意識の迷宮。
戦意を失った優子に群がる、醜悪な陵辱者たち。
ヴァリアの加護を喪失した今、少女の心は全くの無防備状態で、
邪悪な魔道の技によって生み落とされた怪物たちの前に投げ出されている。
「ひあッ・・・・あひぃ・・・・はぁふぁあああッ!!」
めくるめく快楽の嵐に翻弄され、あられもない痴態を晒す蒼髪の<戦士>。
逃げる場所も、抵抗する力も、すでに無く、
押し寄せる異形――――暗黒五邪神が一将、風邪アイザードの意識操作によって作られた幻獣たちにより、
身動きを封じられ、四肢を絡め取られ、全身をくまなく舐めしゃぶられて、
為す術もなくよがり悶えながら、忘我の境地へと追い上げられている。
「ひはあぁッ!!いい・・・・気持ちいいッ!!
あああ・・・・だめぇッ・・・・も、もう何も考えられないッ!!」
ビリビリに引き裂かれ、襤褸切れ同然の有り様に成り果てたスカートの下、
恥部を覆い隠す最後の薄布もまた、クロッチ部分を破り取られ、無残な残骸を曝していた。
真っ赤に充血した陰核の周囲で、何本もの舌先が脈打つたびに、
鈍い痛みとそれに数倍する肉の悦楽を掻き立てられる。
「うひぁあ・・・・ど、どうして・・・・なんで・・・・こんなに気持ち良いのッ!!
はぁん・・・・わ、わたしのカラダ・・・・いったい・・・・どうしちゃったのォッ!?」
火照った肌に不規則な痺れが走り、微細な電流が脳天から手足の先まで何度も駆け抜ける。
汗腺がバカになってしまったかのように、毛穴という毛穴から白い汗がとめどなく溢れ出し、
ピチャピチャと淫猥な水音を立てながら塗りたくられる、媚薬成分入りの唾液と交じり合って、
身体中を甘ったるい芳香と濃密なフェロモンとで包み込もうとしていた。
緩急を織り込みながら揉みしだかれる都度、乳房がひと回りずつ大きく脹らんでいくように感じられ、
胸の奥が止め処もなく熱く疼いてしまう。
・・・・ずちゅッ。ぶちゅ・・・・ぷぢゅるッ・・・・じゅりゅりゅッ!!
無論、熱くなっているのは膣内も同様で、
滲み出した蜜液が侵入者をくるみ込み、子宮に向かって恭しくエスコートを申し込もうとしていた。
もう少しで子宮口に届くところまで来ていた魔物の舌先が急に角度を変え、
ザラザラとした肉ブラシの先端が手近な膣壁をグニャリと挟み込むと、
両の眼が、カァッ、と見開かれ、アアッ、という鋭い叫びが空気を震わせる。
大きく開け放たれた口元からは、大量のヨダレと共に、真っ赤な舌が空中へと突き上げられ、
ピクピクとブザマに痙攣しながらダンスを踊っている。
「ひぃはぁあッ!!だ、だめ・・・・そんなに暴れないで・・・・はひぃいいッ!!」
無意識のうちに漏れ出してしまう喘ぎ声も、
音程は狂い、語尾は途切れて、およそまともな言葉にはなっていなかった。
すでに愛液でヌルヌル状態の蜜壷は、陵辱者たちの動きに合わせて、引っ切り無しにひくつき回り、
そのたびにカラダがバラバラに弾け飛ぶような強烈な衝動が湧き上がってくる。
すでに頭の中は芯まで痺れきり、下半身を犯される異物感も不快感も殆ど感じられないばかりか、
殺到する異形たちに犯され続ける屈辱に、異様な悪寒まで覚えてしまう始末だった。
「あうッ!?・・・・お、おしりまで・・・・くはッ・・・・はうあああッ!!」
申し訳程度に尻たぶを覆うスカート
――――正確には、つい先刻までスカートと呼ばれていた布の切れ端――――を撥ね退け、
肛門のすぼまりへとめり込んでいく肉鞭の感触。
思わず、驚きの叫びを上げる優子だったが、その声は、すぐに甘い喘ぎへと変わっていく。
恥ずかしい排泄器官に異物を咥え込む事への抵抗はまだ残っているものの、
未知の快楽に対する期待の方が何倍も大きく、激しい衝動となって心の中を吹き荒れていた。
「んんッ!!ふぐ・・・・ぅううッ・・・・お尻が広がる・・・・拡げられていくぅッ!!」
つい先刻、牝穴を攻略したのと全く同じやり方で、
ヌメヌメとした舌先が、アナルの皺を伸ばしながら奥に押し入ってきた。
最初のうちこそ、痛みや違和感も覚えていた少女だったが、
唾液中の媚薬成分のせいか、すぐにそれは和らぎ、代わって、悪寒のような疼きが下腹に集まってくる。
加えて、狭い潜り戸を通り抜け、括約筋の束縛から解き放たれた責め具の動きは俄然活発になり、
腰椎の間を駆け巡るゾクゾク感もどうしようもなく脹らんでいった。
(・・・・あ、ああ・・・・来る・・・・感じるぅッ!!
