永劫の闇の中。  
淀んだ空気に神聖ならざる気配が満ちている。  
 
「・・・・ここは、一体・・・・」  
 
倒れ伏していた人影が身を起こす。  
漆黒の暗闇の中で、黄色いリボンで括った炎のような色合いの長い髪が揺れ動いた。  
 
(クッ・・・・身体が、重いッ)  
 
強い意志を秘めた双眸、程好く引き締まった頬筋、きりり、と結ばれた口元・・・・  
だが、<雷の戦士>の美しい顔立ちは、大気に含まれた名状し難い悪意を感じて歪んでいた。  
剣技のみならず魔術の心得もあるが故に、  
周囲を覆っている濃密な闇のヴェールの中に不浄な魔力が宿っている事を看破していたのである。  
 
少女の名は、ライディ。  
エルス大陸と呼称される世界に生まれた冒険者である。  
物心つく前に生き別れた両親の足跡を探して、  
すでに十年以上、大陸各地を放浪し続けている彼女は、  
生来、雷を自在に操る事の出来る能力を有している事から、  
同業者の間で、<雷の戦士>と呼ばれ畏怖を集める存在だった。  
 
一方、その内面は、(数々の危難を潜り抜けてきたにしては)未だ純朴さを失っていなかった。  
むしろ、咎無くして虐げられる者や力弱きゆえに困窮する者を目にしたら放っておく事の出来ない正義感と、  
一度こうすると決めたら脇目も振らず突き進んでいく直情的な行動パターンの持ち主であり、  
そのせいでこれまで随分と損な役回りを演じる羽目に陥っている。  
もっとも、それこそが彼女の魅力の源泉であり、  
戦いの日々を生き抜く事の出来た秘訣だったのも紛れも無い事実であるが。  
 
(僅かだけど、空気の流れを感じる。・・・・もしかして、ここは地下?)  
 
視界は未だ暗闇に覆われたままだったが、  
冒険者として幾多の試練を乗り越えてきた直感は早くも息を吹き返していた。  
腰に手をやり、愛用の長剣が無事であるのを確認すると、  
鞘走りの音が漏れないよう、慎重に引き抜いていく。  
 
(・・・・何か、いるわね。モンスター?それとも、ただの動物?)  
 
――――トクン、トクン、トクン。  
 
気配の感じられた方角に向かって、油断無く武器を構える<雷の戦士>。  
しなやかな肢体を包む浅黄色のボディ・スーツの奥で、心臓の鼓動が徐々に高まっていった。  
幾多の経験を積んだ彼女は、自分が筋力と体力で押すタイプではないという事を熟知しており、  
カラダのバネを活かした俊敏な動きを確保するため、防具の類は必要最低限なものしか身に着けていない。  
もっとも、普段の戦いであれば、それで十分事足りるとはいえ、  
こうして視力をほとんど失っている状態では、いささか心許無く感じるのも無理はなかった。  
 
じゅる・・・・。  
 
闇の中で、何かが音を立てる。  
鱗の無い二匹のヘビが絡み合うような粘ついた音・・・・。  
ハッ、として、視線を足元に向けた少女は、  
ほぼ同時に、幾多の戦いの記憶の中から現状に最も近い状況をピックアップしていた。  
 
(地下の暗闇。地面を這いずるような音。多分、一匹ではなく、複数いる・・・・)  
 
少し目が慣れてきたのだろう、ぼんやりとではあるが周囲の様子が掴めるようになった。  
依然として近付いてくるものの姿は見分けられなかったが、  
すでにライディは、その正体についておおよその目星をつけ、  
愛剣の切っ先をダンジョンの石床に向けて、いつでも突き下ろせるように身構えている。  
雷の魔法が使えるならば、刃先を帯電させて斬撃の威力を倍増させたいところだったが、  
魔力の発動は周囲の空間に充満する不浄な瘴気によって押さえ込まれ、不可能だった。  
 
(アイツが・・・・いや、アイツらが相手なら、魔法抜きで戦うのは、どう考えても不利なんだけど・・・・)  
 
――――今の状況では仕方ないか、と、胸の奥で苦々しく呟く。  
地理を把握していたならば、逃げる、というのも一つの手だったが、  
ロクに周囲も見渡せない状態で闇雲に逃げ回ったとしても助かる可能性は低いだろう。  
<戦士>としてのカンは、ここはこの場に留まって戦うのが最善の選択だ、と告げていた。  
 
(・・・・来るッ!?)  
 
何かが地面を蹴って空中へと躍り上がるのを感じて、ライディは迷わず長剣を振り下ろした。  
次の瞬間、肉の寸断される確かな手応えと共に、  
腐りかけの卵のような生臭い体液の匂いが鼻腔に飛び込んでくる。  
その独特の臭気は、彼女に、今、自分が相手をしているモノの正体を確信させた。  
 
(こんな暗闇の中で、アイツらの攻撃を凌ぎ切るのは至難の業ね・・・・でも、逃げるのはもっと不味い。  
こうなったら、とことんまで戦うしかないわッ・・・・!!)  
 
悪夢の中。見渡す限り続く、不毛の大地。  
 
「・・・・うッ、ぐぐッ・・・・!!」  
 
傷付いた右腕を庇いながら、必死に体勢を立て直す小柄な少女。  
エメラルド・グリーンの長い髪は汗にグッショリと濡れ、白く透き通った頬筋は熱く紅潮して、  
本来の、凛々しく、それでいて可憐さの滲む顔立ちからはかけ離れた、険しい表情を形作っている。  
ディープ・ブルーの瞳から発する厳しい視線の先には、  
陽炎のようにゆらめく、どす黒い瘴気の塊・・・・悪夢から生じる恐怖と狂気を糧とする異形の者・夢魔の姿。  
 
(ハァハァ・・・・一体、どうなってるの!?  
倒しても倒しても、すぐに再生するなんて・・・・!?)  
 
幽鬼、いや、黒衣を身に纏った死神のような外見をした目の前の夢魔は、  
一見、より強力な夢魔の手駒として用いられる、一定の形を持たない低級の想念体のように見受けられたが、  
繰り出してくる攻撃の鋭さは、これまで戦った上級夢魔と比べても決して引けを取らない。  
その上、どういう理由によるものか、全く不明ながら、  
これまで数多の夢魔たちを浄化し消滅させてきた、聖なる光剣を用いて、  
幾度と無く、その肉体を両断したというのに、その力は全く衰える気配を見せていなかった。  
通常、どんな強力な夢魔、あるいは、死霊や妖魔の類であっても、夢の中にいる限り、  
<夢守の戦士>または<ドリーム・ガーディアン>の名で呼び習わされる彼女の攻撃を受ければ、  
ただちに消滅とまではいかずとも、相応のダメージを負って弱っていくものなのだが・・・・。  
 
「可能性は二つ・・・・コイツ自身がほとんど無尽蔵と言って良い位の負のエネルギーを蓄えているのか?  
それとも、この悪夢を見ているあの女の人の精神に、それだけの力が宿っているのか・・・・?」  
 
