ヴェカンティ。アイザードの居城。  
 
「ひぃ・・・・くぅッ!!んふぁ・・・・ああ・・・・ひゃうッ・・・・ひゃあぅうううッ!!」  
 
なめらかな裸身が、銀色の水滴を跳ね飛ばしながら大きく反り返る。  
サーモンピンクの秘唇を深々と貫いた魔道士の陰茎は、  
がっちりと硬く、優子の手首に匹敵するほどの太さを誇っていた。  
張り出したエラが膣壁を抉り、捏ね回すたびに、  
焼けた鉄串を押し当てられたかのような激痛とそれに倍する快感とが腰椎の周囲を暴れ狂い、  
信じ難いほどの淫らな衝動が、脊髄を伝って上半身へと突き上げてくる。  
 
「ああッ・・・・くはぁ・・・・ひはッ・・・・あはぁあああッッッ!!!!」  
 
生臭い陰茎はトロトロに蕩けた肉孔を押し広げつつ、  
子宮を目指して、一歩、また一歩、と、着実な前進を続けていた。  
みるみるうちに朱く染まった肌からは、  
まるで熱湯の詰まったビンを埋め込まれたかの如く大量の汗が噴き出している。  
もはや、気力も体力も底を尽いてしまった蒼髪の少女は、  
ほとんど垂直に近い角度に跳ね上がったままの頤を小刻みに震わせ、  
大きく開け放った唇をぱくぱくさせる事しか出来なかった。  
 
ずにゅうううう・・・・!!!!  
 
煮え滾った巨根の内部でも最高の温度を誇る膨らみが、  
ビュクビュクと絶え間なく痙攣する秘門を突き破り、押し入ってくると、  
瞬く間に、視界一面に無数の星屑が飛び散り、頭の中は真っ白な光で一杯になった。  
真っ赤に紅潮した顔面が鬼女のように醜く歪み、  
ぎゅぎゅっ、と、固く瞑った瞼の裏側から、大粒の涙が零れ落ちる。  
 
「フフ、残念ながら、処女では無かったようだね。  
だが、この締まり具合は実に素晴らしい・・・・待ち続けていた甲斐があったというものだよ」  
 
碧色の双眸に浮かぶ、酷薄な笑み。  
元夢幻界人の魔将軍は、子宮口を突破した後は抽送のペースを少し落とし、  
未成熟な肉の花弁を堪能するかの如くねっとりとした腰遣いへと移行した。  
力任せに責め立て、一気呵成に頂きへと追い詰めるのではなく、  
あくまでもソフトに、時間を掛けてじっくりと屈服させようというのである。  
同時に、彼は、今まで優子の手指に絡めていた両手を、  
目の前で卑猥なわななきに包まれている胸丘へと伸ばして、  
モチモチとした触感を楽しみつつ、二つの膨らみを巧みに弄び始めていた。  
 
「んんッ・・・・はッ・・・・んくぅ・・・・ふはぁッ・・・・くふぅうッ!!」  
 
優しく、しかし、肉悦のツボは的確に押さえながら、  
アイザードは白桃色に色付いた乳房を揉み込んでいった。  
粘り気を帯びた音が徐々に高まっていくにつれ、  
しなやかな背筋が、グググッ、と仰け反っていく。  
 
刺激が単調に陥らないように、との工夫なのだろう、  
時折、左右の乳首を交互に引っ張り、シコシコと擦り立てると、  
自我が弾け飛びそうになる程の快楽が少女の全身を駆け巡り、脳天へと突き抜けていった。  
敏感な突起をコリコリと揉み潰される感触は、  
すでに痛みを通り越して、鳥肌立つ甘い痺れと化しており、  
優子は、ぶんぶんとかぶりを振りつつ、激しく吐息を震わせる。  
 
・・・・じゅるッ・・・・ずちゅッ・・・・ちゅるッ・・・・ずちゅるん・・・・!!!!  
 
無論、胸丘への責めの間にも、青年の下半身は規則正しくピストン運動を繰り返していた。  
ゆったりとした抽送に合わせて、背筋が、じぃん、じぃん、と、あさましいひくつきに見舞われ、  
深々と肉根を受け容れた秘裂が、甘く狂おしい欲情で満たされていく。  
狭い膣口を目一杯押し広げ、めり込んでくる巨大な亀頭が、  
蕩けきった媚肉を、こそぎ取るように責め苛む硬い雁首が、  
小陰唇から子宮の最奥部に至るまで、充血粘膜を執拗に捏ね回していった。  
 
(あくぅッ!!・・・・だめぇ・・・・き、気持ち良いよぉッ・・・・!!)  
 
