をじわじわと満たしつつあり、  
同時に、秘口の外へと噴出する好機をじっと窺い続けていた。  
 
「へへへ、良い眺めだな〜〜!!大事なトコロが今にも暴発しそうになってやがるぜ。  
おっと、下着の方はもう限界だな。それなりに頑張ったけど――――そぉれッ!!」  
 
「ヒィィッ!!や、やめてェェェッ!!」  
 
たまらず、少女の口から甲高い悲鳴が上がったのと同時に、  
完全に魔力を失い、単なる黒い布切れと化したショーツが、  
ブチンッ!!という鈍い断裂音を発して、股布部分から真ッ二つに切断された。  
下着とはいえ、<ヴェカンタの戦士>である自分を護る防具の一つが、  
<ヴァリスの戦士>や暗黒五邪神相手ならまだしも、アイザードの手下風情の手によって、  
あっさりと失陥してしまった事実に、衝撃を隠せない麗子。  
 
「クックックッ、信じられない、って顔だな〜。  
まぁ、天才ドラゴ様にかかれば、朝飯前だけどな〜!!」  
 
敗北感にうなだれる赤毛の少女に向かって、盛大な嘲笑を浴びせかけると、  
子竜は、今や生殺与奪は思いのままとなった美しき獲物の処遇を熱心に思案し始めた。  
最終的に生命を奪う方針に変更はないのだが、やはり、単に殺すだけというのは如何にも芸が無い。  
また、たっぷりと屈辱を味わわせ、精神的苦痛にのた打ち回らせてやらねば、  
亡き主君の魂魄にも満足しては貰えないハズ――――それに、第一・・・・。  
 
「俺様自身だって、少しは楽しませて貰わないとね〜〜」  
 
うひゃひゃひゃ、と笑い転げるドラゴに、げんなりとした表情になる麗子。  
なんだかんだと理屈を並べ立ててみても、結局、コイツは己れの下半身に忠実なだけなのだ。  
 
(・・・・いや、もしかすると、それ以前の問題って事も・・・・)  
 
可能性に気付いた瞬間、彼女は、  
口惜しさのあまり、というよりも、こみ上ってくる腹立たしさに我慢ならず、両手の拳をきつく握り締めた。  
そう、下手をすれば、目の前のクソガキは、  
単に自分を玩具にして弄り回したい、という幼稚な願望のままに動いているだけかもしれない。  
 
(どうしてッ!!こんなヤツに好き放題にされるなんてッ!?)  
 
握り固めた拳が、ワナワナと震える。  
全身を貫く怒りは、触手を振り解き一太刀浴びせたい、という衝動へと発展しかねない程だったが、  
かろうじて、墜落したら死は免れない、という恐怖が理性を保たせていた。  
もっとも、同時に、最低な陵辱者から屈辱の限りの仕打ちを尽くされ、惨めな死を迎えるぐらいならば、  
いっそ、投身自殺でもした方が遥かにマシかもしれない、という危険な発想も、  
徐々にではあるが、確実に勢いを増しつつあったのだが・・・・。  
 
「うひひひ、決〜めた、決めたッ!!  
お前をイキ狂わせる方法、ケッテ〜〜〜イッッッ!!」  
 
麗子の内面を吹き荒れている葛藤の嵐など露知らず、  
脳天気な口調で、物騒極まりないセリフを吐く風のドラゴン。  
真新しい玩具を見せびらかす幼児さながらに、  
またもや、少女の眼前で、変幻自在の黒翼を変化させてみせる。  
 
「コレ、なぁ〜んだ?」  
 
「なッ、それはッ!?」  
 
掲げられた拷問器具の不吉な姿に、赤毛の少女は、一時的に怒りを忘れ、顔面を強張らせた。  
手足を拘束している磔刑台同様、子竜の蝙蝠羽根が変化して出来た物体は、  
現実界に存在するもので言えば、丁度、たわわに実ったイチジクのような形をしている。  
・・・・ただし、大きさは、イチジクなどとは比べ物にならず、  
(果物で言えば)メロン、あるいは、小玉スイカほどもあり、  
しかも、中に詰まっているのは、甘い果肉ではなく、得体の知れない体液だったが。  
 
(ま、まさか、あの形ってッ!?)  
 
