・・・・あの夢を見るようになったのは、一体、何時の頃からだっただろう?  
・・・・ずっと昔、物心ついて間もない頃のような気もするし、つい最近のような気もする。  
 
・・・・夢の内容は、日によって細部は多少異なっているものの、大筋はいつも大体同じだった。  
・・・・何処とも知れない場所で、大勢の人々――――いや、人ではない、獣や怪物の群れが、  
火の付いたように泣き叫ぶ小さな嬰児を取り囲んで、口々に何かを叫び、踊り狂っている・・・・悪夢。  
 
――――そう、恐ろしい悪夢、には違いないのだが・・・・。  
 
・・・・だがしかし、夢の中での自分は、  
恐怖よりもむしろ、(何故だか分からないが)とても懐かしい想いにとらわれているのが常だった。  
 
・・・・そう、自分は、かつて、この光景を目にした事がある。  
・・・・これは単なる夢ではなく、かつて経験した出来事の追想なのだ。  
 
 
(――――また、あの夢・・・・)  
 
不快に汗ばんだネグリジェを乱暴に脱ぎ捨てながら、独りごちる麗子。  
灯りをつけると、枕元の時計の針は午前2時を少し回ったところだった。  
 
(・・・・ここ最近は、ほとんど毎晩ね。鬱陶しいったらないわ)  
 
苛立たしげに息を吐き、ベッドの上に寝転がる。  
ぼんやりと見上げる自室の天井は、窓から差し込む月の光で青白く染まっていた。  
重たげな倦怠感が頭の上に圧し掛かっているものの、  
眠気は殆ど消え失せてしまっており、すぐには眠れそうにない。  
 
(・・・・フン、どのみち、眠ったところで、またあの夢を見るだけだし)  
 
「今朝からは、お母様も旅行だったわね」  
 
まどろみに落ちようと努力するのを諦めた赤毛の少女は、  
サイド・テーブルに置いてあったミネラル・ウォーターの栓を開け、  
コップに半分ほど注いで、一気にあおった。  
 
各方面に事業を展開している父親はいつも多忙で、落ち着いて家に居る事など滅多にない。  
現に、今も海外出張中で、帰国は来週の予定である。  
旧家の出身の母親も、仕事についてこそいないものの、じっとしているのが退屈なのだろう、  
昔から、婦人会の会合だのカルチャー教室だのとあれこれ理由を付けては家を空ける事が多かった。  
郊外の高級住宅地に建つ広い自宅には、  
父に雇われた使用人たちを除けば、自分しかいない、という日も珍しくは無い。  
 
 
 
 
704 名前:ARCH DUKE 投稿日:2010/06/20(日) 23:32:34 ID:u+XS8pIz 
(4)  
 
(・・・・学校が終わったら、ちょっと寄り道でもして帰ろうかしら?  
アイツに言えば、上手くやってくれるでしょうし)  
 
アイツというのは、学校と自宅との送り迎えを担当している、冴えない顔つきをした中年の運転手の事。  
井伊、という名のその男は、元々は父親の経営する会社の一つに勤めていたらしいが、  
何かヘマをやらかして、社用車の運転手に左遷されたらしい。  
 
それ以上の事情は、麗子は知らなかったし、特段、知りたいとも思わなかった。  
桐島家に出入りしている人間は、父の会社の関係者を含めて結構な数に上っていたが、  
親しく口をきいたりはしないし、主人と使用人という互いの立場を超えた関係を築こうと考えたりもしない。  
・・・・まあ、この運転手だけは、両親や他の使用人たちには内緒で小遣いを恵んでやる事で、  
密かに、桐島家や父ではなく、自分個人の飼い犬とするのに成功していたのだが。  
 
――――放課後。  
 
登校時に打ち合わせた通り、井伊は車を自宅ではなく、繁華街の方へと向けた。  
家の者には、『学校の行事で帰宅は遅くなる』と説明しておいてくれたらしい。  
 
「・・・・で、どちらへ向かいましょう?」  
 
ハンドルを握ったまま、問いかける中年男。  
バックミラーには写っていないものの、彼の口元は品の悪い笑みによって歪んでいた。  
やや不機嫌な表情になる麗子だったが、さりとて、行く先を告げない訳にもいかない。  
 
(さて・・・・何処に行こうかしら?)  
 
ぼんやりと窓の外の風景に目をやりながら、考え込む。  
 
・・・・喫茶店?映画館?サボリ中のセールスマンでもあるまいに、そんな所に行っても仕方がない。  
・・・・ホテル?いくら遅くなると言ってあるとはいえ、さすがに外泊は不味いだろう。  
・・・・ホストクラブ?悪くないが、さすがにこの時間帯では、まだどの店も準備中の筈だ。  
 
「そうだ、良い所がある」  
 
「○×公園へ行って頂戴。何て言ったかしら・・・・例の、風俗街の裏手にある・・・・」  
 
「・・・・お、お嬢さん、本気ですか?」  
 
驚きの声を上げる運転手に、冷やかな一瞥を投げかけると、  
赤毛の少女は、『いいから、行きなさい』と有無を言わせぬ口調で命令を発した。  
――――は、はあ、と、不安げな面持ちでハンドルを切る井伊。  
 
彼の反応も無理はないだろう。  
行き先として指示されたのは、風俗関係の店や事務所が軒を連ねる一角にある、うらぶれた公園。  
昼夜を問わず、ホームレスや違法滞在の外国人たちがたむろし、  
怪しげな薬の売買や売春行為の客引きの場として使われる事もしばしばある、との噂で、  
警察官ですら本心では立ち寄りたくないと思っている、と報じられる、いわくつきの場所だった。  
 