切なく疼く花弁をゴリゴリと抉り抜かれるたびに、  
瞼の奥に火花が飛び散り、甘く霞んだ意識がぶつ切りになってしまう。  
熱い涙に霞んだ視界がピンクに染まり、抽象絵画のようにグンニャリと歪んでいくと共に、  
極まった甲高い嬌声が、幾度となく、寝室中に響き渡った。  
魚の嘴の形に先端を尖らせた尿道口からは、  
小規模な絶頂が、半透明な先走り液に姿を変えて、ピュピュッ、と断続的に迸る。  
 
「フフッ、嬉しいよ、優子。私のモノでこんなにも感じてくれるなんて・・・・」  
 
ニヤニヤしながら、アイザードは、一旦、陰茎を引き抜いた。  
じゅぼっ、という卑猥に湿りきった開栓音と共に、  
半透明な液体が、潮噴きさながらに勢い良く零れ出し、シーツの上に広がっていく。  
 
「・・・・ッくぅ・・・・はぁはぁ・・・・あううぅ・・・・」  
 
エクスタシーの頂きへと昇り詰める寸前で"お預け"を喰らわされた蒼髪の少女は、  
一転、今にも泣き出しそうな表情で、黒光りする逸物を見つめつつ、苦しげな喘鳴を漏らした。  
あさましい懇願の言葉を発しなかったのは、  
意志の力で抑え込んでいたからでは決してなく、  
脳内を席巻する膨大な快感によって言語中枢が麻痺しかけていただけに過ぎない。  
むしろ、頭の中からは、理性も羞恥心も、完全に姿を消しているか、  
あるいは、押し寄せる肉悦に呑み込まれて意味を為さなくなっているか、のどちらかだった。  
 
次はどの体位にすべきか、しばらくの間、思案を重ねていた魔道士は、  
やがて、ひとつ頷くと、侍女の助けを借りて、目の前の裸身を斜めに四十五度回転させた。  
加えて、白い汗の粒に覆われたしなやかな太腿を抱え込んで、  
丁度一対の松葉が組み合わさったような姿勢で互いの股間を交差させ、  
ビュクビュクといきり立つ淫槍を、淫らに充血しきった牝穴へと突き入れる。  
 
・・・・ジュブッ・・・・ジュプブッ・・・・!!  
 
再開される、いやらしい音色。  
もっとも、新たに選択した体位は、先刻までのものに比べると、挿入の深さの点でやや見劣りしていた。  
膣内に侵入し、肉襞を掻き回すには充分だったが、  
子宮の奥まで到達するのは困難で、一見、充分な満足を与えるのは困難に思える。  
 
だが、青年は、よりリズミカルなテンポで出し入れを繰り返す事により、不利は補えると踏んでいた。  
性交時の結合感は、(特に女性の側には)成否を占う上で極めて重要な意味を持つが、  
それは、何も、挿入部位の深さだけで測れるものではない。  
侵入の角度や間隔によっては、十分にカヴァー出来るという事実を、  
夢幻界と暗黒界の二つの世界で浮名を流してきた技巧派は熟知していた。  
 
「くはぁッ・・・・んふぁ・・・・ひはぁんッ!!」  
 
はたして、新たに採用した戦術が効果を発揮し始めるまでに、さほどの時間は要さなかった。  
これまでの比較的スローなペースでのピストン運動に慣れていた優子は、  
最初のうちこそ、突然の変化に戸惑いを隠せなかったものの、  
時間の経過と共にその虜となっていき、小刻みな痙攣を発しつつ、あられもないよがり声を迸らせる。  
 
「フフッ、可愛い声で啼くじゃないか・・・・ご褒美に、もっと気持ちよくしてあげるとしよう」  
 
同時に、彼は、性器同士だけでなく、股間と内股の殆ども密着させる形となるため、  
肌同士の触れ合う部分の面積が格段に増大する、新体位の特性を活かそうと腐心していた。  
ぷっくりと隆起した恥丘とそれを薄く覆う縮れ毛の繁み、  
そして、しなやかさと適度な豊かさの両方を内包する、形の良い太腿・・・・。  
それらは、一つ一つでは、決して大きな肉悦を生む訳ではないものの、  
効果的な間隔を置き、巧妙に刺激を加えたならば、  
単なる挿入だけでは決して得られない、微細で複雑な味わいを醸し出せるのだった。  
 
「くひゃあぁッ!!・・・・ハァッ、ハァッ・・・・んむぅ・・・・ひゃふぅううッ!!」  
 
案の定、蒼髪の少女は、次々と襲いかかってくる、各々異なる波調の性感の前に為す術もなく、  
情け無い悲鳴を発しつつ、寝台の上をのた打ち回った。  
掻き回される膣穴では、いくつもの快楽が混じり合い、溶け合わさって、  
今まで一度たりとも経験した事の無い、絶妙なハーモニーへと昇華している。  
 
(うあああッ・・・・な、何・・・・何なのッ・・・・これはッ!?  
ひぃぃッ・・・・だ、だめぇッ・・・・こ、怖い・・・・自分が・・・・自分でなくなっちゃうッ!!)  
 