だめぇ・・・・も、もう・・・・止まらない・・・・止められないッ・・・・!!)
薄い肉膜一枚を隔てて、子宮を掻き回す舌先と直腸を扱き立てる舌先の感触とが複雑に絡み合い、
おそろしく卑猥な二重奏を奏でながら、少女の下半身を蕩かしていった。
肛門が捲り上げられて内臓と一緒に引きずり出されてしまうような、恐ろしい感覚が襲ってきたかと思うと、
一転して、膣壁がドロドロに溶けてしまうかのような凄絶な快美感の嵐が吹き荒れたり、
情けないひくつきを発する尿道の先から、得体の知れない体液が、ピュピュッ、と迸ったりもする。
「うぁ・・・・あああッ!!ひぃッ・・・・くああッ・・・・た、助け・・・・ひふぅあああッ・・・・!!」
苦痛と快感とが綯い交ぜになった名状し難い衝動が、心身を容赦なく切り裂いていく。
唇、舌、口腔、うなじ、首筋、背中、腋の下、臍、下腹部・・・・。
荒れ狂う情欲の暴風雨は、同時に、体中の性感帯をより鋭敏なものへと変貌させ、
あらゆる場所で、様々な性感が、各自のやり方で自己主張を始めていた。
信じられない量の淫らな波動が、巨大なうねりとなって全身の神経を伝い、
脳細胞へと流れ込むや否や、我先に、早く快楽物質を分泌しろ、とまくし立てる。
処理能力の限界を超える法外な支払い要求に直面してパニックに陥った理性はすぐに破綻し、
意識の奥底から無理矢理に引き摺り出された牝の本能に取って代わられてしまった。
(ふああッ・・・・いいッ・・・・気持ちいいッ!!
ひぃいッ・・・・凄いのが・・・・あああ・・・・壊れるッ・・・・おかしくなるぅ!!)
身体中の筋肉が、ビクビクビクッ、と不規則な震えを発し始める。
指の先まで張り詰め、敏感になった神経を熱いわななきが往復し、
てんでばらばらに暴れ回っていた快感が、次第に一つに収斂していった。
欲望の業火によって無残に焼け爛れた頭蓋骨の内側に真っ白な光が広がっていき、
目元からは敗北の涙滴が、口元からは恍惚の唾液が、だらだらと溢れ出していく。
「かはぁッ・・・・!!あう・・・・あッあッ・・・・んはぁああッッッ!!」
何百匹ものナメクジの大群が群がってくるような悪寒が、<ヴァリスの戦士>を襲う。
汚液でベトベトになった長い蒼髪を振り乱し、甘い啜り泣きを漏らすたび、
しなやかなカラダがギシギシと軋んだ音を立てながら弓なりに仰け反っていった。
胸元では、胸甲から解き放たれた二つの乳房が真っ白い汗に濡れ光りながら前後左右に揺れ動き、
腹部では、あまりに激しく不規則な下半身の動きについていけなくなった黄金細工の飾り帯が外れかかって、
程良くくびれたウェストの下から、白さが際立つビキニ・ラインの柔肌が覗いていた。
「くああッ!!し、死ぬッ・・・・死んじゃうッ・・・・くひゃぁああッッッ!!!!」
ひときわ甲高い歓喜の叫び声を放ち、ついにエクスタシーの頂点へと到達してしまう蒼髪の少女。
ビクビクと悶絶していたカラダが、一瞬、ピタリ、と静止し、
ブーツの中で、爪先まで、ピン、と伸び切っていた足指が、瞬間的に、キュッと丸められる。
侵入してきた肉舌の群れを根こそぎ千切り取らんばかりの勢いで子宮口の締まりが強くなり、
愛蜜袋から噴き出した濃密な牝汁が、ジュブジュブと派手に飛沫ながら、出口を捜し求めて溢れ返った。
「ひぎぃッ!!いやぁッ・・・・オ、オシッコの穴が・・・・ひぃッ・・・・い、いひぁあああッッッ!!!!」
大量の恥汁の向かった先は、怪物たちの舌によって塞き止められた秘裂ではなく、
尿道と平行して走る一本の細長い肉腺だった。
学校の保健の教科書にも正確な名前は載っていないその器官は、
本来、膣道内の老廃物を体外に排出するために存在しているものなのだが、
無論この時は、元々の目的からは逸脱した、全く想定外の量の体液を受け容れ、
自前の放水能力だけでは到底事足りず、隣接する膀胱にも助力を請わねばならない羽目に陥っていた。
ぶしゅうッ・・・・ぷしゃあああああッッッッ!!!!