「あ、あのう・・・・お嬢さん、やっぱり、さすがにお一人では危険なのでは・・・・」  
 
信号待ちで停車している間に、  
中年男は、自分よりも軽く2周りは若い上司に向かって、おそるおそる意見を試みた。  
登下校中に麗子に何かあれば、真っ先に責任を問われるのは己れ自身である。  
下手をすれば、この不景気の最中に職を失い、妻子を連れて路頭に迷う羽目にもなりかねない。  
 
「うるさいわね、私に指図する気なの?」  
 
・・・・だが、赤毛の暴君は、使用人の言葉などには聞く耳を持たなかった。  
代わりに、ブランド物の財布から、一万円札を2枚抜き出すと、  
犬に餌でも与えるような仕草で運転席へと押しつける。  
そして、なおも食い下がろうとする中年男に対して、ぶっきらぼうに言い放つのだった。  
 
「つべこべ言うのなら、違反点数が溜まって今は免停中だって事、お父様に言いつけるわよ。   
・・・・ほら、信号が青になったわ、とっとと発車しなさいッ!!」  
 
――――しばらくの後。  
 
井伊の運転するリムジンが視界の外に消えていくのを確認して、少女は小さく息を吐いた。  
僅かな小遣い銭さえ与えれば、何でも命じた通りにする、便利な男だが、  
狡っからい性格と、どれだけ消臭剤をスプレーしても消えない加齢臭だけは、鬱陶しい事この上ない。  
 
(いい加減、アイツの顔も見飽きてきたわね・・・・免停の事、本当に言いつけてクビにして貰おうかしら?)  
 
物騒な考えを弄びつつ、みすぼらしい公園を眺めやる。  
あちこち破れたりひしゃげたりして、  
囲いとしての役割など、とうに果たせなくなってしまったフェンスに囲まれたその場所は、  
広さだけはそれなりにあるものの、木々も遊具も全く手入れされないまま、放置されているようだった。  
目に付く物といえば、大量のゴミと壊れかけのベンチに寝転がったゴミ同然のホームレス、  
それに、三々五々連れ立って輪を作り、低い声で何か呟き合っている、国籍も人種もまちまちな外国人の小グループぐらいである。  
 
――――と、前方から早速、中東系と思しき男たちが近付いてきた。  
 
『オジョーサン、ドシタカ?』  
『クスリ、イルノカ?ヤスクシトクヨ?』  
 
カタコトの日本語で話し掛けてきたのは、おそらくは違法滞在者らしきイラン人の二人組。  
がっしりとした労働者風のカラダを着古した中国製のジャージに包み、  
陽射しに灼けた顔立ちの中では濃い顎髭がよく目立っているが、  
年の頃はせいぜい20代の中頃といったところだろう。  
 
(さて・・・・どうしたものかしらね?)  
 
じっと相手を見つめながら、品定めする。  
勿論、両親やクラスメイトたちには秘密にしていたが、すでに異性との性交為を何度か経験済みであり、  
もはや、セックスそれ自体に対して、好奇心を覚える段階は卒業していた。  
でなければ、こんな危険な場所に一人で足を踏み入れたりはしなかっただろうし、  
見ず知らずの外国人から話し掛けられて落ち着き払っていられる筈もない。  
 
(・・・・体つきは悪くなさそうだけど)  
 
元より、こんなトコロで相手を探そうとしているのだから、贅沢を言うつもりは無い。  
むしろ、ある程度の危険は承知の上で、そのスリルを楽しもうとさえしていたのだが、  
だからと言って、力任せの下手糞な行為を押し付けられたのでは意味が無かった。  
第一、性病やおかしな病気をうつされる可能性を考えると、  
やはり、ある程度、相手は選ばざるを得ない、と思うだけの分別も残っている。  
 
『ノー、サンキュー』  
 
抑揚の無い声で答えると、二人組は、何も言わず、肩をすくめて離れていった。  
――――別に、イラン人だからという理由で断った訳ではないけれど、  
もう少し見栄えの良い、出来れば、整ったルックスの相手を探したい、  
そう考えながら、麗子は、再び公園全体にゆっくりと視線を一周させる。  
 
(・・・・とは言ったものの・・・・)  
 
視界内に映る人間は、ほぼ全員がこの寂れ果てた場所に似つかわしい、  
疲労と倦怠を漂わせる、中年以上の男たちだった。  
 
会社をリストラされて帰る家もなくしたらしい、薄汚れたスーツ姿の日本人。  
なまりの強い中国語で何か口論している、白髪頭の中国人たち。  
薬物か何かの入った小さな紙の包みを手に、値段の交渉をしている黒人の中年男性・・・・。  
 
(ロクなヤツがいないわね・・・・ま、これが現実ってトコロかしら?)  
 