局部から下半身全体へと広がっていく未知の感覚に恐慌に駆られ、  
全身をガクガクと揺すぶりながら、弱々しく泣きじゃくる囚われの少女。  
・・・・だが、怯え慄く心とは裏腹に、彼女のカラダは、早くも新たなる喜悦に順応を始めていた。  
目ざとく、その変化を察知した魔道士は、にんまりと笑みを浮かべると、  
愛液にまみれた指先を、大陰唇の端で、ぷっくりと隆起している、ピンク色の真珠玉へと伸ばし、  
もう片方の手で、会陰部の向こう側、可愛らしく丸みを帯びた尻肉をまさぐりにかかる。  
 
「あひぃッ!!そ、そこは・・・・だめぇッ!!」  
 
菊門のすぼまりをそっと撫でられた瞬間、  
甘い汗に濡れ光る背中が、雷に打たれでもしたかのように大きくびくついた。  
しかし、暗黒界の青年は、委細構わず、否、むしろ、初々しい反応に口元を綻ばせながら、  
細かな皺を延ばすかの如く、ねっとりとした愛撫を繰り出してくる。  
恥ずかしさのあまり、声を上擦らせた優子は、ココだけはやめて、と叫んだものの、  
涙ながらの懇願は、陵辱者の獣欲をますます掻き立てただけだった。  
 
「あぁッ・・・・い、嫌ぁッ!!お願い・・・・やめて・・・・ふひゃああッ!!」  
 
恥辱の極みにある筈なのに、チロリ、チロリ、と、微細な刺激を送り込まれるたび、  
全身の体毛が妖しく逆立って、心地よく鳥肌が立ってしまう。  
潤んだ薄青色の瞳の奥から更なる大粒の涙が湧き起こり、  
今にも爆発しそうなくらいの勢いで、心臓が激しい収縮を繰り返した。  
何千匹もの蟻の大群が這い登ってくるようなゾクゾク感が身体中を駆け巡り、背徳の官能を呼び覚ます。  
 
「ククク・・・・おやおや、どうしたんだい?  
嫌だ、と言ってる割には、アソコの締め付けが一段ときつくなったじゃないか?」  
 
羞恥に震える少女に容赦ない嘲笑を浴びせる、プラチナ・ブロンドのテクニシャン。  
フィニッシュを決めるべく、傍らの侍女たちに合図を送った彼は、  
微細な痙攣に包まれた美しい獲物を抱き上げさせると、  
屹立する男根を愛液に濡れまみれた秘貝にあてがい、ゆっくりと迎え入れていった。  
 
「はぁひゃあッ!!くがッ・・・・あああ・・・・ふがはぁあああッッッ!!!!」  
 
逞しく発達した硬い亀頭を、一気に子宮の天井部分にまで受け容れる形となった少女は、  
陰部を抉り抜かれる痛みとそれに数倍する喜悦の大波に、引き攣った絶叫を轟かせた。  
視界一杯に極彩色の火花がバチバチと飛び散り、うなじの辺りが、じぃん、と切なく痺れている。  
膣内を埋め尽くした巨大な肉の塊がゴウゴウと燃え盛り、  
下半身全体が、おぞましい、しかし、耐え難いほどに甘く、狂おしい感覚に満たされていった。  
 
「フフフ、そろそろ限界のようだね・・・・。  
いいかい、イク時には、ちゃんと『イク』って言うんだ。  
・・・・ちゃんと言えたら、ご褒美にたっぷりと射精してあげるから」  
 
引力の法則に従って、優子の全体重が股間の中心に聳え立つイチモツに押し寄せてくるものの、  
鍛え抜かれた業物はビクともしなかった。  
加えて、アイザードは、抽送のリズムをより直線的なものに切り替え、  
同時に、十秒から十数秒程度の間隔を置いて突き上げてきたストロークを、  
ひと突きあたり、一、二秒前後の高速運動へとギア・チェンジするという離れ業までやってのける。  
過激さを増す一方の責めに、哀れな女囚は、矢も盾も堪らず、あられもない嬌声を漏らしながら、  
腰まで伸びた豊かな蒼髪を振り乱して、狂ったように悶え続けるだけだった・・・・。  
 
