現実界。東京。廃墟と化したビル街。  
 
「・・・・もし、お前達に魂があるのなら・・・・」  
 
あらゆる物が白銀色に染まった世界。  
唯一、<ヴァリスの戦士>の纏う甲冑だけが眩い黄金の輝きを放っている。  
目の前には、キーヴァの氷雪の魔力によって、両腕とカラダの下半分を失い、  
かろうじて形を留めている部分も完全に凍結してコチコチに固まっている、暗黒五邪神・ベノン。  
 
「・・・・暗く澱んだところから二度と出てくるな!」  
 
相貌を恐怖に引き攣らせ、氷のオブジェと成り果てた炎の魔人・・・・。  
その表情を、冷たい怒りを孕んだ視線で睨み据えながら、  
優子は、醜く歪んだ顔面に五本の指を食い込ませ、ゆっくりと握力を加えていった。  
暗黒界の大貴族として権勢を欲しいままにしていた男が、  
リアリティの少女の白い手の間で、ミシミシと軋み、罅割れ、砕け散っていく・・・・。  
 
「消えろッ!!」  
 
静かな、・・・・しかし、気迫のこもった声。  
次の瞬間、氷結した凶相が、ボコッ、と鈍い音を立ててひしゃげ、  
真っ二つに割れたかと思うと、幾つかの氷片となって崩れ落ちていく。  
 
――――そして。  
 
「4つ目の<ファンタズム・ジュエリー>・・・・残りはあと1つ」  
 
暗黒五邪神の残骸から姿を現した、七色の光芒――――<明>のエネルギーの結晶に向かって独りごちる。  
小さな多面体の宝玉を見つめるその眼差しは、  
(これまで以上に)何処か寂しげで、やるせない感情を漂わせていた。  
燦然と光り輝く夢幻界の聖宝を手にするたび、自分は、常に何かを喪失し続けてきた。  
生まれ育った世界、一介の女子高生としての平穏な毎日、<戦士>の力、アイザード・・・・  
今度は一体、何を失う事になるのだろうか?  
 
「・・・・でも、進むしかないわ。もう迷わない、って決めた以上は・・・・」  
 
「優子ォッ!!」  
 
だしぬけに、背後から掛けられる声。  
振り向くと、全身にびっしりと霜を張り付かせた女剣士が、  
かなりご機嫌斜めな眼差しをこちらに向けていた。  
 
「・・・・だ、大丈夫?」  
 
「ああ。危うく吹っ飛ばされるところだったが、何とかな」  
 
慌てて駆け寄ってくる少女を眺め、苦笑いを浮かべる金髪のエルフ。  
つられて、優子もはにかむように口元をほころばせる。  
無論、戦いを終えたばかりの<戦士>たちにとって、  
共に戦った友の無事は何よりの喜びであり、心身の疲れを癒すものだったが、  
二人の笑みには(お互いに、すぐには言葉に出来ない)もう一つの想いが込められていた。  
 
「さて、と」  
 
しばらくの間、互いに無言のまま、相手の様子を窺い合った後、  
最初に口を開いたのは、(意外にも)蒼髪の少女の側だった。  
 
「どうしたものかしらね。今後も、あなたと行動を共にして良いのかどうか・・・・」  
 
囁くように話しかけながら、  
優子は、パートナーの眼帯に覆われていない方の瞳をじっと覗き込む。  
決して責め立てている風ではないものの、  
冷静な、とらえようによっては冷淡とさえも感じられる眼差しに、  
女剣士は表情から笑みを消し去った。  
 
「アイザードは、自身の<ジュエリー>に何らかの細工を施していたわ。  
この世界・・・・現実界にわたしを送り込むために。  
たしかに、わたしが<戦士>としての自覚を取り戻せたのは彼のおかげだと認めるし、  
感謝しなくちゃいけないとも思ってる――――だけど・・・・」  
 