異物の形状から、おおよその用途は理解できたのだろう、  
<ヴェカンタの戦士>の喉元から、無意識のうちに息を飲み込む音が漏れる。  
 
「フフン、どうやら、自分に何が起きるか、理解したみたいだな〜〜。  
今は亡きアイザード様の分析によれば、お前は、アナルが一番感じるマゾ娘って話だったけど、  
・・・・クククッ、コイツは気に入って貰えるかな〜〜」  
 
ニヤニヤしながら、ドラゴは、真っ黒な果実の先から、ピュピュッ、と半透明な液体を迸らせてみせる。  
そして、恐怖と嫌悪の感情によって蒼褪めていく表情を愉快そうに眺めやりつつ、  
特大イチジク浣腸を、美しい獲物の背後・・・・尻たぶの奥に隠された肛門を見下ろす位置へと遷移させた。  
 
対する麗子は、ほとんど決死とも言って良いほどの悲壮な覚悟で、  
全身の筋肉――――特に下腹部から大腿部にかけての括約筋をキリキリ硬直させ、対抗手段とする。  
きわめて原始的な防御方法であるのは言わずもがなだが、  
両手両足を触腕に絡め取られ、下着まで切り裂かれてしまった今となっては、  
もはや、剥き出し状態の丸尻の奥に鎮座する秘穴を守る手段はこれぐらいしか存在しなかった。  
 
「フフン、ムダな抵抗はやめるんだな〜。  
いくら力んでみても、お前の弱点はすでにお見通しなんだからさ」  
 
自信たっぷりに宣言すると、  
子竜は、ヨダレをタップリと含ませた舌先を卑猥に動かして、  
思わせぶりに、口の周りを、じゅるり、と舐め回した。  
 
(また、腋の下を舐めるつもりなのッ!?)  
 
先刻の性感帯責めの記憶が脳裏に蘇るのと同時に、  
うなじから背筋にかけて、ぞぞぞッ、と、悪寒まじりの怖気が走り抜ける。  
反射的に身を固くして、倒錯的かつ巧妙な口唇愛撫を待ち受ける赤毛の少女。  
・・・・だが、今回狙われたのは、別の場所だった。  
 
「ひあッ!?そ、そこはッ!?」  
 
甲高い悲鳴と共に、しなやかなカラダが、ビクン、と跳ね躍る。  
変態ドラゴンの舌先に捉えられたのは、  
贅肉一つ無いビキニ・ラインの中心に位置する、小さな窪み――――臍穴だった。  
 
「ククク、ど〜だい、麗子?  
ここを責められると、お腹の力が抜けてヘロヘロになっていくだろ?」  
 
得意満面の表情で、ザラザラとした肉ブラシを脇腹に押し当てたドラゴは、  
そのまま、すす〜〜っ、と、なめらかな柔肌の表面をなぞりながら、  
アーモンド型をした凹みまで突き進み、可愛らしいお臍をペロペロと舐めしゃぶる。  
 
「あああッ・・・・だ、だめえッ!!舐め回さないでェッ!!」  
 
先刻の腋の下への責めと同様に、極めて単純な行為ではあるのだが、  
普段は明瞭に意識する事の無い性感を目覚めさせられるおかげで、  
何百匹もの小さな虫が這いずり回っているかのような異様なゾクゾク感が、  
唾液をなすぐられた地点を中心に同心円を描き、乙女の柔肌を粟立たせていった。  
加えて、彼の指摘通り、まるで魔法にかかったかの如く、腹筋の力がスルスルと抜け落ち、  
必死の覚悟で喰いしばっていた筈の股や尻の筋肉でさえもが弛緩していく。  
 
(う、嘘ッ!?こ、このままじゃあッ!!)  
 