「んひぃぃぃッ!!い、いやぁッ・・・・たすけてッ・・・・あああ・・・・もう、だめぇッッッ!!!!」  
 
鋭く研ぎ澄まされた肉槍が子宮の奥壁に突き刺さるたび、  
恥ずかしいリズムに合わせて愛蜜が飛び散り、周囲に漂う甘酸っぱい香りをさらに濃厚にしていく。  
細い顎先を突き出し、生白い咽喉元を惜しげもなく曝しつつ、間断なく喘鳴を漏らす優子には、  
もはや、羞恥心などという悠長な感情を覚える余裕など、微塵も無かった。  
絶頂の極みへと向かう急勾配を凄まじいスピードで駆け上りながら、  
冷酷な陵辱者の思うがまま、気をやり続ける以外、何一つ出来ない状況に追い込まれている。  
 
「んあッ・・・・あッあッ・・・・んぐぅッ!?」  
 
淫らなよがり声を発していた口元にアイザードの唇が覆い被さり、  
ビクビクと卑猥なダンスに打ち興じていた舌が絡め取られた。  
一瞬、いや、半瞬だけ、驚愕と嫌悪の表情が浮かんだものの、  
真っ白な歯並びの隙間から、生温かい唾液が流れ込んでくると、すぐに掻き消えて、  
肉悦への欲求と今更抵抗しても無意味だ、という諦めに取って代わられる。  
直後、彼女自身の舌先も、淫らな欲望に突き動かされるまま、  
憎むべき侵略者である筈の肉ナメクジに同調し、活発に蠢き始めるのだった。  
 
・・・・チュッ・・・・ピチャッ・・・・チュル・・・・ピチュルルッ!!  
 
卑猥な水音を奏でつつ、交尾する獣たちのように絡み合う、四枚のクチビル。  
みるみるうちに口腔内を満たした、ほんのり甘い液体を、  
蒼髪の少女はゴクゴクと美味しそうに喉を鳴らし、嚥下し続ける。  
完全に惚けきった目元は、酩酊したかのようにトロリとした光を湛え、  
両腕は勿論、両脚までもが、逞しい胴に、がっし、と絡み付いて、  
背中に回された両手の爪が、汗の流れる白いキャンバスの上に、幾筋もの赤い線を刻んでいた。  
 
「んんッ・・・・むぐぅ・・・・んぶッ・・・・うッうッうッ・・・・!!」  
 
呼吸が一段と速くなり、全身のわななきが激しさを増していくにつれ、  
優子の顔面が真っ赤に紅潮して、苦悶に歪んでいった。  
それでも、少女は、窒息の危険など完全に度外視して、  
自分からは決して口元を離そうとはせず、逆に、ますます舌の動きを加速させていく。  
もはや、羞恥心も屈辱感も完全に片隅に追いやられた頭の中では、  
性への欲求だけが際限なく脹らんで、一切の歯止めが利かなくなってしまった。  
 
・・・・・・・・そして、次の瞬間。  
 
――――びゅくんッ・・・・!!!!  
 
ひときわ強烈な痙攣が子宮の一番奥で生み出されたかと思うと、  
瞬く間に、膣襞を席巻し、陰唇粘膜を蹂躙する。  
その衝撃は、喩え様も無く巨大で淫靡なエロスの波動へと増幅され、  
一撃で腰椎を粉々に粉砕したばかりか、電光石火の勢いで脊柱を駆け上がり、  
脳天にまで達して、頭蓋骨の内側で凄まじい大爆発を引き起こした。  
 
「・・・・ひぐッ!!ぎぁひぃッ・・・・!!」  
 
快楽の業火が優子を灼熱地獄の真ッ只中へと突き落とす。  
カメラのストロボの何万倍もの閃光が視界を埋め尽くし、  
全身の感覚が濃硫酸の池に放り込まれたようにドロドロと溶け崩れていった。  
もはや、単なる快感と呼ぶには峻烈過ぎる、エクスタシーの嵐が、  
意識をグチャグチャに掻き回し、五感をズタズタに切り刻んでいく・・・・。  
 
「い、いぐッ・・・・いぐぅうううッッッ!!!!」  
 
凄絶な絶叫が寝室の空気をビリビリと震撼させ、  
大理石の石壁に反響して、何か得体の知れない生き物の鳴き声の如く、周囲に響き渡った。  
鬼気迫るような光景に我を失った魔法生物達が、  
主の御前にも関わらず、口々に甲高い悲鳴を放ち、ベッドから飛び降りる。  
ただ一人、碧眼の美青年だけが、強靭な意志の力によって踏み止まり、  
肉筒に充満している欲望を吐き出さんと、暴れ狂う少女を抱き締めていた。  
 
――――――――異変が起きたのは、その直後である。  
 
ドォオオオンッッッ!!!!!!  
 