「・・・・そのために、東京の街は途轍もない被害を蒙ったわ」  
 
周囲を取り囲む廃墟を眺めやりながら、肩を落とす優子。  
もっと早くに決断を下していたならば、救えたかもしれない人々の断末魔の絶叫が、  
あるいは、心ならずも見殺しにせざるを得なかった人々の恨めしげな眼差しが、  
次々と脳裏に蘇ってきては、少女を責め苛む。  
 
「恨むか、我が主を?」  
 
問いかけるデルフィナの口調もまた、暗く沈んでいる。  
壊滅状態に陥った都心部からは少し離れているとはいえ、  
目の前のパートナーの生家、あるいは、通っていた学園のある一帯が、  
噴火活動やそれに伴う直下型地震等の災厄を免れ得たとは到底思えないし、  
最悪、家族や友人達の中にも、巻き添えになった者がいたとしても不思議ではなかった。  
それを考えれば、一連の戦いを仕組んだアイザードや彼の指示で動いた自分が、  
恨み言の一つや二つ、浴びせかけられたとしても、当然の報いと言わねばならないだろう。  
 
両者の間を支配する、張り詰めた沈黙。  
・・・・だが、(二人にとって幸いな事に)重苦しい時間は、あまり長くは続かなかった。  
 
「でも、あなたは悪い人じゃなさそう」  
 
静かな、しかし、断固とした決意を以って発せられた、一言。  
半ば反射的に、俯きかけていた顔を上げたエルフは、  
目の前に、優しく手を差し出している、パートナーの姿を発見した。  
 
「良いのか、本当に?私は、今でもあの方の事を・・・・」  
 
差し伸べられた白い手を受け取って良いものかどうか、戸惑いの表情を浮かべる女剣士。  
自分を信じる、という友の言葉は、ある程度予期していたものではあったのだが、  
ここまで裏表無く宣言されると、却って、後ろめたく、居心地の悪さを感じさえしてしまう。  
 
・・・・だが、蒼髪の少女は、全てを見透かしているかの如く、微笑み続けながら、  
何処までも穏やかに、だが、有無を言わさぬ気迫を込めて、言い切るのだった。  
 
「それで良いわ・・・・今は、それで」  
 
――――次の瞬間。  
 
優子の背後・・・・空中に浮かんだ夢幻界の宝玉から、ひときわ烈しい輝光が解き放たれ、  
強大な魔力波動が周囲の空間全体に広がっていった。  
本能的に危険を覚え、慌てて身構えようとするデルフィナ。  
対して、蒼髪の<戦士>は、過去に同じ状況を経験しているせいもあり、落ち着き払っていた。  
 
「こ、これはッ!?」  
 
「大丈夫よ、<ジュエリー>の力がわたしを導こうとしているだけだから。  
あと一つ残った欠片のある場所か、少なくとも、それに関係した所に・・・・」  
 
そうなのか?と、訝しげにだが、頷きかけるブロンド剣士。  
・・・・だが、続いて起こった出来事によって、  
落ち着きを取り戻すかに見えた彼女の思考は、根底から吹き飛ばされてしまう。  
 
「くあぁあッ!?な、なんだ、この感覚はッ!?」  
 
口をついて溢れ出してくる、激しい喘鳴。  
心臓が飛び跳ね、体温が急上昇したかと思うと、下穿きの中で、じゅん、と湿った水音が響き渡り、  
身体全体がどうしようもなく淫靡な脈動の虜となってしまう。  
 
「ど、どうなってるんだ、私の体に何がッ!?」  
 
己れの身に襲いかかる異変に動転するエルフの目の前で、  
胸部の豊かなふくらみを覆う、薄手の革製の胸甲が、内側からの圧力によって持ち上げられ、  
ビンビンにしこりきった乳首の形状がくっきりと現れた。  
下半身は腰椎の付け根付近を震源とする淫靡な痙攣に覆われてあさましく震え慄き、  
むっちりとした太股には秘唇から溢れ出した蜜液が幾筋もの小川を作って流れている。  
そして、女体の性の根源を司る、最も敏感な生殖器官・・・・子宮は、  
<ファンタズム・ジュエリー>から放射される高純度の<明>のエネルギーの直撃を受けて、  
堪え難いほどの灼熱感に包まれ、暴走状態に陥ろうとしていた。  
 