予想だにしていなかった展開に顔面蒼白となった麗子が、  
無意識のうちに体を捩って、パンパンに膨れた肉イチジクから逃れようとする。  
だが、地上数百メートルの空中、しかも、手足を拘束されている以上、  
元より、逃げ場など何処にも無く、挿入をかわし続けるにも自ずと限度があった。  
儚い抵抗の末に、とうとう少女は追い詰められ、浣腸器の先端を押し付けられてしまう。  
 
「い、いやぁあああァッ!!や、やめて・・・・入れないでぇぇッ!!」  
 
白桃色の尻たぶを押し割って、すぼまりの表面へと突きつけられた異物の肌触りに、  
最後まで残っていた矜持も砕け散り、溢れ出る涙に頬を濡らしつつ惨めに哀願を繰り返した。  
怒りも、悔しさも、何もかも、今まさに肛門内に潜り込もうとしている悪魔の果実の前には無力で、  
<ヴェカンタの戦士>から一人の少女へと戻った麗子は、ただひたすらに許しを乞い願うだけ・・・・。  
 
「グヒヒヒ、往生際が悪いぞ〜。観念して、特製スーパー浣腸を受け容れるんだ〜。  
そして、ヒィヒィよがりながら絶頂を迎えて、ブリブリ脱糞する姿を見せてくれ〜!!」  
 
囚われの少女のなりふり構わぬ懇請にも、風のドラゴンは一切情けをかけようとはしなかった。  
反対に、己れの片翼を変化させて形作った注射器をアナル深く押し込み、  
直腸の入り口付近にしっかりと咥え込ませた上で、内容物をゆっくりと注入していく。  
 
「うへぇあぁ・・・・は、入ってくるぅ・・・・お腹の中にィィッ!!」  
 
下着を切り裂かれ、冷たいビル風に曝されたせいで、幾分体温が低下していたのだろう、  
最初のうち、尻穴に注入されたドロドロの体液は、煮え立ったシチューのように感じられた。  
だが、最初の衝撃が過ぎ去り、腸内の感覚が順応し始めると、  
熱さは次第に和らぎ、人肌の温もりとなって腹腔中に広がっていく。  
 
「あああッ、だ、だめぇッ!!お願い・・・・もう、ゆるしてぇッ!!」  
 
恥も外聞も無く、滂沱の涙を流し、許しを請い続ける赤毛の少女。  
一秒毎に水嵩を増していく妖しげな感触が切迫感に拍車を掛けていた。  
・・・・だが同時に、本来の性癖に加えて、アイザードの侍女達やログレスの触手生物に『開発』された結果、  
今や全身で一番感じ易い場所となったアナルを穿られる悦楽は着実に彼女を侵蝕しており、  
恐怖や羞恥心といった感情は急速に影を潜めて、被虐の快感に取って代わられていく・・・・。  
 
(はうあぁッ!!お、お尻・・・・気持ちいいッ!!穴の奥が、ジンジンするぅッ!!)  
 
ハァッ、ハァッ、と、息を切らしつつ、フラフラと弱々しくかぶりを振る。  
すぼまりの間に差し込まれた肉筒から生温かい浣腸液が放出されるたびに、  
びゅくん、びゅくん、と卑猥なひくつきが生まれ、ゾッとする快美感が背筋を走り抜けた。  
極上のカーブを描くヒップのふくらみは毛穴という毛穴が総毛立ち、  
じっとりと染み出した汗にほどよく濡れて、テラテラと脂ぎった光沢に覆われている。  
 
・・・・・・・・きゅる・・・・きゅるる・・・・くりゅるるるッ!!  
 