突如、優子の嬌声にも負けない轟音が響き渡り、  
寝室の入り口を守る重厚な大扉が、跡形も無く、爆砕された。  
バラバラになった構造材が爆風に煽られて辺り一面に降り注ぎ、  
直撃を受けた運の悪い侍女が、派手な血飛沫を噴き上げつつ床の上を転げ回る。  
 
(・・・・チッ、よりによって、こんなタイミングで・・・・)  
 
何が起きたのか、瞬時に理解した暗黒五邪神は、苦々しげに口元を歪めると、  
僅かに未練がましそうな視線で、白目を剥いてイキ果てた蒼髪の少女を眺めやりながらも、  
きつく喰いしばった膣口から、愛液にまみれた陰茎を引き抜いた。  
欲情の高まりを反映してか、亀頭は極限まで膨張し、  
表面から浮き出したミミズのような血管が、ビュクン、ビュクン、と活発に蠢いている。  
いきり立つ射精欲求を、――――かなり無理をしながら――――押さえ込んだ彼は、  
濛々と立ち込める爆煙と砂埃の向こう側に佇む人影に向かって、幾度となく、舌打ちを繰り返した。  
 
「・・・・呼び鈴も鳴らさなくて、失礼。遊びに来てやったわよ、カマイタチ野郎」  
 
冷やかな笑みを浮かべつつ、砂塵の中から姿を現す、漆黒の<戦士>。  
ベッドの上の男女へと向けられた鋭い視線は、ドライアイスのように凍え付き、  
手にした<影の剣>は、いつでも必殺の斬撃を放てるよう、  
ぬばたまの輝きを湛えた刀身に、おびただしい量の暗黒の瘴気をまとわりつかせている。   
 
(フン、とても演技には見えないな・・・・もしかして、本気で怒っているのか?)  
 
汗に濡れた素肌に水色のローブを羽織りながら、アイザードは小さく肩を竦めてみせた。  
文字通り、試験管の中に浮かぶ一片の受精卵から捏ね上げた侍女達とは異なり、  
麗子は――――優子と同じく――――自我には何ら改変を加えてはいない以上、  
どれだけ徹底的に調教しようと、その心を完璧にコントロールするのは不可能である。  
無論、幾重にも施した暗示の全てが解けてしまった訳ではないようだが、  
いくら策略の一環とはいえ、自分が不在の間に別の女を引き入れ乳繰り合う、という行為は、  
自意識の高い赤毛の少女にとってはショックであり、  
同時に、嫉妬の炎に身を焼かずにはいられない出来事だったのかもしれない・・・・。  
 
「こんなヘタレ男に手玉に取られるとは、相変わらずのグズね、優子」  
 
「あう・・・・ううッ・・・・」  
 
憎しみを湛えた眼差しが、不実な愛人からその体の下に横たわる元クラスメイトへと移動する。  
未だ悦楽の園を彷徨っている彼女は、まともな返事はおろか、身体を起こす事さえままならなかったが、  
かろうじて、麗子が近くにいるという事実だけは分かるのか、  
擦れかかった声で何かを必死に訴えようとしていた。  
・・・・もっとも、口元から零れ落ちたのは、  
ほとんど言葉にならないほど弱りきった呻きに過ぎなかったのだが。  
 
「まったく、無粋な娘だな・・・・折角、良い所だったのに」  
 
抗議の半分は演技だったが、もう半分は本心だった。  
散々手間隙を掛けて<ヴァリスの戦士>の心をを陥落させたのみならず、  
ベッドの上でも徹底的に焦らし抜いて、目の前の肉棒のためならどんな恥辱でも受け容れる、  
いや、むしろ、責めが屈辱的であればあるほど、一層性感を燃え立たせてしまう所まで追い込んで、  
最後の最後、自分自身の欲求を満足させようとした、まさにその瞬間、  
待った、を掛けられてしまったのだから、当然だろう。  
実際、何とか暴発だけは食い止めたものの、股間の逸物はローブ越しでも明らかなほど勃起したままで、  
鬱積したストレスがいつ制御不能になってもおかしくない状態が続いていた。  
 