尿道口が決壊し、少し黄色がかった色合いの、粘り気のある液体が、
空中に見事な放物線を描きながら噴き上がった。
悲鳴とも嬌声ともつかない、凄まじい絶叫が迸ると同時に、
絶頂に達した瞬間のまま、凍り付いたように動きを止めていた肉体が、
壊れかけのゼンマイ人形のように、ギクッ、ギクッ、ギクッ、と、激しい痙攣に見舞われる。
信じられない程巨大な快感が優子の意識をひと呑みにしたかと思うと、
彼女の自我は、あっという間に、噛み砕かれ咀嚼されて、濁流の底へと吸い込まれてしまった・・・・。
暗黒界。アイザードの研究室。
「・・・・そうだ。ゆっくりと運べ。培養槽に入れる際にショックを与えるな・・・・」
部下達の作業を見守りながら矢継ぎ早に指示を出す、プラチナ・ブロンドの魔道士。
主の命令に、背中から昆虫のような翼の生えた少女達
――――青年が魔道の技を駆使して作り上げた、ご自慢の侍女――――は的確に応え、
与えられた仕事をテキパキとこなしている。
試験管の中の細胞のカケラから、現在の血肉を備えた美しい姿にまで練り上げられた魔法生物は、
文字通りの意味で、血の一滴、髪の毛の一すじに至るまで、彼の所有物であるのと同時に、
彼と離れて過ごす人生など想像した事すら無い、究極の奴隷でもあった。
(フム・・・・とりあえず、落ち着いたようだな)
籐椅子に深く腰を下ろし、独りごちるヴェカンティの魔将軍。
目の前では、彼の手になる生ける芸術作品たちが、
意識を失った獲物――――磨き上げられ、加工される前の原石――――を、
毒々しい色の薬液の詰まった巨大なガラス容器に漬け込んでいる。
隣には、同じく薬液で満たされた培養槽が幾つも設えられ、
各種の薬液を注入するためのパイプやバルブ、得体の知れない計器や検知器具の類が所狭しと並んでいた。
(これで、二人の<戦士>は私のもの。
だが、陛下にその事を明かすのはまだ先の話だな・・・・)
今しばらくは、時間が必要だ――――腕組みをしたまま、アイザードは思案を巡らせる。
現在までの所、状況はほぼ計算どおりに推移しているとはいえ、
全体計画を考えれば、やっと全行程の半ばを過ぎようとしている程度に過ぎなかった。
優子を完全に洗脳し、自らの支配を受け容れさせねばならないのは勿論だが、
それと平行して進めておかねばならない作業も幾つか存在する。
(・・・・まずは、あの小うるさい腰巾着を陛下の許から引き離す事から始めようか)
脳裏に浮かんだ男の名は、暗黒五邪神が一将、炎邪ベノン。
陰険な策略を好み、殊に力弱き者を罠に嵌めてジワジワと嬲り抜き、
恐怖と絶望の中で死に至らしめる事に無上の快楽を覚える、という生粋のサディスト。
無論、謀略家という点に関しては、アイザードとて他人をとやかく言える立場ではないのだが、
彼の場合、(策の完成のために必要である場合を除けば)標的に無用な苦痛を与えたりはしないし、
ましてや、策略を弄する行為自体に悦びを見出すような陰湿さは持ち合わせていない。
そのあたりが気に入らないのか、彼の魔道士に対する感情は完全に冷え切っており、
隙さえあれば現在の地位から追い落としを図ろうと、日夜監視の目を光らせていた。
(それから・・・・あの御老体にも、そろそろご退場願わねばならないでしょう)
そして、今一人の邪魔者が、五邪神最後の将にして、
暗黒界の覇権を巡ってログレスと最後まで争った双頭の邪竜、雷邪ヴォルデス。
暗黒王の圧倒的な魔力の前に敗北し、臣下の列に加わる事でかろうじて死を免れたものの、
未だ巨体の奥には野心の残り火が燻り続けているらしく、
ねぐらに引き篭もったまま王都に伺候もせず、夢幻界への出兵命令にも言を左右にして応じようとしない。
ベノンとは異なり、今の所、自分との仲は取り立てて良くも悪くも無かったが、
彼の存在は、彼の計画の中では大きな不確定要素の一つに数え上げられていた。
無論、石橋を叩いて渡る性格の元夢幻界人としては、
事を為すにあたって不安となる材料は、可能な限り、取り除いておくつもりである。
「そのための仕掛けは・・・・麗子、君にやってもらいますよ」
いま一人の<戦士>を捉えた碧色の双眸が、僅かに細められた。
籐椅子の足元に蹲った赤毛の少女は、
巨大なガラスの水槽の中へと沈められていくかつての級友の姿を、
焦点の合わない瞳でぼんやりと見つめながら、
未だ冷めやらぬ肌の火照りがもたらす懊悩を鎮めようと、ひたすら手淫に耽っている。
(フフフ、優子と違って、彼女はもはや完全に私の言うがまま。
・・・・どれ、少し味見してみるとしましょうか?)