形の良い唇から自嘲気味な笑みがこぼれる。  
外国人や犯罪者たちが群れる裏通り、警察官すら近付くのを躊躇う無法地帯、という、  
週刊誌の煽り文句のような噂話を信じて、わざわざ足を運んできたのだが、  
実態は、今、目にしている通り、他と比べて多少治安が良くない場所、というだけでしかなかった。  
 
(つまらないわね。・・・・もう、帰ろうかしら)  
 
――――そう感じて、踵を返しかけた、瞬間だった。  
 
「よう、姐ちゃん。見ない顔だが、こんな時間から客引きかい?」  
 
背後からかけられた声に驚いて振り返ると、  
ペイズリー柄の真っ赤なシャツを着込んだパンチパーマの若者が、三白眼で睨み付けていた。  
後ろでは、同じような派手の身なりの若い男たち  
――――彼よりも更に年下、自分と殆ど変わらないぐらいの少年が2人、  
加えて、先程の二人組がニヤニヤと笑い合っている。  
 
「この界隈で商売したいんだったら、然るべきスジにお伺いを立ててからやって貰わねぇとな。  
この先は、ま、言わなくても分かるだろ?」  
 
(私を、『売り』だと勘違いしてるの?  
・・・・まぁ、こんな場所へこんな格好で来たんじゃあ、そう思われても仕方ないか)  
 
麗子は口の中で苦笑を噛み殺した。  
今、身に着けているのは、私服ではなく、学校指定のセーラー服。  
鞄は邪魔になるのでリムジンの後部座席に置いてきていた。  
たしかに、こんな服装で風俗街のド真ん中に立っていれば、援交目的と誤解されても仕方ないだろう。  
どうやら、先刻近付いてきたイラン人は、そのあたりを確認して、  
仕切り役・・・・多分、何処かの組の準構成員に違いない、目の前の若い衆に、  
報告するのが本当の役割だったらしい。  
 
(面倒な事になったわね・・・・でも)  
 
――――この状況はある意味、チャンスかもしれない。  
凄みを利かせるパンチパーマを見つめつつ、素早く計算を働かせる赤毛の少女。  
目の前の彼は、自分を『売り』目的の商売女と判断している。  
当然、目的は、第一義的には金銭、もしくは、同等の価値のある何かだろう。  
 
(・・・・それに、コイツだったら、  
少なくとも、そこのベンチで寝転がってるホームレスやイラン人よりは身奇麗にしてる筈だわ)  
 
「悪かったわ。でも、お金は許して。でないと、あの人に何されるか・・・・」  
 
紫色の瞳の奥に好色な笑いを浮かべながら、しおらしい声音を作り、泣き付いてみせる。  
・・・・無論、そんな言い分を真に受けるヤクザなどいる筈がないのは百も承知の上で。  
案の定、少年は首を縦に振ろうとはしなかった。  
 
「うるせぇよ。だったら、マチ金行って金借りて来りゃいいだろうが。  
何だったら、オレが良い店紹介してやろうか?」  
 
「お、お願い、堪忍して・・・・」  
 
今にも泣き出しそうな表情を作ってみせると、  
チンピラは完全に舞い上がり、警戒心を失くした。  
あんまり大したヤツじゃなさそうね、と、内心軽い失望を覚える麗子。  
暴力団関係者という訳ではないが、この種の人間は、父親の会社にも取引先にもゴマンといたし、  
彼女自身も何度と無く目にした経験があるので、すぐに分かる。  
 
「お金はダメなの・・・・でも、それ以外だったら、何でもしてあげる。  
だから、今日のところは許して・・・・ねぇ、後生だから」  
 
「ほぉ、何でも、かよ?・・・・姐ちゃん、その言葉に嘘はねぇだろうな?」  
 
三白眼をぎらつかせる準構成員に、心の中で、かかったわ、とほくそえむと、  
麗子は睫毛を震わせながらコクコクと頷いてみせた。  
元より、適当な相手を見つけて、セックスに誘うつもりだった彼女にしてみれば、  
対象が、公園にたむろしている不法滞在の外国人から、下っ端ヤクザへと変更になっただけに過ぎない。  
 
(少なくとも、イラン人よりはマシだわ。あいつら、井伊よりも体臭きつそうだったし)  
 
「いいだろう。だが、逃げたりしねぇように、金は預かっとくぞ。  
・・・・心配すんな、ちゃんとオレ達を満足させる事が出来たら、返してやるからよ」  
 
まくし立てるなり、パンチパーマは少女の手から財布を奪い取り、中を確かめた。  
現金とキャッシュカードを抜き取って、ズボンのポケットへと捻じ込むと、財布は投げ返す。  
 
「ほ、本当に返してよ、約束だからね!?」  
 
切羽詰った口ぶりは、名優の域に達している、と言っても良いくらいだった。  
本当は、その程度の金額など、奪われたとて痛くも痒くも無かったし、  
用心のため、キャッシュカードは自分の名義では作っていない。  
トラブルに備えて、携帯や学生証などはリムジンの中に置いてきていたから、困る事は何も無かったのだが。  
 
「うるせぇ、とっとと歩けよッ!!」  
 
乱暴にまくし立てると、少年は麗子を小突き上げ、  
大物を仕留めて山を下りる猟師のように、肩で風を切りながら歩き始めた。  
その後に、離れた場所で様子を眺めていた仲間たちが続く。  
二人組のイラン人も、あわよくばおこぼれにありつけるかもしれない、と期待して付いて行こうとしたものの、  
すげなく追い返され、恨めしそうに一行を見送るしかなかった。  
 
「――――ほら、さっさと服脱いで、横になれッ!!」  
 
連れ込まれたのは、廃ビルと呼んでも差し支えないほどのオンボロ・アパートの一室だった。  
電気を止められているのか、室内はひどく薄暗く、  
カップ麺やコンビニ弁当の空容器と空のペットボトル、ビールの空き缶が床一面に散乱して異臭が漂っている。  
家具といえる物も、スプリングが粗方ダメになり、今にも壊れそうに軋んでいるベッドが一つだけ。  
 
(・・・・さすがに、ここに住んでるって訳じゃあ無さそうね)  
 