(・・・・まったく、女の嫉妬ってヤツは手に負えないな・・・・)  
 
盛大に苦虫を噛み潰しながら、プラチナ・ブロンドの青年はため息を漏らした。  
――――手に負えない、と言えば、いま一人、今回の策を成功に導くため、現実界に送った女も、  
初めて話を聞かせた時はカンカンになって怒り出し、機嫌を直すのに一苦労したものだが、  
存外、赤毛の少女も、あの隻眼の女剣士とよく似た精神構造の持ち主なのかもしれない・・・・。  
 
「ヴォオオオオッッッ!!!!」  
 
魔法生物の唸り声が、束の間の思索を中断させる。  
(計画の全貌を知らされていない)彼女たちは、  
現在進行中の事態が、二人の共同演技であるなどとは露程にも考えず、  
主の身に危機が迫っていると即断して、優美な侍女の仮面を捨て去り、戦闘態勢へと移行していた。  
つい先刻まで、たおやかな微笑を湛えていた顔は、醜く歪んだ鬼女のそれと化し、  
優子の性感を巧みに煽り立てていた指先と口元には、鉤ぎ爪と牙が、各々、凶悪な輝きを放っている。  
 
(使い潰すには少しばかり勿体無い気もするが・・・・まぁ、やむを得ないだろうな)  
 
寝台の前に壁を作った忠実な家臣たちの姿に、  
ほんの一瞬だけ、憐憫の感情を催した魔道士だったが、後退を命じる気にまではなれなかった。  
それが原因で、今も何処かに隠れ、様子を窺っている筈のベノンに不信感を与えでもすれば、  
苦労して作り上げた仕掛けが水泡に帰すかもしれず、本末転倒の謗りは免れないだろうし、  
何より、最高の出来栄えとはいえ、所詮は作り物に過ぎない者達の替えなどいくらでも利くのだから。  
 
「・・・・まぁ、いいわ。とりあえず、生きてて嬉しかったわよッ!!」  
 
無論、麗子の側には、魔法生物などまともに相手にする気などさらさらない。  
アイザードから受けた指示は、『優子を傷付ける事無く、戦うフリをしろ』という一点だけで、  
部下についてまでは一切触れられていなかった。  
もっとも、何らかの指示があったとしても、  
そんな言い付けに素直に従うほど、彼女は律儀な女ではないのだが。  
 
「ぬぁあああッッッ!!!!」  
 
本来ならば、ベッドの上の男女に向けられなければならない筈の怒りが、  
矛先を変え、恐ろしげな表情で威嚇を試みる有翼の美少女達へと降り注いだ。  
<ヴェカンタの戦士>が愛剣である<影の剣>を水平に薙ぎ払うと、  
刀身に集まっていた邪悪な瘴気が強烈な衝撃波と化して哀れな犠牲者達を薙ぎ倒し、  
まるでバターの塊を切り分けるかのように、美しく整った身体をスライスしていく・・・・。  
 
「ハッ、こんな雑魚が相手じゃ、面白くも何とも無いわね」  
 
そう嘯きつつも、赤毛の少女は、  
優子との戦い以来となる、久方ぶりの実戦に興奮を隠せないらしく、  
漆黒の魔剣を縦横無尽に振り回し、侍女の群れを血まみれの肉塊へと変えていく。  
中には、魔道士から調教を受けた際にその場に居合わせ、めくるめく快楽を共有した者もいたのだが、  
今の彼女にとっては、単なる八つ当たり対象以外の何物でもなかった。  
 
「この、裏切り者ッ!!」  
 
瞬く間に全ての護衛を斬殺すると、  
暗黒の<戦士>は、<剣>を逆手に持ち直し、切っ先を優男の心臓に向けて、猛然とダッシュした。  
鬼気迫る形相は憤怒に燃え立ち、傍から見れば、とても演技とは思えないだろう。  
 
(『裏切り者』か。・・・・一体、誰にとっての裏切りなんだろうな?)  
 