好色そうな視線を湛えつつ、無言で顎をしゃくり上げるアイザード。
自慰に没頭していた指先が、はた、と止まり、
・・・・次の瞬間、赤毛の<戦士>は、半ば条件反射的に、パッ、と顔を上げて、
ご主人様の言い付けを心待ちにする愛犬よろしく、期待に満ちた表情で魔道士を仰ぐ。
お前など信用出来るものか、と、頑なに自分を拒絶し、心を許そうとしなかった麗子が、
僅かな期間でここまで従順になるとは、罠を仕掛けた当人にとっても、いささか予想外だった。
(・・・・どうやら、君は、自分で思っている程には、自分の選択に自信を持っている訳ではないようだね。
いいや、きっと君は、心の奥で、今でも捜し求めているんだろう。
・・・・無条件に自分を受け容れてくれる存在、安心して寄りかかる事の出来る誰かを、ねぇ・・・・)
色素の薄い唇に浮かぶ、辛辣な微笑。
今まで、目の前の少女は――――生まれた世界こそ違えど――――暗黒の力に魅せられた末に、
故郷を捨て去る決断を行ったという点で自分と変わらぬ、一種の同志的な存在、と考えていたが、
どうやら、"故郷を捨て去った"という行為は同じでも、動機の方は全く異なっていたらしい。
(・・・・私は少し思い違いをしていたようですねぇ。
君は、何かを求めて、ログレスの召喚に応じたのではなく、
何かから逃げ出したくて、こちらの世界にやってきた・・・・そうでしょう?)
冷やかな眼差しを投げかけつつ、籐椅子から体を起こしたアイザードは、
無造作に着衣をはだけ、むっくりと隆起した股間のイチモツを露わにした。
ほんの一瞬だけ、怯えるような表情を見せた赤毛の<戦士>だが、すぐにその感情は掻き消えて、
白く細長い指を怒張した肉棒へと絡めると、太い血管が浮き出した陰茎に可憐な唇を近付けていく・・・・。
――――ピチャッ・・・・ペチャ・・・・チュプッ・・・・ジュジュプッ・・・・!!!!
法悦に目元を潤ませながら、男根に奉仕する赤毛の少女。
優男然とした外見とは裏腹に、アイザードのペニスは逞しくそそり立ち、
狭い口腔一杯に広がって気道をあらかた塞いでしまっていた。
だが、彼女は、半ば呼吸困難に陥りながらもなお、
ますます情熱的に長大な逸物を舐め回し、扱き立て、吸い尽くそうとする。
(・・・・いいですねぇ、その表情。
奉仕する事に悦びを見出し、欲情を燃え立たせる牝奴隷と呼ぶにふさわしい)
苦しげに呻く麗子の頭を掴んで荒々しく手繰り寄せると、
亀頭の先端が柔かい喉奥の粘膜を越えて食道内にまで達し、
小さな喉仏がせわしなく痙攣を発した。
少しだけ力を緩めてやると、陰茎に押し潰されていた舌先が狂ったように跳ね回り、
楕円形に伸びた唇の端から唾液の糸が幾筋も流れ出す。
「フフッ、安心なさい。
たとえ、ログレス陛下があなたを用済みとみなしても、決して私は見捨てたりしない。
最後まで傍にいてあげる・・・・ククク、最後の最後までねぇ」
整った顔立ちを苦悶に歪めつつも、懸命に奉仕を続ける少女の姿に、
己が打ち立てた支配の完璧さを再認識し、会心の笑みを浮かべる元夢幻界人。
顎が痛くなるほど大きく開かれた麗子の口内では、
怒張した逸物が、歯茎を擦り立て、舌を捻り、咽喉蓋を押し潰して、好き放題に暴れ回っている。
「そろそろ射精しますよ・・・・全部飲み干しなさいッ!!」
くぐもった声を発したアイザードの腰が、びゅくんッ!!と跳ね上がり、
コチコチに固くなった亀頭の先が、上顎の粘膜を擦り立てる。
こそばゆさと気持ち良さが入り混じった感触が、ぞわぞわッ、と肉棒の裏筋をなぞったかと思うと、
震え慄く舌先にくすぐられた逸物の怒張は限界に達し、
代わって、鈴口のくびれの辺りから、ピクピクピクッ、という妖しい脈動が現れ始めた。
――――そして・・・・。
――――びゅくッ!!どぴゅッ・・・・どびゅるッ!!!!