下腹の奥で小動物の鳴き声のような、かぼそく湿っぽい水音が鳴り響いたのを合図に、  
臨界点に達した排便欲求が、肛虐の快楽に憂悶する心を容赦なく突き動かす。  
もっとも、人間としての尊厳を維持できる最低限のラインすら危うくなっている事を告げる危険信号ですら、  
今の麗子にとっては、身体の奥底から湧き上がってくる、甘美な性波動に他ならなかったのだが。  
 
「ひはぁぁッ!!だ、だめぇッ・・・・ダメなのにィ・・・・お、お尻、我慢出来ないッ!!!!」  
 
堪え切れず、とうとう言葉に出して叫んでしまう。  
凛々しかった表情は涙で緩み、口元はヨダレでベトベト、よく見れば、鼻汁さえ垂れていた。  
今までの一生の中で、これ以上は無いくらい、情けない姿を晒しながら、  
直腸内で蠢く異物の妖しい動きに酔い痴れ、注入される淫液の感触に震え慄いている。  
 
――――ぎゅるるッ・・・・ぎゅりゅる・・・・ぎりゅるるるるるッッッ!!!!  
 
痙攣を続ける腹部から聞こえてくる粘ついた悲鳴が、一呼吸毎に大きくなっていく。  
それに比例するかの如く、硬くすぼまった括約筋への内側からの圧力も増していく一方で、  
すでにいつ決壊してもおかしくないくらいの有り様だった。  
 
「ひぁああッ!!りゃめぇッ・・・・も、もれる・・・・もれひゃうううッ!!」  
 
涙と涎を垂れ流しつつ、殆ど本能だけで、押し寄せる濁流に抗い続ける赤毛の少女。  
もはや、意識さえ朦朧となりかけているものの、  
鈍痛と不快感とゾクゾク感が無秩序に入り混じった感覚だけは、却って、鮮明に感じられていた。  
 
ぶぴゅッ・・・・ぶぴゅびゅッ・・・・!!!!  
 
腹腔内に充満したメタンガスが皺孔の隙間を掻い潜る事に成功し、  
破廉恥極まりない空砲となって、周囲に鳴り響く。  
気泡状になった極少量の糞便が、ぶばぁん、と弾けて、真っ白な尻たぶに黄土色の花を咲かせると、  
ねばついた触感が、必死の抵抗を試みてきた少女に、終末の到来を予感させた。  
 
「・・・・ハァハァ・・・・も、もお・・・・らめぇ・・・・」  
 
息も絶え絶えに、弱々しい呟きを漏らす麗子。  
次の瞬間、ビクビクと引き攣っていった皺穴が、  
溜まりに溜まったガス圧に圧迫されて、ぶくんッ、と大きく盛り上がった。  
 
「ひぎぃッ・・・・ああああッ!!!!」  
 
反射的に括約筋を引き締め、息を止めて、かろうじて暴発を押さえ込む。  
真っ赤に染まった頬筋を脂汗がダラダラと滴り落ちる中、  
疲弊の極に達した下半身に残る力を総動員して、  
プルプルと小刻みにする菊門を落ち着かせるべく、最後の努力が続く。  
 
・・・・だが、息を止めるにも、肛門を塞き止めるにも、自ずと限界というものがある。  
苦闘の時間は異様に長く感じられ、時には、何とか凌げるのでは?と感じられる瞬間もあったものの、  
結局のところ、死力を尽くした防衛戦の戦果と言えば、  
精々一、二分程度、破局を先延ばしに出来ただけに過ぎなかったのだった――――。  
 
ぶッしゃァァァあああアッッッ!!!!!!  
 
黄色く濁った腸液が、湿った破裂音を盛大に響かせながら噴出する。  
<戦士>のプライドが、乙女の矜持が、人間としての尊厳までもが、  
濁流と共に、猛烈な勢いで体外に吐き出されていき、  
胃袋と精神の両方が、あっという間に、中身の大部分を失って空っぽになっていった。  
 
「あぎぃぃッ!!いひぎゃぁぁぁあああああッッッ!!!!」  
 
苦痛と解放感の入り混じった排便の快感が、壮絶な被虐感と一体化して、  
腰椎の間を駆け巡り、脊髄を貫いて、脳天を直撃する。  
その衝撃は、発情を極めていた性感を肉悦の頂きへと引き摺り上げるのに十分なものだった。  
子宮全体が、びゅくんッ、と大きく弾け飛ぶような感覚に襲われた瞬間、  
熱く沸騰した愛液が膣道と尿道の二つの管を通って溢れ出し、  
肛門から飛散する汚れ汁に優るとも劣らない勢いで、盛大に噴き上がる。  
 
――――どりゅんッ!!どじゅびゅるッ!!どくどびゅるんッ!!  
 