「はぁはぁ・・・・デルフィナさんは初めてよね。<ジュエリー>の力を浴びるのは?」  
 
こちらも呼吸を荒くしつつ、訊ね返す蒼髪の少女。  
金髪のパートナーと同じく、一時に大量のエネルギーを吸収した事で、  
肌は熱く火照り、刺激に対して極度に敏感な状態になっているものの、  
初めての体験ではない分、まだ幾分、余裕が感じられる。  
 
(・・・・それに、デルフィナさんは暗黒界の生まれだから、<明>の力には慣れていないだろうし)  
 
チラリ、と視線を走らせると、  
美しく整った目鼻立ちの相貌は真っ赤に上気して脂汗にまみれ、  
エメラルド・グリーンの隻眼は、大粒の涙滴を溜め込んだまま、蕩けかかっていた。  
惚けたように半開きになった口元からは、  
引っ切り無しに漏れ続ける、切なげな吐息に混じり、  
まるで未だオムツの取れない幼児の如く、唾液の糸がタラタラと垂れ零れている。  
 
「ううう・・・・カラダが疼いて止まらないッ!!  
だ、ダメだッ!!早く、何とかしてくれ、このままじゃあ・・・・!!」  
 
切羽詰った声で、助けを求めるヴェカンティの美女。  
別段、生命に関わる危険な状況にあるという訳ではないのだが、  
聖なる石の波動は確実に彼女を蝕み、肉欲に対する抵抗力を削ぎ落としている。  
 
「デ、デルフィナさん・・・・」  
 
眼前で展開される淫靡なショーに、少女は思わず息を呑み、立ちすくむ。  
強さと気高さとを兼ね備えたエルフの剣士が、  
熟れた肉体をあさましくひくつかせながら、欲情に喘ぐ姿が、  
ゾクゾクと鳥肌が立つ程の官能的な衝撃となって、理性をよろめかせた。  
ほぼ同時に、じっとりと濡れそぼっていた極薄のショーツの中で、  
自己主張に目覚めたサーモンピンクの秘花弁が熱いわななきを発し、  
充血してぷっくりと身を起こした陰核もまた、頭から被った包皮を自ら脱ぎ捨ててそれに倣う。  
 
(デルフィナさん・・・・あんなに乱れてる・・・・)  
 
潤みきった眼差しで、痴態に耽る女エルフを眺めやる、蒼髪の少女。  
今や欲情の極みに達しようとしている金髪美女は、  
パートナーの前だというのに、しなやかな指先を革製の胸甲の下へと潜り込ませ、  
適度に張りのある豊満なバストを堂々と揉みしだき、先端を硬く尖らせた乳首を転がしていた。  
 
「あうう・・・・手が、私の手が止まらないッ!!はくぅッ・・・・ふはぁああッ!!」  
 
食い入るような眼差しに気付いたためだろう、  
金髪の女剣士は、羞恥心で顔を真っ赤にしながら、さかんにかぶりを振った。  
だが、必死の努力も空しく、熟れた肢体は、  
びゅくびゅくッ、と、一層激しく、肉悦に波打つばかり。  
胸元を這い回る指の動きが、更に速く、ねちっこいものとなり、  
いつの間にやら、乳房自体も、狭苦しい革鎧の中から零れ落ちようとしている。  
 
ドクン、ドクン、ドクン――――黄金の甲冑の内側でも、胸郭を連打する心臓のリズムが高まっていく。  
<ジュエリー>の魔力によって引き摺り出された本能に命じられるまま、  
ピンク色に上気した柔肌を慰め続けるパートナーの姿に、  
見てはいけない、と重々承知の上でなお、目線を外す事が出来ずにいる優子・・・・。  
 