こみ上げてくる乾いた笑いを堪えつつ、独りごちるアイザード。  
宿敵であり、かつての親友だった少女と肌を重ねたのみならず、  
子種まで与えようとした行為が『背信』にあたるとすれば、  
たしかに、自分は、(麗子個人にとっての)『裏切り者』という訳であり、  
彼女の反応は極めて正当なもの、と言わなくてはならないだろう・・・・。  
 
「――――いやはや、女というのは何処までも厄介なものだな」  
 
我知らず、声に出して呟いた青年は、  
ぐったりと脱力し、ベッドに横たわっていた優子を抱き寄せると同時に、  
素早く呼吸を整え、精神を集中して、前方に逆巻く気流の障壁を発生させる。  
卓越した魔道の技の使い手である彼にとっては、  
この程度の魔術など、呪文の詠唱無しでも楽に発動させる事が可能だった。  
 
「ぐぅッ!!」  
 
不可視の壁に突進を遮られた赤毛の少女が、苛立たしげな呻きを発する。  
さらに、横殴りに吹き寄せてきた突風にわき腹をしたたかに打ち据えられ、華奢な身体が宙に舞った。  
手加減していなければ、内臓が破裂していてもおかしくないだけの強烈な打撃に、  
一瞬、その表情は引き攣り、ザワァッ、と蒼褪めたようにも見受けられたのだが・・・・。  
 
「・・・・甘く、見るなァッ!!」  
 
次の瞬間、<ヴェカンタの戦士>は、空中で体を半回転させて巧みに大気の流れを逸らすと、  
素早く着地して、簡単には吹き飛ばされないよう、姿勢を低く保ちながら重心を安定させた。  
どうやら、疾風の洗礼を受けて、持ち前の闘争心に火が付いたらしく、  
嫉妬に任せた直線的な怒りが姿を消したラベンダー色の瞳は、  
冷静に状況を分析し、最善と思える行動を選択するハンターの目つきへと変貌している。  
 
――――次元の狭間。  
 
(・・・・ちぃッ、思ったより長引くわね。  
仕方ない、アタシが出て行って始末をつけるとしましょうか・・・・)  
 
苛立たしげに呟きを漏らしたのは、両者の戦いを静観していた、もう一人の暗黒五邪神。  
毒々しいルージュを塗り重ねたクチビルを尖らせつつ、転移の呪文を唱えると、  
全身を薄気味悪い紫色の瘴気が包み込み、周囲の空間が歪んでいく。  
 
(どうせなら、色男か小娘か、どちらかがくたばってからの方が良かったんだけどねぇ・・・・)  
 
傲岸不遜な面立ちに浮かんでいるのは、ねっとりとした含み笑い。  
二人の敵――――正確に言えば、敵と邪魔者――――を争わせ、生き残った一人を始末する・・・・、  
その展開を狙って、今まで戦いに加わらず、体力を温存していた暗黒界の大貴族は、  
しかし、予想に反して、容易に決着の付きそうない戦闘にイライラを募らせた挙句、  
ついに、当初の予定を放棄し、自らの手で決着を付けよう、と決断するに至っていた。  
 
(・・・・まずは、あの小娘に味方して、クソ生意気な若造を消し炭に変えてやろうかしら。  
それから、隙を見て、お嬢ちゃんも・・・・ククッ、ログレス様には適当に報告しておけばいいわ)  
 
「オホホホッ!さ〜すが、アイザード♪  
お嬢ちゃん一人じゃあ、てんで歯が立たないわねぇッ!!」  
 
戦いの場に、壊れかけのスピーカーががなり立てるような、音程の狂った哄笑が響き渡る。  
空間の一部が引き裂かれ、別の空間と強引に繋ぎ合わされる気配を察した魔道士は、  
ただちに攻撃を中断し、声のした方角に大気の防壁を展開した。  
直後、二人の間に割って入る形で、何も無い筈の空間から青黒い瘴気が噴き出してくる。  
 
(フン、ようやくお出ましか)  
 
束の間、風の魔力と炎の魔力が激しく鬩ぎ合い、  
目には見えない強大なエネルギーの奔流が、大渦巻となって部屋中を覆い尽くす。  
空間に穿たれた断層を押し広げ、こちら側に侵入しようとする者と、阻もうとする者、  
二人の術者の力量はほぼ互角と見受けられた・・・・ただし、最初のうちだけは。  
 
瘴気の色が、蒼から紫へ、さらに、紅蓮の炎色へと変化していくにつれ、  
青年の額に汗が滲み、碧色の双眸が険しさを増していく。  
もう一人の敵の存在を念頭に置いて、麗子との戦いではなるべく力をセーブするつもりだったのだが、  
ジェラシーに身を焦がした赤毛の少女のおかげで、計算は大幅に狂い、  
今までに費消した魔力は、あらかじめ、予想していた量を遥かに上回っていた。  
やむなく、ベノンを押し戻すのを諦めたアイザードは、  
改めて、自分と優子とを囲む形に防御障壁を組み直し、新たな敵と対峙する。  
 