容赦なく鼻腔に侵入してくる臭気に閉口しつつ、麗子はおとなしく命令に従った。  
クラリーノの革靴を脱いで、黄ばんだ皺だらけのベッドに上がると、  
チンピラたちに背中を向けて、セーラー服の真紅のマフラーを抜き去り、ボタンを外していく。  
 
若者達は、自分に話し掛けてきた少年を含めて3人。  
言葉遣いから想像するに、パンチパーマがリーダー格で、他の二人は格下らしかった。  
アパートの軒下には、ボロボロの建物には不釣合いな、  
ピカピカに磨き上げられた大型バイクが2両並べて駐めてあった事から考えて、  
あるいは、彼らは暴走族仲間なのかもしれない。  
 
「ヘッヘッヘッ、ちょっと痩せてるが、まぁまぁ上物だな」  
「ビデオ持って来れば良かったか?結構高く売れるかもしれねぇぜ」  
「そういう事はもっと早く気づけよ・・・・チッ、ここじゃあ、暗すぎて撮影出来ねえよ」  
 
背中越しに聞こえる下卑た会話。  
ビデオの話が聞こえた時は、さすがに、しまった、と思ったが、  
どうやら、まだ運は味方してくれているらしい。  
動揺を悟られないよう、セーラー服の上着を脱ぎ、皺にならないように丁寧に折り畳む。  
 
「時間が無ぇんだよ、とっととしやがれッ!!」  
 
パンチパーマが欲情した声を発した。  
もう我慢出来ないのか、カチャカチャと耳障りな金属音を掻き鳴らしながら、ベルトを緩め始めている。  
苦笑いを噛み殺しつつ、赤毛の少女は学校指定の紺色のスカートを脱ぎ、  
次いで、下着の上に羽織った、化繊のシュミーズに手をかけた。  
背後で、ゴクン、と唾を飲み込む音が響き渡る。  
 
「ちぇッ、まだあんまし脹らんでねぇな」  
 
シュミーズを取り去り、(靴下を別にすれば)ブラとショーツを残すだけになった赤毛の少女。  
若者達は好色そうな笑みを浮かべながら、遠慮の無い意見を口にする。  
実際、彼女の身長体重は、同じ年齢の女子高生の平均値とほぼ同じくらいだったが、  
スリーサイズに関しては、やや物足りない、と言っても過言ではなかった。  
 
「へへッ、知ってるか?最近は巨乳より貧乳の方が流行ってるんだぜ」  
 
一人、パンチパーマだけが彼らに同調せずに、  
目の前の少女を(かなり微妙な言い回しで、ではあったが)擁護する。  
見れば、ズボンはすでに脱ぎ去っており、  
シャツと同様に、派手というよりも悪趣味と言った方が的確な、極彩色のトランクスの真ん中で、  
男性自身が高々とテントを張って聳え立っていた。  
 
「・・・・というわけで、最初はオレが味見をさせて貰う。  
巨乳大好きなオメーラに文句言われながら相手されても、姐ちゃんだって面白くねぇだろうからなぁ」  
 
「あ〜、そいつはずり〜ぜッ!!」  
「兄貴だって、この間は巨乳の方がいい、って言ってたじゃんかよぉ!!」  
 
舎弟たちのブーイングをものともせずに、  
準構成員はトランクスを摺り降ろし、いきり立った肉棒を掴み出した。  
 
(ッ!?)  
 
いきなりの蛮行に、思わず顔を背ける麗子。  
だが、すぐに冷静さを取り戻すと、男根へと向き直る。  
長さはおよそ17、8センチ、日本人男性の平均サイズを少し上回るくらいだが、  
決して巨根と呼べるような代物ではない。  
亀頭部分に黒ずみはなく、若々しいピンク色が残っていた。  
有体に言って、筆下ろしは済んでいるものの、まだ使い込まれているというには程遠い状態である。  
 
「とりあえず、しゃぶって気持ち良くさせて貰おうか?  
・・・・言っとくが、歯を立てたりしたら承知しねぇぞ」  
 
それでも、口だけは達者に男根を押し付けてくる、パンチパーマ。  
ツン、と、微かな刺激臭が鼻腔に突き刺さり、瞼の奥で小さな電気火花が花を咲かせる。  
 
「・・・・んむッ・・・・んくうッ!!」  
 
柔らかな朱唇が鈴口に密着する。  
途端に、少年の背筋が、びくん、と嬉しそうに跳ね、  
背後で見守っていた弟分たちから、歓声ともため息ともつかないどよめきが漏れる。  
 
「うほぉッ、結構上手に出来るじゃんかよッ!!  
そうだ、先っちょの割れ目のトコ、もっと抉ってくれ・・・・もっと強くッ!!」  
 
勝ち誇った表情の準構成員に、チラリ、と視線を投げかけると、  
舌先で、早くも透明な液体を滲ませ始めた亀裂を丹念になぞり上げた。  
粘っこい先走り汁が口腔一杯に広がり、噎せ返りそうになる。  
 
「や、やべぇ、コイツ、すげえ上手ぇよッ!!  
あッ、そ、そこ舐めるの・・・・ああッ、マジでやべぇッ!!」  
 
堪え性も無く、ビクビクと体を震わせ始める若者に物足りなさを覚えながらも、  
赤毛の少女は、ぐぐぐっ、と顔を寄せ、陰茎を根元まで咥え込んだ。  
舌の先端を自在に操り、裏スジから雁首まで、余す所無く嘗め回す。  
 