苦戦する中、必死に思考を働かせる少女だったが、  
ジリジリと忍び寄る焦燥と消耗の黒い影は、  
時間の経過と共に重圧感を増しつつ、精神に圧し掛かってくる。  
 
綾小路麗夢。  
日本各地に伝説の残る先住祭祀民族、<夢守の民>の末裔として、  
睡眠中の人間の意識――――夢の世界へと分け入る事の出来る能力を駆使し、  
人語を解する犬猫アルファとベータ、そして、幾人かの仲間たちと共に、  
夢魔と称される邪悪な思念体から人々を守り続けてきた現代のシャーマン。  
 
太古の昔より続く血脈の中に連綿と受け継がれてきた<戦士>の記憶を武器に、  
対峙した夢魔を、(時に苦戦する事はあっても)悉く因果地平の彼方へと葬り去ってきた彼女だったが、  
今回ばかりは、いつもとは全く勝手が違っていた。  
真夜中に、青山にある自宅兼探偵事務所の前の路地に倒れていた女性を発見し、  
幾つかの症状から夢魔に精神を侵食されていると判断、その夢の中に分け入ったまでは良かったものの、  
この、死神のような外見の不死身の夢魔に襲い掛かられて、防戦一方に追い込まれているのである。  
 
――――ヒュン!!  
 
不気味な風鳴りと共に振り下ろされる死神の大鎌。  
間一髪、地面に体を沈めてかわした麗夢は、  
そのまま夢魔の懐へと飛び込み、光剣の切っ先で無防備な胴体を貫き通した。  
確かな手ごたえと共に、傷口から真ッ黒な血が噴出し、  
次いで、全身が暗紫色の不浄な炎に包まれて松明のように燃え上がる。  
・・・・だが。  
 
「・・・・クッ、まただわッ!?」  
 
次の瞬間、<夢守りの戦士>の目の前で、燃え盛っていた炎は急速に消え萎み、  
中から、漆黒の衣を纏った死神が、何事も無かったかのように大鎌を振り上げつつ、姿を現した。  
聖なる刃に切り裂かれた際の傷口は完全に塞がり、  
あの一瞬、間違いなく、消滅を確信した筈の邪悪な精神エネルギーも何処からか補充されて、  
夢魔としての実体は、以前と寸分違わず、再構成されている。  
 
(こんな事初めて・・・・コイツ、本当に夢魔なの!?)  
 
光剣を正眼に構え、黒いフードの奥にぽっかり空いた二つの眼窩を睨みつける。  
収まりの悪い前髪から滴り落ちた汗がひどく目にしみるが、拭い取る余裕は無かった。  
戦いを始めてからすでにかなりの時間が経ち、  
現実世界で寝床についている肉体の睡眠状態も不安定になっているらしい。  
 
華奢な体を覆う<戦士>の甲冑、その守りの力が真価を発揮するためには、  
<レム睡眠>と呼ばれる安定した深い眠りの状態が続く事が必要だった。  
それが乱れ始めた今、鎧・・・・黄金細工で装飾された胸甲と肩当て、深紅のアーマーショーツ、  
手首の部分を守るブレスレット状の肘当てに脛当てのついたロングブーツ・・・・は、  
いずれも未だ外見上の変化こそ見られないものの、防御力を確実に減じつつある。  
 
それに何より、夢の中で延々と戦い続けてきた自分自身が、すでに限界に近付きつつあった。  
蓄積した疲労のせいだろう、構えた切っ先は徐々に下がり始め、  
ブーツの中のしなやかな足首は、先刻来、ガクガクと情け無い震えに覆われている。  
手の中の光剣自体、心なしか、刀身部分の長さが目減りしつつあるようだし、  
振り回した時の重量感、切れ味の鋭さ、共に、悪化の一途を辿っていた。  
 
(悔しいけど、ここは一旦退くしかないわ)  
 
苦渋を滲ませつつ、撤退を決断する<ドリームハンター>。  
一度、現実世界に戻り、再生を繰り返す夢魔の正体とその力の源を解明して、再度アタックし直すしかない。  
その間、この恐るべき魔物の跳梁を食い止める術は無く、  
宿主の女性に何も起きない事を祈るしかないのだが、今はそうするより他に手立てが無かった。  
 
「アルファ、ベータ、・・・・お願い!!」  
 
虚空に向かって叫び声を上げる少女。  
やや間を置いて、何処か遠くの方で。目覚まし時計のベルの音がけたたましく鳴り響き、  
五体の感覚が、すううっ、と、希薄になっていく。  
主の思念を受け取ったアルファとベータが緊急時の脱出用にセットしていたアラームを作動させて、  
現実世界に在る彼女の肉体を睡眠状態から解き放ったのだ。  
 
――――と、その時だった。  
 
『・・・・逃がしはせぬ。もはや汝は我のものだ・・・・』  
 
戦いが始まって以来、一言も発していなかった死神が、初めての言葉を発した。  
薄らいでいた五感でも明瞭に捉える事の出来たその声は、  
まるで地獄の底から響き渡る亡者の呻きのような禍々しい波動に満ち溢れている。  
今まさに戦場から離脱しようとしていた少女は愕然となり、  
あたかも心臓を呪いのナイフに刺し貫かれたかのように顔面を蒼褪めさせた――――。  
 
「ウッ・・・・アアアッッ!!!!」  
 
鋭い悲鳴を上げながら、ベッドの上に跳ね起きる麗夢。  
心臓が、今にも破裂しそうなくらい、せわしなく鼓動を刻み、呼吸が全然追いつかなかった。  
喉はカラカラに渇き切り、口の中も妙にざらついた不快な感覚に覆われている。  
上半身は、ダークグリーンのアンダーウェアは勿論、その上に重ね着した赤色のレオタードまで、  
毛穴という毛穴から一斉に噴き出した冷たい汗にぐっしょりと濡れそぼっていた。  
 
「み、水・・・・って・・・・な、何ッ・・・・ここはッ!?」  
 
無我夢中で、寝台の脇に置いてあった筈の水差しに手を伸ばす。  
・・・・だが、指先に触れたのは、冷水を湛えたガラス製の容器ではなく、ゴツゴツとした石壁の感触だった。  
慌てて周囲を見回した彼女の表情は、次の瞬間、驚愕に凍りつく。  
 
「そ、そんな・・・・バカな・・・・まさか、ここはまだ夢の中だというの!?  
で、でも・・・・あの時、たしかに、アラームは作動した筈・・・・だとしたら、これは・・・・この場所はッ!!」  
 
夢の世界の戦場からからくも離脱し、帰還した筈のベッドは、  
青山某所の中古アパート2階に設けられた、探偵事務所兼自宅の一室・・・・ではなく、  
何処とも知れぬ場所の、黴臭い不潔な地下牢の鉄格子の中に収まっていた。  
訳が分からなくなり、恐慌をきたした麗夢の脳裏に、  
先刻、あの死神の姿をした夢魔が発した不吉な予言が蘇ってくる。  
 
「まさか・・・・ここは・・・・現実世界ッ!?  
そんな・・・・一体、いつの間にッ!!アルファとベータは・・・・!?  
・・・・も、もしかして、アイツが言ってた、『逃がしはしない』という言葉は・・・・!!」  
 