いきり立つ肉棹が爆ぜて、灼熱した飛沫をぶち撒けた。
唇から食道に至るまで、ネバネバとした粘液が所構わずこびり付き、
常人ならば吐き気を催しかねない、生臭い臭気と不快な感触を塗り重ねていく。
・・・・だが、今の麗子にとって、それは最高の御馳走に他ならなかった。
「ンぇあッ!?んぶ・・・・むぐぇぁああッ!!」
絞め殺される直前の鶏のような奇怪な呻き声が上がった直後、
迸った濃密な白濁液が口腔粘膜を白く染め抜き、
噎せ返るような精液臭が気道から肺腑にまで流れ込んでいく。
ピンク色の靄がかかったような意識の中、
食道を垂れ落ちる牡汁の滴りが堪え難いほど熱く感じられた。
「んぉ・・・・ぷ・・・・ぷはぁッ!!」
ようやく引き抜かれた男根が目の前でビクビクと跳ね回り、
肉筒の中に残っていた精子を、麗子の顔面に撒き散らす。
だが、もはや少女の表情には嫌悪感は微塵も現れなかった。
むしろ、『全部飲み干すように』という命令を忠実に果たそうと、
自ら進んで、口元を亀頭へと近付け、体液のシャワーを一滴残らず受け止めようとする。
(はぁはぁ・・・・熱い・・・・あああ・・・・カラダの芯が・・・・燃え尽きそう・・・・)
クチビルの周囲に付着した精液を美味しそうに舐め取った赤毛の少女は、
牝としての本能と汚辱の悦びにトロトロに蕩けきった瞳を、なおも物欲しげに打ち震わせた。
下半身に視点を移せば、クネクネと卑猥なダンスを踊る腰の下、
魔道士のペニスから飛び散った濁液で、白い水玉模様を生じた黒スカートの内側で、
厚みを増した粘膜花弁が淫らにフェロモンを撒き散らし、
じゅくじゅくと滲み出した愛蜜が黒絹のショーツを濡れそぼらせている。
(フフフ・・・・まさに完璧な仕上がり、我ながら鼻が高いというものです。
これならば、しばらくの間、私の許を離れても何ら問題無いでしょう・・・・)
ひとしきり射精の余韻を楽しんだアイザードは、
再び麗子に向き直ると、四つん這いになって、尻を持ち上げるように命令する。
期待に胸を躍らせながら、言い付け通り、屈辱的な姿勢をとる<ヴェカンタの戦士>。
スカートの下から、汗と愛汁の入り混じった濃厚な薫香が漏れ出すと、
ひと仕事終えて息をついていた肉棒が、再びムクムクと勃ち上がっていく。
「まずはベノンからです・・・・しっかりと頼みますよ、麗子」
「ふはぁ・・・・は、はい・・・・かしこまりました・・・・アイザード・・・・さま・・・・」
頭上からかけられる主の声に、
壊れかけたゼンマイ人形の如く、幾度となく首肯を繰り返す奴隷少女。
同時に、高々と突き上げた尻肉を卑猥にくねらせながら、
一刻も早く、心身の疼きを鎮めて欲しい、とあさましく訴えかける。
しばらくの間、その痴態に眺め入りながら、
さて、どのように料理したものか?と考え込んでいた魔道士は、
やがて、奴隷の示す従順な態度に対し、それに最もふさわしいやり方で褒美を取らせよう、と決めたらしい。
左右に大きく跳ね回る尻たぶを押さえ込むと、
溢れ返る愛液によってベトベトになった黒いクロッチを脇にずらし、
交尾する獣のような野蛮なスタイルで、逞しい剛直を充血した秘唇の底へと押し込んでいった・・・・。
暗黒界。王都ヴェカンタニア。宮城。
「久しぶりだな、ベノン」
恭しく片膝をつき、君主に対する忠誠の意志を示す魔人に向かって、
玉座の主は、いつも通りの感情の起伏を感じさせない声音で言葉をかけた。
畏まった表情で頭を垂れた暗黒五邪神の一将、炎邪ベノンは、
そのままの姿勢で、暗黒王の傍らに侍立する側近の顔を、ちらり、と一瞥する。
「アイザードからの吉報は、お前も聞き及んでいよう」
黄金で飾られた仮面の裏でうっすらと笑みを浮かべつつ、
ヴェカンティの支配者は、あくまでも無機質な口調を崩す事無く、語りかけた。
無論、彼は、目の前にいる男が、元夢幻界人の同僚に対して、
ほとんど嫉妬と呼んで良いくらいの競争心を抱いている事を十分すぎるほど知り抜いているし、
同じ暗黒五邪神のガイーダとキーヴァを倒したヴァリアの切り札、<ヴァリスの戦士>を葬り去り、
ファンタズム・ジュエリーの欠片を奪回したライバルをどう意識しているのか、正確に把握している。
「これで、夢幻界への侵攻にもはずみがつきますな。
一部の者の向こう見ずな行いのせいで、一時はどうなるかと案じましたが・・・・」
案の定、ベノンは、表向きは冷静さを保つ努力を続けつつも、
挙動の端々に隠し切れぬ無念さと不機嫌さを滲ませながら受け答えする。
麗子の行動を揶揄してみせたのは、
同僚への不平を口に出来ないもどかしさを無意識のうちに転嫁したものだったが、
アイザードであれば、たとえ同じ立場に立たされたとしても、
本人の目の前で、こんな振る舞いに及ぼうなどとはしないだろう・・・・。
(まったく、若造といい、小娘といい、
何故、陛下は、暗黒界の生まれでもない者共を重用なさるのか・・・・?)