膣口と尿道口と肛門、都合三つの淫穴が奏でる快楽のハーモニーは、  
これまでに一度として経験した事の無い、めくるめく法悦の嵐となって、麗子のカラダを駆け巡った。  
愛液が、小水が、糞便が、交互に、あるいは、同時に、弾け出されるたび、  
快感が全身を打ち震わせ、子宮の奥に灼熱の感覚を湧き立たせる。  
 
「ひにゃあああッ!!ら、らめぇぇぇッ!!」  
 
ドロドロの粘液が噴出するたび、  
脱肛寸前になった直腸と真っ赤に腫れ上がったすぼまりの間に共振波が生じて、  
白桃色の尻たぶ全体が、ビクンビクンと、まるで別の生き物であるかの如く、跳ね回る。  
負けじと愛潮を溢れ返らせている尿道口は、ピン、と先端を尖らせ、  
サーモンビンクの大陰唇は、陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせながら、  
半透明な液汁を引っ切り無しに垂れ流していた。  
 
「ひ、ひんりゃう・・・・おかひくなりゅぅうッッッ!!!!」  
 
アナル絶頂と排泄地獄のダブルパンチを受けて、頭の中は極彩色の光の洪水で一杯になり、  
視界はキラキラと輝く真っ白なベールに覆われて何一つ見えなくなっていた。  
全身の五感も、ただ一つのもの・・・・肉の快楽を除いては、一切合切、何も感じられなくなり、  
まるで下半身全てが融合して、一つの生殖器官と化したかの如く、  
排便も、潮吹きも、吐淫も、全く区別がつかない状態に陥ってしまっている。  
快楽地獄の真ッ只中に放り込まれた赤毛の少女は、  
もはや、失神する事さえ許されぬまま、ひたすら喜悦に泣き叫び、のた打ち回るしかなかった・・・・。  
 
――――エクスタシーの狂熱が過ぎ去った後。  
 
赤毛の少女は身体中の力を使い果たし、手足をぐったりと弛緩させていた。  
未だ(奇跡的に)意識は残っているものの、  
先刻まで荒れ狂っていた強烈な欲情の反動である虚脱感が全身を覆い尽くし、  
頂点に達した疲弊と消耗のおかげで、もはや、苦痛さえも感じられない。  
 
「クックックッ、随分派手にイキまくったね。  
・・・・楽しませてくれたご褒美に、最後は苦しませず、一瞬で楽にしてあげるね〜」  
 
焦点を失ったラベンダー色の双眸を覗き込むアイザードの腹心。  
口元には、酷薄さを湛えた笑みが浮かんでいる。  
一方の麗子は、冷酷非情な死刑宣告に対して、声を発する事も体を揺する事も出来ず、  
僅かに、ピクリ、と睫毛を震わせただけだった。  
 
彼女の頭上で、子竜の体の一部――――さっきまで、浣腸器に擬態していた黒い蝙蝠羽根――――が、  
不気味に湾曲した刃先を持つ大鎌へと変化する。  
ギラギラと無骨な光沢を湛えたギロチンの真下には、黒いスカーフの巻きついた生白い頚部。  
汗と涎にまみれた布きれの結び目に狙いを定めて、  
巨大な死神の鎌が振り下ろされようとした、その刹那――――!!!!  
 
ドゴオォォォンッッッ!!!!!!  
 