何処と知れぬ陰気な牢獄の中、  
とらわれの少女の悲痛な叫び声に答えてくれる者はまだ誰も現れなかった――――。  
 
 
夢幻界。ヴァニティ城。一室。  
 
「――――という訳なのよ。また優子の力が必要になったの・・・・」  
 
ひと通り事情を説明し終え、申し訳なさそうに頭を下げる親友に、  
蒼髪の少女は、そんなにしなくていいわよ、と肩に手を置きながら微笑みかける。  
はぁっ、と、小さなため息を漏らした麗子は、  
(ほんの少しだけ)やるせなさそうに微笑みながら顔を上げ、それから、後ろを振り返った。  
 
「・・・・ごめん、ヴァルナ様を寝かしつけてくるから、ここで待ってて頂戴」  
 
視線の先では、休息さえ満足に取ろうとせず、数度にわたる召喚の儀式を繰り返したせいで、  
立っている事さえ叶わない程、疲労困憊しきった夢幻界の女王が、  
大理石の玉座にもたれかかったまま、虚ろな瞳で二人のやり取りを眺めていた。  
十数人の<戦士>たちの最後に優子を召喚した時点で、すでに幻想王女の集中力は限界に達していたのだが、  
それでもなお、彼女の矜持と責任感は、  
<ヴァリスの戦士>を寝台の上で迎え入れる、という非礼を拒み続けていたのである。  
 
「まったくもう・・・・ヴァルナさまも頑固なんだから」  
 
頼みを快諾する<戦士>を見て、張り詰めていた緊張の糸が途切れたのだろう、  
いつの間にか、玉座の上で華奢な体を折り、睡魔の誘惑に身を委ねているヴァルナ。  
ブツブツとこぼしつつも、同時に、赤毛の少女は温かい微笑を眼差しに湛え、  
スースーと静かな寝息を立てる主君の体を優しく抱き上げて、私室へと運んでいく。  
その姿に、優子は、(ほんの束の間ではあったが)銀髪の王女を羨ましく感じた。  
 
(わたしにも、あんな風にしてほしい・・・・なんてね)  
 
麗子の手でベッドに寝かしつけられているヴァルナの姿を想像し、少し複雑な表情を浮かべる優子。  
王女への感情と自分へのそれとでは、同じ好意でも中身が全く異なっていると理解はしていても、  
自他共に最愛の友と認め、時としてカラダを重ねる事さえ許し合う仲にまで至った今では、  
パートナーが自分の前で見せる一挙一投足に対して、関心を掻き立てられずにはいられない。  
その点は赤毛の親友も似たり寄ったりなのだが、  
こちらは、蒼髪の少女に比べると、(幾分)己の感情を韜晦する術に長けていて、  
純真な恋人を、(多くの場合、からかい半分に、とはいえ)翻弄し弄ぶ事も少なくなかった。  
 
「――――それにしても、誰が、何のためにこんな事を・・・・」  
 
小さくかぶりを振った現実界の少女は、  
ジェラシーと呼ぶには他愛無さ過ぎる感情の揺れを胸の奥へと追いやると、  
形の良い顎に指先をやりながら、麗子から説明を受けた現在の状況を、自分なりに整理し直してみる。  
 
ライディと綾小路麗夢という二人の<戦士>、  
・・・・<明>の力を司る夢幻界の女王の庇護を(そうとは知る事無く)享受する代わりに、  
各々の世界での<明>と<暗>との闘争において一定の役割を託されている存在・・・・が忽然と姿を消した。  
死んだ訳でもなければ、別の世界への転移を強要された訳でもなく、  
あたかも、最初からその世界には誕生していなかったかのように、存在の痕跡ごと消失させられたのだ。  
そんな事があるとすれば、暗黒の諸力を司る何者かによる召喚以外には考えられないのだが・・・・。  
 
「・・・・でも、ログレスもメガスもいなくなったヴェカンティの、  
一体、誰が、これだけの事を実行してのけたというの・・・・?」  
 
優子にとっても、やはり、一番の疑問点はそこだった。  
<戦士>の召喚は大変な難事であり、術者に多大な負担が圧し掛かるばかりか、  
下手をすると、それだけで夢幻界と暗黒界の均衡に影響を及ぼしかねない程のエネルギーを必要とする。  
現に、(先程目にした通り)夢幻界の女王であるヴァルナですら、  
召喚の儀式を数回行っただけで、ロクに口も聞けないほどの消耗状態に陥っていた。  
ましてや、本来、暗黒界側ではなく、夢幻界側に属する者を強引に召喚などすれば、  
その悪影響は、まさに計り知れない、といっても過言ではなかった。  
 
(・・・・でも、現実に夢幻界側の二人が、立て続けに暗黒界に召喚されている。  
一体、今度の敵の狙いは何なの?そんな無理を冒してまで、何を狙っているというの?)  
 
ヴァニティ城。回廊。  
 
「あたし、キャロン。ラル王国から来たの。あなた達は?」  
「朝霧陽子・・・・アシャンティって世界で、悪い奴らと戦っている<レダの戦士>よ」  
「わたくしは白鳥の騎士シルキス。ララマザー芸術王国の王女です」  
 
平行世界の各地から召喚された<戦士>たち。  
最初のうち、その多くは、突然、時空を越えて別の世界に転移させられた事から来る戸惑いに支配され、  
あるいは、敵――――その多くは<暗>の勢力の尖兵なのだが――――が巡らせた罠では無いか?  
と、警戒感を募らせる者も少なくなかった。  
だが、ヴァルナに仕える侍女達から事情説明を受けると、一応は疑念も解けたらしく  
――――と言っても、夢幻界、暗黒界、現実界からなる三界の在り様や、  
<明>と<暗>との相克といった諸命題については、未だ理解の及ばない者も多かったが――――、  
現在は、城内のあちらこちらで、三々五々輪を作っては歓談に花を咲かせている状況である。  
 
「へえ・・・・シルキスも王女なの?実は、あたしもなの・・・・全然、そんな風には見えないと思うけど」  
「そ、そんな事ありませんよ。何というか、隠し切れない気品のようなものが・・・・ねぇ、陽子さん?」  
「へ?わ、わたしに聞かれても・・・・大体、王女様なんてテレビでしか見た事無いし」  
「ふーん、そうなんだ。・・・・ところで、その"テレビ"っていうのはどんなモノなの?」  
 
殆どの者にとっては、自分が生まれた世界以外に足を踏み入れるのは初めての体験だったし、  
<レダの戦士>のような例外にしても、自分以外の<戦士>に出会って言葉を交わした経験は皆無である。  
また、陽子や第108代魔物ハンター・真野妖子のように、  
<地球>という名の世界から召喚された者も多かったのだが、  
彼女たちの間でも、話がかみ合うのは、せいぜい世界史の歴史年表に載っているような事象までだった。  
話題の内容が、たとえば、身の回りの品物の名称や製造企業、テレビCMで商品を宣伝しているタレント、  
といったレベルにまで踏み込むと、途端に会話は成立しなくなり、  
やがて、自分達は似てはいるが全く別の世界に暮らす人間なのだ、という事実の再認識に至るのである。  
 