胸の奥で、盛大に苦虫を噛み潰す暗黒五邪神。
元々、彼は、暗黒王登極以前の分裂期において、暗黒界の一地方を領有する諸侯の一人だった。
戦乱の時代、多くの同輩が激動する情勢の見極めを誤って滅亡していく中で、
彼は時々の権力者に巧みに取り入ると共に、落ち目と判断すれば、即座に見限って保身を図ってきた。
ヴォルデスやログレスに取って代わるだけの力を持つ事は一度として無かったものの、
その立ち回りの才能は、彼らも一目置かざるを得ないだけの勢力を築き上げるに充分なものだった。
「フフ・・・・まぁ、そう言うてやるな」
憮然とした表情の少女を横目で眺めながら、やんわりと臣下の話を遮る暗黒王。
はあ、と、気の無い返事をしながら、生粋のヴェカンティ貴族は苛立ちを禁じ得なかった。
暗黒界の生まれでなく、従って、ログレスの覇業に何の貢献もしていない輩が、
暗黒五邪神や<ヴェカンタの戦士>として肩を並べている現状は不公平以外の何物でもない。
そればかりか、自分を差し置いて、<ヴァリスの戦士>の首級を上げた、とあっては、
あのクソ生意気な魔道士に対する王の信任は積み増される一方だろう・・・・。
(このままでは不味いわ・・・・何か策を考えねば・・・・)
壇上を見上げ、素早く計算を巡らせる。
――――とりあえず、小娘の方は後回しでも良いだろう。
夢幻界側の切り札が消えた今、<ヴェカンタの戦士>の存在意義もまた無くなった。
早晩、ログレスも麗子を用済みとみなすに違いない。
やはり、早急に手を打たねばならないのはアイザードの方に違いない・・・・。
「・・・・しかし、この目出度き席に、アイザードもヴォルデスもおりませぬとは、
一体、如何なる事情にありましょうや?」
ハラを決めたベノンは、得意の弁舌を駆使して主の耳に『忠言』を囁きかけた。
ライバルの欠席を強調する事で、彼に対する暗黒王の心証を悪化させ、
あわよくば、その忠誠心に疑念を抱く方向へと誘導していこうという算段である。
狡猾な炎の魔人は、過去、同様の手法で自分にとって不都合な連中を何十人も刑場へと送っていた。
「アイザードは<ヴァリスの戦士>との戦いで重い手傷を負い、身動きがとれぬそうだ。
ヴォルデスは・・・・相変わらず、身体のあそこが悪い、ここが痛む、と、なかなか言う事を聞きよらぬ」
(・・・・重い手傷?そんな情報は耳にしていないけど・・・・一体、何を考えている?)
心の中で首を傾げる暗黒界の大貴族。
相手が夢幻界の切り札と呼ぶべき<戦士>であった以上、事実である可能性も捨てきれないが、
青年の性格を考えれば、鵜呑みにするのは剣呑極まりない。
もう一方のヴォルデスについては、ログレスに敗れ、臣下となった後も、
ああだこうだと理由を付けては出仕を拒み続けており、
今回もまた、『仮病』なのはほぼ間違いないだろうが・・・・。
「無礼な・・・・将帥としての自覚に欠けますな、あの老いぼれは。
これでは下々の者達にもしめしがつきません」
とりあえず、ヴォルデスをあげつらいながら、
真の標的――――憎んで余りある魔道士の名前を出すタイミングを計る炎の魔人。
・・・・しかし、その目論見は、あっさりと頓挫してしまった。
「まぁ、あれの事はいずれ始末をつけねばなるまい。
それよりも、今はまず勝利を祝おうではないか・・・・?」
ベノンの返事を待たず、暗黒界の絶対権力者は侍従たちの列に向かって合図を送った。
控えていた初老の女官がログレスの前へとしずしずと進み出し、
両手に捧げ持ったアイザードからの献上の品――――象牙色の光沢を帯びた首桶を小卓に乗せて、
玉座に向かって恭しく一礼しながら、静かに蓋を開け放つ。
・・・・微かな死臭と共に姿を現したのは、頚骨の付け根付近から切断された少女の頭部だった。
「<ヴァリスの戦士>の哀れな姿だ・・・・」
ログレスの声は相変わらず抑揚に乏しく、
ましてや、その表情は不吉な黄金細工の仮面に遮られて窺い知る術は皆無だった。
もっとも、前後の状況を考えれば、現状を不快に感じている道理はまずないだろう
仕方なく、ベノンは曖昧に相槌を打ちながら、口の中で小さく舌を打ち鳴らした。
(チッ、忌々しいッ!!やはり、評議への欠席程度では陛下の心証を害するまでには至らないか。
何か、もっと・・・・重大な疑惑を招きかねないような材料を見付け出さなければ・・・・!!)
目の前の首級を突き刺す、苛立たしげな視線。
そもそも、この間抜け面をした小娘が、あっさりとアイザードに討ち取られたりしなければ、
自分が気苦労を抱え込む事も無かった訳だし、
場合によっては、奴の不手際を追及して五邪神の座から放逐する事も可能だった筈である。
利己的かつ他罰的な怒りを燃え立たせつつ、
暗黒界の大貴族は、憎悪に満ちた瞳で物言わぬ少女を睨みつける。
「麗子・・・・こやつは、お前が一番良く見知っていよう。
間違いなど、万に一つもあるまいが、近くで確かめてみるがいい」
玉座からの言葉に、ハッ、と短く答え、宿敵の首級へと近付いていく暗黒界の<戦士>。
心無し強張っているようにも見える赤毛の少女の横顔を、辛辣な目付きで眺めていた炎の魔人は、
さすがに音こそ立てなかったものの、冷やかに鼻を鳴らした。
(おやおや、動揺しちゃってるのかい?