つうううッ・・・・。  
 
先程からもじもじと擦り合わされている、しなやかな二本の太股の表面を、  
生温かい感触が走り抜け、足元へと滴り落ちた。  
純白のプリーツ・スカートに包まれた乙女の一番大事な場所は、すでにベトベトの有様で、  
簡素な下穿きの繊維は、滲み出す水漏れを食い止める余力をとうに失ってしまっている。  
あまつさえ、断続的に襲ってくる、悪寒のような疼きに堪えかねた現実界の少女は、  
半ば夢うつつのまま、ぐっしょりと濡れそぼったショーツを摺り下すと、  
半透明な愛蜜に彩られた花弁へと指を這わせ、にちゅにちゅと蠢動させ始めるのだった。  
 
「はァッ、はァッ、はァァッ・・・・!!」  
「あふッ・・・・くッ!!ふはぁ・・・・あうううッ!!」  
 
僅かに1、2メートル、互いに手を伸ばせば届く距離を隔てて、自慰に没入する<戦士>たち。  
二人とも、羞恥心で耳の先まで真っ赤に染まりながらも、自分自身の動きを止める事が叶わず、  
まるで競い合うかのように、その淫蕩ぶりに拍車を掛け続けている。  
 
「あああ・・・・デ、デルフィナさん・・・・ふぁああッ!!」  
「ううっ・・・・優子ッ・・・・んふはぁあッ!!」  
 
空中で絡み合う、トロトロに蕩けきった視線と視線。  
形の良い胸乳を揉みしだく度、蜜に濡れた陰唇を捏ね回す度、  
甘い涎を一杯に溜め込んだ口元から溢れ出す喘ぎ声が見事なハーモニーを奏で合い、  
欲情をますます掻き立て、昂ぶらせていく。  
 
<ファンタズム・ジュエリー>の虹色の光彩が一部始終を照らし出す中、  
淫靡な愉悦に支配された二匹の牝獣が一線を踏み越えるまでにさしたる時間はかからなかった。  
 
「くはぁあッ!!そ、そんなに激しく・・・・はぁうううッ!!!!」  
 
仰向けの姿勢で双眸を空中に泳がせつつ、  
艶やかな光沢を放つブロンドを振り乱し、悶絶する暗黒界の女剣士。  
キラキラと光り輝く汗粒に覆われたカラダの上には、  
黄金の甲冑を纏ったパートナーがお尻を向けた格好で跨っており、  
V字型に割り拡げた太股の間、真っ赤に充血した陰阜に美味しそうにむしゃぶりついている。  
 
「デ、デルフィナさんだって・・・・ひはぁううッ!!!!」  
 
・・・・と、今度は、現実界の少女の方が、  
愛液の飛沫でびしょびしょになった顔を跳ね上げ、ビクビクビクッ!!と、全身を打ち揺らした。  
丈の短いスカートの下、今は膝まで摺り下されている極薄のショーツに包まれていた禁断の谷間では、  
綺麗なピンクの割れ目がぱっくりと口を開けて、金髪美女の前に無防備な姿を曝している。  
勿論、ギクン、ギクン、と、不規則に跳ね動く腰を、両手で掻き寄せたエルフは、  
その中心で淫らに咲き誇っている、シミ一つ無い花びらに向かって、  
生温い唾液をたっぷりと纏わりつかせた唇を押し付けては、派手な音を立てて吸い立てるのだった。  
 
「あふッ・・・・ふはああぁあんッ!!!!」  
「ひぐぅッ・・・・ひぁくぁあああッ!!!!」  
 
シックスナインの体位で重なり合い、  
口々に官能に酔い痴れた嬌声を叫ぶ、<戦士>たち。  
頭上では、光量を増した宝玉が、悦楽に全身を打ち揺らす彼女達の陶然とした表情に、  
カラフルなスポットライトを当て、妖艶極まりないイルミネーションの彩りを添えていた。  
 
――――ぴちゃッ・・・・ぴちゅッ・・・・ぴちゅるるるッ!!  
 