「はあ・・・・メッシュ、心配してるだろうなぁ。  
早くカナンに戻らないと仙導師さまやリアンにも迷惑かけるかもしれないし・・・・」  
「あずさちゃん、一人で大丈夫かなぁ。  
おばあちゃんやマドカに引っ張り回されてなければいいんだけど・・・・」  
 
元の世界に残してきた恋人や仲間に想いを馳せ、その身を案じているのは、  
カナンの<銀の勇者>レムネアと第108代魔物ハンター・真野妖子。  
自分たちがいた世界と夢幻界とでは時間の流れが異なるため、  
ここでどれだけの時間を過ごそうが、元の世界ではほんの一瞬に過ぎない、との説明を受けて、  
一応の安堵は覚えているものの、やはり、親しい者達が傍にいないというのはどうも落ち着かないらしい。  
 
特に、各々の世界における戦いを強制的に中断させられて、  
ヴァニティ城に召喚された者たちにはその傾向が強かった。  
家族や友人、とりわけ、共に戦ってきた仲間達を残して一人だけ安全な場所にいる、という歯がゆさは、  
いくら、自分が彼らと行動を共にしている方が危険なのだ、と頭で理解していようとも、  
<戦士>としての矜持とは基本的に相容れず、忸怩たる想いを誘発せずにはいられない。  
また、危険が存在するのは分かっていても、誰がそれをもたらしているのか?という点が判明しないため、  
今の所、積極的な対抗策を全く打ち出す事が出来ない、という現状も、苛立ちの種だった。  
 
「今は待つしかないわ、レムネアさん」  
「そうね。それは分かってるんだけど・・・・」  
 
心配そうに声を掛けてくれたチャイナドレスの魔物ハンターには悪いと思いながらも、  
深紅の甲冑に身を包んだ銀髪の少女は、小さくため息を漏らさずにはいられなかった。  
たとえ無事だと分かっていても、恋人と離れ離れになり、連絡も取れない状況に陥ってしまった事は、  
とても辛く感じられるだけでなく、行き場の無い腹立たしささえ湧き上がってくる。  
 
(ああ、メッシュ・・・・早く、あなたの所に戻りたい)  
 
元気の無いレムネアの様子から、その心の内を察したのだろう、  
妖子もそれ以上口を差し挟もうとはしなかった。  
自分自身、待つのは苦手だったし、早く元の世界に戻りたい、という気持ちは同じである。  
・・・・というより、むしろ、今では敵の正体が判明し次第出撃して、  
<破邪の剣>をお見舞いしてやらねば気が済まない、とさえ思っていた。  
 
(ただ待ってるだけ、っていうのも、結構苦痛よね。  
どんな強い魔物か知らないけど、早い所正体を拝ませてほしいわ)  
 
無論、そのように考えているのは妖子一人に留まらず、  
城内に集められた者の大多数は同意見と言っても過言ではない。  
生れ落ちた世界や各々の立場は異なれども、彼女たちは、皆、<戦士>であり、  
各自にとって大切なもの、守るべきもののために戦い続ける事を、  
(たとえ、最初は逃れ得ぬ宿命により半強制的に選び取らされたとしても)自分自身に誓った人間である。  
強大な敵と不当に苦しめられる人々の存在を知りつつ、手を差し伸べずにいる事は出来ない相談だった。  
 
・・・・もっとも、何事にも例外というものは存在するのだが・・・・。  
 
「一体全体、何がどうなっているんですのッ!!  
せっかくアルテナから帰ってきたって言うのに、また別の世界に召喚されるなんて!?  
・・・・しかも、よりによって、この前と同じ、こんな恥ずかしい格好で・・・・!!」  
 
ダンダンと足を踏み鳴らしながら、黒髪の美少女――――紺野藍子は、金切り声を張り上げた。  
怒りに赤く染まったその顔は、元々プロモデルとしても十分やっていけるのでは?という程の美形だったが、  
今は、憤激のあまり、鬼気迫るような形相と化している。  
あまりの剣幕にヴァルナから事情説明を命じられた侍女達が怯え竦み、  
一緒に召喚されてきた二人の<戦士>に助けを求めるような視線を向けている。  
 
「ま、まぁまぁ、紺野さん、そう興奮なさらずに落ち着いてください。  
そんなに攻め立てられては、この方々が可哀相ですわ」  
「そーだよ、フッカイチョー。この人たち、別に悪い人には見えないし。  
勝手に呼び出した事だって、きちんと謝ってるんだから・・・・」  
 
助け舟を出したのは、年齢の割りには発達の著しいプロポーションを、  
碧色の、背中と胸元を大胆に露出させたワンピース水着のような形状の鎧に包んだ眼鏡少女。  
そして、彼女ほどではないものの、バスケット・ボールで鍛えた健康的な体躯に、  
深紅のビキニ水着を思わせる胸当てとベルト付きのアーマー・ショーツを纏った短髪のスポーツ少女。  
 
「・・・・なッ!!竹川さんも朱鷺田さんも、どうしてそんなに落ち着いていられますのッ!?  
アルテナで私達がどんな目に遭ったのか、忘れたとでも言うんですのッ!?」  
 
怒りの矛先を仲間へと向け、興奮した口調で機関銃のようにまくし立てる、  
通称"フッカイチョー"こと白風館高校生徒会副会長・紺野藍子。  
三人の中では最もスレンダーなその身体を覆っているのは、  
朱鷺田と呼ばれた、ショートヘアの少女が身に纏うものと良く似た形状の濃紺の鎧だったが、  
他の二人のものと比べて、体を覆っている部分が一番少なく、露出面積が最も多い。  
 
特に、股間部分を覆うプロテクターは、下手をすれば中の恥毛がはみ出してしまいかねない程の幅しかなく、  
バックの切れ込みも、大胆、というよりも、きわどい、と表現する方がふさわしいデザインで、  
白くもっちりとした尻たぶの殆どが丸見えの状態になっていた。  
身動きするたびに尻を撫でる空気の感触に羞恥心を禁じ得ないのか、  
怒鳴り声を張り上げている最中でさえ、両脚はぴったりと閉じ合わさったままで、  
時々、居心地悪そうにもじもじと揺れ動いているのが妙に印象的である。  
 
「そ、そりゃまぁ、アタシだって、あんな目に遭うのは御免だけど・・・・」  
「・・・・でも、困っていらっしゃる方をこのまま見過ごしには出来ませんわ」  
 
藍子の友人達――――ショートヘアのバスケ部員・朱鷺田茜と、眼鏡の文芸部員・竹川みどり――――は、  
マイペースを崩す事無く、嵐が過ぎ去るタイミングを見計らっていた。  
成績優秀、スポーツ万能、某企業のオーナー社長の令嬢で、自他共に認めるお嬢様系美少女・・・・  
これで人柄が平均以上なら、伝統あるミッション系女子校である白風館の校史に残る才媛と言えるのだが、  
残念ながら、神は彼女をそこまで溺愛していたという訳では無かったらしい。  
"フッカイチョー"の性格は極度に沸点が低く、何事につけキレやすいときており、  
おかげで、教師の評価も生徒の人気も今一つ、生徒会の面々も内心では敬遠気味という噂さえ立っていた。  
幸い、いつまでもネチネチと根に持つようなタイプではないため、  
暴風雨が吹き荒れる間だけ耐え忍べば、その後はどうにかなるというパターンが多いのだが・・・・。  
 