「ククッ、久しぶりねぇ、色男さん。元気にしてた?」  
 
渦を巻く火焔の中に、狡猾な笑みを浮かべた男の姿が浮かび上がった。  
ライオンの鬣を思わせる、オレンジ色の毛髪を業火になびかせた容貌は、  
一見すると大層な美丈夫の如く感じられるものの、  
よくよく目を凝らしてみれば、頬はこけ、鼻は曲がり、目元には醜い皺が幾重にも刻まれている。  
 
身に着けている物はと言えば、面相以上に奇ッ怪な代物だった。  
頭には燃え盛る炎の色をした卵大の紅玉を嵌め込んだ黒金の額冠を頂き、  
手足には、およそ機能的には見えないデザインの防具、  
加えて、胴体には、華美なだけが取り柄の、意味不明な装飾で飾られた甲冑・・・・。  
それらは、暗黒界の人間の美的感覚に照らしてさえ悪趣味と言えるまでに、異端的だった。  
 
何よりも、不気味でグロテスクだったのは、  
塗りたくられた白粉と唇を彩る原色の口紅である。  
まるで、歌舞伎役者の隈取りのようだが、  
彼のものは芝居用にわざと誇張されたメーキャップではなかった。  
・・・・もっとも、本気でそれを化粧と信じているのは、世界中で本人ただ一人であり、  
彼以外の者は、たとえ、化粧などという行為には一生縁の無い、最下級の魔物であったとしても、  
間違っても、美しい、などと感じたりしないだろうが。  
 
「裏切りの現場、しかと拝見したわよ。  
キヒヒッ、これで、堂々とアンタを殺せるって訳ね・・・・」  
 
だが、その男――――暗黒五邪神が一将にして暗黒界随一の大貴族たる、炎邪ベノンは、  
己の容貌に向けられた白い眼差しに一切気付く事無く、  
悪趣味極まりないルージュに縁取られた口元から、気味の悪い女性言葉を紡ぎ出した。  
 
(馬鹿につける薬は無い、と言うが・・・・)  
 
元夢幻界人の魔道士は、心底から呆れ返り、反駁する気にもなれなかった。  
どのみち、目の前のオカマ魔人相手にまともな議論など成り立つ筈も無く、疲れるだけに決まっている。  
チラリ、と麗子を眺めると、この点に関しては全く同感らしく、  
気取られないよう、動作としてはごくさりげないものではあったが、深いため息が返ってくる。  
ラベンダー色の瞳からは、不愉快な茶番劇に付き合うのはうんざりだ、という不満がありありと見て取れた。  
 
(――――そうだな、そろそろ潮時かもしれないな)  
 
少し考え込みながら、傍らにいるもう一人の<戦士>に視線を向けるアイザードだったが、  
優子は、未だ曖昧な表情で自分を見つめ返すばかりで、動こうとする気配はまるでない。  
・・・・やはり、もう少しかかりそうだな、と、口の中でこぼした青年は、  
彼女に意志が戻るまでのための時間を稼ぐべく、  
残った魔力を総動員し、矢継ぎ早に幾つもの防御呪文を唱え始めた。  
 
「あのまやかしを誰が見破ったんだ?ベノン、貴様か?」  
 
白々しい台詞と目配せは、もう少し待て、という合図。  
しょうがないわね、と胸の奥で呟いた麗子は、  
愛剣を大上段に振りかざし、だん、と床を蹴って、前方に跳躍する。  
 
「それは、私よッ!!」  
 
展開された防御障壁に正面から白刃を叩きつけながら、叫び返す。  
耳を劈くような大音響と共に、漆黒の剣から放たれた斬撃が大気の城壁とぶつかり、  
オレンジ色に輝く火花が、空中高く、舞い散った。  
・・・・もっとも、ほどほどに手加減した攻撃には見た目ほどの威力は無く、  
張り巡らされた魔道の障壁の前に、空しく弾かれるだけだったのだが。  
 
「・・・・フン、威勢が良いのは口だけのようね」  
 
小馬鹿にしたような口調で言い放ったオカマ魔人が、両腕を、すッ、と突き出した。  
真っ直ぐに伸ばされた指先に強大な魔力が集中し、神聖ならざる気配が辺り一面に充満していく。  
ベノンが得意としている炎の魔術『火炎柱』の発動動作だと見破った魔道士は、  
これは不味い、と判断したのか、それとも、むしろ、チャンスかもしれない、と感じたのか、  
――――あるいは、その両方だったのかもしれないが、  
未だ自発的な行動を起こそうとする気配の無い少女に向かって、鋭く声を張り上げた。  
 
「逃げるんだ、優子ッ!!」  
 
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 

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