「おわわッ・・・・や、やべぇよッ!!コイツのフェラ、まじでヤバすぎるッ!!」  
 
黄色い声を発しながら、パンチパーマは自らも動いて、  
暴発寸前のペニスをグイグイと押し込んでくる。  
ここにきてようやく、麗子も、乱暴に喉を衝かれて鼻先に星が飛び散り、  
紫色の瞳に生温い涙が浮かんでくるのを感じ始めていた。  
狭い口腔内を埋め尽くした淫根の逞しい感触が、  
頭の中で脳髄を焙られる熱さへと変換されていくにつれて、  
快楽物質の分泌が促進され、トロンと酒に酔ったような鈍い光が目元を覆っていく。  
 
――――だが、次の瞬間、束の間の恍惚と淡い期待感は見事に裏切られる事になる。  
 
「うあぁあッ!!も、もうダメだぁッ!!で、射精るぅ・・・・射精ちまうよォ!!」  
 
情けない叫び声と共に、少年の全身が痙攣に包まれた。  
――――ビュクビュクビュクッ!!!!と、  
呆気ないくらい簡単に肉根が爆ぜ、筒先から生臭い白濁液が噴き出してくる。  
 
「うむッ・・・・むくぅうッ!!!!」  
 
あまりに堪え性の無い牡棒に深い失望を覚えながら、  
それでも、麗子は、柔らかな舌の上に広がる熱い飛沫を少しでも長く味わおうと、  
跳ね回る陰茎を、なおも愛しそうにしゃぶり回し、吸い尽くそうとする。  
・・・・だが、ひとしきり射精が終わってもまだペニスを離そうとしない貪欲な吸引に本能的な恐怖を感じたのか、  
パンチパーマは少女の髪を掴んで、強引に股間から引き剥がした。  
そして、何か得体の知れない怪物でも目にしたかのような表情を貼り付けたまま、ベッドの下に沈没していく。  
 
(・・・・な、何よ、口先ばっかりで、全然大した事無いじゃない!)  
 
あまりに身勝手な態度に呆れ返る麗子。  
だが、喜悦に惚けた人間に怒りをぶつけても仕方がない。  
やむなく、彼女は、溜まった精液を、こくん、と飲み下すと、  
形の良い口元から白濁した精汁の糸を垂れ流したまま、背後を振り返り、  
一部始終を固唾を呑んで見守っていた後ろの2人に向かって、妖艶に微笑みかけた。  
 
「ウフフッ、次に相手してくれるのはどっち?」  
 
ゴクリ、と、唾を飲み込むヤンキー二人組。  
その視線は、快感のあまり、だらしなく頬を緩め、天井を仰いで轟沈している兄貴分と、  
薄ら笑いを浮べてこちらを見つめている、下着姿の少女の間を交互に行き来している。  
 
(・・・・フン、三人揃って情けないったらありゃしない・・・・)  
 
少年達に向かって、盛大に舌を打ち鳴らす麗子だったが、  
指揮官を失ったチンピラたちは互いに顔を見合わせるばかりで、前に進み出ようとはしなかった。  
元より、パンチパーマの下で、指示に従順に従っているだけの三下である。  
一時的にとはいえ、リーダーが戦線を離脱した状況には不慣れであり、  
また、どうやら、このような場合の序列についても、明確には決まっていないようだった。  
 
「・・・・まったく、しょうがないわね。  
じゃあ、特別に2人一緒に相手してあげるわ・・・・それなら、良いでしょ?」  
 
唖然とする三下達に向かって、  
ニィッ、と唇の端を歪めながら、挑発的な眼差しを投げ付ける麗子。  
 
――――のみならず。  
 
「ほら、いつまでグズグズしているつもりなのよッ!?」  
 
勢い良く、ブラジャーを剥ぎ取ると、精一杯反らした胸の中で、  
手の平の内側にすっぽりと収まるぐらいのサイズの、お椀を伏せたような白い脹らみが揺れ動いた。  
豊かな、という形容を必要とする大きさとまではいかないが、  
胸乳からは、見た目以上に牡の本性を刺激する妖しいフェロモンが漂っている。  
 
「こ、このアマ、言わせておけばッ!!」  
「舐めくさりやがって、もうカンベンならねぇぞッ!!」  
 
案の定、激昂に駆られたチンピラたちは、  
同時に(勿論、無意識のうちに、だが)深く安堵しつつ、一斉にベッドへと飛び込んでくる。  
 
「よっしゃあッ!!一番乗りィッ!!」  
 
ハスキーな声を上げたのは、頭を茶髪に染め上げたTシャツの少年。  
普段は塗装工か何かとして働いているらしく、  
全身に染み付いたシンナー系の臭気に鼻腔を突き刺されて、  
麗子は軽く咽せ返り、顔を仰け反らせた。  
だが、彼は、嫌がる少女の反応に嗜虐心をそそられるタイプなのか、  
石油製品を扱う仕事柄、赤く充血した両眼を更に血走らせながら、  
目の前で微かに体を震わせる美しい獲物にむしゃぶりつこうとする。  
 
「ちッ、出遅れちまったぜッ!!」  
 
僅かに遅れて、ベッドに飛び乗ったのは、  
いかにも体育会系というガタイの、陽に焼けた若者。  
三人の中では一番体格が良く、筋肉の付き具合も隆々として逞しいが、  
派手なプリント柄のトランクスを摺り下して掴み出した怒張のサイズは、  
惜しい事に、精々十人並みでしかなかった。  
 
(・・・・まったく、揃いも揃って大した事無いヤツばかりね・・・・)  
 