(・・・・今回は、ちょっとやそっとでは収まりそうにありませんわね・・・・)  
(まぁ、結果的に勝てたとはいえ、アルテナじゃあ徹底的にやられちゃったしなぁ。  
フッカイチョーの気持ちも分からなくはないケド・・・・)  
 
いつ果てるとも知れない罵詈雑言の集中砲火をやり過ごしつつ、  
少し疲れたような視線を交し合う<風渡りの戦士>茜とみどり。  
 
・・・・ほんの数週間前、藍子を含めた三人は、ジゼルと名乗る魔道士によってアルテナという世界に召喚され、  
<地球>(無論、優子や妖子の故郷とは別の次元に存在する<地球>である)に戻るためには、  
<邪まなる黒>という存在を見つけ出し、滅ぼさねばならない、と告げられたのだった。  
不承不承ながらも、戦いに赴いた三人を待ち受けていたのは、  
<邪まなる黒>の狡猾な罠、そして、筆舌に尽くし難い陵辱と恥辱の洗礼。  
快楽に屈し、欲望のままに肉悦を貪る牝獣に堕した三人は、ジゼルの力で魔手を逃れる事が出来たものの、  
その記憶は、元の世界に生還した今も、夜毎淫夢となって現れ、心身を悩ませ続けているのだ・・・・。  
 
――――と、そこへ、もう一組の<戦士>が現れた。  
 
「・・・・これはまた、騒がしいのが来たものね」  
 
半ば呆れ返りつつ、不機嫌そうに舌打ちを漏らした女王の側近は、  
運の悪い同胞に向かって、ここはもういいから、と退出を促した。  
隅の方に縮こまって震えていた侍女達が、  
礼もそこそこに壊れかけの人間スピーカーの前から逃げ出すのを横目で眺め、今度はため息をつく。  
 
・・・・だが、次の瞬間、(自分でも驚いた事に)その表情は一変した。  
 
「な、なんですの、アナタはッ!  
ハッ!?その悪趣味な黒い鎧・・・・さては、闇に染まった悪の戦士ッ!?  
一体、わたくしをこんな所に呼び寄せて何を企んでいるのですのッ!!」  
 
「なッ・・・・あ、悪趣味、ですって・・・・!!」  
 
ヒステリーの矛先を向けられた少女の眉が、ピクン、と跳ね上がり、  
こめかみの血管がピクピクと危険な痙攣を発する。  
やや遅れてその場に到着した優子がただならぬ気配に驚き、  
咄嗟に制止の声を上げたようとしたものの、一瞬、否、半瞬だけ、遅かった。  
目の前で騒音を撒き散らす公害娘を睨みつけながら、無言のまま、大股で近付いていく麗子  
・・・・はからずも、その様子は、先程"フッカイチョー"が口にした言葉の通り、  
闇に染まった悪の戦士、という形容がぴったり当てはまるものだった。  
 
 
――――数分後。  
 
「ええと・・・・どう言えば良いのか・・・・と、とにかく、ごめんなさい。  
麗子も・・・・悪気があった訳じゃないと思うの・・・・たぶん・・・・」  
 
ぶすッとした表情のまま、一言も口をきこうとしない友に代わって、  
困惑しきった顔で何度も頭を下げる蒼髪の少女。  
目の前では、取っ組み合いの喧嘩の末、ボロボロになった藍子が大理石の床石の上にのびていた。  
一方の麗子も、バンダナを毟り取られ、髪の毛は乱れ放題で、全身引っ掻き傷だらけの惨状を呈している。  
 
「い、いや・・・・その・・・・アタシ達の方こそ・・・・ゴメン・・・・」  
「・・・・紺野さん、いつもあんな調子ですから・・・・。  
わたしたちも、いつの間にか、慣れて感覚が鈍っていたようですわ・・・・」  
 
対する茜とみどりも、冷や汗をタラタラと流している点は同じである。  
彼女達もまた、目の前の少女と同じく、パートナーを制止するのに失敗していた。  
幸い、二人とも、武器を繰り出すほど見境を失くしていた訳ではなかったため、  
生命に関わるような事態にこそ発展しなかったものの、  
騒ぎを聞き付けた<戦士>たちの好奇の視線に曝されて、三人は、穴があれば入りたい気分だった。  
 
(・・・・まったくもぅ、意地っ張りな所は相変わらずなんだから・・・・)  
 
藍子の平手打ちを喰らって真っ赤に腫れた頬を、ぷぅっと膨らませた親友を横目で見やりつつ、  
<ヴァリスの戦士>は、周囲に聞こえないよう、ごく控えめにため息をついた。  
先代の幻想王女であったヴァリアによって、  
夢幻界人としての新たな生を与えられてからもう随分経つが、  
未だ彼女の立ち居振る舞いの端々には、現実界の学校で机を並べていた頃の面影が垣間見える事がある。  
無論、新女王ヴァルナの公私にわたる補佐役として、常日頃は厳しく自分を律し続けているのだが、  
ふとした弾みでその箍に緩みが生じると、一介の女子高生だった頃の"桐島麗子"が顔を覗かせるのだ。  
 
(そういえば、この人・・・・紺野さんって言ったかしら・・・・?  
・・・・なんとなくだけど、昔と雰囲気が似ていた気がするわ)  
 
鳩尾に当て身を喰らって目を回している黒髪の少女へと移動する優子の視線。  
先程は、機関銃のような勢いで不平を喚き散らすヒステリックな態度のせいで気付かなかったが、  
"フッカイチョー"こと紺野藍子の言葉遣いは、いわゆるお嬢様口調で、  
乱暴極まりない物言いにもかかわらず、何処か育ちの良さのようなものを感じさせた。  
そう言えば、かつて、クラスメイトとして机を並べていた頃の麗子も、  
――――ここまでストレートに好悪の感情を口にする事はなかったが――――  
怒りや不満を漏らすときには、無意識のうちにそんな口調になっていた記憶がある・・・・。  
 
(・・・・もしかして、麗子がこんなにムキになったのって、それが原因なのかな?)  
 