直線距離で、せいぜい数キロメートルしか離れていない場所で、轟然たる爆発音が響き渡り、  
無数の赤熱した火山岩が、高射砲の弾幕のように飛来してくる。  
 
「な、何だァッ!?」  
 
素っ頓狂な叫び声と同時に、  
今まさに<ヴェカンタの戦士>の首を刎ねようとしていたドラゴの手が止まった。  
見開かれた目玉の先では、地上に溢れ出した大量の溶岩が赤黒い瘴気を帯びた炎で市街地を舐め尽くし、  
ビルも道路も車も人も、何もかも飲み込んで、みるみるうちに異形の火山を形作っていく。  
 
「まさか、ベノンのヤツが・・・・?」  
 
――――なんて無茶を、と言いかけて、言葉を切る風のドラゴン。  
炎の魔人のものとは明らかに性質の異なる、  
だが、それに優るとも劣らない、強大な魔力を有した存在が、  
自分達のいる方角に向かって、猛スピードで近付いてきている。  
・・・・しかも、大地の底からではなく、天空の彼方、重く垂れ込めた雷雲の間から。  
 
「えッ?ええッ?・・・・えええッ!?」  
 
驚愕のあまり、呆然とした表情で頭上を見上げたまま、ドラゴは動作を凍りつかせた。  
真ッ黒な群雲の間から姿を現したのは、黄金色に輝く鱗に覆われた双頭の巨竜・・・・、  
ヴェカンティの住人ならば、名を知らぬ者などいない、雷邪ヴォルデス。  
 
ピシャァァンンンッッッ!!!!  
 
――――どうしてコイツが、と考えを巡らせる暇とて無く、  
巨大な咆哮が響き渡り、冷厳なる雷光が遥かな天空の高みから降り注ぐ。  
強大無比な雷の魔力によって生み出された電撃は、  
咄嗟に張り巡らされた大気の防御障壁を難なく打ち破ると、子竜の身体を直撃した。  
 
「ぎゃんッ!?」  
 
情けない悲鳴を上げ、幼生ドラゴンの体表が一瞬にして黒焦げになる。  
凄まじいショックによって精神の集中が解け、魔力の供給が途絶えたせいで、  
麗子の生命を刈り取ろうとしていた大鎌も、手足を拘束していた黒い触手も、跡形も無く消え失せた。  
不幸中の幸いは、赤毛の少女に被害が及ばないよう、エネルギーが低く抑えられていた事で、  
そうでなければ、ドラゴの体は、内蔵まで余す所無く、こんがりとローストされていたに相違ない。  
 
「きょ・・・・今日のところは、退散〜〜〜んッ!!!!」  
 
圧倒的な実力差の前に、パニックに陥ったアイザードの側近は、  
恥も外聞も無く、尻に帆をかけて逃げ出していく。  
――――もっとも、彼が、無事、その空域から逃げ延びる事が出来たのは、  
彼の翼が追撃を振り切れるだけの俊敏さを有していたからではなく、  
黄金の巨竜が<ヴェカンタの戦士>の救出を優先したおかげだったが。  
 
「・・・・大事ないか、麗子」  
 
ゆっくりとした口調で、少女の安否を気遣う、双頭のドラゴン。  
手足を拘束していた黒い触腕が本体である異形の磔刑台もろとも消滅したため、  
麗子は、重力の法則に従って、地上への急降下を開始していた。  
子竜の捕殺を諦めたヴォルデスが、光り輝く頭部をクッション代わりにして受け止めなかったならば、  
アスファルト道路に叩きつけられた彼女のカラダは、  
もはや人の形すら留めない、血液と肉片の集積体と化していたに相違ない。  
 
「ううッ・・・・ヴォ、ヴォルデス・・・・?」  
 
呼びかけに応じて、かろうじて、反応を返したものの、  
赤毛の少女の顔は、貧血に陥ったかのように青白く、生気に乏しかった。  
このままにしておけば、今度こそ、意識を失いかねない、と判断した雷の巨竜は、  
速度を落とし、なるべく静かに東京上空から離脱していく。  
 