内心、深々とため息を漏らしつつ、  
それでも、ベッドの上に四つん這いになった麗子は、上目遣いに二人をねめつけてみせた。  
どうせ、彼らも、セックスのテクニックや経験という点では、  
足元で惚けた表情を浮べている兄貴分と五十歩百歩に過ぎないのだろうが、  
既に火の付きかけているこのカラダの、疼きを鎮める役ぐらいには立ってくれるだろう・・・・。  
 
「おっと、なかなか良い具合に濡れてやがるぜッ!!」  
 
背後に回った茶髪少年が、汗ばんだショーツに鼻先を近付けながら興奮した囁きを漏らした。  
その直後、骨張った指が、ゴムの入った薄布の縁を掴んで、ぐいッ、と力任せに引き摺り下ろす。  
 
「ひぃあッ!?」  
 
節くれだった指先、そして、シンナーと汗とが入り混じった不気味なぬめり気に、尻を撫でられて、  
思わず、びくり、と、背中を震わせ、顔をしかめる赤毛の少女。  
どちらか一方だけならば、気色悪さも許容可能な範囲内に収まっていただろうが、  
おぞましさのコラボレーションの前には、さしもの彼女も引き攣った声を上げずにはいられなかった。  
 
「へへッ、イキがっていても、やっぱり女だな。可愛い声で泣くじゃねぇかッ!!」  
 
たちまち気を良くしたTシャツ男が嘲笑を浮べる。  
それに後押しされたのか、体育会系少年も、負けじとばかりに正面に回り、  
掴み出した股間のイチモツを精一杯扱き立てながら、  
先程、パンチパーマが惨めな敗北を喫したばかりの口元に突き入れてくる。  
 
「うむぅ!?・・・・むぐぅううッ!!」  
 
乱入してきた異物に気道を塞がれて、大きく両目を見開く麗子。  
両顎の間では、肉竿が、びゅくん、と、勢い良く跳ね、  
生臭い精臭を、口腔一杯に、所嫌わず、撒き散らしていく。  
一時的にだが、息が出来なくなった彼女が、顔面を歪めながら苦悶の喘ぎを漏らすと、  
はずみで、舌先が、まるで別個の意志を持った生き物のように動き回り、  
ペニスの表面で、ピチャピチャと卑猥な即興ダンスを舐め躍った。  
 
「うぉおおッ!?すげぇ・・・・すげえよ、コイツの口マ○コッ!!」  
 
少年の双眸が歓喜に見開かれ、悲鳴にも似た甲高い奇声が噴き上がった。  
と同時に、舌根にくるみ込まれたイチモツが、更に一回り大きく膨張し、  
早くも、ピクピクピクッ、と敏感な痙攣を発し始める。  
 
「うぉ、オオッオッオッ・・・・!!た、たまらねぇ、今にも射精ちまいそうだッ!!」  
 
だらしなく大口を開けたまま、早くも泣き言を漏らし始める、体育会系、。  
少女の毛髪を掴んでいた両手に、思わず、力がこもり、  
生温かいクチビルが、限界まで勃起しきった陰茎の根元に触れるまで、グイグイと押し込んでいく。  
下手をすれば、相手を窒息させかねない危険な行為だが、  
めくるめく口淫の快感に我を忘れ、牡の本能に支配された彼には、  
それを判ずるだけの理性さえ、もはや残されてはいなかった。  
 
(フフフ・・・・前立腺がピクピク震えてる。もうすぐ放出ね)  
 
麗子の方は、と言えば、一時期の混乱を脱して、急速に落ち着きを取り戻しつつある。  
・・・・というより、だんだんと意識が醒めてきた、という表現が適切だろうか?  
続けざまのフェラチオで性の感覚はより敏感になり、  
彼女の中の牝の部分が激しい炎に包まれて燃え盛っているのだが、  
それらとは反比例するかの如く、男たちを見据える眼差しは冷やかさを増す一方だった。  
 
(所詮、どれだけワルを気取っていても、チンピラはチンピラでしかないんだわ・・・・)  
 
口腔内でのた打ち回る、暴発寸前の水道ホースを舌先であやしながら、こっそりと息を吐く。  
結局のところ、あんなうらぶれた、ゴミ捨て場同然の公園に集まる人間の中に、  
週刊紙や深夜のTV番組で取り上げられるような本物のアウトローなど、いる筈がないのだ。  
いや、そもそも、そのような存在自体、  
大衆向けマスコミの記者たちが生み出した、架空の産物でしかないのかもしれない。  
 
(私もどうかしていたわ・・・・あんな三文記事を真に受けるなんて)  
 
びゅるッ!!びゅくびゅくびゅく――――ッ!!!!  
 
少年の男根がついに限界点に達し、  
狭い口内全体に白濁した液体をぶち撒けながら躍り狂う。  
 
「ひ、ひぃぃッ!!」  
 
むぅっとするようなイカ臭い牡臭が喉奥へと流れ込み、  
ドロドロとした精液の生温かい感触が粘膜を浸していく。  
再び、だらしない悲鳴を放ち上げたチンピラは、  
なおも貪欲に陰茎を咥え込んだまま離そうとしない麗子に対して戦慄を覚え、  
先刻のパンチパーマと同じく、大慌てで己の男性器から引き剥がした。  
 
(ぐッ・・・・何するのよッ!この早漏野郎ッ!)  
 
はずみで、溜め込んだ精液が気管へと入り込み、激しく咳き込む。  
思わず、怨嗟の視線を投げ付けると、  
少年は、射精を終えたばかりのイチモツから細いザーメンの糸を垂らしつつ、  
先に沈没した兄貴分の隣で壁際にもたれかかり、仲良く並んで、忘我の喜悦に意識を委ねていた。  
 
(はんッ!!仲のおよろしい事でッ!!)  
 