ぷっくりと膨らんだ二つの恥丘・・・・。  
何れも名器と呼ぶにふさわしいカーブを描く稜線を飾っているのは、  
蒼みがかった色艶の、未だ広さも縮れ具合も十分とは言えない下草と、  
対照的に、堂々とした面積と繁みの濃密さを誇る、黄金の密林。  
一方、馥郁たる芳香を醸し出しているという点ではいずれ劣らずではあるものの、  
女性としての成熟度合いの差を反映してだろうか、  
優子の愛液が幾分甘酸っぱさの残る若々しいものであるのに対し、  
デルフィナの蜜汁は、樽の中で充分に寝かしつけられた古酒を思わせる、複雑な味わいを帯びていた。  
 
(はぁ、はぁ、はぁッ!!やっぱり凄いわ・・・・デルフィナさんの舌遣いッ!!  
わ、わたしの弱いトコロ、全部狙い撃ちしてくるぅッ!!)  
 
自分のそれとは比べ物にならないほど密生した金色の恥毛の中に、顔の下半分を埋めながら、  
あられもないよがり声を連発し、下半身から攻め上ってくる快感に喘ぎ続ける優子。  
ナメクジのように這い回る女エルフの舌先が、  
コリコリにしこりきった陰核を、内外からの間断ない刺激により極度に敏感になった膣粘膜を、  
こそぎ取るようにして舐め回すたび、ゾッとするような肉悦の衝動が湧き起こる。  
 
(少女自身もかつて経験した事だったが)<ジュエリー>のパワーを受けた副作用で、  
理性の箍が外れ、性欲が暴走しかけている状態の金髪美女は、  
以前の遊び半分の情事の時とは比べ物にならないくらい攻撃的で、暴力的と言っても良い程だった。  
それでいて、テクニック、とりわけクンニリングスの正確さは、  
弱点に対して的確な集中攻撃を加えて来るという点で、もはや、神業に近い。  
・・・・否、自制心という名の枷が外れた分、  
彼女のセックスは、殆ど鬼気迫るまでに容赦の無いものへと変化していた。  
 
(んくッ!?か、感じるッ・・・・優子のクチビル、凄く気持ちいいッ!!)  
 
一方で、デルフィナもまた、  
パートナーによって、底知れぬ快楽の淵へと誘われようとしていた。  
無論、蒼髪の少女のテクニックそのものは未だ素人の域を出てはおらず、  
女エルフの妙技に比べれば稚拙極まりないと言っても過言ではないのだが、  
いま現在の彼女は、夢幻界の聖玉のせいで、全身の感覚が普段の数倍も鋭敏にされた状況にある。  
 
「あああッ!!だ、ダメェッ・・・・あひぃあぁんッ!!!!」  
 
カラダの奥底から湧き上がってくるような嗚咽を漏らして、女剣士の後頭部が仰け反った。  
高熱にうなされのた打ち回る熱病患者の如く、総身をガクガクと痙攣させつつ、  
流麗なボディを伸び切らせた、爪先立ちになって腰を跳ね上げる。  
股間では、ピンク色の真珠玉が異様な大きさに膨張し、  
更なる刺激を求めて、ビュクンビュクンと恥ずかしいダンスを披露していた。  
甘く狂おしい波動は神経の隅々にまで行き渡っており、  
際限ない性への欲求に漬かりきってしまった心は、  
官能のスイッチを押してくれる最後のひと押しを、今や遅し、と待ち焦がれている・・・・。  
 
「あうッ!!あぅあぅうううッッッ!!!!」  
「きひぃッ!!ひぃああああッッッ!!!!」  
 
絶頂への階段を二人三脚で昇り詰めていく、二人の<戦士>。  
完熟しきったフルーツが弾けるように、  
ぱっくりと口を開いた膣口から豊潤な愛液が溢れ出しては、  
禁断の花園を這い回るピンク色の肉ナメクジを卑猥に染めていく。  
 