フン、<ヴェカンタの戦士>と言っても、所詮は小娘ねェ・・・・。
そんな事だから手柄をアイザードに攫われちゃうのよ)
魔将軍の唇が醜く歪み、嘲りの笑みを形作る。
暗黒王自らによって素質を見出され、現実界より召喚された麗子だが、
優子との戦いに限定してのものとはいえ、五邪神をも上回る権限を与えられたにもかかわらず、
自らの手で首級を持ち帰れなかったとあっては、無能者との謗りは免れないだろう。
現時点では、王の側近という地位を慮って、公然と批判の声を上げる者はいないが、
実力無き者がいつまでも高官の席を温めていられる程、ヴェカンタニアの宮廷は甘い場所ではない。
(・・・・ま、この小娘が何時まで持ち応えられるか、高みの見物といこうかねェ・・・・)
にんまりと冷笑を浮かべるベノン。
――――だが、次の瞬間、麗子のとった行動は、彼の表情を一変させずにはいなかった。
アイザードの居城。すぐ近くに大瀑布を臨む、白亜のテラス。
「・・・・そうか、どうやら上手くいったようだな」
久しぶりに地下の実験室を離れ、胸一杯に清冽な空気を吸い込む長衣の魔道士。
吹き渡る風が、プラチナ・ブロンドの長い髪をサラサラと揺らす。
傍らに立つ侍女の一人がワインのボトルを手に取り、
卓上に置かれたクリスタルの杯に血の色をした酒を注ぎ入れると、
青年は、芳醇な香りを楽しみながらゆっくりとグラスを傾け、満足げに息を吐いた。
「ベノン様は、麗子様を伴い、こちらに向かわれている、との由。しかしながら・・・・」
「あの男の事だ。背後には直属の軍勢を隠しているに違いない。
・・・・フフ、対応はお前達に任せる。せいぜい歓迎してやるといい」
主の言葉に、無言で一礼する有翼の少女。
美しい姿形だけでなく、高い知能をも兼ね備えた特注品の魔法生物は、
簡単な指示を与えておきさえすれば、あとは自分達で状況を判断して上手くやってくれる。
身の回りの世話は勿論、軍団の指揮や研究室での各種実験まで任せ切りにしても大丈夫だし、
何より、元夢幻界人である彼にとって、彼女達以上に信用できる部下は存在しないと言っても過言ではない。
「・・・・で、優子の様子はどうだ?」
「はい、おとなしく眠っております。
培養槽の中で、アイザード様の夢を繰り返し見ながら・・・・。詳しくはこちらに」
忠実な配下から報告書の束を受け取った魔道士は、注意深く文面に目を通した。
施術の効果は概ね良好だが、完全な洗脳には、なおしばらく時間が必要らしい。
フム・・・・、と考え込んだ元夢幻界人の青年は、
しばらくの間、報告の内容とこれから起こり得るであろう問題点とを突き合わせていたが、
やがて、何かを思い付いたらしく、パチン、と指を鳴らし、侍女に何事かを耳打ちした。
「・・・・頼んだぞ。準備が整ったら知らせてくれ・・・・」
「かしこまりました、我がマスター」
深々と頭を下げた魔法生物の顔は、唯一絶対の主の役に立てる事への喜びに光り輝いていた。
彼女達の造物主は満足げに微笑みを浮かべながら、
おもむろに酒盃を傾け、上質の酒精のもたらす程よい酩酊に心身を委ねる。
頬を撫でる冷涼な風が実に心地よく、精神をリラックスさせるには丁度良かった。
(フフ・・・・そう、我がものとするのだ。彼女の身も心も、な・・・・)
ヴェカンティ。アイザードの居城へと続く街道。
額から角の生えた黒馬の引く四輪馬車が、
濛々と土煙を上げながら、舗装の悪い――――と言うより、殆ど未舗装と言って良い街道を疾駆していた。
「ひどい道ね・・・・こんな所をわざわざ馬車で走らなくても」
「うるさいわね。嫌なら一緒に来なくったって構わないわよッ!!」
激しく揺れる馬車に閉口して、不平を漏らす赤毛の<戦士>。
一方、彼女と相対して座る暗黒五邪神もまた、憎々しげな表情を隠さなかった。
王宮内では、ログレスを憚って遠慮して振舞っていたが、
自制の必要のなくなった今、その語尾は、地のものである、気味の悪い女性口調へと戻っている。
「街道を行くのはね、アイツの目を引き付けるためよ。
あたしの背後に付き従っている軍勢の存在を隠蔽する必要があるのッ!!」
珍妙と言う他無い言葉遣いに、
麗子は、一体、この男の頭の中はどうなっているんだろう?と、内心眉を潜めずにはいられなかった。
無論、ベノンにしてみれば、普段通りの喋り方をしているだけだが、
不幸な事に、現実界出身の少女の耳にはふざけているようにしか聞こえなかったのである。
(大体、アイザード様相手に、こんな単純なトリックが通用すると本気で思ってるのかしら?)