「ま、待って・・・・今、闘いの最中なのよ。ベノンだけに良い格好は・・・・!!」  
 
大地の底から隆起した、異形の火山を見やりつつ、  
搾り出すような弱々しい声で、それとは全く不釣合いな勇ましい科白を口にする、暗黒界の<戦士>。  
・・・・だが、ヴォルデスは、何も聞こえていないかのように飛び続ける。  
彼が麗子に返答を返したのは、随分と時間が経ってからで、  
その頃には、さしものベノン火山も、遥か遠くにかろうじて視認出来るだけとなっていた。  
 
「やめておけ・・・・今のお前では戦いには勝てん。  
ましてや、己れの手柄しか眼中に無い卑劣漢に手を貸す必要が何処にある?」  
 
冷静な指摘に、少女は、くぅッ、と口惜しげに唇を噛む。  
確かに、ドラゴに味わわされた屈辱的な行為は彼女の心身から根こそぎ力を奪い去っており、  
失われたエネルギーを回復させるには、かなりの時間が必要そうだった。  
いかに<アンチ・ヴァニティ>の異能を有しているとは言え、  
今のようなボロボロの状態では、優子に挑みかかっても勝算はゼロに等しいだろうし、  
たとえ勝利できたとしても、手柄を独占したい炎の魔人から狙われてはひとたまりもあるまい。  
無念だが、ここは彼の言葉通り、一時撤退するのが利口そうだった。  
 
「それにしても・・・・アンタ、なんだってまた、こんな所に来たのよ?」  
 
なおも未練を断ち切りがたいのか、  
視線だけは火山の方に向けながら、麗子は疑問を口にする。  
 
雷の魔力を司る双頭の金竜・雷邪ヴォルデス。  
――――元はベノンと同じ、ヴェカンティの諸侯の出身で、  
暗黒王の台頭する以前は、一時、暗黒界の支配者に擬せられていた事もある実力の持ち主。  
臣下の礼をとり、暗黒五邪神の一将に取り立てられた今も、ログレスに完全に心服している訳ではなく、  
夢幻界への侵攻作戦にも、幾許かの兵を送っただけで、自身の出陣は渋っているらしい。  
 
(・・・・そのヴォルデスが、どうして、ログレスの腹心の私を助けたりするのよ?)  
 
「なに・・・・単なる年寄りの気まぐれだよ。  
向こう見ずな子供はどうにも危なっかしくて見てはおられんからな」  
 
「またそうやって子供扱いする・・・・」  
 
飄々とした口ぶりで切り返したヴォルデスに、  
我知らず、毒気を抜かれた赤毛の少女は、代わりに、頬を、プウッと膨らませた。  
初対面の時以来、老ドラゴンはいつもこの調子である。  
純粋に自分に対して好意を抱いているのか、それとも、好々爺めいた微笑の裏に悪意を忍ばせているのか、  
ある意味では、アイザード以上に心が読めず、つかみ所の無い性格をしていた。  
 
「フフ、わしのような者にしてみれば、人間など皆子供だよ。  
お前さんだけじゃなく、ガイーダも、キーヴァも、アイザードも、・・・・一応、あのベノンも、な」  
 
(――――さすがに、ログレスは子供扱いしないのね)  
 
そう思ったものの、あえて言葉には出さずに、  
麗子は、疲れきった意識を叱咤しながら、今後について考え込んだ。  
ヴォルデスがこれだけ落ち着き払っていられるという事は、  
結局、炎の魔人は、(少なくとも、この場では)優子には勝てない、と判断しているためだろう。  
一方で、暗黒王排除という点においては利害が一致する筈のドラゴを敵に回したのは、  
あるいは、この老竜は、ログレス個人は嫌っていても、  
彼がやろうしている事には反対ではない、という意味なのだろうか・・・・?  
 
(・・・・いずれにせよ、コイツからは目を離す訳にはいかないわね。  
しばらくの間、行動を共にした方が良いかしら・・・・?)  
 
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 
 
 

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