「ひぃいいいぃッ!!も、もうだめぇッ・・・・我慢できないィッ!!」  
「はおォオオオッ!!気持ち良過ぎるぅッ・・・・あああ・・・・こ、壊れるぅッッッ!!」  
 
白目を剥いて半ば失神状態に陥りながらも、  
暴走する本能に命じられるがまま、牝獣たちは淫蜜に濡れそぼった花園を責め立てる。  
すちょッ、ずちょッ、と、聞くに堪えない恥音を響かせつつ、  
ぱっくりと開いた恥裂に舌を突き入れ、蕩けきった粘膜を舐めしゃぶると、  
あさまし過ぎる脈動と共に、子宮の奥からさらに大量の愛潮が噴出してくる・・・・。  
 
――――その直後、殆ど同時にエクスタシーの頂点へと到達した二人の意識は、  
<ファンタズム・ジュエリー>の妖しい輝きに誘われるまま、  
ドロドロと溶け合いながら、三千世界の彼方へと飛び去ってしまった・・・・。  
 
 
――――暗黒界。ヴェカンタニア。  
 
(ベノンめ、使えぬ奴よ・・・・)  
 
黄金で飾られた黒曜石の玉座。  
静寂の支配する広大な空間に一人座し、黙然と思考を巡らせる仮面の王。  
 
(まあ、よい。所詮、あのような口舌の徒には、さして期待などしておらぬ。  
それよりも、問題なのは・・・・)  
 
コツ、コツ、コツ。  
鈍く輝く鋼鉄の飾り爪が、玉座の手摺りに、苛立たしげなリズムを刻み続ける。  
密かに監視に付けていた者からの報告によれば、  
今や最後の暗黒五邪神となったヴォルデスが、不可解な行動を示しているという。  
 
(老いぼれめ。一体、何を考えている?)  
 
麗子を助けるために現実界に向かった所までは良い。  
単なる気まぐれか、あるいは、ベノンへの当てつけか、いずれにせよ、その意図は理解可能だ。  
だが、最新の報告によれば、双頭の雷竜は、<ヴェカンタの戦士>を伴って現実界を離脱すると、  
全く未知の次元座標へと向かった、というではないか。  
 
「未知の、座標?」  
 
苛立ちのあまり、声に出して呟きを漏らす、ヴェカンティの支配者。  
直後、もう一つの事実に気付くと、さらに不機嫌さを募らせた。  
三界・・・・分けても、現実界の名で総称される無数の次元世界に監視の網を張り巡らせ、  
夢幻界側の動きを封じ込める目的で開始された、一連の大規模プロジェクト  
――――多層次元宇宙の精密探査や全天図作成を取り仕切っていたのが、  
他ならぬアイザードであった、と思い出したのである。  
 
(もしや、あの老いぼれが向かった先とは・・・・)  
 
無機質な金属光沢を湛えたマスクの下、  
およそ人間的な感情などというくだらない代物とは全く無縁の筈の、冷徹無比な眼差しに、  
ほんの一瞬だけとはいえ、揺らぎが生じる。  
 
(――――黄泉の国、サザーランド)  
 
幾つかの世界において、伝承として語り継がれている異空間。  
夢幻界と現実界の結び目に位置し、  
自前の戦力を持たぬ筈の夢幻界に<戦士>を供給し続けている、と謂われているが、  
数次に渡った探査によっても実態は明らかにはならず、実在するかどうかも疑わしい、とされてきた。  
・・・・だが、調査報告を取り纏めた者が反逆の張本人であり、  
今また、もう一人の反逆者までもがその場所に向かおうとしている、となれば、話は全く違ってくる。  
 
「これは、捨て置く訳にはいかぬな・・・・」  
 
「近衛軍団に出撃準備を。全軍の将を急ぎ招集せよ」  
 
矢継ぎ早に命令を下しつつ、ログレスはこれまでとは別種の苛立ちを覚えた。  
暗黒五邪神と異なり、一般の軍団長や参謀たちには、  
思念通話や瞬間移動などの便利な能力を持っている者は少なく、  
何かあるたびに、逐一伝令を送り、参集を待つ必要がある。  
 