――――ありうる話かもしれない、と胸の中で独りごちる。  
ここ最近――――特に、ヴァリアが崩じ、ヴァルナが夢幻界の女王となって以降――――、  
赤毛の親友は、殊更にヴァニティの人間らしく振る舞う事に心を砕くようになっていた。  
本人は全く自覚していないのだろうが、その事が原因でストレスを溜め込んでいたとしても不思議ではない。  
 
「何よ、優子、言いたい事があるならハッキリ言えば?」  
 
気付かないうちに、彼女の顔をじっと見つめていたらしく、  
赤毛の親友は、不機嫌さと気恥ずかしさとが半々に入り混じった口調で問いを発した。  
どう答えたものか?少し思い悩んだ末に、蒼髪の少女は、やや曖昧な回答でこれに応じる。  
 
「そうね・・・・こっちはこっちで、色々と大変なのね。ご苦労さま」  
 
案の定、夢幻界の親友は、(少し首を傾げながらも)  
――――何よそれ、と幾分ふてくされ気味に言い返してくる。  
・・・・想像通りの反応に、優子は、ほんの少しだけ口元を綻ばせながら、そっと肩をすくめてみせた。  
 
 
饐えた異臭の漂う地下迷宮。  
天井から吊り下げられたしなやかな肢体が、ビュクンビュクンと激しく跳ね回っている。  
浅黄色のボディ・スーツから伸びるしなやかな太ももは、  
不気味な黒い紐状の物体に縛められてM字状に割り拡げられ、  
貞操帯ごと破り取られたクロッチ部分のあった場所から、紅い恥毛に覆われた可憐な秘裂がのぞいていた。  
 
「アアッ・・・・あうう・・・・くはッ・・・・うあああッ!!」  
 
――――善戦、と言って良いだろう、  
暗闇の中、地下迷宮の狭い通路でのライディの健闘は小一時間にも達するものだった。  
十分な視界も得られない状況下、襲い掛かってくる無数の触手生物を、  
たった一本の長剣だけを頼りに、斬り伏せ、薙ぎ払い続けたその戦いぶりは、  
その様子を眺めていた者がいたならば、さすがは<雷の戦士>、と喝采を叫ばずにはいられなかっただろう。  
 
だが、所詮は多勢に無勢、戦いの結果が事前の予想を覆す事は遂に起こらなかった。  
斬り飛ばした触手の数が五十を越えた頃から、愛剣の切れ味が目立って鈍り始め、  
百を数えた頃には、蓄積した疲労によって指先の感覚が怪しくなり、  
二百に達した時には、足元はふらつき、殆ど気力だけで戦っている状態となる。  
精根尽き果てた赤髪の少女が触手に絡め取られたのはその直後・・・・  
その頃には、愛用の長剣の刃先には敵の血糊と肉片が何層にも渡ってこびり付き、  
斬るための武器と言うよりも、殴打用の鉄の棒切れと言った方が適切な状態に成り果てていた。  
 
・・・・しかしながら、獲物が倒れた後もなお、押し寄せてくる触手の数は増え続け、  
今や、少なめに見積もっても三百、おそらくは千匹に近い数の黒い怪物が、  
力尽きた女冒険者のカラダの周囲を取り囲んでいるのだった・・・・。  
 
「ひいい・・・・も、もう許して・・・・これ以上は・・・・くふぁあああッッ!!!!」  
 
戦闘不能に陥った<戦士>は、弱々しくかぶりを振りながら、  
押し寄せてくる黒い生き物に向かって哀願の言葉を搾り出した。  
剥ぎ取られているのは陰部だけに留まらず、  
ボディ・スーツはあちこち破れ、手足を覆う防具には大小の亀裂が生じて、  
その全てから張りのある健康的な柔肌が無残に曝け出されている。  
破れ目に頭を突っ込んだ何本もの赤黒い陵辱者は、仲間の仇とばかりに瑞々しいカラダを責め嬲っていた。  
 
「だめぇッ!!そ、そんなとこ・・・・はひぃぃぃッ!!」  
 
割り開かれた両脚から下半身全体にかけて幾重にも絡み付いた触手の群れは、  
グネグネと蠢きながに肌理の細かい肌を吸い尽くすかのように這いずり回っている。  
その表面から滲み出る体液は、体内を流れている時の生臭さからは想像も出来ない、  
甘ったるい匂いを放ち、半裸の美しい囚人を淫靡に飾り立てていた。  
不規則に全身を揺らしながら喘ぎ声を漏らすたび、細い顎がカクンカクンと跳ね上がり、  
胸元に口を開けた大きなかぎ裂きから飛び出した、豊満な乳房がプルプルと震え慄く。  
 
「あああ・・・・ダメ・・・・ダメぇッ!!  
ア、アソコが擦れて・・・・ふああッ・・・・感じちゃうッ・・・・!!」  
 
鮮やかなピンク色の秘裂にはひときわ太く逞しい触手が没入し、  
さらに、その周囲にはやや胴回りの細い同胞が数匹、  
隙あらば、花弁を強引にこじ開けて内部に突入しようと、入り口の前でひしめき合っている。  
ヘビのようにうねる触手の先端部分は大小の球状突起に覆われ、  
繊細な柔肉を執拗に擦り立てては、ピクピクとせわしない痙攣をもたらしていた。  
押し広げられた膣穴は真っ赤に充血して腫れ上がり、  
滑りを良くする為に分泌された不気味な体液が、捲れ上がった粘膜に何重にも塗り重ねられている。  
 
「ハァハァ・・・・だめぇ・・・・もう、何も・・・・考えられ・・・・ふはぁうぁぁッ!!!!」  
 
陵辱が始まってから、さほど時間は経過していないというのに、  
既にライディの目元は虚ろになりかけ、クチビルの端からは涎の糸が垂れ落ちていた。  
頭の中は白い靄に覆われて、正常な思考は隅に追いやられ、  
五感も、全身を覆う触手の感触と時折背中を走る電流のような快美感の他には何も感じなくなっている。  
引き締まった中にも適度な豊かさを感じさせる美しい肢体は、  
滲み出した脂汗と触手生物の汚液にまみれて、てらてらと妖しく濡れ光っていた。  
 
ジュプッ・・・・ジュププッ・・・・ジュルッ・・・・ジュチュルルッ・・・・!!  
 
劣情にわななく乙女に気を良くしたのだろうか、  
膣壁を犯す魔生物の動きが次第に加速していく。  
グニュグニュと激しくうねりながら膣道を抉り進んだ触手が子宮口を穿ち破り、  
グロテスクなイボイボのついた破城鎚の先端部が奥壁に当たって鈍い音を響かせた。  
 
「ヒィッ・・・・イギヒィィッ!!  
だ、だめぇ・・・・壊れちゃうッ・・・・ひはぁあッ・・・・おかしくなるぅッ!!」  
 
凄まじい激痛と快感の大波が、僅かに残った理性を打ち砕いていく。  
容赦の無い責めに紅髪をしどろに振り乱したライディは、  
擦れかけた悲鳴と共に、絡め取られた下半身をビクビク痙攣させ、惨めに悶え狂った。  
少女のカラダを目がけて押し寄せてくるおぞましい触手の群れはとても全部が秘裂の中には入りきらず、  
あるモノは熟れた乳房に搾り出すように絡み付き、硬くしこった乳首を擦り立て、  
またあるモノは、大陰唇の上端で、ツンッ、と先を尖らせている陰核を巧みに責め嬲り、  
あるいは、背後に回って、まろやかな尻肉の奥で息付くすぼまりの表面を這い回ったり、  
・・・・といった具合に、美しい獲物の肉体を思い思いの方法で味わい尽くさんとしている。  
 
「ひあッ・・・・ふぁう・・・・はうぁああッ・・・・!!  
ひぃぃ・・・・も、もうだめッ・・・・イクッ・・・・イッちゃううッッッ!!!!」  
 
嵐のような責めの連続に、火の付いてしまったカラダは否応無く反応し、  
喜悦の頂へと続く急斜面を一気に駆け上がっていった。  
跳ね上げられた頤の下で、白い喉元がヒクヒクと引き攣り、  
拘束された身体がビクンビクンと跳ね回りながら、弓なりにしなっていく。  
 
「あはぁ・・・・ひゅうう・・・・ふぅあ・・・・はひぃあああッ・・・・!!」  
 
前後の穴から入り込んだ触手の先端が薄い子宮壁越しにゴリゴリと擦れ合うたび、  
絡め取られた裸身は淫猥にのたうち、わななく唇から蕩けた泣き声が溢れ出す。  
敏感な粘膜を犯される刺激は、耐えがたい苦痛と共に、  
腰椎をトロトロに溶解させんばかりの官能的な衝撃を生み出していた。  
背筋を伝わり延髄から視床下部へと流れ寄せてきたゾクゾク感は、  
頭の中で灼熱の炎と化し、痺れかけた脳味噌を蒸し焼きにしていく。  
 
――――そして、次の瞬間ッ!!  
 