麗子の見るところ、アイザードと並ぶ策士、という彼への世評は、過大評価も良い所だった。
たしかに、策謀を好んで用いるという点は似通っているが、
元夢幻界人の魔道士と暗黒界の大貴族の間には、
謀略家としての才能において、プロの詐欺師と二流のセールスマンほどの開きが存在している。
(あの方ならば、間違っても、こんな計略とも言えないような杜撰な策を講じたりはしない。
敵を欺くときには、徹頭徹尾、隙の無い、完璧な罠を用意して臨む筈だわ・・・・)
かく言う赤毛の少女もまた、いつの間にか、アイザードを敬称付きで呼ぶようになっており、
今ではそれを至極当然の事と考えるまでになっていた。
彼女を仕留めたのは、相手の弱みを探り出し、徹底的に責め立て、身も心も屈服させる、彼の最大の武器・・・・
狙った獲物を決して逃さない言葉の弾丸に他ならない。
そして、誰の目にも映らないその魔弾は、麗子という媒介者を介して、
とうの昔にベノンを捕捉しており、彼の体内を心臓を目がけて静かに突き進んでいるのだった。
(所詮、コイツは世渡りが上手いだけの俗物、あの方の敵じゃない。
ああッ、もう、こんな馬鹿馬鹿しい茶番なんてさっさと終わりにしたいものだわッ!!)
――――麗子の回想。
「この首は・・・・ニセモノよ!!」
声を張り上げる<ヴェカンタの戦士>。
目の前には、<影の剣>によって台座ごと両断され、床の上に転がった首級の残骸
・・・・そして、突然の出来事に色を失い、腰を抜かした暗黒五邪神。
無論、王の御前に列する栄誉を与えられた廷臣たちも、
突然の凶行に、ベノンと同じく度を失って、大混乱に陥っており、
落ち着きを保っていたのは、事実上、玉座に座したログレスひとりに過ぎなかった。
「ニセネノだと・・・・?
しかし、2つのファンタズム・ジュエリーは確かに本物だぞ」
騒然とする周囲にも動じる事無く、静かな口調で訊ね返してくる暗黒界の支配者。
内心、ヒヤリ、としたものを覚えつつも、
少女は、己れの持てる演技力の全てを振り絞り、一世一代の大芝居を打った。
「私には分かる・・・・優子は生きてるわッ!!」
言葉を切り、真っ直ぐに黒衣の魔王を見つめ上げる赤毛の少女。
視線を受け止めた仮面の奥で、いくつかの表情が目まぐるしく変化した。
息を殺しながら無言のやり取りを続ける麗子と暗黒の帝王との間に、
ほんの一瞬、冷たい刃を含んだ感情が行き交い・・・・不意に、破られる。
「・・・・ま、まぁ、とにかく、これは只ならぬ事態。
私がアイザードの元に赴いて事の真相を確かめて参りましょう」
対峙する王と<戦士>との間に割り込んで来るベノン。
一歩間違えば、絶対君主の機嫌を致命的に損ねかねない危険な行為だったが、
彼の声は、何故か、妙に弾んでいるように感じられた。
(コイツの言ってる事がデタラメだとしても、これは絶好の機会だわ。
そう、あのクソ生意気な若造に叛乱の嫌疑をかけ抹殺するための、願ってもないチャンス!!
奴さえ追い落とせれば、陛下の第一の側近の座はアタシのものよ・・・・)
無論、炎の魔人は、自分の頭に閃いたそのアイデアが、
アイザードの術策と麗子の演技により、巧みに誘導された結果であるとは知る由も無い。
当の麗子は、まさに狙い通りの展開を見せる状況を前にして、胸の奥で薄くほくそえみながら、
うわべはあくまでも取り繕いつつ、駄目押しの演技をやってのけた。
「私も行くわ・・・・優子が生きているなら、<アンチ・ヴァニティ>の能力が必要なハズよ」
「なッ・・・・控えよッ!!一度ならず失策を犯しておきながら、何という身の程知らずな・・・・!!」
功績を独り占めしたいベノンが必死に吠え掛かるのを無視して、
少女は玉座の上のログレスに向かって深々と頭を垂れる。
・・・・しばらく間を置いて、ヴェカンティの支配者は口を開いた。
「まぁ、良かろう」
王の発した言葉に愕然とする暗黒界の大貴族。
・・・・だが、麗子の言う通り、<ヴァリスの戦士>に対抗するための最も効果的な手段が、
<ヴェカンタの戦士>の持つ<アンチ・ヴァニティ>の能力である、というのは事実である。
その点を持ち出されては、さしもの彼も、これ以上横車を押すのは不可能だった。
「足手まといにならないよう、せいぜいしっかりと働く事ねッ!!」
捨て台詞を残し、憤然とした足取りで、謁見の間を退出していく魔人の姿を眺めながら、
してやったり、という表情の、赤毛の<戦士>。
玉座の主に向かって一礼すると、足早に彼の後を追いかけていく。
(・・・・フン。まぁ、良かろう・・・・今はまだ、な)
広間に残された暗黒界の支配者は、
黄金細工の仮面の裏側で意味ありげな笑みを浮かべながら、
現実界の少女の後ろ姿をじっと凝視していた・・・・。
――――TO BE CONTINUED.