「フン、埒も無い」  
 
自らが発した勅命を受け、  
各地の司令部や駐屯地に慌しく飛んでいく部下たちの気配を感じ取りながら、  
仮面の裏側で冷笑を浮かべる暗黒の王。  
そもそも、能力以前の問題として、  
彼らには、支配者の意思を汲み取った上で、自身の判断で最適な作戦を立案する才幹が欠如していた。  
総じて忠誠心だけは高く、アイザードやヴォルデスのように不遜な考えを抱く者は皆無だが、  
御前会議を開き、基本戦略を通達するだけでは足らず、  
個々人の任務についてさえ、大まかな指針を示してやらねば、まともな働きを期待できない連中なのだ。  
 
(まぁ、良いわ。今回は予も出陣する訳だからな。  
それに、老いぼれの傍らにはあの娘がいる。いざとなれば――――)  
 
 
(星が流れていく。綺麗だ・・・・)  
 
――――ここは、一体、何処だろう?  
身体中が、まるで空気と化したみたいに、フワフワと軽く感じる。  
だというのに、頭の中は、ずぅん、と重く澱み、全く思考が働かないのはどうしてだ?  
 
(もしかして、これが"死"というものなのか?)  
 
ヘドロのようにドロドロとした自我に残る、最後の記憶。  
<ファンタズム・ジュエリー>の強大な波動に押し包まれ、  
存在自体がグシャグシャに攪拌され、破砕されていく・・・・恐怖感。  
 
(・・・・結局、暗黒界に生まれた者は闇の中でしか生きられない、という事なのか。  
アイザード様や優子と同じ世界で・・・・光の中で生きる事など、所詮は・・・・)  
 
頬を伝うこの感触は、涙だろうか?  
空っぽの胸は、何とも言えない寂寥感とやりきれなさとで一杯だった。  
主君と仰いだ青年との誓いも、互いに友と認め合った少女との絆も、  
三界を律している冷徹な法則の前では、何の意味も持たなかったのだろうか?  
ヴェカンティに生を享けた者は、あのベノンのように、  
闇の掟に従い、破壊と殺戮をひたすら繰り返すだけの存在でしかない、と・・・・?  
 
「あ、気が付いた。デルフィナさん?」  
 
――――重たげな瞼を持ち上げ、目を開けた女エルフの視界に、最初に飛び込んできたのは、  
心からほっとした様子の、蒼髪のパートナーだった。  
・・・・あ、ああ、と、曖昧な返事を返しながら、  
デルフィナは、自分を抱きかかえた<ヴァリスの戦士>の肩越しにぼんやりと周囲を眺める。  
 
(次元の狭間?現実界から何処か別の世界に転移しようとしているところなのか?)  
 
自分はまだ生きているらしい、と、ようやくのみ込めて、安堵の息をつく金髪の女剣士。  
どうやら、<ジュエリー>のパワーで強制的に次元の狭間へと投げ入れられたショックで、  
一時的に意識を失いかけていただけのようだった。  
頭の芯には、まだぼうっとした感じが残り、とても本調子とはいかなかったが、  
先刻来の暗鬱な感覚は遠ざかり、思考も五感も急速に回復の兆しを見せている。  
 
「・・・・ちょっとだけ、心配したんだけど、  
<ジュエリー>には、別にデルフィナさんを傷付けようという意思はなかったみたい。  
多分、<明>の力を受け容れる事が出来るかどうか?試していたんじゃないかしら」  
 
「試していた?私を、か?」  
 
訝しげな顔つきのパートナーに向かって、ゆっくりと頷き返す、蒼髪の<戦士>。  
その後に、気恥ずかしそうに頬を赤らめつつ、小声で付け加える。  
 
「その・・・・本当は、わたしも、初めて<ジュエリー>に触れた時はあんな調子だったし・・・・」  
 
(だったら、最初に言ってくれたって良いじゃないかッ!?)  
 