「あうう・・・・うぐぁああッ・・・・な、何・・・・何か来るッ!?」  
 
・・・・ゾロリ。  
 
散々掻き回され、嬲り抜かれた膣穴の内側で、  
触手の先から何かが放出される――――否、触手の中から這い出してくる。  
充血花弁の中に異様な感触が広がり、  
子宮口の隙間から胎盤の中へとゆっくりと流れ込んでいった。  
 
「ひいッ・・・・何なの、これぇッ!!  
・・・・ああッ・・・・ダ、ダメ・・・・入ってきちゃ・・・・いやぁああッッッ!!!!」  
 
絶叫を上げる、女冒険者。  
乙女の直感、いや、むしろ、生物としての本能と言った方が適切だろうか、  
意識の奥に宿る何かが、子宮内に広がる汚濁の中に計り知れない危険を感じ、拒絶のシグナルを乱打する。  
同時に、魂の底に眠る光・・・・少女に生きる意志を、戦いに赴く勇気を与え続けてくれた煌きが封印を解かれ、稲妻のようなエネルギーの奔流となって体内を駆け巡った。  
 
・・・・だが。  
 
時を同じくして、カラダの中で最も敏感な部分からは、  
ぞっとするような熱い疼きが湧き上がり、異様に鋭さを増した性感を業火に包んでいく。  
絶頂寸前のエクスタシーに支配された心身にとっては、何よりも悪辣で効果的な責め嬲り  
・・・・選ばれた<戦士>といえども、その魔手から逃れる事は適わない程の。  
気が遠くなるような快感に、くぐもった嗚咽が漏れ、  
目尻から溢れ出した大粒の涙が、真っ赤に上気した頬筋を流れ落ちていく。  
 
「あうッ・・・・あが・・・・あッあッあッ・・・・ぐぐ・・・・あああッ・・・・!!」  
 
激しく鬩ぎ合う、聖なる意志と魔性の悦楽。  
・・・・だが、ここは不浄な力によって汚染された漆黒の回廊だった。  
宿主の危機に封印を解かれた夢幻界の加護も長続きはせず、  
ライディの意識は闇に蝕まれ始め、ゆっくりとではあるが、着実に暗黒の色へと染まっていく。  
 
パシッ!!  
 
最後に一度だけ、青白い電光が身体の上で小さく弾けたかと思うと、  
まるで、強風に掻き消される線香花火のように、空しく散り去った。  
魂の奥底、存在の最も根源的な部分に標されていた<明>の徴が音もなく消え去り、  
代わって、<暗>の紋章が灼熱の焼印となって刻み付けられる。  
その直後、彼女の感覚はぷっつりと途切れ、  
奈落へと続く闇の深淵に呑み込まれて沈み込んでいった――――。  
 
 
――――コツ、コツ、コツ・・・・。  
 
赤錆の浮いた鉄格子の向こうから近付いてくる冷たい靴音。  
牢の中で耳をそばだてていたレオタードの少女は、濃紺の瞳に力を込め、身構えた。  
思いも寄らぬ形で、捕囚の身になってしまったとはいえ、  
<夢守りの戦士>は未だ戦いを放棄した訳ではない。  
 
「・・・・ッ・・・・!!」  
『・・・・・・・・』  
 
独房の前に姿を現したのは、先刻の夢魔と同じ服装をした暗い表情の男。  
一瞬、麗夢の脳裏には、どこかで彼に会った事があるような、不可思議な既視感が湧き上がってくるが、  
いくら考えても、いつ、どのように知り合ったのか?全く思い出す事が出来ない。  
一方、死神の装束を纏った男は、しばらくの間、値踏みをするかのようにその顔を覗き込んでいたが、  
やがて、かすかに唇の端を歪めると、手にした大鎌を牢の中の捕囚に向けて静かに揺らしてみせた。  
 
「きゃあああッ!!」  
 
大鎌の刃先から強烈な悪意を孕んだ衝撃波が繰り出される。  
狭い独房の中、回避もままならず、背後の壁へと叩き付けられる、<ドリームハンター>。  
鈍い破砕音と共に、つい先刻まで身体を休めていた木製のベッドが粉々に砕け散り、  
切り裂かれたお気に入りの羽根枕から飛散した白い羽毛が、しばしの間、両者を隔てる白い壁を形成する。  
 
「うう・・・・」  
 
全身の痛みに顔をしかめつつも、麗夢はどうにか体を起こした。  
したたかに打ち付けた背中は勿論、紅いレオタードの至る所に鉤裂きが大きく走り、  
その下から、未だ発育の途上にあるスレンダーな肢体が覗いている。  
大きく破れた胸元を両手で隠しつつ、込み上げてくる羞恥心に顔を赤らめた少女は、  
鉄格子の向こうを睨みつけ、くうぅッ、と、奥歯をきつく噛み締めた。  
 
(嬲り殺しにしよう、って訳なの?)  
 
こめかみから滲み出した冷たい汗が、強張った頬筋をゆっくりと流れ落ちる。  
――――と、次の瞬間、今度は、背後で異様な感触が蠢いたかと思うと、  
反射的に後ろを振り返ろうとした彼女を、ミイラのように骨ばった冷たい手が封じ込めた。  
 
「・・・・なッ、コ、コイツは・・・・!?」  
 
ディープブルーの瞳が驚愕に大きく見開かれる。  
背後の壁面から上半身を突き出していたのは、悪夢の中で死闘を演じた、あの不死身の夢魔。  
・・・・それも、一人だけでは無く、天井からも、床からも、左右の壁からも、死神の腕が現れて、  
ぞっとするような感触の指先を小柄なカラダに絡み付けてくる。  
 
「ひィィッ!!いやぁッ、は、放してぇッ!!」  
 
信じ難い光景に、我知らず、悲鳴を放ち上げる<ドリームハンター>。  
・・・・否、彼女が驚愕するのも無理は無かった。  
取り憑いている人間を介してというならば兎も角、  
夢魔自身が夢の世界から抜け出して現実世界にいる人間を襲うなど、凡そ考えられない事である。  
宿敵である死神博士や親友である榊ゆかりに取り憑いていた悪霊の王のように、  
純粋な意味での夢魔とは言えない存在であれば、ありえない事でもないが、  
彼らとは異なり、この死神は、疑う余地も無い夢の世界の存在だった。  
 
(・・・・そ、それが、何故、こちらの世界にッ!?)  
 