激しく舌打ちを漏らした赤毛の少女は、  
口元の汚液を手の平で拭い去ると、最後の一人・・・・背後にいるシンナー男を振り返る。  
首尾よくショーツを摺り下したまでは良かったが、  
相方の体育会系が、目の前で為す術も無く果てさせられてしまった様子に圧倒されて、  
下着の端を握り締めた間抜けな格好のまま、茫然と動きを止めていた三下は、  
冷たい眼差しに気付くと、いかにも気まずそうな表情を浮べつつ、目を逸らした。  
 
「・・・・ちょっと、挿入るんだったら早くしなさいよ!!  
それとも、アンタも口でして欲しいの!?」  
 
苛立たしげにクチビルを尖らせる。  
それでなくても、舌先に残った精液のヌルヌル感が不快さを倍化させていた。  
 
「う、うるせぇッ、すぐにぶち込んでやるぜッ!!」  
 
挑発の言葉を受けてようやく、自失状態から立ち直るシンナー少年。  
とはいえ、選択したのは、二人の仲間が立て続けに果てさせられたフェラチオではなく、  
まだ誰も手を触れていない女陰の方だったが。  
 
間近に眺める秘所は、赤茶色の恥毛がまだ完全には生え揃わず、  
肉丘の盛り上がりも、大陰唇の厚みも、未だオンナとしての成熟の域からは程遠い。  
大人の女性の秘部を覗き見た経験と言えば、  
くすねた親の金で風俗に行った時ぐらいしかない、彼の目にさえ、その事実は明らかだった。  
 
「・・・・なんだ、吹かしやがって。ココはまだネンネじゃねェかよ」  
 
感情の起伏がすぐ言葉に現れる性格なのだろう、たちまち、少年の口調は一変した。  
思わず、むっとする麗子だったが、  
彼の指摘が決して的外れなものではないのは自分自身が一番良く知っている。  
 
「きっと膣内はキツキツだな・・・・少し濡らしとかねぇと入るモンも入らねぇ」  
 
先刻までとは一転、俄然やる気を出す塗装工。  
潤滑剤代わりに、ペッペッ、と唾を吹きかけ、指先を濡らすと、  
太股の間からのぞいている薄桜色の二枚貝へと伸ばしていく。  
 
「うくッ!?」  
 
揮発油の臭気がたっぷり染み込んだ野太い指に敏感な場所をまさぐられた瞬間、  
赤毛の少女は、背筋を、ぶるッ、と震わせて、我知らず、両手を握り締める。  
その反応に気を良くした若者は、さらに顔を近付けると、  
薄く汗ばんだ色白の桃尻へとしゃぶりつき、柔かい肌に歯を立てた。  
 
(こ、この・・・・変態ッ!!)  
 
おぞましさに総毛立つ、赤毛の少女。  
別段、皮膚を食い破られるほど強く噛まれている訳ではないのだが、  
少年の、ノーマルな性行為とはとても言い難い暴挙の裏に潜む、  
人を人とも思わぬ残忍性の一端を垣間見た気がして、寒気が止まらなかった。  
 
・・・・しかし、その一方で。  
 
「おおッ!?ケツを噛まれて感じ始めたのか?  
急に、愛液の量が多くなったぞッ!!」  
 
馬鹿な、と、反射的に声を上げそうになる麗子。  
だが、次の瞬間、媚肉の奥で、じゅん、という、湿り気を帯びた卑猥な音が響き渡り、  
不快感に由来するものとも嫌悪感に由来するものとも明らかに異なる、  
ぞっとするような痙攣が、腰椎の間を、次いで、背筋全体をガクガクと痺れさせた。  
 
(ど、どうなっているの・・・・ま、まさか、本当に感じているとでもッ!?)  
 
愕然とするものの、そんなハズは無い、と否定する事は出来なかった。  
少年のあけすけな指摘の通り、  
秘裂を濡らしている密液の湧出は、自分でもはっきりと自覚できる程、急激に量を増しつつある。  
加えて、尻を噛まれるたびに、ゾクッ、ゾクッ、と異様な快感が湧き起こり、  
陰唇粘膜全体に、焼きゴテを押し付けられたかのような熱さが広がっていた・・・・。  
 
「ほう・・・・尻を噛まれるのが気持ち良いのか?」  
 
いつ目を覚ましたのか、床にダウンしていた筈のパンチパーマが、  
三白眼に嘲笑を浮べて、自分を見下ろしていた。  
フェラチオによって一度はイキ果てた股間のイチモツは、元通りに勃起を回復し、  
ギラギラとした欲望を宿して、抜き身の日本刀の如く、固く反り返っている  
 
(甘く考えていたわ・・・・こんなに早く、復活するなんてッ!?)  
 
我知らず、息を止める麗子――――この上もなく甘美な激痛が襲ってきたのは、その時だった。  
 
・・・・・・・・ずじゅるッ!!!!  
 