思わず大声を上げかけて、ハッと口をつぐむ女剣士。  
優子の口元には、(珍しく)悪戯っぽい笑いが浮かんでいる。  
しばらくの間、考え込むような表情になった女エルフは、  
やがて、意味に気付くと、やれやれ、と言わんばかりの口ぶりで、呟きを漏らした。  
 
「なるほど、これでおあいこ、という訳か?」  
 
返事をする代わりに、クスッ、と、小さく微笑む優子。  
その表情を眺めたデルフィナは、もう一度舌打ちを漏らすと、苦笑いを浮べた。  
 
「お前も、案外、根に持つタイプなんだな」  
 
「・・・・だって、やられっぱなしってのは、やっぱり、ちょっと口惜しいし」  
 
フン、と、軽く鼻を鳴らす、女エルフ。  
ベノンとの死闘の前、都内のホテルでの一件は、確かに悪ふざけが過ぎたかもしれないが、  
今になって仕返しを仕掛けてくるとは、  
というより、この生真面目な少女が自分にそんな一面を見せた事自体、(良い方向で)意外だった。  
 
(シブヤの街角で出会ってから、まだ丸3日と経ってはいないのに、  
随分と馴れ合うようになったものだな・・・・お互いに)  
 
――――してやられた、とは感じたものの、不思議と悪い気はしなかった。  
むしろ、僅かな期間のうちに、そこまでの関係を築くに至った事を嬉しく思う感情の方が強い。  
少なくとも、最初に出会った頃の彼女ならば、  
ここまで打ち解けた態度を見せたりはしなかっただろうし、  
自分にしても、そんな馴れ馴れしい行為は断固として撥ね付けていただろう・・・・。  
 
「・・・・それにしても、随分と移動に時間がかかるな。」  
 
照れ隠しの意味合いも含んでの事だろう、いささか強引に話題を変えようとする女剣士。  
多分、一切を承知の上で、にっこりと笑いながら、  
蒼髪のパートナーは、そう言えばそうね、と相槌を打った。  
 
「いつもだったら、ほとんど一瞬で到着するんだけど」  
 
実際、優子にも、今回の次元移動は少し時間がかかり過ぎているように感じられた。  
互いに引き合う<ファンタズム・ジュエリー>本来の性質を利用する形で、  
意図的に目的地が操作されていた前回は特別としても、  
最初と二回目の次元移動にはさほど時間を要しなかった筈である。  
 
「・・・・・・・・」  
 
優子の説明に、不意に眉を寄せて表情を険しくするデルフィナ。  
しばらくの間、逡巡しているかのような様子で何事かを反芻した後、  
何事か、と表情を固くしてこちらを凝視する蒼髪の少女に向き直ると、  
慎重に言葉を選びながらではあったが、自分の考えを打ち明ける。  
 
「・・・・これは、あくまで、そういった可能性がある、というだけの話だが、  
現実界への転送がアイザード様によって仕組まれたものだったというのなら、  
あるいは、今回の次元移動にも、あの御方が何らかの影響を及ぼしていらっしゃるのかもしれん・・・・」  
 
「――――ま、まさか?」  
 
さすがに驚愕を隠せず、瞠目する優子。  
当然と言えば、当然だろう。  
あの時、全ての魔力を費消し尽くした、プラチナ・ブロンドの魔道士は、  
自分の目の前で、存在の全てを失い、因果地平の彼方へと飛散していった筈なのだから。  
 
・・・・・・・・だが。  
 
「・・・・いや、あの御方の考えは、正直、私などには想像もつかない。  
もし、アイザード様が、ベノンに敗れ、肉体を滅ぼされる事を予見された上で、  
密かに何らかの手を打っていらっしゃったとしても、私は不思議には思わない」  
 
信頼するパートナーの、  
――――いや、それ以前に、今なお彼を深く愛し続けている女性の、  
冷静な分析に、しばしの間、言葉を失う蒼髪の少女。  
困惑と疑念に襲われたその横顔に、ちらり、と一瞥を走らせたデルフィナは、  
低い声で、・・・・そういう御方なのだ、アイザード様は、と、短く言い添える。  
その一言で、幾分、落ち着きを取り戻しはしたものの、  
<ヴァリスの戦士>の表情は未だ固く強張り、激しい動揺によって蒼褪めたままだった。  
 
(・・・・アイザード、あなたは一体・・・・)  
 
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 
 

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