ビリビリと不快な音を立てながら、残りのレオタードとアンダーウェアが引き千切られた。  
競技用やエアロビクス用の市販品と違い、夢魔に操られた人間や動物との戦闘を想定して、  
防弾チョッキにも採用されている特殊樹脂を織り込んで編まれた衣服が、あっという間に千切り破られ、  
なめらかなカラダの曲線とうっすらと汗ばんだ色白な肌が露わにされていく。  
 
「・・・・くううッ、み、見ないで・・・・」  
 
自身では『見るな』と怒りのこもった口調で言い放ったつもりだったが、  
実際に震える唇が紡ぎ出した言葉は、すでに弱々しい哀願調の響きに包まれていた。  
暴き立てられた発育途上の乳房、そして、下草もまばらな幼い性器を、  
必死に覆い隠そうとするその表情からは、先程までの気概は姿を消し、  
恐怖と羞恥に打ち震える、年端も行かない少女の顔に戻ってしまっている。  
 
「ひぃ・・・・や、やめて・・・・い、ぎひぃいッ!!」  
 
死人のように冷たい指が手足に喰い込み、  
わずかばかりの抵抗をものともせず、胸元と秘部から引き剥がした。  
あまりの恥ずかしさに顔面を引き攣らせる敗残の<戦士>は、  
もはや、大粒の涙で双眸を潤ませながら、力なくかぶりを振る事しか出来ない。  
その恐怖は、――――ギィィィッ、という軋んだ音を立てて鉄格子が開け放たれ、  
死神の格好をした鬼女が牢の中に身体を滑り込ませてくるに及んで、頂点へと達した。  
 
「い、いや・・・・いやあああッッッッ!!!!」  
 
狭苦しい牢の中に響き渡る、悲痛な叫び声。  
背後に陣取った死神の両手が、硬さの残る乳房を根元から絞り上げ、  
ゆっくりと円を描くように揉み込んでいた。  
陰気な色合いの長衣から伸びた骨ばった指先は、殊更に乱暴な動きをしている訳ではなかったものの、  
異性との性交はおろか、まともにキスさえした事のない無垢な少女にとって、  
名状し難い不快感の纏わりついた愛撫の感触は、耐え難い苦痛と恥辱をもたらすものでしかない。  
 
「むぐッ!?んぐぅ・・・・ぐぶうううッ!!」  
 
乳房へのおぞましい愛撫に抗議の叫び声を上げ続ける口元に、夢魔のクチビルが覆い被せられた。  
吐き気を催す感触が口腔内を蹂躙し、喉の奥にまで流れ込んでくる。  
まだ誰にも許した事の無いファースト・キスを無情にも奪い去られた麗夢は、  
信じられない、と叫びたげに、左右の瞼を大きく見開くと、  
ひとかけらの温かみさえ感じられない接吻を撥ね退けようと、絶望的な抵抗を試みた。  
 
「んぶぅッ!?ぶぐ・・・・うぐぶぅうううッッッ!!」  
 
・・・・だが、死神の口付けは<夢守りの戦士>の可憐な口元を執拗に犯し続け、  
あまつさえ、震え慄く歯並びをこじ開けて、  
腐った血の匂いを漂わせる体液をたっぷりと含ませた舌先を可愛らしい舌根へと絡ませてくる。  
泣き叫ぶ気力すら喪失した少女には、おぞまし過ぎる口唇愛撫から免れる力は残されていなかった。  
 
悪夢をも上回る凄惨な現実に打ちのめされ、茫然自失となった彼女に出来る事と言えば、  
薄紫色のストッキングに覆われた左右の太腿を捩り合わせ、敏感な谷間を守り抜こうと足掻き続ける事だけ。  
――――もっとも、それとて、本格的な責めが開始されようものならば、  
あっという間に無力化されてしまう程度の代物に過ぎなかったのだが・・・・。  
 
「んぐぅううッッッ!!!!」  
 
案の定、微弱と言うのも憚られる程弱々しい抵抗は、何の成果ももたらさなかった。  
スレンダーな太ももを包むストッキングが引き裂かれ、露わにされる幼い性器  
・・・・ほとんど無毛に近い恥丘の真ん中を走る、真っ新なピンク色の割れ目が、  
ねっとりと淀んだ空気にさらされてヒクヒクと震え上がる。  
骨ばった指先がクレヴァスをそっとなぞり上げると、  
塞がれた唇からくぐもった悲鳴が漏れ、眼尻から大粒の涙滴が零れ落ちた。  
 
ちゅッ・・・・ちゅく・・・・ちゅくちゅッ・・・・!!  
 
敏感な花びらを割り広げ、充血した陰唇を弄ぶ髑髏の夢魔たち。  
剥き出しになった下半身に、自分達に抗えるだけの力が残されてはいないのを承知の上で、  
わざと焦らすように手加減しつつ、幼い性感を掻き立て、妖しい昂ぶりに目覚めさせていく。  
やがて、狡猾な指技に揉み解されくつろげられた粘膜から、半透明な愛液が滲んでくると、  
つつましい肉の花弁の奥に生じた熱っぽい感覚が青い果実を燃え立たせ始めた。  
 
「うく・・・・んむぅ・・・・くふッ・・・・ううう・・・むふぅんん・・・・」  
 
いつしか、苦悶の声は甘く切なげな吐息へと変化し、艶かしいリズムを刻んでいた。  
力の抜けきった両脚が持ち上げられ、V字型に大きく開脚を強いられても、  
もはや、檻の中の女囚は形ばかりの抵抗さえも示そうとせず、屈辱的な体位を受け入れてしまう。  
 
(はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・)  
 
柔かい秘唇を擦り上げられ、包皮の中の陰核を穿り出されて転がされる。  
さすがに自慰の経験ぐらいはあるものの、  
自分の指で弄るのとは比べ物にならない心地良さに、子宮の奥から蜜液が溢れ出して来る。  
自制心の箍が緩くなっていくにつれ、その湧出量は増加の一途を辿り、  
いまや膣内には収まりきらず、太腿の内側をベットリと濡らしていた。  
 
(・・・・もう・・・・もう、ダメぇ・・・・何も・・・・考えられない・・・・ふはぁああッ・・・・!!)  
 
<戦士>としてのプライドは粉々に打ち砕かれ、心の中には絶望が深く染み渡っていった。  
頭の中は真っ白な靄に覆われ、理性も思考も麻痺しきって、  
腰椎の間から込み上げてくるゾクゾクするような快美感以外、何も感じられない。  
胸の中では、数秒毎に、心拍の回数、強さ共に跳ね上がり、  
熱く沸騰した血液が血管の隅々にまで快楽の波動を送り届けていた。  
視界がぼんやりと霞み、虚ろな瞳が空中をあてどもなく彷徨っている。  
 
やがて、限界を迎えた少女の意識は、際限なく膨張し続ける肉悦の中で、  
全身がバラバラに弾け飛ぶかのような激しい痙攣を感じつつ、昏い奈落の底へと沈んでいくのだった・・・・。  
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 
 

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