肉孔を抉る鈍い音と共に、カラダに異物が突き刺さる。  
一瞬、己の身に何が起きたのか分からず、怪訝な表情を浮べた赤毛の少女は、  
直後、肛門を貫いた激しい痛みに顔面を引き攣らせ、悲鳴を上げた。  
 
「ひぎぅッ!?・・・・ひぎゃあああああッッッ!!!!」  
 
華奢な肉体が壊れかけのゼンマイ人形のように痙攣し、  
手足の筋肉が、ギクギクギクッ、と、引き千切れんばかりに硬直していく。  
スベスベとした生白い背筋が総毛立ち、  
次いで、全ての汗腺が全開となって、数え切れない程の冷たい汗粒に覆われていった。  
 
「やっぱりだぜ、アニキ!!この女(スケ)、尻の穴で感じてやがるッ!!」  
 
族言葉丸出しで、興奮した叫び声を放つシンナー少年。  
勝利の喜びに湧き立つ視線の先では、グロテスクな形をした黒い淫具が、  
真っ赤に充血して、今にも張り裂けそうなすぼまりに深々と刺さっていた。  
 
「ケッ、とんだ変態女だなッ!!」  
 
泣き叫ぶ少女に向かって、ペッ、と唾を吐きかけると、  
チンピラ達のリーダーは汗に濡れまみれた髪の毛をわし掴み、  
彼女の顔面を、強引に、自分の下腹部・・・・獣欲に猛り狂う牡槍の正面へと引き寄せた。  
 
「おら、オメーの大好きなおチ○ポさまだよ。とっとと咥えてしゃぶりやがれッ!!」  
 
怒鳴り散らすなり、満足に息も注げずにいる少女の唇に向かって、復讐の刃を突き入れるパンチパーマ。  
その下では、ベッドに腰を下ろしたTシャツ少年が、  
対面座位の体勢から、いきり立った男根で恥裂を深々と突き上げ、  
牝汁でドロドロになった花園を、欲望の赴くまま、蹂躙し始める。  
 
「おい、ぼさっとしてねェで、お前も何か手伝えよ」  
 
兄貴分に命令されて、体育会系も起き上がった。  
体を鍛えている分回復も早いのだろう、下半身も先刻以上に元気そうであるが、  
困った事に、口元と膣穴にはすでに先客がいて、塞がれてしまっている。  
 
「迷う事ァ無ェだろ、バイブを抜いてケツ穴にぶち込んでやれ」  
 
尻肉に噛み付いていたのと同じ要領で、  
今度は乳房を責め立てていたシンナー少年が陽気な声で相棒を誘った。  
彼ほどにはアブノーマルな性癖の持ち主ではないのだろう、  
一瞬だけ、イヤそうな表情を浮べた体育会系だったが、  
元より、他に肉棒を挿し込める穴が存在しない以上、結局はその言葉に従うしかない。  
 
「むぐぅうッ!!・・・・うむゅううううッッッ!!!!」  
 
三人がかりで一斉に責め立てられては、さしもの麗子も平静ではいられない。  
無論、彼女とて、週刊誌やハウツー本などの媒体を通じて、  
世の中にはこうしたレイプ同然のセックスも存在しているのだ、と聞き知っており、  
また、(漠然とではあるが)その種の性交に対して、一種の羨望にも似た、好奇心を抱いていたのも事実だった。  
だがしかし、現実に自分自身がその立場に立たされてみれば、  
感じるのは圧倒的な痛みと苦しみだけで、本に書いてあったような快感など何処にも無く、  
己れが如何に甘い妄想に浸っていたのか?がひしひしと理解できる。  
 
(く、苦しい・・・・い、息がぁッ!?)  
 
満足に呼吸さえ出来なくなり、次第に意識朦朧となっていく。  
だが、チンピラ達は、少女の窮状などお構い無しに、  
口元を、喉奥を、乳房を、恥丘を、膣穴を、子宮を、肛門を、直腸を・・・・陵辱するのに夢中になっていた。  
 
(あああ・・・・意識が・・・・遠のいていく・・・・!!)  
 
目の前が、暗く霞み始めていくに至って、死の恐怖さえ覚え、恐れおののく。  
・・・・このままでは死んでしまう、何とかしなければ・・・・!!  
必死に足掻いて、窮状を知らせようとするものの、  
陵辱者たちは一向に気付く事無く、それどころか、更に各々の腰の動きを加速させていった。  
 
(・・・・た、たすけて・・・・だれか・・・・だれかぁ・・・・)  
 
フラットになっていく思考の中、脳裏に浮かぶのは・・・・毎夜うなされていた、あの夢の光景。  
徐々にぼやけ、輪郭があやふやになっていく視界の中で、  
欲情に魂を奪われた少年達の顔が、獣とも人ともつかない、奇怪な化け物のそれへと変わっていくのを、  
麗子は確かに目の当たりにし――――直後、永劫の闇の底へと呑み込まれていった・・・・。  
 
・・・・・・・・寒い。  
・・・・身体が、まるで、凍り付いてしまったよう・・・・。  
 
「――――やべぇ、アニキ、この女、息をしてねぇよッ!!」  
「とっとずらからろうぜッ!!」  
「馬、馬鹿ッ、死体を置いて行く気かッ!?」  
「そうだ、始末しねぇとッ!!」  
「真夜中になるのを待って、そっと運び出すんだ。重しをつけて晴海埠頭かどっかに・・・・」  
 
「・・・・そんな事をして貰っては困るな。  
彼女にはこれから私のためにうんと働いて貰わねばならないのだから」  
 
・・・・誰だろう?この声は・・・・?  
 
「だッ・・・・誰だ、てめぇはッ!?ど、何処から入ってき・・・・うがぁあああッッッ!?」  
 
「・・・・さあ、目を開けなさい。<ヴェカンタの戦士>よ・・・・」  
 
・・・・一体・・・・誰・・・・なの?  
<ヴェカンタ>・・・・?<戦士>・・・・?いったい・・・・何のこと・・・・?  
 
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 
 

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